IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本除蟲菊株式会社の特許一覧

特許7111877害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20220726BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20220726BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20220726BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N53/08 110
A01N53/08 125
A01P7/02
A01M7/00 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021172809
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2022071842
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020180486
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021071752
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】原田 悠耶
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋子
(72)【発明者】
【氏名】香谷 康幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104830(JP,A)
【文献】特開2016-153380(JP,A)
【文献】特開2008-303253(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121931(WO,A1)
【文献】特開2021-038212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/06
A01N 53/08
A01P 7/02
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫、ダニ防除用エアゾールであって、
耐圧容器に、
ペルメトリン、シフルトリン、フェノトリン、及びシフェノトリンからなる群から選択される一つの害虫、ダニ防除成分(a)、及び沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤(b)からなるエアゾール原液(L)と、
噴射剤(G)と、
が封入されてなり、
前記噴射剤(G)と前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が、4.5~50に設定されており、
前記定量噴霧用エアゾールバルブから噴霧される噴霧粒子は、25℃、噴射距離50cmにおける体積平均粒子径(Dv50)が、15~40μmに設定されている害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項2】
前記エアゾール原液(L)と前記噴射剤(G)との容量比率(L/G)が、0.05~1に設定されている請求項1に記載の害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項3】
前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)は、ノルマルパラフィン及び/又はイソパラフィンを含む請求項1又は2に記載の害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項4】
前記ノルマルパラフィンは、ノルマルトリデカンである請求項3に記載の害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項5】
前記イソパラフィンは、イソドデカンである請求項3又は4に記載の害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項6】
屋内空間に一定量空間噴霧する定量噴射型エアゾールとして構成され、前記屋内空間の容積は18.8~33.3mである請求項1~5の何れか一項に記載の害虫、ダニ防除用エアゾール。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の害虫、ダニ防除用エアゾールを用いた害虫、ダニ防除方法であって、
屋内空間に一定量空間噴霧することにより、当該屋内空間を防除処理する処理工程を実施する害虫、ダニ防除方法。
【請求項8】
前記処理工程において、前記定量噴霧用エアゾールバルブを複数回押すことにより、前記害虫、ダニ防除用エアゾールを空間噴霧する請求項7に記載の害虫、ダニ防除方法。
【請求項9】
前記処理工程において、前記エアゾール原液(L)及び前記噴射剤(G)を合計0.1~3.6mL空間噴霧する請求項7又は8に記載の害虫、ダニ防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫、ダニ防除用エアゾール、及び当該害虫、ダニ防除用エアゾールを用いた害虫、ダニ防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床面や壁を徘徊するゴキブリ等の匍匐害虫や屋内塵性ダニ類を対象とし、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類が生息する場所や通り道に施用するタイプの殺虫剤としては、(1)燻煙剤、(2)全量噴射型エアゾール、(3)塗布型エアゾール、及び(4)ベイト剤が代表的で、それぞれ剤型上の特長を有している。
【0003】
(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールは、薬剤を一気に室内の隅々まで放散し、所定時間室内を密閉して薬剤濃度を高める方式であり、その間、人が入室できないことから、医薬品の範疇に入るものである。これらの製剤は、放散された薬剤によって、処理空間全体において匍匐害虫に対して高い駆除効果を奏する、いわゆる空間処理であることが特長である。しかしながら、これらの製剤を使用するにあたっては、処理前に電気器具類や食器類を養生し、また処理後には噴射沈降物の清掃作業が必要となるなどの手間を要し、さらに薬剤の安全性に格別留意する必要があることなどから、手軽に頻繁に採用し得る剤型とは言い難い。
【0004】
一方、局所的に面処理する(3)塗布型エアゾールや、点処理の(4)ベイト剤は、人体に対する作用が緩和な医薬部外品に該当し、(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールに比べると使い易いが、空間処理ではないため薬剤と匍匐害虫又は屋内塵性ダニ類との接触効率が劣り、必ずしも効率的な駆除方法を提供できるものでもない。
【0005】
空間処理剤であって、ゴキブリやトコジラミのような匍匐害虫又は屋内塵性ダニ類を対象とする医薬部外品を開発するには、特に有効性と安全性に関して厳しい審査を経て薬事登録を取得する必要があり、そのハードルは高い。従って、薬事登録を要しない範疇の製品は別として、医薬部外品に該当する匍匐害虫や屋内塵性ダニ類用防除剤の開発は困難と考えられてきた。
【0006】
本発明者らは、先に、空間処理剤であって、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類を対象とした医薬部外品に該当する防除剤を開発するにあたり、(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールのような2~4週間に一度の頻度で使用される製剤ではなく、定量噴射タイプのエアゾールを用いて噴霧処理するだけで実用上十分な防除効果を発揮し、人が居る状況下でも使用可能な安全性の高い製剤を目指して鋭意検討を行った。その結果、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類のみならず、噴霧当日は飛翔害虫にも有効で、極めて有用な「害虫、ダニ防除方法」(特許文献1を参照)を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5517122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の害虫、ダニ防除方法によれば、エアゾールを噴射すると、噴射後の噴霧粒子は、長期に亘って空間に浮遊する浮遊性粒子と、壁面等への付着及び床面への沈降に関わる付着性粒子とを形成する。浮遊性粒子は、飛翔害虫に対して防除効果を発揮し、付着性粒子は、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類の生息場所や通り道に付着することで、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して防除効果を発揮する。この方法では、基本的に1~2日に1回の定量噴霧処理を行うことで、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して継続的な防除効果を発揮することができる。
