(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法およびその制御装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/124 20060101AFI20220726BHJP
B22D 11/22 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B22D11/124 N
B22D11/124 L
B22D11/22 A
(21)【出願番号】P 2020550144
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2019078326
(87)【国際公開番号】W WO2019184731
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】201810268641.3
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515050091
【氏名又は名称】▲馬▼鞍山▲鋼▼▲鉄▼股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ウー リーピン
(72)【発明者】
【氏名】シェン チャン
(72)【発明者】
【氏名】スン ビャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン グオツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ルー チアン
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-286777(JP,A)
【文献】特公昭49-006974(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00- 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶器出口から凝固終点までの区間には、超強冷却領域(210)および加熱徐冷領域(230)が設けられており、連続鋳造鋳片(100)は、超強冷却領域(210)で超強冷却してから、加熱徐冷領域(230)で加熱徐冷し、そのうち、加熱徐冷の冷却強度は、空冷の冷却強度よりも小さい、および、
丸ビレット連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧465L/m
2、または角ビレット連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧490L/m
2、または厚板用連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧255L/m
2であ
り、
超強冷却領域(210)の超強冷却開始点は、結晶器出口にあり、超強冷却領域(210)の長さが12%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長である、ことを特徴とする連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項2】
超強冷却領域(210)と加熱徐冷領域(230)との間には、さらに弱冷却領域(220)が設けられており、前記の弱冷却領域(220)の冷却強度は、超強冷却の冷却強度よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項3】
超強冷却領域(210)の水流密度がQL/m
2で、弱冷却領域(220)の水流密度がqL/m
2で、Q≧2qである、ことを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項4】
加熱徐冷領域(230)の加熱徐冷開始点と結晶器出口との間の距離が40%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長である、ことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項5】
加熱徐冷領域(230)で鋳片表面を加熱し、加熱の熱量値は5kW/m
2を超える、ことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項6】
前記の加熱徐冷領域(230)の加熱徐冷終点は、凝固終点の前にある、ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法。
【請求項7】
連続鋳造晶析装置(300)の下部には、連続鋳造鋳片(100)の長さ方向に沿って超強冷却領域(210)および加熱徐冷領域(230)が設けられており、超強冷却領域(210)は、鋳片表面に冷却のための噴水を提供するために使用され、加熱徐冷領域(230)は、鋳片表面に加熱のための熱量を提供するために使用される、かつ、
丸ビレット連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧465L/m
2、または角ビレット連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧490L/m
