(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】フラッシュ蒸発によって共結晶を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B01D 9/02 20060101AFI20220726BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20220726BHJP
B01D 1/20 20060101ALI20220726BHJP
A61J 3/02 20060101ALI20220726BHJP
C01B 13/14 20060101ALI20220726BHJP
C07C 55/07 20060101ALN20220726BHJP
C07C 51/43 20060101ALN20220726BHJP
C07C 55/12 20060101ALN20220726BHJP
C07C 205/06 20060101ALN20220726BHJP
C07C 201/16 20060101ALN20220726BHJP
C07D 473/12 20060101ALN20220726BHJP
C07D 487/22 20060101ALN20220726BHJP
C07D 257/02 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
B01D9/02 602F
B01D9/02 601K
B01D9/02 601G
B01D9/02 602C
B01D9/02 603G
B01D9/02 604
B01D9/02 605
B01D9/02 611Z
B01D9/02 612
B01D9/02 625A
B01D9/02 625B
B01D45/12
B01D1/20
A61J3/02 A
C01B13/14 Z
C07C55/07 CSP
C07C51/43
C07C55/12
C07C205/06
C07C201/16
C07D473/12
C07D487/22
C07D257/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020046260
(22)【出願日】2020-03-17
(62)【分割の表示】P 2017520006の分割
【原出願日】2015-07-06
【審査請求日】2020-03-24
(32)【優先日】2014-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】509228260
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
(73)【特許権者】
【識別番号】517000357
【氏名又は名称】イエスエル-アンスティテュ・フランコ-アルマン・ドゥ・ルシェルシュ・ドゥ・サン-ルイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・リッセ
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・シュピッツェール
(72)【発明者】
【氏名】フローラン・ペシナ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-086839(JP,A)
【文献】特表2012-519729(JP,A)
【文献】国際公開第2013/117671(WO,A1)
【文献】米国特許第04567031(US,A)
【文献】特開2004-082005(JP,A)
【文献】特開昭57-016662(JP,A)
【文献】特開昭59-196746(JP,A)
【文献】特開平01-194901(JP,A)
【文献】特開平07-332847(JP,A)
【文献】国際公開第2014/091226(WO,A1)
【文献】特開2011-256175(JP,A)
【文献】特表2011-528342(JP,A)
【文献】特開昭61-046238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/02
B01D 1/20
B01D 9/00-02
B01D 45/12
C01B 13/14
C07C 51/43
C07C 55/07
C07C 55/12
C07C 201/16
C07C 205/06
C07D 257/02
C07D 473/12
C07D 487/22
C08J 3/12
C09D 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合、イオン結合、積層型(π-π積層)の結合、又はファンデルワールス結合を通して結合される少なくとも2つの化合物の共結晶をフラッシュ蒸発によって調製するための方法であって、以下の連続的ステップを含む方法:
