(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電池制御システムおよび鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220726BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220726BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220726BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20220726BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220726BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220726BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 M
H02J7/04 L
B60L58/12
B60L58/16
B60L3/00 S
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2020561148
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032672
(87)【国際公開番号】W WO2020129301
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018236281
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】山本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩二
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007410(JP,A)
【文献】特開2017-221076(JP,A)
【文献】特開2000-312401(JP,A)
【文献】特開2008-170196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧とSOC(State Of Charge)との関係において
放電曲線と充電曲線とが異なるヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、
前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶する記憶媒体と、
前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路と、
を備え、
前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲と、前記第1の使用範囲のSOCの下限と同じ大きさのSOCを含む第2の使用範囲とを含み、
前記制御回路は、
前記ニッケル水素電池の現在のSOCが前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCであるか判定し
、
前記現在のSOCが前記所定のSOCであると判定した場合、電圧センサが検出した前記ニッケル水素電池の電圧に関する情報を用いて、前記所定のSOCにおける前記ニッケル水素電池の電圧を検出し、
前記所定のSOCにおける前記ニッケル水素電池の電圧を用いて、前記ニッケル水素電池の放電の制御を行う、電池制御システム。
【請求項2】
電圧とSOC(State Of Charge)との関係において放電曲線と充電曲線とが異なるヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、
前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶する記憶媒体と、
前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路と、
を備え、
前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲と、前記第1の使用範囲のSOCの下限と同じ大きさのSOCを含む第2の使用範囲とを含み、
前記制御回路は、
前記ニッケル水素電池の現在のSOCが前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCであるか判定し、
前記ニッケル水素電池のSOCが前記所定のSOCになった回数をカウントし、
前記カウントした回数が所定の回数以上であるか判定し、
前記カウントした回数が前記所定の回数以上であると判定した場合、前記ニッケル水素電池のリフレッシュの制御を行う
、電池制御システム。
【請求項3】
電圧とSOC(State Of Charge)との関係において放電曲線と充電曲線とが異なるヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、
前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶する記憶媒体と、
前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路と、
を備え、
前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲と、前記第1の使用範囲のSOCの下限と同じ大きさのSOCを含む第2の使用範囲とを含み、
前記制御回路は、
前記ニッケル水素電池の現在のSOCが前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCであるか判定し、
前記ニッケル水素電池のSOCが前記所定のSOCになった回数をカウントし、
前記カウントした回数に応じて、前記複数のSOCの使用範囲それぞれの放電曲線の電圧の下限を現在の設定値よりも小さくする
、電池制御システム。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記所定のSOCにおける前記電圧が所定の電圧以下であるか判定し、
前記所定のSOCにおける前記電圧が前記所定の電圧以下であると判定した場合、前記ニッケル水素電池のリフレッシュの制御を行う、請求項
1に記載の電池制御システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記複数のSOCの使用範囲のうちの現在選択しているSOCの使用範囲に応じて、前記検出した電圧の値を補正する、請求項
1または
4に記載の電池制御システム。
【請求項6】
前記所定のSOCは、50%よりも小さく、前記第1の使用範囲のSOCの下限以上である、請求項1から
5のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項7】
前記制御回路は、
電流センサが検出した前記ニッケル水素電池の電流に関する情報を用いて、前記ニッケル水素電池が出力した電流の積算値を演算し、
前記電流の積算値を用いて前記ニッケル水素電池の現在のSOCを演算する、請求項1から
6のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項8】
前記第1の使用範囲のSOCの上限は、前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、
前記第2の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さい、請求項1から
7のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項9】
前記複数のSOCの使用範囲は、第3の使用範囲をさらに含み、
前記第3の使用範囲のSOCの上限は、前記第1の使用範囲のSOCの上限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、
前記第3の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの下限よりも大きく、
前記第3の使用範囲は、前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCを含む、請求項1から
8のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項10】
前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度に応じて、前記複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更する、請求項1から
9のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項11】
前記所定のSOCは、前記第1の使用範囲のSOCの下限の大きさである、請求項1から
10のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項12】
前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の初回の使用時において、
前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電し、
前記ニッケル水素電池を前記第1の使用範囲のSOCの上限まで充電した後、前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて選択したSOCの使用範囲の下限まで放電させ、
前記ニッケル水素電池を前記選択したSOCの使用範囲の下限まで放電した後、前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて選択した前記第2の使用範囲のSOCの上限まで充電する制御を行う、請求項1から
11のいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項13】
前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池の工場出荷後における最初の使用である、請求項
12に記載の電池制御システム。
【請求項14】
前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池を補充電した後における最初の使用である、請求項
12に記載の電池制御システム。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれかに記載の電池制御システムを備えた鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御システム、および当該電池制御システムを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下「エンジン」と記述する。)を動力源とする車両には、一般に、エンジンの回転を利用して発電する回転電機が搭載されている。
【0003】
特許文献1および2は、発電する回転電機を、エンジンの始動時にはエンジンのクランク軸を駆動するスタータモータとして用い、さらに、走行時には必要に応じてエンジンの出力をアシストするアシスト用モータとして使用する鞍乗型車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-122925号公報
【文献】特開2008-24255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような回転電機用の二次電池として、ニッケル水素電池を用いることが考えられる。ニッケル水素電池は比較的安価に入手可能であり、車両のコストを低減させることができる。ニッケル水素電池から回転電機に電力を供給することで、回転電機を回転させることができる。また、発電時には、ニッケル水素電池は、回転電機が発電した電力を蓄えることができる。
【0006】
しかしながら、ニッケル水素電池は、温度が高いときは充電効率が低下するとともに、温度が低いときは出力が低下するという特性を有する。また、ニッケル水素電池は、その電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシスおよびメモリ効果を有するため、充放電の制御が煩雑化するという課題がある。
【0007】
ニッケル水素電池の上記特性から、車載用ニッケル水素電池では、安定した充放電の制御を実現するために、SOCの狭い範囲(例えば、40-60%の範囲)においてのみ充放電を行うことが考えられる。SOCの使用範囲を狭い範囲に限定することにより、充電効率の低下および出力低下の影響を抑えた安定した制御を行うことができる。
【0008】
一方で、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用するためには、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことが望まれる。また、SOCの広い範囲に亘る充放電を適切に制御するためには、ニッケル水素電池のメモリ効果の状態を精度良く把握することが望まれる。
【0009】
本発明は、ニッケル水素電池のメモリ効果の状態を精度良く把握することができる電池制御システム、および当該電池制御システムを備えた鞍乗型車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る電池制御システムは、電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶する記憶媒体と、前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路とを備え、前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲と、前記第1の使用範囲のSOCの下限と同じ大きさのSOCを含む第2の使用範囲とを含み、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の現在のSOCが前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCであるか判定し、前記現在のSOCが前記所定のSOCであると判定した場合、前記ニッケル水素電池のメモリ効果に関する情報を取得し、取得した前記メモリ効果に関する情報を用いて、前記ニッケル水素電池の放電の制御を行う。