2、または厚板用連続鋳造鋳片(100)の超強冷却領域(210)の水流密度≧255L/m
2であ
り、
超強冷却領域(210)の超強冷却開始点は、結晶器出口にあり、超強冷却領域(210)の長さが12%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長である、ことを特徴とする加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置。
【請求項8】
加熱徐冷領域(230)の連続鋳造鋳片(100)表面には、電磁加熱コイル(231)または加熱フード(231)が設けられ、そのうち、加熱フード(231)は、蒸気加熱フード、可燃性ガス加熱フードまたは反射断熱自己加熱フードである、ことを特徴とする請求項
7に記載の加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置。
【請求項9】
加熱徐冷領域(230)の前部には、弱冷却領域(220)が設けられている、ことを特徴とする請求項
7又は8に記載の加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金連続鋳造の技術分野に関し、より具体的には、連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の鋼の連続鋳造生産技術では、鋳片組織の構造と欠陥が常に鋳片品質に深刻な影響を与えており、従来の連続鋳造技術における冷却モードの条件では、溶鋼の凝固中、鋳造材および部品の性能に対する鋳片構造の適応性が常に足りなく、調整方法や程度の不足によって凝固構造への制御も困難になるため、益々高まっている材料使用特性への要求、特に特定の個別の要求に対応できない。一例として、ある場合では、過度に成長した柱状結晶が発達し、深刻な中心偏析を引き起こし、他の場合では、不適切な冷却により、結晶粒と結晶粒界が粗くなり、別の例として、凝固後期では、優先的に成長した柱状結晶は、制御することができず、鋳片の中心で会合して「ブリッジ」を形成し、液相キャビティ内の溶鋼が「凝固した結晶ブリッジ」によって分離され、結晶ブリッジの下部の溶鋼は、凝固収縮中に上部の金属によって補充されず、気孔または収縮穴が形成され、そして、中心偏析、不均一な組成などの問題を伴っている。上記の問題を解決するために、長い間、この面では低温注湯技術、電磁撹拌技術、凝固末端軽圧下または鋳造・圧延技術などが形成されたが、これらの技術によっても、鋳片の表面層、サブサーフェス層と中心部の凝固組織構造は依然として理想的ではない。
【0003】
検索により、二重徐冷法による高炭素クロム軸受鋼の製造方法(公開番号:CN101412183A、公開日:2009.04.22)が見つけられており、この技術では、鋳片を徐冷ピットで高温徐冷し、鋳片における水素と応力を放出し、その後、圧延材を徐冷フードに入れ、圧延材における水素と応力をさらに放出する。高炭素クロム軸受鋼を2回徐冷によって製造する方法は、低品質の圧延材に白点や割れの欠陥がないことを保証できる。しかしながら、従来技術における鋳片の徐冷処理は、凝固した鋳片を扱うことが多く、柱状結晶の間隔と隙間を効果的に低減すること、特に鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を効果的に向上させることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における鋳片表面層、サブサーフェス層と中心部の凝固組織構造が依然として理想的ではないという問題を解消し、連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法およびその制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
そのうち、提供される連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、結晶器出口から凝固終点までの区間において、超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、連続鋳造鋳片は、超強冷却領域で超強冷却してから、加熱徐冷領域で加熱徐冷することによって、柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を向上させ、同時に内部割れの発生を低減することができる。
【0006】
そのうち、提供される加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置は、連続鋳造晶析装置の下部において、連続鋳造鋳片の長さ方向に沿って超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、超強冷却領域は、鋳片表面に冷却のための噴水を提供するために使用され、加熱徐冷領域は、鋳片表面に加熱のための熱量を提供するために使用され、よって、柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を向上させ、内部割れの発生を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によって提供される技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0008】