・少なくとも1つの有機、無機又は有機金属の化合物であって、これらの化合物が、水素結合、イオン結合、積層型(π-π積層)の結合を通して、又はファンデルワールス結合を通して結合され得る、化合物、及び少なくとも1つの溶媒を各々が含む、少なくとも2つの溶液の調製;
・
少なくとも2つの反応器において、溶媒の沸点より上の温度で、又は溶媒の混合物の沸点より上の温度で、3から300barの範囲の圧力の下での、溶液の加熱
であって、前記反応器の各々が、溶液の供給、3から300barの範囲であり得る少なくとも1つの加圧装置、及び少なくとも1つの加熱装置を含む、溶液の加熱;
・0.0001から2barの範囲の
圧力下で、同じ噴霧チャンバーにおける
、それらのジェットが互いに貫通するように、互いに相対的に配向された少なくとも
2つの一体型の加熱されたノズルによって、且つ30から150度の範囲の角度の下で各溶液の噴霧
であって、それにより溶媒のフラッシュ蒸発および共結晶の形成が生じる、溶液の噴霧;
・気体の形態における溶媒の分離
、及び平行に搭載され且つ連続的又は半連続的製造を可能にする2つの軸サイクロンにおける共結晶の回収であって、真空ポンプが、設備における永続的な流れを確保し、溶媒蒸気の抽出を可能にする、分離及び回収。
【請求項2】
・2から10個の化合物;又は
・2つの化合物;又は
・1/4、1/3、1/2、1/1、2/1、3/1、4/1の内から選択されるモル比の2つの化合物;又は
・3つの化合物;又は
・X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比X/Y/Zの3つの化合物;又は
・4つの化合物;又は
・W、X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比W/X/Y/Zの4つの化合物;又は
・5つの化合物;又は
・V、W、X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比V/W/X/Y/Zの5つの化合物、
を含む、少なくとも2つの溶液の調製を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
共結晶が、
・マイクロメートルのサイズである;又は
・500μm未満の少なくとも1つの寸法を有する;又は
・100μm未満の少なくとも寸法を有する;又は
・サブマイクロメートルのサイズである;又は
・100nmと1,000nmとの間に含まれる少なくとも1つの寸法を有する;又は
・ナノメートルサイズである;又は
・100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する;又は
・2から100nmの範囲のサイズである;又は
・5から90nmの範囲のサイズである;又は
・10から80nmの範囲のサイズである;又は
・50から300nmの範囲のサイズである;又は
・50から200nmの範囲のサイズである;又は
・50から120nmの範囲のサイズである;又は
・10から100nmの範囲のサイズである;又は
・60から100nmの範囲のサイズである;
請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの有機、無機又は有機金属の化合物、及び、化合物の内の1つの、少なくとも2つの溶媒、又は、少なくとも1つの溶媒、及び、少なくとも1つの共溶媒、又は、少なくとも1つの溶媒、及び、少なくとも1つの逆溶媒を含む、少なくとも2つの溶液の調製を含む、請求項1から
3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒の又は溶媒の混合物の沸点が、80℃未満である、又は60℃未満である、請求項1から
4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶液の加熱が、5から150barの範囲、又は10から60barの範囲の圧力下で実行される、請求項1から
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶液の加熱が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンの内から選択される不活性気体の圧力下で実行される、請求項1から
6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶液の噴霧が、0.001から2barの範囲の圧力で実行される、請求項1から
6の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
分散装置が、中空コーンノズル、中実コーンノズル、フラットジェットノズル、直進ジェットノズル
、及びそれらの関連するものの内から選択される、請求項1から
8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
分散装置が、中空コーンノズルである、請求項1から
9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
