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特許7111843ターゲットの挙動を識別する方法及び装置、並びにレーダーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ターゲットの挙動を識別する方法及び装置、並びにレーダーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20220726BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220726BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S13/931
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020568494
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2020085139
(87)【国際公開番号】W WO2021036286
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】201910817089.3
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シャンビン
(72)【発明者】
【氏名】ユィ,ユエチン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,シュエミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チィ
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070701(JP,A)
【文献】特開2017-026475(JP,A)
【文献】特開2012-163403(JP,A)
【文献】特開平04-064080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257536(US,A1)
【文献】米国特許第05999118(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108388850(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106127110(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの挙動を識別する方法であって、
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信することと、
時間周波数領域データを取得するよう前記レーダーエコー信号を処理することと、
信号属性特徴データ及び線形予測係数(LPC)特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理することであり、前記信号属性特徴データは、前記レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、前記LPC特徴データは、前記レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される、ことと、
前記信号属性特徴データ及び前記LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、前記ターゲットの挙動情報を出力することと
を有し、
前記挙動識別モデルは、前記挙動情報を2つのタイプに分類するよう夫々構成された複数のサポートベクトルマシン(SVM)分類器モデルを有し、前記複数のSVM分類器モデルの組み合わせにより、前記分類された2つのタイプのうちの夫々又は少なくとも1つのタイプは更に2つのサブタイプに分類され得る、方法。
【請求項2】
信号属性特徴データ及び線形予測係数(LPC)特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理することは、
前記信号属性特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理することと、
前記LPC特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データをLPC関数に入力することと
を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信号属性特徴データ及び線形予測係数(LPC)特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理することの前に、前記方法は、
前記時間周波数領域データに対して次元削減を実行することを更に有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間周波数領域データに対して次元削減を実行することは、
主成分分析(PCA)アルゴリズムに基づいて前記時間周波数領域データに対して次元削減を実行することを有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記信号属性特徴データは、最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度、のうちの1つ以上を有する、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ターゲットの挙動を識別する装置であって、
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信するよう構成される受信モジュールと、
時間周波数領域データを取得するよう前記レーダーエコー信号を処理し、信号属性特徴データ及び線形予測係数(LPC)特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理するよう構成される処理モジュールであり、前記信号属性特徴データは、前記レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、前記LPC特徴データは、前記レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される、前記処理モジュールと、
前記信号属性特徴データ及び前記LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、前記ターゲットの挙動情報を出力するよう構成される識別モジュールと
を有し、
前記挙動識別モデルは、前記挙動情報を2つのタイプに分類するよう夫々構成された複数のサポートベクトルマシン(SVM)分類器モデルを有し、前記複数のSVM分類器モデルの組み合わせにより、前記分類された2つのタイプのうちの夫々又は少なくとも1つのタイプは更に2つのサブタイプに分類され得る、装置。
