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特許7111805拡張可能なプリンタのための一体型インクジェットモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】拡張可能なプリンタのための一体型インクジェットモジュール
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220726BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220726BHJP
   B41J 25/304 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/01 307
B41J25/304 U
B41J2/165 207
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020514700
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018075109
(87)【国際公開番号】W WO2019076560
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】62/574,704
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】プロファカ,マーク
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157989(JP,A)
【文献】特開2012-157988(JP,A)
【文献】特開2012-183766(JP,A)
【文献】特表2016-538157(JP,A)
【文献】特表2013-539722(JP,A)
【文献】特開2005-254797(JP,A)
【文献】特開2011-230374(JP,A)
【文献】特開2010-167611(JP,A)
【文献】特開2009-132026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0237443(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138272(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0295872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 25/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型インクジェットモジュールにおいて、
第1及び第2の対向するエンドブラケットと、
前記エンドブラケットの間に非対称に位置付けられており、細長いプリントヘッドを備える単一のプリントモジュールと、
記プリントヘッドを長手方向に拭くために構成されたワイパキャリッジと、
前記プリントモジュールを支持し、前記第1のエンドブラケットと前記第2のエンドブラケットとの間に取り付けられており、前記第1及び第2のエンドブラケットに対して摺動可能に持ち上げ可能であるプリントモジュールキャリアと
を備え、
前記ワイパキャリッジが、待機位置において、前記プリントモジュールの第1の端部と前記第1のエンドブラケットとの間に位置付けられており、
前記プリントモジュールキャリアが、前記待機位置において前記ワイパキャリッジの上に橋を架ける取付けアームを備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記プリントモジュールキャリアを昇降させるためのリフト機構
をさらに備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記リフト機構が、ラックアンドピニオン機構を備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記プリントモジュールキャリアが、前記第1のエンドブラケットの第1のガイドレールと前記第2のエンドブラケットの第2のガイドレールとの間に摺動可能に係合される
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項5】
請求項に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記プリントモジュールキャリアが、前記プリントモジュールを受け入れるためのスリーブと、それぞれのガイドレールと係合する取付けブラケットの対とを備え、
第1の取付けブラケットが、前記ワイパキャリッジの上に橋を架ける前記取付けアームを介して前記スリーブに接続される
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記取付けブラケットが、前記第1及び第2のガイドレールと係合するための1つ又は複数のローラベアリングを備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項7】