【0011】
ニッケル水素電池の使用条件に応じて複数のSOCの使用範囲を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用することができる。
【0012】
一方で、複数のSOCの使用範囲の間で放電曲線は互いに異なる。このため、複数のSOCの使用範囲を使い分ける形態において、メモリ効果を精度良く検出することは困難である。
【0013】
本発明の実施形態では、第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCは、第1および第2の使用範囲の両方に含まれる。第1および第2の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0014】
例えば、第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCにおいては、第1の使用範囲での放電曲線における電圧と、第2の使用範囲での放電曲線における電圧との差は小さくなる。この電圧の差が小さくなる所定のSOCになったときのニッケル水素電池の電圧を検出する。複数のSOCの使用範囲の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することで、選択したSOCの使用範囲での充放電の繰り返しが容易となるだけでなく、リフレッシュが必要な場合は、適切なタイミングでニッケル水素電池のリフレッシュを行うことができる。
【0015】
また、例えば、ニッケル水素電池のSOCが所定のSOCになった回数をカウントする。カウントした回数により、ニッケル水素電池のメモリ効果の進行具合を把握することができる。これにより、選択したSOCの使用範囲での充放電の繰り替えしが容易となるだけでなく、リフレッシュが必要な場合は、適切なタイミングでニッケル水素電池のリフレッシュを行うことができる。第1および第2の使用範囲の両方に含まれる所定のSOCにおいてカウントすることにより、第1および第2の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、カウントし損ねることなく、精度良くカウントすることができる。
【0016】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記現在のSOCが前記所定のSOCであると判定した場合、電圧センサが検出した前記ニッケル水素電池の電圧に関する情報を用いて、前記所定のSOCにおける前記ニッケル水素電池の電圧を検出し、前記所定のSOCにおける前記ニッケル水素電池の電圧を用いて、前記ニッケル水素電池の放電の制御を行ってもよい。
【0017】
第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCにおいては、第1の使用範囲での放電曲線における電圧と、第2の使用範囲での放電曲線における電圧との差は小さくなる。この電圧の差が小さくなる所定のSOCになったときのニッケル水素電池の電圧を検出する。複数のSOCの使用範囲の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。
【0018】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記所定のSOCにおける前記電圧が所定の電圧以下であるか判定し、前記所定のSOCにおける前記電圧が前記所定の電圧以下であると判定した場合、前記ニッケル水素電池のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0019】
複数のSOCの使用範囲の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することで、適切なタイミングでニッケル水素電池のリフレッシュを行うことができる。
【0020】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記複数のSOCの使用範囲のうちの現在選択しているSOCの使用範囲に応じて、前記検出した電圧の値を補正してもよい。
【0021】
SOCの使用範囲が異なれば、所定のSOCにおける電圧値も多少は異なる。現在選択しているSOCの使用範囲に応じて電圧値を補正することで、メモリ効果による電圧降下をより精度良く検出することができる。
【0022】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池のSOCが前記所定のSOCになった回数をカウントし、前記カウントした回数が所定の回数以上であるか判定し、前記カウントした回数が前記所定の回数以上であると判定した場合、前記ニッケル水素電池のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0023】
ニッケル水素電池の充放電を繰り返すとメモリ効果が進行し、放電時の電圧が小さくなる。カウントした回数が所定の回数以上になった場合、ニッケル水素電池のリフレッシュを行う。これにより、放電時の電圧を回復させることができる。
【0024】
第1および第2の使用範囲の両方に含まれる所定のSOCにおいてカウントすることにより、第1および第2の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、カウントし損ねることなく、精度良くカウントすることができる。
【0025】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池のSOCが前記所定のSOCになった回数をカウントし、前記カウントした回数に応じて、前記複数のSOCの使用範囲それぞれの放電曲線の電圧の下限を現在の設定値よりも小さくしてもよい。
【0026】
メモリ効果による電圧降下に応じて、放電曲線の電圧の下限を小さくする。これにより、メモリ効果が進行しても実際に使用するSOCの範囲が狭くなることを抑制できる。
【0027】
ある実施形態において、前記所定のSOCは、50%よりも小さく、前記第1の使用範囲のSOCの下限以上であってもよい。
【0028】
メモリ効果は、SOCが50%以上の領域よりも、50%未満の領域で特に発生しやすい。メモリ効果に関する情報を取得する領域を、SOCが50%未満の領域とすることにより、より適切な放電の制御を行うことができる。
【0029】
ある実施形態において、前記制御回路は、電流センサが検出した前記ニッケル水素電池の電流に関する情報を用いて、前記ニッケル水素電池が出力した電流の積算値を演算し、前記電流の積算値を用いて前記ニッケル水素電池の現在のSOCを演算してもよい。
【0030】
電流の積算値を用いることで、ニッケル水素電池の電圧値を用いなくても現在のSOCを把握することができる。
【0031】
ある実施形態において、前記第1の使用範囲のSOCの上限は、前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、前記第2の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さくてもよい。
【0032】
SOCの上限が大きい第1の使用範囲と、SOCの下限が小さい第2の使用範囲とを使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うことができる。
【0033】
ある実施形態において、前記複数のSOCの使用範囲は、第3の使用範囲をさらに含み、前記第3の使用範囲のSOCの上限は、前記第1の使用範囲のSOCの上限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、前記第3の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの下限よりも大きく、前記第3の使用範囲は、前記第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCを含んでもよい。
【0034】
第1、第2および第3の使用範囲を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うことができる。
【0035】
第1の使用範囲のSOCの下限に対応した所定のSOCは、第1、第2および第3の使用範囲の全てに含まれる。第1、第2および第3の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0036】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度に応じて、前記複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更してもよい。
【0037】
ニッケル水素電池の温度に応じて複数のSOCの使用範囲を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用することができる。
【0038】
ある実施形態において、前記所定のSOCは、前記第1の使用範囲のSOCの下限の大きさであってもよい。
【0039】
第1の使用範囲の下限の大きさのSOCは、複数の使用範囲のそれぞれに含まれる。複数の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0040】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の初回の使用時において、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電し、前記ニッケル水素電池を前記第1の使用範囲のSOCの上限まで充電した後、前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて選択したSOCの使用範囲の下限まで放電させ、前記ニッケル水素電池を前記選択したSOCの使用範囲の下限まで放電した後、前記ニッケル水素電池の使用条件に応じて選択した前記第2の使用範囲のSOCの上限まで充電する制御を行ってもよい。
【0041】
第2の使用範囲のSOCの下限までの放電および第1の使用範囲のSOCの上限までの充電を行うと、第1の使用範囲のSOCの上限と第2の使用範囲のSOCの下限とを結ぶ放電曲線および充電曲線(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0042】
ニッケル水素電池の初期の使用時においては、第2の使用範囲を選択した場合の放電曲線は、上記基準となる放電曲線から離れている。ニッケル水素電池の使用条件に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、第2の使用範囲における放電曲線は移動して、上記基準となる放電曲線に近づく。SOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、第2の使用範囲における放電曲線が移動すると、メモリ効果を精度良く検出することは困難である。
【0043】
そこで、ニッケル水素電池の初回の使用時において、ニッケル水素電池を第1の使用範囲のSOCの上限まで充電した後に、ニッケル水素電池の使用条件に応じて選択したSOCの使用範囲の下限まで放電させる。その下限まで放電させた後に、使用条件に応じて選択した第2の使用範囲の上限まで充電する。これにより、すぐに第2の使用範囲における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における放電曲線は、基準となる放電曲線に沿った後は、メモリ効果の影響以外では移動しない。第2の使用範囲における放電曲線の移動がなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0044】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池の工場出荷後における最初の使用であってもよい。
【0045】
ニッケル水素電池を使用し始めてすぐに第2の使用範囲における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における放電曲線の移動が、メモリ効果の影響以外ではなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0046】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池を補充電した後における最初の使用であってもよい。
【0047】
補充電を行った後、ニッケル水素電池を使用し始めてすぐに第2の使用範囲における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における放電曲線の移動が、メモリ効果の影響以外ではなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0048】
本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、上記の電池制御システムを備える。
【0049】
SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うとともに、メモリ効果を適切に制御できることにより、鞍乗型車両の性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の例示的な実施形態に係る電池制御システムによれば、第1の使用範囲のSOCの下限に対応する所定のSOCは、第1および第2の使用範囲の両方に含まれる。第1および第2の使用範囲のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエンジンユニットを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るエンジンユニットを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るエンジンシステムを示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の充放電特性を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が低温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が中温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が高温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の現在のSOCに応じた充電および放電の制御を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池のメモリ効果に関する制御を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池のメモリ効果に関する制御の別の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に係る低温用のSOCの使用範囲、中温用のSOCの使用範囲、高温用のSOCの使用範囲を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る下限検出条件を満たしていない場合におけるニッケル水素電池の充放電の例を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る下限検出条件を満たしている場合におけるニッケル水素電池の充放電の例を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るメモリ効果の進行の様子を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態に係るカウント回数に応じて放電曲線の下限電圧を小さくする制御を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池のリフレッシュの制御を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の実施形態に係る工場出荷後のニッケル水素電池を使用し始めてから期間が経過していないときの充放電特性を示す図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る放電曲線が移動する様子を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の初回の充放電制御を示すフローチャートである。
【
図22】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の初回の充放電制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。以下の説明において、前、後、上、下、左、右は、それぞれ鞍乗型車両のシートに着座した乗員から見たときの前、後、上、下、左、右を意味するものとする。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0053】
図1は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車100を示す側面図である。
図1に示す例では、鞍乗型車両はスクータ型の自動二輪車である。なお、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、ここで例示するスクータ型の自動二輪車に限定されない。本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、いわゆるオンロード型、オフロード型、モペット型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味し、二輪車に限定されない。本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、車体を傾けることによって進行方向を変える型式の三輪車(LMW)等であってもよく、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の鞍乗型車両であってもよい。
【0054】
自動二輪車100は、始動兼発電機として機能する回転電機を有する。回転電機は、回転を利用して発電を行う。回転電機は、エンジンの始動時にはエンジンのクランク軸を駆動するスタータモータとして利用され、さらに、走行時にはエンジンの出力をアシストするアシスト用モータとしても利用される。アシスト用モータとして動作している回転電機を、本明細書では単に「モータ」と呼ぶことがある。
【0055】
図1に示す自動二輪車100は、ヘッドパイプ9を有する車体フレーム10と、ヘッドパイプ9に支持されるハンドル4と、ハンドル4の後方に設けられたシート5と、ハンドル4とシート5との間に設けられ、ライダーが足を置くためのレッグスペース8とを備える。
【0056】
ヘッドパイプ9は、フロントフォーク2を左右方向に揺動可能に支持する。フロントフォーク2の上端にハンドル4が取り付けられ、フロントフォーク2の下端に前輪3が回転可能に取り付けられる。
【0057】
車体1の略中央上部にシート5が設けられる。シート5の下方にECU(Engine Control Unit)6およびエンジンユニットEUが設けられる。ECU6およびエンジンユニットEUによりエンジンシステムESが構成される。車体1の後端下部には後輪7が回転可能に取り付けられる。エンジンユニットEUによって発生される動力により後輪7が回転駆動される。
【0058】
図2および
図3は、エンジンユニットEUの模式図である。
図2に示すように、エンジンユニットEUは、エンジン20および回転電機30を含む。回転電機30は、始動兼発電機として機能する。
図2および
図3は、エンジン20の一例として、4ストロークの単気筒エンジンを示している。エンジン20は、シリンダCY、ピストン11、コンロッド(コネクティングロッド)12、クランク軸13、吸気バルブ15、排気バルブ16、カム軸17、インジェクタ19および点火装置18を備える。
【0059】
ピストン11は、シリンダCY内に往復動可能に設けられ、コンロッド12を介してクランク軸13に接続される。シリンダCYおよびピストン11により燃焼室25が区画される。燃焼室25は、吸気口21を介して吸気通路22に連通し、排気口23を介して排気通路24に連通する。吸気口21を開閉するように吸気バルブ15が設けられ、排気口23を開閉するように排気バルブ16が設けられる。吸気通路22には、燃焼室25に導かれる空気の流量を調整するためのスロットルバルブTLが設けられる。ハンドル4(
図1)に設けられたアクセルグリップ(不図示)が操作されることにより、スロットルバルブTLの開度が調整される。
【0060】
インジェクタ19は、吸気通路22に燃料を噴射する。点火装置18は、燃焼室25内の混合気に点火する。インジェクタ19によって噴射された燃料が空気と混合されて燃焼室25に導かれ、点火装置18により燃焼室25内の混合気に点火される。混合気が燃焼することによりピストン11が駆動され、ピストン11の往復運動がクランク軸13の回転運動に変換される。クランク軸13の回転力が
図1の後輪7に伝達されることにより後輪7が駆動される。
【0061】
カム軸17は、クランク軸13の回転に連動して回転するように設けられる。カム軸17に当接するように、ロッカーアームRA1,RA2が揺動可能に設けられる。カム軸17は、ロッカーアームRA1を介して吸気バルブ15を駆動し、ロッカーアームRA2を介して排気バルブ16を駆動する。
【0062】
図3に示すように、カム軸17の一端部には、カムスプロケットCSが設けられる。また、クランク軸13には、カム軸ドライブスプロケットDSが設けられる。カムスプロケットCSおよびカム軸ドライブスプロケットDSには、ベルトBLが巻き掛けられる。ベルトBLを介して、クランク軸13の回転力がカム軸17に伝達される。カム軸17の回転速度は、例えばクランク軸13の回転速度の2分の1である。
【0063】
カム軸17は、カムジャーナル17a、17b、吸気カムCA1および排気カムCA2を有する。カムジャーナル17aは、カムスプロケットCSと隣り合うように配置され、カムジャーナル17bは、カム軸17の他端部に配置される。カムジャーナル17a、17bは、それぞれ図示しない軸受け部により保持される。カムジャーナル17a、17bの間に吸気カムCA1および排気カムCA2が設けられる。吸気カムCA1は、カムジャーナル17bと隣り合うように設けられ、排気カムCA2は、カムジャーナル17aと隣り合うように設けられる。クランク角(クランク軸13の回転位置)が吸気工程に対応する角度範囲にあるときに、吸気カムCA1が
図2のロッカーアームRA1を駆動する。また、クランク角が排気工程に対応する角度範囲にあるときに、排気カムCA2が
図2のロッカーアームRA2を駆動する。
【0064】
カム軸17には、デコンプ機構DEが設けられる。デコンプ機構DEは、排気カムCA2とは別個に排気バルブ16をリフトさせることにより、シリンダCY内の圧力を低下させる。デコンプ機構は公知であるためその説明は省略する。
【0065】
回転電機30は、ステータ31およびロータ32を含む。ステータ31は図示しないクランクケースに固定され、U相、V相およびW相の複数のステータコイル31aを含む。複数のステータコイル31aは、クランク軸13の回転中心線を中心とする円に沿って並ぶように配置される。ロータ32は、ステータ31を囲むようにクランク軸13に固定される。ロータ32は複数の永久磁石32aを含む。複数の永久磁石32aは、クランク軸13の回転中心線を中心とする円に沿って並ぶように配置される。回転電機30は、後述のニッケル水素電池から供給される電力によりクランク軸13を駆動可能である。また、回転電機30は、クランク軸13から伝達される回転により発電することができる。発電により得られた電力によりニッケル水素電池を充電することができる。なお、回転電機30の代わりに、スタータモータおよび発電機が個別に設けられてもよい。
【0066】
図4は、エンジンシステムESを示すブロック図である。エンジンシステムESは、例えば、ニッケル水素電池40に蓄えられた電力および回転電機30が発電した電力を利用して動作する。エンジンシステムESは、ニッケル水素電池40とは別に動作用の電池を備えていてもよい。
【0067】
エンジンシステムESは、クランク角センサ53、スロットル開度センサ54および車速センサ55を含む。ECU6は、各センサからの出力を利用して、自動二輪車100の種々の状態を検出することができる。
【0068】
クランク角センサ53は、クランク角を検出するセンサである。クランク角を検出することにより、エンジン20の回転速度(例えば1分間当たりの回転数;rpm)を取得できる。スロットル開度センサ54は、
図2のスロットルバルブTLの開度を検出する。車速センサ55は、自動二輪車100の走行速度(車速)を検出する。クランク角センサ53、スロットル開度センサ54および車速センサ55は、検出結果に応じた検出信号をECU6に出力する。
【0069】
メインスイッチ51およびスタータスイッチ52は、例えばハンドル4(
図1)に設けられる。ライダーによるメインスイッチ51およびスタータスイッチ52の操作に応じた操作信号がECU6に出力される。
【0070】
ニッケル水素電池40には、温度センサ41、電圧センサ42、電流センサ43が設けられる。温度センサ41は、ニッケル水素電池40の温度を検出する。温度センサ41としては任意の温度センサを用いることができ、例えばサーミスタ、熱電対等を用いることができる。電圧センサ42は、ニッケル水素電池40の端子電圧を検出する。電流センサ43は、ニッケル水素電池40を流れる電流を検出する。温度センサ41、電圧センサ42、電流センサ43は、検出結果に応じた検出信号をECU6に出力する。
【0071】
ECU6は、例えばマイクロコントローラ61およびメモリ62を含む。ECU6は、与えられた検出信号および操作信号に基づいて、点火装置18、インジェクタ19、回転電機30およびニッケル水素電池40を制御する。
【0072】
例えば、メインスイッチ51がオンされ且つスタータスイッチ52がオンされると、ECU6は回転電機30を動作させてエンジン20のクランク軸13を駆動する。これにより、エンジン20が始動する。エンジン20の始動とは、インジェクタ19による燃料噴射および点火装置18による点火が開始されることによって混合気の燃焼が開始されることをいう。
【0073】
自動二輪車100が停止してメインスイッチ51がオフされると、エンジン20が停止される。エンジン20の停止とは、インジェクタ19による燃料噴射および点火装置18による点火の少なくとも一方が停止されることによって混合気の燃焼が停止されることをいう。
【0074】
本実施形態のECU6は、ニッケル水素電池40の充電および放電を制御する電池制御システムとしても動作する。以下、ニッケル水素電池40の温度に応じた充電および放電の制御を説明する。また、ニッケル水素電池40のメモリ効果の状態に応じた制御を説明する。なお、以下で示す各種の数値は例であり、本発明はそれらの数値に限定されない。
【0075】
図5は、ニッケル水素電池40の充放電特性を示す図である。
図5の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOC(State of Charge)を示している。
【0076】
縦軸に示すバッテリ電圧は、例えば開路電圧(Open Circuit Voltage(OCV))である。例えば、マイクロコントローラ61は、電圧センサ42および電流センサ43から得られる電圧値および電流値を用いて開路電圧を演算することができる。開路電圧の演算方法としては公知の種々の方法を用いることができ、ここではその詳細な説明は省略する。なお、開路電圧の代わりに閉路電圧(Closed Circuit Voltage(CCV))を用いても、本実施形態の制御処理を行うことができる。横軸に示すSOCは、電池の容量に対する現在充電されている電気量の割合をパーセンテージで表している。
