(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】IR顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20220726BHJP
G02B 21/18 20060101ALI20220726BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20220726BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/18
G01N21/35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020035791
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2019 203 560.4
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513321364
【氏名又は名称】ブルーカー オプティク ゲーエムベーハ-
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ハーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リュットヨハン
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0188034(US,A1)
【文献】特開平07-198596(JP,A)
【文献】特開平03-041328(JP,A)
【文献】特表2005-523428(JP,A)
【文献】特開2017-009718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 21/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR顕微鏡であって、
コリメートされた入射IRビーム(26)を生成するためのIR光源(1)と、
前記コリメートされた入射ビーム内の絞り面(27)における有効ビーム制限素子(8)と、
試料を記録するための試料位置(15)と、
IRセンサ(19a)を有するIR検出器(19)と、
前記IRセンサ(19a)の上流に配置された、検出器絞り開口部を有する検出器絞り(19b)と、
前記IR光源(1)から出射される前記コリメートされた入射IRビーム(26)を前記試料位置(15)に集束させるための第1の光学デバイスと、
前記試料位置(15)を前記IRセンサ(19a)上に結像するための第2の光学デバイスと
を備え、ここで、前記第2の光学デバイスは、対物レンズ(16)と中間光学ユニット(18)を含む、IR顕微鏡において、
前記有効ビーム制限素子(8)は、前記第1の光学デバイスに入射する前の前記コリメートされた入射IRビーム(26)内に位置し、かつ
前記第1の光学デバイスと前記第2の光学デバイスは、前記検出器絞り(19b)の前記検出器絞り開口部を入射ビーム面(29)に結像し、ここで、前記入射ビーム面(29)における前記検出器絞り開口部の前記像の面積A1と、前記入射ビーム面(29)における前記コリメートされた入射IRビーム(26)の断面の面積A2について、
0<A1/A2≦1
が成り立つことを特徴とする、IR顕微鏡。
【請求項2】
前記第1の光学デバイスが、前記入射IRビームを前記試料位置に集束させるための更なる対物レンズ(14)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のIR顕微鏡。
【請求項3】
前記第1の光学デバイスが、前記入射IRビーム(26)を前記試料位置(15)に集束させるように設けられた対物レンズ(16)と、前記IR光源(1)から出射される前記入射IRビーム(26)を前記対物レンズ(16)に結合するために設けられたビームスプリッタ光学ユニット(13b)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のIR顕微鏡。
【請求項4】
前記検出器絞り(19b)と前記IRセンサ(19a)が、共通の検出器ハウジング(19c)内にあり、互いに距離dだけ離れて配置されており、ここで、前記距離dは、好ましくは最大50mmであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項5】
前記中間光学ユニット(18)が、
【数1】
[式中、
f:前記中間光学ユニットの有効焦点距離
x:前記第1の光学デバイスと前記第2の光学デバイスの対物レンズ(16)とによって作成される前記入射ビーム面(29)の像と、前記第2の光学デバイスの前記対物レンズ(16)によって作成される前記試料の像との間の距離
d:検出器絞り(19b)とIRセンサ(19a)と間の距離
m:前記中間光学ユニット(18)の倍率]が成り立つ有効焦点距離fを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項6】
前記中間光学ユニット(18)の倍率mが、m=1であることを特徴とする、請求項5に記載のIR顕微鏡。
【請求項7】
前記有効ビーム制限素子(8)が、前記IR光源(1)