化合物が、エネルギー化合物、医薬品、植物医薬品、着色化合物、顔料、インク、塗料、金属酸化物の内から選択される、請求項1から
10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、アルカン;アルコール;チオール;アルデヒド;ケトン;エーテル;酸エステル;アミンの内から選択される、請求項1から
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
・少なくとも2つの反応器であって、各々が、
-少なくとも1つの溶媒の及び
結晶化される各化合物の溶液の供給;
-3から300barの範囲であり得る少なくとも1つの加圧装置;
-少なくとも1つの加熱装置
を含む、反応器;
・噴霧チャンバーであって、
-30から150度の範囲の角度の下での
、0.0001から2barの範囲の
圧力下での、
それらのジェットが互いに貫通するように、互いに相対的に配向され、各溶液を噴霧する2つの一体型の加熱されたノズル;
-少なくとも1つの溶媒分離装置;
を含む、噴霧チャンバー;
・化合物の共結晶を回収するための
平行に搭載された2つの軸サイクロン;
・設備における永続的な流れを確保し、システムの溶媒蒸気の抽出を可能にする真空ポンプ;
を含む、請求項1から
12の何れか一項に記載の方法の適用を可能にする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エネルギー材料、医薬品、植物医薬品、強誘電材料、非線形応答を備える材料又はバイオ電子材料の分野において共結晶を調製するために、瞬間蒸発又はフラッシュ蒸発によって少なくとも2つの化合物の共結晶を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共結晶は、分子スケール上で組み立てられた固体である。いくつかのタイプの分子間相互作用は、共結晶の調製を可能にし得る。これらの相互作用は、水素結合、イオン結合、積層型(π積層)の結合又はさらにはファンデルワールス結合であり得る。
【0003】
共結晶は一般的に、初期化合物よりも熱力学的に安定である。
【0004】
共結晶は一般的に、個別に用いられる対応化合物と比較して改善した特性を有する。
【0005】
そのため、医薬若しくは植物医薬物質の、エネルギー材料の、又は強誘電材料の共結晶は、改善された特性を有する。
【0006】
例えば、医薬又は植物医薬物質の共結晶は一般的に、より良い溶解度を有するので、より良い生物学的利用能を有する。それらはまた、特に湿った条件下で、改善された安定性を有する。
【0007】
また、エネルギー材料の共結晶は、改善された特性、低下した感度と組み合わされた特により良い反応性、それらの取り扱いの間に必須の特性を有する。
【0008】
しかしながら、従来技術の共結晶を調製するための方法は、共結晶の使用の発展を強く制限する欠点を有する。
【0009】
そのため、従来技術の方法は、連続的又は半連続的方法ではなく、バッチ式調製に関する方法又はバッチ法である。従って、従来技術のこれらの方法は、高い収率を可能にしない。
【0010】
従来技術の4つのタイプの方法は、共結晶を調製する可能性を与える。いくつかの化合物の濃縮溶液の遅い蒸発による結晶化、必要に応じて溶媒の存在下における固体状態における試薬のミリング、電気化学的に誘起された反応、及び純粋な化合物の溶液の溶媒の急速蒸発による制御された動力学を備える結晶化が知られている。
【0011】
しかしながら、これらの方法は、共結晶の連続的又は半連続的調製を可能にしない。
【0012】
さらに、既知の方法に従って調製された共結晶は、常に十分な品質を有しているわけではない。
【0013】
既知の方法に従って調製された共結晶の平均サイズは、常に規則的であるわけではなく、且つ、体系的にマイクロメートル、サブマイクロメートル又はナノメートルであるわけではない。さらに、既知の方法は、高い結晶化速度を達成する可能性を与えない。
【0014】
さらに、超臨界流体におけるナノ粒子の調製に関するRESS(Rapid Expansion of Supercritical Solutions)技術が知られている。この技術は、減少したスケールでのみ効果的であるので、工業レベルへ移すことはできない。さらに、超臨界流体における調製は、化学量論を制御する可能性を与えない。複合材料のナノ粒子を調製するための方法はまた、特許文献1から知られている。しかしながら、この方法は、共結晶の調製を可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、従来技術の共結晶を調製するための方法の問題への解決法を提供する共結晶を調製するための方法を有することに関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、本発明は、従来技術の方法の問題の全て又は一部への解決法を提供する可能性を与える、瞬間蒸発又はフラッシュ蒸発によって少なくとも2つの化合物の共結晶を調製するための方法を提供する。
