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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】イオン性化合物を含む粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/61 20060101AFI20220726BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220726BHJP
   C01B 21/086 20060101ALI20220726BHJP
   C07C 211/63 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
C07D233/61 102
C09J201/00
C09J9/02
C01B21/086
C07C211/63
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020545071
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018061996
(87)【国際公開番号】W WO2019104028
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】62/589,460
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー、ユイフェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホンシー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ポン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/064918(WO,A1)
【文献】Journal of Molecular Liquids,2015年,212,775-784
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2012年,51,8585-8588
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
を有する第1カチオン性化合物と、
式(I)または式(II)の第2カチオン性化合物と、を含む組成物であって、式(I)は以下の構造
【化2】
を有し、[式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、C~Cアルキル、またはC~Cアルコキシを表す]、式IIは以下の構造
【化3】
を有[式中、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表し、R、R、およびR10のそれぞれは、独立して、水素またはC~Cアルキルを表し、Rは、置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表す。]、
第1カチオン性化合物および第2カチオン性化合物のそれぞれが、以下の構造:
【化4】
を有するアニオン性化合物を含む、組成物。
【請求項2】
第2カチオン性化合物が、以下の構造:
【化5】
および
【化6】
のうちの1つを有する式(I)の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第2カチオン性化合物が、以下の構造:
【化7】
および
【化8】
のうちの1つを有する式(II)の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第1基材、第2基材、および第1基材と第2基材の間に配置された請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を含み、第1基材と第2基材とが前記複合材によって貼り合わされる装置。
【請求項5】
前記第1基材が第1導電性表面を含み、前記第2基材が第2導電性表面を含み、前記組成物が導電性表面と接触して配置される、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記導電性表面が、電気伝導性金属、混合金属、合金、金属酸化物、混合金属酸化物、プラスチック、炭素質材料、複合金属、または伝導性ポリマーを含む、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記導電性表面のうちの少なくとも1つがアルミニウムを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
DC電源をさらに含み、前記第1導電性表面および前記第2導電性表面のうちの少なくとも1つが前記DC電源と電気的に連通していて閉鎖可能な電気回路を作り出し、
DC電源が3ボルト~100ボルトである、請求項4~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性表面のうちの少なくとも1つへの電位の印加が前記組成物の粘着性を低減する、請求項4~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1導電性表面が第1導電層の表面であり、前記第2導電性表面が第2導電層の表面であり、前記第1導電層および前記第2導電層が厚さ20nm~200μmである、請求項4~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記導電性表面が基材上に配されており、
前記基材が、木材、厚紙、ガラス繊維または非電気伝導性プラスチックを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記組成物が前記第1導電性表面または前記第2導電性表面に対して低減した腐食効果を有し、
前記低減した腐食効果が、高湿および高温の条件下で15分~300時間の期間にわたって観察されうる、請求項4~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項の組成物で第1基材を第2基材に貼着することを含む方法。
【請求項14】
前記第1基材と前記第2基材の間に電位を印加することおよび前記第1基材を前記第2基材から分離することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1イオン性化合物と第2イオン性化合物との混合物を含む粘着剤組成物であって、
第1イオン性化合物が以下の構造:
【化9】
を有する第1カチオン性化合物を含み、
第2イオン性化合物が、以下の構造:
【化10】
【化11】
【化12】
および
【化13】
のうちの1つを有する第2カチオン性化合物を含み、
第1イオン性化合物および第2イオン性化合物のそれぞれが、以下の構造:
【化14】
を有するアニオン性化合物を含み、
前記第1イオン性化合物は、前記第2イオン性化合物がある金属性材料に対して呈する対応する第2腐食度よりも大きい第1腐食度を、前記金属性材料に対して呈し、
前記第1イオン性化合物と前記第2イオン性化合物との混合物は、前記金属性材料に対して、第1腐食度よりも低い対応する第3腐食度を呈し、
前記金属性材料に適用した場合、前記第1イオン性化合物と前記第2イオン性化合物との混合物を含む前記組成物は、電位を印加すると、前記金属性材料から選択的に剥離されうる、粘着剤組成物。
【請求項16】