【0077】
放電曲線113は、ニッケル水素電池40をSOCが100%の状態から0%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線114は、ニッケル水素電池40をSOCが0%の状態から100%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0078】
放電曲線123は、ニッケル水素電池40をSOCが90%の状態から20%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線124は、ニッケル水素電池40をSOCが20%の状態から90%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0079】
メモリ62には、放電曲線、充電曲線、SOCの使用範囲が記憶されている。マイクロコントローラ61は、メモリ62から読みだした放電曲線および充電曲線を用いて、バッテリ電圧からSOCを求めることができる。
【0080】
図5は、SOCの使用範囲120を示している。図示する例では、SOCの使用範囲120の上限121のSOCは90%、下限122は20%である。ニッケル水素電池40をSOCが90%になるまで充電を行った後に放電を行うと、放電曲線123に沿ったバッテリ電圧とSOCとの関係で放電が行われる。放電時は、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の出力をエンジンシステムESの各構成要素の動作のために用いる。例えば、車両の走行時にエンジン20をアシストする出力を回転電機30に発生させる制御を行うことで、ニッケル水素電池40に蓄えられた電力が消費される。
【0081】
ニッケル水素電池40をSOCが20%になるまで放電を行った後に充電を行うと、充電曲線124に沿ったバッテリ電圧とSOCとの関係で充電が行われる。充電時は、マイクロコントローラ61は、回転電機30が発電することにより得られた電力をニッケル水素電池40に供給する制御を行う。これにより、ニッケル水素電池40の充電を行うことができる。
【0082】
図5に示すように、ニッケル水素電池40は、放電曲線と充電曲線とが大きく異なるヒステリシス特性を有する。ニッケル水素電池40がヒステリシス特性を有することにより、充放電の制御は煩雑化する。また、ニッケル水素電池40は、温度が高い場合は充電効率が低下するとともに、温度が低い場合は出力が低下するという特性を有する。このため、広いSOCの使用範囲(例えばSOCが20%から90%の範囲)において、安定した充放電を実現することは容易ではない。
【0083】
そこで、本実施形態のニッケル水素電池40の充放電制御においては、SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲を、ニッケル水素電池40の温度に応じて使い分ける。
【0084】
図6は、ニッケル水素電池40の温度が低温である場合に用いるSOCの使用範囲130を示す図である。
図6の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が低温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が10℃未満であることを指す。
【0085】
図6に示す例では、SOCの使用範囲130の上限131のSOCは90%、下限132は40%である。ニッケル水素電池40は、温度が低い場合は出力が低下するという特性を有する。このため、ニッケル水素電池40の温度が低い場合は、SOCが小さくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。温度が低い場合は、マイクロコントローラ61は、高い値の範囲であるSOCの使用範囲130において充放電を制御する。これにより、ニッケル水素電池40の温度が低いことに起因する出力低下を抑制し、安定した充放電を実現することができる。放電曲線133は、ニッケル水素電池40をSOCが90%の状態から40%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線134は、ニッケル水素電池40をSOCが40%の状態から90%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0086】
なお、低温の下限は、例えばニッケル水素電池40が使用可能な温度の下限となる。例えば、ニッケル水素電池40が使用可能な温度の下限が-20℃である場合は、低温の下限は-20℃である。
【0087】
図7は、ニッケル水素電池40の温度が中温である場合に用いるSOCの使用範囲140を示す図である。
図7の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が中温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が10℃以上40℃未満であることを指す。
【0088】
図7に示すSOCの使用範囲140の下限142は、
図6に示すSOCの使用範囲130の下限132よりも小さい。また、
図6に示すSOCの使用範囲130の上限131は、
図7に示すSOCの使用範囲140の上限141よりも大きい。
【0089】
図7に示す例では、SOCの使用範囲140の上限141のSOCは80%、下限142は30%である。温度が中温のときは、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲140において充放電を制御する。放電曲線143は、ニッケル水素電池40をSOCが80%の状態から30%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線144は、ニッケル水素電池40をSOCが30%の状態から80%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0090】
図8は、ニッケル水素電池40の温度が高温である場合に用いるSOCの使用範囲150を示す図である。
図8の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が高温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が40℃以上であることを指す。
【0091】
図8に示すSOCの使用範囲150の下限152は、
図7に示すSOCの使用範囲140の下限142よりも小さい。また、
図7に示すSOCの使用範囲140の上限141は、
図8に示すSOCの使用範囲150の上限151よりも大きい。
【0092】
図8に示す例では、SOCの使用範囲150の上限151のSOCは70%、下限152は20%である。ニッケル水素電池40は、温度が高い場合は充電効率が低下するという特性を有する。言い換えると、温度が高い場合は、SOCが高い値になるまで充電することが難しくなる。このため、ニッケル水素電池40の温度が高い場合は、SOCが大きくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。温度が高い場合は、マイクロコントローラ61は、低い値の範囲であるSOCの使用範囲150において充放電を制御する。温度が高いことに起因する充電効率の低下を抑制することで、安定した充放電を実現することができる。放電曲線153は、ニッケル水素電池40をSOCが70%の状態から20%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線154は、ニッケル水素電池40をSOCが20%の状態から70%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0093】
なお、高温の上限は、例えばニッケル水素電池40が使用可能な温度の上限となる。例えば、ニッケル水素電池40が使用可能な温度の上限が60℃である場合は、高温の上限は60℃である。
【0094】
メモリ62(
図4)は、上記のようなSOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を予め記憶している。マイクロコントローラ61は、メモリ62からSOCの使用範囲に関する情報を読み出し、所望のSOCの使用範囲を設定する。
【0095】
図9から
図11を用いて、ニッケル水素電池40の充電および放電の制御を説明する。
図9は、ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を示すフローチャートである。
図10は、ニッケル水素電池40の現在のSOCに応じた充電および放電の制御を示すフローチャートである。
図11は、ニッケル水素電池40のメモリ効果に関する充電および放電の制御を示すフローチャートである。
【0096】
まず、
図9を用いて、ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を説明する。
【0097】
ステップS101において、マイクロコントローラ61は、温度センサ41の出力信号からニッケル水素電池40の温度を検出する。ステップS102において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満か判定する。所定の温度は、例えば10℃である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130を選択する(ステップS106)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲130内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0098】
ステップS102において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度未満でないと判定した場合は、ステップS103の処理に進む。ステップS103において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあるか判定する。所定の温度範囲は、例えば10℃以上40℃未満である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあると判定した場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140を選択する(ステップS105)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲140内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0099】
ステップS103において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度範囲にないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150を選択する(ステップS104)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲150内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0100】
このように、本実施形態では、ニッケル水素電池40の温度に応じて、複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更する。
【0101】
図13は、低温用のSOCの使用範囲130、中温用のSOCの使用範囲140、高温用のSOCの使用範囲150を示す図である。
図13の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更することにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。例えば、広いSOCの使用範囲120に相当する20%から90%の範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池40が有する性能を有効に利用することができる。
【0102】
ここで、SOCの使用範囲を変更する方法を説明する。SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更する場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140の下限142までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限142に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更することができる。
【0103】
SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更する場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限152に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更することができる。
【0104】
このように、SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池40を放電させる。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0105】
同様に、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から高温用のSOCの使用範囲150に変更する場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限152に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から高温用のSOCの使用範囲150に変更することができる。
