(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】超伝導非破壊読み出し回路
(51)【国際特許分類】
H03K 19/195 20060101AFI20220726BHJP
G11C 11/44 20060101ALI20220726BHJP
H01L 39/22 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H03K19/195
G11C11/44
H01L39/22 K
(21)【出願番号】P 2020570156
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019040372
(87)【国際公開番号】W WO2020027972
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-14
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハー,アンナ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハー,クエンティン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ライアン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,アレクサンダー ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ザ サード,ハロルド クリフトン
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,ランドール エム.
(72)【発明者】
【氏名】リー,ティモシー チ‐チャオ
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/195
G11C 11/44
H01L 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロカル量子論理(RQL)非破壊読み出し(NDRO)ゲートであって、
少なくとも1つの単一磁束量子(SFQ)論理入力を有するボディ回路であって、少なくとも1つの論理状態を記憶するように構成されている、ボディ回路と、
前記ボディ回路に接続された少なくとも1つのテール回路であって、
NDROリードイネーブル入力ポートと前記ボディ回路との間に接続され、前記NDROリードイネーブル入力ポートでSFQパルスNDROリードイネーブル信号を受信するように構成された、テール入力インダクタ、
前記ボディ回路と回路グランドとの間に接続されたテールジョセフソン接合、ならびに
前記ボディ回路とNDRO出力ポートとの間に接続され、前記記憶された論理状態に影響を与えることなく、前記記憶された論理状態および前記NDROリードイネーブル信号に基づいてSFQパルスNDRO出力信号を送信するように構成された、テール出力インダクタ、を備える、少なくとも1つのテール回路と、を備える、RQL NDROゲート。
【請求項2】
前記NDROリードイネーブル信号の受信時にトリガされ、それにより、前記NDRO出力信号を前記NDRO出力ポートに伝搬させるように前記テールジョセフソン接合にバイアスをかける臨界前状態バイアス電流として、前記ボディ回路から前記論理状態を受信するように、前記少なくとも1つのテール回路が構成されている、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項3】
前記少なくとも1つのテール回路が、前記テール出力インダクタに接続されたいずれの出力ジョセフソン伝送線路(JTL)も除いて、1つ以下のジョセフソン接合および2つ以下のインダクタを備える、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項4】
厳密に2つのNDROリードイネーブル入力ポートおよび厳密に2つのNDRO出力ポートを提供する厳密に2つのテール回路を備え、前記テール回路が、同じ記憶された論理状態だが、それぞれの前記NDROリードイネーブル入力ポートから提供された異なるそれぞれのNDROリードイネーブル信号に基づき、SFQパルスNDRO出力信号をそれぞれ送信するように構成されている、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項5】
請求項4に記載の前記NDROゲートの複数のインスタンスのアレイを含むレジスタファイル。
【請求項6】
前記ボディ回路が、それぞれがSFQパルスを受信するように構成された、データ入力ポートおよび論理クロック入力ポートを有するDラッチを備える、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項7】
前記Dラッチが、
前記データ入力ポートと第1のノードとの間に接続されたデータ入力インダクタと、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続されたデータ入力ジョセフソン接合と、
第2のノードと前記回路グランドと間に接続された状態記憶ジョセフソン接合と、
第3のノードと前記第1のノードとの間に、またDC磁束バイアス線に接続された第1のDC磁束バイアス変圧器と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に、また前記DC磁束バイアス線に接続された第2のDC磁束バイアス変圧器と、
前記論理クロック入力ポートと第4のノードとの間に接続された論理クロック入力インダクタと、
前記第4のノードと前記第2のノードとの間に接続されたエスケープジョセフソン接合と、
前記第3のノードと前記少なくとも1つのテール回路との間に接続された少なくとも1つの連結インダクタと、を備え、
前記第1および第2のDC磁束バイアス変圧器が、前記データ入力ジョセフソン接合と前記状態記憶ジョセフソン接合に、初期化時に
、Φ0分率のオフセットを提供するように構成されている、請求項6に記載のNDROゲート。
【請求項8】
前記Dラッチが、前記第3のノードと少なくとも2つのテール回路それぞれとの間に接続された少なくとも2つの連結インダクタを含む、請求項7に記載のNDROゲート。
【請求項9】
前記Dラッチが、
前記データ入力ポートと第1のノードとの間に接続されたデータ入力インダクタと、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続されたデータ入力ジョセフソン接合と、
第2のノードと前記回路グランドと間に接続された状態記憶ジョセフソン接合と、
前記第2のノードと前記第1のノードとの間に、またDC磁束バイアス線に接続された単一のDC磁束バイアス変圧器のみと、
前記論理クロック入力ポートと第4のノードとの間に接続された論理クロック入力インダクタと、
前記第4のノードと前記第2のノードとの間に接続されたエスケープジョセフソン接合と、
前記第1のノードと前記少なくとも1つのテール回路との間に接続された第1の連結インダクタと、
前記第2のノードと前記少なくとも1つのテール回路との間に接続された第2の連結インダクタと、を備え、
前記単一DC磁束バイアス変圧器が、前記データ入力ジョセフソン接合および前記状態記憶ジョセフソン接合に、初期化時に
、Φ0分率のオフセットを提供するように構成されている、請求項6に記載のNDROゲート。
【請求項10】
前記ゲートが、少なくとも2つのテール回路を含み、前記Dラッチが、
前記第1のノードと第2のテール回路との間に接続された第3の連結インダクタと、
前記第2のノードと前記第2のテール回路との間に接続された第4の連結インダクタと、をさらに含む、請求項9に記載のNDROゲート。
【請求項11】
前記ボディ回路が、それぞれがSFQパルスを受信するように構成されたデータ入力ポートおよび論理クロック入力ポートを有するDフリップフロップを含む、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項12】
前記Dフリップフロップが、
前記データ入力ポートと第1のノードとの間に接続されたデータ入力インダクタと、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続されたデータ入力ジョセフソン接合と、
第2のノードと前記回路グランドと間に接続された状態記憶ジョセフソン接合と、
第3のノードと前記第1のノードとの間に接続された第1のインダクタと、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に接続された第2のインダクタと、
前記論理クロック入力ポートと第4のノードとの間に接続された論理クロック入力インダクタと、
前記第4のノードと前記第2のノードとの間に接続されたエスケープジョセフソン接合と、
前記第3のノードと前記少なくとも1つのテール回路との間に接続された少なくとも1つの連結インダクタと、を備え、
前記Dフリップフロップが、DC磁束バイアス線に接続されたDC磁束バイアス変圧器を含んでいない、請求項11に記載のNDROゲート。
【請求項13】
マルチプレクサとして構成され、それぞれの出力ポートが両方とも単一の出力に接続されている、厳密に2つのテール回路を備え、前記ボディ回路が、2つのジョセフソン接合およびACバイアス源を備えるパルス発生器を備え、前記ボディへの論理入力が、
前記単一の出力に伝搬される前記2つのテール回路のうちの第1のテール回路の入力ポートに到着する信号か、または
前記単一の出力に伝搬される前記2つのテール回路のうちの第2のテール回路の入力ポートに到着する信号か、を選択する、セレクタ信号を提供する、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項14】
AND-ORゲートとして構成され、それぞれの出力ポートが両方とも単一の出力に接続されている、厳密に2つのテール回路を備え、前記ボディ回路が、2つの論理入力を備え、前記2つの論理入力が、
前記2つの論理入力のうちの第1の論理入力のアサーションにより、2つのテール回路のうちの第1のテール回路の入力ポートに到着した信号が前記単一の出力に伝搬されることが可能になり、