電位を印加した時の前記金属性材料からの、前記第1イオン性化合物と前記第2イオン性化合物との混合物を含む前記組成物の剥離が、前記第2イオン性化合物のみを含む対応する第3組成物よりも高い前記金属性材料からの剥離性を呈する前記第1イオン性化合物を含む対応する第2組成物の剥離と実質的に同じように達成される、請求項15の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2017年11月21日に出願された米国仮特許出願第62/589,460号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料またはコーティング中に使用するか、またはそのような粘着材料もしくはコーティングとして使用しうる、イオン性化合物およびそれらを含む組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物とを含む組成物であって、基礎をなす基材に適用した後、電位を印加すればそこから剥離させうる組成物に関する。一態様において、組成物は、アンモニウムおよびイミダゾリウムカチオン性化合物とアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物またはさまざまなイミダゾリウムカチオン性化合物とアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物を含む。
【背景技術】
【0003】
第1基材の導電性表面に適用される粘着剤コーティングとして使用することができる組成物はいくつか知られている。この粘着剤コーティングは、第1基材と第2基材とを貼り合せまたは接合するために、第1基材の導電性表面と第2基材の導電性表面との間に挟むことができる。第1基材と第2基材とを互いに分離するために電位を印加すると、この粘着剤コーティングは、第1基材および第2基材のうちの一方または両方からデボンディングされる。しかし、このタイプのコーティングのいくつかの形態は、それらが適用される導電性表面に対して、望ましくない腐食効果を有しうることが、観察されている。したがって、この技術分野では今なお、さらなる貢献が必要とされている。
【0004】
本願において開示し、特許請求する主題は、何らかの短所を解決する実施形態、または上述した環境などの環境でのみ作動する実施形態に限定されない。むしろ、この背景技術は、本開示を利用することができる例を例証するために提供されているに過ぎない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料またはコーティング中に使用するか、またはそのような粘着材料もしくはコーティングとして使用しうる、イオン性化合物およびそれらを含む組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物とを含む組成物であって、基礎をなす基材に適用した後、電位を印加すればそこから剥離させうる組成物に関する。一態様において、組成物は、アンモニウムおよびイミダゾリウムカチオン性化合物とアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物またはさまざまなイミダゾリウムカチオン性化合物とアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物を含む。
【0006】
一実施形態において、組成物は、以下の構造:
【化1】
を有する第1カチオン性化合物を含む。
【0007】
前記組成物は、式(I)または式(II)の第2カチオン性化合物も含み、ここで、式(I)は、以下の構造
【化2】
を有し、[式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、またはC~Cアルコキシを表す]、式IIは以下の構造
【化3】
を有する[式中、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表し、R、R、およびR10のそれぞれは、独立して、水素またはC~Cアルキルを表し、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表す。ただし、Rがメチルを表す場合、Rはエチルを表さないものとする]。
【0008】
別の一実施形態において、粘着剤組成物は、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物との混合物を含む。第1イオン性化合物は、第2イオン性化合物がある金属性材料に対して呈する対応する第2腐食度よりも大きい第1腐食度を、前記金属性材料に対して呈する。加えて、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物との混合物は、前記金属性材料に対して、第1腐食度よりも低い対応する第3腐食度を呈する。金属性材料に適用した場合、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物との混合物を含む組成物は、電位を印加すると、前記金属性材料から選択的に剥離させうる。
【0009】
別の一実施形態において、ある方法では、前述した実施形態のうちの1つによる組成物で、第1基材を第2基材に貼着する。
【0010】
さらなる特徴および利点を以下の説明において述べるが、一部はその説明から自明となり、また一部は実践によって習得されうる。これらの特徴および利点は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される機器および組合せを使って実現され、獲得されうる。これらの特徴および他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から、より完全に明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2つの基材を貼り合せるための、本明細書に記載するイオン組成物の使用の概略図である。
【0012】
図2】電位を印加した時の図1の2つの基材の剥離またはデボンディングの概略図である。
【0013】
図3】本明細書に記載するイオン組成物の粘着性を試験するために使用される装置の概略図である。
【0014】
図4図3に関連して試験されたイオン組成物の引剥強度密度対時間のグラフである。
【0015】
図5】本明細書に記載するさまざまなイオン組成物の腐食効果の試験の画像表現である。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本開示の理解を促進するために、ここで下記の実施形態に言及し、具体的な表現を使ってそれらを説明する。それでも、それは本開示の範囲を限定しようとするものではなく、本明細書に記載するような、記載された主題における改変およびさらなる変更、ならびに開示された原理のさらなる応用が、本開示が関係する分野の当業者であれば通常思いつくであろうように想定されることは、理解されるだろう。
【0017】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料またはコーティング中に使用するか、またはそのような粘着材料もしくはコーティングとして使用しうる、イオン性化合物およびそれらを含む組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、第1イオン性化合物と第2イオン性化合物とを含む組成物であって、基礎をなす基材に適用した後、電位を印加すればそこから剥離させうる組成物に関する。一態様において、組成物は、アンモニウムおよびイミダゾリウムカチオンとアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物またはさまざまなイミダゾリウムカチオンとアニオン性スルホニルイミド化合物との混合物を含む。
【0018】