【請求項7】
前記処理モジュールは、
前記信号属性特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理し、
前記LPC特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データをLPC関数に入力する
よう構成される、
請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理モジュールは、
前記時間周波数領域データに対して次元削減を実行するよう更に構成される、
請求項又はに記載の装置。
【請求項9】
前記処理モジュールは、
主成分分析(PCA)アルゴリズムに基づいて各ターゲットの前記時間周波数領域データに対して次元削減を実行するよう構成される、
請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記信号属性特徴データは、最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度、のうちの1つ以上を有する、
請求項乃至のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
レーダーシステムであって、
信号送信装置、信号受信装置、及び信号処理装置を有し、
前記信号送信装置は、レーダー信号を送信するよう構成され、
前記信号受信装置は、前記レーダー信号がターゲットに接触するときに該ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信するよう構成され、
前記信号処理装置は、
時間周波数領域データを取得するよう、前記信号受信装置によって受信された前記レーダーエコー信号を処理し、
信号属性特徴データ及び線形予測係数(LPC)特徴データを取得するよう前記時間周波数領域データを処理し、前記信号属性特徴データは、前記レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、前記LPC特徴データは、前記レーダーエコー信号の特徴を表すために使用され、
前記信号属性特徴データ及び前記LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、前記ターゲットの挙動情報を出力する
よう構成され
前記挙動識別モデルは、前記挙動情報を2つのタイプに分類するよう夫々構成された複数のサポートベクトルマシン(SVM)分類器モデルを有し、前記複数のSVM分類器モデルの組み合わせにより、前記分類された2つのタイプのうちの夫々又は少なくとも1つのタイプは更に2つのサブタイプに分類され得る
レーダーシステム。
【請求項12】
命令を有するコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ可読記憶媒体がコンピュータで実行される場合に、該コンピュータは、請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の、ターゲットの挙動を識別する方法を実行することを可能にされる、
コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、通信技術の分野に、特に、ターゲットの挙動を識別する方法及び装置、並びにレーダーシステムに関係がある。
【背景技術】
【0002】
近年出現している新しい技術として、人間行動識別は、映像監視、自動運転、インテリジェント・ヒューマン-コンピュータ・インタラクション、及びインテリジェント交通早期警戒のような分野で大きな注目を集めてきた。
【0003】
現在、広く使用されている人間行動識別技術は、画像取得及び画像処理に基づいて実施されている。すなわち、歩行者の画像が画像捕捉デバイスによって捕捉され、ターゲット識別が、各歩行者のターゲット画像を得るために捕捉画像に対して行われ、そして、歩行者に対応する特徴データを取得するよう、特徴抽出が特徴抽出アルゴリズムに基づいて各ターゲット画像に対して行われる。最後に、各歩行者に対応する取得された特徴データは、事前に訓練された挙動識別モデルに入力され、挙動識別モデルの出力は、走る又は歩くといった歩行者の行動情報である。
【0004】
本願の実施中、本発明者は、関連技術に少なくとも次の課題があると気付いた。
【0005】
画像取得及び画像処理に基づく上記の人間行動識別技術は、光線、画像捕捉デバイスのライン・オブ・サイト、などによる影響を受けやすく、識別精度が低くなる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
関連技術での挙動識別の低い程度の問題を解消すべく、本願の実施形態は、ターゲットの挙動を識別する方法及び装置、並びにレーダーシステムを提供する。技術的解決法は、次の通りである。
【0007】
第1の態様に従って、ターゲットの挙動を識別する方法が提供され、方法は、
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信することと、
時間周波数領域データを取得するようレーダーエコー信号を処理することと、
信号属性特徴データ及び線形予測係数(Linear Prediction Coefficient,LPC)特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理することであり、信号属性特徴データは、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、LPC特徴データは、レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される、ことと、
信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、ターゲットの挙動情報を出力することと
を含む。
【0008】
本願のこの実施形態における解決法に従って、レーダーシステムの送信アンテナは、パルス繰り返し周期に基づいてレーダー信号を連続的に送信し、すなわち、レーダーシステムの送信アンテナは、各パルス繰り返し周期において、異なる周波数で、変調されたレーダー信号を連続的に送信し、ここで、パルス繰り返し周期は、周波数掃引周期とも呼ばれる。レーダー信号がターゲットによって反射された後、受信アンテナはレーダー信号を受信し、このとき、受信されるレーダー信号はレーダーエコー信号である。レーダーエコー信号を処理するとき、レーダーシステムは、所定の挙動識別周期で受信される全てのレーダーエコー信号を処理してよい。1つの挙動識別周期は、所定数のパルス繰り返し周期を含む。
【0009】
