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特許7111869機首方位測定システムにおけるセンサ測定の欠如を補償するシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】機首方位測定システムにおけるセンサ測定の欠如を補償するシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/02 20060101AFI20220726BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20220726BHJP
   G01C 21/06 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01P21/02
B64D45/00 A
G01C21/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021112298
(22)【出願日】2021-07-06
(62)【分割の表示】P 2017182669の分割
【原出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2021179438
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】15/281,015
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503295378
【氏名又は名称】イノベイティブ・ソリューションズ・アンド・サポート・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】シャーラム アスカーポアー
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6910258(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0217852(US,A1)
【文献】特許第5754732(JP,B2)
【文献】特許第4782111(JP,B2)
【文献】特許第5371432(JP,B2)
【文献】特許第4438225(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
B64D45
G01C21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物における姿勢方位測定システムのセンサ測定のロスを補償するシステムであって、
メモリーと、
前記メモリーに結合された、温度センサ、静圧センサ及び動圧センサの少なくとも1つと、
前記少なくとも1つのセンサと前記メモリーに結合されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
センサ測定が乗物の真の対気速度を算出するために別の方法で使用される場合に少なくとも1つのセンサのセンサ測定ロスを検出し、
乗物による旋回を検出し、
その旋回の検出に応じて第1の乗物バンク角を算出し、
第1の乗物バンク角を用いて乗物の真の対気速度を推定し、
乗物の推定された真の対気速度を用いてロスの生じたセンサ測定値を推定し、
乗物の真の対気速度又はロスの生じたセンサ測定の推定を用いて第2の乗物バンク角を推定し、
推定された第2の乗物バンク角を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサ測定基準を向上させるように構成されたシステム。
【請求項2】
センサ測定が乗物の速度を算出するために別の方法で使用される場合に、
乗物における機首方位測定システムのセンサ測定の欠如を補償する方法であって、
乗物による旋回を検出し、
その旋回の検出に応じて第1の乗物バンク角を算出し、
第1の乗物バンク角を用いて乗物の速度を推定し、
乗物の推定された速度を用いてセンサ測定値を推定すること、
を含む方法。
【請求項3】
センサ測定が、温度、静圧、又は動圧である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
センサ測定が、静圧に対する動圧の比である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の乗物バンク角が、ジャイロスコープの測定のバイアス・ドリフトの原因を示すジャイロスコープの測定値の短時間枠積分を用いて算出される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
乗物の推定速度が、センサ測定値の推定前に純化される請求項2に記載の方法。
【請求項7】
乗物の推定速度が、ジャイロ・バイアスのドリフトレートより低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタを用いて純化される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
乗物の推定速度が、カルマンフィルタを用いて純化される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
センサ測定の推定が、ジャイロ・バイアスのドリフトレートより低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタを用いて純化される請求項2に記載の方法。
【請求項10】
センサ測定の推定が、カルマンフィルタを用いて純化される請求項2に記載の方法。
【請求項11】
乗物の推定速度、又はセンサ測定値の推定を用いて第2の乗物バンク角を推定し、
推定された第2の乗物バンク角を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサの測定基準を向上させることをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項12】
乗物における姿勢方位基準システムの温度センサの測定ロスを補償する方法であって、
温度測定が乗物の真の対気速度を算出するために別の方法で使用される場合に温度センサの測定ロスを検出し、
乗物による旋回を検出し、
その旋回の検出に応じて第1の乗物バンク角を算出し、
第1の乗物バンク角を用いて第1の静的空気温度を推定し、
第1の乗物バンク角に独立して第2の静大気温度を推定し、
第1及び第2の静大気温度を用いて調整済みの静大気温度を計算し、
調整済みの静大気温度を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサの測定基準を向上させること、