本明細書において、ある化合物または化学構造について「置換されていてもよい」という場合、それは、置換基を有しない(すなわち無置換の)特徴、または「置換されて」いる特徴(つまり、その特徴は1つ以上の置換基を有する)を含む。置換された基は無置換の親構造から誘導され、そこでは親構造上の1つ以上の水素が1つ以上の置換基で独立して置き換えられている。置換基は親基構造上に1つ以上の置換基を有しうる。1つ以上の形態において、置換基は、置換されていてもよいアルキルまたはアルケニル、-O-アルキルまたはアルコキシ(例えば-OCH、-OC、-OC、-OCなど)、-S-アルキルまたはアルキルスルホン(例えば-SCH、-SC、-SC、-SCなど)、-NR’R”、-OH、-SH、-CN、-NO、またはハロゲンから独立して選択することができ、ここで、R’およびR”は、独立して、水素または置換されていてもよいアルキルである。置換基が「置換されていてもよい」と記述されている場合、その置換基は、上記の置換基で置換されていることができる。
【0019】
本明細書において使用する「アミノ」という用語は、以下の構造:
【化4】
を有する、全体として荷電した、または正味の荷電がない、化学基を指す。
【0020】
本明細書において使用する「アンモニウム」という用語は、全体として荷電した、または正味の荷電がない、化学化合物:NR4+を指す。
【0021】
本明細書において使用する「イミダゾリウム」という用語は、全体として荷電した、または正味の荷電がない、以下の構造:
【化5】
を有する環系を指す。
【0022】
本明細書において使用する「ビス(フルオロスルホニル)イミド」および/または「スルホニルイミド」という用語は、例えば以下の構造:
【化6】
を有する、ヘテロ原子部分を指す。
【0023】
一実施形態において、イオン組成物は、以下の構造:
【化7】
を有する第1カチオン性イミダゾリウム化合物を含む。
【0024】
前記イオン組成物は第2カチオン性化合物も含む。一形態において、第2カチオン性化合物は塩基性カチオン性化合物である。例えば、第2カチオン性化合物は以下の一般構造:
【化8】
を有するアンモニウムカチオンでありうる。
【0025】
一形態において、この類のカチオン性化合物は、2つの置換基を有しうる少なくとも1つの脂肪族アミンを含む。上記に加えて、または上記に代えて、前記少なくとも1つの脂肪族アミンはアミノ基を含みうる。さらに、別の一形態において、この類のカチオン性化合物は、3つの置換基を有しうる第2脂肪族アミンを含む。この形態の一態様において、第2脂肪族アミンはアンモニウム基を含む。1つ以上の形態において、この類のカチオン性化合物中のリンカーは、例えばメチル、エチルまたはプロピル基などのC~C脂肪族鎖である。
【0026】
より具体的な一形態において、第2カチオン性化合物は式(I):
【化9】
の化合物である。
【0027】
一形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、またはC~Cアルコキシを表す。別の一形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、C~Cアルキルを表す。いくつかの形態において、R、R、R、RおよびRのうちの1つ以上が疎水性官能基を表すかまたは疎水性官能基を含みうることは、理解されるべきである。疎水性官能基が存在する場合、その疎水性官能基は、メチル、エチルおよび/またはプロピル基などの置換されていてもよいアルキル基を含むことができる。
【0028】
具体的一形態において、第2カチオン性化合物は、以下の化合物:
【化10】
のうちの1つまたはそれらの組合せもしくは混合物である。
【0029】
別の一例として、第2カチオン性化合物は、以下の一般構造:
【化11】
を有するイミダゾリウムカチオン性化合物でありうる。
【0030】
一形態において、この類のカチオン性化合物は、2つの置換基を含んでもよい脂肪族アミンでありうる少なくとも1つのアミンを含む。上記に加えて、または上記に代えて、前記少なくとも1つの脂肪族アミンはアミノ基を含みうる。さらに、別の一形態において、この類のカチオン性化合物は、2つの置換基を含んでもよいアリールアミンでありうる第2アミンを含む。具体的一形態において、前記アリールアミンはイミダゾリウム基を含む。1つ以上の形態において、カチオン性化合物中のリンカーは、例えばメチル、エチルまたはプロピル基などのC~C脂肪族鎖でありうる。
【0031】
より具体的な一形態において、第2カチオン性化合物は、式(II):
【化12】
のイミダゾリウムカチオン性化合物である。
【0032】
式IIなどの任意の関連構造表現に関し、いくつかの実施形態において、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表す。いくつかの実施形態において、RはC~CアルキルまたはCアルキルアミンを表す。いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキルを表す。いくつかの実施形態において、RはCアルキルアミンを表す。いくつかの実施形態において、RはCアルキルを表す。いくつかの実施形態において、RはCアルキルを表す。いくつかの実施形態において、Rは1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)を表す。
【0033】
式IIなどの任意の関連構造表現に関し、いくつかの実施形態において、Rは、C~CアルキルまたはHを表す。いくつかの実施形態において、Rは水素を表す。いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキルを表す。いくつかの実施形態において、Rは置換Cアルキルを表す。
【0034】
式IIなどの任意の関連構造表現に関し、いくつかの実施形態において、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表す。いくつかの実施形態において、RはCアルキルアミンを表す。いくつかの実施形態において、Rは1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチルを表す。いくつかの実施形態において、RはCアルキルを表す。
【0035】
式IIなどの任意の関連構造表現に関し、いくつかの実施形態において、Rは水素またはC~Cアルキルを表す。いくつかの実施形態において、Rは水素を表す。
【0036】
式IIなどの任意の関連構造表現に関して、R10は水素またはC~Cアルキルを表す。いくつかの実施形態において、R10は水素を表す。
【0037】
一形態において、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表し、R、R、およびR10のそれぞれは、独立して、水素またはC~Cアルキルを表し、Rは、C~Cアルキルまたは置換されていてもよいC~C12アルキルアミンを表す。この形態の一態様において、Rがメチルを表す場合、Rはエチルを表さない。さらに具体的な別の一形態において、Rは、C~CアルキルまたはCアルキルアミンを表し、Rは、C~CアルキルまたはHを表し、RはCアルキルアミンを表し、RおよびR10は水素を表す。さらにもう1つの具体的形態において、R、R、およびR10のそれぞれは水素を表し、RはC~Cアルキルを表し、RはCアルキルアミンを表す。さらに別の一形態において、RおよびR10のそれぞれは水素を表し、RはC~Cアルキルを表し、RおよびRのそれぞれはCアルキルアミンを表す。さらなる別の一形態において、RはCアルキルを表し、Rは水素を表し、Rは1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)を表し、RおよびR10のそれぞれは水素を表す。さらに別の一形態において、Rは1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)を表し、Rは置換Cアルキルを表し、Rは1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)を表し、RおよびR10のそれぞれは水素を表す。RがCアルキルを表し、R、RおよびR10のそれぞれが水素を表し、RがCアルキルを表す形態も想定される。
