IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7111813インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス
<>
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図1
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図2
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図3
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図4
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図5
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図6
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図7
  • -インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20220726BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B41J2/16 501
B41J2/16 509
B41J2/16 507
B41J2/16 101
B41J2/14 201
B41J2/14 613
B41J2/16 517
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020528209
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081277
(87)【国際公開番号】W WO2019101605
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】62/591,093
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ノース,アンガス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,マシュー
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186528(JP,A)
【文献】特開2016-095373(JP,A)
【文献】特開2015-202587(JP,A)
【文献】特開2015-009429(JP,A)
【文献】特開2014-217965(JP,A)
【文献】特開2006-150901(JP,A)
【文献】特開2005-125577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ基板の前面に画定された孔の上にインクジェットチャンバを形成するためのプロセスにおいて、前記プロセスが、
(i)ドライフィルムフォトレジストの層が孔の上にかかるように、孔を画定する前記前面上にドライフィルムフォトレジストのレイヤを積層するステップと、
(ii)フォトイメージングプロセスを使用して、前記ドライフィルムフォトレジスト内にチャンバ壁に対応する壁開口を画定するステップと、
(iii)チャンバ壁及びチャンバ天井部を形成するように、前記壁開口内及び前記ドライフィルムフォトレジスト上にチャンバ材を堆積させるステップと、
(iv)前記チャンバ天井部にノズル開口を画定するステップと、
(v)前記ドライフィルムフォトレジストを除去して、前記孔の上に前記インクジェットチャンバを形成するステップと
を含み、
ここで、前記チャンバ材が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及びオキシ窒化ケイ素からなる群から選択される
ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記前面が、結合されたヒータデバイスを備えることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスにおいて、追加のMEMS製造ステップをさらに含むことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスにおいて、前記インクジェットチャンバのためのそれぞれの入口が、前記孔によって画定されることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスにおいて、インク供給チャネルの裏側ウエハ薄型化及び裏側エッチングのうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスにおいて、前記プロセスが、複数のインクジェットチャンバを形成し、各インク供給チャネルが、前記孔の1つ又は複数に接することを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスにおいて、各インク供給チャネルが、各孔より比較的広いことを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記ノズル開口が、前記孔と一直線に並ぶ、又は、前記孔からオフセットされることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記インクジェットチャンバが、前記ノズル開口を有する吐出チャンバと、前記孔を有する副チャンバとを備え、前記吐出チャンバが、前記副チャンバに横方向に接続されていることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスにおいて、前記チャンバ壁が、前記インクジェットチャンバの周囲壁を画定することを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記ドライフィルムフォトレジストのレイヤが、5~20ミクロンの厚さを有することを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記ドライフィルムフォトレジストが、エポキシ樹脂を備えることを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記堆積ステップ(iii)が、TEOS CVD、高密度プラズマCVD(HDPCVD)、及び、プラズマ強化CVD(PECVD)からなる群から選択される少なくとも1つの堆積方法を使用して実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスにおいて、
前記堆積ステップ(iii)が、
(a)第1の堆積方法を使用して、第1のチャンバ材を堆積させて、前記壁開口を充填し、それによって、前記チャンバ壁を形成し、前記チャンバ天井部を少なくとも部分的に形成するサブステップと、
(b)前記第1のチャンバ材の上面を平坦化するサブステップと
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスにおいて、
(c)第2の堆積方法を使用して、前記チャンバ天井部の形成を完了するように、前記第1のチャンバ材の前記平坦化された上面の上に第2のチャンバ材を堆積させるさらなるサブステップ
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項16】
請求項15に記載のプロセスにおいて、前記第1のチャンバ材及び前記第2のチャンバ材が、同じものである、又は、互いに異なることを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項15に記載のプロセスにおいて、前記第1の堆積方法及び前記第2の堆積方法が、同じものである、又は、互いに異なることを特徴とするプロセス。
【請求項18】
請求項14に記載のプロセスにおいて、前記平坦化が、化学機械平坦化(CMP)を使用して実行されることを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットノズルチャンバを形成するためのプロセスに関する。それは主として、高密度インクジェットノズルデバイスを形成するためのMEMSプロセスのコスト及び複雑さを低減させるために開発された。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、たとえば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/143700号パンフレット、国際公開第2011/143699号パンフレット、及び国際公開第2009/089567号パンフレットに記載されるような広範囲のMemjet(登録商標)インクジェットプリンタを開発している。Memjet(登録商標)プリンタは、プリントヘッドを1回通過させて印刷媒体を供給する供給機構と組み合わせて、固定されたページ幅プリントヘッドを採用している。したがって、Memjet(登録商標)プリンタは、従来のスキャン方式インクジェットプリンタよりも遥かに速い印刷速度を提供する。
【0003】
シリコン量を最小化、したがって、ページ幅プリントヘッドのコストを最小化するために、各Memjet(登録商標)プリントヘッドICは、高いノズル充填密度を提供するために、一体型CMOS/MEMSプロセスによって製造される。典型的なMemjet(登録商標)プリントヘッドICは、6,400個のノズルデバイスを含み、それは、換言すれば、A4プリントヘッドの70,400個のノズルデバイスは、11個のMemjet(登録商標)プリントヘッドICを含んでいることになる。
【0004】