の出射アパーチャ(3)であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項8】
前記有効ビーム制限素子(8)と前記入射ビーム面(29)とが、前記コリメートされたIR光源(1)内に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項9】
前記入射ビーム面(29)が、前記絞り面(27)であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項10】
前記中間光学ユニット(18)が、オフナー対物レンズ(18a、18b)を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【請求項11】
前記IR光源が、干渉計(1)、量子カスケードレーザーまたはFTIR分光計を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載のIR顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリメートされた入射IRビームを生成するためのIR光源と、コリメートされた入射ビーム内の絞り面における有効ビーム制限素子と、試料を記録するための試料位置と、IRセンサを有するIR検出器と、IRセンサの上流に配置された、検出器絞り開口部を有する検出器絞りと、IR光源から出射されたコリメートされた入射IRビームを試料位置に集束させるための第1の光学デバイスと、試料位置をIRセンサ上に結像するための第2の光学デバイスとを備え、第2の光学デバイスは、対物レンズと中間光学ユニットを含む、IR顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなIR顕微鏡は、たとえば、[1]、[2]、[3]、および[4]から知られている。
【0003】
赤外(IR)顕微鏡を用いて、検査対象である試料のIR像と可視像を生成でき、ここで、測定は通常、透過光と反射光のそれぞれで行うことができる。この目的のために、赤外光と可視光のビーム経路を透過光と反射光とで切り替えることができる。
【0004】
ここで検討されるIR顕微鏡は、特に、位置分解スペクトル法で顕微鏡試料を測定することができ、すなわち、顕微鏡試料のさまざまな領域で、赤外スペクトル領域のスペクトルが取得される。
【0005】
この目的のために、IR光は干渉計を通過するが、ここで、干渉計の両アームの長さは1つまたは複数のミラーの動きによって相対的に変化し、その結果、赤外光はその波長に応じて変調される。この場合、変調周波数は波長に依存し、各波長は変調周波数に一意に割り当てることができる。このように変調された赤外光は、検査対象である試料上に導かれ、試料から発せられる光は、第2の光学デバイスにより赤外線検出器上に集束される。
【0006】
検出器が受光した変調光には、試料のすべてのスペクトル情報が含まれている。ただし、検出器は、変調されていない周囲からのIR光にも敏感である。この光が検出器に到達した場合、それは情報の増加には寄与せず、検出器のダイナミックレンジを狭める。
【0007】
これに加えて、望ましくない検出器信号の1つに暗電流がある。したがって、検出器は一般に、センサ材料の熱励起によって引き起こされる可能性がある望ましくない信号を最小限に抑えるために冷却される。検出器は、可能であれば、試料から発せられる変調されたIR光により生じる信号のみを出力するよう構成されている。
【0008】
周囲からの光を極力抑えるために、検出器は検出器絞りを有する。
【0009】
従来技術では、検出器絞りのサイズと位置は常に、検出器の上流の最後の結像光学ユニットによって決まる。これに関して、たとえば、[3]では、検出器絞りは、上流の中間光学ユニットからの光のみが検出器絞りを通過できるように寸法決めされている。
【0010】
しかしながら、冷却されたハウジング(放射線シールド)に囲まれている冷却されたIRセンサを使用して、例えば、同様に冷却された検出器絞り(コールドストップ)を通過した光のみがセンサに到達する場合、検出器絞りの位置とサイズを任意に寸法決めすることはできない。なぜなら、それはデュワー瓶内に設置されなければならないからである。そのため、検出器絞りの位置とサイズは一般に、上流の中間光学ユニットに対して最適になるよう調整することができず、むしろ、上流の中間光学ユニットを、測定に必要な光は検出器絞りを通過するが、必要でない光(たとえば環境光)は検出器絞りを通過できないように設計しなければならない。このため、中間光学ユニットは、検出器の方向に半開口角α/2の円錐状のIR光を出射し、試料面の像または試料面の下流の中間像面の像をIRセンサ上に生成する。つまり、入射アパーチャの直径の、検出器絞りからIRセンサまでの距離dに対する比は、中間光学ユニットのF値(F/#)に対応する。この手順は、たとえば[4]で使用されるような単一素子検出器に完全に適している。しかしながら、この手順は、たとえば[1]と[3]で使用されるような多数のセンサ素子を有する様々な1次元または2次元検出器にとって十分ではない。つまり、冷却された入射アパーチャをセンサの中央のピクセルに対して適切に設定することは可能であるが、センサの中央にない、特にエッジ領域のピクセルに向かう赤外光は、検出器絞りによってケラレる。ケラレを低減するために検出器絞りのみを大きくすると、迷光、特に測定信号を含まない非冷却環境からの光も赤外線検出器のセンサに到達し、測定が損なわれる。