【0038】
いくつかの形態において、R、R、R、RおよびR10のうちの1つ以上が親水性官能基を表すかまたは親水性官能基を含みうることは、理解されるべきである。親水性官能基が存在する場合、その親水性官能基は窒素、硫黄および/またはリンを含みうる。具体的一形態において、親水性官能基はアミノ基を含む。
【0039】
具体的一形態において、イミダゾリウムカチオン性化合物である第2カチオン性化合物は、以下の化合物:
【化13】
のうちの1つまたはそれらの組合せもしくは混合物である。
【0040】
イオン組成物は1つ以上のアニオン性化合物も含む。例えば、第1カチオン性化合物と第2カチオン性化合物は、同じアニオン性化合物または異なるアニオン性化合物を含むイオン性化合物の一部でありうる。一形態において、前記1つ以上アニオン性化合物はスルホニルスルホン酸アミドアニオンである。具体的一形態において、スルホニルスルホン酸アミドアニオンはフルオロアルキルスルホニルアミド化合物を含む。別の具体的一形態において、フルオロスルホニルアミド化合物は以下の構造:
【化14】
を有する。
【0041】
ここまで論じてこなかったが、本明細書に記載するイオン組成物が、例えばそれらを適用しうる金属性材料に対して低減した腐食性をもたらしうる低減したルイス酸性を呈しうることは、理解されるべきである。いくつかの態様において、イオン組成物は適切なpHを含むことができる。いくつかの態様において、イオン組成物は、過度に酸性でなく過度に塩基性でもないpHを含むことができる。いくつかの例において、pHは、約5から約9、または約6から約8もしくは約7に及ぶことができる。アルカリ性である場合、pHは約7から約9、約7.5から約8.5もしくは約8に及ぶことができる。加えて、本明細書に開示するイオン組成物は、一般に低減したサイズ、例えば160g/モル未満を有しうると想定される。やはりここまで論じてこなかったが、本明細書に開示するイオン組成物が、約95%の第1カチオン性化合物と約5%の第2カチオン性化合物とを含む第1カチオン性化合物と第2カチオン性化合物との混合物を含みうることも、理解されるべきである。あるいは、混合物は、約5%の第1カチオン性化合物と約95%の第2カチオン性化合物とを含みうる。別の一形態において、混合物は、約40~60%の第1カチオン性化合物と40~60%の第2カチオン性化合物とを含みうる。さらに別の一形態において、混合物は、約50%の第1カチオン性化合物と約50%の第2カチオン性化合物とを含みうる。ただし、他のバリエーションも想定される。
【0042】
本明細書に記載するイオン組成物は、2つ以上の物品を剥離可能な形で互いにボンディングするために使用しうる粘着剤として利用するか、またはそのような粘着材料中に利用することができる。すなわち、本明細書に記載するイオン組成物は選択的デボンディング可能層を提供しうる。言い換えると、前記粘着材料を使用することで、物品を互いに選択的にボンディングしうると共に、所望であれば、前記粘着材料は物品のうちの1つ以上からデボンディングされて物品の分離を容易にすることができる。より具体的には、第1基材と第2基材とを互いにボンディングまたは接合するために、本開示の粘着材料を第1基材の導電性表面上に設け、第2基材の導電性表面を前記粘着材料と接触させて配置することができる。この構成では、粘着材料が第1基材と第2基材との間に挟まれるが、他のバリエーションも想定される。上に示したように、所望であれば、粘着材料は第1基材と第2基材のデボンディングおよび分離を容易にする。より具体的には、電位を印加すると、粘着材料は基材のうちの一方または両方の伝導性表面からデボンディングまたは剥離されて、第1基材と第2基材を互いに分離させることになる。
【0043】
選択的デボンディング可能層は、2つの非伝導性材料を互いに貼着し、次に、デボンディングされた材料が伝導性材料または伝導性層を一切含有しないようにボンディングを開放するために、選択的デボンディング可能構造において使用することができる。このタイプの構造は、選択的デボンディング可能層が両面に貼着されている電気伝導性層を含む。これらの粘着剤層のそれぞれは、次に、非伝導性材料に貼着されることで、2つの非伝導性構造間に粘着性を提供することができる。次に、両粘着剤層における粘着性を低減するために、電気伝導性層に起電力を印加することができる。こうして、2つの非伝導性構造は、最初に伝導性層または伝導性材料にボンディングしまたは取り付ける必要なく、互いに貼着し、次に分離することができる。
【0044】
ここまで書いてこなかったが、本明細書に開示する組成物が、カチオン性化合物およびアニオン性化合物の他にも構成要素を含みうることは、理解されるべきである。例えば、一形態において、組成物はポリマーも含みうる。本明細書に記載する組成物中に存在するであろうポリマーの非限定的な例としては、明示的参照により本明細書にその全体が組み込まれる国際公開第2017/064918号および/または特開2017-075289に記載されているものが挙げられる。一形態において、ポリマーは0℃未満のガラス転移温度を有するが、他のバリエーションも考えられる。いくつかの態様において、ポリマーはアクリルポリマーであることができる。いくつかの態様において、アクリルポリマーは、式RCH=CHCOのモノマーから誘導されるモノマー単位を含むことができ、式中、RはHまたはC1~14アルキル(例えばメチル、エチル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキルなど)であり、RはHまたはC1~14アルキル(例えばメチル、エチル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキルなど)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、またはそれらの組合せから誘導される繰り返し単位を含む。いくつかの態様において、アクリルポリマーは、アルキル-メタクリレートエステルおよび極性基を含有するモノマーに由来するモノマー単位を含有することができる。一形態において、アクリルポリマーは、アクリレートポリマー、アルキルアクリレートポリマー、アルキル-アルキルアクリレートエステルポリマー、またはそれらの組合せでありうる。いくつかの態様において、ポリマーは、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、またはアクリレートポリマーとメタクリレートポリマーとの両方の組合せを含む。一態様において、アクリルポリマーは、C~C14アルキル基含有アルキル(メタ)アクリレートエステルから誘導されるモノマー単位を含有する。しかし別の形態において、アクリルポリマーは、C~C14アルキルまたはアルコキシ基から誘導されるモノマー単位を含有することができる。一形態において、アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートエステルおよび極性基含有モノマーから誘導されるモノマー単位を含有しうる。この形態の一態様において、極性基含有モノマーはカルボキシル基含有モノマーでありうる。この形態のさらなる態様または代替態様において、C~C14アルキル基含有アルキル(メタ)アクリレートエステルはブチル(メタ)アクリレートである。いくつかの態様において、C1~14アルキル基含有アルキル(メタ)アクリレートエステルはブチル-メタクリレートエステルであり、メチル-メタクリレートエステル、エチル-メタクリレートエステル、プロピル-メタクリレートエステル、メチル-エチルアクリレートエステル、メチル-プロピルアクリレートエステル、メチル-ブチルアクリレートエステル、または他のアルキル-アルキルアクリレートエステルであってもよい。