前記2つの論理入力のうちの第2の論理入力のアサーションにより、前記2つのテール回路のうちの第2のテール回路の入力ポートに到着する信号が前記単一の信号出力に伝搬されることが可能になるように構成されている、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項15】
前記ANDゲートとして構成され、前記ゲートが単一のテール回路のみを有し、前記ボディ回路が、
論理入力ポートと第1のノードとの間に接続された論理入力インダクタ、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続された状態リレージョセフソン接合、および
前記第1のノードと前記単一のテール回路との間に接続された連結インダクタだけから成り、
前記テール回路が、前記NDROリードイネーブル信号と、前記ボディ回路の前記論理入力ポートで提供されるボディ入力信号との論理ANDを表す信号を出力する、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項16】
前記A-NOT-Bゲートとして構成され、前記ゲートが、単一のテール回路のみを有し、前記ボディ回路が、
論理入力ポートと第1のノードとの間に接続された論理入力インダクタ、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続された状態リレージョセフソン接合と、
前記第1のノードと第2のノードとの間に接続された第2のインダクタと、
前記第2のノードに接続されたパルス発生器であって、2つのジョセフソン接合およびACバイアス源を備え、ゼロ復帰(RZ)タイハイ信号を提供する、パルス発生器と、
前記第2のノードと前記単一のテール回路との間に接続されたエスケープジョセフソン接合と、を備え、
前記テール回路が、前記ボディ回路の前記論理入力ポートで提供されるボディ入力信号がアサートされていない場合にのみ、前記NDROリードイネーブル信号を表す信号を出力する、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項17】
インバータとして構成され、前記ゲートが、単一のテール回路のみを有し、前記ボディ回路が、
論理入力ポートと第1のノードとの間に接続された論理入力インダクタと、
前記第1のノードと前記回路グランドとの間に接続された状態リレージョセフソン接合と、
前記第1のノードと第2のノードとの間に接続された第2のインダクタと、
前記第2のノードに接続された第1のパルス発生器であって、2つのジョセフソン接合およびACバイアス源を備え、ゼロ復帰(RZ)タイハイ信号を提供する、第1のパルス発生器と、
前記第2のノードと前記単一のテール回路との間に接続されたエスケープジョセフソン接合と、を備え、
前記テール回路の前記NDROリードイネーブル入力ポートに第2のパルス発生器が接続され、前記第2のパルス発生器が、2つの他のジョセフソン接合および別のACバイアス源を備え、前記テール回路が、前記ボディ回路の前記論理入力ポートで提供されるボディ入力信号の論理反転を表す信号を出力するように、前記NDROリードイネーブル信号としてゼロ復帰(RZ)タイハイ信号を提供する、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項18】
デマルチプレクサとして構成され、それぞれの入力ポートが両方とも単一のデータ入力ポートに接続されている、厳密に2つのテール回路を備え、前記ボディ回路が、2つのジョセフソン接合およびACバイアス源を備えるパルス発生器を備え、前記ボディ回路への論理入力が、
前記
単一のデータ入力ポートに到着した信号が、
前記2つのテール回路のうち、第1のデール回路の第1の出力ポートに伝搬されるか、または
前記
単一のデータ入力ポートに到着した信号が、
前記2つのテール回路のうち、第2のデール回路の第2の出力ポートに伝搬されるか、を選択する、
セレクタ信号を提供する、請求項1に記載のNDROゲート。
【請求項19】
レシプロカル量子論理(RQL)中央処理装置(CPU)であって、
請求項1に記載のRQL NDROゲートのアレイを備えるメモリであって、
少なくとも1つの前記NDROゲートの前記ボディ回路が、前記少なくとも1つの論理状態を記憶するように構成されたDラッチまたはDフリップフロップのうちの1つを含み、前記ボディ回路が、前記NDRO
ゲート内の少なくとも2つのテール回路に接続され、前記少なくとも2つのテール回路の各々のそれぞれのテールジョセフソン接合に臨界前状態電流を供給するように構成され、
各臨界前状態電流が記憶された論理状態を表す、メモリを備え、
各テール回路が、前記それぞれのテール回路の前記NDRO出力ポートに、前記記憶された論理状態と、前記それぞれのテール回路の
前記NDRO
リードイネーブル入力ポートに提供されたそれぞれのNRDOリードイネーブル信号との論理ANDに対応する
それぞれのSFQパルスNDRO出力信号を伝搬するように構成され、
前記テール回路のいずれかからのいずれの出力信号の前記伝搬も、前記テール回路に接続された前記ボディ回路に記憶された前記論理状態に影響を与えない、レシプロカル量子論理(RQL)中央処理装置(CPU)。
【請求項20】
前記アレイ内の各NDRO
ゲートが、その論理状態を同じ演算周期で書き込み可能および読み出し可能の
両方にするように構成されている、請求項19に記載のRQL CPU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれている2018年7月31日に出願された米国特許出願第16/051058号の優先権を主張するものである。
【0002】
政府の権益
本発明は、政府契約番号W911NF-14-C-0115に基づいて行われた。したがって、米国政府は、この契約に明記された通りに本発明に対する権利を保有する。
【0003】
本発明は、概して、量子・古典デジタル超伝導回路に関し、具体的には超伝導非破壊読み出し回路に関する。
【背景技術】
【0004】
デジタル論理の分野では、よく知られた高度に発達した相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術が広範囲に使用されている。CMOSが、一技術として成熟期を迎え始めていることから、速さ、ワット損計算密度、相互接続帯域幅などの点からより高い性能につなげることができる代替技術に関心が寄せられている。CMOS技術に対する代替技術には、約4ナノワット(nW)の典型的な信号電力、秒当たり20ギガビット(Gb/s)以上の典型的なデータレート、約4ケルビンの動作温度で、超伝導ジョセフソン接合を活かした、超伝導ベースの単一磁束量子回路網が含まれる。
【0005】
非破壊読み出し(NDRO)回路は、記憶された情報状態を消す、壊す、変える、または他の方法で損なうことなく、記憶された情報状態(例えば、1ビットまたは複数ビット)を取り出し、処理または出力のために他の回路網へ伝送することができる。本出願の目的上、この用語には、記憶された情報状態を破壊的に取り出すが、その後に回復的書き戻しを行う回路が含まれると解釈されるべきではない。
【0006】
ラッチおよびフリップフロップは、状態情報を記憶するのに、また1つ以上の制御入力に印加された信号によって状態を変えるのに、使用され得る回路である。現代のコンピューティングエレクトロニクスおよび通信エレクトロニクスでは、メモリおよび順序論理には不可欠な記憶素子がある。ラッチは、非同期式であり、ラッチがイネーブル入力を介して有効にされるとの仮定で、そのデータ入力が変わるとすぐに(または、少なくともわずかな伝搬遅延の後)、その出力が変わる。フリップフロップは、同期式かつエッジトリガ式であり、クロッキング制御信号が高から低へ、または低から高になった場合のみ状態を変える。このように、従来のDフリップフロップ、例えば、CMOSに実装されているものは、2つの二値入力、データ入力Dとクロック入力、ならびに少なくとも1つの出力Qを有する。Dフリップフロップは、入力クロックサイクルの限定部分で、例えば、取り込み時間として知られる立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジで、D入力の値を取り込む。その取り込まれた値がQ出力になる。出力Qは、取り込み時(またはその後のわずかな伝搬遅延)を除いて変わることはない。実際の実装形態では、入力が確実に取り込まれて、出力に伝搬されるには、データ入力Dが、取り込み時の前のある程度のセットアップ時間と取り込み時の後のある程度の保留時間で、安定している必要がある。イネーブル入力がアサートされたままである限り、データ入力に応じて出力が変わる可能性があることを除いて、クロック入力ではなくイネーブル入力の場合、従来のDラッチも同様に挙動する。
【0007】
超伝導レシプロカル量子論理(RQL)回路の文脈では、位相モード論理(PML)により、デジタル値が1つ以上のジョセフソン接合の超伝導位相として符号化されることが可能になる。例えば、論理「1」は、高位相として符号化され得、論理「0」は、低位相として符号化され得る。例えば、位相は、ゼロラジアン(例えば、論理「0」を意味する)または2π ラジアン(例えば、論理「1」を意味する)として符号化され得る。これらの値は、ジョセフソン接合位相をリセットするのに、レシプロカルパルスが必要でないため、PMLのRQL ACクロックサイクルにわたり持続する。PMLとは対照的に、ウェーブパイプライン化論理(WPL)では、論理「1」は、正の単一磁束量子(SFQ)パルス、続いて逆の負のパルスとして符号化され、論理「0」は、このようなパルスのいずれかの欠如として符号化される。
【発明の概要】
【0008】
一例には、ボディ回路、およびボディ回路に接続された1つ以上のテール回路を含むレシプロカル量子論理(RQL)非破壊読み出し(NDRO)ゲートが含まれる。ボディ回路には、少なくとも1つの単一磁束量子(SFQ)論理入力がある。ボディ回路は、少なくとも1つの論理状態を記憶するように構成されている。NDROゲート内の各テール回路は、NDROリードイネーブル入力ポートとボディ回路との間に接続され、かつNDROリードイネーブル入力ポート上でSFQパルスNDROリードイネーブル信号を受信するように構成された、テール入力インダクタと、ボディ回路と回路グランドとの間に接続されたジョセフソン接合と、ボディ回路とNDRO出力ポートとの間に接続され、かつ記憶された論理状態に影響を与えることなく、記憶された論理状態に基づくSFQパルスNDRO出力信号およびNDROリードイネーブル信号を送信するように構成された、テール出力インダクタと、を含む。