【0011】
[1]は、多素子検出器を備え、検出器絞りが第2の光学デバイスのカセグレン式対物レンズのミラー上に結像されるIR顕微鏡を開示している。この場合、カセグレン式対物レンズのミラーが装置のビーム制限素子を形成する。しかしながら、第2の光学デバイスのミラーによりビーム制限を行う為、迷光がミラーのエッジで発生し、測定の品質に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、コリメートされたIR源から出射されるとともに試料面におけるユーザ定義領域を照射する、変調された赤外光のみを、IR検出器のすべてのセンサ素子(ピクセル)がピックアップする多素子IR検出器を備えたIR顕微鏡を提案することを課題とする。同時に、ケラレや迷光などの妨害的な現象を回避するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載のIR顕微鏡によって解決される。
【0014】
本発明によれば、有効ビーム制限素子は、第1の光学デバイスに入射する前のコリメートされた入射IRビーム内に位置する。本発明によれば、第1の光学デバイスと第2の光学デバイスは、検出器絞りの検出器絞り開口部を入射ビーム面に結像し、ここで、入射ビーム面における検出器絞り開口部の像の面積A1と、入射ビーム面におけるコリメートされた入射IRビームの断面の面積A2について、
0<A1/A2≦1
が成り立つ。
【0015】
「有効なビーム制限」とは、有効ビーム制限素子よりもIRビームの断面を大幅に制限する更なる素子がデバイス内に存在していない場合になされる。有効ビーム制限素子により、(IR光の光軸に垂直な)絞り面が決まる。つまり、絞り面は、有効ビーム制限素子によってビームが制限される位置、たとえば、有効ビーム制限絞りまたは有効ビーム制限ミラーの位置にある。
【0016】
第1の光学デバイスに入射する前のIR光源からの光は、入射IRビームと呼ばれる。入射IRビームがコリメートされている領域では、2°未満の発散角を有することが望ましい。
【0017】
本発明における入射ビーム面内の検出器絞り開口部と入射IRビームの断面との比の限定により、外部領域からの(たとえば、周囲からの熱放射に基づく)光が検出器に到達することが回避される。つまり、ビーム制限素子を出て試料面における所定の領域を照射する赤外光のみが検出器に到達し、検出器のすべてのピクセルがケラレなしで等しく照射されることが保証される。この場合、A1/A2≦1という記述は、測定の結果を著しく損なわない小さな偏差が、この条件に付随して含まれることを意味するものと理解されるべきである。たとえば、測定に利用可能な有効信号が最適な設定における有効信号の70%を下回ると、測定は著しく損なわれる。この場合、最適な設定と比較して同等の信号対ノイズの比(70%×sqrt(2)=99%)を取得するには、測定時間を少なくとも2倍にする必要がある。
【0018】
従来のIR放射源を使用する場合、A1/A2=1が成り立つIR顕微鏡が使用されることが望ましい。それによって、一方では、環境光が検出器に入ることが回避され、他方では、最大発光効率が保証される。これは、放射源によって検出器の飽和が起こらない場合には最適な設定である。しかしながら、特に、非常に高い光強度の放射源(たとえばQCレーザー)を使用する場合、A1/A2<1の比を規定することも有利であり得る。なぜなら、過度に大きな検出器絞り開口部を使用すると、検出器が飽和状態で動作するリスクがあるためである。本発明はさらに、コリメートされた入射IRビーム内に(つまり、第1の光学デバイスに入射する手前に)有効ビーム制限素子と入射ビーム面が位置することを規定する。つまり、検出器絞り上に結像されるビーム断面は、中間光学ユニットによって決まるのではなく、すでに第1の光学デバイスの上流で決まっている。ビーム制限素子が、コリメートされた入射ビーム内に、つまり、非常にわずかな発散角を有するビーム内に位置することによって、検出器絞りが結像される入射ビーム面の有効ビーム制限素子に対する位置に関して一定の自由度がある。さらに、有効ビーム制限素子が、コリメートされた入射ビーム内に位置することによって、有効ビーム制限素子のエッジで発生する迷光効果の影響が最小限に抑えられる。
【0019】
好ましくは、入射ビーム面は、有効に制限された入射ビーム内に、つまり絞り面内に、または絞り面と第1の光学デバイスとの間に位置する。
【0020】
顕微鏡を透過光で使用する構成とする場合、第1の光学デバイスは、入射IRビームを試料位置に集束させるための更なる対物レンズ(集光器)を含む。すなわち、入射IRビームを試料位置に集束させるための対物レンズは、試料の照射後に試料位置を結像するための対物レンズと同じ対物レンズではない。
【0021】
反射光でIR顕微鏡を使用する場合、第1の光学デバイスは、入射IRビームを試料位置に集束させるために設けられた対物レンズと、IR光源から出射される入射IRビームを対物レンズに結合するために設けられたビームスプリッタ光学ユニットとを含む。この場合、対物レンズは、試料上に入射IRビームを集束させるためと、試料から反射された光によって中間像を生成するための両方の役割を果たす。この場合、入射IRビームを試料位置に集束させるための対物レンズは、試料の照射後に試料位置を結像するための対物レンズと同じ対物レンズであってよい。