を含む方法。
【請求項13】
調整済みの静大気温度を計算することが、
第1及び第2の静大気温度間の温度誤差の推定を算出し、
前記温度誤差の推定を、引き続いて算出される静大気温度に加算して調整済みの静大気温度を算出すること、をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2の静大気温度及び引き続いて算出される静大気温度が、標準の基準を用いて算出される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度誤差の推定値が、乗物の位置における時間又は変化の推移に基づいて減衰する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記温度誤差の推定が、ジャイロ・バイアスのドリフトレートより低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタを用いて純化される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記温度誤差の推定が、カルマンフィルタを用いて純化される請求項13に記載の方法。
【請求項18】
調整済みの静大気温度を計算することが、
第1加重値を用いて第1静大気温度に重み付けし、
第2加重値を用いて第2静大気温度に重み付けし、
重み付けされた第1及び第2静大気温度を加算して、調整済み静大気温度を算出すること、
をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第1又は第2加重値のいずれかが、時間の推移又は乗物の位置の変化に基づいて減衰する請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機又は船舶における姿勢方位測定システムのような、乗物の方位測定システムで用いられるセンサ測定の欠如やロスを補償するシステムと方法に関する。特に、1つ以上の故障したセンサによってもたらされる測定(例えば、温度や圧力)の欠如を補償することによって、姿勢方位測定システムによって与えられる測定を調整するためのシステムと方法が開示されている。
【背景技術】
【0002】
今日の乗物は、1つ以上の姿勢方位測定システム(AHRS)を備えることができる。AHRSシステムは、一般的にリアルタイムの方位および方向情報を提供することができる3軸センサシステムと見做すことができる。結果的には、そのようなシステムは、信頼でき、効率的、かつ、正確であることが要求される。航行関連パラメータを算出するために、通常、AHRSシステムは、旋回、正確な加速および磁界強度の感知や計測をそれぞれ行うことができるジャイロコンパス、加速度計および磁力計を備える。
【0003】
一般的に、AHRSを有する航空機ように、姿勢方位基準システムを有する乗物は、ハードウエアおよび/又は環境要素に起因する測定エラーを最小限にするために、周期的に較正されなければならない。そのような較正を行うために、比較の目的に使用できる多くの測定を行う新しい技術が採用される。通常、これらの多くの測定は、静大気温度、静大気圧、可変/動大気圧などのような、変化するものを測定できる乗物プローブ(例えば、センサ)の使用に依存している。しかしながら、多くの例において、必要な乗物プローブは、不調になるか、働かなくなるか、アクセス不能になるか、又は不在になり、所望の測定の収集を妨げることがある。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)をベースとするAHRSは、姿勢方位測定を提供する1つ以上のMEMSをベースとするジャイロスコープによって生み出される測定に依存している。これらのMEMSをベースとするジャイロスコープは、長期間のランダムウォーク(例えば、バイアス)を被る傾向がある。従って、別の独立した測定源が、姿勢方位測定を提供する又は向上させる(augment)ために採用されてもよい。また、これらの独立した姿勢方位測定は、周期的な基準に基づいて、ジャイロのバイアスを修正するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの独立した姿勢方位測定の情報源は、加速度および磁力計を含む。しかしながら、加速度計などのようなセンサは、重力以外の力(例えば、乗物の旋回によって生じる求心力)の影響をうけやすく、付加的な誤差を導入する傾向がある。そのような外力をさらに補償するために、動的なモデル(基準)が用いられる。例えば、飛行システムにおいて、動的なモデルは、釣合った旋回を仮定して次式を採用する。
【0005】
【数1】
ここでθはバンク角、TASは真の対気速度、TRは旋回速度、Kは縮尺係数、gは重力加速度である。また、影響をうけるセンサシステムのモデルは、動的モデルからのバンク角計算によって向上する。例えば、センサ(例えば、加速度計、磁力計)の測定モデルは、動的モデルから算出されたバンク角θによって向上する。
【0006】
動的モデルの式
【0007】
【数2】
から分かるように、真の対気速度(TAS)の測定は、乗物のバイク角θを計算するために必要となる。真の対気速度それ自体は、動圧、静圧および静大気温度の関数であり、次の関係により表される。
【0008】
【数3】
ここで、Tは静大気温度、qcは動圧、Pは静圧である。
【0009】
通常、AHRSは、大気データのコンピュータからの真の対気速度計算に依存している。しかしながら、大気データ姿勢方位基準システム(ADAHRS)において、真の対気速度は、航空機プローブと連結するによって、内部で計算される。各々の場合において、プローブは、動圧、静圧、および静大気圧を測定する。例えば、大部分の大気データコンピュータは、動圧測定用航空機ピトープローブ、静圧測定用静的プローブ、および静大気温度測定用静的気温プローブに結合している。
【0010】
利用できる外部温度プローブがない、又は温度プローブが故障している状況では、デフォルト/標準モデルが温度を推定するために用いられる。例えば、地球の国際標準大気(ISA)温度モデルは、平均海面において20℃の温度が仮定される場合に、現在の高度に基づいて、外部の静大気温度を推定するために使用できる。しかしながら、これは近似を与えることを意味するデフォルトモデルであるので、この推定された温度は、実際の状態を反映できず、それによってTASの計算を不正確にする。
【0011】