その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,246,886号明細書に記載されているように、Memjet(登録商標)プリントヘッドICのための典型的なプリントヘッド製造プロセスは、DRIE(ディープリアクティブイオンエッチング)によってCMOSウエハの前面に孔をエッチングすることと、孔を犠牲材料(たとえば、フォトレジスト)で充填して平坦な前面を提供することと、その後、ウエハの前側にMEMSノズルデバイスを作ることとを必要とする。ノズルチャンバの構造は、たとえば、犠牲足場に画定された開口にチャンバ材が堆積されるアディティブMEMSプロセスによるものであってもよい(たとえば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,857,428号明細書に記載のアディティブMEMS製造プロセスを参照)。或いは、ノズルチャンバの構造は、チャンバ材がブランケットレイヤとして堆積されて、次いで周囲チャンバ壁を画定するためにエッチングされるサブトラクティブMEMSプロセスによって画定されてもよい(たとえば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,819,503号明細書に記載のサブトラクティブMEMS製造プロセスを参照)。すべての前側MEMS製造ステップの完了後、ウエハは裏面から薄くされ、充填された前側孔と接するよう裏側からトレンチがエッチングされる。最後に、酸化アッシングにより、すべての犠牲材料が、前側孔及びMEMSノズルチャンバから取り除かれ、ウエハの裏側と前側との間の流体接続を提供する。結果として生じるプリントヘッドICにおいて、前側孔が、ノズルチャンバ用の個々の入口チャネルを画定する。
【0005】
上記の製造方法の重要な段階は、犠牲材料を用いて前側孔を塞いで、ウエハの前面を平坦にすることである。前面が完全に平坦でない場合、その平坦性の欠如は、その後に続くMEMS製造ステップにも持ち越され、最終的に欠陥デバイス又は実装寿命の短い脆弱なMEMS構造につながる可能性がある。通常、孔充填は、必要な平坦性を実現するために、段階的プロセスとして実行される。米国特許第7,923,379号明細書には、DRIEによって形成された孔を塞ぐための1つのプロセスが記載されている。DRIEによって形成された孔を塞ぐための代替的なプロセスは、米国特許出願公開第2016/0236930号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
しかしそうであっても、前側孔を塞ぐことは、充填及び平坦化ステップ、さらに、孔の充填に使用された犠牲材料の除去の両方において、MEMSプロセスフローのコスト及び複雑さを増加させる。
【0007】
先行技術のプロセスのコスト及び複雑さを低減する、前側孔上にインクジェットノズルチャンバを形成するための代替的なMEMSプロセスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、ウエハ基板の前面に画定された孔の上にインクジェットチャンバを形成するためのMEMSプロセスが提供され、このプロセスは、
(i)前面上にドライフィルムフォトレジストのレイヤを積層するステップと、
(ii)ドライフィルムフォトレジスト内にチャンバ壁に対応する壁開口を画定するステップと、
(iii)チャンバ壁及びチャンバ天井部を形成するように、壁開口内及びドライフィルムフォトレジスト上にチャンバ材を堆積させるステップと、
(iv)チャンバ天井部にノズル開口を画定するステップと、
(v)ドライフィルムフォトレジストを除去して、孔の上にインクジェットチャンバを形成するステップと
を含む。
【0009】
第1の態様によるプロセスは有利なことには、前面孔の充填及び平坦化ステップが不要であり、それによって、上記の先行技術のプロセスと比較して、より短期且つより安価のMEMSプロセスフローになる。さらに、第1の態様によるプロセスは、(キヤノン株式会社に譲渡された)米国特許第4,558,333号明細書に記載のプロセスなどの知られているドライフィルム積層プロセスと比較して、ドライフィルムフォトレジストのレイヤ上に堆積させるチャンバ材が、CVDプロセスによって堆積可能なセラミック材料(たとえば、酸化ケイ素)であってもよいという点で有利である。したがって、結果として生じるプリントヘッド(又は、プリントヘッドチップ)のノズルプレートは、非常に堅牢であり、優れた硬度、並びに、化学的分解又は機械的分解に対する耐性を有する。
【0010】
好ましくは、チャンバ材は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及びオキシ窒化ケイ素からなる群から選択される。たとえば、酸化ケイ素チャンバ材は、当該技術分野において知られているように、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)のCVD堆積によって形成されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、前面は、結合されたヒータデバイスを備え、それは、積層ステップの前に形成される。
【0012】
好ましくは、プロセスは、追加のMEMS製造ステップを含む。たとえば、チャンバの形成の後に、孔と接するようにインク供給チャネルの裏側ウエハ薄型化及び/又は裏側エッチングが続いてもよい。