【0009】
別の例には、RQLデマルチプレクサ回路(demux)が含まれる。demuxには、セレクタ入力、データ入力、第1の出力、および第2の出力用のそれぞれのポートがある。demuxにはさらに、第1のノードと回路グランドとの間に接続され、セレクタ入力ポートからのセレクタ入力信号のアサーション時にトリガされるように構成された、セレクタジョセフソン接合がある。demuxにはさらに、第1のノードから分岐し、データ入力ポートでデータ入力を受信するように構成された第2のノードで収束する、第1および第2の回路分岐がある。第1の分岐は、第1のノードと第2のノードとの間に接続されたインダクタを含む。第1の分岐は、2つのジョセフソン接合およびACバイアス源を備える、第2のノードに接続されたパルス発生器をさらに含む。第1の分岐は、第2のノードと第3のノードとの間に接続されたエスケープジョセフソン接合をさらに含む。第1の分岐は、第3のノードと回路グランドとの間に接続された第1の出力ジョセフソン接合をさらに含む。第2の分岐は、第1のノードと第4のノードとの間に接続されたインダクタを含む。第2の分岐は、第5のノードと回路グランドとの間に接続された第2の出力ジョセフソン接合をさらに含む。第2の分岐は、第4のノードと回路グランドとの間に接続された第3の出力ジョセフソン接合をさらに含む。セレクタ信号の非アサーションまたはアサーションは、それぞれ、データ入力ポートに到着する信号が第3のノードを通して第1の出力ポートに伝搬されるか、またはデータ入力ポートに到着する信号が第5および第4のノードを通して第2の出力ポートに伝搬されるかを、選択する。
【0010】
さらに別の例には、RQL非破壊読み出し(NDRO)ゲート回路のアレイを有するレジスタファイルを含むRQL中央処理装置(CPU)が含まれる。各NDROゲート回路は、論理状態を記憶するように構成されたDラッチまたはDフリップフロップのうちの1つを有するボディ回路を含む。各ボディ回路は、NDROゲート回路内の少なくとも2つのテール回路に接続され、少なくとも2つのテール回路の各々のそれぞれのテールジョセフソン接合に臨界前状態電流を供給するように構成されている。各臨界前状態電流は、同じ記憶された論理状態を表している。各テール回路は、それぞれのテール回路のNDRO入力ポートに提供されたそれぞれのNRDOリードイネーブル信号と、記憶された論理状態との論理ANDに対応する出力信号を、それぞれのテール回路のNDRO出力ポートに伝搬するように構成されている。テール回路のいずれかからのいずれの出力信号の伝搬も、該テール回路に接続されたボディ回路に記憶されている論理状態に影響を与えることはない。NDROゲート回路のレジスタファイルアレイ内の各ボディ回路は、データ入力ポートおよび論理クロック入力ポートを含み得る。レジスタファイルのワード線は、アレイ内のそれぞれのNDROゲート回路のワード線にわたってボディ回路の論理クロック入力ポートに接続され得、レジスタファイルのビット線は、アレイ内のNDRODゲート回路のテール回路のNDRO入力に接続され得る。アレイ内の各NDROゲート回路は、その論理状態を同じ演算周期で書き込み可能および読み出し可能の両方にするように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】は、非破壊読み出し(NDRO)ゲートであるレシプロカル量子論理(RQL)の例のブロック/回路図である。
【
図2】は、RQLシングルリードNDROレジスタの例の論理ブロック図である。
【
図3】は、RQLシングルリードNDROレジスタの例の回路図である。
【
図4】は、RQLデュアルリードNDROレジスタの例の論理ブロック図である。
【
図5】は、RQLデュアルリードNDROレジスタの例の回路図である。
【
図6】は、RQLシングルリードNDROレジスタの例の論理ブロック図である。
【
図7】は、ボディ-テールトポロジを有するRQLシングルリードNDROレジスタの例の回路図である。
【
図8】は、RQLデュアルリードNDROレジスタの例の論理ブロック図である。
【
図9】は、ボディ-テールトポロジを有するRQLデュアルリードNDROレジスタの例の回路図である。
【
図10】は、
図7のRQLシングルリードNDROレジスタ回路のタイミング図である。
【
図11】は、ボディ-テールトポロジを有するRQLシングルリードNDROレジスタの別の例の回路図である。
【
図12】は、ボディ-テールトポロジを有するRQLデュアルリードNDROレジスタの別の例の回路図である。
【
図13】は、ラッチベースではなくフリップフロップベースである、ボディ-テールトポロジを有する、RQLシングルリードNDROレジスタの例の回路図である。
【
図14】は、RQLマルチプレクサの例の回路図である。
【
図15】は、RQL AND-ORゲートの例の回路図である。
【
図16】は、RQLデマルチプレクサの例の回路図である。
【
図17】は、RQL ANDゲートの例の回路図である。
【
図18】は、RQL A-NOT-Bゲートの例の回路図である。
【
図19】は、RQLインバータ(NOTゲート)の例の回路図である。
【
図20】は、
図7のRQLシングルリードNDROレジスタ回路の測定波形のオシロスコープスクリーンショットキャプチャである。
【
図21】は、マルチテールNDROゲートのアレイの例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
非破壊読み出し(NDRO)回路トポロジは、1つ以上の非破壊出力信号として、1つ以上のテールが接続されている論理回路「ボディ」に記憶された状態を伝搬するのに使用される1つ以上の読み出し「テール」を含む。一つには、読み出しをトリガするのに使用される信号と、記憶された状態に対応する出力信号とが単一磁束量子(SFQ)パルスとして伝搬され得るので、読み出し回路トポロジは、超低電力超伝導コンピューティング用の超伝導論理のレシプロカル量子論理(RQL)ファミリの回路設計と互換性がある。本明細書に提供される例は、デバイス総数を減らす、機能性向上、および大型変圧器の最小化または排除の点から、論理およびメモリ回路網の多くの領域でRQL技術を拡張し、向上させる。
【0013】
図1は、ボディ110および1つ以上のテール112を含む、NDROゲート100の例のブロック/回路図である。ボディ内の論理回路114は、それぞれが本明細書ではテールと呼ばれる整数P個の独立した回路112、1つ以上に単一状態または複数状態の亜臨界バイアス電流を提供する。ボディ110の論理回路114は、整数N個の入力、1つ以上を有し、その上で、それぞれがボディ110の内部状態として記憶される1つ以上の出力を生成するために、任意のタイプの論理演算または論理ゲート機能が論理回路114によって行なわれ得る。このように、ボディ110には、1つまたは多数(すなわち、P)のテール112に供給される独立した臨界前状態バイアス電流(I
PCS_1~I
PCS_P)の組み合わせを生成することができる1つまたは多数(すなわち、P)の内部状態があり得る。すべての入力および臨界前状態電流は、ウェーブパイプライン化論理または位相モード論理のいずれかで符号化され得る。状態は、ボディへの入力によって変わるまでボディに持続し得る限り、非一時的であり得る。ゲート100がNDRO読み出しゲートであるため、テール(複数可)へのボディ出力は、ボディへの入力とは見なされない。
【0014】
図1では、第1のテールTAIL
1には、論理回路114から第1の臨界前状態電流I
PCS_1が提供される一方、第PのテールTAIL
Pには、論理回路114から第Pの臨界前状態電流I
PCS_Pが提供される。各テールにはまた、それぞれ、非破壊読み出しイネーブル信号NDRO
IN_1~NDRO
IN_Pが提供され、それぞれ、リード出力信号NDRO
OUT_1~NDRO
OUT_Pを出力し、これらの出力信号は、論理回路114の状態に対応する。
【0015】
各テール112は、わずか3つの構成要素から構成され得る。具体的には、各テール112は、入力端および接地端を有するわずかただ1つのジョセフソン結合(例えば、JJ
1、JJ
P)、それを通して入力非破壊読み出しイネーブル信号(例えば、NDRO
IN_1、NDRO
IN_P) が与えられるジョセフソン接合の入力端に接続された入力インダクタ(例えば、L
IN_1、L
IN_P)、およびそれを通して出力非破壊読み出し信号(例えば、NDRO
OUT_1、NDRO
OUT_P)が他の回路網(図示せず)に与えられるジョセフソン接合の入力端に接続された出力インダクタ(例えば、L
OUT_1、L
OUT_P)で構成され得る。ジョセフソン伝送線路(JTL)(
図1には示されていない)は、各テール112のNDRO入力および出力に接続されて、テール間でSFQパルスを搬送することができる。
【0016】
したがって、一例では、論理回路114は、フリップフロップまたはラッチなどの単純なメモリ記憶素子の機能を提供することができ、事実上、1ビットのデータを記憶する。他の例では、論理回路114は、論理ゲートか、またはANDゲート、ORゲート、XORゲート、およびNOT(すなわち、インバータ)ゲートを含む論理ゲート、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、ならびにシフトレジスタの任意の組み合わせであり得る。臨界前状態電流IPCS_1~IPCS_Pは、多様な状態を表す場合があり、または、いくつかの例では、それらは、すべて単一の状態を表す場合がある。いずれの場合でも、論理回路114は、1つ以上のテール112に出力されるその論理状態(複数可)を与える。各テール112は、ボディへの影響を最小限に抑え、それにより、ボディ回路網114の状態への干渉または破壊を防ぐ。
【0017】