センサ(例えば、気温や気圧などのセンサ)は、故障したり、利用不能になったり、あるいは測定を中止したりすることが知られているので、そのような故障や不具合が生じた場合に、これらの測定の改善された推定を提供する必要がある。同様に、圧力プローブのように真の対気速度(TAS)を算出するために使用される同種の又は他のセンサが故障の場合に、真の対気速度の推定を提供する必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、AHRSのような機首方位基準システムを有する乗物におけるセンサ測定の欠如を補償するためのシステムと方法に関する。
なお、この出願の明細書、図面、特許請求の範囲において用いられる用語「測定」、「推定」、「純化」、「向上させる」は、それぞれ英語のmeasurement, estimate, refine,augmentに相当し、「測定」は「測定値」という意味を、「推定」は「見積、概算、評価」という意味を、「純化」は「精製、洗練、改良」という意味を、「向上させる」は「増大する、拡大する」という意味をそれぞれ含む。
【0013】
或る実施形態において、そのシステムと方法は、温度センサの測定ロスを検出するように構成されたプロセッサを使用し、その温度測定は、乗物の真の対気速度を算出し;乗物の旋回を検出し、それに応じて乗物の第1バンク角を算出し;
乗物の第1バンク角を用いて乗物の真の対気速度を推定し;
推定された乗物の真の対気速度を用いてロスの生じた温度測定値を推定し;ロスの生じた温度測定の推定を用いて乗物の第2のバンク角を推定し;
推定された第2のバンク角を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサ測定モデル(基準)を向上させるために使用される。
【0014】
或る実施形態において、そのシステムは、メモリーと、メモリーに結合された温度センサ、静圧センサ、又は動圧センサを備える。或る実施形態において、そのシステムはセンサに結合されたプロセッサを備える。
【0015】
或る実施形態において、そのシステムと方法はセンサ測定の欠如を補償するが、そのシステムと方法は、乗物の速度を算出し、乗物の旋回を検出し、それに応じて乗物の最初のバンク角を算出し、乗物の最初のバンク角を用いて乗物の真の対気速度を推定し、乗物の推定された速度を用いてセンサの測定値を推定するために用いられる。或る実施形態において、そのシステムと方法はさらに、乗物の推定された速度又はセンサ測定値の推定を用いて乗物のバンク角を推定し;推定された乗物のバンク角を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサ測定モデル(基準)を向上させる。
【0016】
或る実施形において、センサ測定は、温度、静圧、又は動圧の測定であってもよい。或る実施形態において、センサ測定は、動圧の静圧に対する比である。或る実施形態において、最初の乗物のバンク角は、ジャイロスコープの測定のバイアス・ドリフトの原因を示すジャイロスコープの測定値の短時間枠積分を用いて算出される。
【0017】
或る実施形態において、推定値は純化されてもよい。或る実施形態において、推定値は、ジャイロ・バイアスのドリフトレートより低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタを用いて純化される。或る実施形態において、推定値はカルマンフィルタを用いて純化される。
【0018】
或る実施形態において、そのシステムと方法は、温度センサの測定ロスを検出するように構成されたプロセッサを使用し、そのシステムと方法では、温度測定は、乗物の真の対気速度を算出し;乗物による旋回を検出し、乗物の旋回を検出して、それに応じて乗物の第1バンク角を算出し、乗物の第1バンク角を用いて第1の静大気温度を推定し、乗物の第1バンク角に独立して第2の静大気温度を推定し、第1および第2の静大気温度を用いて、調整された静大気温度を計算し、調整された静大気温度を用いてジャイロ・バイアスのドリフトレートを補償するためにセンサの測定モデルを向上させるために使用される。
【0019】
或る実施形態では、そのシステムと方法はさらに、第1と第2の静大気温度間の温度誤差の推定を算出し、その温度誤差の推定を、続いて計算される静大気温度に加算し、調整された静的気温を計算する。或る実施形態では、第2の、および続けて計算される静的気温が、標準モデル(例えば、ISAモデル)を用いて算出される。或る実施形態では、温度誤差の推定が、乗物の位置における時間の推移又は変化に基づいて減衰する。或る実施形態では、温度誤差の推定が、ジャイロ・バイアスのドリフトレートより低いカットオフ周波数を有するローパスフィルタを用いて純化される。或る実施形態では、温度誤差の推定がカルマンフィルタを用いて純化される。
【0020】
或る実施形態では、そのシステムと方法はさらに、第1加重値を用いて第1の静大気温度に重み付けをし、第2加重値を用いて第2の静大気温度に重み付けをし、重み付けされた第1および第2の静大気温度を加算して、調整済み静大気温度を算出する。或る実施形態では、第1又は第2加重値が乗物の位置における時間の推移又は変化に基づいて減衰する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、この発明の実施形態による、乗物のバンク角θの推定を得るための工程を示すフローチャートである。
【0022】
図2図2は、この発明の実施形態による、乗物の真の対気速度の推定 (ETAS) を得るための工程を示すフローチャートである。
【0023】
図3図3は、この発明の実施形態による、乗物の真の対気速度の推定(ETAS)を純化するための工程を示すフローチャートである。
【0024】
図4図4は、この発明の実施形態による、乗物の真の対気速度の推定を用いて静的気温の推定(ESAT)を得るための工程を示すフローチャートである。
【0025】
図5図5は、この発明の実施形態による、静大気温度の推定(ESAT)を純化するための工程を示すフローチャートである。
【0026】
図6図6は、この発明の実施形態による、静大気温度の推定(ESAT)を用いて乗物の真の対気速度の推定(ETAS)を得るための工程を示すフローチャートである。
【0027】
図7図7は、この発明の実施形態による、乗物の真の対気速度の推定(ETAS)を用いて乗物のバンク角の推定(Eθ)を得るための工程を示すフローチャートである。
【0028】
図8図8は、この発明の実施形態による、欠如した温度センサ測定を得るための工程を示すフローチャートである。
【0029】
図9図9は、この発明の実施形態による、欠如した圧力センサ測定を得るための工程を示すフローチャートである。
【0030】
図10図10は、この発明の実施形態による、標準モデルに基づく改良された温度誤差の推定を得るための工程を示すフローチャートである
【0031】
図11図11は、この発明の実施形態による、標準モデルに基づいて、改良された温度の推定を計算する工程を示すフローチャートである。