【0018】
本発明は、水素結合、イオン結合、積層型(π-π積層)の結合又はファンデルワールス結合によって結合された少なくとも2つの化合物の共結晶を調製するための方法を提供し、以下の連続的ステップを含む:
・調製
・水素結合を通して、イオン結合によって、積層型(π-π積層)の結合によって、若しくはファンデルワールス結合によって結合され得る、少なくとも2つの有機、無機若しくは有機金属の化合物、及び、少なくとも1つの溶媒、を含む溶液の調製、又は、
・水素結合を通して、イオン結合によって、積層型(π-π積層)の結合によって、若しくはファンデルワールス結合によって結合され得る、少なくとも1つの有機、無機若しくは有機金属の化合物、及び、少なくとも1つの溶媒を各々が含む少なくとも2つの溶液の調製;
・溶媒の沸点よりも上の温度で、又は、溶媒の混合物の沸点よりも上の温度で、3から300barの範囲の圧力下での、溶液の又は複数の溶液の加熱;
・少なくとも1つの分散装置によって、且つ0.0001から2barの範囲の圧力で30から150度の範囲の角度の下で、噴霧チャンバーにおける溶液の又は複数の溶液の噴霧;
・気体の形態における溶媒の、又は複数の溶媒の分離。
【0019】
好ましくは、本発明は、以下の連続的ステップを含む方法に関する:
・水素結合、イオン結合、積層型(π-π積層)の結合を通して、若しくはファンデルワールス結合を通して結合され得る、少なくとも2つの有機、無機又は有機金属の化合物、及び、少なくとも1つの溶媒を含む溶液を調製するステップと;
・溶媒の沸点よりも上の温度で、又は、溶媒の混合物の沸点よりも上の温度で、3から300barの範囲の圧力下で、溶液を加熱するステップと;
・少なくとも1つの分散装置によって、且つ0.0001から2barの範囲の圧力で30から150度の範囲の角度の下で、噴霧チャンバーにおける溶液の噴霧と;
・気体の形態における溶媒の分離と。
【0020】
また、好ましくは、本発明は、以下の連続的ステップを含む方法に関する:
・水素結合、イオン結合を通して、積層型(π-π積層)の結合を通して、又はファンデルワールス結合を通して結合され得る、少なくとも1つの有機、無機又は有機金属の化合物、及び、少なくとも1つの溶媒を各々が含む少なくとも2つの溶液を調製するステップと;
・溶媒の沸点よりも上の温度で、又は溶媒の混合物の沸点よりも上の温度で、3から300barの範囲の圧力下で、溶液を加熱するステップと;
・少なくとも1つの分散装置によって、且つ0.0001から2barの範囲の圧力で30から150度の範囲の角度の下で、同じ噴霧チャンバーにおける溶液の噴霧と;
・気体の形態における溶媒の分離と。
【0021】
本発明による方法は有利には、連続的又は半連続的方法において適用される。好ましくは、それは連続的に適用される。
【0022】
有利には、本発明による方法は、以下を含む1つの又は少なくとも1つの溶液の調製を含む
・2から10個の化合物;又は
・2つの化合物;又は
・1/4、1/3、1/2、1/1、2/1、3/1、4/1の内から選択されるモル比の2つの化合物;又は
・3つの化合物;又は
・X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比X/Y/Zの3つの化合物;又は
・4つの化合物;又は
・W、X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比W/X/Y/Zの4つの化合物;又は
・5つの化合物;又は
・V、W、X、Y及びZが、同じである若しくは異なるかのいずれかであり、1、2、3若しくは4を表す、モル比V/W/X/Y/Zの5つの化合物。
【0023】
好ましくは、本発明による方法は、2つ、3つ又は4つの化合物を含む1つの又は少なくとも1つの溶液の調製を含む。
【0024】
また好ましくは、本発明による方法は、水素結合、イオン結合、積層型(π-π積層)の結合を通して又はファンデルワールス結合を通して結合され得る、少なくとも1つの有機、無機又は有機金属の化合物(これらの化合物は同じである又は異なるかのいずれかである)、及び、少なくとも1つの溶媒を各々が含む少なくとも2つの溶液の調製を含む。これらの溶液は、各々が独立して、これらの化合物の内のいくつかを含み得る。
【0025】
本発明による方法は、エネルギー化合物、医薬品、植物医薬品、着色化合物、顔料、インク、塗料、金属酸化物の内から選択される化合物の共結晶の調製に関して特に有利である。
【0026】
好ましくは、本発明による方法は、エネルギー化合物、医薬品、植物医薬品の内から選択される化合物の共結晶の調製に関して適用される。
【0027】
また有利には、本発明による方法は、共結晶を調製する可能性を与え、そのサイズはマイクロメートルである、又は500μm未満の少なくとも1つの寸法を有する、好ましくは100μm未満の少なくとも1つの寸法を有する。