【0022】
最も単純なケースでは、第1の光学デバイスは無限遠補正対物レンズであってよい。対物レンズとして有限補正対物レンズを使用する場合、第1の光学デバイスはさらに、コリメートされた入射ビームを中間焦点に結像するミラーを備え、中間焦点は次いで有限補正対物レンズにより試料上に結像される。
【0023】
両方の対物レンズは、ミラー型対物レンズ、屈折型対物レンズまたは反射屈折型対物レンズであってよい。好ましくは、対物レンズは、2つの球面ミラーを備えたカセグレン式対物レンズとして構成される。
【0024】
検出器は、好ましくは、センサ面に多数の検出素子(ピクセル)を有する2次元検出器である。あるいは、検出素子が直線に沿って配置されているリニアアレイ検出器を使用してもよい。
【0025】
本発明によるIR顕微鏡の特に好ましい一実施形態では、検出器絞りとIRセンサは、共通の検出器ハウジング内に位置し、互いに距離dだけ離れて配置されており、距離dは、好ましくは最大50mmである。この場合、本発明によれば、中間光学系によって生成された試料の像と中間光学系によって生成された入射ビーム面の像との間の距離が距離dを有するように、試料と入射ビーム面の結像が行われる。
【0026】
中間光学ユニットは、好ましくは、
【0027】
【数1】
[式中、
f:中間光学ユニットの有効焦点距離
x:第1の光学デバイスと第2の光学デバイスの対物レンズとによって作成される入射ビーム面の像と、第2の光学デバイスの対物レンズによって作成される試料の像との間の距離
d:検出器絞り(19b)とIRセンサ(19a)と間の距離
m:中間光学ユニットの倍率]が成り立つ有効焦点距離fを有する。
【0028】
中間光学ユニットは、全体として有効焦点距離fを有する複数の結像光学素子、特に複数のミラーを含むことができる。
【0029】
検出器絞りとIRセンサとの間の距離dは、可能な限り大きく選択されることが望ましいが、距離dは、配置に利用可能な空間によって制限される。検出器絞り/コールドストップは、好ましくは真空デュワー瓶に配置されるため、この距離は、真空デュワー瓶の寸法によって制限される。したがって、検出器絞りとIRセンサとの間の距離dは、好ましくは2mm~50mm、特に15mm~35mmである。
【0030】
倍率mは、第2の光学デバイスの対物レンズと中間光学ユニットとの所望の総倍率、第2の光学デバイスの対物レンズの位置分解能、およびセンサ素子のピクセルサイズに依存する。好ましくは、倍率mは、0.1~10の範囲で選択される。
【0031】
第1の光学デバイスは、IR光が試料位置に集束されるように設計される。対物レンズは、中間像面に試料の像を生成するように設計される。このように設計された第1の光学デバイスと、このように設計された対物レンズは、対物レンズの背後の入射ビーム面の像も共に生成する。対物レンズの背後の入射ビーム面の像と対物レンズの背後の試料の像とは、互いに距離xとなる。通常、距離xは、1mm~250mm、特に70mmである。
【0032】
本発明のように有効焦点距離を選択することにより、中間像面を倍率mでセンサ面上に結像し、同時に入射ビーム面を検出器絞り上に結像することができる。倍率mによって、試料の像のサイズを検出器に適合させることができる。それにより、検出器絞りの位置における入射ビーム面の像のサイズも影響を受ける。この場合、検出器絞りのサイズを、検出器絞りの位置における入射ビーム面の像のサイズに合わせる。
【0033】
表面から検出器への熱放射を最小限に抑えるために、検出器と検出器絞りの両方が冷却されることが理想である。IRセンサと検出器絞りは、好ましくは、冷却された検出器ハウジングに収容され、これにより、干渉計と試料からのものではない赤外光を大幅に低減できる。検出器ハウジング内にIRセンサと検出器絞りをこのように一緒に収容する場合、検出器絞りと検出器ハウジングとの間の距離を任意に大きくするように選択できないため、中間光学ユニットによる結像比をこの構成に対応したものとする必要がある。
【0034】
本発明によるIR顕微鏡の特定の一実施形態では、中間光学ユニットの倍率mは1である。つまり、中間光学ユニットは、1:1結像(2f結像)をもたらす。
【0035】
本発明によるIR顕微鏡の特に好ましい一実施形態は、有効ビーム制限素子がIR光源の出射アパーチャであることを規定する。この場合、入射ビーム面は、好ましくは、出射側で、つまりIR光源の出射アパーチャの近くで、たとえば、マイケルソン干渉計の射出瞳で選択される。
【0036】
別の実施形態では、有効ビーム制限素子と入射ビーム面は、IR光源内に配置されている。有効ビーム制限素子は、たとえば、IR光源としての役割を果たす干渉計の中の絞りまたはミラーであってよい。特に、入射ビーム面は、干渉計の入射開口部と出射開口部との間にあってよい。
【0037】
特に好ましい一実施形態では、入射ビーム面は、絞り面である。つまり、検出器絞り開口部は、絞り面に結像される。それによって、検出器絞り、中間光学ユニットおよびビーム制限素子を互いに簡単に適合させることができる。なぜなら、これは、コリメートされた入射ビームに発散角があったとしても、その発散角とは無関係に行うことができるからである。
