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  • 特許-基板リフト装置及び基板搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】基板リフト装置及び基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020534064
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018355
(87)【国際公開番号】W WO2020026549
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018142815
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598006336
【氏名又は名称】アルバックテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真規
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-150099(JP,A)
【文献】特開平11-016994(JP,A)
【文献】特開2006-303138(JP,A)
【文献】特開2004-228488(JP,A)
【文献】特表2012-521652(JP,A)
【文献】特表2012-511831(JP,A)
【文献】特開平11-243137(JP,A)
【文献】特開2008-041969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に被処理基板を吸着する静電チャックを有するステージに組み付けられてこのステージに対する被処理基板の受け渡しを行うための基板リフト装置であって、
ステージ内に没入する没入位置とステージ上面から上方に突出する突出位置との間で上下動自在なリフトピンと、リフトピンを上下動させる駆動手段と、処理済みの基板に対して除電操作を行う除電手段とを備えるものにおいて、
駆動手段は、除電手段により被処理基板の除電操作を行った後、没入位置から突出位置までリフトピンを上動させる間で、被処理基板の中央部を局所的に浮き上がらせる中間位置にてリフトピンの上動を停止し、この停止状態を処理基板の復元力により浮き上がった被処理基板の中央部を起点に被処理基板の残り部分が静電チャックから剥がれるまでの所定時間保持した後、突出位置へのリフトピンの上動が再開されるように構成され
被処理基板がシリコンウエハである場合、前記中間位置にて、前記ステージの上面から基板径の1/500以上1/400以下の高さでシリコンウエハの中央部を局所的に浮き上がらせ、4秒以上10秒以下保持することを特徴とする基板リフト装置。
【請求項2】
ステージの上面に設けた静電チャックの電極に電圧を印加して被処理基板を吸着した状態で被処理基板に対して処理を施した後に、静電チャックへの電圧印加を停止する停止工程と、被処理基板に対して除電操作を行う除電工程と、ステージに出没自在に組み付けたリフトピンを上動させてステージ上方の基板受渡位置まで被処理基板を持ち上げる持上工程と、を含む基板搬送方法において、
持上工程は、ステージに没入した位置からリフトピンを上動させてその上端を被処理基板に当接させ、この当接した位置から更にリフトピンを上動させることで、静電チャック上の被処理基板の中央部を局所的に浮き上がらせる第1工程と、被処理基板の中央部を浮き上がらせたリフトピンの中間位置にて、被処理基板の復元力により浮き上がった被処理基板の中央部を起点に被処理基板の残り部分が静電チャックから剥がれるまでの所定時間保持する第2工程と、中間位置から基板受渡位置までリフトピンを更に上動させる第3工程と含み、
被処理基板がシリコンウエハである場合、前記第1工程において、静電チャック上のシリコンウエハの中央部を局所的に浮き上がらせる高さを前記ステージの上面から基板径の1/500以上1/400以下の高さとし、
前記第2工程において、被処理基板の中央部を浮き上がらせたリフトピンの中間位置にて4秒以上10秒以下保持することを特徴とする基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に被処理基板を吸着する静電チャックを有するステージに組み付けられてこのステージに対する被処理基板の受け渡しを行うための基板リフト装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、所望のデバイス構造を得るために、シリコンウエハやガラス基板等の被処理基板に対して、スパッタリング法及びプラズマCVD法等による成膜処理、熱処理、イオン注入処理やエッチング処理などの各種の処理が実施される。これらの処理を行う処理装置には、一般に、真空雰囲気中の真空チャンバ内で被処理基板を位置決め保持するために、静電チャック付きのステージが備えられる。