【0045】
ここまで論じてこなかったが、ポリマーが架橋されていてもよいことは、理解されるべきである。架橋ポリマーは、組成物中のポリマーとのみ架橋されたポリマーを含みうる。いくつかの態様において、架橋ポリマーはアンモニウムカチオンと化学的に架橋しうる。いくつかの態様において、架橋ポリマーはフルオロスルホニルイミドアニオンと化学的に架橋しうる。いくつかの態様において、架橋ポリマーはアンモニウムカチオンおよびフルオロスルホニルイミドアニオンと化学的に架橋しうる。ポリマーを架橋することができる架橋剤は、架橋ポリマーを与えるために、所望の性質に基づいて選択することができる。架橋剤はアルキル-アルキルアクリレートエステルとの使用に適しうる。例えば一形態において、ポリマーは、非限定的な一例に過ぎないが、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンなどのエポキシ架橋剤で架橋される。ただし、ポリマーの架橋には任意の適切な架橋剤を使用してよいと認識すべきである。架橋剤は、本明細書に記載する選択的粘着性および選択的デボンディング性が保たれるように選択することができる。架橋剤は、本明細書に記載する腐食防止性が保たれるように選択することもできる。
【0046】
粘着剤組成物には、本明細書に記載の任意の適切量のイオン液体を、単独で、または組み合わせて、使用しうる。いくつかの実施形態において、イオン液体またはイオン化合物は、イオン液体+ポリマーの総重量の約0.0~1%、約1~2%、約2~3%、約3~4%、約4~5%、約5~6%、約6~7%、約7~8%、約8~9%、約9~10%、約10~15%、約15~20%、約20~25%、約25~30%、約30~40%、約40~50、約50~100%、約4.5~5.0%、または約5%である。
【0047】
本明細書に記載する組成物は、例えば特開2017-075289および/または国際公開第2017/064925号に開示されているデバイスにおける応用を含む、いくつかの異なる応用に利用することができると想定される。したがってデバイスは、本明細書に記載の選択的粘着剤組成物を有する電気伝導性基材を含む電子デバイスであることができる。いくつかの態様において、デバイスはバッテリーを含むことができる。
【0048】
ここで図1および図2を参照して、装置200において2つの基材を互いに選択的にボンディングするための、本明細書に記載するイオン組成物の使用に関するさらなる詳細を提供する。本明細書に記載するイオン組成物を含む粘着材料203は、基材202の導電性表面206と基材201の導電性表面207との間に配置された層またはコーティングを与える。いくつかの実施形態において、粘着材料203は、粘着剤層を形成させた実施形態のうちの1つの粘着剤組成物と、前記粘着剤層の少なくとも一方の面上の少なくとも1つの剥離ライナーとを含むことができる。いくつかの態様において、粘着部材は、粘着剤層の両面上に剥離ライナーを含むことができる。粘着剤層をもう1つの表面に貼着することができるように、剥離ライナーを取り除くことで粘着層の一面を露出させうる。
【0049】
一形態において、基材201、202のうちの一方または両方は、導電性表面206、207のうちの一方または両方が基材201、202の残りの部分と同じ材料で形成されるように、導電性材料で形成されていてもよい。しかし別の形態では、基材201、202を形成している材料とは異なる1種以上の導電性材料を、導電性表面206、207に使用することも可能である。また、表面206、207またはその一部分が導電性である限りにおいて、基材201、202のうちの一方または両方が、木材、厚紙、ガラス繊維密度繊維板またはポリマー/プラスチック材料などといった、導電性でない1種以上の材料で形成されうることは、理解されるべきである。いくつかの態様において、基材201および202は電気絶縁体であることができる。いくつかの態様において、基材201および202は半導体でありうる。非電気伝導性基材201もしくは202または半導体基材(例えばプリント回路基板、PCB)はいずれも、任意の厚さを有することができ、他の基材、材料またはデバイスと連結されていてもよい。これらの形態において、導電性表面206、207は、基材201、202上のコーティングまたは層として提供されうる。
【0050】
例証された形態において、導電性表面206、207は、介在スイッチ205を含む閉鎖可能な電気回路において、電力源204と電気的に接続されまたは電気的に連通している。一形態において、電力源204は、約3V~100Vの範囲内のDC電圧を提供する直流電源でありうるが、他のバリエーションも想定される。導電性表面206、207のうちの一方または両方から粘着材料203をデボンディングさせるためにスイッチ205を閉じると、導電性表面206、207間に電位が印加され、結果として、基材201および202を、互いに物理的に分離させることが可能になる。例えば、いかなる特定理論にも束縛されるものではないが、粘着材料203への電位の印加により、粘着材料203内でのイオンの移動が達成されうると考えられる。十分な量の移動が達成されると、例えば十分なイオン構成要素が電気伝導製表面に隣接して現れると、粘着材料の粘着剤品質が低減して、電気伝導性表面206、207および/または粘着材料203の分離が可能になる。
【0051】
一形態では、基材201、202のうちの一方または両方が導電性炭素質材料または導電性金属を含みうる。上で示唆したように、基材201、202のうちの一方または両方は、限定するわけではないがアルミニウムなどの金属材料で形成されていてもよい導電層も含みうる。導電層は、例えば金属、混合金属、合金、金属酸化物、および/または複合金属酸化物などの従来の材料を含みうるか、伝導性ポリマーを含みうる。導電層のための適切な金属の例としては、第1族金属、第4、5、および6族の金属、ならびに第8~10族遷移金属が挙げられる。導電層のための適切な金属のさらなる例としては、ステンレス鋼、Al、Ag、Mg、Ca、Cu、Mg/Ag、LiF/Al、CsFおよび/もしくはCsF/Alならびに/またはそれらの合金が挙げられる。いくつかの実施形態において、電気伝導性層(例えば第1電気伝導性表面206および第2電気伝導性表面207)および/または粘着剤層は、それぞれ、約1nm~約1000μm、または1nm~約100μm、または1nm~約10μm、または1nm~約1μm、または1nm~約0.1μm、または10nm~約1000μm、または100nm~約1000μm、または1μm~約1000μm、または10μm~約1000μm、または100μm~約1000μmの範囲の厚さを有することができる。いくつかの態様において、厚さは20nm~約200μm、または100nm~約100μm、または200nm~約500μmであることができる。
【0052】