【0032】
図12図12は、この発明の実施形態による、温度誤差の推定(ESTE)を純化する工程を示すフローチャートである。
【0033】
図13図13は、この発明の実施形態によるシステムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
航空機の姿勢方位測定システム、一体形待機ユット又は乗物慣性システムのような姿勢方位システムにおけるセンサ測定のロスを補償するシステムおよび方法が提供される。ここで述べるシステムと方法は、危険な状態にあるセンサ測定を判定し、それに代わって代理機能を果たす技術を提供するが、その技術は、乗物の姿勢方位基準システムによって用いられる。一般的に、これらのセンサ測定は、乗物の進路を正確に認識し、制御し、プロットすることが求められる。プローブの故障、アクセスの欠如又はその他のロスによるセンサ測定の欠如を補償するために、乗物のバンク角の初期の推定が旋回の検出に続いて算出される。乗物のバンク角の初期の推定を用いて、乗物の真の対気速度が決定される。乗物の速度(例えば、真の対気速度)の推定を用いて、ロスを生じたセンサ測定の推定がさらに算出される。提供されるシステムと方法はさらに、推定を純化することができる。例えば、推定は、ローパスフィルタやカルマンフィルタによるロ過によって純化できる。さらに、或る実施形態の詳細が、添付される図面を引用して、以下に説明される。
【0035】
図1は、或るセンサ(例えば、ジャイロスコープ、加速度計、磁力計)によって与えられる測定を用いて乗物のバンク角θの推定を得るための方法1000を示す工程フローチャートである。これらのセンサは、AHRS、ADAHRS、および/又は航空機のような乗物に搭載される慣性測定ユニット(IMU)の一部であってもよい。ステップ1100において、乗物が旋回による方向転換(例えば、共同旋回のような)を始めたことが判定される。旋回が検出は、既知の方法で行うことができる。ある実施形態においては、旋回の検出は、進行角度センサ、操縦桿角度センサ、および/又は同様の機械的位置センサを用いて達成することができる。旋回の検出はまた、運動その他のセンサ(例えば、ジャイロスコープ、加速度計、傾斜計および/又は旋回コーディネータ)の出力を用いても達成することができる。例えば、ジャイロスコープの出力測定はロ過されて(例えば、ローパス、ハイパス、ノッチ、又はバンドパスフィルタでロ過されて)旋回を検出することができる。或る実施形態では、旋回は、そのようなフィルタの出力が旋回を示すしきい値を横切るか、又はその上に留まる時に検出される。他の運動センサの出力が、旋回を検出するために用いられてもよい。さらに、複数の旋回検出技術の出力が、旋回の検出のために総合的に用いられてもよい。旋回はまた、磁力計を用いて乗物の磁気方位における変化を観察することによっても検出できる。
【0036】
ステップ1200において、乗物のバンク角θの初期の推定が算出される。或る実施形態において、乗物のバンク角θは、ステップ1100において検出される全旋回に対して算出される。或る他の実施形態においては、それは、ステップ1100において検出される全旋回よりも少ない旋回に対して算出される。或る実施形態では、乗物のバンク角θの推定は、旋回中に更新される。ある実施形態では、乗物のバンク角θの推定は、連続的に、又は周期的に計算される。上述のように、乗物のバンク角θは、AHRS、ADAHRS又はIMUの一部である
センサからのセンサ測定を用いて算出されてもよい。或る実施形態では、乗物のバンク角θは、1つ以上のジャイロスコープによって与えられる測定を統合することによって算出される。例えば、3つに分離した軸に設けられた3つのジャイロスコープ(例えば、3軸ジャイロスコープ)の測定が用いられてもよい。他のセンサ(加速度計や磁力計)からの測定もまた、乗物のバンク角θを算出するために用いられる。さらに、センサのタイプの組合せもまた、乗物のバンク角θの算出に用いられる。例えば、或る実施形態では、加速度計および/又は磁束計が基準座標システムへのアラインメントの一部として用いられてもよく、複数軸のジャイロスコープ測定が基準座標システムの各軸に適正に分解されることが可能となる。
【0037】
或る実施形態では、乗物のバンク角θは、1つ以上のジャイロスコープからの測定を絶えず積分することによって算出される。或る実施形態では、ジャイロスコープが連続的に又は周期的に積分されて、(例えば、旋回を検出することなしに、及び又は旋回中に)乗物のバンク角θを算出する。或る実施形態では、積分の時間枠(例えば、積分に用いられる最初と最後のサンプル間の時間)が十分に短かく、積分の時間枠をわたるジャイロ・バイアスドリフトが加速レべルに保持される。或る実施形態においては、積分の時間枠は、1つ以上のジャイロスコープの安定性に関する製造者の仕様に基づいて決定される。通常、製造者は、時間当りの度(degree)で測定したジャイロ・ドリフトレートのデータを提供する。或る実施形態では、ジャイロスコープ測定の短時間枠積分は、連続的又は周期的に計算された乗物のバンク角θ(例えば、ジャイロスコープの測定の積分による)を修正又は調整するために用いられる。
【0038】
乗物のバンク角θの算出の一部として、測定サンプルのウインドウ/バッファが用いられてもよい。例えば、旋回が上述のステップ1100において検出されるとき、サンプルバッファは、前旋回の測定サンプルと後旋回の測定サンプルの両方を格納するために用いられる。特に、1つ以上のジャイロスコープからのジャイロスコープ測定を積分して乗物バンク角θを計算するとき、これらのサンプルは、1つ以上のサンプルバッファ内でメモリーに格納されることが可能である。前旋回の測定は、(例えば、バイアス点を見つけるために)ジャイロスコープを較正するために使用される。乗物のバンク角θを算出するために用いるサンプルバッファにおける測定サンプルは、他の機能を達成するために分配されてもよい。例えば、測定サンプルは、上述した旋回検出フィルタによって分配されてもよい。
【0039】
図2は温度プローブが故障したか、又は存在しないときに、真の対気速度のような、乗物の速度の推定(ETAS)を得るための方法2000を示すフローチャートである。ステップ2100において、1つ以上の温度プローブの故障、不正確性又は欠如が検出される。ステップ2200において、他のセンサからのセンサ測定データが収集される。或る実施形態においては、そのようなセンサデータの収集は、温度センサの故障、不正確性又は欠如によって開始される。他の実施形態においては、センサデータは、温度センサの故障や欠如を検出しなくても、収集される。或る実施形態では、収集されたセンサデータは、ジャイロスコープ、加速度計、磁力計、および/又は(静的/動的)圧力の測定を含む。ステップ2300において、ETASが算出される。或る実施形態では、ETASは次の関係式により算出される。