【0038】
中間光学ユニットは、たとえばオフナー対物レンズを含むことができる。オフナー対物レンズは2つの球面ミラーを含み、試料と入射ビーム面の非点収差のない像を中間光学ユニット内に生成する。中間光学ユニットは、オフナー対物レンズに加えて、更なる球面ミラー、非球面ミラーまたはトロイダルミラーを含むことができる。特に、オフナー対物レンズにより生成された像を、非球面ミラーもしくはトロイダルミラーによって検出器もしくは検出器絞り上に結像することができ、または、非球面ミラーもしくはトロイダルミラーによって生成された像を、オフナー対物レンズによって検出器もしくは検出器絞り上に結像することができる。屈折光学素子(レンズ)との組合せも考えられる。
【0039】
本発明によるIR顕微鏡のIR光源は、干渉計、量子カスケードレーザー(この場合、IR放射源はIR光源と等しい)またはFTIR分光計を含むことができる。
【0040】
本発明の更なる利点は、説明および図面から明らかである。同様に、上述の特徴と、さらになお詳述される特徴は、本発明によれば、それぞれの場合にそれ自体で個別に、または複数で任意の組合せにおいて使用できる。図示および説明された実施形態は、網羅的な列挙としてではなく、むしろ本発明を概説するための特徴の例示として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a】IR光源としての干渉計と、有効ビーム制限素子としての干渉計の出射アパーチャとを備えた、透過光と反射光のそれぞれで使用できる顕微鏡を示す図である。
【
図1b】IR光源としての干渉計を備え、透過光と反射光のそれぞれで使用することができ、有効ビーム制限素子がコリメート素子である顕微鏡を示す図である。
【
図2a】中間光学ユニットがビームを制限するという想定の下での従来技術による検出器絞りサイズの調整を示す図である。中央のピクセルに対してのみ設定が最適化される。
【
図2b】検出器絞りが中央ピクセルに対してのみ最適化され、絞り面像25が検出器絞り19bと一致しない場合に発生するエッジピクセルのケラレを示す図である。
【
図2c】環境光が増加しても、検出器絞り19bを大きくすることによって、
図2bに示されたようなエッジピクセルのケラレを低減することを示す図である。
【
図2d】
図2cの配置における、放射源からのIR光の光錐と周囲からの妨害光の光錐を示す図である。
【
図2e】中間光学ユニットと、IR顕微鏡のIRセンサの中央または外部センサ素子との間のIR光のビーム経路を示す図であり、ビーム制限素子は、検出器絞り開口部の位置に結像され、A1=A2である。
【
図3a】A1/A2の比に対する、IR検出器により検出される総信号、有効信号および環境信号の依存性を示す図である。
【
図3b】A1/A2の比の関数としての、総信号に対する有効信号の比に有効信号を乗算したものを示す図である。
【
図4】第2の光学デバイスと、IR顕微鏡のIRセンサの中央または外部センサ素子との間のIR光のビーム経路を示す図である。
【
図5】
図1のIR顕微鏡を、中間光学ユニットの詳細図を付け加えて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
透過光と反射光のそれぞれで使用できるIR顕微鏡の典型的な構造を
図1aに示す。
【0043】
反射光により試料の可視像を生成するために、可視光源20bの光を、さまざまな光学素子21b、12bおよび13bを介して顕微鏡対物レンズ16に導き、顕微鏡対物レンズ16は、この光を試料位置15に集束させる。次いで、試料からの反射光は、対物レンズ16に再び入射し、試料(または試料の選択された領域)は、第1の中間像面17に結像される。次いで、この中間像面17はまた、ダイクロイックミラー22と結像光学ユニット23を介してCCDカメラ24上に結像される。
【0044】
透過光の場合、試料の可視像の生成は、光源20aから出射された可視光が光学素子21a、12aおよび13aを介して集光器(更なる対物レンズ14)に導かれ、この光が集光器により試料位置15に集束されることによって行われる。次いで、試料を透過した透過光は、対物レンズ16により第1の中間像面17上に結像される。次いで、この中間像面はまた、ダイクロイックミラー22と結像光学ユニット23を介してCCDカメラ24上に結像される。
【0045】
赤外光を用いた試料のスペクトル検査では、IR放射源2から出射されたIR光が干渉計1によって変調される。放射源2から出射された光は、放射源2を出た後、ミラー4を介してコリメートされ、干渉計1に導かれる。ここで、光はビームスプリッタ7に当たり、理想的には、50%が透過し、50%が反射される。透過赤外光は、固定ミラー6に当たり、ビームスプリッタ7の方向に再び反射し戻される。先にビームスプリッタ7で反射された光は、可動ミラー5に当たり、同様に再び反射してビームスプリッタ7に戻される。分割されたビームの両方は、ビームスプリッタ7で再結合され、干渉計1の出射アパーチャ3を通って干渉計1を抜ける。可動ミラー5は、赤外光が確実に変調されるように動く。
図1aに示される従来のマイケルソン干渉計に加えて、IR光源1として、他のタイプの干渉計、たとえば[6]から知られているように、リトロフレクターの形状をした2つの可動ミラーを備えた干渉計も使用できる。変調された赤外光は、干渉計1の出射アパーチャ3を通って干渉計1を出て、第1の光学デバイスによって試料位置15の試料上に集束され、ひいては試料の領域を照射する。