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信した後、レーダーシステムは、受信されたレーダーエコー信号を、レーダーエコー信号が受信されるときに送信されたレーダー信号と混合して、ビート信号を取得する。次いで、ビート信号のアナログ信号に対してN点サンプリングが実行され、N点サンプリングされたアナログ信号は、A/Dコンバータを使用することによってデジタル信号に変換される。各パルス繰り返し周期について、M点高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation,FFT)が、A/D変換後のビート信号に対して実行されてよく、すなわち、M個の点の周波数領域データが取得され得る。各点について取得された周波数領域データは、複素数の形で表現され得る。M個の点の取得された周波数領域データについて、周波数領域データに対応するスペクトル領域での信号の振幅が所定の値よりも大きい場合には、その点の周波数領域データは、ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号から取得される、と見なされる。その場合に、その点の周波数領域データは、ターゲットの周波数領域データとして使用されてよい。1つの挙動識別点での周波数領域データは、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データを取得するよう累積され、このとき、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データは1次元ベクトルである。次いで、短時間フーリエ変換が、1つの挙動識別周期におけるターゲットの時間周波数領域データを取得するために、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データに対して実行されてよく、1つの挙動識別周期におけるターゲットの時間周波数領域データは2次元行列である。
【0010】
次いで、ターゲットの信号属性特徴データ及びLPC特徴データが、1つの挙動識別周期におけるターゲットの時間周波数領域データに基づいて計算され、信号属性特徴データは、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、LPC特徴データは、レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される。
【0011】
最後に、ターゲットの取得された信号属性特徴データ及びLPC特徴データは、ターゲットの挙動情報を取得するよう挙動識別モデルに入力される。挙動情報は、走る、歩く、ジャンプする、などであってよい。挙動識別モデルは、大量の訓練サンプルに基づく訓練を通じて取得された機械学習モデルであることができる。
【0012】
本願のこの実施形態で、レーダーは、ターゲットを検出するために使用される。レーダーによって送信される電磁波は、光及び天候などの要因によってほとんど影響を及ぼされないので、レーダーはより正確にターゲットを検出し、それにより、レーダーエコー信号に基づく解析を通じて取得されるターゲットの特徴データはより正確である。その場合に、ターゲットの最終的に決定された挙動情報はより正確である。
【0013】
可能な実施において、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理することは、
信号属性特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理することと、
LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データをLPC関数に入力することと
を含む。
【0014】
本願のこの実施形態で示される解決法に従って、レーダーシステムは、信号属性特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理することができる。次いで、LPC特徴データは、LPC関数を用いて取得され得る。LPC関数は、次の通りであってよい:
【数1】
ここで、aは、LPCであり、u(n)は、入力シーケンス、すなわち、時間周波数領域データの振幅値であり、x(n)は、LPC関数の出力シーケンスであり、x(n-r)は、現在の挙動識別周期の前のP個の挙動識別周期で取得されるLPC関数の出力シーケンスであり、r=1,2,3・・・Pであり、
[外1]
は、出力シーケンスの線形予測値
[外2]
である。このLPC関数内の未知の係数はaである。最小平均二乗誤差基準がaを計算するために使用されてよい。求められたaはLPC特徴データである。
【0015】
可能な実施において、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理することの前に、方法は、時間周波数領域データに対して次元削減を実行することを更に含む。
【0016】
本願のこの実施形態で示される解決法に従って、次元削減は、ターゲットの時間周波数領域データに対して実行されてよく、その場合に、特徴データは、次元削減された時間周波数領域データに基づいて計算され得る。このようにして、時間周波数領域データの量は削減可能であり、特徴データの計算は加速可能であり、ターゲットの挙動を識別する効率は改善され得る。
【0017】
可能な実施において、時間周波数領域データに対して次元削減を実行することは、
主成分分析PCAアルゴリズムに基づいて各ターゲットの時間周波数領域データに対して次元削減を実行することを含む。
【0018】
本願のこの実施形態で示される解決法では、次元削減は、主成分分析(Principal Component Analysis,PCA)アルゴリズムに基づいて時間周波数領域データに対して実行される
【0019】
可能な実施において、信号属性特徴データは、最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度、のうちの1つ以上を含む。
【0020】
本願のこの実施形態で示される解決法では、最大周波数値は、時間周波数領域データに対応する時間周波数スペクトログラムにおける最大ドップラー周波数値である。振幅の平均値は、時間周波数領域データに対応する全ての振幅値の平均値である。振幅値の標準偏差は、時間周波数領域データに対応する全ての振幅値の標準偏差である。振幅値の平均絶対誤差は、時間周波数領域データに対応する全ての振幅値の平均絶対誤差である。振幅値四分位数は、時間周波数領域データに対応する振幅値が小から大の順序で並べられて4つの等しい部分に分けられることを意味し、3つの区切り点での振幅値は夫々、25%四分位数、50%四分位数、及び75%四分位数と呼ばれる。振幅値四分位範囲は、75%四分位数と25%四分位数との間の差を指す。振幅値歪度は、振幅値分布のひずみの方向及び程度の指標であり、振幅値分布の非対称性の程度のデジタル特徴である。振幅値尖度は、振幅値に対応する確率密度分布曲線の平均値の位置でのピーク値を反映するデジタル特徴である。スペクトルエントロピーは、時間周波数領域データに対応するパワースペクトルとエントロピーレートとの間の関係を表す。