【0040】
【数4】
ここで、θは乗物のバンク角θ、TRは乗物の旋回速度、Kは縮尺係数、gは重力加速度である。乗物のバンク角θは、図1に関して示され説明された方法や他の方法を用いて算出できる。或る実施形態では、ETASは、連続的か、又は周期的に計算される(例えば、旋回を検出することなしに、旋回中に、および/又はプローブの故障を検出することなしに)。乗物の旋回速度TRはどのような既知の方法で与えられてもよい。或る実施形態では、乗物の旋回速度TRは、1つ以上のジャイロスコープセンサによって与えられた測定を用いて計算される。或る実施形態では、乗物の旋回速度TRは、前旋回および後旋回の測定データを含む、1つ以上のセンサの出力測定をロ過することによって推定される。例えば、乗物の旋回速度TRは、ジャイロスコープの測定データをローパスフィルタでロ過することによって算出又は推定される。
【0041】
図3は、ETASの推定を純化するための方法3000を示すフローチャートである。ステップ3100において、1つ以上のETASの推定が受入れられる。或る実施形態では、ETASは、センサ測定を用いて推定できる。例えば、ETASは次の関係式を用いて計算される。
【0042】
【数5】
ここで、ETASはノットで表される乗物の真の対気速度の推定、Tはケルビンで表される静的気温qcは動圧、Pは静圧である。或る実施形態では、ETASの推定は、図2に関して示され説明される方法によって与えられる。ステップ3200において、ステップ3100で受入れられた1つ以上のETASの推定が純化され、ETASの改善された推定になる。或る実施形態では、ETASは、2つ以上のETASの推定をローパスフィルタでロ過することによって、純化される。或る実施形態では、フィルタのカットオフ周波数は、予期されるジャイロ・ドリフトレートよりも低い。或る実施形態では、フィルタのカットオフ周波数は、1つ以上のジャイロスコープの安定性に関する製造者の仕様に基づいて決定されるが、それは通常、時間当たりの度(deg)として製造者によって測定される。或る実施形態では、全てのセンサが正常に作動している間に、1つ以上の純化フィルタのパラメータが、受入れたセンサ値と次式を用いて真の対気速度を繰り返し算出し、温度センサ測定のようなセンサ測定が失われるか、欠如した時に、真の対気速度の推定を与える技術を用いて真の対気速度の1つ以上の推定を計算することによって決定される。
【0043】
【数6】
例えば、そのような真の対気速度の推定(ETAS)は、図2に関して示され説明される方法によって計算できる。或る実施形態では、異なる対気速度の推定間の差又は比が、純化用フィルタのパラメータを計算するために使用される。
【0044】
図4は、ETASの推定を用いて静的気温の推定(ESAT)を算出するための方法4000を示すフローチャートである。ステップ4100において、ETASの推定が受入れられる。或る実施形態では、ETASの推定は、1つ以上のセンサ測定(例えば、温度、圧力)から計算される。或る実施形態では、ETASの推定は、図2に関して示され説明される方法によって提供される。或る実施形態では、ETASの推定は、純化された測定である。例えば、ETASの測定は、図3に関して示され説明される方法によって純化され与えられる。ステップ4200では、静的気温の推定(ESAT)が、受入れたETASの測定を用いて算出される。或る実施形態では、ESATは連続的に、又は周期的に計算される(例えば、旋回を検出することなしに、旋回中に、および/又はプローブの故障を検出することなしに)。或る実施形態では、ESATは次式を用いて算出される。
【0045】
【数7】
計算されると、ESATは温度センサ測定と置換される。例えば、温度センサが故障して静大気温度Tを示す温度センサ測定が利用できないとき、ESATが次式を用いて乗物の真の対気速度の推定を算出するために用いられる。
【0046】
【数8】
【0047】
図5は、ESAT推定を純化するための方法5000を示すフローチャートである。ステップ5100では、1つ以上のESATの推定が受入れられる。或る実施形態では、ESATの推定は、利用可能な温度センサ(例えば、現在/過去の温度センサ測定)によって与えられる測定であってもよい。或る実施形態では、ESATの推定は、図4に関して説明され示された方法によって与えられる。ステップ5200では、ステップ5100で受入れられた1つ以上のESATの推定が純化されて、ESATの改善された推定となる。或る実施形態では、ESATは、2つ以上の受入れたESATの推定をローパスフィルタでロ過することによって純化される。或る実施形態では、フィルタのカットオフ周波数が、上述のように、予期されるジャイロ・ドリフトレートより低い。或る実施形態では、1つ以上のセンサの正常な動作の間に、1つ以上の純化フィルタのパラメータが、1つ以上の受入れられたセンサ測定を繰り返し使用することと、(この例では、実際に破損又は欠如していない)対応する失われたセンサ測定のために1つ以上の推定を計算することによって決定される。例えば、失われた静大気温度測定の推定(ESAT)は、図4に関して示され説明される方法によって計算される。或る実施形態では、実際のセンサ測定と、推定されたセンサ測定との間の差又は比が、純化フィルタのパラメータの計算に用いられる。或る実施形態では、カルマンフィルタがESATの推定を純化するために使用される。カルマンフィルタを更新するために使用されるESAT推定は、カルマンフィルタに供給される前に、予めロ過される。例えば、ESAT推定は、前述のようにローパスフィルタでロ過されてもよい。ESAT推定を受入れている期間に(例えば、検出される旋回と旋回との間に)、カルマンフィルタが熱力学モデルによってESAT推定を推測航法で算出するために用いられる。
【0048】
図6は、乗物の真の対気速度(ETAS)をさらに推定するために、ESAT推定を適用するための方法6000を示すフローチャートである。ステップ6100では、1つ以上のESATの推定が受入れられる。ESATの推定は、すべての既知の方法で与えられる。或る実施形態では、ESATの推定は、図4に関して示され説明された方法によって与えられる。或る実施形態では、ESATの推定は、純化された推定である。例えば、純化されたESATの推定は、図5に関して説明され示された方法により与えられる。ステップ6200では、乗物の真の対気速度の推定ETASは、ステップ6100で与えられた1つ以上のESATの推定を用いて算出される。或る実施形態において、ETASは連続的に又は周期的に計算される(例えば、施回を検出することなしに、施回中に、プローブの故障を検出することなしに)。或る実施形態では、乗物の真の対気速度の推定ETASは、次の関係式を用いて算出される。