【0013】
ノズル開口は、インクジェットチャンバの個別の設計に応じて、孔と一直線に並んでもよく、又は、孔からオフセットされてもよい。1つの実施形態において、インクジェットチャンバは、ノズル開口を有する吐出チャンバと、孔を有する副チャンバとを備え、吐出チャンバは、副チャンバに横方向に接続されている。通常は、チャンバ壁は、インクジェットチャンバの周囲壁を画定する。
【0014】
好ましくは、ドライフィルムフォトレジストのレイヤは、5~30ミクロン又は5~15ミクロンの厚さを有する。
【0015】
好ましくは、壁開口は、ドライフィルムフォトレジストのフォトイメージングを使用して画定される。
【0016】
好ましくは、ドライフィルムフォトレジストは、エポキシ樹脂を備えるネガ型レジストである。このようなドライフィルムフォトレジストの例は、当該技術分野においてよく知られており、たとえば、DJ MicroLaminates,Inc及びEngineered Materials Systems,Incから市販されている。
【0017】
好ましくは、堆積ステップ(iii)は、TEOS CVD、高密度プラズマCVD(HDPCVD)、及び、プラズマ強化CVD(PECVD)からなる群から選択される少なくとも1つの堆積方法を使用して実行される。
【0018】
TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)CVDは、特に低圧でのトレンチの充填に適していると当該技術分野において知られている(たとえば、Shareef et al.,Subatmospheric chemical vapor deposition ozone/TEOS process for SiO2 trench filling,Journal of Vacuum Science & Technology B,Nanotechnology and Microelectronics: Materials,Processing,Measurement,and Phenomena 13,1888(1995)を参照)。同様に、HDPCVDは、米国特許第5,872,058号明細書に記載されているように、シラン、酸素、及びアルゴンの混合物を使用してトレンチを充填するのに適している。
【0019】
いくつかの実施形態において、チャンバ材の堆積は、チャンバ壁及びチャンバ天井部が同時に形成される単一ステップのプロセスである。チャンバ天井部は、CMPを使用して、堆積後に平坦化されてもよい。
【0020】
他の実施形態において、堆積ステップ(iii)は、
(a)第1の堆積方法を使用して、第1のチャンバ材を堆積させて、壁開口を充填し、チャンバ壁を形成するサブステップと、
(b)第1のチャンバ材の上面を平坦化するサブステップと、
(c)第2の堆積方法を使用して、第1のチャンバ材の平坦化された上面の上に第2のチャンバ材を堆積させるサブステップと
を含む。
【0021】
第1のチャンバ材及び第2のチャンバ材は、同じものであってもよく、又は、互いに異なってもよい。通常、第1のチャンバ材及び第2のチャンバ材はどちらも酸化ケイ素である。
【0022】
第1の堆積方法及び第2の堆積方法は、同じであってもよく、又は、互いに異なってもよい。たとえば、第1の堆積方法は、TEOS CVD又はHDPCVDを使用してもよく、一方、第2の堆積方法は、たとえば、PECVDを使用してもよい。
【0023】
好ましくは、平坦化は、化学機械平坦化(CMP)を使用して実行される。
【0024】
ここで、本発明の実施形態を一例として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、前面にエッチングされた孔を有するシリコン基板の概略側面図である。
図2図2は、ドライフィルム層の積層後の、図1に示される基板を示す。
図3図3は、ドライフィルム層のフォトエッチング後の、図2に示される基板を示す。
図4図4は、チャンバ材の堆積後の、図3に示される基板を示す。
図5図5は、チャンバ材のエッチング後の、図4に示される基板を示す。
図6図6は、ドライフィルム層の酸化除去後の、図5に示される基板を示す。
図7図7は、図1~6に示されるMEMSプロセスフローによる形成に適したインクジェットノズルデバイスの斜視図である。
図8図8は、図7のインクジェットノズルデバイスの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
インクジェットチャンバを形成するためのMEMSプロセスフロー
図1~6は、第1の態様によるインクジェットチャンバ70を形成するための例示的なMEMSプロセスフローを概略的に示す。プロセスはウエハ基板の1つの単位セルに関して示されているが、プロセスは、単一のウエハ基板上に、複数(通常は、数千)の同一の単位セルを形成するために使用されてもよいことが理解されるであろう。ウエハは通常、当該技術分野において知られているように、個々のプリントヘッドチップを提供するために、MEMSプロセスの完了後、切り分けられる。
【0027】