したがって、NDROゲート100は、各テール112の回路網において、ボディ論理回路網114からの状態生成臨界前バイアス電流を使用して、ジョセフソン接合JJ 1~JJ Pに臨界前バイアスをかけ、各テール112が出力イネーブラとして働くことを可能にし、言い換えれば、事実上、ボディ論理回路網114の状態と対応する非破壊読み出しイネーブル信号NDRO IN_1~NDRO IN_Pとの間に論理ANDを提供する。いずれのテール112のこのNDRO入力も、ボディ110内の内部状態を破壊することなく、ボディ110内の内部状態を読み取って出力する。ボディ110は、本質的に組み合わせ論理であってもなくてもよく、したがって、その関連するテール112への1つ以上の入力および1つ以上の出力を有することができる。
【0018】
図2~
図5は、
図1のボディ-テールアーキテクチャを使用せず、代わりにDラッチ段およびANDゲート段でレジスタを構築するレジスタ200、400および対応する超伝導レジスタ回路300、500の論理図を示す。
図2は、Dラッチ202用の回路網をANDゲート204用の回路網と組み合わせることによって実装されるRQLシングルリードNDROレジスタ200の例の論理ブロック図を示す。Dラッチ202のデータ入力Dに提供されたデータ入力信号DIが、Dラッチ202の入力Eを有効にするのに提供された論理クロック信号LCLKのアサーションによって「ラッチ」されると、出力状態Qとして記憶される。この信号は、ANDゲート204によってリードイネーブル信号REと論理的にAND演算され、その出力は、リード出力信号QOとなる。中間ジョセフソン伝送線路(JTL)は、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、Dラッチ202とANDゲート204との間に、かつ/またはANDゲート204と出力信号QOを受信する回路(図示せず)との間に、設けられ得る。
【0019】
図3は、RQL互換性超伝導回路300の例として、
図2のシングルリードレジスタ200を実装する回路図を示す。回路300の入力段302は、2つの入力ポートDIおよびLCLK、3つのジョセフソン接合J2、J3、およびJ4、2つの入力インダクタL1およびL2、ならびにDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第1の変圧器を含む。入力段302は、
図2のDラッチ202に対応し、その機能を提供する。回路300の出力段304は、入力ポートRE、出力ポートQO、2つのインダクタL3、L4、2つのジョセフソン接合J5、J6、およびDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第2の変圧器を含む。出力段304は、
図2のANDゲート204に対応し、その機能を提供する。中間JTLは、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、入力段302と出力段304との間に、かつ/または出力段304と出力信号QOを受信する回路(図示せず)との間に設けられ得る。
【0020】
図4は、Dラッチ402用の回路網を2つのANDゲート404、406用の回路網と組み合わせることによって実装されるデュアルリードレジスタ400の例の論理ブロック図を示す。論理
図400に示されるように、Dラッチ402の出力は、2つのANDゲート404と、406とに分岐される。Dラッチ402および各ANDゲート404、406の働きは、
図2に関して上で説明したものと同じである。Dラッチ402のデータ入力Dに提供されたデータ入力信号DIが、Dラッチ402の入力Eを有効にするのに提供された論理クロック信号LCLKのアサーションによって「ラッチ」されると、出力状態Qとして記憶される。この出力信号は、それぞれ、ANDゲート404、406によって2つのリードイネーブル信号RE_AおよびRE_Bのそれぞれと論理的にAND演算され、その出力は、リード出力信号QO_AおよびQO_Bとなる。上で述べたように、中間JTLが、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、Dラッチ402とANDゲート404、406との間に、かつ/またはANDゲート404、406と出力信号QO_AおよびQO_Bを受信する回路(図示せず)との間に設けられ得る。
【0021】
図5は、RQL互換性超伝導回路500の例として、
図4のデュアルリードレジスタ400を実装する回路図を示す。回路500の入力段502は、2つの入力ポートDIおよびLCLK、3つのジョセフソン接合J2、J3、およびJ4、2つの入力インダクタL1およびL2、ならびにDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第1の変圧器を含む。入力段502は、
図4のDラッチ402に対応し、その機能を提供する。回路500の第1の出力段504は、入力ポートRE_A、出力ポートQO_A、2つのインダクタL3_A、L4_A、2つのジョセフソン接合J5_A、J6_A、およびDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第2の変圧器を含む。第1の出力段504は、
図4のANDゲート404に対応し、その機能を提供する。回路500の第2の出力段506は、入力ポートRE_B、出力ポートQO_B、2つのインダクタL3_B、L4_B、2つのジョセフソン接合J5_B、J6_B、およびDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第3の変圧器を含む。第2の出力段506は、
図4のANDゲート406に対応し、その機能を提供する。
【0022】
入力段502と出力段504、506との間で、分岐段503が、入力段502からの出力信号を、出力段504、506のそれぞれへ入力信号として提供することができる。分岐段503は、3つのジョセフソン接合JF1、JF2_A、およびJF2_B、4つのインダクタLF1、LF2、LF3_A、およびLF3_B、ならびにACバイアス信号源AC CLKへの第5のインダクタLF_CLKを含む。中間JTLが、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、入力段502と分岐段503との間に、かつ/または出力段504、506と出力信号QO_A、QO_Bを受信する回路(図示せず)との間に提供され得る。
【0023】
回路300および回路500は、それぞれ、
図200および400に論理的に表されているように、それぞれ、望ましいリードポートの個数に応じて、JTL(複数可)を介してDラッチ出力を1つ以上のANDゲートに接続する。その表面的な単純さにも関わらず、これらの設計では、デバイス総数とリソース使用率が、比較的高い。これに加えて、図示の構成では、読み取りと書き込みを同時に行うことができる機能を欠いており、この機能は、レジスタファイルがCPUアーキテクチャの領域で有する望ましい性能特徴である。
【0024】
図5のデュアルリードレジスタ回路500は、比較的複雑であり、部品総数が多く(JTL、ポート、およびACバイアス源の部品を除いて24個の構成要素を有する)、比較的高いリソース使用率(例えば、3つのDC磁束バイアス線接続、またJTLおよび分岐段503に電力を供給するためのACバイアス源接続を必要とする)である。しかし、
図4のブロック
図400に示される論理機能を実装するような回路500の目的を考えると、回路500が、その段502、503、504、506のそれぞれが
図400から分割された論理構成要素または論理信号を実装すると仮定すると、どのように簡略化され得るかは、明らかではない場合がある。さらに、信号伝搬(図示のように回路の左から右へ)の必要性は、回路300および回路500が、データ入力信号を書き込み、その同じデータ入力信号を実質的に同時に(例えば、同じ演算周期内で)読み取ることを可能にしないことを意味する。
図6~
図9の例は、
図2~
図5の論理設計および論理実装形態を再概念化し、例えば、状態の書き込みと書き込まれた状態の読み取りを同時に可能にすることによって、機能性向上をもたらしながら部品総数を減らす。これらの例を考えると、
図3のシングルリードレジスタ回路300でさえ、過度に複雑であり、望ましい部品総数よりも部品総数が多いことは明らかである。
【0025】
図6は、
図2のシングルリードレジスタ200の機能の少なくともすべてを有するが、
図2および
図3に示されるD-ラッチからANDゲートへの段移行なしに、非破壊読み出しを提供することができる、シングルリードRQL D-レジスタ600の例の論理ブロック図を示す。NDROラッチ602のデータ入力Dに提供されるデータ入力信号DIが、NDRO-ラッチ602の同名入力に提供される論理クロック信号LCLKのアサーションによって「ラッチ」されると、NDRO-ラッチ602の内部状態として記憶される。論理クロック信号アサーションと実質的に同時(例えば、同じ演算周期内で)である可能性がある、NDRO-ラッチ602の入力NDROAに提供される非破壊読み出し信号NDROのアサーション時点で、内部状態がリード出力信号QOとして出力Qから読み出される。
【0026】
図7は、RQL互換性超伝導回路700の例として、
図6のシングルリードRQL Dレジスタ600を実装する回路図を示す。回路700のボディ段702は、2つの入力ポートDIおよびLCLK、3つのジョセフソン接合J2、J3、およびJ4、2つの入力インダクタL1およびL2、ならびにDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための変圧器(複数可)を含む。回路初期化時に、DC磁束バイアス変圧器が、Φ
0分率のオフセット(例えば、1/2Φ
0)のずれで、ジョセフソン接合J2にバイアスをかける。(Φ
0は、約2.07mA-pHに等しい、単一磁束量子である。)ボディ段702は、
図1のボディ110に対応し得る。回路700のテール段704は、入力ポートNDRO、出力ポートQO、1つのインダクタL3、および1つのジョセフソン接合J5を含む。テール段704は、
図1のテール112に対応し得る。ボディ段702は、連結インダクタLLによってテール段704に接続され得る。以下に、
図10のシミュレーションタイミング
図1000を参照して、
図7のシングルリードレジスタ回路700の働きをより詳細に説明する。
【0027】
