(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ガラス板モジュール
(51)【国際特許分類】
B60J 1/10 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B60J1/10 A
B60J1/10 C
(21)【出願番号】P 2021026974
(22)【出願日】2021-02-24
(62)【分割の表示】P 2017019128の分割
【原出願日】2017-02-03
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 庸鑑
(72)【発明者】
【氏名】中川 樹代美
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-254013(JP,A)
【文献】特開2005-096658(JP,A)
【文献】特開2002-096633(JP,A)
【文献】特開平07-308939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるガラス板モジュールであって、
ガラス板と、
前記ガラス板の周縁に取り付けられる周縁部を有する、樹脂製のウィンドウアセンブリーと、
前記ウィンドウアセンブリーを補強し、前記ガラス板上において、前記周縁部と離間した位置に固定される、少なくとも1つの補強部材と、
前記補強部材に取り付けられ、当該ガラス板モジュールを前記車両に仮止めするための仮止め部材と、
を備え
、
前記周縁部の縁部において、前記補強部材と対向する箇所には、凹部が形成されている、ガラス板モジュール。
【請求項2】
前記凹部は、前記周縁部及び補強部材の成形時に、前記周縁部と前記補強部材とを連結する連結部を取り付けるためのものであり、
前記凹部には、前記連結部が取り外された後の残留片が配置されており、
前記残留片は、前記周縁部の縁部から2mm以下の長さで突出している、請求項
1に記載のガラス板モジュール。
【請求項3】
前記ガラス板において、前記周縁部と補強部材との間の領域が、接着剤により前記車両に固定される、請求項1
または2に記載のガラス板モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けられるガラス板は、車内の密閉性を確保するため、ガラス板の周囲に樹脂製のウィンドウアセンブリーを取り付け、ガラス板モジュールを構成した上で、これを車両に装着する。これにより、車内の密閉性を確保できるとともに、遮音性も高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウィンドウアセンブリーは、樹脂製であるため、密閉性は確保できるものの、剛性が高くないという問題を有していた。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、樹脂製のウィンドウアセンブリーの剛性を高めることができる、ガラス板モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、以下の発明を行うに至った。
【0006】
項1.車両に取り付けられるガラス板モジュールであって、
ガラス板と、
前記ガラス板の周縁に取り付けられる周縁部を有する、樹脂製のウィンドウアセンブリーと、
前記ウィンドウアセンブリーを補強する少なくとも1つの補強部材と、
を備えている、ガラス板モジュール。
【0007】
項2.前記車両に設けられた開閉可能なドアと隣接するように構成され、
前記ウィンドウアセンブリーは、前記周縁部における前記ドアと対向する辺に沿って形成される帯状の遮蔽部をさらに備え、
前記遮蔽部は、前記ドアと対抗する辺から起立し、閉じられた前記ドアの一部と隣接しており、
前記補強部材は、
前記周縁部において、前記遮蔽部を挟んで、前記閉じられたドアとは反対側に設けられており、
前記遮蔽部が、前記閉じられたドアとは反対側へ倒れるのを規制するように構成されている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0008】
項3.前記ドアと前記遮蔽部との間には隙間が形成されている、項2に記載のガラス板モジュール。
【0009】
項4.前記補強部材の前記周縁部からの高さが、前記遮蔽部の前記周縁部からの高さよりも低い、項2または3に記載のガラス板モジュール。
【0010】
項5.前記遮蔽部の厚さは、1~7mmである、項2から4のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0011】
項6.当該ガラス板モジュールは、前記車両の取付凹部に取り付けられており、
前記取付凹部は、前記遮蔽部の少なくとも一部が沿う段差が形成されており、
前記補強部材は、前記周縁部において、前記段差が形成されていない箇所に形成されている、項2から5のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0012】
項7.前記補強部材は、