【0003】
静電チャックは、金属製のステージ表面に装着される例えばPBN(Pyrolytic Boron Nitride)製のセラミックスプレート(チャックプレート)を有し、このチャックプレートには、一対の電極が埋設されている(所謂双極型)。一対の電極間には、給電装置によって直流電圧(チャック電圧)が印加され、これにより、両電極間に直流電圧を印加することで発生する静電気力で被処理基板がチャックプレート表面に吸着保持される(チャック操作)。そして、このようなステージに対して被処理基板を受け渡しするために、上記基板リフト装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
基板リフト装置は、ステージ内に没入する没入位置と、ステージ上面から上方に突出してステージ上面から所定の高さ位置まで被処理基板を持ち上げる基板受渡位置との間で上下動自在なリフトピンと、リフトピンを上下動させる駆動手段とを備える。被処理基板をステージに受け渡すのに際しては、リフトピンを基板受渡位置に上動させた状態で、搬送ロボットによりリフトピンの上端で被処理基板が支持されるように受け渡す。そして、リフトピンを没入位置まで下動させると、被処理基板がステージ(即ち、チャックプレート)上に設置される。この状態で、静電チャックの電極に直流電圧を印加して被処理基板を吸着し、その後に各種の処理が施される。処理が終了すると、静電チャックの電極への電圧印加が停止される(吸着停止操作)。そして、リフトピンを基板受渡位置まで上動させて被処理基板を持ち上げた後、被処理基板が例えば搬送ロボットに受け渡される。
【0005】
ところで、被処理基板に対してプラズマを利用した所定の処理を施した場合、吸着停止操作を行っても、被処理基板に残留する電荷によってチャックプレート表面に被処理基板が貼り付いたままとなることがある。このため、被処理基板をリフトピンで基板受渡位置まで持ち上げるのに先立って、被処理基板に対して除電操作を行うことが一般に知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ここで、被処理基板に対する除電が不充分な状態で、リフトピンを上動させて被処理基板を持ち上げると、被処理基板の位置ずれや跳ね上がりが生じ、場合によっては、被処理基板に割れやかけが発生するという不具合がある。一方、被処理基板が除電されたか否かを判断する各種の機器を設け、完全に除電されたことを待ってリフトピンを上動させることが考えられるが、これでは、部品点数が増加してコストアップを招来するばかりか、被処理基板の受け渡しに時間がかかり、スループットが低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-92186号公報
【文献】特開2010-199239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、被処理基板が完全に除電されることを待つことなく、被処理基板の位置ずれや跳ね上がりを生じることなく、処理後の被処理基板を基板受渡位置に移動できる基板リフト装置及び基板搬送方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、上面に被処理基板を吸着する静電チャックを有するステージに組み付けられてこのステージに対する被処理基板の受け渡しを行うための本発明の基板リフト装置は、ステージ内に没入する没入位置とステージ上面から上方に突出する突出位置との間で上下動自在なリフトピンと、リフトピンを上下動させる駆動手段と、処理済みの被処理基板に対して除電操作を行う除電手段とを備え、駆動手段は、除電手段により被処理基板の除電操作を行った後、没入位置から突出位置までリフトピンを上動させる間で、被処理基板の中央部を局所的に浮き上がらせる中間位置にてリフトピンの上動を停止し、この停止状態を被処理基板の復元力により浮き上がった被処理基板の中央部を起点に被処理基板の残り部分が静電チャックから剥がれるまでの所定時間保持した後、突出位置へのリフトピンの上動が再開されるように構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、被処理基板に対してプラズマを利用した所定の処理を施した後、処理済みの被処理基板を搬出するのに際しては、先ず、被処理基板の吸着停止操作を行うと共に、公知の方法で被処理基板に対して除電操作を行う。そして、被処理基板が完全に除電されることを待つことなく(例えば、除電操作開始からの経過時間で判断する)、リフトピンを没入位置から中間位置に上動させる。すると、リフトピンからの押圧力が作用する被処理基板の部分(例えば、中央部分)は、残留電荷による吸着力に抗して局所的に浮き上がる(この場合、被処理基板の残りの部分は、残留電荷により静電チャックに張り付いたままとなる)。