テール段704には、2つのジョセフソン接合がなく、また、
図3の出力段304に見られ得るような、DC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第2の変圧器もない。回路700はまた、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、JTLが、
図7に示されるように、テール段704と出力信号QOを受信する回路(図示せず)との間に設けられ得るが、ボディ段702とテール段704との間に中間JTLを含まない。
【0028】
図8は、
図4のデュアルリードレジスタ400の機能の少なくともすべてを有するが、
図4および
図5に示されるD-ラッチからANDゲートへの段移行なしに、非破壊読み出しを提供することができる、デュアルリードRQL D-レジスタ800の例の論理ブロック図を示す。NDROラッチ802のデータ入力Dに提供されるデータ入力信号DIが、NDRO-ラッチ802の同名入力に提供される論理クロック信号LCLKのアサーションによって「ラッチ」されると、NDRO-ラッチ802の内部状態として記憶される。論理クロック信号アサーションと実質的に同時(例えば、同じ演算周期内)である可能性がある、NDROラッチ802の入力NDROAに提供される最初の非破壊読み出し信号NDRO_Aのアサーション時点で、内部状態がリード出力信号QO_Aとして出力QAから読み出される。論理クロック信号アサーションと実質的に同時(例えば、同じ演算周期内)である可能性がある、NDROラッチ802の入力NDROBに提供される2番目の非破壊読み出し信号NDRO_Bのアサーション時点で、内部状態がリード出力信号QO_Bとして出力QBから読み出される。
【0029】
図9は、RQL互換性超伝導回路900の例として、
図8のデュアルリードRQL Dレジスタ800を実装する回路図を示す。回路900のボディ段902は、2つの入力ポートDIおよびLCLK、3つのジョセフソン接合J2、J3、およびJ4、2つの入力インダクタL1およびL2、ならびにDC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための変圧器(複数可)を含む。ボディ段902は、
図1のボディ110に対応し得る。回路900の第1および第2のテール段904、906は、それぞれの入力ポートNDRO_A、NDRO_B、それぞれの出力ポートQO_A、QO_B、それぞれのインダクタL3_A、L3_B、およびそれぞれのジョセフソン接合J5_A、J5_Bを含む。テール段904、906は、
図1のテール112に対応し得る。ボディ段902は、連結インダクタLL_A、LL_Bによってテール段904、906に接続され得る。
【0030】
回路900の特定の例では、両方のテール段904、906が、ボディ段902の同じ「出力」に接続され、そのためボディ段902から同じ記憶された状態を受信するので、ボディ段902からの出力電流が、1つではなく2つのテールを駆動するほど大きいことが必要とされるということを除いて、
図9の回路900におけるボディ段902およびテール段904、906の働きは、
図7の回路700におけるボディ段702およびテール段704の働きと実質的に同じである。その結果、ボディ段902におけるジョセフソン接合デバイスのサイズは、回路700のボディ段702のものと比べてより大きくなり得る。
【0031】
回路900において、テール段904、906には、それぞれ2つのジョセフソン接合がなく、また、
図5の出力段504、506に見られ得るような、DC磁束バイアス線からDC磁束バイアスを誘導結合するための第2の変圧器もそれぞれにない。回路900はまた、信号増幅、信号距離伝送、および信号絶縁の目的で、JTLが、
図9に示されるように、テール段904、906と出力信号QO_A、QO_Bを受信するそれぞれの回路(図示せず)との間に設けられ得るが、ボディ段902とテール段904、906との間に中間JTLを含まない。
【0032】
Dラッチ/ ANDゲート回路300および500に優る、それぞれ、ボディ/テール回路700および900の構成要素節約の構造的利点をそれぞれ要約すると、シングルリードDラッチ/ ANDゲート回路300は、5つのジョセフソン接合および2つのJTLを使用するが、シングルリードボディ/テール回路700は、4つのジョセフソン接合および1つのJTLを使用し、1つのジョセフソン接合および1つのJTL(それ自体が1つ以上のジョセフソン接合を含む)の節約となり、デュアルリードボディ/テール回路900は、Dラッチ/ ANDゲートデュアルリード回路500で使用される10のジョセフソン接合および3つのJTLと比べて、5つのジョセフソン接合および2つのJTLを使用し、5つのジョセフソン接合および1つのJTLの節約となる。さらに、デュアルリードボディ/テール回路900は、デュアルリードDラッチ/ ANDゲート回路500よりもインダクタおよび誘導結合が少ない。ジョセフソン接合およびインダクタの個数を減らすと、製作されたダイ領域またはチップ領域当たりのメモリセルまたは論理セルの総数が増えるため、ボディ/テール回路700および900の例では、メモリアレイまたは論理アレイの密度を大幅に上げることで費用を削減する。
【0033】
図10は、
図7のRQLシングルリードNDROレジスタ回路700の働きを示すタイミング
図1000を提示する。
図1000の7つのプロットのそれぞれは、ナノ秒単位の時間の関数として提示される。DI信号プロットは、回路状態、例えば、メモリ状態または論理状態を設定するために回路に提供されるデータ入力を表す。LCLK信号プロットは、ライトイネーブル信号として作用する論理クロック入力を表す。NDRO信号プロットは、リードイネーブル信号として作用する非破壊読み出し入力を表す。QO信号プロットは、別の回路への入力信号として提供され得る非破壊読み出し出力を表す。回路700の働きを理解するのを助けるために、ジョセフソン接合J2、J4、J5、およびJ3の超伝導位相も含まれ、この場合、位相は、あらゆるノードにおける電圧の時間積分と定義される。タイミング図の上部にあるテキストの凡例は、呼び出される回路演算、すなわち、次の真理値表に従った、入力と出力との特定の組み合わせの基本的な意味を明示し、ここで、「前の状態」は、前の演算周期の終了時のジョセフソン接合J2の位相によって示される。
【表1】
【0034】
各演算周期では、NDRO(すなわち、リードイネーブル)入力信号が、ボディ段702に書き込まれたデータ値が同じ演算周期内でテール段704から読み出され得るように、任意のLCLK(すなわち、ライトイネーブル)の開始からのセットアップ時間および保留時間の後に来るようにタイミングが計られる。このタイミングは、回路700の外側のサポート回路網によって強制され得、例えば、様々な信号時間遅延をもたらすように構成されたJTLを採用することができる。「半選択」条件は、論理クロック入力LCLKにおける、対応する論理「高」ライトイネーブル信号なしでデータ入力DIへの論理「高」信号の印加として定義される。
【0035】
シングルリードRQL Dレジスタ回路700は、ボディ段702のジョセフ接合J2の位相を使用して、記憶された状態値を符号化し、テール段704において、ジョセフソン接合J5に安定した臨界前バイアス電流を供給する。この臨界前バイアス電流は、ジョセフソン接合J5をトリガさせるには不十分であるが、そのトリガリングが非破壊読み出し入力信号NDROの値に直接相関するように、ジョセフソン接合J5にバイアスを十分にかける。具体的には、正のNDROパルスが、ジョセフソン接合J5をトリガし、それによってSFQパルスを出力QOに送り出し、負のNDROパルスが、ジョセフソン接合J5をリセットする。入力NDROからのバイアスを弱くすることができ、テール段704とボディ段702との間(すなわち、テールからボディへの方向の)の絶縁は、読み出しを「非破壊」にするものである、NDRO信号によるボディに記憶された状態の破損を回避するのに十分に高いものであり得る。
【0036】
シングルリードRQL Dレジスタ回路700において、ジョセフソン接合J2接合は、論理ロック入力LCLKが「高」になるとき(すなわち、論理クロック入力をアサートするために論理クロック入力LCLKに正のSFQパルスが提供されるとき)トリガされ、ジョセフソン接合J2の超伝導位相を2πラジアン(「高」)にする。入力LCLKで提供される論理クロック信号の立ち下がりエッジでデータ入力DIがアサートされた場合(すなわち、データ入力DIに正のSFQパルスが導入された状態)、ジョセフソン接合J2の位相は、「高」のままである。この間にデータ入力DIがアサートされていない(「低」)場合、ジョセフソン接合J2は、「ひっくり返る」(すなわち、その位相が0ラジアン「低」に戻る)。その結果、ジョセフソン接合J2の超伝導位相は、RQL Dレジスタ回路700のボディ702の内部状態を決定する。したがって、例えば、2πラジアン超伝導位相を有するジョセフソン接合J2は、記憶された「1」(論理的な「高」)値に対応し得る一方、0ラジアン超伝導位相を有するジョセフソン接合J2は、記憶された「0」(論理的な「低」)に対応し得る。具体的には、記憶された状態は、特に「書き込み0」演算時のタイミング
図1000に記載され得るように、演算周期の後半にわたり、状態を記憶するジョセフソン接合J2の位相に対応する。
【0037】
ボディ702におけるトリガされたジョセフソン接合J2から記憶された「1」は、テール704におけるジョセフソン接合J5に臨界前バイアス電流を提供する。このバイアス状態では、読み取りを可能にする入力NDROがアサートされない限り(「高」にならない限り)、次にボディに記憶された状態を出力QOに渡す、テールジョセフソン接合J5がトリガされない。ジョセフソン接合J5のトリガリングは、ボディ702の内部状態(ジョセフソン接合J2の超伝導位相として符号化された)に影響を与えず、回路700の読み出しにその非破壊特性を与える。
【0038】