【0028】
また有利には、本発明による方法は、共結晶を調製する可能性を与え、そのサイズはサブマイクロメートルである、又は100と1,000nmとの間に含まれる少なくとも1つの寸法を有する。
【0029】
好ましくは、本発明による方法は、共結晶を調製する可能性を与え、そのサイズはナノメートルであり、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する。
【0030】
より好ましくは、本発明によって調製された共結晶は、2から100nmの範囲;又は5から90nmの範囲;又は10から80nmの範囲;又は50から300nmの範囲;又は50から200nmの範囲;又は50から120nmの範囲;又は10から100nmの範囲;又は60から100nmの範囲のサイズを有する。
【0031】
有利には、本発明による方法は、少なくとも2つの有機、無機又は有機金属化合物及び少なくとも2つの溶媒を含む1つ又は少なくとも1つの溶液の調製を含む。
【0032】
また有利には、本発明による方法は、化合物の内の1つの、少なくとも1つの溶媒、及び化合物の内の1つの、少なくとも1つの共溶媒を含む1つの又は少なくとも1つの溶液の調製を含む。
【0033】
また有利には、本発明による方法は、化合物の内の1つの、少なくとも1つの溶媒、及び化合物の内の1つの、少なくとも1つの逆溶媒を含む1つの又は少なくとも1つの溶液の調製を含む。
【0034】
好ましくは、適用された溶媒は、80℃未満又は60℃未満の沸点を有する。溶媒として、言及は、アルカン、例えばペンタン(PE=36℃)又はヘキサン(PE=68℃);アルコール、例えばメタノール(PE=65℃)又はエタノール(PE=78~79℃);チオール、例えばエタン-チオール(PE=35℃);アルデヒド、例えばエタナール(PE=20℃)又はプロピオンアルデヒド(PE=48℃);ケトン、例えばアセトン(PE=56℃);エーテル、例えばメチル-tert-ブチルエーテル(PE=55℃)又はテトラヒドロフラン(PE=66℃);酸エステル、特にギ酸のエステル、例えばギ酸メチル(PE=32℃)、酢酸のエステル、例えば酢酸メチル(PE=57~58℃);アミン、例えばトリメチルアミン(PE=2~3℃)で為され得る。
【0035】
好ましくは、本発明による方法は、化合物の共結晶を回収するための最終ステップを含む。
【0036】
より好ましくは、化合物の共結晶の回収は、静電分離機、サイクロン、静電装置を含むサイクロンの内から選択される1つ又はいくつかの装置によって達成される。
【0037】
本発明による方法を提供するための条件は、特に共結晶化されることになる化合物に応じて、或いは、用いられる溶媒に応じて、かなり幅広く変わり得る。
【0038】
有利には、溶液の加熱は、5から150barの範囲、又は10から60barの範囲の圧力の下で実行される。いくつかの溶液の適用の間、各溶液のそれぞれの加熱は、各溶液に関して同じであり得る又は異なり得る、5から150barの範囲又は10から60barの範囲の圧力の下で実行され得る。
【0039】
また有利には、溶液の加熱は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンの内から選択される不活性気体の圧力下で実行される。
【0040】
溶液の噴霧の間、圧力は好ましくは、0.001と2barとの間に含まれる。
【0041】
溶液の噴霧の間に適用される分散装置は有利には、中空コーンノズル、中実コーンノズル、フラットジェットノズル、直進ジェットノズル、空気圧噴霧器及びそれらの関連するものの内から選択される。中空コーンノズルが特に有利である。
【0042】
一般的に、噴霧は、かなり幅広く変わり得る角度の下で実行され得る。そのため、噴霧角度は180度に近い、例えば170度又はさらには150度又は120度であり得る。言及がまた、60から80度の範囲の噴霧角度の範囲に為され得る。
【0043】
これらの条件はまた、少なくとも2つの溶液の噴霧の間で適用する。
【0044】
本発明はまた、それが少なくとも2つの溶液を適用するときに、本方法の適用を可能にする装置に関する。そのため、本発明は、以下を含む、水素結合、イオン結合を通して、積層型(π-π積層)の結合を通して、又はファンデルワールス結合を通して結合され得る、少なくとも2つの化合物のナノ粒子の結晶化に関する装置を提供する。
・各々が、
-少なくとも1つの溶媒の、及び各化合物の溶液の供給;
-3から300barの範囲であり得る少なくとも1つの加圧装置;
-少なくとも1つの加熱装置;
を含む少なくとも2つの反応器と、
・噴霧チャンバーであって、
-30から150度の範囲の角度の下で、且つ0.0001から2barの範囲の圧力で、溶液を分散させるための少なくとも1つの装置;
-溶媒を分離するための少なくとも1つの装置
を含む、噴霧チャンバーと、