本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、結晶器出口から凝固終点までの区間において、超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、連続鋳造鋳片は、超強冷却領域で超強冷却してから、加熱徐冷領域で加熱徐冷し、そのうち、加熱徐冷の冷却強度は、空冷の冷却強度よりも小さい。
【0009】
好ましくは、超強冷却領域と加熱徐冷領域との間には、さらに弱冷却領域が設けられており、前記弱冷却領域の冷却強度は、超強冷却の冷却強度よりも小さい。
【0010】
好ましくは、超強冷却領域の水流密度がQL/m2で、弱冷却領域の水流密度がqL/m2で、Q≧2qである。
【0011】
好ましくは、超強冷却領域の超強冷却開始点は、結晶器出口にあり、超強冷却領域の長さが12%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長であり、総冷却長は、結晶器出口から凝固終点までの長さである。
【0012】
好ましくは、加熱徐冷領域の加熱徐冷開始点と結晶器出口との間の距離が40%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長である。
【0013】
好ましくは、丸ビレット連続鋳造鋳片の超強冷却領域の水流密度≧465L/m2、または角ビレット連続鋳造鋳片の超強冷却領域の水流密度≧490L/m2、または厚板用連続鋳造鋳片の超強冷却領域の水流密度≧255L/m2である。
【0014】
好ましくは、加熱徐冷領域で鋳片表面を加熱し、加熱の熱量値は5kW/m2を超える。
【0015】
好ましくは、前記加熱徐冷領域の加熱徐冷終点は、凝固終点の前にある。
【0016】
本発明に係る加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置は、連続鋳造晶析装置の下部において、連続鋳造鋳片の長さ方向に沿って超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、超強冷却領域は、鋳片表面に冷却のための噴水を提供するために使用され、加熱徐冷領域は、鋳片表面に加熱のための熱量を提供するために使用される。
【0017】
好ましくは、加熱徐冷領域の連続鋳造鋳片の表面には、電磁加熱コイルまたは加熱フードが設けられており、そのうち、加熱フードは、蒸気加熱フード、可燃性ガス加熱フードまたは反射断熱自己加熱フードである。
【0018】
好ましくは、加熱徐冷領域の前部には、弱冷却領域が設けられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって提供される技術的解決手段は、既存の周知技術と比較して、以下の顕著な効果を有する。
【0020】
(1)本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、結晶器出口から凝固終点までの区間において、超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、連続鋳造鋳片は、先に超強冷却領域で超強冷却すれば、一次デンドライトの間隔と隙間を効果的に小さくし、鋳片における柱状結晶の緻密度を向上させ、柱状結晶の気孔を低減することができ、その後、加熱徐冷領域で加熱徐冷すれば、鋳片における温度勾配を減らし、鋳片の表面と内部の温度差を低減し、柱状結晶の成長を抑制し、さらに鋳片の内部割れの発生を回避することができ、それによって、柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片のサブサーフェス層と中心部の凝固組織構造を改善し、鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を向上させ、同時に内部割れの発生を低減する。
【0021】
(2)本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、超強冷却領域の超強冷却開始点が結晶器出口にあり、超強冷却領域の長さが総冷却長の12%を超え、冷却長が短すぎると、十分に緻密な柱状結晶、および可能な限り厚いシェル厚を形成することができず、凝固後期での所望の弱冷却制御の実施に寄与しない。
【0022】
(3)本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、超強冷却領域と加熱徐冷領域との間において、さらに弱冷却領域が設けられており、弱冷却領域の冷却強度を超強冷却の冷却強度よりも小さくすることで、弱冷却領域の範囲を十分に確保し、連続鋳造過程における超強冷却領域と加熱徐冷領域との間の移行を良好にし、連続鋳造鋳片の超強冷却領域から加熱徐冷領域への直接的な移行を回避し、さらに表面温度の過度な上昇を回避し、それによって、凝固断面領域に現れやすい内部割れを低減することができる。
【0023】