請求項1に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記プリントモジュールの1つの長手方向縁に沿って延びるキャッパ
をさらに備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記キャッパが、前記プリントヘッドの方へ且つ前記プリントヘッドから離れる方に往復移動可能である
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項9】
請求項1に記載のインクジェットモジュールにおいて、
前記第1のエンドブラケットと前記第2のエンドブラケットとの間に接続されたプラテン又はスピトゥーン構造
をさらに備える
ことを特徴とするインクジェットモジュール。
【請求項10】
プリントエンジンにおいて、
請求項1に記載の1つ又は複数のインクジェットモジュールを有するプリントシャーシ
を備える
ことを特徴とするプリントエンジン。
【請求項11】
請求項10に記載のプリントエンジンにおいて、
前記インクジェットモジュールが、媒体送り方向に沿って整列する
ことを特徴とするプリントエンジン。
【請求項12】
請求項10に記載のプリントエンジンにおいて、
各インクジェットモジュールのそれぞれのプリントモジュールが、前記プリントシャーシに対して独立して持ち上げ可能である
ことを特徴とするプリントエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルインクジェットプレスのためのプリントエンジン及び一体型インクジェットモジュールに関する。これは主に、ショートランプリントジョブに適した低コストのデジタルインクジェットプレスにインクジェットモジュールのアレイを一体化するために開発された。
【背景技術】
【0002】
Memjet(登録商標)技術を採用したインクジェットプリンタは、デスクトッププリンタ、デジタルインクジェットプレス、及びワイドフォーマットプリンタを含む多くの異なる印刷フォーマットで市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは、典型的には、ユーザが交換可能な1つ又は複数の固定式インクジェットプリントヘッドカートリッジを含む。たとえば、デスクトップラベルプリンタは、単一のユーザが交換可能な多色プリントヘッドカートリッジを含み、高速ラベルプリンタは、媒体送り方向に沿って整列された複数のユーザが交換可能なモノクロプリントヘッドカートリッジを含み、ワイドフォーマットプリンタは、幅広いフォーマットのページ幅全体に広がるように千鳥形オーバーラップ構成における複数のユーザが交換可能なプリントヘッドカートリッジを含む。
【0003】
その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2017年5月1日に出願された米国特許出願第15/582,998号明細書は、プリントモジュールのN×Mの2次元アレイを備える商用のページワイド印刷システムを記載している。モジュール式のコスト効率の高いキット形態において、N×Mアレイにおけるプリントヘッドの寸法及び数を選択する柔軟性をOEM顧客に与えることは、オフセット印刷システムが伝統的に提供してきた広範囲の商用デジタル印刷市場へのアクセスを可能にする。
【0004】
それにもかかわらず、拡張可能なページワイドアレイへのモジュールの一体化を簡単にすることがさらに望ましい。一体化を簡単にすることにより、開発時間は短くなり、デジタルインクジェットプリントプレスの商用化を望むOEMのコストは低下する。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、
第1及び第2の対向するエンドブラケットと、
エンドブラケットの間に非対称に位置付けられた単一のプリントモジュールと、
プリントモジュールのインクジェットプリントヘッドを維持するためのメンテナンスモジュールであって、メンテナンスモジュールがエンドブラケットの間に固定的に取り付けられたL字形フレームを備え、L字形フレームが、プリントモジュールの一方側に沿って延びる長い脚部と、プリントモジュールの第1の端部と第1のエンドブラケットとの間に位置付けられた短い脚部とを有する、メンテナンスモジュールと
を備え、
プリントモジュールが、エンドブラケットに対して摺動可能に持ち上げ可能であり、
長い脚部が、プリントヘッドに蓋をするために横方向に伸長可能なキャッパを含み、
短い脚部が、プリントヘッドを拭くために長手方向に移動可能なワイパキャリッジを含む、
拡張可能なインクジェットプリンタのための一体型インクジェットモジュールが提供される。
【0006】
好ましくは、プリントモジュールのプリントヘッドは、印刷位置とメンテナンス位置との間でそれぞれL字形フレームによって画定された空間を通って前進及び後退する。
【0007】
好ましくは、L字形フレームは、プリントモジュールの長手方向の一方側及び第1の端部のまわりのみ巻かれる。
【0008】
好ましくは、インクジェットモジュールは、
プリントモジュールキャリアと、
プリントモジュールキャリアを昇降させるためのリフト機構と
をさらに備える。
【0009】