【0106】
SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から中温用のSOCの使用範囲140に変更する場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140の上限141までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限141に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から中温用のSOCの使用範囲140に変更することができる。
【0107】
SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から低温用のSOCの使用範囲130に変更する場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限131に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から低温用のSOCの使用範囲130に変更することができる。
【0108】
このように、SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池40を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0109】
同様に、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から低温用のSOCの使用範囲130に変更する場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限131に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から低温用のSOCの使用範囲130に変更することができる。
【0110】
次に、
図10を用いて、ニッケル水素電池40の現在のSOCに応じた充電および放電の制御を説明する。
【0111】
マイクロコントローラ61は、
図9のステップS104、S105、S106で選択したSOCの使用範囲内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。このとき、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40から出力された電流の積算値を用いて、ニッケル水素電池40の現在のSOCを演算する(ステップS201)。
【0112】
例えば、SOCの使用範囲130を選択した場合、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。充電時にバッテリ電圧および充電曲線を用いて求めたSOCと、実際のSOCとの間には誤差が発生し得る。しかし、選択中のSOCの使用範囲の上限まで充電した段階でそのような誤差をリセットすることができる。これは、SOCの使用範囲の上限まで充電した状態では電圧とSOCとの関係の精度が高くなるためである。選択中のSOCの使用範囲の上限におけるSOCを基準として、電流積算値から現在のSOCを演算することで、SOCの誤差を小さくすることができる。
【0113】
SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40が充電されると、マイクロコントローラ61は、自動二輪車100の動作に応じてニッケル水素電池40から電流を出力させる。マイクロコントローラ61は、電流センサ43の出力信号からニッケル水素電池40が出力した電流の大きさを検出する。マイクロコントローラ61は、出力電流と出力時間とから電流積算値を演算する。例えば、SOCの使用範囲130の上限131におけるSOC90%から電流積算値を減算することで、現在のSOCが得られる。電流積算値を用いることで、ニッケル水素電池40の電圧値を用いなくても現在のSOCを把握することができる。
【0114】
ステップS202において、マイクロコントローラ61は、選択中のSOCの使用範囲の下限検出条件を現在のSOCが満たすか判定する。下限検出条件とは、演算した現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の下限の値以下であるとの条件である。例えば、SOCの使用範囲130を選択している場合、下限検出条件は、演算した現在のSOCが下限132の大きさである40%以下であるとの条件である。下限検出条件を満たすことは、現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の下限に到達した、または下限を通過したことを意味する。
【0115】
下限検出条件を満たすと判定した場合、マイクロコントローラ61は、出力制限フラグを“1”にする(ステップS204)。出力制限フラグが“1”である場合、マイクロコントローラ61は、充電量が放電量よりも大きくなるように充放電制御を行う。
【0116】
図14は、下限検出条件を満たしていない場合におけるニッケル水素電池40の充放電の例を示す図である。
図15は、下限検出条件を満たしている場合におけるニッケル水素電池40の充放電の例を示す図である。
図14および
図15の縦軸はニッケル水素電池40に対して入出力される電流を示し、横軸は時間を示している。
【0117】
図4および
図14を参照して、時間t1において乗員がスタータスイッチ52をオンにすると、マイクロコントローラ61は、回転電機30に大電流を流し、回転電機30を動作させてエンジン20を始動させる。燃料の燃焼によりエンジン20が回転をしている間、回転電機30は発電機として動作することができる。回転電機30が発電することにより、ニッケル水素電池40は充電される。
【0118】
時間t2からt3において、乗員が高出力を求めるアクセル操作を行うと、回転電機30は、エンジン20の出力をアシストするアシスト用モータとして動作する。このとき、ニッケル水素電池40から回転電機30に電流が供給され、回転電機30は補助出力を発生させる。
【0119】
時間t4からt5において、乗員がアクセル操作をオフにする、またはブレーキング動作を行うと、回転電機30は回生エネルギを発生させ、ニッケル水素電池40は充電される。
【0120】
図15は、下限検出条件を満たしている場合におけるニッケル水素電池40の充放電を示している。下限検出条件を満たしている場合、マイクロコントローラ61は、充電量が放電量よりも大きくなるように充放電制御を行う。例えば、回転電機30が補助出力を発生させる時間t2からt3において、ニッケル水素電池40に出力させる電流を小さくすることにより、放電量を抑える。充電量を放電量よりも大きくすることにより、ニッケル水素電池40の充電を進めることができる。
【0121】
図10のステップS202において、下限検出条件を満たしていないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、選択中のSOCの使用範囲の上限検出条件を現在のSOCが満たすか判定する(ステップS203)。
【0122】
上限検出条件とは、演算した現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の上限の値以上であるとの条件である。例えば、SOCの使用範囲130を選択している場合、上限検出条件は、演算した現在のSOCが上限131の大きさである90%以上であるとの条件である。上限検出条件を満たすことは、現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の上限に到達した、または上限を通過したことを意味する。
【0123】
上限検出条件を満たすと判定した場合、マイクロコントローラ61は、電流積算値をリセットするとともに、出力制限フラグを“0”にする(ステップS205およびS206)。選択中のSOCの使用範囲の上限におけるSOCを基準として、新たに電流積算値から現在のSOCを演算することができる。また、出力制限フラグが“0”である場合、
図15に例示したような電流の出力制限は行わない。
【0124】
ステップS203において上限検出条件を満たさないと判定した場合、
図11に示すステップS301の処理に進む。また、ステップS204およびS206の処理が行われた後も同様に、
図11に示すステップS301の処理に進む。
【0125】
なお、上記の例では、下限検出条件は、演算した現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の下限の値以下であるとの条件であったが、下限検出条件はそれに限定されない。例えば、下限検出条件は、電圧センサ42の出力信号から得られる現在のバッテリ電圧が、選択中のSOCの使用範囲の下限のSOCに対応する電圧以下であるとの条件であってもよい。下限のSOCに対応する電圧は、放電曲線と下限のSOCの大きさとの関係から特定される電圧である。下限検出条件を満たす場合、現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の下限に到達した、または下限を通過したことが推定される。下限検出条件を満たすと判定した場合、マイクロコントローラ61は、出力制限フラグを“1”にして、充電量が放電量よりも大きくなるように充放電制御を行う。
【0126】
また、上記の例では、上限検出条件は、演算した現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の上限の値以上であるとの条件であったが、上限検出条件はそれに限定されない。例えば、上限検出条件は、現在のバッテリ電圧が、選択中のSOCの使用範囲の上限のSOCに対応する電圧以上であるとの条件であってもよい。上限のSOCに対応する電圧は、充電曲線と上限のSOCの大きさとの関係から特定される電圧である。上限検出条件を満たす場合、現在のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の上限に到達した、または上限を通過したことが推定される。上限検出条件を満たすと判定した場合、マイクロコントローラ61は、電流積算値をリセットするとともに、出力制限フラグを“0”にする。
【0127】
また、上記の
図10の説明では、SOCの使用範囲130を選択している場合の動作を例示したが、SOCの使用範囲140または150を選択している場合の動作も同様である。
【0128】
次に、ニッケル水素電池40のメモリ効果に関する充電および放電の制御を説明する。
【0129】
ここで、複数のSOCの使用範囲を使い分けることで生じる課題を説明する。上述したように、ニッケル水素電池40の使用条件に応じて複数のSOCの使用範囲を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。一方で、複数のSOCの使用範囲130、140、150の放電曲線133、143、153は互いに異なる。このため、複数のSOCの使用範囲を使い分ける形態において、メモリ効果を精度良く検出することは困難である。
【0130】
本実施形態では、複数のSOCの使用範囲130、140、150の全てに含まれる特定の大きさのSOCを所定のSOCとする。そして、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになるタイミングで、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出する。
【0131】
本実施形態では、所定のSOCは、SOCの使用範囲130の下限に対応したSOCであり、例えば40%である。SOC40%は、複数のSOCの使用範囲130、140、150の全てに含まれる大きさのSOCである。このため、SOCの使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池40のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。後述するように、ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCになるタイミングで、メモリ効果に関する情報を取得する。
【0132】
ここでは、所定のSOCを40%として説明するが、所定のSOCはこれに限定されない。所定のSOCは、SOCの使用範囲130、140、150の全てに含まれる大きさであればよく、使用範囲130の下限の大きさに限定されない。例えば、所定のSOCは40%以上50%未満の任意の値であってもよい。メモリ効果は、SOCが50%以上の領域よりも、50%未満の領域で特に発生しやすい。メモリ効果に関する情報を取得する領域を、SOCが50%未満の領域とすることにより、より適切な制御を行うことができる。
【0133】
図11のステップS301において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のSOCが、選択中のSOCの使用範囲の上限に到達した後に、初めて所定のSOCになったか判定する。
【0134】
ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のメモリ効果に関する情報を取得する。
図11に示す例では、マイクロコントローラ61は、カウント回数に“1”を加算し、合計のカウント回数をメモリ効果に関する情報として取得する(ステップS302)。
【0135】
ステップS303において、マイクロコントローラ61は、カウント回数が所定の回数以上であるか判定する。所定の回数は例えば30回であるが、これに限定されない。カウント回数が所定の回数以上であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、メモリ効果飽和フラグを“1”にする(ステップS305)。メモリ効果飽和フラグが“1”である場合、マイクロコントローラ61は、後述するようにニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0136】