(4)本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、加熱徐冷領域の加熱徐冷開始点と結晶器出口との間の距離が総冷却長の40%を超え、加熱徐冷領域の加熱徐冷の終点が凝固終点の前にあり、すなわち、加熱徐冷領域は、総冷却長40%の後の位置から凝固終点の前までの範囲にあり、それによって、超強冷却領域と加熱徐冷領域との間の弱冷却領域を十分に確保し、鋳片表面の急激な温度上昇を回避し、凝固断面領域に現れやすい内部割れを低減することができる。
【0024】
(5)本発明に係る加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置は、連続鋳造晶析装置の下部において、連続鋳造鋳片の長さ方向に沿って超強冷却領域および加熱徐冷領域が設けられており、超強冷却領域は、鋳片表面に冷却のための噴水を提供するために使用され、加熱徐冷領域は、鋳片表面に加熱のための熱量を提供するために使用され、よって、柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を向上させ、同時に内部割れの発生を低減することによって、異なる最終製品の性能要求に対応した鋳片の凝固組織構造を取得するという目的が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置の構造を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る加熱徐冷領域が電磁加熱コイルである場合の図である。
【
図3】実施例4に係る鋳片のマイクロ組織の形態を示す概略図である。
【
図4】比較例1に係る鋳片のマイクロ組織の形態を示す概略図である。
【0026】
図面中の参照番号
100、連続鋳造鋳片、110、未凝固溶鋼、120、凝固シェル、
210、超強冷却領域、220、弱冷却領域、230、加熱徐冷領域、
300、連続鋳造晶析装置、
410、柱状結晶領域、420、等軸結晶領域、430、気孔。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の内容をさらに理解するために、図面および実施例を参照して本発明について詳細に説明する。
【0028】
本明細書の図面に示された構造、比例、大きさなどは、いずれも当業者が理解して読み取れるように、明細書に開示された内容と組み合わせるためにのみ使用され、本発明の実施可能性を限定するものではなく、従って、技術的重要性がなく、如何なる構造の修飾、比例関係の変更または大きさの調整も、本発明の有効性および目的に影響を与えることなく、本発明に開示された技術的内容の範囲に含まれるべきである。また、本明細書において、「上」、「下」、「左」、「右」、「中間」などの用語は、説明の便宜上のものに過ぎず、実施可能な範囲を限定するものではなく、その相対的な関係の変更または調整は、技術的内容を実質的に変更することなく、本発明の実施可能な範囲であると考えられる。
【0029】
図1-
図3に示すように、本発明に係る加熱徐冷に基づいて鋳片の凝固組織構造を制御する装置は、連続鋳造晶析装置300の下部において、連続鋳造鋳片100の長さ方向に沿って
超強冷却領域210および加熱徐冷領域230が設けられており、連続鋳造鋳片100の外部は凝固シェル120であり、凝固シェル120の内部は未凝固溶鋼110であり、
超強冷却領域210は、凝固シェル120の鋳片表面に冷却のための噴水を提供するために使用され、つまり、
超強冷却領域210内には、鋳片表面を噴水冷却するためのノズルが設けられており、加熱徐冷領域230は、鋳片表面に加熱のための熱量を提供し、さらに鋳片の表面を加熱徐冷するために使用される。
図2に示すよう、加熱徐冷領域230の連続鋳造鋳片100の表面には、電磁加熱コイル231が設けられている。
【0030】
または、
図3に示すよう、加熱徐冷領域230の連続鋳造鋳片100の表面には加熱フード231が設けられており、そのうち、加熱フード231は、蒸気加熱フード、可燃性ガス加熱フードまたは反射断熱自己加熱フードである。
【0031】
図3に示すよう、加熱徐冷領域230の前部には、弱冷却領域220が設けられており、すなわち、弱冷却領域220は、
超強冷却領域210と加熱徐冷領域230との間に設けられている。弱冷却領域220内には、鋳片の表面を噴水冷却するためのノズルが設けられている。説明すべきなのは、噴水冷却が水蒸気混合冷却であってもよい。
【0032】
本発明に係る連続鋳造過程における鋳片の凝固組織構造を制御する方法は、溶鋼の連続鋳造過程では、注湯方向に沿った特定の領域で超強冷却、弱冷却および加熱徐冷措置を鋳片に対して順次施すことによって、鋳片のサブサーフェス層および中心部の凝固組織構造を改善し、同時に連続鋳造過程全体で放出されるエネルギーの総量を一定に確保する。具体的には、連続鋳造晶析装置300の出水口から凝固終点までの区間には、超強冷却領域210および加熱徐冷領域230が設けられており、連続鋳造鋳片100は、超強冷却領域210で超強冷却してから、加熱徐冷領域230で加熱徐冷し、そのうち、加熱徐冷の冷却強度は、空冷の冷却強度よりも小さく、超強冷却の冷却強度は、空冷の冷却強度よりも大きい。
【0033】