【0021】
可能な実施において、挙動識別モデルは、サポートベクトルマシンSVM分類器モデルである。
【0022】
本願のこの実施形態で示される解決法では、挙動識別モデルは、サポートベクトルマシン(Support Vector Machine,SVM)分類モデルであってよい。挙動情報の分類中、サポートベクトルマシン分類モデルは、挙動情報をただ2つのタイプに分類するために使用され得る。ターゲットの複数のタイプの挙動情報の組み合わせを最終的に得るために、複数のサポートベクトルマシン分類モデルが使用のために組み合わされ得る。すなわち、複数のタイプの挙動情報の組み合わせを得るように、第1サポートベクトルマシンは、ターゲットの挙動情報を最初に2つのタイプに分類することができ、第2サポートベクトルマシンは、各タイプに対応するサブタイプを得るよう2つのタイプの挙動情報を分類することができ、以降続く。ターゲットの複数のタイプの挙動情報の組み合わせは、複数のサポートベクトルマシン分類モデルを組み合わせることによって取得可能であり、すなわち、ターゲットの取得される挙動情報はより包括的であることが分かる。
【0023】
第2の態様に従って、ターゲットの挙動を識別する装置が提供され、装置は、
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信するよう構成される受信モジュールと、
時間周波数領域データを取得するようレーダーエコー信号を処理し、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理するよう構成される処理モジュールであり、信号属性特徴データは、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、LPC特徴データは、前記レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される、処理モジュールと、
信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、ターゲットの挙動情報を出力するよう構成される識別モジュールと
を含む。
【0024】
可能な実施において、処理モジュールは、
信号属性特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理し、
LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データをLPC関数に入力する
よう構成される。
【0025】
可能な実施において、処理モジュールは、
時間周波数領域データに対して次元削減を実行するよう更に構成される。
【0026】
可能な実施において、処理モジュールは、
主成分分析PCAアルゴリズムに基づいて各ターゲットの時間周波数領域データに対して次元削減を実行するよう構成される。
【0027】
可能な実施において、信号属性特徴データは、最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度、のうちの1つ以上を含む。
【0028】
可能な実施において、挙動識別モデルは、サポートベクトルマシンSVM分類器モデルである。
【0029】
第3の態様に従って、レーダーシステムが提供され、レーダーシステムは、信号送信装置、信号受信装置、及び信号処理装置を含む。信号送信装置は、レーダー信号を送信するよう構成される。信号受信装置は、レーダー信号がターゲットに接触するときにターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信するよう構成される。信号処理装置は、時間周波数領域データを取得するよう、信号受信装置によって受信されたレーダーエコー信号を処理し、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用される信号属性特徴データと、レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される線形予測係数LPC特徴データとを取得するよう時間周波数領域データを処理し、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、ターゲットの挙動情報を出力するよう構成される。
【0030】
第4の態様に従って、コンピュータ可読記憶媒体が提供され、コンピュータ可読記憶媒体は命令を含み、コンピュータ可読記憶媒体がコンピュータで実行される場合に、コンピュータは、第1の態様に従う、ターゲットの挙動を識別する方法を実行することを可能にされる。
【0031】
本願の実施形態で提供される技術的解決法は、次の有利な効果もたらす。
【0032】
ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号が受信され、レーダーエコー信号は、ターゲットの信号属性特徴データ及びLPC特徴データを取得するよう処理され、次いで、ターゲットの信号属性特徴データ及びLPC特徴データは、ターゲットの挙動情報を取得するよう挙動識別モデルに入力される。レーダーによって送信されるレーダー信号は光、天候などによってほとんど影響を及ぼされないので、レーダーエコー信号に基づいて取得されるターゲットの複数のタイプの特徴データはより正確であり、更には、最終的に得られる挙動情報はより正確である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本願の実施形態に従うFMCWレーダーシステムの略アーキテクチャ図である。
図2】本願の実施形態に従う、ターゲットの挙動を識別する方法のフローチャートである。
図3】本願の実施形態に従うレーダーシステムによって送信されるレーダー信号の周波数変化パターンの概略図である。
図4】本願の実施形態に従う、レーダーシステムによって送信されるレーダー信号、レーダーシステムによって受信されるレーダーエコー信号、及び混合を通じて取得されるビート信号の概略図である。
図5】本願の実施形態に従うサポートベクトルマシン分類モデルの略構造図である。
図6】本願の実施形態に従う、ターゲットの挙動を識別する装置の略構造図でわる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本願の実施形態は、ターゲットの挙動を識別する方法を提供する。方法は、レーダーシステムによって実施可能であり、自動運転、インテリジェント・ヒューマン-コンピュータ・インタラクション、及びインテリジェント交通早期警戒のようなシナリオで適用される。例として自動運転を用いると、レーダーシステムは、車載レーダーシステムであってよく、レーダーシステムは、危険があるかどうかと、緊急ブレーキ及び減速プロセスが実行されるべきどうかとを決定するよう、車両の前で歩行者の行動を識別することができる。例えば、歩行者が車両の前でガードレールを横断し、車両に近づく場合に、車両は、衝突を回避するよう直ちに緊急ブレーキプロセスを実行し得る。