【0011】
次に、リフトピンを中間位置にて所定時間保持すると、被処理基板の残りの部分は、その復元力によって、リフトピンからの押圧力が作用する被処理基板の部分を起点に、その外方に向かって静電チャックから徐々に剥がれていき、やがて完全に静電チャックから剥がれる。この場合、上記従来例のように、リフトピンからの押圧力を作用させて無理に被処理基板を剥がすのとは異なり、被処理基板の位置ずれや跳ね上がりが生じるといった不具合は生じない。
【0012】
このように本発明では、駆動手段によって、中間位置にてリフトピンの上動を停止可能な構成を採用したことで、被処理基板が完全に除電されることを待たずに、被処理基板の位置ずれや跳ね上がりを生じることなく、処理後の被処理基板を基板受渡位置まで移動することが可能になる。
【0013】
基板リフト装置に係る発明において、被処理基板が、半導体装置の製造等に一般に利用されるサイズのシリコンウエハである場合、前記中間位置にて、前記ステージの上面から基板径の1/500以上1/00以下の高さでシリコンウエハの中央部を局所的に浮き上がらせ、4秒以上10秒以下保持すれば、シリコンウエハが完全に除電されることを待たずに、被処理基板の位置ずれや跳ね上がりを生じることなく、処理後のものを基板受渡位置まで移動できることが確認された。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の基板搬送方法は、ステージの上面に設けた静電チャックの電極に電圧を印加して被処理基板を吸着した状態で被処理基板に対して処理を施した後に、静電チャックへの電圧印加を停止する停止工程と、被処理基板に対して除電操作を行う除電工程と、ステージに出没自在に組み付けたリフトピンを上動させてステージ上方の基板受渡位置まで被処理基板を持ち上げる持上工程と、を含み、持上工程は、ステージに没入した位置からリフトピンを上動させてその上端を被処理基板に当接させ、この当接した位置から更にリフトピンを上動させることで、静電チャック上の被処理基板の中央部を局所的に浮き上がらせる第1工程と、被処理基板の中央部を浮き上がらせたリフトピンの中間位置にて、被処理基板の復元力により浮き上がった被処理基板の中央部を起点に被処理基板の残り部分が静電チャックから剥がれるまでの所定時間保持する第2工程と、中間位置から基板受渡位置までリフトピンを更に上動させる第3工程と含むことを特徴とする。
【0015】
基板搬送方法に係る発明において、被処理基板が、上記同様にシリコンウエハである場合、前記第1工程において、静電チャック上のシリコンウエハの中央部を局所的に浮き上がらせる高さを前記ステージの上面から基板径の1/500以上1/00以下の高さとすることが好ましく、また、前記第2工程において、被処理基板の中央部を浮き上がらせたリフトピンの中間位置にて4秒以上10秒以下保持することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る基板リフト装置の組み付けたステージの模式断面図。
図2図1に示す基板リフト装置により処理済みの被処理基板を受け渡しするときの一連の動作を示す断面図であり、(a)が没入位置、(b)が当接位置、(c)が中間位置、(d)が中間位置にて所定時間保持したときの被処理基板の状態、(e)が基板受渡位置である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、被処理基板を、半導体装置の製造等に一般に利用されるサイズ(例えばφ150mm~450mm)のシリコンウエハ(以下「ウエハW」という)、静電チャックを双極型のものとし、その上面にウエハWを吸着する静電チャックを有するステージに組み付けられて、ステージに対するウエハWの受け渡しを行う基板リフト装置及び基板搬送方法の実施形態を説明する。以下においては、図1に示すステージの姿勢を基準に、上、下といった方向を説明するものとする。
【0018】
図1を参照して、STは、スパッタリング法及びプラズマCVD法等による成膜処理、熱処理、イオン注入処理やエッチング処理などの各種の処理を施す図外の処理装置の真空チャンバ内に配置される静電チャック付きのステージである。なお、処理装置自体は公知のものが利用されるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0019】