・静電分離機、サイクロン、静電装置を含むサイクロンの内から選択される、化合物のナノ粒子を回収するための1つ又は複数の装置と。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明による装置の実施形態は、
図1によって示される。装置は、4つの主要部分で構成される:結晶化されることになる物質を含む流体を強い圧力下で保管するための2つのタンクのセット(1及び1’)、2つの一体型の加熱されたノズル(3)を含む噴霧チャンバー、平行に搭載され且つ半連続的製造を可能にする2つの軸サイクロン(5)、真空ポンプ(6)。
【0047】
溶質を備える溶媒を含む5Lのタンク(1及び1’)において、過度の圧力の圧縮窒素が適用される。第1の段階では、この過度の圧力は、酸素を置換する可能性を与え、溶媒の蒸発を防止する。このシステムにおける体積流量は、過度の圧力の圧縮窒素によって誘起される。
【0048】
15μmのフィルター(2及び2’)は、全ての可溶性不純物を初期溶液内にはじく。
【0049】
各々が電気加熱システムを備える2つの中空コーンノズル(3)は、噴霧チャンバーにおいて並んで設置される。圧力、温度及び粒子の粒径パラメーターは制御される。接続のタイプは、ノズルの速い変更を可能にする。電気加熱の温度は、ユーザーによって選択され、且つ自動的に調節される。ノズルは、それらのジェットが互いに貫通するように、互いに相対的に配向される。
【0050】
溶媒のタンク又はパン(4)は、タンク(1)と同じ溶媒によって満たされ、使用後に導管及びノズルをすすぐために用いられる。また、溶媒のタンク又はパン(4’)は、タンク(1’)と同じ溶媒によって満たされる。
【0051】
軸サイクロン(5)は、平行に設置される。動作の間、1つのサイクロンのみが動作している;第2のサイクロンは、待機状況である。遠心力によって、固体粒子は、サイクロン内部に堆積され、気体成分はディップチューブを通ってサイクロンを離れる。サイクロンを空にするために、第2のサイクロンへ向かってつながる回路が最初に開けられ、その後、第1のサイクロンへつながる第1の回路を閉じる。
【0052】
真空ポンプ(6)は、設備における永続的な流れを確保し、システムの溶媒蒸気の抽出を可能にする。
【0053】
本発明の異なる態様は、以下の実施例によって示される。
【0054】
実施例1:溶液からの共結晶の調製
本発明による共結晶は、カフェイン、及び、シュウ酸又はグルタル酸から調製された。本発明による他の共結晶は、2,4,6,8,10,12-ヘキサニトロ-2,4,6,8,10,12-ヘキサアザイソ-ウルチタン(CL-20)から、及び、2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)又は1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラザシクロオクタン(HMX)から調製された。
【0055】
比較例は、2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)から、及び1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラザシクロオクタン(HMX)から調製された。
【0056】
共結晶は、過熱され圧縮される、共結晶化されることになる化合物の溶液の瞬間蒸発に関する方法によって国際公開第2013/117671号において記載される装置によって連続的方法において調製された。本方法の間、溶液は、中空コーンノズルによる噴霧時に圧力における非常に強い降下を受ける。
【0057】
共結晶化されることになる化合物は、沸点が一般的に60℃未満である溶媒において溶解する。化合物及び溶媒並びに適用される反応パラメーターは、表1に示される。
【0058】
溶液は圧縮され(40から60bar)、その後、過熱された中空コーンノズルによって噴霧チャンバーにおいて噴霧される。
【0059】
噴霧チャンバーにおける圧力(5mbar)は、真空ポンプ(35m3/h)によって得られる。
【0060】
突然の圧力降下は、過熱された溶液を不安定にさせる熱力学的平衡の変位を引き起こす。溶媒は瞬時に蒸発して、共結晶が形成する。
【0061】
圧力における強い降下は、形成される共結晶を保護する可能性を与える約200℃へ低下される温度の強い降下によって達成される。
【0062】
形成される共結晶の連続的分離は、平行に搭載された軸サイクロンによって達成される。
【0063】
【0064】
生成物は、形成された共結晶を変更させないために、室温で且つ大気圧でAFM顕微鏡(原子間力顕微鏡)によって特徴づけられた。
【0065】
粒子の平均粒子サイズ分布が評価された。カフェイン/グルタル酸共結晶(1/1)の平均サイズは111nmである。HMX/CL20共結晶(1/2)の平均サイズは59nmである。
【0066】
X線回折スペクトルは、共結晶を特徴づけるために達成された。
【0067】