【0035】
上記のレーダーシステムは、周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave,FMCW)レーダーシステムであってよく、本願のこの実施形態におけるFMCWレーダーシステムによって送信されるレーダー信号は、のこぎり波、三角波、台形波、などであってよい。レーダーシステムは、レーダー信号を外側へ送信する。ターゲットに接触した後、レーダー信号はターゲットによって反射され、レーダーシステムによって受信される。一般に、ターゲットによって反射されたレーダー信号は、レーダーエコー信号と呼ばれ得る。レーダーエコー信号を受信した後、レーダーシステムは、レーダーエコー信号の特徴データを抽出するようレーダーエコー信号を解析し、次いで、特徴データに基づいて、走る、歩く、又は横断するといった、ターゲットの現在の挙動情報を決定し得る。図1は、FMCWレーダーシステムの略アーキテクチャ図である。
【0036】
FMCWレーダーシステムは、信号送信装置、信号受信装置、及び信号処理装置を含んでよい。信号送信装置は、送信アンテナ110及び波形生成ユニット160を含んでよい。信号受信装置は、受信アンテナ120を含んでよい。信号処理装置は、ミキサ130、ローパスフィルタ140、アナログ-デジタル信号(Analog-to-Digital,A/D)コンバータ150、及び信号処理ユニット170を含んでよい。送信アンテナ110は、レーダー信号を送信するよう構成される。受信アンテナ120は、レーダーエコー信号を受信するよう構成される。ミキサ130は、ビート信号を取得するように、受信されたレーダーエコー信号と送信されたレーダー信号とを混合するよう構成され、ここで、ビート信号は、差動周波数信号又は中間周波数信号とも呼ばれ得る。ローパスフィルタ140は、混合されたビート信号から不要な高周波信号を除去するよう構成される。A/Dコンバータ150は、電磁波のアナログ信号をその後の処理のためにデジタル信号に変換するよう構成される。FMCW波形生成ユニット160は、送信されるべきレーダー信号を生成するよう構成され、FMCW波形生成ユニット160は、FMCW波形生成器及び発振器を含んでよい。信号処理ユニット170は、プロセッサ及びメモリを含んでよく、プロセッサは、ターゲットの特徴データを取得するようビート信号に対して特徴抽出を実行し、特徴データに基づいてターゲットの挙動情報を取得するよう構成され、メモリは、その後の表示のためにビート信号の処理中に生成された中間データ、結果データ、などを記憶するよう構成される。
【0037】
本願の実施形態は、ターゲットの挙動を識別する方法を提供する。図2に示されるように、方法の処理プロシージャは次のステップを含んでよい。
【0038】
ステップ201:ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信する。
【0039】
実施中に、レーダーシステムは、パルス繰り返し周期に基づいてレーダー信号を送信してよく、すなわち、レーダーシステムの送信アンテナは、各パルス繰り返し周期において、異なる周波数で、変調されたレーダー信号を連続的に送信し、ここで、パルス繰り返し周期は、周波数掃引周期とも呼ばれ得る。送信されたレーダー信号の周波数変化パターンも、要件に従って変化し得る。図3は、レーダーシステムによって送信されるレーダー信号の周波数変化パターンの例を表す。ターゲットに接触した後、レーダー信号はターゲットによって反射され、レーダーシステムの受信アンテナによって受信される。ターゲットによって反射されて受信アンテナによって受信されるレーダー信号は、レーダーエコー信号と呼ばれ得る。
【0040】
ステップ202:時間周波数領域データを取得するようレーダーエコー信号を処理する。
【0041】
実施中に、レーダーシステムは、レーダーエコー信号に対応するビート信号を取得するよう、レーダーエコー信号が受信されるときに、受信されたレーダーエコー信号と、送信されるべきレーダー信号とを混合し得る。図4は、レーダーシステムによって送信されるレーダー信号、レーダーシステムによって受信されるエコー信号、及びパルス繰り返し周期において混合を通じて取得されるビート信号の概略図である。レーダーシステムが混合を通じて各パルス繰り返し周期に対応するビート信号を取得した後、N点サンプリングされたデジタル信号を取得するようビート信号に対してA/D変換が実行される。次いで、A個のパルス繰り返し周期に対応するビート信号が、フレームのビート信号として使用されてよい。
【0042】
単一のターゲットの挙動が識別される必要があるシナリオでは、各パルス繰り返し周期について、M点高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation,FFT)が、A/D変換後のビート信号に対して実行されてよく、すなわち、M個の点の周波数領域データが取得されてよく、各点で取得された周波数領域データは、複素数、例えば、ai+bの形で表現され得る。M個の点の取得された周波数領域データについて、周波数領域データに対応するスペクトル領域での信号の振幅が所定の値よりも大きい場合には、その点の周波数領域データは、ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号から取得される、と見なされる。その場合に、その点の周波数領域データは、ターゲットの周波数領域データとして使用されてよい。
【0043】
加えて、A個のパルス繰り返し周期に対応するビート信号は、フレームのビート信号として使用されてよく、B個のフレームのビート信号は、挙動識別周期のビート信号として使用されてよい。その場合に、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データについて、その挙動識別周期における各パルス繰り返し周期から取得されたターゲットの周波数領域データは、その挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データSを取得するよう累積され得る。ここで、Sは、1×ABの1次元ベクトルであり、ベクトルの各要素は、ある点の周波数領域データの複素数を表す。
【0044】