ここまで論じてこなかったが、本明細書に記載するイオン組成物が一定の応用にとって望ましいさまざまな性質を与えうることは、理解されるべきである。例えばいくつかの形態において、本明細書に開示するイオン組成物は、それらが配置された導電性表面の腐食を排除または低減しうる。例えば一形態において、本明細書に開示するイオン組成物は、導電性表面に直接隣接する環境の酸性度を低減する構成要素を含む。一態様において、粘着材料は、カチオン性化合物およびアニオン性化合物そのものの他にも、導電性表面に直接隣接するイオン性カチオンおよび/またはアニオンの腐食性を低減するために使用されうる1種以上の材料を含みうる。粘着材料の腐食効果は、ASTM G69-12(アルミニウム合金の腐食電位を測定するための標準試験法)に記載の手順に準拠して評価することができる。導電性表面に対する粘着材料の腐食効果を評価するためのさらなる手順は、本願の実施例に記載する。例えば、電気伝導性表面または電気伝導性材料に対するイオン組成物の腐食効果を評価するための適切な代替プロトコールの1つは、イオン組成物(またはイオン組成物が含まれている材料)と電気伝導性表面または電気伝導性材料(例えばアルミニウム箔)の間の界面を、基材の腐食分解および/またはイオン組成物(またはイオン組成物が含まれている材料)への電気伝導性基材からの材料(例えば金属)の溶解および/または電気伝導性基材の表面の点食の何らかのしるしについて目視検査することによって達成することができる。
【0053】
一形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料は、導電性電極または導電性材料に対して化学的に安定でありうる。すなわち金属材料/電極と粘着材料との間には、不要な反応がない(またはその存在はごくわずかである)。不要な反応には、例えば金属材料/電極の腐食分解、選択粘着性粘着剤への金属の溶解および/または金属材料/電極の点食が含まれうる。本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料は、ほんの一例に過ぎないがアルミニウム、ステンレス鋼および/またはそれらの混合物に対して、化学的に安定でありうる。一形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料の、導電性表面への接触は、少なくとも15分、30分、1時間、3時間、5時間、7時間、24時間、50時間、100時間、125時間、200時間、300時間および/もしくは400時間またはそれ以上の期間にわたって、表面のいかなる腐食分解ももたらさないか、表面のいかなる腐食分解も最小限に抑えうる。いくつかの形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料の、導電性表面への直接的接触は、60℃および90%相対湿度(RH)、85℃および85%RH、または90℃および80%RHの環境において、上述した期間のうちの1つにわたって、表面の腐食分解を最小限に抑えかつ/または防止しうる。一形態において、いかなる腐食分解も存在しないことは、上述した期間のうちの1つにわたって、かつ/または上述した環境条件において、50nm厚の導電性アルミニウム箔シートの貫通がないことによって実証することができる。
【0054】
一形態において、本明細書に記載するイオン組成物を含む粘着材料は、長期にわたる高湿度および高温の条件下で導電性表面の腐食を最小限に抑えるように配合されうる。例えば粘着剤組成物は、加速劣化試験法IIに供している間および供した後に(好ましくは上述した期間のうちの1つにわたって85℃および85%RHに曝露した後に)、2つの基材を互いに固定された関係に維持する能力を有しうる。
【実施例
【0055】
以下の実施例は例証を目的としており、この文書に開示する主題をこれらの実施例に開示される実施形態だけに限定していると解釈されることは意図していないことを理解すべきである。
【0056】
実施例1:2-(ジメチルアミノ)-N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミドの合成
【化15】
【0057】
N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン(15mL、100mmol)の乾燥アセトニトリル(75mL)溶液を圧力反応器に入れた。臭化エチル(3.7mL、50mmol)を加え、反応器を密封し、60℃で16時間加熱した。揮発物を減圧下で除去した。残渣をエチルエーテル(200mL)でトリチュレートしたところ、密な沈殿物が生じた。その固形物を濾別し、エチルエーテルで洗浄し、真空乾燥器で乾燥することにより、2-(ジメチルアミノ)-N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム臭化物(10.58g、収率94%)を得た。
【0058】
2-(ジメチルアミノ)-N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム臭化物(8.02g、35.6mmol)、KFSI(7.80g、35.6mmol)および乾燥アセトン(100mL)の混合物をアルゴン下、60℃で2時間、撹拌した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することにより、油状物質を得た。粗生成物の酢酸エチル(200mL)溶液を水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮することにより、純粋な2-(ジメチルアミノ)-N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド(9.60g、収率88%)を得た。H NMR(d-DMSO)δ:3.38(q,J=7.2Hz,2H)、3.35(t,J=6.2Hz,2H)、3.03(s,6H)、2.62(t,J=6.2Hz,2H)、2.20(s,6H)、1.24(t,J=7.2Hz,3H)。
【0059】
実施例2:2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミドの合成
【化16】
【0060】
N,N,N’,N’-テトラエチルエタン-1,2-ジアミン(10.1g、58.6mmol)の乾燥アセトニトリル(65mL)溶液を圧力反応器に入れた。臭化エチル(4.79g、43.96mmol)を加え、反応器を密封し、60℃で16時間加熱した。揮発物を減圧下で除去した。エチルエーテル(75mL)で残渣をトリチュレートしたところ、粗生成物がゆっくりと再結晶した。白色結晶を濾別し、エチルエーテル(100mL)で洗浄し、真空乾燥器において室温で2時間乾燥することにより、2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム臭化物(11.22g、収率68%)を得た。
【0061】
2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム臭化物(5.61g、19.9mmol)、KFSI(4.37g、19.9mmol)および乾燥アセトン(100mL)の混合物をアルゴン下、50℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、粗生成物を得た。ジクロロメタン(75mL)を粗生成物に加え、その結果生じた混合物を終夜放置した。細かい白色沈殿物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することにより、純粋な2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド(7.14g、収率94%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ3.29(q,J=7.2Hz、6H)、3.23(t,J=6.9Hz,2H)、2.68(t,J=6.8Hz,2H)、2.58~2.44(m,4H)、1.19(t,9H)、0.98(t,J=7.1Hz、6H)。
【0062】
実施例3:1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム=ビス(フルオロスルホニル)アミドの合成
【化17】
【0063】