前記周縁部に形成され、前記補強部材における前記閉じられたドアとは反対側の面に取り付けられた支持部を有している、項2から6のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0013】
項8.前記補強部材は、前記ウィンドウアセンブリーと同一の材料により一体的に形成されている、項2から7のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0014】
項9.前記ウィンドウアセンブリーの周縁部の少なくとも一部に、厚みが4mm以上である厚肉部が設けられており、
前記厚肉部内に前記補強部材が設けられ、
当該補強部材は、前記周縁部を構成する樹脂よりも、熱伝導率が高い材料で形成されている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0015】
項10. 前記周縁部の車外側の面に取り付けられる装飾部材をさらに備え、
前記補強部材は、前記周縁部の車内側の面に取り付けられており、
前記補強部材の少なくとも一部は、前記装飾部材が取り付けられている領域と対応する位置に取り付けられている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0016】
項11.前記補強部材の少なくとも一部は、前記装飾部材が取り付けられていない領域と対応する位置に取り付けられている、項9に記載のガラス板モジュール。
【0017】
項12.前記補強部材は、板状に形成され、厚みが0.3~3mmである、項10または11に記載のガラス板モジュール。
【0018】
項13.前記補強部材は、ステンレスにより形成されている、項9から12のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0019】
項14.前記補強部材は、前記ガラス板上において、前記周縁部と離間した位置に固定され、
前記補強部材に取り付けられ、当該ガラス板モジュールを前記車両に仮止めするための仮止め部材をさらに備えている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0020】
項15.前記周縁部の縁部において、前記補強部材と対向する箇所には、凹部が形成されている、項14に記載のガラス板モジュール。
【0021】
項16.前記凹部は、前記周縁部及び補強部材の成形時に、前記周縁部と前記補強部材とを連結する連結部を取り付けるためのものであり、
前記凹部には、前記連結部が取り外された後の残留片が配置されており、
前記残留片は、前記周縁部の縁部から2mm以下の長さで突出している、項15に記載のガラス板モジュール。
【0022】
項17.前記ガラス板において、前記周縁部と補強部材との間の領域が、接着剤により前記車両に固定される、項13から16のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0023】
項18.車両に取り付けられるガラス板モジュールの製造方法であって、
成形型に、ガラス板と、当該ガラス板の表面に配置される仮止め部材を設置し、前記成形型に樹脂材料を注入することで、前記ガラス板の周縁に取り付けられる周縁部と、前記仮止め部材を前記ガラス板上に固定する補強部材と、前記周縁部と前記補強部材とを連結する連結部と、を有するウィンドウアセンブリーを成形するステップと、
前記成形型から、前記ウィンドウアセンブリーが成形された前記ガラス板及び仮止め部材を取り出すステップと、
前記連結部を取り外すステップと、
を備えており、
前記周縁部の縁部において、前記連結部と連結される箇所には、凹部が形成されており、前記連結部は、前記凹部の内部に連結されている、ガラス板モジュールの製造方法。
【0024】
項19.前記連結部は、幅の大きい第1部位と、前記第1部位よりも幅の狭い第2部位とを備えており、
前記第2部位が、前記凹部に連結されている、項18に記載のガラス板モジュールの製造方法。
【0025】
項20.前記連結部を取り外した後、前記ガラス板において、前記周縁部と補強部材との間の領域を、接着剤により前記車両に固定するステップをさらに備えている、項18または19に記載のガラス板モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るガラス板モジュールによれば、樹脂製のウィンドウアセンブリーの剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられる車両の後部付近の図である。
【
図2】
図1のガラス板モジュールを車体内部から見た平面図である。
【
図3】ガラス板モジュールのA-A線断面図である。
【
図4】射出成形後の