テールジョセフソン接合J5は、ボディ状態記憶ジョセフソン接合J2がトリガされて、それをその2πラジアン超伝導位相にして、非破壊読み出し入力NDROが正のSFQパルスでアサートされた場合にのみトリガされ得るので、NDRO入力および対応する出力QOが、ウェーブパイプライン化論理(WPL)符号化され得るか、または位相モード論理(PML)符号化され得、ジョセフソン接合J2が適切にセットアップされた後、または入力LCLKで提供された倫理クロック信号がアサート解除された後、非破壊読み出し入力NDROのアサーションに達する必要がある。論理ロックの適切な位相タイミングと入力LCLKおよびNDROで提供される非破壊読み出し信号により、同じクロック周期中にデータの書き込みと読み取りが可能になり、メモリ演算および演算処理を速くする。
【0039】
次に、回路700の様々な動作状態を、左から右の時系列でその演算周期(垂直の破線で区切られた)を読み取る、
図10のシミュレーションタイミング
図1000を参照して探る。
【0040】
「静止入力」:回路700は、そのボディ702に何も状態値が記憶されていない状態で始まる。3つの入力DI、LCLK、およびNDROがすべてアサートされていない場合、回路は、「静止入力」動作状態にあるため、出力QOが「低」になる。
【0041】
「読み取り0」:次の演算周期は、読み取り周期であり、周期の後半に導入されたNDROパルス1002は、それをその初期値から変える書き込み演算がなかったため、依然として「低」であるボディに記憶された状態を「読み出す」。したがって、出力QOは、「低」のままである。
【0042】
「書き込み1・読み取り」:次の周期では、ボディに記憶された状態として、論理的な「高」値を書き込み、同じ演算周期内で、出力QOへのこの状態の読み出しをすべて可能にするようにアサートされた3つの入力DI、LCLK、およびNDROのすべてが見られる。ジョセフソン接合J2の超伝導位相は、論理クロック入力LCLKで提供された書き込みを可能にする信号が「高」になるとすぐに、「高」(例えば、2πラジアン)になる1004。それは、データ入力DIに与えられたアサーションSFQパルスがジョセフソン接合J4をトリガした1006後も、高のままである。LCLKが低に移行すると、状態を記憶するジョセフソン接合J2の「高」超伝導位相が維持される。ジョセフソン接合J2がトリガされない代わりに、エスケーブジョセフソン接合J3がトリガされる1008。論理クロック入力LCLKが「高」になり、データ入力DIが「高」になる組み合わせにより、回路700が「書き込み1」状態になり、ジョセフソン接合J2を2πラジアン超伝導位相に維持することにより、「1」がボディに記憶された状態に書き込まれる。ジョセフソン接合J2の位相は、データ入力DIが「高」になる前でも「高」になるが、データ入力DIがアサートされていない場合、ジョセフソン接合J2は、ライトイネーブル信号LCLKが「低」になった後に「低」に戻る(以下で述べる「書き込み0」演算で見られるように)。ジョセフソン接合J2が2πラジアンの「高」状態にある限り、それは、テールジョセフソン接合J5に臨界前バイアス電流を提供し、入力NDROでテールジョセフソン接合J5が受信するいずれのパルスも出力QOに伝搬するように、テールジョセフソン接合J5を準備する。
【0043】
書き込まれた状態は、同じ演算周期内で、出力QOですぐに読み出される。論理クロック入力LCLKのライトイネーブル信号が高になるたびに、ジョセフソン接合J2が「高」超伝導位相にアサートされるため、演算周期でのNDROコマンドのタイミングは、LCLKコマンドよりも遅くなり、早期の読み出し試行が、「1」または「0」のどちらが書き込まれるかに関係なく、「1」の読み出し値の結果になることを意味する。リードイネーブル信号NDROが時間的に遅延するため、読み出し状態は、相応に、同じ演算周期の早期に書き込まれたのと同じ状態になる。
【0044】
ジョセフソン接合J5の超電導位相は、「1」の読み出しを意味し、ジョセフソン接合J2の超電導位相と読み取りを可能にするNDROコマンドとの論理ANDとして解釈され得る。したがって、ジョセフソン接合J2が2πラジアンの超電導位相(「高」)にあるときに入力NDRO「高」を送信すると、ジョセフソン接合J5の超電導位相を2πラジアン(「高」)に移行させ、SFQパルスを出力QOへ伝搬する。(したがって、ジョセフソン接合J5の位相のプロットも「低」に低下すると、出力QOのプロットが最終的に「低」に低下する。)ジョセフソン接合J2の超伝導位相が0ラジアンのときに読み出しを行おうとすると、ジョセフソン接合J5をトリガするには不十分であるため、出力QOの読み取りは、「0」になる。回路700の非破壊読み出し演算を再び取り上げると、ジョセフソン接合J5のトリガリングは、ジョセフソン接合J2の位相に(または回路700内の他のジョセフソン接合のいずれの位相にも)影響を与えず、したがって、ボディに記憶された論理回路状態(すなわち、回路700がメモリで使用されているときのメモリ素子状態)を変えることはない。
【0045】
「書き込み0・読み取り」:入力LCLKで提供された書き込みを可能にする論理クロック信号が「高」になるが、データ入力D1がアサートされないままであると、周期の中間点のJ2位相プロットに見られるように、状態を記憶するジョセフソン接合J2の位相が、下がって0ラジアンに戻る。同じ周期で、ジョセフソン接合J5がトリガされないため、読み取りを可能にするコマンドが発行され(すなわち、入力NDROが「高」になる)、QOで書き込まれた状態を「0」として読み出す。
【0046】
2番目の「書き込み1・読み取り」、続いて「読み取り1」:これらの2つの周期は、2つの連続した演算から予想される正しい非破壊読み出し挙動を示す。最初の読み出しは、書き込まれた「1」状態を破壊しないので、直後に別の読み取り演算が続く場合でも、同じ「1」が再び読み出され、最初の読み出しが、ボディに記憶された状態を損なっていないことを意味する。これら2つの演算の2番目では、入力NDROで提供される読み取りを可能にする信号が「高」になるとき、ジョセフソン接合J2の超伝導位相が、すでに「高」になっているため、ジョセフソン接合J5の超伝導位相、したがって出力QOが、同様に「高」になる。
【0047】
「書き込み0」:入力LCLKで提供される論理クロック信号が「高」になり、データ入力DIが「低」である間にライトイネーブルを有効にする。有効になっている読み取り演算がないため、演算周期の終了時に出力QOが相応に「低」になる。状態を記憶するジョセフソン接合J2の超伝導位相が「低」になり、「0」が状態を記憶するボディ702に書き込まれたことを示す。
【0048】
「読み取り0」:入力NDROで提供された読み取りを可能にする信号が「高」になるが、ジョセフソン接合J2の超伝導位相を、「高」になるようにはせず、入力NDROで提供された読み取りを可能にする信号によって損なわれない、「低」が記憶されたメモリ状態が保たれていることを示す。後で、次の「書き込み1」演算の開始時に分かるように、入力NDROおよびLCLKの両方が「高」になる組み合わせでさえ、演算周期の開始時にジョセフソン接合J5をトリガさせて、出力を生成するには不十分である。
【0049】
「読み取りなしの半選択(0状態)」:「半選択」状態は、例えば、対象回路がアドレス指定されたビット線の一部ではない特定のメモリ素子である場合に、メモリアレイへのデータの送信中に発生する可能性がある。このような場合、アレイアーキテクチャのアーチファクトとして、データ入力DIで送信される「1」信号がメモリアレイのあらゆるビット線に並列に配信される場合がある。したがって、データ入力DIが「高」である場合があるが、書き込みを可能にする論理クロック入力LCLKは、「低」である。このような半選択状態では、記憶された状態は、変わらないはずである。
図1000のこの周期は、正しい挙動を示す。データ入力DIが「高」の場合でも、「高」データ入力DIと「低」ライトイネーブル入力LCKLとの組み合わせは、状態を記憶するジョセフソン接合J2をトリガし、その超伝導位相を2πラジアンに変更するには不十分である。したがって、回路ボディ702に記憶された書き込まれた状態は、「低」のままである。エスケープジョセフソン接合J3の位相も同様に影響を受けない。読み取りを可能にする入力NDROは、「低」であり、読み取り信号が送信されず、出力QOが低のままであることを意味する。
【0050】
「読み取り有りの半選択(0状態)」:この演算周期は、記憶された状態、すなわち、状態を記憶するジョセフソン接合J2の超伝導位相に対する、アサートされたデータ入力DIとアサートされたリードイネーブル入力NDROとの複合効果を示す。メモリ状態が「0」の場合でも、入力DIとNDROとが高になっても、ジョセフソン接合J2はトリガされない。ジョセフソン接合J2の超伝導位相は、0ラジアンのままである。したがって、この周期は、回路がメモリまたは論理アレイ内の半分選択されたセルである場合でさえ、回路700の非破壊読み出し機能を再び示す。
【0051】
「書き込み1」:データ入力DIが「高」になり、論理クロック入力LCLKのアサーションによって書き込み可能になる。したがって、状態を記憶するジョセフソン接合J2も「高」超伝導位相への移行をトリガするが、出力QOは、「低」のままであり、読み取りを可能にする信号NDROがないため、読み出しはない。
【0052】
「読み取りなしの半選択(1状態)」:データ入力DIは「高」であるが、ライトイネーブルLCLKは「低」であり、半選択状態を表している。この組み合わせは、状態を記憶するジョセフソン接合J2の「高」超伝導位相には影響を及ぼさない。エスケープジョセフソン接合J3は、その「低」超伝導位相を保持する。リードイネーブル入力NDROは「低」であり、記憶された状態が「高」であっても出力QOは「低」のままである。
【0053】
「読み取り1」:この読み取り周期は、前の周期の半選択条件では、記憶された「高」状態を損なうようなことは何もしなかったことを再度証明する。リードイネーブル入力NDROがアサートされると、出力QOも同様にアサートされ、2周期前に書き込まれた「1」状態の読み出しが成功したことを示す。
【0054】
「書き込み0」:データ入力DIが「低」である間、ライトネーブル入力LCLKが「高」にアサートされ、状態を記憶するジョセフソン接合J2の超伝導位相が0ラジアンに下がる。一方、エスケープジョセフソン接合J3の位相は、逆戻りする。したがって、タイミング
図1000の終わりに、回路700は、その開始状態にリセットされる。
【0055】
図10のタイミング