【0046】
放射源2と第1の光学デバイスとの間を通過するIRビームは、「入射ビーム」と呼ばれる。この例では、入射ビームは、ミラー4によってコリメートされ、干渉計1内と干渉計1から出た後に、コリメートされた入射ビーム26として進む
図1aに示されるIR顕微鏡は、透過光と反射光のそれぞれで使用できる。この目的のために、赤外光のビーム経路を透過光と反射光とで切り替えることができる。
【0047】
反射モード(IR-R)では、第1の光学デバイスは、対物レンズ16(ここでは、2つの球面ミラー16aおよび16bを備えたカセグレン式対物レンズ)ならびにミラー9、10b、11b、12bおよび13bを含む。ミラー9、10b、11b、12bおよび13bは、干渉計1により変調された赤外光を対物レンズ16に導き、対物レンズ16は、赤外光を試料位置15に集束させ、試料の領域を照射する。
【0048】
透過モード(IR-T)では、第1の光学デバイスは、更なる対物レンズ14、ならびにミラー9、10a、11a、12aおよび13aを含む。ミラー9、10a、11a、12aおよび13aは、干渉計から出てくる光を更なる対物レンズ14に導き、対物レンズ14は、赤外光を試料位置15に集束させ、試料の領域を照射する。同様に、更なる対物レンズ14は、2つの球面ミラー14aおよび14bを備えたカセグレン式対物レンズとして構成されていてもよい。
【0049】
透過光測定(この場合、bで表示される素子は存在しない)または反射測定(この場合、aで表示される素子は存在しない)のためにのみ提供されるIR顕微鏡で本発明を実現することも可能である。
【0050】
試料から発せられた(反射または透過)光は、第2の光学デバイスによって赤外線検出器19上に結像される。この目的のために、第2の光学デバイスは、対物レンズ16と中間光学ユニット18を含む。対物レンズ16は、試料から発せられた光を第1の中間像面17に結像する。中間像面17に視野絞りを導入することができ、この視野絞りは、試料位置15の選択された領域からの光のみを通過させ、これにより検査しようとする試料の領域を選択することを可能にする。
【0051】
次いで、中間光学ユニット18は、第1の中間像面17を赤外線検出器19上に結像する。赤外線検出器19は、好ましくは、IRセンサ19aを備え、IRセンサ19aのセンサ面に多数の検出素子(ピクセル)を有する2次元検出器である。あるいは、センサ素子が直線に沿って配置されているリニアアレイ検出器も使用できる。IRセンサ19aは、検出素子における熱励起を最小限に抑えるために冷却されることが理想である。図示の例では、IRセンサ19aは、同様に冷却される検出器ハウジング19cに組み込まれている。分析される光は、検出器19の冷却された検出器絞り19bを通って検出器ハウジング19cに入射し、試料位置15の像をセンサ19a上に生成する。
【0052】
検出器絞り19bのサイズと位置により、検出器19のセンサ19aに到達できる光が通過する領域が決まる。つまり、それらは検出器19の視野を決定する。
【0053】
IRビームは、有効制限素子8によって限定される。これは、(たとえば干渉計の)光学素子であってよい。本発明では、有効ビーム制限素子8は、コリメートされた入射ビーム26内に位置し、絞り面27を決定する。ビーム制限素子8の開口部/アパーチャ(絞りの場合)または有効アパーチャ(曲面ミラーの場合)により、絞り面27における入射ビームの断面が決まる。
図1aでは、出射アパーチャ3が有効ビーム制限素子8を形成する。
【0054】
図1bは、本発明によるIR顕微鏡の別の実施形態を示しており、ここでは、コリメートされた入射ビームの始点を定め、ひいてはコリメートされた入射ビーム内に位置するコリメーションミラー4が、有効ビーム制限素子8である。すなわち、
図1bに示されるケースでは、干渉計1の出射アパーチャ3でビーム制限はもはや起こらない。
【0055】
さらに、有効ビーム制限素子8は、たとえば、固定ミラー7、可動ミラー5またはビームスプリッタ7によって定義されてもよいし、干渉計と第1の光学デバイス(図示せず)との間で干渉計1の外側に位置してもよい。
【0056】
IR検出器で検出される信号の品質は、干渉計から出射されるIR光によるIRセンサの照射と、センサに当たる環境光に依存する。本発明によれば、検出器絞り19bは、コリメートされた入射ビーム26内の入射ビーム面29に結像される。像品質、A1/A2の比および検出器絞りの結像の位置の関係を以下に説明する。
【0057】
図2aは、赤外線検出器19と中間光学ユニット18を示している。中間光学ユニット18を介して、試料の像が(試料面または下流の中間像面の結像によって)IRセンサ19a上に生成される。従来技術では、検出器絞り19bのサイズと位置は、検出器19の上流の中間光学ユニット18からの光錐のみが検出器絞り19bを通過するように寸法決めされている。
【0058】
図2bは、絞り面における入射ビームの断面の像(絞り面像25)が検出器絞り19bのサイズと位置に対応しない場合の、中間光学ユニット18と、IR顕微鏡のIRセンサ19bの中央または外部センサ素子との間のIR光のビーム経路を示している。