図1のガラス板モジュールの平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るガラス板モジュールの平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る補強部材の斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係る補強部材の斜視図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係るガラス板モジュールの平面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係るガラス板モジュールの平面図である。
【
図14】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す断面図である。
【
図15】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るガラス板モジュールを車両の後部の固定窓に適用した実施形態について説明する。
【0029】
<A.第1実施形態>
本発明に係るガラス板モジュールの第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられる車両の後部付近の図、
図2はガラス板モジュールを車体内部から見た平面図、
図3はガラス板モジュールのA-A線断面図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス板モジュール10は、車体側面の後部ドア5の窓ガラス51に隣接するように配置された固定窓を構成している。より詳細に説明すると、後部ドア5の窓ガラス51は矩形状に形成されており、この窓ガラス51の前側辺、上辺、及び後側辺を囲むように窓用フレーム52が形成されている。そして、窓用フレーム52において、窓ガラス51の後側辺に沿って延びる後柱521が、上記ガラス板モジュール10に隣接している。
【0031】
また、
図3に示すように、車体の側部には、三角形状のガラス板モジュール10が取り付けられる取付凹部81が形成されている。この取付凹部81は、ガラス板モジュール10の形状に合わせて三角形状に形成されており、この取付凹部81の一辺が後部ドア5の後柱521と隣接(接触)している。そして、車体には、この取付凹部81と隣接して、後柱521を含む後部ドア5の後端部分が配置されるドア配置部82が形成されている。ドア配置部82は、取付凹部81よりもさらに車体内部側に窪むように形成されており、取付凹部81とは連接部83を介して連続するように形成されている。これにより、取付凹部81とドア配置部82とは、段を形成するように連結されている。そして、後部ドア5が閉じられた状態、つまり後部ドア5の後柱521がドア配置部82に配置されている状態では、後述するように、後柱521がガラス板モジュール10の周縁部21に接触するようになっている。以下、ガラス板モジュールについて詳細に説明する。
【0032】
<1.ガラス板モジュールの概要>
図2に示すように、このガラス板モジュール10は、ガラス板1と、このガラス板1の周縁に沿って取り付けられたウィンドウアセンブリー2と、ガラス板モジュール10を取付凹部81に仮止めするためのクリップ(仮止め部材)41,42と、を備えている。まず、ガラス板1から説明する。
【0033】
<1-1.ガラス板>
図2に示すように、ガラス板1は、上辺11、前辺12、及び下辺13を輪郭とする三角形状に形成されている。上辺11はやや湾曲しながら、後方にいくにしたがって下方に傾斜するように形成されている。前辺12は、上述した後部ドア5の後柱521と対向するように形成されており、上辺11の前端から後方にいくにしたがって、下方に傾斜するようにほぼ直線状に形成されている。そして、下辺13は、前辺12の下端からやや傾斜しながら、後方にいくにしたがって上方にやや傾斜するように形成されている。
【0034】
ガラス板1としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0035】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
【0036】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0037】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al2O3:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
K2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
B2O3:0~5質量%
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.02~0.03質量%
【0038】
本実施形態に係るガラス板1の厚みは特には限定されないが、2.4~7.0mmとすることが好ましく、2.8~5.0mmとすることがさらに好ましい。
【0039】
また、このガラス板1の周縁には、黒などの濃色のセラミックで形成されたマスク層15が積層されている。このマスク層15は、車内また車外からの視野を遮蔽するものであり、ガラス板1の内面の3つの辺に沿って積層されている。