次いで、時間周波数領域解析が、対応する時間周波数領域データを取得するよう、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データSに対して実行されてよい。時間周波数領域解析は、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データに対して短時間フーリエ変換(Short Time Fourier Transform,STFT)を実行することであってよく、すなわち、所定の窓関数と周波数領域データとが乗算され、それから、W点FFTが周波数領域データに対して実行され、それにより、1つの挙動識別周期におけるターゲットの周波数領域データに対応する時間周波数領域データQは取得され得る。W点FFTは、C回、ABのサイズで、周波数領域データに対して実行され得るので、Qは、W×Cの2次元行列であり、行列内の各要素は、ある点の時間周波数領域データの複素数を表す。Cの値は、スライディング窓の長さによって決定され、C≦AB/Wである。
【0045】
複数のターゲットの挙動が識別される必要があるシナリオでは、各パルス繰り返し周期について、M点FFTが、M点周波数領域データを取得するよう、A/D変換後のビート信号に対して実行され、M点周波数領域データに対応するスペクトルダイアグラムにおける複数の信号振幅は所定の値よりも大きくなり、それにより、M点周波数領域データは、異なるターゲットによって反射されたレーダーエコー信号から取得される、と見なされる。次いで、パルス繰り返し周期について、ターゲットは異なるパルス繰り返し周期で現れることがあり、従って、ターゲット照合アルゴリズムが、同じターゲットの周波数領域データを決定するために、2つの異なったパルス繰り返し周期における周波数領域データに対して使用されてよい。一般的なターゲット照合アルゴリズムの例は、カルマンフィルタリング法である。1つの挙動識別周期における同じターゲットの周波数領域データを決定した後、単一のターゲットの挙動が識別される必要があるシナリオでターゲットの周波数領域データに対して実行された時間周波数領域解析が、各ターゲットの周波数領域データに対して実行されてよい。
【0046】
S203:信号属性特徴データ及びLPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理する。
【0047】
信号属性特徴データは、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、LPC特徴データは、レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される。
【0048】
実施中に、対応する信号属性特徴データ及びLPC特徴データは、各ターゲットの時間周波数領域データについて決定され得る。信号属性特徴データ及びLPC特徴データの決定は、以下で記載される。
【0049】
周波数特徴データの決定のために、周波数特徴データは、周波数領域データにおける最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度のうちの1つ以上を含んでよい。周波数特徴データが計算される前に、時間周波数領域データQは、1次元の行ベクトルRに変換されてよく、次いで、変換された時間周波数領域データの振幅値が取得され、すなわち、モジュロ演算が、取得されるRi内の各要素に対して実行され、モジュロ演算式は次の通りであってよい:

||R||=abs(R

例えば、時間周波数領域データに対応する2次元行列内の要素が複素数ai+bである場合に、要素のモジュロは√(a+b)である。
【0050】
周波数特徴データの各片を計算する方法は、以下で記載される。
【0051】
(1)最大周波数値、すなわち、時間周波数領域データに対応する時間周波数スペクトログラム内の最大ドップラー周波数値について、計算式は、次の通りであってよい:

FTi,1=fi,max=max(fd,n

ここで、FTi,1は、時間周波数領域データに対応する信号特徴データの第1片を表し、fd,nは、時間周波数領域データのi番目の片においてセットされたドップラー周波数を表す。
【0052】
最大周波数値以外の信号属性特徴データの他の片は、モジュロ演算が実行された後に取得される時間周波数領域データ||R||に基づいて計算されてよく、計算方法は、以下で記載される。
【0053】
(2)振幅の平均値について、計算式は、次の通りであってよい:
【数2】
ここで、FTi,2は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第2片を表し、||Ri,j||は、R内のi番目の要素の絶対値である。
【0054】
(3)振幅値の標準偏差について、計算式は、次の通りであってよい:
【数3】
ここで、FTi,3は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第3片を表す。
【0055】
(4)振幅値の平均絶対誤差について、計算式は、次の通りであってよい:
【数4】
ここで、FTi,4は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第4片を表す。
【0056】
(5)振幅値四分位数は、振幅値が小から大の順序で並べられて4つの等しい部分に分けられることを意味し、3つの区切り点での振幅値が振幅値四分位数である。||R||は、sort(||R||)に基づいて小から大の順序で並べられ、||R||を4つの等しい部分に分けるために使用される位置は、a、b、及びcとして表され、これらは夫々、25%四分位数、50%四分位数、及び75%四分位数と呼ばれ得る。25%四分位数を計算する式は、次の通りであってよい:

FTi,5=Qua=sort(||R||)

ここで、FTi,5は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第5片を表す。
【0057】
(6)振幅値四分位範囲は、75%四分位数cと25%四分位数aとの間の差を示し、計算式は、次の通りであってよい:

FTi,6=IQR=sort(||R||)-Qua

ここで、FTi,6は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第6片を表す。
【0058】
(7)振幅値歪度は、振幅値分布のひずみの方向及び程度の指標であり、振幅値分布の非対称性の程度のデジタル特徴であり、計算式は、次の通りであってよい:
【数5】
ここで、FTi,7は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第7片を表す。
【0059】
(8)振幅値尖度は、振幅値に対応する確率密度分布曲線の平均値の位置でのピーク値を反映するデジタル特徴であり、計算式は、次の通りであってよい:
【数6】
ここで、FTi,8は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第8片を表す。
【0060】
(9)スペクトルエントロピーは、時間周波数領域データに対応するパワースペクトルとエントロピーレートとの間の関係を表し、計算式は、次の通りであってよい:
【数7】