好ましくは、プリントモジュールキャリアは、第1のエンドブラケットの第1のガイドレールと第2のエンドブラケットの第2のガイドレールとの間に摺動可能に係合される。
【0010】
好ましくは、プリントモジュールキャリアは、プリントモジュールを受け入れるためのスリーブと、スリーブに接続された取付けブラケットの対とを備え、各取付けブラケットは、それぞれのガイドレールと係合される。
【0011】
好ましくは、取付けブラケットは、第1及び第2のガイドレールと係合するための1つ又は複数のローラベアリングを備える。
【0012】
好ましくは、第1の取付けブラケットは、ワイパキャリッジの上に橋を架ける取付けアームを介してスリーブに接続される。
【0013】
好ましくは、リフト機構は、プリントモジュールキャリアのそれぞれのラックと係合する1つ又は複数のピニオンを備える。
【0014】
好ましくは、インクジェットモジュールは、インクジェットモジュールの後面にケーブル支持体をさらに備える。
【0015】
いくつかの実施形態において、インクジェットモジュールは、第1のエンドブラケットと第2のエンドブラケットとの間に接続されたプラテン又はスピトゥーン構造をさらに備える。
【0016】
さらなる態様において、上記のような1つ又は複数のインクジェットモジュールを備えるプリントエンジンが提供される。
【0017】
第2の態様において、
第1及び第2の対向するエンドブラケットと、
エンドブラケットの間に非対称に位置付けられており、細長いプリントヘッドを備える単一のプリントモジュールと、
プリントモジュールの第1の端部と第1のエンドブラケットとの間に位置付けられて、プリントヘッドを長手方向に拭くために構成されたワイパキャリッジと、
プリントモジュールを支持し、第1のエンドブラケットと第2のエンドブラケットとの間に取り付けられ、ワイパキャリッジの上に橋を架ける取付けアームを備えるプリントモジュールキャリアと
を備え、
プリントモジュールキャリアが、第1及び第2のエンドブラケットに対して摺動可能に持ち上げ可能である、
一体型インクジェットモジュールが提供される。
【0018】
好ましくは、インクジェットモジュールは、プリントモジュールキャリアを昇降させるためのリフト機構を備える。
【0019】
好ましくは、リフト機構は、ラックアンドピニオン機構を備える。
【0020】
好ましくは、プリントモジュールキャリアは、第1のエンドブラケットの第1のガイドレールと第2のエンドブラケットの第2のガイドレールとの間に摺動可能に係合される。
【0021】
好ましくは、取付けブラケットは、第1及び第2のガイドレールと係合するための1つ又は複数のローラベアリングを備える。
【0022】
好ましくは、プリントモジュールキャリアは、プリントモジュールを受け入れるためのスリーブと、それぞれのガイドレールと係合する取付けブラケットの対とを備え、第1の取付けブラケットは、ワイパキャリッジの上に橋を架ける取付けアームを介してスリーブに接続される。
【0023】
好ましくは、インクジェットモジュールは、プリントモジュールの1つの長手方向縁に沿って延びるキャッパをさらに備える。
【0024】
好ましくは、キャッパは、プリントヘッドの方へ且つプリントヘッドから離れる方に往復移動可能である。
【0025】
第3の態様において、
第1及び第2の対向するエンドブラケットと、
エンドブラケットに対してプリントモジュールを昇降させるために、エンドブラケットの間に摺動可能に取り付けられ、前面と、後面と、プリントモジュールの下面に位置付けられた細長いプリントヘッドとを有するプリントモジュールと、
プリントモジュールに接続された複数の横方向に配置されたケーブルを備えるケーブルアレイと
を備え、
ケーブルアレイのケーブルが、プリントモジュールの後面と平行な共通平面において延び、外側ケーブルが内側ケーブルよりも長いような湾曲経路に従う、
インクジェットモジュールが提供される。
【0026】
好ましくは、インクジェットモジュールは、ケーブルアレイの少なくとも一部を支持するためのケーブルポケットを備える。
【0027】
好ましくは、ケーブルポケットは、エンドブラケットの間に固定的に取り付けられ、プリントモジュールの後面と平行なバックプレートを備える。
【0028】
好ましくは、複数のケーブルは、電気ケーブル及び流体ラインの1つ又は複数を備える。
【0029】
好ましくは、ケーブルアレイは、プリントモジュールの下降位置に対応する第1の構成と上昇位置に対応する第2の構成との間で曲がる。
【0030】
好ましくは、ケーブルアレイは、プリントモジュールの上部から、第2のエンドブラケットに向かい、屈曲部のまわりでインクジェットモジュールの下部に向かい、その後、第1のエンドブラケットに向かう経路に従う。
【0031】
さらなる態様において、その上に取り付けられた上記のような複数のインクジェットモジュールを有するプリントシャーシを備えるプリントエンジンが提供される。
【0032】
好ましくは、プリントシャーシは、インクジェットモジュールのケーブルアレイを受け入れるためにその一方側に沿って延びるケーブルトレイを備える。
【0033】
好ましくは、ケーブルトレイは、媒体送り方向と平行に延びる。
【0034】