【0040】
マスク層15は、セラミックなどの種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0041】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0042】
また、マスク層15は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0043】
<1-2.ウィンドウアセンブリー>
ウィンドウアセンブリー2は、ガラス板1と車体との隙間を埋めるものであり、ガラス板1の周縁に沿って形成される周縁部21を有している。上述したように、ガラス板1の周縁にはマスク層15が積層されているが、周縁部21は、マスク層15の幅(ガラス板1の端縁から内側へ向かう長さ)よりも小さい幅で、ガラス板1の周縁に取り付けられている。具体的には、
図3に示すように、ガラス板1の周縁を挟むように、断面において、ガラス板1の内面に沿う帯状の内側部位211、ガラス板1の外面に沿う帯状の外側部位212、及びこれら内側部位211及び外側部位212を連結するように、ガラス板1の端面に沿って延びる連結部位213を有し、全体としてU字型の断面形状を有している。なお、内側部位211は、マスク層15上に配置されている。
【0044】
この周縁部21の厚さ、つまり、ガラス板1の厚み方向の厚さDは、3mm~30mmとすることが好ましく、3mm~15mmであることがさらに好ましい。
【0045】
また、ガラス板モジュール10が車体に取り付けられたとき、ガラス板1が取付凹部81の開口の周縁に接着剤79により固定され、開口をガラス板1で覆うようになっている。
【0046】
周縁部21を構成する材料は特には限定されないが、例えば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)により、射出成形などの公知の方法で形成することができる。その他、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)によって形成することができる。
【0047】
<1-3.仮止め用のクリップ>
図2に示すように、ガラス板モジュール10には、車内側を向く面に、2つの固定用のクリップ41,42が取り付けられている。すなわち、ガラス板1の前辺12と上辺11とが交差する角部付近に、第1クリップ41が取り付けられ、上辺11と下辺13とが交差する角部付近に、第2クリップ42が取り付けられている。第1クリップ41の基端部は、周縁部21に埋め込まれている。一方、第2クリップ42は、周縁部21と同じ材料で形成された補強部材6を介して、ガラス板1に固定されている。この補強部材6は、周縁部21の内周縁から離れたガラス板1上のマスク層15にプライマー等の接着剤を介して固定されている。
【0048】
各クリップ41,42は、スナップ式のクリップであり、車体に形成された取付孔(図示省略)に嵌め込まれるようになっている。
【0049】
ところで、第2クリップ42をガラス板1に固定する補強部材6は、周縁部21の内周縁から離れているため、ウィンドウアセンブリー2を射出成形により成形する場合には、補強部材6と周縁部21とを連結する連結部を成形し、成形後にこの連結部を取り外している。以下、この点について、
図4~
図6を参照しつつ、詳細に説明する。
図4は射出成形後のガラス板モジュールの平面図、
図5は
図4の一部拡大図、
図6は
図4のB-B線断面図である。
【0050】
ウィンドウアセンブリー2の射出成形は、次のように行われる。すなわち、成形型(図示省略)のキャビティにガラス板1、クリップ41,42を配置し、ゲートから樹脂材料を注入する。そして、ウィンドウアセンブリーが射出成形された直後には、
図4に示すように、補強部材6と周縁部21とは、連結部25により連結されている。このような連結部25を成形するため、成形型には、周縁部21を成形する第1キャビティと、補強部材6を成形する第2キャビティとの間に、連結部25を成形する第3キャビティが設けられている。これにより、ゲートから注入される樹脂材料は、第1キャビティから、第3キャビティを介して第2キャビティに供給されるようになっている。その結果、周縁部21から離れた位置で補強部材6が成形される。
【0051】
図5に示すように、連結部25は、棒状に形成された連結部本体251と、連結部本体251の周縁部21側の端部に連結される第1連結片252と、連結部本体251の補強部材6側の端部に連結される第2連結片253と、を備えている。第1連結片252及び第2連結片253は、連結部本体251よりも幅及び高さが小さくなっている。
【0052】
そして、周縁部21において、第1連結片252と連結される箇所には、凹部215が形成されており、この凹部215の内部に、第1連結片252が接続されている。連結部本体251は、この凹部215から、周縁部21に対して直交するように延びており、連結部本体251の側面と補強部材6とが第2連結片253により連結されている。上記のように、連結部25を取り外すには、幅の小さい第1連結片252及び第2連結片253を、それぞれ周縁部21及び補強部材6から切り離し、連結部本体251をガラス板1から剥がす。