図2bの場合、検出器絞り19bが小さすぎて、すべてのピクセルに対して絞り面像25から発せられるIR光の全てを捕捉することができないため、検出器絞り19bによりエッジピクセル上で光がケラレることになる。絞り面像25から発せられるすべての光は、コリメートされたIR光源からの光である。
【0059】
図2cは、
図2bと同じケースを示しているが、ただし、検出器絞り19bを、絞り面像25から発せられてエッジピクセルに達するIR光のケラレがもはや生じないように大きくしている。しかしながら、検出器絞り19bを大きくすることには欠点もある。なぜなら、絞り面像25からのものではなく、コリメートされたIR源から発せられたIR光がピクセルに当たる可能性があるからである。周囲からの不要なIR光が検出器に入射する可能性もある。
【0060】
図2dは、この問題を示している。内側の白い円錐で示すIR光30だけが完全に絞り面像25を通過し、従って、これはコリメートされたIR光源からのものである。斜線領域31の光は、コリメートされたIR源からのものではないが、それにもかかわらずセンサ19aに達する。
【0061】
図2cと
図2dは、絞り面像25が検出器絞り19bと一致しない限り、検出器絞り19aに最適なサイズがないことを示している。
【0062】
図2eは、絞り面像25が検出器絞り19aと一致する場合を示している。この場合、コリメートされたIR源から出射され、ひいては絞り面像25を通過した光のみが検出器に達する。同時に、コリメートされたIR源からの変調されたIR光は、センサ13aのいかなるピクセルに対してもケラレない。
【0063】
したがって、ケラレのない最適な照射と環境光の抑制を両立するために、絞り面像は、検出器絞りに対応していなければならない。逆に言えば、中間光学ユニットと検出器絞りのサイズは、検出器絞りの像が絞り面における入射ビームの断面に対応するように調整されていなければならない。
【0064】
入射ビーム面における検出器絞り開口部の像の面積A1と入射ビーム面におけるコリメートされた入射IRビームの断面の面積A2の比に対する、IR検出器により検出される総信号、有効信号および環境信号の依存性を
図3aにグラフ表示する。最適な設定の場合、検出器が飽和しないように留意しなければならない。したがって、総信号に対する有効信号の比が可能な限り高いと理想的である。しかしながら、0≦A1/A2≦1の範囲では、総信号に対する有効信号の比は、常に1に等しい。それでも、絶対的な有効信号が高ければ同時に有利である。したがって、
図3bは、A1/A2の関数としての、総信号に対する有効信号の比に有効信号を乗算したものを示している。総信号に対する有効信号の比に有効信号を乗算したものがA1/A2=1の場合に最大になることが明らかに見て取られ、ここで、A1/A2<1の比較的小さい比の場合の値の低下は、結像されるビーム断面よりも小さい検出器絞りに基づくシェーディングに起因し、A1/A2>1の比較的大きい比の場合の値の低下は、周囲からの迷光(環境信号)の寄与に起因する。
【0065】
本発明によれば、検出器絞り19bは、第1および第2の光学デバイスによって、コリメートされた入射ビーム内に位置する入射ビーム面に結像され、特に、入射ビーム面における検出器絞り19bの像の面積A1は、入射ビーム面におけるコリメートされた入射ビームの断面の面積と大きさが最大に等しい。それによって、環境光が検出器19に入射することを防ぐ。つまり、本発明によれば、検出器絞り19bの開口部は、入射面におけるコリメートされた入射ビームのビーム断面に合わせて調整される。検出器絞り19bは、絞り面に(つまり、有効ビーム制限素子8に)結像されることが理想である。つまり、この場合、絞り面と入射ビーム面とが一致する。逆に、このことは、
図2eに示されるように、ビーム制限素子8の開口部ひいては絞り面におけるコリメートされた入射ビームのビーム断面が検出器絞り19b上に結像されることを意味する(この場合、絞り面像25は、検出器絞り19bの面に位置する)。この場合、検出器絞り19b、第2の光学デバイス16、18および有効ビーム制限素子8は、入射ビームの所望の断面が検出器19に入るように、入射ビームの発散角とは無関係に互いに調整できる。入射ビーム面における検出器絞り19bの開口部の像の面積A1が、入射ビーム面におけるコリメートされた入射IRビーム26の断面の面積A2以下であるという条件と組み合わせることで、コリメートされた入射ビーム26のIR光のみが検出器絞り19bを通過することが保証される。
図2eに示される例では、A1=A2であり、入射ビーム面のIRビームのすべての光は、IRセンサ19aに達する。
【0066】
本発明によれば、入射ビーム面29と絞り面27の両方がコリメートされた入射ビーム26内に位置し、A1≦A2の条件が満たされる限り、入射ビーム面29と絞り面27とは必ずしも一致する必要はない。コリメートされた領域における入射ビーム26の断面は変化しないか、またはわずかに変化するだけなので、本発明によるデバイスの場合、検出器絞り19b上に結像されるビーム断面は常に、絞り面27におけるビーム断面と等しいかほぼ等しいものであり、その結果、第1の近似において、ビーム制限素子の位置で有効なビーム断面は、入射ビーム面27におけるビーム断面であると想定でき、検出器絞り19bのサイズを決定するために使用できる。したがって、ビーム制限素子8の位置は、測定の品質に実質的な影響を及ぼさずに、コリメートされた入射ビーム26内で比較的自由に選択できる。このことはまた、中間光学ユニット18の設計を簡単にする。しかしながら、同時に、たとえば、高い光強度の光源2(たとえば、量子カスケードレーザー)が使用され、シェーディングなしのIRセンサ19aが飽和し、それによって測定が使いものにならない場合に、検出器絞り19bの開口部とビーム制限との比の選択によって、所望のシェーディングを実現できる可能性もある。