好ましくは、プリントモジュールは、媒体送り方向に沿って互いに整列する。
【0035】
好ましくは、プリントエンジンには、オーバーヘッドケーブルがない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドから印刷することができる何れかの印刷流体を意味すると解釈される。インクは、着色剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来の染料ベース又は顔料ベースのインク、赤外線インク、定着剤(たとえば、プレコート剤及び仕上げ剤)、3D印刷流体などを含むことができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「取り付けられた」という用語は、直接取付け及び介在部品を介した間接取付けの両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
ここで、添付図面を参照して本発明の実施形態を単に例として記載する。
【0039】
図1図1は、閉位置にある、複数のインクジェットモジュールを有するプリントエンジンの斜視図である。
図2図2は、開位置にある、図1に示されたプリントエンジンの斜視図である。
図3図3は、印刷位置にある、インクジェットモジュールの正面斜視図である。
図4図4は、メンテナンス位置にある、図3に示された正面斜視図インクジェットモジュールである。
図5図5は、インクジェットモジュールの背面斜視図であり、プリントモジュールキャリア及びケーブルポケットが取り外されている。
図6図6は、正面斜視図インクジェットモジュールであり、プリントモジュールキャリアが取り外されている。
図7図7は、プリントモジュールを保持するプリントモジュールキャリアの正面斜視図である。
図8図8は、図7に示されたプリントモジュールキャリアの背面斜視図である。
図9図9は、インクジェットモジュールの正面斜視図であり、プリントモジュールがそのスリーブから持ち上げられて、取り外されている。
図10図10は、ケーブルアレイを有するインクジェットモジュールの背面斜視図である。
図11図11は、ケーブルトレイを示すプリントエンジンの斜視図である。
図12図12は、プリントヘッドを拭いている間の、インクジェットモジュールの底面斜視図である。
図13図13は、プリントヘッドに蓋をしている間の、インクジェットモジュールの底面斜視図である。
図14図14は、プリントヘッドを拭いている間の、メンテナンスモジュールの斜視図である。
図15図15は、プリントヘッドに蓋をしている間の、メンテナンスモジュールの斜視図である。
図16図16は、プリントモジュールの斜視図である。
図17図17は、プリントモジュールの斜視図であり、プリントヘッドカートリッジが切り離されている。
図18図18は、プリントモジュールのインク入口モジュールを示す。
図19図19は、印刷位置にある、代替的なインクジェットモジュールを示す。
図20図20は、メンテナンス位置にある、代替的なインクジェットモジュールを示す。
図21図21は、プリントモジュールの上昇位置及び下降位置におけるケーブルアレイ構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
プリントエンジン
図1及び2を参照すると、媒体ウェブ上へのフルカラー印刷のためのプリントエンジン1が示されている。プリントエンジン1は、個別の顧客の要求を満たすデジタルインクジェットプレスへのOEMカスタマイゼーションのために設計される。プリントエンジン1は、対向する支持シャーシ側板14の間に回転可能に取り付けられたガイドローラ12のセットを有する媒体支持シャーシ10を備える。ガイドローラ12は、印刷中、媒体ウェブに張力をかけるのに最適である、湾曲した(凸状の)媒体送り経路を画定するように配置される。従来のオフセット印刷機(図示せず)で典型的に使用されるような媒体送り機構は、ガイドローラ12のセットの下に位置付けられた入力ローラ15の方へ、その後、適切な張力の下でプリントエンジン1から離れるように媒体ウェブを送るために使用されてもよい。
【0041】
プリントシャーシ50は、媒体支持シャーシ10上に取り付けられ、第1のシャフト54及び第2のシャフト56を介して両端部で接続された対向するプリントシャーシ側板52の対を備える。第1のシャフト54は、媒体支持シャーシ10に対してプリントシャーシ50を旋回させるための旋回軸を画定する。この取付け方法により、プリントシャーシ50が閉位置(図1)と開位置(図2)との間で旋回することが可能になる。開位置では、ガイドローラ12及び媒体ウェブに容易にアクセスでき、媒体ウェブをプリントエンジン1に通すことができる、又は、必要に応じて媒体ウェブにアクセスすることができる。プリントシャーシ50の旋回は、媒体支持シャーシ10をプリントシャーシの第2のシャフト56に連結するピストン機構18の対によって作動する。ピストン機構18の作動によってピストンロッド19が伸び、プリントシャーシ50は媒体支持シャーシ10から離れる図2に示される開位置に旋回する。
【0042】