図1において、基板の前面54に形成された前側孔52を有するシリコン基板50が示されている。前側孔52は通常、少なくとも10ミクロン(たとえば、10~50ミクロン)の深さ、及び、1:1よりも大きいアスペクト比を有する。図2を参照すると、第1のステップにおいて、フォトイメージング可能なドライフィルムフォトレジスト56の薄いレイヤが、基板50の前面54上に積層される。積層プロセスは、当該技術分野において知られているように、前側孔52へのドライフィルムフォトレジスト56の落ち込みを最小化するように最適化されてもよい。ドライフィルムフォトレジスト56のレイヤは、5~15ミクロンの厚さを有してもよい。
【0028】
ここで図3を参照すると、第2のステップにおいて、壁開口58は、フォトイメージング(「フォトエッチング」)プロセスを使用して、ドライフィルムフォトレジスト56に画定される。通常、ドライフィルムフォトレジストは、ネガ型レジストドライフィルムであり、それによって、フィルムの暴露されていない領域は、壁開口58を画定するために、フォトレジスト現像液によって溶解される。
【0029】
ここで図4を参照すると、第3のステップにおいて、チャンバ材は、壁開口58を充填するように、CVDプロセスを使用して堆積され、それによって、チャンバ壁62及びチャンバ天井部60を形成する。たとえば、TEOS堆積は、壁開口58を酸化ケイ素チャンバ材で充填するために使用されてもよい。或いは、高密度プラズマ酸化物堆積は、壁開口58を酸化ケイ素チャンバ材で充填するために使用されてもよい。
【0030】
ドライフィルムフォトレジスト56は、比較的高温の堆積ステップの前に、熱硬化且つ/又はUV硬化されてもよい。もちろん、他の適切な堆積可能なチャンバ材(たとえば、窒化ケイ素)が、チャンバ壁62及びチャンバ天井部60を形成するために使用されてもよい。
【0031】
チャンバ壁62及びチャンバ天井部60は、単一の堆積ステップで同時形成されてもよい。或いは、チャンバ壁62は、壁開口58を充填する初期堆積によって形成されてもよく、その後、化学機械平坦化(CMP)を使用する平坦化ステップが続いてもよい。CMP後、次の堆積ステップは、チャンバ天井部60を所望の厚さまで厚くするのに使用されてもよい。CMPによる2段階堆積プロセスは有利なことには、より平坦な天井部構造を提供し、それは、次のステップにおける、より制御されたノズルエッチングの提供を支援し、結果的に、任意の好ましくないノズル寸法変化を最小化する。平坦なノズルプレートは、プリントヘッドの拭き取りにも有利である。
【0032】
チャンバ壁62及びチャンバ天井部60は、インクジェットチャンバに最適な特性を提供するために、2段階堆積プロセスを使用して、同じ材料又は異なる材料から形成されてもよいことは容易に理解されるであろう。同様に、第1の堆積ステップ及び第2の堆積ステップは、インクジェットチャンバ特性を最適化するために、同じ堆積方法又は異なる堆積方法を使用して実行されてもよい。
【0033】
形成されたチャンバ天井部60及びチャンバ壁62によって、ノズル開口66は、図5に示されるように、第4のステップの間にチャンバ天井部に画定される。ノズル開口66は、当該技術分野において知られているように、従来のフォトリソグラフィマスキング及びエッチングステップを使用して形成される。
【0034】
最後に、図6に示される第5のステップにおいて、ドライフィルムフォトレジスト56は、たとえば、酸化アッシングによって除去され、前側孔52の上に位置付けられたインクジェットチャンバ70を形成する。よって、本明細書に記載される新しいMEMSプロセスフローでは、ドライフィルムフォトレジスト56が、セラミック材料の堆積を介してチャンバ天井部60及びチャンバ壁62を形成するための犠牲足場として使用される。このように、非常に堅牢なインクジェットチャンバ70は、セラミック材料を使用して、前側孔の充填及び平坦化を必要とすることなく、前側孔52の上に形成されてもよい。さらに、空洞に捕捉された任意のアッシングされていないドライフィルムフォトレジスト56は、チャンバ天井部60の間に及ぶノズルプレート68に、さらなる剛性及び支持を提供する。
【0035】
図6において、ノズル開口66は、前側孔52と一直線に並べられているが、ノズル開口は、インクジェットノズルデバイスの個別の構成に応じて前側孔からオフセットされてもよいことがもちろん理解されるであろう。
【0036】
前側MEMS製造ステップの完了後、ウエハ基板50は通常、裏側から薄くされ、インク供給チャネル(図示せず)が裏側からエッチングされて、前側孔52に接し、それによって、ウエハ基板の裏側と前側との間に流体接続が提供される。
【0037】
MEMSインクジェットノズルデバイス
完全にするため、上記のMEMSプロセスを使用して製造されてもよいインクジェットノズルデバイス10が、ここで記載される。
【0038】
図7及び8を参照すると、床部14と、天井部16と、床部と天井部との間で延在する周囲壁18とを有する主チャンバ12を備えるインクジェットノズルデバイス10が示されている。図7は、層間絶縁(ILD)レイヤが間に散在する複数の金属レイヤを備えることができるCMOSレイヤ20を示す。