乾燥アセトニトリル(80mL)中の1-メチル-1H-イミダゾール(3.99g、48.6mmol)、2-ジイソプロピルアミノエチルクロリド塩酸塩(10.21g、51.0mmol)、および炭酸ナトリウム(14g、132mmol)を丸底フラスコに入れた。反応混合物をアルゴン下で24時間還流した。室温に冷却した後、反応混合物をセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮することで、粗生成物を得た。残渣をエチルエーテル(100mL)でトリチュレートした。白色固形物を濾別し、エチルエーテル(50mL×2)で洗浄し、真空乾燥器中、50℃で3時間乾燥することにより、1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム塩化物(10.36g、収率87%)を得た。
【0064】
1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム塩化物(5.0g、20.3mmol)、KFSI(4.46g、20.3mmol)および乾燥アセトン(100mL)の混合物をアルゴン下、50℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、粗生成物を得た。ジクロロメタン(100mL)を粗生成物に加え、その結果生じた混合物を終夜放置した。細かい白色固形物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することにより、純粋な1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド(7.64g、収率96%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.03~8.97(m,1H)、7.73(t,J=1.8Hz,1H)、7.67(t,J=1.8Hz,1H)、4.10(t,J=5.8Hz,2H)、3.87(s,3H)、2.96(hept,J=6.6Hz,2H)、2.73(t,2H)、0.85(d,J=6.6Hz,12H)。
【0065】
実施例4:1,3-ビス(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-2-エチル-1H-イミダゾール-3-イウム=ビス(フルオロスルホニル)アミドの合成
【化18】
【0066】
乾燥アセトニトリル(80mL)中の2-エチル-1H-イミダゾール(4.67g、48.6mmol)、2-ジイソプロピルアミノエチルクロリド塩酸塩(10.21g、51.0mmol)、および炭酸ナトリウム(14g、132mmol)を丸底フラスコに入れた。反応混合物をアルゴン下で24時間還流した。室温に冷却した後、反応混合物をセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮することで、粗生成物を得た。残渣をエチルエーテル(100mL)でトリチュレートした。白色固形物を濾別し、エチルエーテル(50mL×2)で洗浄し、一置換生成物がもはや存在しなくなるまで、MeCN/エチルエーテルにおける再結晶でさらに精製した。精製された生成物を、真空乾燥器中、50℃で3時間乾燥することにより、1,3-ビス(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-2-エチル-1H-イミダゾール-3-イウム塩化物(3.35g、収率18%)を得た。
【0067】
1,3-ビス(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-2-エチル-1H-イミダゾール-3-イウム塩化物(3.35g、8.65mmol)、KFSI(1.897g、8.65mmol)および乾燥アセトン(80mL)の混合物をアルゴン下、50℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、粗生成物を得た。ジクロロメタン(100mL)を粗生成物に加え、その結果生じた混合物を終夜放置した。細かい白色固形物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することにより、純粋な1,3-ビス(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-2-エチル-1H-イミダゾール-3-イウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド(4.42g、収率96%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.70(s,2H)、4.09(t,J=5.9Hz,4H)、3.09(q,J=7.6Hz,2H)、3.00(hept,J=6.6Hz,4H)、2.76(t,J=5.9Hz,4H)、1.26(t,J=7.6Hz,3H)、0.88(d,J=6.6Hz,24H)。
【0068】
実施例5:1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)アミド(C5)の合成
【0069】
1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)アミドは、米国特許第7,901,812号に記載されているように作ることができる。
【0070】
実施例6:ポリマー溶液の調製
【0071】
窒素ガス注入口を装着した冷却器に取り付けられた撹拌フラスコに、95質量部のn-ブチルアクリレート、5質量部のアクリル酸および125質量部の酢酸エチルを投入した。反応系から酸素を除去するために約1時間にわたって窒素ガスを導入しながら、その混合物を室温で撹拌した。0.2質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加えたところ、その結果生じた混合物の温度は約63°±2℃まで上昇し、その結果生じた混合物を重合のために約5~6時間混合/撹拌した。反応停止後に、約30%の固形分を有するアクリルポリマー含有溶液が得られた。このポリマー溶液(P1)の見掛けの分子量は約800,000と決定され、ガラス転移温度(Tg)は約-50℃であった。
【0072】
実施例7:粘着シートの調製
【0073】
粘着シートは、上記実施例6に記載のポリマー溶液を、ポリマー溶液固形分100gあたり0.01gのエポキシ架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、および化合物C5、化合物C5と化合物C1の組合せ、化合物C5と化合物C2の組合せ、化合物C5と化合物C3の組合せ、または化合物C5と化合物C4の組合せのいずれかを含むイオン液体と混合して電気的デボンディング可能な粘着剤組成物を得ることによって調製した。調製された組成物を表面処理されたPETセパレータ(剥離ライナー)[MRF38、三菱ケミカル製、日本]上に被覆/沈着させて、厚さ約150ミクロン(μm)の粘着複合材層を形成させた。次に、その塗膜を130℃で約3分間、加熱乾燥した。次に、第2PETセパレータ(剥離ライナー)を露出している粘着剤コーティングの上に整列させることで、重層シート(PETセパレータ/粘着剤コーティング/PETセパレータ)を得て、次にそれを50℃で約20~24時間にわたってエージング/乾燥した後、必要になるまで周囲条件下で保管した。
【0074】
実施例8:粘着イオン組成物腐食試験
【0075】
PETフィルム上のナノ-Alコーティング層への実施例7に記載の粘着シートの適用直前に、各粘着シートから前述の剥離ライナーを取り除いた。次に、粘着シートを、フィルム(50nm厚アルミニウム被覆PETフィルム[東レフィルム加工、日本国東京])の金属性表面に適用した。
【0076】