ここで、||R||(ω)=FFT(||R||)であり、FTi,9は、時間周波数領域データに対応する信号属性特徴データの第9片を表す。
【0061】
時間周波数領域データに対応するLPC特徴データは、LPC関数に基づいて取得され得る。LPC関数は、次の通りであってよい:
【数8】
ここで、aは、LPCであり、u(n)は、入力シーケンスであり、すなわち、時間周波数領域データに対応する||R||であり、x(n)は、LPC関数の出力シーケンスであり、x(n-r)は、現在の挙動識別周期の前のP個の挙動識別周期で取得されるLPC関数の出力シーケンスであり、r=1,2,及び3・・・Pであり、
[外3]
は、出力シーケンスの線形予測値
[外4]
である。このLPC関数内の未知の係数はaである。最小平均二乗誤差基準がaを計算するために使用されてよい。すなわち、出力シーケンスと線形予測値との間の差は、線形予測誤差として定義され、計算式は、次の通りであってよい:
【数9】
【0062】
第2予測誤差Eが、計算により更に取得され得、計算式は、次の通りであってよい:
【数10】
【0063】
上記の式の夫々で、Pの値は、実際の要件に基づいて決定され得る。最終の挙動識別がより正確であることを確かにするよう、Pの比較的に大きい値が使用され得、例えば、P=6である。次いで、第2誤差Eを計算するために使用される式のために、Eを最小にするa乃至aが計算され得、すなわち、6個のLPCは、時間領域データに対応するLPC特徴データであり、6つのLPCは、FTi,10乃至FFTi,15として表され得る。
【0064】
従って、あるターゲットについて、そのターゲットの信号の特徴データは、FT=[FTi,1,FTi,2,・・・,FTi,15]と表され得る。
【0065】
可能な実施において、特徴抽出中にデータの量を減らすよう、相応して、時間周波数領域データが処理される前に、次元削減が時間周波数領域データに対して実行されてよい。
【0066】
実施中に、ステップ202での処理に基づいて、ターゲットの時間周波数領域データQは、W×Cの2次元行列であることが分かり、次いで、次元削減は、データの量を減らすようQの各片に対して実行されてよい。次元削減処理は、主成分分析Principal Component AnalysisPCA)次元削減アルゴリズム、特異値分解アルゴリズム、多様体学習アルゴリズム、などに基づいて実行されてよい。PCAアルゴリズムに基づく次元削減は、以下で記載される。
【0067】
ターゲットの時間周波数領域データQについて、q(l)は、l番目の行の1次元ベクトルであり、ここで、l=1,2・・・Wであり、q(l)の値は1×Cであり、共分散行列は、次の計算式に基づいて計算されてよい:
【数11】
ここで、共分散行列Σは、C×Cの平方行列である。次いで、共分散行列の固有値及び固有ベクトルが計算され、最も大きいK個の固有値に対応する固有ベクトルが選択され、ここで、Kは、次元削減された時間周波数領域データの1つの次元であり、Wは、次元削減された時間周波数領域データの他の次元であり、K<<Cである。その場合に、次元削減された時間周波数領域データの量は、次元削減前の時間周波数領域データのそれよりもずっと少ない。マッピング行列Mは、K個の固有値に対応する固有ベクトルに基づいて構成され、W×Cの初期サイズを有する時間周波数領域データの行列は、マッピング行列Mに基づいてW×Kのサイズを有する行列に変換される。変換式は、T=Qであってよい。
【0068】
ステップ203でターゲットの時間周波数領域データに対して実行される処理は、ターゲットの次元削減された時間周波数領域データTに対して実行されてもよい、ことが留意されるべきである。
【0069】
ステップ204:信号属性特徴データ及びLPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、ターゲットの挙動情報を出力する。
【0070】
挙動識別モデルは、(Support Vector Machine,SVM)分類モデルであってよく、あるいは、ニューラルネットワークモデルであってよい。記載を簡単にするために、ターゲットの信号属性特徴データ及びLPC特徴データは、まとめて、ターゲットの特徴データと呼ばれる。
【0071】
実施中に、上記の処理により取得されるターゲットの特徴データは、ターゲットの挙動情報、例えば、歩くこと、走ること、離れること、近づくこと、道路を横断すること、又は道路を対角に横断すること、を取得するよう、予め訓練された挙動識別モデルに入力されてよい。上記の説明は、挙動識別モデルがサポートベクトルマシン分類モデルである例に基づく。
【0072】
挙動情報の分類中、サポートベクトルマシン分類モデルは、挙動情報をただ2つのタイプに分類するために使用され得る。ターゲットの複数のタイプの挙動情報の組み合わせを最終的に得るために、複数のサポートベクトルマシン分類モデルが使用のために組み合わされ得る。すなわち、複数のタイプの挙動情報の組み合わせを得るように、第1サポートベクトルマシンは、ターゲットの挙動情報を最初に2つのタイプに分類することができ、第2サポートベクトルマシンは、各タイプに対応するサブタイプを得るよう2つのタイプの挙動情報を分類することができ、以降続く。図5は、複数のサポートベクトルマシン分類モデルの組み合わせの概略図である。図5で、挙動情報は、最初に、道路を横断すること及び道路を対角に横断することに分けられ、次いで、道路を対角に横断することは、走ること及び歩くことに分けられ、次いで、走ること及び歩くことは、近づくこと及び離れることに同様に分けられ、ここで、近づくこと及び離れることは両方とも、ターゲットとレーダーシステムとの間の位置関係を指す。図5に示される複数のサポートベクトルマシン分類モデルの組み合わせが、ターゲットの挙動を識別するために使用される場合に、上記のステップで取得されるターゲットの特徴データはSVM1へ入力され、取得された挙動情報が道路を対角に横断することである場合には、特徴データはSVM2へ入力され、取得された挙動情報は歩くこと又は走ることである。次いで、SVM2に基づいて取得された挙動情報が走ることである場合には、特徴データはSVM3へ入力され、取得された挙動情報は近づくこと又離れることであり、あるいは、SVM2に基づいて取得された挙動情報が歩くことである場合には、特徴データはSVM4へ入力され、取得された挙動情報は近づくこと又は離れることである。確かに、SVM2が設けられた後に、SVM3及びSVM4は設けられなくてもよく、SVM5しか設けられなくてよく、すなわち、上記の特徴情報は、SVM2に基づいて取得された挙動情報が走ること又は歩くことであるかどうかにかかわらず、SVM5へ入力されてよく、取得された挙動情報は近づくこと又離れることである。より都合のよい表現のために、挙動情報の各組み合わせに番号が割り当てられてよく、それにより、複数のサポートベクトルマシン分類モデルの組み合わせによって取得されるターゲットの挙動情報の組み合わせは、番号によって表される。表1は、挙動情報の組み合わせと番号との間の対応を示す。