ニッケル水素電池40の充放電を繰り返すとメモリ効果が進行し、放電時の電圧が小さくなる。カウント回数が所定の回数以上になった場合、例えば、ニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことで、放電時の電圧を回復させることができる。
【0137】
SOCの使用範囲130、140、150の全てに含まれる所定のSOCにおいてカウントすることにより、SOCの使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、カウントし損ねることなく、精度良くカウントすることができる。
【0138】
ステップS303において、カウント回数が所定の回数以上でないと判定した場合、ステップS304の処理に進む。ステップS304において、マイクロコントローラ61は、メモリ効果の進度に応じて、SOCの使用範囲130、140、150それぞれの下限における電圧を再設定する。
【0139】
図16は、メモリ効果の進行の様子を示す図である。
図16の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はカウント回数を示している。ニッケル水素電池40の充放電を繰り返すと、SOCの使用範囲の下限におけるバッテリ電圧は徐々に低下していく。そして、例えば、カウント回数が30回になる頃に、メモリ効果は飽和する。
【0140】
図17は、カウント回数に応じてSOCの使用範囲130、140、150それぞれの放電曲線133、143、153の下限電圧を小さくする制御を示す図である。
図17の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はカウント回数を示している。破線135は、SOCの使用範囲130の放電曲線133の下限電圧を示している。破線145は、SOCの使用範囲140の放電曲線143の下限電圧を示している。破線155は、SOCの使用範囲150の放電曲線153の下限電圧を示している。
【0141】
図17に示すように、カウント回数に応じて、SOCの使用範囲130、140、150それぞれの放電曲線133、143、153の下限電圧を徐々に小さくしていく。バッテリ電圧から現在のSOCを演算する形態では、メモリ効果による電圧降下が発生すると、ニッケル水素電池の現在のSOCが実際にはSOCの使用範囲の下限に達していなくても、下限に達していると判定される場合がある。本実施形態では、メモリ効果による電圧降下の度合いに応じて、放電曲線の下限電圧を小さくする。これにより、メモリ効果が進行しても実際に使用するSOCの範囲が狭くなることを抑制できる。
【0142】
車両の電源がオンの間(ステップS306においてNO)は、
図9に示すステップS101の処理に戻り、温度の検出を継続する。ニッケル水素電池40の温度範囲に変更がない場合は、現在選択中のSOCの使用範囲を維持する。ステップS102またはS103の処理において、温度範囲に変更が生じた場合は、最新の温度に応じたSOCの使用範囲に変更する。例えば、低温用のSOCの使用範囲130を用いた制御中に、ニッケル水素電池40の温度が10℃以上40℃未満に変化した場合は、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更する。例えば、中温用のSOCの使用範囲140を用いた制御中に、ニッケル水素電池40の温度が40℃以上に変化した場合は、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更する。
【0143】
車両の電源がオフになった場合(ステップS306においてYES)は、処理を終了する。
【0144】
上記の説明では、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになった回数に応じてメモリ効果に関する制御を行ったが、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになったときのバッテリ電圧に応じてメモリ効果に関する制御を行ってもよい。
【0145】
図12は、バッテリ電圧に応じたメモリ効果に関する制御を示すフローチャートである。
図12に示すステップS301、S304、S305、S306の処理は、
図11に示すそれらのステップにおける処理と同様である。
【0146】
図12に示すステップS301において、ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のメモリ効果に関する情報を取得する。
図12に示す例では、マイクロコントローラ61は、電圧センサ42の出力信号から、現在のSOCが所定のSOCであるときのバッテリ電圧を検出し、メモリ効果に関する情報として取得する(ステップS402)。
【0147】
図13に示すように、SOCの使用範囲130の下限に対応した所定のSOCにおいては、SOCの使用範囲130での放電曲線における電圧と、SOCの使用範囲140での放電曲線における電圧と、SOCの使用範囲150での放電曲線における電圧との差は小さくなる。この電圧の差が小さくなる所定のSOCになったときのニッケル水素電池40の電圧を検出する。複数のSOCの使用範囲130、140、150の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。
【0148】
ステップS403において、マイクロコントローラ61は、検出したバッテリ電圧が所定の電圧以下であるか判定する。所定の電圧は例えば12.8Vであるが、これに限定されない。検出したバッテリ電圧が所定の電圧以下であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、メモリ効果飽和フラグを“1”にする(ステップS305)。メモリ効果飽和フラグが“1”である場合、マイクロコントローラ61は、後述するようにニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0149】
複数のSOCの使用範囲130、140、150の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することで、適切なタイミングでニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことができる。
【0150】
ステップS403において、検出したバッテリ電圧が所定の電圧以下でないと判定した場合、ステップS304の処理に進む。ステップS304において、マイクロコントローラ61は、メモリ効果の進度に応じて、SOCの使用範囲130、140、150それぞれの下限における電圧を再設定する。
【0151】
下限電圧の再設定は、
図17を用いて説明したようにカウント回数に応じて行ってもよいし、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになったときのバッテリ電圧の低下の度合いに応じて行ってもよい。メモリ効果による電圧降下に応じて、放電曲線の電圧の下限を小さくする。これにより、メモリ効果が進行しても実際に使用するSOCの範囲が狭くなることを抑制できる。
【0152】
なお、マイクロコントローラ61は、複数のSOCの使用範囲130、140、150のうちの現在選択しているSOCの使用範囲に応じて、現在のSOCが所定のSOCであるときに検出したバッテリ電圧の値を補正してもよい。
【0153】
SOCの使用範囲が異なれば、所定のSOCにおける電圧値も多少は異なることになる。現在選択しているSOCの使用範囲に応じて電圧値を補正することで、メモリ効果による電圧降下をより精度良く検出することができる。
【0154】
例えば、SOCの使用範囲130の所定のSOCにおける電圧と、SOCの使用範囲150の所定のSOCにおける電圧との差は、0.2V程度であることが予め分かっているとする。この場合、SOCの使用範囲150を選択中に検出した、所定のSOCのときの電圧から0.2Vを除した値を、メモリ効果に関する情報として取得する。そして、ステップS403において、そのように補正された値と所定の電圧とを比較する。これにより、メモリ効果による電圧降下をより精度良く検出することができる。
【0155】
次に、ニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を説明する。
図18は、ニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を示すフローチャートである。上述したように、メモリ効果飽和フラグが“1”である場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0156】
ステップS501において、マイクロコントローラ61は、メモリ効果飽和フラグが“1”であるか判定する。メモリ効果飽和フラグは“1”でないと判定した場合、メモリ効果飽和フラグが“1”になるまで定期的に判定を繰り返す。
【0157】
メモリ効果飽和フラグは“1”であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のリフレッシュを行う(ステップS502)。リフレッシュ動作では、例えば、ニッケル水素電池40の電圧が放電終止電圧に達するまで放電させる。ニッケル水素電池40の電圧が放電終止電圧に達した後、SOCの使用範囲130の上限131までの充電を行う。これにより、放電時のバッテリ電圧を回復させることができる。
【0158】
ニッケル水素電池40のリフレッシュを実行した後、マイクロコントローラ61は、メモリ効果飽和フラグを“0”にする(ステップS503)。また、ステップS302(
図11)でカウントしたカウント回数をリセットする(ステップS504)。そして、ステップS501の処理に戻り、次にメモリ効果飽和フラグが“1”になるまで定期的に判定を繰り返す。
【0159】
本実施形態では、メモリ効果の進行の度合いを精度良く検出することができる。メモリ効果の進行の度合いを精度良く検出することで、適切なタイミングでニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことができる。
【0160】
次に、ニッケル水素電池40の初回の放電を行うときの処理を説明する。ニッケル水素電池40の初回の放電とは、例えば、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の放電である。
【0161】
上述した
図13は、工場出荷後のニッケル水素電池40を使用し始めてから一定以上の期間が経過した後の充放電特性を示している。例えば、温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返した後に得られる充放電特性を示している。
図13に示す例では、SOCの使用範囲150の下限152におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、放電曲線123に沿っている。SOCの使用範囲140の下限142におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、放電曲線123に沿っている。また、SOCの使用範囲150の上限151におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124に沿っている。また、SOCの使用範囲140の上限141におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124に沿っている。
【0162】
放電曲線123は、SOCの使用範囲130の上限131からSOCの使用範囲150の下限152までの放電を行うことで得られる放電曲線である。充電曲線124は、SOCの使用範囲150の下限152からSOCの使用範囲130の上限131までの充電を行うことで得られる充電曲線である。SOCの使用範囲150の下限152までの放電およびSOCの使用範囲130の上限131までの充電を行うと、SOCの使用範囲130の上限131とSOCの使用範囲150の下限152とを結ぶ放電曲線123および充電曲線124(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0163】
図19は、工場出荷後のニッケル水素電池40を使用し始めてから期間が経過していないときの充放電特性を示す図である。
図19の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。
【0164】
図19に示す例では、SOCの使用範囲150の下限152におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、放電曲線123から離れている。SOCの使用範囲140の下限142におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、放電曲線123から離れている。また、SOCの使用範囲150の上限151におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124から離れている。SOCの使用範囲140の上限141におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124から離れている。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、SOCの使用範囲140、150における放電曲線143、153および充電曲線144、154は移動する。
【0165】
図20は、放電曲線143、153および充電曲線144、154が移動する様子を示す図である。
図20の左側のグラフは、工場出荷直後のニッケル水素電池40の充放電特性を示している。
図20の右側のグラフは、放電曲線143、153および充電曲線144、154が移動した後の充放電特性を示している。
図20の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。
【0166】