すなわち、超強冷却領域210の超強冷却開始点は、連続鋳造晶析装置300の出水口にあり、超強冷却領域210の長さが12%Lを超え、そのうち、Lが総冷却長であり、総冷却長は、結晶器出口から凝固終点までの距離であり、すなわち、超強冷却領域210は、連続鋳造晶析装置300の出水口から、注湯方向に沿って総冷却長の12%を超えるように延びている。その理由として、超強冷却領域210の長さが総冷却長の12%未満であると、超強冷却領域210の区間が短すぎて、連続鋳造鋳片100は十分に緻密な柱状結晶、および可能な限り厚いシェル厚みを形成することができず、凝固後期での所望の弱冷却制御の実施に寄与しない。超強冷却領域210の平均冷却強度は、既存の連続鋳造技術における冷却強度よりもはるかに大きくなり、これは、初期冷却の比水量が小さい場合、冷却強度が低すぎて、鋳片が初期で放出する熱が少なくなり、所望の厚みおよび緻密度を有するシェルを迅速に形成することができないからであり、そのため、鋳片の初期冷却を強化することにより、鋳片の総熱を可能な限り多く放出し、さらに鋳片の表面が所望の厚みおよび緻密度を有するシェルを迅速に形成できるようになる必要がある。そのようにすれば、鋳片の総熱は初期で可能な限り放出され、かつ異なる種類の鋳片が異なる超強冷却強度を持っており、冷却強度は、水流密度QL/m2で表すことができ、以下に、具体的に分類して説明する。
【0034】
(1)丸ビレット連続鋳造鋳片100の超強冷却領域210の水流密度がQ1≧465L/m2である。
【0035】
(2)角ビレット連続鋳造鋳片100の超強冷却領域210の水流密度がQ2≧490L/m2である。
【0036】
(3)厚板用連続鋳造鋳片100の超強冷却領域210の水流密度がQ3≧255L/m2で、かつ、鋳片連続鋳造場合の厚みが200mm以上であるように要求される。
【0037】
連続鋳造鋳片100が連続鋳造晶析装置300から出ると、それを超強冷却すれば、一次デンドライトの間隔と隙間を効果的に小さくし、鋳片における柱状結晶の緻密度を向上させ、柱状結晶の気孔を低減することができる。
【0038】
本実施例では、超強冷却領域210と加熱徐冷領域230との間には、さらに弱冷却領域220が設けられており、弱冷却領域220の冷却強度は、超強冷却の冷却強度よりも小さい。鋳片の冷却強度について、鋳片は、超強冷却した後、弱冷却領域220に移行し、弱冷却領域220を通過してから加熱徐冷領域230に移行し、そのうち、弱冷却領域220では、連続鋳造時の従来の冷却強度を使用する。説明すべきなのは、弱冷却領域220の冷却強度がq1L/m2で、超強冷却強度がQL/m2で、Q≧2q1である。鋳片により、弱冷却領域220の冷却強度は異なり、説明すべきなのは、弱冷却領域220の冷却強度と連続鋳造過程における従来の冷却強度は基本的に同様であり、冷却強度は、水流密度で表すことができ、以下に、具体的に分類して説明する。
【0039】
(1)丸ビレット連続鋳造の場合、当該領域の冷却強度(水流密度)≧155L/m2であるように要求される。
【0040】
(2)角ビレット連続鋳造の場合、当該領域の冷却強度(水流密度)≧245L/m2であるように要求される。
【0041】
(3)鋳片連続鋳造の場合、当該領域の冷却強度(水流密度)≧85L/m2であるように要求される。鋳片は、超強冷却領域210で冷却してから、弱冷却領域220を通過し、加熱徐冷領域230に入って加熱徐冷することにより、温度移行の差を小さくし、鋳片中の温度勾配を低減し、鋳片の表面と内部の温度差を小さくし、柱状結晶の成長を抑制することができる。
【0042】
本実施例では、加熱徐冷領域230の加熱徐冷開始点と連続鋳造晶析装置300の出水口との間の距離が、総冷却長の40%を超え、加熱徐冷領域230の加熱徐冷終点は、凝固終点の前にある。すなわち、加熱徐冷領域230は、連続鋳造晶析装置300の出水口から、引張方向に沿って総冷却長の40%を超えるように延び、冷却長終点を超えない位置で終了する範囲である。鋳片に加熱徐冷措置を施すことで、鋳片中の温度勾配を低減し、鋳片の表面と内部の温度差を小さくし、柱状結晶の成長を抑制し、さらに鋳片の内部割れの発生を回避することができる。長年の研究開発を経て、出願者の技術研究開発チームは、加熱徐冷領域230が総冷却長の40%未満の位置から開始すれば、従来の冷却領域が短すぎて良好な遷移作用を果たせず、また、鋳片表面の温度上昇が過剰になり、凝固断面領域に内部割れが発生しやすいということを発見しており、そこで、出願者は、加熱徐冷開始点が総冷却長の40%を超える位置にあり、加熱徐冷終点が凝固終点の前にあることを独創的に提案している。なお、加熱徐冷領域230の加熱徐冷終点が最終製品の性能に適合されることに注意すべきであり、最終製品の鋳片コアに対する要求が高い場合、加熱徐冷領域230の全長は初期の超強冷却領域210の長さに適合し、連続鋳造過程全体で放出されるエネルギーの総量を一定に確保する必要があり、超強冷却領域210が長いほど、加熱徐冷領域230が長くなり、すなわち、加熱徐冷領域230の長さは、超強冷却領域210の長さと正の相関性があり、連続鋳造過程で放出されるエネルギーの総量を一定に確保する。加熱徐冷方法により、鋳片表面に加熱措置を提供し、加熱の熱量値は5kW/m2キロワット/平方メートルを超える。
【0043】
実施例1