【表1】
【0073】
ここで、挙動識別モデルに基づいて取得される挙動情報のほんの数例しか先に挙げられていない点が留意されるべきであり、挙動識別モデルは異なるサンプルを使用することによって訓練可能であるから、異なる挙動情報が挙動識別モデルに基づいて識別され得る。その上、ステップ201及びステップ203における処理プロシージャは、実際の用途ではターゲットの挙動を識別する過程でターゲットの特徴データを取得する方法として使用されてもよく、あるいは、訓練サンプル内のあるサンプルの特徴データを取得する方法として使用されてもよいことが留意されるべきである。ステップ201及びステップ203における処理プロシージャが訓練サンプル内のサンプルの特徴データを取得する方法として使用される場合に、挙動識別周期におけるターゲットの特徴データが取得された後、X個の挙動識別周期におけるX片の特徴データが、連続して取得され、サンプル特徴データセットとして、挙動識別モデルを訓練するために使用され得る。訓練された挙動識別モデルの正確さを改善するために、Xは、比較的に大きい値、例えば、数万、数十万、又は更により大きい値であることができる。
【0074】
同じ技術概念に基づいて、本願の実施形態は、挙動識別装置を更に提供する。図6に示されるように、装置は、受信モジュール610、処理モジュール620、及び識別モジュール630を含む。
【0075】
受信モジュール610は、ターゲットによって反射されたレーダーエコー信号を受信するよう構成される。具体的に、受信モジュール610は、ステップ201でレーダーエコー信号を受信する機能、及び他の潜在的なステップを実施することができる。
【0076】
処理モジュール620は、時間周波数領域データを取得するレーダーエコー信号を処理し、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理するよう構成され、信号属性特徴データは、レーダーエコー信号の属性の特徴を表すために使用され、LPC特徴データは、レーダーエコー信号の特徴を表すために使用される。具体的に、処理モジュール620は、ステップ202でレーダーエコー信号を処理する機能、ステップ203で時間周波数領域データを処理する機能、及び他の潜在的なステップを実施することができる。
【0077】
識別モジュール630は、信号属性特徴データ及び線形予測係数LPC特徴データを挙動識別モデルに入力し、ターゲットの挙動情報を出力するよう構成される。具体的に、識別モジュール630は、ステップ204でターゲットの挙動情報を決定する機能、及び他の潜在的なステップを実施することができる。
【0078】
可能な実施において、処理モジュール620は、
信号属性特徴データを取得するよう時間周波数領域データを処理し、
LPC特徴データを取得する時間周波数領域データをLPC関数に入力する
よう構成される。
【0079】
可能な実施において、処理モジュール620は、
時間周波数領域データに対して次元削減を実行する
よう更に構成される。
【0080】
可能な実施において、処理モジュール620は、
主成分分析PCAアルゴリズムに基づいて各ターゲットの時間周波数領域データに対して次元削減を実行する
よう構成される。
【0081】
可能な実施において、信号属性特徴データは、最大周波数値、振幅の平均値、振幅値の標準偏差、振幅値の平均絶対誤差、振幅値四分位数、振幅値四分位範囲、スペクトルエントロピー、振幅値歪度、及び振幅値尖度、のうちの1つ以上を含む。
【0082】
可能な実施において、挙動識別モデルは、サポートベクトルマシンSVM分類器モデルである。
【0083】
上記の実施形態で提供される、ターゲットの挙動を識別する装置が、ターゲットの挙動を識別しているとき、上記の機能モジュールの分割は、単に説明のための例として理解されることが知られ得る。実際の適用では、上記の機能は、異なる機能モジュールに割り当てられ、要件に従って実施され得、すなわち、レーダーシステムの内部構造は、上記の機能の全て又は一部を実施するよう、異なる機能モジュールに分けられる。その上、上記の実施形態で提供される、ターゲットの挙動を識別する装置と、ターゲットの挙動を識別する方法の実施形態とは、同じ概念に属する。装置の詳細な実施プロセスについては、方法の実施形態を参照されたく、詳細はここで再び記載されない。
【0084】
上記の実施形態の全て又は一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実施されてよい。ソフトウェアが実施形態を実施するために使用される場合に、実施形態は、完全に又は部分的にコンピュータプログラム製品の形で実施されてよい。コンピュータプログラム製品は、1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がコンピュータでロード及び実行される場合に、本願の上記の実施形態に従うプロシージャ又は機能は、全て又は部分的に生成される。コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてよい。コンピュータ可読記憶媒体は、デバイスによってアクセス可能な任意の使用可能な媒体、又は1つ以上の使用可能な媒体を組み込むデータ記憶デバイスであってよい。使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ、など)、光学媒体(例えば、デジタル・ビデオ・ディスク(Digital Video Disk,DVD)など)、半導体媒体(例えば、ソリッド・ステート・ドライブ、など)であってよい。
【0085】
当業者であれば、実施形態のステップの全て又は一部が、ハードウェア又は関連するハードウェアに命令するプログラムによって実施されてよい、と理解し得る。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてよい。記憶媒体は、リード・オンリー・メモリ、磁気ディスク、又は光ディスクを含んでよい。
【0086】
上記の説明は、本願の具体的な実施形態にすぎず、本願を制限する意図はない。本願の精神及び原理から外れずに行われる如何なる変更、等価な置換、又は改良も、本願の保護範囲内に入るべきである。
【0087】
本願は、2019年8月30日付けで「METHOD AND APPRATUS FOR IDENTIFYING BEHAVIOR OF TARGET, AND RADAR SYSTEM」と題されて中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第201910817089.3号の優先権を主張する。なお、先の中国出願は、その全文を参照により本願に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6