プリントシャーシ50は、プリントシャーシ側板52の間に固定的に取り付けられて、プリントエンジン1の長さに沿って整列する4つの一体型インクジェットモジュール100を支持する。インクジェットモジュール100は、ガイドローラ12によって画定される湾曲した媒体送り経路に対して半径方向に取り付けられる。各インクジェットモジュール100は、印刷し、コンパクトな完全に一体化されたアセンブリの固定されたページワイドプリントヘッドに蓋をし、保守するために必要なすべての構成要素を備える自己完結型ユニットである。図1に示されるように、インクジェットモジュール100は、媒体送り経路に沿って積み重ねられて、4色(シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のそれぞれのために拡張可能なページワイドアレイを提供する。しかしながら、より少ない又はより多い数のインクジェットモジュール100がプリントエンジン1に採用されてもよい(たとえば、追加のスポットカラーインクジェットモジュール)ことが理解されるであろう。さらにまた、プリントエンジン1は、インクジェットモジュール100の代替的な積層構成(たとえば、より広い媒体送り経路にわたる千鳥形の重なり合う構成)を採用してもよい。よって、インクジェットモジュール100の一体型設計により、汎用的で拡張可能なプリントエンジンの容易な構造が可能になり、N×Mアレイにおいて任意の数のインクジェットモジュールを有する所望のプリントエンジンを提供することができる。
【0043】
インクジェットモジュール100
図3~18は、インクジェットモジュール100並びにそのさまざまな構成要素を詳細に示す。最初に図3及び4を参照すると、各インクジェットモジュール100は、第1のエンドブラケット102と、対向する第2のエンドブラケット104とを備え、それらは、インクジェットモジュールの主要構成要素である、インクジェットプリントヘッド216を有するプリントモジュール200、及び、インクジェットプリントヘッド216を維持するためのメンテナンスモジュール115を支持して収容する。
【0044】
メンテナンスモジュール115は、エンドブラケット102の間に固定的に取り付けられるL字形フレーム120を有する。L字形フレーム120は、それぞれの第1のエンドブラケット102及び第2のエンドブラケット104に各端部で固定される長い脚部117を備え、それらは一緒に、インクジェットモジュール100に構造的剛性及び支持を提供する(図5参照)。長い脚部117は、プリントモジュール200の一方側に沿って長手方向に延び、一方、L字形フレームの短い脚部119は、プリントモジュールの第1の端部201と第1のエンドブラケット102との間に位置付けられるように、長い脚部から横方向に延びる。よって、プリントモジュール200は、エンドブラケットの間に非対称に位置付けられ、第1のエンドブラケット102より第2のエンドブラケット104に比較的近い。
【0045】
プリントモジュール200は、プリントヘッド216のメンテナンスを可能にするように、エンドブラケット102及び104、並びにL字形フレーム120に対して摺動可能に持ち上げ可能である。印刷位置(図3)では、プリントモジュール200は、L字形フレーム120によって画定される空間を通って延びるように降ろされ、メンテナンス位置(図4)では、プリントモジュールは、プリントヘッドのキャッピング又は拭き取りを可能にするように持ち上げられている。メンテナンスモジュール115の長い脚部117は、プリントモジュール200の方へ且つプリントモジュール200から離れる方に横方向に伸長可能であるキャッパ130を収容し、一方、短い脚部119は、プリントヘッドを拭くためにプリントモジュールに沿って長手方向に移動可能であるワイパキャリッジ122を収容する。メンテナンスモジュール115のキャッピング及び拭き取り作業は、以下でさらに詳細に記載される。
【0046】
図7~9を参照すると、プリントモジュール200は、プリントモジュールキャリア202と着脱可能に係合され、次に、プリントモジュールキャリアの摺動持ち上げ移動のためにエンドブラケット102及び104と摺動可能に係合される。プリントモジュールキャリア202は、その基部にプリントモジュール200を基準設定するためのプリントヘッドネスト212を有するスリーブ207と、プリントヘッド216を交換するために上昇位置(図9)でプリントモジュールを係止するためのラッチ機構208とを備える。第1のスライダブラケット203A及び第2のスライダブラケット203Bの対は、スリーブ207の両端部に接続され、それぞれ、第1のエンドブラケット102及び第2のエンドブラケット104(図4)の相補的なガイドレール105と摺動可能に係合される。第1のスライダブラケット203Aは、スリーブの第1の側面から外向きに延びる取付けアーム210を介してスリーブ207に取り付けられ、一方、第2のスライダブラケット203Bは、スリーブの対向する第2の側面に直接取り付けられる。取付けアーム210は、プリントモジュール200の一端で、その待機位置のワイパキャリッジ122の上に橋を架ける(図3)。
【0047】