本実施例は、ある製鉄所の5路丸ビレット連続鋳造機で実行され、鋳片の断面直径は380mmであり、注湯過程では、注湯方向に沿って超強冷却、弱冷および加熱徐冷措置を鋳片に対して順次施し、超強冷却領域210の長さ、超強冷却領域210の冷却水流密度、加熱徐冷領域230の加熱徐冷開始点、加熱徐冷領域230の熱供給量は、表1に示され、超強冷却領域210は、連続鋳造晶析装置300の下部開口から22%Lまでの領域であり、加熱徐冷領域230は、55%Lの位置から凝固終点までの領域である。注湯終了後、鋳片のマクロサンプルを1枚取り、鋳片の柱状結晶の気孔状況を分析し、同時に鋳片が完全に凝固したときの表面温度を測定し、実施例の具体的なパラメータおよび結果は、表1に示される。
【0044】
実施例2
本実施例の基本的な内容は、実施例1と同様であるが、その相違点として、超強冷却領域210の冷却水流密度、加熱徐冷開始点位置および加熱徐冷領域230の熱供給量パラメータが異なり、具体的なパラメータは、表1に示され、注湯終了後、鋳片のマクロサンプルを1枚取り、鋳片の柱状結晶の気孔状況を分析し、同時に鋳片が完全に凝固したときの表面温度を測定し、実施例の具体的なパラメータおよび結果は、表1に示される。
【0045】
実施例3
本実施例は、ある製鉄所の5路丸ビレット連続鋳造機で実行され、鋳片の断面直径は700mmであり、注湯過程では、注湯方向に沿って超強冷却、弱冷および加熱徐冷措置を鋳片に対して順次施し、超強冷却領域210の長さ、超強冷却領域210の冷却水流密度、加熱徐冷領域230の加熱徐冷開始点、加熱徐冷領域230の熱供給量は、表1に示され、超強冷却領域210は、連続鋳造晶析装置300の下部開口から17%Lまでの領域であり、加熱徐冷領域230は、55%Lの位置から凝固終点までの領域である。注湯終了後、鋳片のマクロサンプルを1枚取り、鋳片の柱状結晶の気孔状況を分析し、同時に鋳片が完全に凝固したときの表面温度を測定し、実施例の具体的なパラメータおよび結果は、表1に示される。
【0046】
実施例4
本実施例の基本的な内容は、実施例3と同様であるが、その相違点として、
超強冷却領域210の冷却水流密度、加熱徐冷開始点位置および加熱徐冷領域230の熱供給量パラメータが異なり、具体的なパラメータは、表1に示され、注湯終了後、鋳片のマクロサンプルを1枚取り、鋳片の柱状結晶の気孔状況を分析し、同時に鋳片が完全に凝固したときの表面温度を測定し、実施例の具体的なパラメータおよび結果は、表1に示される。実施例4に係る鋳片のマクロ組織の写真は、
図4に示される。
【0047】
比較例1
本実施例の基本的な内容は、実施例4と同様であるが、その相違点として、鋳片表面の冷却強度の水流密度が200L/m
2である。注湯終了後、鋳片のマクロサンプルを1枚取り、マクロ分析を行い、鋳片の柱状結晶の気孔状況を分析し、同時に鋳片が完全に凝固したときの表面温度を測定し、比較例1の具体的なパラメータおよび結果は、表1に示され、比較例1の鋳片のマクロ組織の写真は、
図4に示される。
【表1】
【0048】
注)表中の超強冷却領域210の長さと加熱徐冷領域230の長さの単位はLであり、Lは総冷却長を示す。
【0049】
実施の結果から分かるように、実施例1-4では、鋳片凝固組織における柱状結晶組織の気孔が小さく、平均柱状結晶の気孔が26.0μm未満であり、また、鋳片の表面温度が高くなることで、内部割れの発生を効果的に低減し、鋳片の品質を向上させ、異なる製品の凝固組織に対する需要を満たすことができる。
【0050】
さらに分析すると、
図3は実施例4に係る鋳片のマイクロ組織の形態を示す概略図であり、
図4は、比較例1に係る鋳片のマイクロ組織の形態を示す概略図であり、そのうち、
図3および
図4では、柱状結晶領域410、等軸結晶領域420および気孔430を含み、
図4の鋳片柱状結晶領域410の組織は相対的に粗く、柱状結晶領域410は気孔430を有するが、
図3の鋳片柱状結晶領域410の組織は緻密で、デンドライトは細くて密であり、柱状結晶領域410の気孔430は基本的になくされている。しかも、平均柱状結晶の気孔の大きさは、37.2μmから26.0μm以下まで低下される。柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片のサブサーフェス層と中心部の凝固組織構造を改善し、鋳片の表面層付近の柱状結晶の緻密度を向上させ、同時に内部割れの発生を低減する。さらに比較して分かるように、比較例1と比較して、実施例4では、柱状結晶の間隔と隙間を小さくし、鋳片のサブサーフェス層と中心部の凝固組織構造を改善するだけでなく、等軸結晶領域420の比例も拡大し、それによって、鋳片の品質を改善する。
【0051】
以上、具体的な実施例を参照して本発明について詳細に説明した。ただし、特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が行われ得ることが理解される。詳細な記述および図面は、単に例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものではなく、そのような修正および変更はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。なお、背景技術は、本技術の研究開発の現状および意義を説明するためのものであり、本発明または本出願や本発明の応用を限定することを意図したものではない。