【0067】
したがって、本発明によるデバイスは、発光効率を最大化し妨害効果を最小化すると共に、ビーム制限の種類と位置決めに関して高い自由度を提供する。
【0068】
中間光学ユニット18の設計には、特に、中間光学ユニット18の有効焦点距離fが関与する。この有効焦点距離は、以下のように、検出器絞り19bとIRセンサ19aとの間の距離dと、(第1の光学デバイスと第2の光学デバイスの対物レンズ16とによって作成される)入射ビーム面の像28と、第2の光学デバイスの対物レンズ16によって作成される中間像面17における試料の像との間の距離xに依存し(
図4):
【0069】
【数2】
その結果、一方では、試料位置15に配置された試料がIRセンサ19a上に結像され、他方では、コリメートされた入射ビーム内にある入射ビーム面が検出器絞り19b上に結像される。
【0070】
図5は、中間光学ユニット18がたとえばどのように実施され得るのかを示している。ここで、中間光学ユニット18は、オフナー([5])による1倍の対物レンズを含み、これは2つの球面ミラー18aおよび18bを介して中間像17の非点収差のない像18dを生成する。平面ミラー18cは、単にビーム偏向のために用いられる。オフナーによる1倍の対物レンズは、冷却された面検出器19のための十分なスペースが周囲にある顕微鏡内の位置で試料の像を生成するのに用いられる。IR検出器19は通常、デュワー瓶を用い液体窒素で冷却される。代替システムには、たとえば、センサ素子で必要な低温を生成するためのスターリング冷凍機がある。これらすべての検出器には、比較的大きなスペースが必要である。さらに、デュワー瓶の場合、液体窒素の注入口は外部からアクセスできなければならない。試料18dの像の他に、オフナーによる1倍の対物レンズは、入射ビーム面29の像18gも生成する。ビーム偏向のための平面ミラー18eとミラー18fを備えた下流の光学ユニットは、試料像18dの像が検出器19のセンサ19a上に生成されるのと同時に、入射ビーム面像18gの像が検出器19のコールドストップ19b上に生成されるように構成される。この目的のために、ミラー18fの焦点距離fはまず、上記の式
【0071】
【数3】
によって決定される。ミラー18fは軸外結像を生むので、第1に、偏向角を可能な限り小さくするのに有利であり、第2に、決定された焦点距離fを有する球面ミラーの代わりに焦点距離fおよびf’を有するトロイダルミラーを使用することは像品質にとって有利である。f’は、fと偏向角度から決定できる。このトロイダルミラーは、形状を容易に変更することもできる。ここで、検出器のセンサ上で最適な像品質をもたらす最適な表面形状は、光線追跡プログラム(たとえばZemax)によって決定できる。この場合、ミラー18fの表面は、理想的なトロイダル形状からわずかに逸脱し、トロイド様のミラーが形成される。ミラー18fからの光は、検出器の窓19dを通過し、検出器絞り19bにおいて入射ビーム面29の像を生成すると共に、検出器19のセンサ19a上に試料の像を生成する。
【0072】
文献リスト
[1]米国特許第7,440,095号明細書
[2]独国特許発明第102012200851号明細書
[3]米国特許第7,378,657号明細書
[4]Bruker Optik GmbH
“HYPERION Series:FTIR Microscopes”
[5]DE 2 230 002 C2
[6]DE 19 704 598 C1
【符号の説明】
【0073】
1 IR光源/干渉計
2 放射源
3 干渉計1の出射アパーチャ
4 干渉計1のミラー
5 干渉計1の可動ミラー
6 干渉計1の固定ミラー
7 干渉計1のビームスプリッタ
8 有効ビーム制限素子
9 ミラー
10a 透過光測定用ミラー
10b 反射光測定用ミラー
11a 透過光測定用ミラー
11b 反射光測定用ミラー
12a 透過測定用光学素子
12b 反射光測定用光学素子
13a 透過光測定用光学素子
13b ビームスプリッタ光学ユニット
14 集光器/更なる対物レンズ
15 試料位置
16 対物レンズ
17 第1の中間像面
18 中間光学ユニット
18a,18b オフナー対物レンズ/球面ミラー
18c 平面ミラー
18d 中間光学ユニット18における試料の像
18e 平面ミラー
18f ミラー
18g 中間光学ユニット18における入射ビーム面内の試料の像
19 IR検出器
19a IRセンサ
19b 検出器絞り
19c 検出器ハウジング
20 透過光測定用可視光源
20b 反射光測定用可視光源
21a 透過光測定用光学素子
21b 反射光測定用光学素子
22 ダイクロイックミラー
23 結像光学ユニット
24 CCDカメラ
25 絞り面の像
26 コリメートされた入力ビーム
27 絞り面
28 中間光学ユニット18の上流の入射ビーム面の像
29 入射ビーム面