各スライダブラケット203A及び203Bは、そのそれぞれのガイドレール105に沿った摺動移動を容易にするために、その上に回転可能に取り付けられた複数の軸受213を有する。プリントモジュールキャリア202の移動は、ラックアンドピニオン機構の形態のリフト機構によってもたらされる。スライダブラケット203A及び203Bはそれぞれ、インクジェットモジュール100の相補的なピニオン106との歯状の係合のためのラック214を備える。ピニオン106は、第1のエンドブラケット102と第2のエンドブラケット104との間で延びる共通のピニオンシャフト108の各端部を中心に共に取り付けられる。ピニオンシャフト108は、リフトモータ109に作動可能に接続され、モータの作動により、ピニオンシャフトが回転し、ラックアンドピニオン係合を介してプリントモジュールキャリア202を持ち上げる又は引き下げる。リフトモータ109は、持ち上げ及び引下げ作用について可逆的であってもよく、或いは、ピニオンシャフト108は、一方向クラッチを介して取り付けられてもよく、そして、重力の下で下げられてもよい。
【0048】
図10及び11を参照すると、各インクジェットモジュール100は、モジュールの後面に、ポケット110の形態のケーブル支持体を含む。ポケット110は、インクジェットモジュール100の後面と平行な平面内に横方向に配置され、プリントモジュール200の上部に接続される電気ケーブル及び/又は流体ラインのアレイ215を収容する。従来のエネルギチェーンとは対照的に、ケーブル配置は、プリントモジュール200がそのメンテナンス位置と印刷位置との間で昇降するとき、ケーブルアレイ215の平面内での横曲げを可能とするように構成される(図21は、プリントモジュール200が印刷のために下降位置にある第1のケーブルアレイ構成215A、及び、プリントモジュールがメンテナンスのために上昇位置にある第2のケーブルアレイ構成215Bを示す)。各インクジェットモジュール100は、そのそれぞれの後部ポケット110に、それから、プリントシャーシ50の一方側に沿って延びる共通のケーブルトレイ60にケーブルアレイ215を送る。この配置により、プリントエンジン1のための従来のオーバーヘッドケーブル支持構造は必要なくなる。
【0049】
メンテナンスモジュール115
メンテナンスモジュール115は一般に、本出願人の、2017年5月1日に出願された「Printer having L-shaped maintenance modules for a plurality of printheads」と題される米国特許出願第15/583,006号明細書に記載されているようなものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
各メンテナンスモジュール115は、インクジェットモジュール100のエンドブラケット102と104との間に固定的に取り付けられており、それぞれプリントモジュール200が印刷位置(図3)とメンテナンス位置(図4)との間で前進及び後退できる空間又は開口を画定する。したがって、印刷位置では、各プリントヘッド216は、媒体ウェブから適切な間隔をおいて位置付けられる。
【0051】
図14及び15を参照すると、メンテナンスモジュール115のL字形フレーム120は、底板118Aを含み、短い側板118Bと長い側板118Cとがそれから上方に延びる。短い脚部119は、短い側板118Bと、底板118Aの対応する部分とを含む。長い脚部117は、長い側板118Cと、底板118Aの対応する部分とを含む。L字形フレーム120は、プリントヘッド216を拭くためのワイパキャリッジ122と、プリントヘッドに蓋をするためのキャッパ130とを収容する。
【0052】
図13及び15に示されるように、ワイパキャリッジ122は、その基準位置又は待機位置にあり、それにより、ワイパは、L字形フレーム120の短い脚部119内に位置付けられる。図12及び14に示されるようにキャッパ130は、その基準位置又は待機位置にあり、それにより、キャッパは、L字形フレーム120の長い脚部117内に位置付けられる。
【0053】
ワイパキャリッジ122は、プリントモジュール200の長さに沿って長手方向に移動し、プリントヘッド216を拭く、ある長さの拭き取り材料123を含む。ワイパキャリッジ122は、1つ又は複数のオーバーヘッドアーム125に支持され、オーバーヘッドアーム125は、長い側板118Cに固定され、且つ、フレーム120の長い脚部119に沿って延びるキャリッジレール126に摺動自在に係合される。図12及び14において、ワイパキャリッジ122は、その基準位置から移動し、長手方向拭き取り作業中である。キャッパ130は、その待機位置にあり、オーバーヘッドアーム125は、ワイパキャリッジ122の拭くための移動中、キャッパに橋を架けていることが分かる。ワイパキャリッジ124は、双方向キャリッジモータ128及びベルト駆動機構129によって駆動されるエンドレスベルト127によって移動される。拭き取り材料のウェブを担持するキャリッジを有するタイプのプリントヘッドワイパは、たとえば、米国特許第4,928,120号明細書に記載されている。
【0054】