ステージSTは、金属製の基台1と、この基台1の上面に設けられてウエハWを吸着保持する静電チャックECとで構成される。基台1としては、ウエハWに応じた輪郭を持つアルミニウム製の筒体で構成され、その内部には、ウエハWを加熱する加熱手段11や、冷媒を循環させてウエハWを冷却する冷却手段(図示せず)が設けられて処理中にウエハWを加熱したり、冷却したりできるようにしている。静電チャックECは、誘電体たるチャックプレート2とその内部に図示省略の絶縁層を介して配置された一対の電極3a,3bとを備え、両電極3a,3b間に直流電圧(チャック用電圧)を印加するために給電装置Psが設けられている。チャックプレート2としては、PBN製、ALN製やシリコンラバー製のものが利用される。そして、基台1と静電チャックECのチャックプレート2とには、上下方向に貫通する透孔4が複数形成されている。本実施形態では、ウエハWの中心と半径方向の略中間点を通る仮想円周上で周方向に120度間隔となる位置に3個の透孔4が設けられている。この場合、仮想円周の径は、ウエハWのサイズを考慮して適宜設定される。そして、各透孔4には後述のリフトピン5が挿設されている。
【0020】
給電装置Psは、一対の電極3a,3b間に直流電圧(チャック電圧)を印加する直流電源部Eを備える。この場合、直流電源部Eと両電極3a,3bとの間に直流電圧を印加する回路を第1回路C1、処理後にウエハWを除電するために両電極3a,3bをグランド電位に接続する回路を第2回路C2として、第1回路C1と第2回路C2とを切り換えるために2個の切換手段8a,8bが設けられている。そして、図1に示す第1回路C1では、直流電源部Eの正(高電圧側)の出力が一方の切換手段8aを介して一方の電極3bに接続され、他方の電極3aが、他方の切換手段8bを介して他方の直流電源部Eの負(低電圧側)の出力に接続されることで、両電極3a,3b間に、チャックプレート2にてウエハWを吸着保持するために直流電圧が印加される(チャック操作)。一方で、第2回路C2では、両切換手段8a,8bが切り換えられて、電極3a,3bが切換手段8a,8bを介してグランド電位に接続されることで、ウエハWに対してプラズマを利用した所定の処理が施された後に、ウエハWに残留する電荷が除電される(除電操作)。なお、直流電源部Eや切換手段8a,8bの作動は、図示省略の制御ユニットにより統括制御される。そして、このようなステージSTに対してウエハWを受け渡しするために、本実施形態の基板リフト装置LMが設けられている。
【0021】
図2も参照して、リフト装置LMは、各透孔4に夫々挿設されているリフトピン5と、各リフトピン5をステージSTに対して出没自在に上下動する駆動手段9とを備える。駆動手段9は、所謂2段式のエアシリンダで構成されている。この場合、駆動手段9としてのエアシリンダは、シリンダ本体91を備え、その内部は、中央開口92aを備えた隔絶板92により上側の第1室93aと下側の第2室93bとに区画されている。第1室93a内には第1ピストン94が摺動自在に収納され、第1ピストン94のロッド94aが、隔絶板92に設けた中央開口92aを摺動自在に貫通して第2室93bに突出している。第2室93b内には、第2ピストン95が摺動自在に収納され、第2ピストン95のロッド95aが第1ピストン94に設けた貫通孔及びシリンダ本体91の壁面に設けた透孔を貫通してシリンダ本体91外に突出している。シリンダ本体91外に突出した第2ピストン95の上端には駆動板95bが設けられ、駆動板95bに、各リフトピン5の下端が夫々連結されている。以下に、図2も参照して、エアシリンダ9によるリフトピン5の上下動の動作を具体的に説明する。
【0022】
図2(a)は、各リフトピン5が没入位置にある状態を示す。没入位置では、シリンダ本体91の第1導入口96a及び第2導入口96bから圧縮空気が供給されて、第1ピストン94が第1室93a内で隔絶板92に当接し、かつ、第2ピストン95が第2室93bの底内面に当接する位置まで下動する。これにより、駆動板95bが最下位置に移動されることで、各リフトピン5がステージSTに完全に没入した状態となる。
【0023】
次に、第2室93b内に導入された圧縮空気をシリンダ本体91の第2排出口96eから排出すると共に、第1室93a内の圧縮空気の圧力よりも低い圧力の圧縮空気をシリンダ本体91の第3導入口96cから第2室93b内に導入していく。すると、第2室93b内で第2ピストン95が上動することで、駆動板95bが最下位置から上動して、各リフトピン5の上端面がウエハWの裏面に先ず当接する(図2(b)の当接位置参照)。この状態から、圧縮空気を第2室93b内に更に導入すると、第2ピストン95が更に上動するが、シリンダ本体91の第3導入口96cから第2室93b内に導入された圧縮空気の圧力を第1室93a内の圧縮空気の圧力よりも低く設定しているため、第2ピストン95が第2室93b側に突出するロッド94aの下端に当接すると、その上動を停止する。これにより、当接位置から第2ピストン95がロッド94aの下端に当接するまでのストロークに相当する距離だけ、駆動板95bが上動して各リフトピン5の上端がステージから上方に突出して停止する(図2(c)に示す中間位置参照)。