【0049】
【数9】
ここで、ETASは、真の対気速度の推定、ESATはケルビン(絶対温度)で表した静的気温の推定、qcは動圧、Pは静圧である。ステップ6300において、乗物の真の対気速度の推定ETASは、センサ(例えば、加速度計、磁力計)の測定モデル(基準)を向上させるために使用される。例えば、乗物の真の対気速度の推定(TASE)は、温度センサ又は他のセンサが、1つ以上の測定を与えることができなかったか、不正確であるか、又は、他に存在しないため、真の対空速度が直接計算できない場合に、使用される。このETASの推定は、さらに乗物のバンク角(Eθ)の推定を算出するために用いられる。
【0050】
図7は、乗物のバンク角(Eθ)をさらに推定するために、ETASの推定を適用する方法7000を示すフローチャートである。ステップ7100において、1つ以上のETASの推定が受入れられる。そのETASの推定は、どのような既知の方法で与えられてもよい。或る実施形態では、ETASの推定は、図2および/又は図6に関して示され説明された方法によって与えられる。或る実施形態では、ETASの推定は、純化された推定である。例えば、純化されたETASの推定は、図3に関して説明され示された方法によって与えられる。ステップ7200において、乗物のバンク角Eθの推定は、ステップ7100において与えられる1つ以上のETASの推定を用いて算出される。或る実施形態では、Eθは連続的又は周期的に計算される(例えば、旋回を検出することなしに、旋回中に、および/又はプローブの故障を検出することなしに)。或る実施形態では、乗物のバンク角Eθの推定は、次の関係式を用いて算出される。
【0051】
【数10】
ここで、Eθは推定の乗物のバンク角、ETASは真の対気速度の推定、TRは旋回速度、Kは縮尺係数、gは重力加速度である。ステップ7300において、乗物のバンク角θの推定は、センサ(例えば、加速度計、磁力計)の測定モデル(基準)を向上させるために用いられる。例えば、乗物のバンク角θの推定は、温度センサ又は他のセンサが1つ以上の測定を与えることができなかったか、不正確であるか、又は他に存在しないため、乗物のバンク角θが直接計算できない場合に、使用される。
【0052】
或る実施形態では、初期のETASの推定が旋回を検出し、次に短時間枠計算を用いて乗物のバンク角θを計算することによって計算される。例えば、図1に関して上述したように、許容可能に短い時間枠にわたって1つ以上のジャイロスコープから受入れられるジャイロスコープ測定は、積分されて初期バンク角θを決定する。或る実施形態では、その短時間枠は、1つ以上のジャイロスコープの安定性に関する製造者の仕様に基づいて決定されるが、それは通常、時間当りの角(deg)を用いて製造者によって測定される。初期の乗物のバンク角が計算されると、初期のETASの推定が計算される。例えば、ETASの推定は、図2又は図6に関して前述したように算出される。検出された旋回に対して初期のETASの推定が計算されると、それもまた純化される。例えば、ETASの推定は図3に関して以前に示して説明したように純化される。ETASのすべての純化に続いて、ETASの推定又は純化されたETASの推定が、上述のように、乗物のバンク角Eθの推定又は喪失した温度センサ測定(静的気温/ESAT)の推定を算出するために用いられる。或る実施形態では、ETASの推定又は純化されたETASの推定は、風速と風向を推定するために用いられる。例えば、風速は、ETASの推定と、GPS又は慣性測定ユニットで測定される対地速度との差を用いて、機首方位と進路の測定に関連して計算される。
【0053】
図8は、欠如した温度センサ測定の推定を計算するための方法8000を示すフローチャートである。ステップ8100において、乗物の旋回が検出される。例えば、乗物の旋回は、図1に関して上述したように検出される。ステップ8200において、乗物のバンク角が決定される。例えば、乗物のバンク角は、図1又は7に関連して上述したように決定される。ステップ8300において、真の対気速度の推定(ETAS)が算出される。例えば、ETASは、図2又は6に関連して上述したように算出される。或る実施形態において、ETASはさらに、図3に関連して上述したように純化される。ステップ8400において、1つ以上のセンサ測定が受入れられる。これらのセンサ測定は、静圧及び/又は動圧の測定を含んでもよい。ステップ8500において、欠如している温度センサ測定の推定(ESAT)は、次式を用いて計算される。
【0054】
【数11】
或る実施形態では、ESATは図4に関連して上述したように算出される。或る実施形態では、欠如した温度センサ測定の推定がさらに純化される。例えば、ESATは、図5に関連して上述した方法により純化される。ステップ8600において、欠如した温度センサ測定の推定は、更なる用途において採用される。例えば、欠如したセンサ測定の推定(ESAT)は、次式を用いて乗物の対気速度をさらに算出するために使用される。
【0055】
【数12】
また、このETASの測定は、図7に関連して上述したように乗物のバンク角を算出するために使用される。他の例では、静的気温の推定(ESAT)は、乗物のバンク角の算出において、Tと置換される。他の例として、ESATは、図10-12に関連して以下に説明するように、標準モデル(例えば、ISAモデル)によって与えられる温度推定を修正するためにも用いられる。
【0056】
ここに述べた方法は、温度センサの測定ロスを補償することと基本的に関連しているが、説明した方法は、他のタイプのセンサが同様に故障したときや、他のセンサ測定の欠如を補償するために、同様に適用可能である。例えば、静圧又は動圧プローブ/センサが故障した場合には、速度の推定(例えば、ETAS)は依然として上述したように算出される。さらに、速度の推定(例えば、ETAS)が算出されると、次式を用いて、対応する失われた変数(例えば、SAT, qc, P)のための方程式を解くことにより、欠如したセンサ(例えば、温度、動圧、又は静圧)の測定の推定を算出することができる。
【0057】
【数13】
従って、温度センサの欠如又は故障において算出された上述の静大気温度の推定ESATは、静圧センサが利用不能であるか又は利用不能になった場合に静圧の推定(EP)と置換され、動圧センサが利用不能であるか又は利用不能になった場合に動圧の推定(Eqc)と置換されることは、当業者に明らかである。或る実施形態では、静圧センサと動圧センサの両方が故障した場合、2つの個別の値としてのqcとPを取り扱う代わりに、これらの2つの測定は、圧力センサ測定の比の推定E(qc/P)を用いた単一の値として処理されるが、E(qc/P)は上記関係式を用いてその解から決定される。