図20に示すように、ニッケル水素電池40は充電状況により異なる充放電特性を示す。例えば、SOCの使用範囲150の上限151まで充電されたニッケル水素電池40は、上限151を基準とした放電曲線153および充電曲線154を有する。また、例えば、SOCの使用範囲140の上限141まで充電されたニッケル水素電池40は、上限141を基準とした放電曲線143および充電曲線144を有する。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、放電曲線143、153および充電曲線144、154は移動して、上限131を基準とした放電曲線123および充電曲線124に近づく。このように、使用過程で放電曲線143、153が移動すると、メモリ効果を精度良く検出することは困難となる。
【0167】
そこで、本実施形態では、ニッケル水素電池40の初回充放電時にSOCの使用範囲130の上限131まで充電を行う。上限131は上限121と同じ大きさである。また、初回充放電時にニッケル水素電池40が自己放電している場合は、その自己放電している状態から、ニッケル水素電池40の初回充放電時にSOCの使用範囲130の上限131まで充電を行う。ニッケル水素電池40を上限131まで充電した後、温度条件に応じたSOCの使用範囲の下限まで放電させる。SOCの使用範囲の下限まで放電させた後に、温度条件に応じたSOCの使用範囲の上限まで充電する。これにより、放電曲線143、153を基準となる放電曲線123に沿わせることができる。放電曲線143、153は、基準となる放電曲線123に沿った後は、メモリ効果の影響以外では移動しない。メモリ効果の影響以外での放電曲線143、153の移動がなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0168】
図21および
図22は、ニッケル水素電池40の初回の充放電制御を示すフローチャートである。
【0169】
ステップS601において、マイクロコントローラ61は、初期設定フラグが“1”であるか判定する。初期設定フラグは、例えばメモリ62に記憶されている。後述するステップS603からS612に示す処理がまだ行われていない場合、初期設定フラグは“0”を示している。ステップS603からS612に示す処理が完了している場合、初期設定フラグは“1”を示している。
【0170】
初期設定フラグは“1”であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、
図9に示した温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を実行する。
【0171】
初期設定フラグは“1”でないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が高温か判定する(ステップS602)。上述したように、ニッケル水素電池40が高温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が40℃以上であることを指す。
【0172】
ニッケル水素電池40は高温であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、
図9に示した温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を実行する。ニッケル水素電池40の温度が高い場合は、SOC90%などの高い値になるまで充電することが難しくなる。そのため、ニッケル水素電池40が高温である場合は、ステップS603からS612に示す処理は行わない。自動二輪車100を次に起動したときに、改めてステップS601の判定を行う。自動二輪車100の使用環境が高温であることが継続している間は、ステップS603からS612に示す処理は行われない。しかし、高温の使用環境が継続している間は、複数のSOCの使用範囲を使い分ける制御は行わないため、ステップS603からS612に示す充放電は行われなくてもよい。
【0173】
ニッケル水素電池40は高温でないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、出力制限フラグを“1”にするとともに、ニッケル水素電池40の充電を開始する(ステップS603)。出力制限フラグを“1”にし、充電量が放電量よりも大きくなるように制御する。放電は、エンジン20の始動時の放電に限定するなど、必要最小限に留める。
【0174】
マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲130の上限131に到達するまでニッケル水素電池40の充電を継続する(ステップS604)。
【0175】
SOCの使用範囲130の上限131に到達するまでニッケル水素電池40が充電されたと判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の放電を開始する。以下に説明するように、マイクロコントローラ61は、温度条件に応じたSOCの使用範囲の下限に到達するまでニッケル水素電池40の放電を継続する。充電は、減速時や停止時の回生動作のみに限定するなど、必要最小限に留める。
【0176】
ステップS605において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満か判定する。所定の温度は、例えば10℃である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130を選択する(ステップS609)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲130内でニッケル水素電池40の放電を開始する(ステップS610)。同時に、ステップS610において、出力制限フラグを“0”にする。
【0177】
ステップS605において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度未満でないと判定した場合は、ステップS606の処理に進む。ステップS606において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあるか判定する。所定の温度範囲は、例えば10℃以上40℃未満である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあると判定した場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140を選択する(ステップS608)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲140内でニッケル水素電池40の放電を開始する(ステップS610)。
【0178】
ステップS606において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度範囲にないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150を選択する(ステップS607)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲150内でニッケル水素電池40の放電を開始する(ステップS610)。
【0179】
マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲の下限に到達するまでニッケル水素電池40の放電を継続する(ステップS611)。ステップS611において、温度条件に応じたSOCの使用範囲の下限に到達したと判定した後に、初期設定フラグを“1”にする(ステップS612)。その後、
図9のステップS101からS106、
図10のステップS201からS206の処理に進む。ニッケル水素電池40は温度条件に応じたSOCの使用範囲の下限まで放電しているため、ステップS202において必ず出力制限フラグが“1”となり、充電量が放電量よりも多くなるように制御される。この時点で、充電曲線144、154は充電曲線124に沿うように変化している。
【0180】
その後、SOCの使用範囲140の上限141に到達するまでニッケル水素電池40が充電されると、出力制限フラグを“0”にして、放電量が充電量よりも大きくなるように制御する。この時点で放電曲線143は放電曲線123に沿うように変化している。また、SOCの使用範囲150の上限151に到達するまでニッケル水素電池40が充電された場合も、放電曲線153は放電曲線123に沿うように変化している。
【0181】
このように、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに放電曲線143、153を放電曲線123に沿わせることができる。このような初回の充放電を行った後、上述したメモリ効果に関する制御を実行する。放電曲線143、153がメモリ効果の影響以外では移動しないことにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0182】
上記の例では、ニッケル水素電池40の初回の放電は、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の放電であったが、初回の放電は、ニッケル水素電池40を補充電した後における最初の放電であってもよい。補充電を行った後、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに放電曲線143、153を放電曲線123に沿わせることができる。放電曲線143、153がメモリ効果の影響以外では移動しないことにより、補充電後も、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0183】
上記の説明では、3つのSOCの使用範囲を温度に応じて使い分けていたが、本発明はそれに限定されない。温度に応じて使い分けるSOCの使用範囲の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0184】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0185】
実施形態に係る電池制御システム6は、電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池40の充放電を制御する。電池制御システム6は、SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲130、140、150に関する情報を記憶するメモリ62(記憶媒体)と、ニッケル水素電池40の使用条件に応じて複数のSOCの使用範囲130、140、150のうちの1つを選択し、選択したSOCの使用範囲に応じてニッケル水素電池40の充放電の制御を行うマイクロコントローラ61(制御回路)とを備える。複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲130と、第1の使用範囲130のSOCの下限132と同じ大きさのSOCを含む第2の使用範囲140、150とを含む。マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の現在のSOCが第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCであるか判定する。ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のメモリ効果に関する情報を取得し、取得したメモリ効果に関する情報を用いて、ニッケル水素電池40の放電の制御を行う。
【0186】
ニッケル水素電池40の使用条件に応じて複数のSOCの使用範囲130、140、150を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池40が有する性能を有効に利用することができる。
【0187】
一方で、複数のSOCの使用範囲130、140、150の間で放電曲線は互いに異なる。このため、複数のSOCの使用範囲130、140、150を使い分ける形態において、メモリ効果を精度良く検出することは困難である。
【0188】
本発明の実施形態では、第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCは、第1および第2の使用範囲130、140、150の全てに含まれる。第1および第2の使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池40のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0189】
例えば、第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCにおいては、第1の使用範囲130での放電曲線における電圧と、第2の使用範囲140、150での放電曲線における電圧との差は小さくなる。この電圧の差が小さくなる所定のSOCになったときのニッケル水素電池40の電圧を検出する。複数のSOCの使用範囲130、140、150の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することで、選択したSOCの使用範囲での充放電の繰り返しが容易となるだけでなく、リフレッシュが必要な場合は、適切なタイミングでニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことができる。
【0190】
また、例えば、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになった回数をカウントする。カウントした回数により、ニッケル水素電池40のメモリ効果の進行具合を把握することができる。これにより、選択したSOCの使用範囲での充放電の繰り替えしが容易となるだけでなく、リフレッシュが必要な場合は、適切なタイミングでニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことができる。第1および第2の使用範囲130、140、150の全てに含まれる所定のSOCにおいてカウントすることにより、第1および第2の使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、カウントし損ねることなく、精度良くカウントすることができる。