【0053】
こうして作製されたガラス板モジュールは、ガラス板1において、周縁部21の内周縁に沿う領域、つまり周縁部21の内周縁と補強部材6との間の領域に接着剤79が塗布され、車体に取り付けられる。このとき、クリップ41,42が、車体の取付孔に嵌め込まれ、ガラス板モジュールは車体に固定される。これにより、接着剤79が乾燥するまでの仮止めの機能を果たす。
【0054】
<2.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)連結部25が、連結部本体251と、その両端部に設けられた幅の小さい第1及び第2連結片252,253とにより形成され、第1連結片252が周縁部21に連結され、第2連結片253が補強部材6に連結されている。そのため、両連結片252,253を切断することで連結部25を取り外すことができる。このとき、幅の狭い両連結片252,253に応力を集中させやすいため、連結部25の取り外しを容易に行うことができる。
【0055】
(2)第1連結片252は、周縁部21の凹部215の内部に連結されているため、第1連結片252を切断したときには、切断箇所、つまり第1連結片252の残留片が周縁部21の内周縁から大きく突出するのを防止することができる。これにより、周縁部21の内周縁と補強部材6との間の領域に接着剤79を塗布して車両に取り付けるとき、残留片が接着剤79の塗布領域に干渉するのを防止することができる。一方、凹部215を設けず、周縁部21の内周縁に直接、第1連結片252を連結すると、これを切断したときには、第1連結片252の残留片が周縁部21の内周縁から大きく突出するおそれがあり、接着剤79の塗布領域と干渉する可能性がある。この観点から、凹部215に残る残留片が周縁部21の内周縁から突出する長さは、2mm以下であることが好ましいが、全く突出しないように凹部215内に配置されることがさらに好ましい。
【0056】
<3.変形例>
連結部25の構成は、特には限定されず、周縁部21と補強部材6とを連結できるような形態であればよい。したがって、棒状以外であってもよく、幅の狭い連結片252,253も必ずしも必要ではない。また、凹部215の形状は特には限定されず、周縁部21の内周縁から凹み、この内部のいずれかの位置で連結部25と連結されていればよい。
【0057】
また、クリップ41,42は本発明に係る仮止め部材の一形態であり、ガラス板モジュールと車体とを仮止めできれば、その構成は特には限定されない。
【0058】
<B.第2実施形態>
次に、本発明に係るガラス板モジュールの第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と相違する点についてのみ説明し、同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図7は第2実施形態に係るガラス板モジュールの平面図、
図8は
図7のC-C線断面図、
図9は
図7のD-D線断面図である。
図7~
図9に示すように、第2実施形態に係るガラス板モジュールは、ガラス板1の前辺12と対応する周縁部21に、車体側へ延びる帯状の遮蔽部214が設けられている。この遮蔽部214は、ドアを開けた状態で、乗員が車内側から車体とガラス板モジュールとの間の空間を見ることがないよう遮蔽するための部材である。より詳細に説明すると、遮蔽部214は、周縁部21と直交するように起立しており、車体の取付凹部81とドア配置部82との段差である連接部83に沿って延びている。その厚みは、例えば、1~7mmとすることができ、そのうちの厚みは、例えば、1.5mm~3mmとすることができる。そして、図示を省略するが、この遮蔽部214に、閉じられた後部ドア5が接触する。なお、遮蔽部
214の厚さとは、遮蔽部
214の周縁部21からの高さの半分の位置での、ガラス板1に沿って延伸する方向に垂直な方向での厚さとすることができる。また、遮蔽部
214の高さについては、後述する。
【0060】
但し、
図9に示すように、ガラス板1の上辺11と前辺12とが交差する角部付近においては、連接部83のような段差が形成されていないため、遮蔽部214に後部ドア5側から力が作用すると、遮蔽部214が倒れやすいという問題がある。特に、ドア5を開けた状態で、乗員がガラス板モジュールの角部付近において遮蔽部214を押圧すると、遮蔽部214が倒れてしまうため、車体の高級感が損なわれ、また、車体とガラス板モジュールとの間の空間が視認されるという問題がある。そこで、本実施形態においては、周縁部21における、上記角部付近に、円柱状の補強部材7を一体的に形成している。この補強部材7は、周縁部21において、遮蔽部214を挟んで後部ドア5側とは反対側で、且つ、遮蔽部214の近傍に配置されている。この補強部材7により、遮蔽部
214が後部ドア5側からの力を受けて倒れたときに、遮蔽部