図1000では、入力LCLKおよびNDROに提供される信号は、互いに対して時間的にずらされ、上の説明で示されたLCLK状態は、LCLKが周期の開始直後になる状態であり、上の説明で示されたNDRO状態は、LCLKが「低」になる頃に、例えば、周期の半ば直後にNDROがなる状態である。ジョセフソン接合J4の位相は、データ入力DIと実質的に同相である一方、ジョセフソン接合J5の位相は、出力QOと実質的に同相である。上の説明において、示されたDI状態、それによるジョセフソン接合J4の示された位相もまた、演算周期の中間の状態または位相である。示されたQO状態は、ジョセフソン接合J2およびJ5の示された位相と同様に、演算周期の終了時の状態または位相である。一例として、回路は、前の周期の読み取りが、現行の周期の演算に影響を及ぼさないように、LCKLとNDROの位相が互いにずれているように、例えば、互いに位相が180°ずれているように、または互いに位相が225°ずれているように設計され得る。
【0056】
図11は、
図7の回路700と形態および機能が類似しているが、インダクタLL
1およびLL
2を有するボディ段1102に到達するように、ボディ段702の中央インダクタンス網のY-Δ 変換を実装することにより、回路におけるDC磁束バイアス変圧器の個数を2から1に減らした、RQL互換性超伝導回路1100の例として、
図6のシングルリードRQL Dレジスタ600を実装する回路図を示す。テール段1104は、テール704から変更されていない。
図12の回路1200は、
図11に示されるラッチベースのNDRO回路の変形形態が、NDROテール段1204、1206をノード1208、1210に加えることにより、デュアルリードまたはマルチリードの構成に構築され得ることを示す、
図9の回路900と比べたときの、
図8のデュアルリードRQL Dレジスタ800の同様の変形形態を提供する。テール段1204、1206は、テール段904、906から変更されておらず、ボディ段1202のトポロジのみが、ボディ段902のトポロジと異なる。
【0057】
図13は、回路700のDC磁束バイアス変圧器のインダクタL4、L5が置換されていることを除いて、ラッチベースのNDRO回路4700と同じテール段1304、およびボディ段1302とほぼ同じ構成要素(ボディ段702に比べて)を含む、フリップフロップベースのNDROゲート1300を提供する。ボディ段1302は、三安定フリップフロップを含む。2つの状態を有し、Φ
0の分率(例えば1/2Φ
0)のずれしかない
図7のDラッチ回路700とは対照的に、Dフリップフロップ回路1300は、3つの状態を有し、位相ずれはない。回路1300におけるジョセフソン接合J2は、状態記憶素子のままであるが、書き込みのプロセスは、回路700の場合とは異なる。論理クロック入力LCLKは、書き込み演算を行っていないときは、アサートされたまま(「高」)であり、これにより、データ入力DIからの正のパルスがジョセフソン接合J2をトリガするのを防ぐ。書き込み演算を行うために、論理クロック入力LCLKがアサート解除され(「低」になり)、正のSFQパルスによるデータ入力DIのアサーション時点で(すなわち、DIが「高」になる)、ジョセフソン接合J2がトリガされることを可能にする。データ入力DIは、論理クロック入力LCLKが再び「高」にアサートされるまで高のままであり、これにより、データ入力値をジョセフソン接合J2の超伝導位相として「ロック」または記憶する。その後、データ入力DIは、論理クロック入力LCLKが「高」になった後、「低」に戻ることができる。2つの回路が同じテール段回路網を含むので、読み出し機能は、ラッチベースの回路700から変更されていない。
【0058】
図13に提供されるフリップフロップベースのNDRO回路1300の変形形態が想到される。図示されていないが、
図9に示されている例によれば、
図13のものと同様のフリップフロップベースの回路が、複数のテールを有して提供され得る。図示されていないが、
図13のものと同様のフリップフロップベースの回路が、
図7および
図9のそれらのY構成対応物と比べて、
図11および
図12に示されるデルタ構成回路に照らして、
図13に示されるYトポロジではなくデルタボディ構成を有して提供され得る。図示されていないが、
図12に示されている例によれば、
図13のものと同様のフリップフロップベースの回路が、デルタボディ構成および複数のテールの両方を有して、提供され得る。
【0059】
上記のボディ-テールトポロジは、
図14~
図16に示されているものなど、新しい組み合わせ論理ゲート回路を生み出すように適合され得る。プリミティブゲートについても、
図17~
図19を参照して説明する。
【0060】
一例として、
図14は、回路1400の左側および右側に2つのAND関数を行うに配置された2つのテール構造から成るマルチプレクサ回路1400を示し、
図14の右上にある回路1400のパルス発生器部分は、逆の機能を提供する。セレクタ入力Sのアサーションでは、入力Bで提供された信号を出力Oに送信する一方、セレクタ入力Sのアサーション解除(または非アサーション)では、入力Aで提供された信号を出力Oに送信する。非対称マルチプレクサ回路1400は、2つの論理半片、左側にAND半片、右側にA-NOT-B半片として編成される。セレクタ入力Sは、ジョセフソン接合J2から右パスと左パスとに分け、エスケープジョセフソン接合J3を介して反転して、右パスのジョセフソン接合J4Aに行くか、または反転せずに左パスのジョセフソン接合J4Bに行くかのいずれかである。
【0061】
ACバイアス源1402からACバイアスが与えられるパルス発生器ジョセフソン接合JP1およびJP2は、エスケープジョセフソン接合J3での反転プロセスを助ける。パルス発生器のジョセフソン接合JP1とJP2とは、クロック周期ごとに正にかつ逆に自発的にトリガするようにバイアスがかけられている。セレクタ入力Sが正のSFQパルスで「高」にアサートされると、ジョセフソン接合J2がトリガされ、バイアス電流を左右両方のパスへ分ける。このバイアス電流は、ジョセフソン接合JP1およびJP2を介したクロックパルス電流と組み合わされて、エスケープジョセフソン接合J3をトリガし、そうでなければ入力Aに印加されたSFQパルスが左に伝搬して、出力Oを通って出ることを可能にしてしまう、ジョセフソン接合J4Aへの臨界前バイアス電流の供給をなくす。ジョセフソン接合JP1およびJP2とACバイアス源1402から形成された回路1402のパルス発生器部分は、エスケープジョセフソン接合J3と組み合わされて、マルチプレクサ機能を提供するためにセレクタ信号のNOT-S反転を事実上行う。回路1400の左側では、セレクタ入力Sがアサートされると、ジョセフソン接合J2からのバイアス電流がジョセフソン接合J4Bに臨界前バイアス電流を印加し、それにより、入力Bに印加されたSFQパルスがジョセフソン接合J4Bをトリガすることを可能にし、今度はジョセフソン接合J4Bがジョセフソン接合J5Bをトリガし、B入力パルスを出力から送信する。
【0062】
入力Aを出力O用のソースとして選択するために、セレクタ入力Sがアサートされていない(「低」)場合、ジョセフソン接合J2はトリガされず、そのため、回路の左側では、出力Oへ向かって右へ伝搬するために、入力Bでパルスが与えられるようにするのに必要なバイアス電流がジョセフソン接合J4Bから奪われ、回路の右側では、上右のパルス発生器がジョセフソン接合J4Aにバイアスを与え、入力Aで導入されたパルスが出力Oに伝搬される。プリミティブANDゲートおよびインバータゲートから作られたRQLマルチプレクサ回路とは対照的に、回路1400は、構成要素の節約、したがって、回路密度および費用を大幅に改善する。
【0063】
別の例として、
図15は、
図14のマルチプレクサ1400で示されるものと同様に、出力が論理的に一緒に論理和される2つのANDプリミティブゲート(
図17に示される)の組み合わせとして提供されるAND-ORゲート回路1500を示す。
図13の回路1400のように、セレクタ入力Sを有する代わりに、AND-ORゲート回路1500は、論理関数O=(A AND D)OR(B AND C)を提供するために、上部に入力Cおよび入力Dの2つの入力を有する。入力CまたはDのいずれにおいても反転は必要ないので、回路は、マルチプレクサ回路1400に見られるパルス発生器部分を含まない。入力Cを正のSFQパルスでアサートして、その入力「高」を送信すると、入力Bで提供されたパルスが出力Oに伝搬されるのを可能にする。同様に、入力Dを正のSFQパルスでアサートしてその入力「高」を送信すると、入力Aで提供されたパルスが出力Oに伝搬されるのを可能にする。
【0064】
さらに別の例として、
図16は、マルチプレクサ回路1400からの出力Oが、代わりに、データ入力DIとしてデマルチプレクサ回路1600に配置され、回路1400からの入力A、Bが、デマルチプレクサ回路1600に、それぞれ、出力OA、OBとして配置されるような、
図14のマルチプレクサ1400と構造が類似しているが、データパスの方向が逆になっているデマルチプレクサゲート回路1600を示す。セレクタ入力Sは、回路1400と同じままである。入力DIは、ジョセフソン接合J4AとJ4Bへの2つのパスに分割される。セレクタ入力Sのアサーション値に基づいて、データ入力DIで印加されたSFQパルスは、出力OAまたは出力OBのいずれかに伝搬されるが、両方には伝搬されない。セレクタ入力Sのアサーション(それを「高」で送信する)では、ジョセフソン接合J4Bにバイアスをかけ、ジョセフソン接合J4Aを脱バイアスし、データ入力DIで印加された信号が左に、出力OBに伝搬されるようにする。逆に、セレクト入力Sがアサートされていない(「低」)場合、ジョセフソン接合J4Bにはもうバイアスがかけられていず、出力OBへのデータ入力信号の伝搬を阻止し、データ入力DIで印加された信号が右へ、出力OAに向けられるように、回路1600の右上にあるパルス発生器部分からの電流によりジョセフソン接合J4Aにバイアスをかける。デマルチプレクサ1600は、復号装置での使用の単純さとスケーラビリティを提供する。
【0065】