得られたスペクトルは、用いられた初期生成物のスペクトルと比較された。共結晶のスペクトルは、形成された共結晶に関する初期生成物のスペクトルとは異なる。それらは、Cambridge構造データバンクのスペクトルに、又は文献において利用可能なスペクトルに対応する。
【0068】
TNT/HMX複合物(1/1及び1/2)に関して、X線回折スペクトルは常に、単独のTNTの特性線、及びHMXの特定の線を有する。HMXの特定の線の欠如は、HMXがアモルファス形態において存在することを示す。従って、TNT/HMX複合物(1/1及び1/2)はTNT結晶の、及びアモルファスHMXの混合物である。
【0069】
共結晶の熱特性は、示唆走査熱量測定(DSC)によって調査された。
【0070】
TNT/CL20共結晶(1/1)の加熱(5℃/分)は、80℃での純粋なTNTの特徴的な融解シグナルの欠如を示し、TNTはCL20を備える共結晶の格子内である。TNT/CL20共結晶(1/1)に関して測定された特徴的な融解温度は135℃である。
【0071】
DSC分析の第1の段階の後、温度は低下され、その後、再び増加される。第2の加熱の間、TNTの熱的なシグナルは再び80℃で存在し、純粋なTNTの結晶化が後に続く第1の加熱の間に加熱の作用下での共結晶の解離を確認する。
【0072】
カフェイン/シュウ酸共結晶(2/1)の加熱は、純粋なカフェイン及びシュウ酸、両方の化合物の沸点の中間である199℃での熱的シグナルの存在を示す。
【0073】
加熱の継続は、共結晶の解離につながる。次に、第2の加熱がその後に続く冷却は、純粋なカフェインの熱的シグナルの存在を示す。
【0074】
比較例のTNT/HMX複合物(1/1及び1/2)に関して、TNTの熱的シグナルは、第1の加熱ですぐに存在する。次に、このシグナルは、第2の加熱の間に変更されない。従って、TNT/HMX複合物(1/1及び1/2)は、TNT及びHMX粒子の単純な物理的混合物である。TNT及びHMX分子は、共結晶を与える分子間結合を形成できない。
【0075】
実施例2:2つの溶液から共結晶を調製
本発明による共結晶は、
図1の装置によってHMX及びCL20から連続的に調製された。
【0076】
250mlのアセトン(Sigma Aldrich製CHROMASOLV(登録商標) HPLC 品質≧99.9%)において、事前に乾燥された5gのCL20が溶解される。さらに、250mlのアセトン(Sigma Aldrich製CHROMASOLV(登録商標) HPLC 品質≧99.9%)において、事前に乾燥された1.35gのHMXが、溶解される。
【0077】
各溶液は、攪拌され、その後、10秒間超音波で超音波処理される。次に、各溶液は、1Lのタンクに注がれる:タンク1におけるCL20を備えるアセトン溶液、及びタンク1’におけるHMXを備えるアセトン溶液。各タンク1及び1’へ、番号2及び2’によって示される、テクニカルアセトンのタンクが平行に接続される。全てのタンクは閉じられ、加圧窒素を注入することによって40barで加圧される。圧力は、ノズルの前で測定され、反応に沿って全て制御される。
【0078】
真空は、ポンプを開始することによってシステム全体において適用される。一旦、真空が約0.1mbarで安定すると、2つのサイクロンの内の1つが、システムから隔離される。
【0079】
タンク2及び2’を接続するバルブが開かれ、加熱システムが開始され、ノズルに関して170℃へ、サイクロンに関して80℃へ調節される。一旦、温度が安定すると、用いられるサイクロンは隔離され、他の隔離されたサイクロンが開かれる。その後、タンク1及び1’の溶液が噴霧される。
【0080】
20分後、サイクロンは再び入れ替えられ(reversed)、その後、ノズルを供給するバルブは、テクニカルアセトンのタンク2及び2’上へ切り替えられる。加熱システムはその後停止される。
【0081】
冷却の間、共結晶CL20-HMXは、溶液1及び1’が噴霧されたときに用いられていたサイクロンにおいて回収される。一旦、温度が50℃より下になると、テクニカルアセトンの流入が切断され、真空ポンプは、圧力が再び上昇することを可能にした後で停止される。その結果、いくらかのCL20-HMX 2:1共結晶が、複数のノズルによるフラッシュ蒸発又は瞬間蒸発によって溶液において2.67重量%でインサイチュにて形成される。
【0082】
生成物は、形成された共結晶を変更しないために、室温で且つ大気圧でAFM顕微鏡(原子間力顕微鏡)によって特徴づけられた。
【0083】
粒子の平均粒子サイズ分布が評価された。CL20-HMX(2/1)共結晶の平均サイズは60nmである。X線回折スペクトルは、共結晶を特徴づけるために作成された。得られたスペクトルは、用いられた初期生成物のスペクトルと、及び、実施例1において得られる共結晶のものと、比較された。スペクトルは、文献と比較されようと、又は、実施例1において得られるCL20-HMX(2/1)共結晶と比較されようと、CL20-HMX(2/1)共結晶の特性線を全て有する。スペクトルはまた、CL20のベータ相の特性線を有する。