【0039】
図7において、天井部16は、各ノズルデバイス10の詳細を明らかにするように透明なレイヤとして示されている。通常、天井部16及び周囲壁18は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などのセラミック材料からなる。
【0040】
ノズルデバイス10の主チャンバ12は、吐出チャンバ22と副チャンバ24とを備える。吐出チャンバ22は、天井部16に画定されたノズル開口部26と、床部14に結合されたヒータ素子28の形態のアクチュエータとを備える。副チャンバ24は、床部14に画定された主チャンバ入口30(又は、「床部入口30」)を備える。主チャンバ入口30は、副チャンバ24の端壁18Bと接し、部分的に重なり合う。この配置は、副チャンバ24の毛管作用を最適化し、それによって、プライミングを促進し、チャンバ再充填速度が最適化される。
【0041】
バッフルプレート32が主チャンバ12を区切り、吐出チャンバ22と副チャンバ24とを画定する。バッフルプレート32は、床部14と天井部16との間で延在する。
【0042】
副チャンバ24は、バッフルプレート32の両側に位置する一対の吐出チャンバ入口34を介して吐出チャンバ22と流体連通する。各吐出チャンバ入口34は、バッフルプレート32のそれぞれの側縁と周囲壁18との間を延在する間隙によって画定される。
【0043】
ノズル開口部26は細長く、ヒータ素子の中央縦軸に位置合わせされた長軸を有する楕円の形状をとる。
【0044】
図8に最もよく示されているように、ヒータ素子28は、その各端において、主チャンバ12の床部14を通って露出しているそれぞれの電極36に、1つ又は複数のバイア37によって接続されている。通常、電極36はCMOSレイヤ20の上部金属レイヤによって画定される。ヒータ素子28は、たとえば、チタンアルミニウム合金、窒化アルミニウムチタンなどから構成されてもよい。1つの実施形態では、ヒータ28は、当該技術分野において知られている1つ又は複数の保護レイヤで被覆してもよい。
【0045】
バイア37は、ヒータ素子28と電極36との間に電気的接続を提供するために、任意の適切な導電材料(たとえば、銅、タングステンなど)が充填されてもよい。ヒータ素子28から電極36への電気的接続を形成するのに適したプロセスは、米国特許第8,453,329号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0046】
各電極36の一部は、端壁18A及びバッフルプレート32のそれぞれの直下に位置付けられてもよい。この配置の有利な点は、床部14からヒータ素子28が剥がれるリスクを最小にするだけでなく、デバイス10全体の対称性を改善する。
【0047】
プリントヘッドチップ100は、複数のインクジェットノズルデバイス10から構成されてもよいが、図7のプリントヘッドチップ100の部分切取図は、明瞭にするために2つのインクジェットノズルデバイス10のみ示している。プリントヘッドチップ100は、インクジェットノズルデバイス10を含む不動態化されたCMOSレイヤ20及びMEMSレイヤを有するプリントヘッド基板102によって画定される。図7に示されるように、各主チャンバ入口30は、プリントヘッドチップ100の後側に画定されたインク供給チャネルと接する。インク供給チャネル104は一般に、主チャンバ入口30よりもずっと広く、そこに流体連通する各主チャンバ12にインクを供給するバルクインク源を提供する。各インク供給チャネル104は、プリントヘッドチップ100の前側に配設された1つ又は複数のノズルデバイス10の列と平行に延在している。通常は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,441,865号明細書の図21Bに示された構成によれば、各インク供給チャネル104は、一対のノズル列(明瞭にするために、図7には1つの列のみ示されている)にインクを供給する。
【0048】
前述したとおり、プリントヘッドチップ100は、図1~6に関して記載されたプロセスに基づく変更されたMEMSプロセスフローを使用して、ウエハ基板上にインクジェットノズルデバイス10を含むMEMSレイヤを作ることによって製造されてもよい。変更されたMEMSプロセスフローでは、バッフルプレート32は、ドライフィルムフォトレジスト56に画定された適切なバッフル開口(図示せず)に充填することによって、チャンバ壁62及びチャンバ天井部60と同時に形成される。したがって、本明細書に記載されたプロセスは、前側孔の上にセラミックインクジェットチャンバを形成するための先行技術のプロセスに代替形態を提供し、それは、充填及び平坦化ステップを不要とし、それによって、プリントヘッドチップ製造の全体的なコストを低減させる。
【0049】
本発明については、ここまで実施例を記載してきたに過ぎず、詳細な変更は本発明の範囲で添付の特許請求に明記されていることが理解できよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8