図17は、本明細書に記載のボディ-テールトポロジに従って、ANDゲート回路1700を提供し、この場合、ボディ段は、単一の入力Bおよび関連するインダクタL1ならびにジョセフソン接合J2に縮小され、ボディ段は、臨界前バイアス電流を、連結インダクタLLを介してテール段ジョセフソン接合J5に供給する。入力Aにおける正のSFQパルスで、その入力をアサートすると、ジョセフソン接合J5がトリガされ、出力Zで「1」の出力を生成し、Z=A AND BのAND論理関数を満たす。
【0066】
図18は、前述のマルチプレクサ回路1400と構造上の類似性を共有するA-NOT-Bゲート回路1800を提供する。回路の右上部分は、ゼロ復帰(RZ)タイハイ信号として、
図18に「PULSE GEN.」として示されるパルス発生器信号を提供する。入力Bで提供されるアサーション信号(「1」)と組み合わせると、パルス発生器信号によって、エスケープジョセフソン接合J3がトリガされ、それによって、そうでなければ入力Aで提供されたSFQパルスが出力Zに伝搬されることを可能にしてしまう、テールジョセフソン接合J5の臨界前バイアス電流が不足する。したがって、入力Bが「高」の場合、入力Aパルスが阻止される。入力Bに「1」がない場合、回路1800は、パルス発生器が必要な臨界前バイアス電流をテールジョセフソン接合J5に提供することを可能にし、それによって入力Aを有効にして、テールジョセフソン接合J5をトリガし、それにより、出力Zで「1」を生成する。
【0067】
図19は、入力Aが、ジョセフソン接合JP1BおよびJP2Bを含む第2のパルス発生器回路部分に置き換えられていることを除いて、
図18のA-NOT-Bゲート1800と構造が類似した、別名NOTゲートとしても知られるインバータ1900を示す。入力Iで提供されるアサーション信号(「1」)と組み合わされると、第1のパルス発生器信号(ジョセフソン接合JP1AおよびJP2AならびにACバイアス源1902を含む第1のパルス発生器回路部分から)は、エスケープジョセフソン接合J3をトリガし、それによって、そうでなければ第2のパルス発生器(ジョセフソン接合JP1BおよびJP2BならびにACバイアス源1904を含む)から提供された第2のパルス発生器SFQパルスが出力Zに伝搬されるのを可能にしてしまう、テールジョセフソン接合J5の臨界前バイアス電流が不足する。したがって、入力Iが「高」の場合、パルスが出力Zから阻止され、入力Iが「低」の場合、パルスが出力Zに伝搬される。したがって、回路1900は、いずれの出力JTLにもあるものに加えて(図示のような)、また他のRQLインバータ設計に含まれ得るような物理的に大きく高効率の変圧器を必要とせずに、7つのジョセフソン接合と9つのインダクタという比較的低い構成要素費用でRQL信号反転を実現する。
【0068】
図20は、ラッチベースのNDRO回路700の成功したテストからのオシロスコープ画面キャプチャ2000を示す。プロット2002の上半分の波形は、IクロックおよびQクロックを示す一方、プロット2004の下半分の波形は、非破壊読み出し出力を示す。オシロスコープ画面キャプチャは、連続するクロック周期における様々な半選択条件および全選択条件下で、Dラッチを論理「0」状態から論理「1」状態に切り替える一連のコマンドに対するNDROメモリセルからの正しい応答を示す。これには、同じ周期内での書き込みと読み取りとの同時演算も含まれる。合計8つの読み取りコマンドがあり、4つは、論理「0」状態を記憶する一方、他の4つは、論理「1」状態を記憶し、その結果、4つの論理「1」出力2006が表示される。示されている画面キャプチャにおいて、一連のコマンドが2006、2008、2010の3回繰り返されている。
【0069】
回路100、700、900、1100、および1200は、RQLレジスタファイルまたはその他のメモリ設計の基礎を形成することができる。特に、回路100、900、および1200のデュアルポート(またはより一般的にはマルチポート)読み取り機能は、このようなマルチポート出力を必要とするCPUおよびキャッシュのレジスタファイルを大幅に単純化する能力を提供する。したがって、これらの回路により、以前に可能であったよりもはるかにコンパクトなレジスタファイルアーキテクチャが可能になる。「レジスタファイル」は、中央処理装置(CPU)内のプロセッサレジスタのハードウェアアレイである。メモリは別として、レジスタファイルは、CPUレイアウトの計算ユニットに非常に近く、多くの方向で読み取る、非常に高速なアクセスと複数のポートを必要とする。回路100、700、900、1100、または1200がこのような回路のアレイのメモリ素子として働く場合、DIは、データ入力として働くことができ、LCLKは、ワードライトイネーブルとして働くことができ、NDROは、ワードリードイネーブルとして働くことができる。ワードライトイネーブル線およびワードリードイネーブル線は、メモリ内のワードのビット長全体にわたり並列に走り得る。これらの信号は、ワード寸法に沿って走り得るライトビット線およびリードビット線に直交して走り得る。したがって、このようなメモリ素子のアレイでは、ワードライトイネーブル線をそれぞれの素子のLCLK入力に接続することができ、ワードリードイネーブル線をそれぞれの素子のNDRO入力に接続することができる一方、ビットライトデータ線をそれぞれの素子のDI入力に接続することができ、ビットリードデータ線をそれぞれの素子のQO出力に接続することができる(
図6、
図7の信号線の名称を使用するため)。
【0070】
したがって、
図21は、メモリ素子または論理素子として配置されたマルチテールNDROゲート2102のアレイ2100の例を示し、これらの各ゲートは、例えば、回路100、900、1200、または上記のマルチテールバージョンの回路1300のいずれにも対応し得る。各ゲート2102は、ボディBおよび複数のテールTを有することができる。リード線は、実線で示され、ライト線は、破線で示されている。ワード線は、細い水平線で示され、ビット線は、太い垂直線で示されている。ワードリードイネーブル線2104は、それぞれが行内のテールTのNDRO入力に接続するより細い実線として表されている。ワードライトイネーブル線2106は、それぞれが行内のボディBのLCLK入力に接続するより細い破線として表されている。ビットリードデータ線2108は、それぞれが列内のテールTのQO出力に接続するより太い実線として表されている。ビットライトデータ線2110は、それぞれが列内のボディBのDI入力に接続するより太い破線として表されている。この特定の画像では、ビット線は、列として定義され、ワード線は、行として定義されているが、この配置は、任意であり、逆にすることもできる。他の接続(例えば、ACクロックまたはグランド用)は、分かりやすくするために
図21から省かれている。アレイ2100は、任意の適切なサイズ(すなわち、任意の個数の列および行を有する)のものであり得、数値が求められた論理関数を出力するのに、メモリとして、または論理アレイ、例えば、プログラマブル論理アレイ(PLA)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として、使用され得る。
図21の図示の例では、2つのワードリードイネーブル線2104がNDROゲート2102の各行に関連付けられ、2つのビットリードデータ線2108がNDROゲート2102の各列に関連付けられているが、このような線の個数は、各NDROゲート2102内のテールの個数に対応し得、したがって2より少ないまたは多い個数であり得る。
【0071】
本明細書に記載の例は、既存の設計よりも高性能で、より高速で、少ないデバイス総数(例えば、ジョセフソン接合およびインダクタの個数が少ない)、および優れた機能性のメモリセル、論理セル、レジスタ、レジスタファイル、メモリアレイ、論理アレイ、論理ゲート、および論理構造を提供する。これらの例は、AND関数、A-NOT-B関数、およびインバータ論理関数に、またマルチプレクサゲート、デマルチプレクサゲート、およびAND-ORゲートなどのゲートに効率的でコンパクトなセルを提供する。これらの例はまた、機能性が向上した(例えば、書き込みと読み取りを同時に行う能力)、リソースが少なくて済む、よりコンパクトなメモリユニットセルにつながる。
【0072】
本明細書に記載のNDRO回路およびその他のゲートは、非常に優れたパラメータの動作マージンを有し、構成要素総数が少なく、他の実装形態に比べ効率および費用の利点を提供する。一例として、他の設計に比べて高効率の変圧器をなくすことにより、本明細書に記載のNDRO回路および他のゲートは、プロセスステップ数および歩留りを設定し、それにより費用を決定する製造プロセスにおいて、いくつかの金属層、例えば、2つの金属層を節約することができる。別の例として、ごくわずかな個数の変圧器を含む変圧器に基づかない直接結合設計を使用しないことにより、本明細書に記載のNDRO回路およびその他のゲートは、デバイス総数の多さおよび大きなインダクタンスを回避する。
【0073】
上で説明したのは、本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で構成要素または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者であれば、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることが分かるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入るこのような変更形態、修正形態、および変形形態のすべてを包含することが意図されている。さらに、本開示または特許請求の範囲で、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(a first)」、もしくは「別の(another)」要素、またはそれらの同等物を挙げている場合、このような要素を1つまたは1つより多く含むと解釈されるべきであり、2つ以上のこのような要素を要求することも除外することもない。本明細書で使用する場合、「含む(includes)」という用語は、限定することなく含むことを意味し、また「含む(including)」という用語も、限定することなく含むことを意味する。「に基づく(based on)」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。