【0024】
次に、シリンダ本体91の第1室93a内に導入された圧縮空気をシリンダ本体91の第1排出口96dから排出すると共に、シリンダ本体91の第3導入口96cから第2室93b内に圧縮空気を更に導入する。これにより、シリンダ本体91の第2室93b内の圧縮空気の圧力は第1室93a内の圧縮空気の圧力よりも高くなり、第2ピストン95が第2室93b内で隔絶板92に当接する位置まで上動し、駆動板95bが最上位置まで上動して各リフトピン5の上部がステージST上方に突出する(図2(e)に示す基板受渡位置)。以下に、図1及び図2に示す基板リフト装置LMを用いた基板搬送方法を具体的に説明する。
【0025】
図外の処理装置にてウエハWに対して所定のプラズマ処理を施すような場合、先ず、切換手段8a,8bにより第2回路C2に切り換えた状態で静電チャックEC表面にウエハWを設置する。この場合、リフトピン5を図2(e)に示す基板受渡位置まで上動させて、この状態で搬送ロボット10によってウエハWを搬送して、ロボットアーム10aからリフトピン5に受け渡す。そして、リフトピン5を図2(a)に示す没入位置に下動させてチャックプレート2の上面にウエハWを設置する。そして、チャックプレート2上面へのウエハWの設置が認識されると、切換手段8a,8bにより第1回路C1に切り換えることで、両電極3a,3b間に直流電圧が印加され、両電極3a,3b間に発生する静電気力でウエハWがチャックプレート2の上面に吸着保持(チャック)される。
【0026】
次に、処理済みのウエハWを搬出するのに際しては、切換手段8a,8bにより第2回路C2に切り換えられ、両電極3a,3bがグランド電位に接続される。これにより、例えばプラズマを利用した処理を施すことで帯電したウエハWが除電されるが、完全に除電されたことを待って各リフトピン5を上動させるのでは、ウエハWの受け渡しに時間がかかり、スループットが低下してしまう。
【0027】
本実施形態では、第2回路C2に切り換えた後、所定時間経過すると、エアシリンダ9を駆動して、リフトピン5を図2(a)に示す没入位置から上動させて、リフトピン5の上端をウエハWの中央部に当接させ(図2(b)参照)、この当接位置からリフトピン5を図2(c)に示す中間地位まで更に上動させて停止し、静電チャックEC上のウエハWの中央部を局所的に浮上させる(第1工程)。これにより、リフトピン5からの押圧力が作用するウエハWの中央部分は、残留電荷による吸着力に抗して局所的に浮き上がり、ウエハWの残りの部分は、残留電荷によりチャックプレート2に張り付いたままとなる(図2(c)参照)。この場合、チャックプレート2上面からウエハWの部分を局所的に浮き上がらせる高さは、ステージ、具体的にはチャックプレート2の上面から、ウエハWの最も高く浮き上がった部分までの高さを基板径の1/500以上1/200以下とする。
【0028】
次に、図2(c)に示す中間位置にて所定時間保持すると(第2工程)、ウエハWの残りの部分は、その復元力によって、リフトピン5からの押圧力が作用するウエハWの部分を起点に、その外方に向かって静電チャックECから徐々に剥がれていき、図2(d)に示すようにウエハWが完全に剥がれた状態となる。この場合、ウエハWを局所的に浮き上がらせたリフトピン5の中間位置にて4秒以上保持することが好ましい。そして、図2(c)に示す中間位置から図2(e)に示す基板受渡位置までリフトピン5を更に上動させ(第3工程)、基板受渡位置まで持ち上げられたウエハWは、リフトピン5からロボットアーム10aに受け渡されて、搬送ロボット10により処理室から搬送される(図2(e)参照)。
【0029】
以上の実施形態によれば、リフトピン5からの押圧力を作用させて無理にウエハWを剥がすのとは異なり、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりが生じるといった不具合は生じない。このため、ウエハWが完全に除電されることを待たずに、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりを生じることなく、処理後のウエハWを基板受渡位置まで移動することができる。
【0030】