調製済みフィルムを、60℃/85%相対湿度(RH)、85℃/85%RHまたは80℃/90%RHに設定したベンチトップ型恒温恒湿器(ESPEC North America、米国ミシガン州ハドソンビル、Criterion Temperature & Humidity Benchtop Model BTL-433)に入れ、選択された時間で(最初は1時間ごと)定期的にチェックした。図5に示すように、粘着剤とアルミニウム箔の間の界面を、アルミニウム箔の腐食分解、選択粘着性粘着剤への金属の溶解および/またはアルミニウム箔の点食のしるしについて目視検査した。腐食性が観察された場合は、その時間を記録し、その試料を腐食性と表示した。結果を下記表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例9:粘着剤組成物の電気的デボンディング試験
【0079】
粘着剤組成物の電気的デボンディングまたは電気的剥離に関する試験は、特開2017-095590および/または国際公開第2017/064918号に記載され図3の装置300にも示されているように行った。図3に示すように、粘着材料303(化合物C4と化合物C5との混合物を含むもの)を、幅25mm、長さ100mmの伝導性基材301上に被覆した。その結果得られた基材301を、幅が10mm~25mmで基材301より100mm長い別の屈曲性伝導層302(例えばアルミニウム箔および/または金属被覆されたPETなどのプラスチックフィルム)上に積層した。積層は2kgローラ-およびロールプレスによる転造圧力の適用によって行った。
【0080】
ボンディング/デボンディング試験機(Mark-10、米国ニューヨーク州コペーグ、モデルESM303電動引張/圧縮スタンド)にはMark-10フォースゲージ(シリーズ7-1000)が装着され、下側クランプおよび上側クランプが設けられていた。伝導性基材301を下側クランプに固定してから、電源304(Protek DC電源3006B)の正極に電気的に接続した。屈曲性伝導層302を同じDC電源の負極と接続された上側クランプに固定した。電源は0~100VDCの出力範囲を有した。移動/引剥速度は300mm/分に設定した。スイッチ305が存在し、これを閉じると、基材301と層302との間に電位が印加される。
【0081】
動的試験では、引剥開始または分離開始の数秒後に電圧を印加し、時刻とフォースゲージからの引剥強度の読みとを、データ取得システム(Mark-10 MESURgauge Plus)によって記録する。図4は、化合物C4および化合物C5を含む組成物が5wt.%の濃度で添加された粘着材料に10VDCを印加した場合の180度引剥強度発現を示している。
【0082】
静的デボンディング試験では、試料を試験機上に固定し、同じように電源に接続した。初期180度引剥を同じ引剥速度で測定した。次に引剥を中止した。DC電圧(例えば10VCD)を同じ時間(例えば10秒間)印加した。300mm/分の同じ引剥速度で引剥強度を測定した。化合物C4と化合物C5との混合物を有する組成物を含む同じ粘着剤試料について、初期引剥強度は6.0N/cmであり、10VDCを10秒間印加した後の残存粘着引剥強度は約1である。
【0083】
一実施形態において、第1腐食レベルおよび第1デボンディング能を有する第1イオン性化合物ならびに第2腐食レベルおよび第2デボンディング能を有する第2イオン性化合物を含むイオン組成物が提供される。一形態において、第1腐食レベルは第2腐食レベルより高く、第1デボンディング能は第2デボンディング能より大きい。しかしイオン組成物は、第1腐食レベルより低い腐食レベルおよび第1デボンディング能と実質的に同じデボンディング能を呈する。
【0084】
別の一実施形態において、イオン組成物は第1イオン性化合物と第2イオン性化合物とを含み、第1イオン性化合物中のカチオン性化合物は第2イオン性化合物中のカチオン性化合物とは異なる。加えて、電気伝導性表面に適用した場合、本組成物は2つの物品を1つにボンディングするために使用することができ、電位の印加時にはそれらを互いから剥離させることができる。
【0085】
開示したプロセスおよび/または方法に関して、それらのプロセスおよび方法において実行される機能は、文脈によって示されうるとおり、異なる順序で実装することができる。さらにまた、概説した工程および操作は例として提供されているに過ぎず、工程および操作の一部は随意であるか、より少ない工程および操作に統合されるか、追加の工程および操作に拡張することができる。
【0086】
本開示は、他のさまざまな構成要素内に含まれたまたは他のさまざまな構成要素と接続されたさまざまな構成要素を例証する場合がある。描写されたそのようなアーキテクチャは単なる例示であって、同じ機能性または類似する機能性を達成する他の多くのアーキテクチャを実装することができる。
【0087】
本開示および添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の主要部)において使用される用語は、一般に、「非限定的な」用語であるものとする(例えば「~を含む」と言う用語は「~を含むが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであり、「~を有する」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、「~が挙げられる」という用語は「~が挙げられるが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであるなど)。また、具体的な要素の数が導入される場合、これは、文脈によって示されうるとおり、少なくとも叙述された数を意味すると解釈することができる(例えば他の修飾語を伴わない「2つの叙述」という裸の叙述は、少なくとも2つの叙述または2つ以上の叙述を意味する)。本開示において使用される場合、2つ以上の代替的用語を提示する離接語および/または離接句はいずれも、それらの用語のうちの1つ、それらの用語のうちのいずれか、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解されるべきである。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を包含すると理解されるだろう。
【0088】
使用される用語および単語は書誌学的な意味に限定されるのではなく、本開示の明瞭で一貫した理解を可能にするために使用されるに過ぎない。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、複数の指示対象を含むと、理解されるべきである。したがって、例えば「構成要素表面」への言及は、そのような表面のうちの1つ以上への言及を含む。
【0089】
「実質的に」という用語は、叙述された特質、パラメータまたは値が厳密に達成される必要はなく、逸脱または変動が、例えば公差、測定誤差、測定精度限界および当業者に知られる他の因子を含めて、それらの特質によって提供されることが意図されている効果を排除しない量で、存在しうることを意味する。
【0090】
本開示の諸態様は、本発明の要旨または欠くことのできない特質から逸脱することなく、他の形態でも体現しうる。記載された態様は、あらゆる点で制限ではなく例証であると見なされるべきである。請求項に係る主題は、上述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。請求項の意味および等価な範囲内に入る変化はすべて、それらの範囲内に包含されるべきである。
図1
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図3
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図5