214を支持することができ、遮蔽部
214が倒れるのを防止することができる。したがって、ウィンドウアセンブリー2の剛性を高めることができ、遮蔽部
214が、段差のない部分だけ変形し、見た目が悪化するのを防止することができる。
【0061】
また、上記のように構成することで、遮蔽部214の厚みが小さくても、遮蔽部214が倒れるのを防止することができる。例えば、遮蔽部の厚みを大きくして、剛性を高めることも考えられるが、このようにすると、樹脂による成形時にヒケが生じ、外観性状が悪化するおそれがある。したがって、上記のように、遮蔽部214から離して補強部材7を設けることには意義がある。さらに、遮蔽部214の厚みが大きくなりすぎると、剛性が大きくなりすぎて、遮蔽部214とドア5とが接触したときに、異音が生じることがある。この観点からも、遮蔽部214を薄くすることには意義がある。
【0062】
また、ヒケや異音を抑制できる程度であれば、例えば、
図10に示すように、遮蔽部
214と補強部材7とを連結する連結部材71を設けることができる。この連結部材71は、遮蔽部
214及び補強部材7と一体形成したものであってもよいし、別部材で構成することもできる。
【0063】
なお、この補強部材7は、種々の形態にすることができる。すなわち、遮蔽部214が倒れるのを防止することができれば、特には限定されず、上述した円柱状以外の多角柱状、ブロック状など種々の形状にすることができる。また、複数の補強部材7を設けることもでき、あるいは周縁部21と一体化せず、別部材で形成することもできる。
【0064】
また、補強部材7の周縁部21からの高さは、特には限定されないが、例えば、1~20mm程度にすることができる。この高さとは、補強部材7の根元近傍の平面から垂直方向に、補強部材21の最も遠い点までの距離である。また、この高さの定義は、遮蔽部
214についても同じであり、遮蔽部
214の根元近傍の平面から垂直方向に、遮蔽部
214の最も遠い点までの距離である。但し、補強部材7の高さを遮蔽部
214よりも低くすれば、ドア側から補強部材7が見えるのを防止することができる。さらに、
図11に示すように、補強部材7において、遮蔽部
214とは反対側の面に側面視三角形状の支持部72を設けることができる。この支持部72によって、補強部材7が支持され、遮蔽部
214が倒れて当接したとき、補強部材7が遮蔽部
214とともに倒れるのを防止することができる。但し、支持部72の形状は特には限定されない。
【0065】
遮蔽部214の形状も特には限定されず、全てが同じ高さや厚みでなくてもよい。また、遮蔽部214を設ける箇所も特には限定されず、例えば、いずれかの辺の一部に設けることもできる。また、複数箇所に遮蔽部214を設けてもよい。
【0066】
<C.第3実施形態>
次に、本発明に係るガラス板モジュールの第3実施形態について説明する。以下では、第1及び第2実施形態と相違する点についてのみ説明し、同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図12は第3実施形態に係るガラス板モジュールの平面図である。同図に示すように、本実施形態に係るガラス板モジュールでは、周縁部における車外側の外側部位212に、板状の補強部材29が埋め込まれている。この補強部材29は、周縁部21を形成する材料よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。例えば、ステンレス、アルミ、鉄、銅などの金属で形成することができる。なお、この補強部材29は、防錆性が必要なため、錆が生じる可能性のある材料は使用しないことが好ましい。但し、錆の生じる可能性のある材料に対しては、防錆用のコーティングを施した上で、使用することができる。
【0068】
これにより、次の効果を得ることができる。まず、補強部材29により、ウィンドウアセンブリー2の剛性を高めることができる。また、周縁部21は、剛性を保つため、比較的厚みが大きいが、これによって、射出成形時を行ったときには、冷却に時間を要することがある。また、厚みが大きいため、樹脂の流動性不良や、冷却時にヒケが形成されるおそれがある。そこで、上記のような補強部材29を周縁部21に埋め込んでおくと、周縁部21の剛性を向上することができるとともに、冷却時間も短縮することができる。すなわち、補強部材29の熱伝導率が高いため、補強部材29によって、周縁部21の樹脂の冷却を促進することができる。また、周縁部21を構成する樹脂量が減少するため、冷却が早くなり、またヒケの発生も防止することができる。
【0069】
補強部材29の構成は、特には限定されず、周縁部21のいずれの位置に配置することもできる。但し、上記の効果を考慮し、周縁部21の外側部位212における肉厚の大きい厚肉部に埋め込むことが好ましい。厚肉部の厚みEは、例えば、4~20mmとすることができる。但し、厚肉部は、外側部位212だけではなく、内側部位211や連結部位213にも設けることができる。また、補強部材29の形状も特には限定されず、周縁部21に埋め込むことができるよう、板状であることが好ましいが、棒状など、種々の形状にすることができる。