【0058】
図9は、欠如した圧力センサの測定の推定を算出するための方法9000を示すフローチャートである。ステップ9100において、乗物の旋回が検出される。例えば、乗物の旋回は、図1に関連して上述したように検出される。ステップ9200において、乗物のバンク角が決定される。例えば、乗物のバンク角は図1又は7に関連して上述したように決定される。ステップ9300において、真の対気速度の推定(ETAS)が算出される。例えば、ETASは、図2又は6に関連して上述したように算出される。或る実施形態では、ETASはさらに、図3に関連して説明したように純化される。ステップ9400では、1つ以上のセンサ測定が受入れられる。これらのセンサ測定は、温度、静圧、及び/又は動圧の測定を含む。ステップ9500では、欠如した圧力センサ測定の推定が算出される。例えば、静圧センサ測定が欠如したとき、静圧の推定(EP)は次式を用いて算出される。
【0059】
【数14】
他の例として、動圧センサ測定が欠如したとき、動圧の推定(Eqc)は次式を用いて算出される。
【0060】
【数15】
更なる例として、静圧および動圧センサの両方が欠如したとき、静圧に対する動圧の比の推定(Eqc/P)が次式を用いて算出される。
【0061】
【数16】
或る実施形態では、欠如したセンサ測定の推定が、さらに純化される。例えば、欠如した圧力センサ測定の推定は、図5に関連して上述した方法によって純化される。ステップ9600では、欠如した圧力センサ測定の推定は、他の用途に採用される。例えば、欠如した静圧センサ測定の推定は、次式を用いて乗物の対気速度をさらに算出するために用いられる。
【0062】
【数17】
他の例として、欠如した動圧センサ測定の推定は、次式を用いて乗物の対気速度をさらに算出するために使用される。
【0063】
【数18】
更なる例として、静圧センサ測定に対する動圧センサ測定の比の推定E(qc/P)が、次式を用いて乗物の対気速度をさらに算出するために使用される。
【0064】
【数19】
また、このETAS測定は、図7に関連して上述したように、乗物のバンク角を算出するために用いられる。
【0065】
図10は、標準モデル(例えば、ISAモデル)に基づいて、改善された温度推定を算出する方法10000を示すフローチャートである。ステップ10100では、1つ以上の温度測定が、温度センサ(例えば、現在の/最新の温度センサ測定)から受入れられる。ステップ10200では、1つ以上の受入れられた温度測定が純化される。例えば、1つ以上の受入れた温度測定は、その測定をローパスフィルタでロ過することによって純化される。ステップ10300では、静的気温STが算出される。例えば、静的気温STの推定は、標準モデルを用いて算出される。或る実施形態では、標準モデルは、動的モデルから独立した方法で温度を与える。例えば、ISAモデルは、温度を供給するための標準モデルとして用いられる。ステップ10400では、初期温度誤差の推定ESTEが算出される。例えば、ESTEは、標準モデルを用いて算出された温度STと、最近に受入れた温度測定との差として算出されるが、その温度測定は純化された温度測定である。
【0066】
図11は、標準モデル(例えば、ISAモデル)に基づいて、改善された温度推定を計算するための方法11000を示すフローチャートである。ステップ11100では、1つ以上の温度プローブの故障、不正確性、又は欠如が検出される。ステップ11200では、乗物の旋回が検出される。例えば、乗物の旋回は図1に関連して上述したように検出される。ステップ11300では、乗物のバンク角が決定される。例えば、乗物のバンク角は、図1又は図7に関連して上述されたように決定される。ステップ11400では、真の対気速度の推定(ETAS)が算出される。例えば、ETASは図2又は6に関連して上述されたように算出される。或る実施形態において、ETASはさらに、図3に関して上述したように純化される。ステップ11500では、1つ以上のセンサ測定が受入れられる。これらのセンサ測定は、静圧および/又は動圧測定を含む。ステップ11600では、静大気温度STの複数の推定が計算される。
例えば、静大気温度(ST)の第1の推定は、標準モデルを用いて計算される。或る実施形態では、標準モデルが動的モデルと独立した方法で温度を与える。例えば、ISAモデルは、温度を供給する標準モデルとして用いられる。さらに、静大気温度の第2の推定は、受入れられたETAS測定と次式を用いて動的モデルによって計算される。
【0067】
【数20】
ここで、ETASは真の対気速度の推定、qcは動圧、Pは静圧である。或る実施形態では、純化されたETASの推定が用いられる。例えば、ETASは、図3に関して上述したように純化される。ステップ11700では、温度誤差の推定ESTEが計算される。例えば、ESTEは次式を用いて計算される。
ESTE=ST-ESAT
或る実施形態では、ESATは純化された推定である。例えば、ESATは、図5に関連して上述した方法によって純化される。ステップ11800では、標準モデルによって与えられる温度推定は、動的モデルから引き出された推定を用いて更新される。例えば、連続的に算出するために、ISAモデルのような標準モデルによって与えられる温度STは、それに温度誤差の推定ESTEを加えることによって調整されるが、そのESTEは動的モデルを用いて計算される。他の実施形態では、標準モデルによって与えられる温度STは、重み付けされたST(例えば、ISAモデル温度)の推定と、重み付けされたESATの推定とを合計することによって調整される。一般的に、重みは合計すると1になる。或る実施形態では、各推定に付与される重み(例えば、STweight, ESATweight)は、静的に付与される。例えば、各推定は、等しく(0.5)だけ重み付けられる。或る実施形態では、重みは動的に付与される。例えば、検出される旋回に時間的に近いと、ESAT推定に与えられる重みは、(例えば、0.75-1.0)だけ高くなる。時間が過ぎると、ESAT推定に与えられる重みは、零または他の小さい値(例えば、0.0-0.75)まで減衰する。例えば、減衰量はESAT推定の更新間の時間(例えば、検出される旋回間の時間)に基づく。減衰量はまた、乗物の位置(例えば、標高、緯度、経度、又は総走行距離)の変化に基づく。或る実施形態では、時間に基づく減衰と、位置に基づく減衰とが組み合わされる。減衰速度は、指数関数的な、直線的な、又は他の適当な減衰速度である。或る実施形態では、標準モデルによって与えられるST推定へ付与される重みは、(1-ESATweight)として計算される。同様に、STの重みは、時間経過によって減衰する重みとして付与される。この場合、ESAT推定に付与される重みは、(1-STweight)として計算される。重みに対する負の減衰速度(例えば、成長速度)もまた可能である。或る実施形態では、重みの値(例えば、STweight, ESATweight)は、カルマンフィルタによって与えられる推定または確実性のレベルに基づく。