キャッパ130は、ヒンジアーム132の対を介してL字形フレーム120の長い側板118Cに取り付けられ、ヒンジアーム132の対は、米国特許出願第15/583,006号明細書に記載されているような適切な後退機構140を用いて、プリントヘッド216によって占有される空間へキャッパを横方向に前進及び後退させる。キャッパ130は、図13及び15において、そのキャッピング位置に示され、ここで、両方のアーム132は前進しており、一方、ワイパキャリッジ122はその基準位置にある。
【0055】
キャッピング作業のために、プリントモジュールキャリア202は最初に印刷位置から移行位置に持ち上げられる。プリントモジュールキャリア202がその最も高い移行位置にある状態で、キャッパ130は前進し、プリントモジュールキャリア202は、その後、プリントヘッド216がそのそれぞれのキャッパの周囲シール176により蓋をされるようにメンテナンス位置までゆっくり降ろされる。逆のプロセスは、インクジェットモジュール100を印刷位置に戻すように構成する。
【0056】
同様に、拭き取り作業のために、プリントモジュールキャリア202は印刷位置から持ち上げられて、最初に移行位置まで上昇する。プリントモジュールキャリア202がその最も高い移行位置にある状態で、ワイパキャリッジ122は、プリントヘッド216の下に移動され、プリントモジュールキャリアは、拭き取り材料123がプリントヘッドのノズルプレートに接触するようにメンテナンス位置までゆっくり降ろされる。典型的に、拭き取り材料123は、弾性的に取り付けられるため、プリントモジュールキャリア202が降ろされたときに広い交差を許容する。拭き取り材料123がプリントヘッド216と係合すると、ワイパキャリッジ122は、プリントヘッドのノズルプレートからインク及び/又は屑を拭き取るためにプリントヘッドに沿って長手方向に移動する。
【0057】
プリントモジュール200
次に、プリントモジュール200について、図16~18を参照してさらに詳細に記載する。プリントモジュール200は、プリントヘッド216を含む交換可能なプリントヘッドカートリッジ252と係合する供給モジュール250を含む。プリントヘッドカートリッジ252は、たとえば、本出願人の、2017年5月1日に出願された米国特許出願第15/583,099号明細書に記載されているタイプのものであってもよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
供給モジュール250は、プリントヘッド216に電力及びデータを供給するための電子回路を収容する本体254を含む。ハンドル255が本体254の上部から延びて、ユーザが取り外すこと、及びプリントモジュールキャリア202のスリーブ207(図9)にユーザが挿入することを容易にする。
【0059】
本体254は、本体の対向する側壁に位置付けられたインク入口モジュール256及びインク出口モジュール258によって隣接されている。インク入口モジュール及びインク出口モジュールのそれぞれは、プリントヘッドカートリッジ252の相補的な入口カップリング261及び出口カップリング263に係合されるそれぞれのインクカップリング257及び259を有する。プリントヘッドカートリッジ252は、インク送達システム(図示せず)からインク入口モジュール256を介してインクが供給され、インク出口モジュール258を介してインク送達システムにインクを戻して循環させる。
【0060】
インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258は、本体254に対してプリントヘッドカートリッジ252に向かう方向及びそれから離れる方向にそれぞれ独立して摺動可能に移動可能である。インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258の摺動により、プリントヘッドカートリッジ252の供給モジュール250からの流体的な結合及び切離しが可能になる。インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258のそれぞれは、モジュールの摺動を作動させるレバー265の形態のそれぞれのアクチュエータを有する。各レバー265は、プリントヘッド216に垂直な軸を中心に回転し、レバーピニオン281の対に作動可能に接続されている。レバーピニオン281の回転は、上方へ延び、本体に対して固定的に取り付けられた相補的なレバーラック283との係合を介して、入口モジュール256及び出口モジュール258を本体254に対して横方向に摺動させる。このレバーの配置により、プリントモジュール200の全幅が最小化される。図16及び18に示されるように、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258の両方が下降すると、プリントヘッドカートリッジ252は、供給モジュール250に流体的に結合する。図17に示されるように、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258の両方が持ち上げられると、プリントヘッドカートリッジ252は、供給モジュール250から流体的に切り離される。
【0061】