【0070】
<D.第4実施形態>
次に、本発明に係るガラス板モジュールの第4実施形態について説明する。以下では、第1~第3実施形態と相違する点についてのみ説明し、同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図13は、本実施形態に係るガラス板モジュールを車内側から見た平面図である。同図に示すように、このガラス板モジュールには、車外側面において、周縁部21の下辺13に沿って装飾プレート91が取り付けられている。この装飾プレート91を構成する材料は特には限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属、樹脂材料などで形成することができる。そして、この装飾プレート91は、例えばインサート成形により、周縁部21に取り付けられる。
【0072】
一方、周縁部21における車内側の面には、上辺と下辺との交差部分である角部付近に、板状の補強部材92が取り付けられている。この補強部材92は、周縁部21の角部を補強するためのものであるが、周縁部21において、主として装飾プレート91が取り付けられていない部分と対応する車内側の面を覆うように取り付けられている。但し、補強部材92の固定は、装飾プレート91が取り付けられている部分と対応する車内側の箇所93に、行われている。この固定は、接着剤、又は補強部材92の周縁を周縁部21の樹脂で覆う、いわゆるアンダーロックなどにより行われる。なお、アンダーロックには他の
形態もあり、例えば、補強部材92に貫通孔を形成し、この貫通孔を周縁部21と一体となった樹脂を通過させ、貫通孔よりも径の大きい樹脂製の抜け止めを形成した態様にすることもできる。
【0073】
以上の構成により、次の効果を得ることができる。すなわち、補強部材92により、周縁部21の角部付近の剛性を高めることができる。また、このような補強部材92は、接着剤により周縁部21に固定されることも考えられるが、このようにすると、樹脂製の周縁部21において、補強部材92が接着されている部分と接着されていない部分との間で、収縮量の差が生じ、周縁部21の車外側の面にヒケなどが生じ、外観性状が悪化するおそれがある。これに対して、本実施形態のように、補強部材92を、装飾プレート91が配置されている箇所とは反対側の箇所93に固定すると、例えば周縁部21にヒケなどが生じても、装飾プレート91によって隠すことができ、外観性状を保つことができる。
【0074】
なお、補強部材92の形状は特には限定されず、周縁部21のいずれの位置に取り付けられてもよい。例えば、上記の箇所に加え、補強部材92の少なくとも一部は、装飾プレート91が取り付けられていない領域と対応する位置に取り付けることもできる。また、複数の補強部材を設けることもできる。同様に、装飾プレートの形状、位置も特には限定されず、板状以外の装飾部材であってもよい。
【0075】
<E.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は適宜組合せが可能である。
【0076】
<1>
上記第1~第4実施形態の構成は、適宜組み合わせることができる。すなわち、第1~第4実施形態で示した構成を1以上用いてガラス板モジュールを構成することができる。
【0077】
<2>
ガラス板1の形状は特には限定されず、上記のような三角形状以外でも多角形状、円形など、種々の形状にすることができる。ウィンドウアセンブリー2は、そのようなガラス板1の周縁に配置される。そして、ウィンドウアセンブリー2の一部に、ドアと接触するモールを別途設けることもできる。
【0078】
<3>
周縁部21の形態は特には限定されず、ガラス板1の周縁に取り付けられていればよい。したがって、上述した内側部位211、外側部位212、及び連結部位213の少なくとも1つで周縁部が構成されていればよい。例えば、内側部位211と連結部位213とによって周縁部21を形成することもできる。
【0079】
<4>
上記実施形態では、ガラス板モジュールがドア5に直接接触することで両者が隣接した態様を示したが、
図14に示すように、両者の間に隙間が形成されていてもよい。また、隙間が形成される場合には、例えば、
図15に示すように、ドア5の端部に樹脂などで形成された帯状のリップ60を取り付け、このリップ60がガラス板モジュールのウィンドウアセンブリー2の周縁部21や遮蔽部215等に接触するように構成することもできる。
【0080】
<5>
上記各実施形態では、ガラス板モジュールを後部ドアの後方に配置し、ウィンドウアセンブリー2の一部が後部ドアの後柱と接触するようにしているが、これに限定されない。すなわち、本発明に係るガラス板モジュールは適用箇所は特には限定されない。
【符号の説明】
【0081】
1 ガラス板
2 ウィンドウアッセンブリー
21 周縁部
29 補強部材
41,42 クリップ(仮止め部材)
6 補強部材
7 補強部材
91 装飾プレート(装飾部材)
92 補強部材