【0191】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、電圧センサ42が検出したニッケル水素電池40の電圧に関する情報を用いて、所定のSOCにおけるニッケル水素電池40の電圧を検出し、所定のSOCにおけるニッケル水素電池40の電圧を用いて、ニッケル水素電池40の放電の制御を行ってもよい。
【0192】
第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCにおいては、第1の使用範囲130での放電曲線における電圧と、第2の使用範囲140、150での放電曲線における電圧との差は小さくなる。この電圧の差が小さくなる所定のSOCになったときのニッケル水素電池40の電圧を検出する。複数のSOCの使用範囲130、140、150の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。
【0193】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、所定のSOCにおける電圧が所定の電圧以下であるか判定し、所定のSOCにおける電圧が所定の電圧以下であると判定した場合、ニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0194】
複数のSOCの使用範囲130、140、150の間での電圧の差が小さくなる領域で検出した電圧値を用いることで、メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することができる。メモリ効果による電圧降下を精度良く検出することで、適切なタイミングでニッケル水素電池40のリフレッシュを行うことができる。
【0195】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、複数のSOCの使用範囲130、140、150のうちの現在選択しているSOCの使用範囲に応じて、検出した電圧の値を補正してもよい。
【0196】
SOCの使用範囲が異なれば、所定のSOCにおける電圧値も多少は異なる。現在選択しているSOCの使用範囲に応じて電圧値を補正することで、メモリ効果による電圧降下をより精度良く検出することができる。
【0197】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになった回数をカウントし、カウントした回数が所定の回数以上であるか判定し、カウントした回数が所定の回数以上であると判定した場合、ニッケル水素電池40のリフレッシュの制御を行ってもよい。
【0198】
ニッケル水素電池40の充放電を繰り返すとメモリ効果が進行し、放電時の電圧が小さくなる。カウントした回数が所定の回数以上になった場合、ニッケル水素電池40のリフレッシュを行う。これにより、放電時の電圧を回復させることができる。
【0199】
第1および第2の使用範囲130、140、150の全てに含まれる所定のSOCにおいてカウントすることにより、第1および第2の使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、カウントし損ねることなく、精度良くカウントすることができる。
【0200】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40のSOCが所定のSOCになった回数をカウントし、カウントした回数に応じて、複数のSOCの使用範囲130、140、150それぞれの放電曲線の電圧の下限を現在の設定値よりも小さくしてもよい。
【0201】
メモリ効果による電圧降下に応じて、放電曲線の電圧の下限を小さくする。これにより、メモリ効果が進行しても実際に使用するSOCの範囲が狭くなることを抑制できる。
【0202】
ある実施形態において、所定のSOCは、50%よりも小さく、第1の使用範囲130のSOCの下限132以上であってもよい。
【0203】
メモリ効果は、SOCが50%以上の領域よりも、50%未満の領域で特に発生しやすい。メモリ効果に関する情報を取得する領域を、SOCが50%未満の領域とすることにより、より適切な放電の制御を行うことができる。
【0204】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、電流センサ43が検出したニッケル水素電池40の電流に関する情報を用いて、ニッケル水素電池40が出力した電流の積算値を演算し、電流の積算値を用いてニッケル水素電池40の現在のSOCを演算してもよい。
【0205】
電流の積算値を用いることで、ニッケル水素電池40の電圧値を用いなくても現在のSOCを把握することができる。
【0206】
ある実施形態において、第1の使用範囲130のSOCの上限131は、第2の使用範囲140、150のSOCの上限141、151よりも大きく、第2の使用範囲140、150のSOCの下限142、152は、第1の使用範囲130のSOCの下限132よりも小さくてもよい。
【0207】
SOCの上限が大きい第1の使用範囲130と、SOCの下限が小さい第2の使用範囲140、150とを使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行うことができる。
【0208】
ある実施形態において、複数のSOCの使用範囲は、第3の使用範囲140をさらに含み、第3の使用範囲140のSOCの上限141は、第1の使用範囲130のSOCの上限131よりも小さく、且つ第2の使用範囲150のSOCの上限151よりも大きく、第3の使用範囲140のSOCの下限142は、第1の使用範囲130のSOCの下限132よりも小さく、且つ第2の使用範囲150のSOCの下限152よりも大きく、第3の使用範囲140は、第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCを含んでもよい。
【0209】
第1、第2および第3の使用範囲130、140、150を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行うことができる。
【0210】
第1の使用範囲130のSOCの下限132に対応した所定のSOCは、第1、第2および第3の使用範囲130、140、150の全てに含まれる。第1、第2および第3の使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池40のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0211】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度に応じて、複数のSOCの使用範囲130、140、150の中から選択するSOCの使用範囲を変更してもよい。
【0212】
ニッケル水素電池40の温度に応じて複数のSOCの使用範囲130、140、150を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池40が有する性能を有効に利用することができる。
【0213】
ある実施形態において、所定のSOCは、第1の使用範囲130のSOCの下限132の大きさであってもよい。
【0214】
第1の使用範囲130の下限132の大きさのSOCは、複数の使用範囲130、140、150のそれぞれに含まれる。複数の使用範囲130、140、150のいずれを選択していた場合でも、ニッケル水素電池40のSOCが変化する過程で所定のSOCになるタイミングがある。ニッケル水素電池40の現在のSOCが所定のSOCであると判定した場合、メモリ効果に関する情報を取得する。これにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0215】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の初回の使用時において、第1の使用範囲130のSOCの上限131までニッケル水素電池40を充電し、ニッケル水素電池40を第1の使用範囲130のSOCの上限131まで充電した後、ニッケル水素電池40の使用条件に応じて選択したSOCの使用範囲の下限まで放電させ、ニッケル水素電池40を選択したSOCの使用範囲の下限まで放電した後、ニッケル水素電池40の使用条件に応じて選択した第2の使用範囲140、150のSOCの上限141、151まで充電する制御を行ってもよい。
【0216】
第2の使用範囲150のSOCの下限152までの放電および第1の使用範囲130のSOCの上限131までの充電を行うと、第1の使用範囲130のSOCの上限131と第2の使用範囲150のSOCの下限152とを結ぶ放電曲線123および充電曲線124(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0217】
ニッケル水素電池40の初期の使用時においては、第2の使用範囲140、150を選択した場合の放電曲線は、上記基準となる放電曲線から離れている。ニッケル水素電池40の使用条件に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、第2の使用範囲140、150における放電曲線は移動して、上記基準となる放電曲線に近づく。SOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、第2の使用範囲140、150における放電曲線が移動すると、メモリ効果を精度良く検出することは困難である。
【0218】
そこで、ニッケル水素電池40の初回の使用時において、ニッケル水素電池40を第1の使用範囲130のSOCの上限131まで充電した後に、ニッケル水素電池40の使用条件に応じて選択したSOCの使用範囲の下限まで放電させる。その下限まで放電させた後に、使用条件に応じて選択した第2の使用範囲140、150の上限141、151まで充電する。これにより、すぐに第2の使用範囲140、150における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲140、150における放電曲線は、基準となる放電曲線に沿った後は、メモリ効果の影響以外では移動しない。第2の使用範囲140、150における放電曲線の移動が、メモリ効果の影響以外ではなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0219】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用は、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の使用であってもよい。
【0220】
ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに第2の使用範囲140、150における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲140、150における放電曲線の移動が、メモリ効果の影響以外ではなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0221】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用は、ニッケル水素電池40を補充電した後における最初の使用であってもよい。
【0222】
補充電を行った後、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに第2の使用範囲140、150における放電曲線を基準となる放電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲140、150における放電曲線の移動が、メモリ効果の影響以外ではなくなることにより、メモリ効果を精度良く検出することができる。
【0223】
本発明の実施形態に係る鞍乗型車両100は、上記の電池制御システム6を備える。
【0224】
SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行うとともに、メモリ効果を適切に制御できることにより、鞍乗型車両100の性能を向上させることができる。
【0225】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、ニッケル水素電池の充放電を行う技術分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0227】
1:車体、 2:フロントフォーク、 3:前輪、 4:ハンドル、 5:シート、 6:ECU(電池制御システム)、 7:後輪、 8:レッグスペース、 9:ヘッドパイプ、 10:車体フレーム、 11:ピストン、 12:コンロッド、 13:クランク軸、 15:吸気バルブ、 16:排気バルブ、 17:カム軸、 17a:カムジャーナル、 17b:カムジャーナル、 18:インジェクタ、 19:点火装置、 20:エンジン、 21:吸気口、 22:吸気通路、 23:排気口、 24:排気通路、
25:燃焼室、 30:回転電機、 31:ステータ、 31a:ステータコイル、 32:ロータ、 32a:磁石、 40:ニッケル水素電池、 41:温度センサ、 42:電圧センサ、 43:電流センサ、 61:マイクロコントローラ(制御回路)、 62:メモリ(記憶媒体)、 100:自動二輪車(鞍乗型車両)、 113:放電曲線、 114:充電曲線、 120:SOCの使用範囲、 121:SOCの使用範囲の上限、 122:SOCの使用範囲の下限、 123:放電曲線、 124:充電曲線、 130:低温用のSOCの使用範囲、 131:低温用のSOCの使用範囲の上限、 132:低温用のSOCの使用範囲の下限、 133:放電曲線、 134:充電曲線、 140:中温用のSOCの使用範囲、 141:中温用のSOCの使用範囲の上限、 142:中温用のSOCの使用範囲の下限、 143:放電曲線、 144:充電曲線、 150:高温用のSOCの使用範囲、 151:高温用のSOCの使用範囲の上限、 152:高温用のSOCの使用範囲の下限、 153:放電曲線、 154:充電曲線