次に、本発明の効果を確認するために、図1に示す基板リフト装置LMを用いて次の実験を行った。本実験では、被処理基板をφ200mm(8インチ)のシリコンウエハW、チャックプレート2をPBN製とし、所定のチャック電圧でウエハWを吸着した後、真空チャンバ内でプラズマを利用した処理を実施するようにした。その後、静電チャックECへの電圧印加を停止した後、リフトピン5を中間位置まで上動させて、所定時間保持した。このとき、中間位置におけるチャックプレート2の上面から突出するリフトピン5の高さ及び中間位置にてリフトピン5を保持する保持時間を表1のように変化させて(即ち、チャックプレート2の上面から突出するリフトピン5の高さを0.1mm~1.1mmの間で0.1mmごと、中間位置にてリフトピン5を保持する保持時間を1秒~10秒の間で1秒ごと変化させて)、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりの発生及びウエハWの位置ずれや跳ね上がりによるウエハWの搬送の適否を評価した。その結果を表1に示す。なお、評価は、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりが発生し、ウエハWの搬送を行えなかったものは「×」とし、ウエハWの跳ね上がりは発生したが、ウエハWの位置ずれがなく、ウエハWの搬送が可能であったものは「○」とし、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりが全く発生せず、ウエハWの搬送に最適なものは「◎」とする三段階評価により行った。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、静電チャックEC(ステージST)の上面から突出するリフトピン5の高さを0.4mm~1.0mmに設定すれば、中間位置にて保持する保持時間に関わらず、ウエハWの跳ね上がりが発生しても、ウエハWの位置ずれが生じず搬送を行えることが確認された。更に、静電チャックECの上面から突出するリフトピン5の高さを0.4mm~0.5mm、中間位置にて保持する保持時間を4秒~10秒に設定すれば、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりが生じずに、処理後のウエハWを基板受渡位置まで移動することができ、ウエハWの搬送に最適であることが確認された。
【0033】
次に、表2のように異なる径の各ウエハW(即ち、ウエハ径が150mm、200mm、300mm、450mmのウエハW)について、所定のチャック電圧でウエハWをチャックプレート2に吸着して、真空チャンバ内でプラズマを利用した処理を実施した。その後、静電チャックECへの電圧印加を停止し、リフトピン5を中間位置まで上動させて、中間位置にてリフトピン5を4秒間保持した。このとき、中間位置におけるチャックプレート2の上面から突出するリフトピン5の高さを0.1mmごと変化させて、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりの発生及びウエハWの位置ずれや跳ね上がりによるウエハWの搬送の適否を、上記と同様に「×」、「○」、「◎」の三段階により評価した。「○」、「◎」の評価が得られたリフトピン5の高さの範囲(リフトピン5の高さの下限と上限)を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2より、中間位置における静電チャックEC(ステージST)の上面から突出するリフトピン5の高さとウエハWの径とには、概ね比例の関係が得られることが確認された。そして、静電チャックECの上面から突出するリフトピン5の高さをウエハWの径の1/500~1/200の範囲に設定すれば、ウエハWの位置ずれがなく、ウエハWの搬送が可能である。更に、ステージSTの上面から突出するリフトピン5の高さをウエハWの径の1/500~1/400の範囲に設定すれば、ウエハWの位置ずれや跳ね上がりが生じずに、処理後のウエハWを基板受渡位置まで移動することができ、ウエハWの搬送に最適であることが判った。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。上記実施形態では、リフトピン5を段階的に上動させる駆動手段として所謂に二段式のエアシリンダ9を用いるものを例に説明したが、例えばステッピングモータを用いることができ、また、設置するリフトピンの数や配置は上記のものに限定されるものではなく、被処理基板に応じて適宜設定できる。
【0037】
また、上記実施形態では、静電チャックとして双極型のものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、単極型のものでもよい。更に、上記実施形態では、被処理基板をシリコンウエハWとしたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、矩形のガラス基板にも適用できる。この場合、例えば、リフトピンを同一の仮想円周上で周方向に所定間隔で配置する場合、リフトピンの数や仮想円周の径は、サイズに応じて適宜設定される。
【符号の説明】
【0038】
LM…基板リフト装置、EC…静電チャック、ST…ステージ、W…ウエハ(被処理基板)、5…リフトピン、9…エアシリンダ(駆動手段)。
図1
図2