なおも図17を参照すると、供給モジュール250は、本体254の下部から延びるクランププレート266を有する。本体254の下部は、プリントヘッドカートリッジが供給モジュール250に結合されるときに、プリントヘッドカートリッジ252の相補的な接点列(図示せず)を介してプリントヘッド216に電力及びデータを供給するための電気接点列267をさらに有する。
【0062】
位置決めピン268のセットは、クランププレート266から、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258の摺動移動方向に対して垂直に延びる。プリントヘッドカートリッジ252を取り付けるために、各位置決めピン268は、プリントヘッドカートリッジ252に画定された相補的な開口270と整列され、それに受け入れられる。プリントヘッドカートリッジ252は、クランププレート266に向かって位置決めピン268の方向に摺動される。プリントヘッドカートリッジ252がクランププレート266と係合されると、ヒンジ271を介して本体254に接続されているヒンジ付きクランプ273は、プリントヘッドカートリッジ252をクランププレートに対してクランプするために振り下ろされる。プリントヘッドカートリッジ252は、ヒンジ付きクランプ273上の固定具272によって所定の位置にロックされる。最後に、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258を、レバー265の作動を介して下方に摺動させて、プリントヘッドカートリッジ252を供給モジュール250に流体的に結合する。逆のプロセスを用いて、プリントヘッドカートリッジ252を供給モジュール252から取り外す。手動取り外し及び挿入プロセスは、記載されているように、デジタル印刷機の中断時間を最小限に抑えながら、数分程度でユーザが容易且つ清潔に行うことができる。
【0063】
インク供給モジュール256は、インク送達システム(図示せず)の入口ラインから調整された圧力でインクを受け入れるように構成されている。本発明で採用されるプリントモジュール200に関連した使用するのに適切なインク送達システムは、本出願人の、米国特許出願第15/582,979号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。インク入口モジュール256は、入口ライン275を介してインク貯蔵器(図示せず)からインクを受け入れるための入口ポート274を有し、インク出口モジュール258は、出口ライン277を介してインク貯蔵器にインクを戻すための出口ポート276を有する。
【0064】
インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258は、プリントヘッド216での局所的な圧力調整を提供するもの、インク圧力変動を緩和させるもの、プリントヘッドプライミング及びデプライミング動作を可能にするもの、輸送のためにプリントヘッドを隔離するものなど、さまざまな構成要素を独立して収容する。図18において、インク入口モジュールの特定の構成要素を明らかにするために、入口モジュール256がカバーを取り外した状態で示されている。たとえば、インク圧力センサと、マイクロプロセッサとを有する制御PCB278が示され、これは、プリントヘッド216の局所圧力を制御するために制御バルブ279にフィードバックを提供する。これら及び他の構成要素がインク入口モジュール256及びインク出口モジュール258に収容されてもよいことが理解されるであろう。
【0065】
代替的なインクジェットモジュール300
図19及び20を参照すると、代替的なインクジェットモジュール300は、エンドブラケット102と104との間に接続されたスピトゥーン304を組み込むプラテン302をさらに備える。プラテン202は、プリントヘッドネスト212との相補的な係合及び紙ペン間隔(PPS)の制御のために上方に突出する基準構造306を含む。図19は、印刷位置にある、代替的なインクジェットモジュール300を示し、プリントモジュール200は、媒体ウェブ3上への印刷のためにスピトゥーン304の方へ下げられている。図20は、メンテナンス位置にある、スピトゥーンから離れるように持ち上げられたプリントヘッドモジュール200を示す。
【0066】
インクジェットモジュール300は、適切な構台(図示せず)への固定された後部ビーム308の取付けによって、既存のアナログ印刷機のための独立型の「ドロップイン」プリントエンジンとして使用されてもよい。この場合、インクジェットモジュール300は、一体化のコストをさらにもっと最小化する。
【0067】
上記から、本発明により、インクジェットモジュールを比較的低コストのプリントエンジンに配置することが可能になり、それによって、OEMのための一体化、開発、及び商用コストが最小化され、同時に、インクジェットモジュールの数及び配置に関する多用性を可能にすることが理解されるであろう。
【0068】
当然のことながら、本発明は、単なる例として記載されており、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内で詳細の修正が行われてもよいことが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21