【0068】
図12は、ESTE推定を純化する方法12000を示すフローチャートである。ステップ12100では、1つ以上のESTE推定が受入れられる。或る実施形態では、ESTE推定は、図10に関して示される方法によって与えられるESTEの初期の推定である。或る実施形態では、ESTE推定は、図11に関連して示される方法によって与えられるESTEの推定である。ステップ12200では、ステップ12100で受入れられた1つ以上のESTEが純化されて、ESTEの改善された推定になる。或る実施形態では、ESTEは、2つ以上の受入れられたESTE推定をローパスフィルタでロ過することによって純化される。或る実施形態では、フィルタのカットオフ周波数は、予期されるジャイロ・ドリフトレートより低い。或る実施形態では、カルマンフィルタが、ESTEの推定を純化するために用いられる。カルマンフィルタを更新するために用いられる、受入れられたESTE推定は、カルマンフィルタに供給される前に予めロ過されてもよい。例えば、ESTE推定は、前述のようにローパスフィルタでロ過される。受入れるESTE推定間の期間に、カルマンフィルタは、ESTE推定を熱力学的モデルによって推測航法で算出するために用いられる。或る実施形態では、ESTEはESTE推定を零まで減衰させることによって純化される。例えば、その減衰量は、ESTE推定の更新間の時間(例えば、検出される旋回間の時間)に基づく。減衰の量もまた、乗物の位置(例えば、標高、緯度、経度、又は総走行距離)の変化に基づく。或る実施形態では、時間に基づく減衰と、位置に基づく減衰とが組み合わされる。減衰速度は、指数関数的な、直線的な、又は他の適当な減衰速度である。負の減衰速度(例えば、成長速度)も可能である。
【0069】
図13は、開示された主題の実施形態による代表的な機首方位測定システム13000を示すブロック図である。機首方位測定システム13000は、航空機、船舶、その他の乗物に組み込まれる。システム13000は、AHRS、ADAHRS又は一体化された代替物である。機首方位基準システム13000は、図1-12に示された方法を、個別に、又は、機首方位測定システム13000を備える乗物の他の構成部分と共同して実行するように構成されている。
【0070】
図13に示すように、機首方位測定システム13000は、慣性測定ユニット13100を備え、ユニット13100は、ジャイロスコープ13110、磁力計13120、加速度計13130を備える。機首方位基準システム13000はまた、付加的な環境センサ備えるが、その環境センサは温度プローブ13210、静圧プローブ13220、および動圧プローブ13230を含む。或る実施形態では、環境センサは、環境センサユニット13200を備える。上述の方法は、慣性センサと環境センサの両方を共同して利用するが、それらのセンサは、ジャイロスコープ13110、磁力計13120、加速度計13130、温度プローブ13120、静圧プローブ13220、動圧プローブ13230を含む。
【0071】
説明したように、機首方位測定システム13000はまた、ディスプレイ13300を備える。ディスプレイ13300は、1つ以上の液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、および/又は、他の適当な表示部品を備える。
【0072】
さらに、機首方位測定システム13000は、プロセッサ13400とメモリー13500を備え、それらは、外部配置モジュール13600からの入力を受け入れて格納する。その入力は、例えば、上述した理論値や特性及び/又は予め較正された値のような追加のパラメータの手動入力を含む。また、その入力は、慣性測定ユニット13100の構成要素のいずれか又は全て、又はセンサそれ自体(例えば、磁力計、加速度計及び/又はジャイロスコープの測定であるが、A/Dコンバータのサンプルの形であってもよい)からの入力であり、また、環境センサユニット13200の構成要素のいずれか又は全て、又は環境センサそれ自体(例えば、温度、静圧、及び/又は動圧の測定であるが、A/Dコンバータのサンプルの形であってもよい)からの入力である。或る実施形態では、システム13000は、付加的運行情報(例えば、乗物の進路)を提供するGPSや他の運行センサを備える。
【0073】
或る実施形態では、システム13000はさらに、1つ以上の固定の物理的記憶素子(図示しない)を備える。その素子は、内部および外部入力に関連する全てのデータを含むがそれに限定されない、機首方位測定システム13000に関連する全てのデータを格納することができる。その記憶素子はさらに、図1-12を参照して上述したすべての活動を含む機首方位システム(又は関連する構成要素)を調整することを含む上記活動のすべてに関連するコンピュータプログラムの指令を格納する。プロセッサ13400は、その記憶素子と通信して、格納されたデータの全てにアクセスし、格納された指令を実行する。
【0074】
特定の実施形態に適用されるこの発明の種々の新しい特徴を説明してきたが、説明したシステムと方法の形態および細部における種々の省略、置換、変更は、この発明の精神から離れることなく、当業者によってなし得ることは、理解されるところである。当業者であれば、上記の記載およびこの発明の教示を理解することによって、ここに与えられ組み込まれた全体的な構造と機能性は、この発明の異なる実施形態において変化し得ることを認識するであろう。従って、図1-13に示される特定のシステムと方法は、それらのシステムと方法を示す実施形態において認識されるように、この発明の特定の実施形態の種々の観点と機能性を十分に、かつ、完全に理解し認識することを助けるために示されている。当業者であれば、この発明は、限定の目的でなく説明の目的で提供された上述の実施形態以外でも実施可能であり、かつ、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0075】
13000 機首方位測定システム
13100 慣性測定ユニット
13110 ジャイロスコープ
13120 磁力計
13130 加速度計
13200 環境センサユニット
13210 温度プローブ
13220 静圧プローブ
13230 動圧プローブ
13300 ディスプレイ
13400 プロセッサ
13500 メモリー
13600 外部配置モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13