【0009】
ところで、特許文献1の害虫、ダニ防除方法は、(a)30℃における蒸気圧が2×10-4~1×10-2mmHgである常温揮散性ピレスロイド化合物から選ばれた一種又は二種以上と、(b)30℃における蒸気圧が1×10-4mmHg未満である難揮散性化合物から選ばれた一種又は二種以上とを用いることを必須としており、二種以上の害虫、ダニ防除成分を調合する必要がある。そのため、害虫、ダニ防除成分の組み合わせによっては、当該方法で使用する害虫、ダニ防除用エアゾールの製造や当該方法を実施するための準備作業に手間が掛かるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、害虫、ダニ防除用エアゾールの製造工程、及び害虫、ダニ防除方法を実施するための準備作業を効率化できるとともに、簡単な空間噴霧処理で種々の害虫に対して優れた防除効果を発揮する害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールの特徴構成は、
定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫、ダニ防除用エアゾールであって、
耐圧容器に、
ペルメトリン、シフルトリン、フェノトリン、及びシフェノトリンからなる群から選択される一つの害虫、ダニ防除成分(a)、及び沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤(b)を含むエアゾール原液(L)と、
噴射剤(G)と、
が封入されてなり、
前記噴射剤(G)と前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が、3.3~200に設定されていることにある。
【0012】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、当該エアゾールに封入されるエアゾール原液(L)は、ペルメトリン、シフルトリン、フェノトリン、及びシフェノトリンからなる群から選択される一つの害虫、ダニ防除成分(a)、すなわち害虫、ダニ防除成分(a)として一種類の成分と、沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤(b)とを含むものとすればよい。従って、二種以上の害虫、ダニ防除成分を調合する必要があった従来の害虫、ダニ防除用エアゾールと比べて製造工程を簡素化することができ、生産効率が向上するため、工業的に非常に有用なものとなる。また、噴射剤(G)と前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が、3.3~200に設定されているので、本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールを用いて空間噴霧処理を行うだけで、飛翔害虫のみならず、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果を発揮することができる。
【0013】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
前記エアゾール原液(L)と前記噴射剤(G)との容量比率(L/G)が、0.05~1に設定されていることが好ましい。
【0014】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)が、0.05~1に設定されているので、エアゾールの噴射後に浮遊性粒子及び付着性粒子が適切に形成され、飛翔害虫から匍匐害虫や屋内塵性ダニ類まで幅広く防除効果を発揮することができる。
【0015】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)は、ノルマルパラフィン及び/又はイソパラフィンを含むことが好ましい。
【0016】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてノルマルパラフィン及び/又はイソパラフィンを含むものを使用することで、優れた防除効果を発揮することができる。
【0017】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
前記ノルマルパラフィンは、ノルマルトリデカンであることが好ましい。
【0018】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、ノルマルパラフィンとしてノルマルトリデカンを使用することで、より優れた防除効果を発揮することができる。
【0019】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
前記イソパラフィンは、イソドデカンであるであることが好ましい。
【0020】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、イソパラフィンとしてイソドデカンを使用することで、より優れた防除効果を発揮することができる。
【0021】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
前記定量噴霧用エアゾールバルブから噴霧される噴霧粒子は、25℃、噴射距離50cmにおける体積平均粒子径(Dv50)が、15~80μmに設定されていることが好ましい。
【0022】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、定量噴霧用エアゾールバルブから噴霧される噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)が、15~80μmに設定されているので、エアゾールを噴射(噴霧)した際、噴霧粒子が空間処理による匍匐害虫や屋内塵性ダニ類の防除に適した状態で形成され、適切な防除効果を得ることができる。
【0023】
本発明に係る害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、
屋内空間に一定量空間噴霧する定量噴射型エアゾールとして構成され、前記屋内空間の容積は18.8~33.3mであることが好ましい。
【0024】
本構成の害虫、ダニ防除用エアゾールによれば、容積が18.8~33.3mの屋内空間に一定量空間噴霧する定量噴射型エアゾールとして構成することで、屋内空間に侵入した飛翔害虫、並びに匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して防除効果が得られるのは勿論のこと、屋内空間全体に害虫、ダニ防除成分が行き渡るため、屋内空間に設置された家具どうしの隙間や家具と壁との隙間に潜む匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対しても防除効果が得られる。
【0025】
本発明に係る害虫、ダニ防除方法の特徴構成は、
上記何れか一つの害虫、ダニ防除用エアゾールを用いた害虫、ダニ防除方法であって、
屋内空間に一定量空間噴霧することにより、当該屋内空間を防除処理する処理工程を実施することにある。
【0026】
本構成の害虫、ダニ防除方法によれば、上述の害虫、ダニ防除用エアゾールと同様の優れた防除効果を発揮することができる。すなわち、本構成の害虫、ダニ防除方法に使用する害虫、ダニ防除用エアゾールは、二種以上の害虫、ダニ防除成分を調合する必要があった従来の害虫、ダニ防除用エアゾールと比べて製造工程を簡素化することができるため、害虫、ダニ防除方法を実施するための準備作業を効率化することができる。また、本構成の害虫、ダニ防除方法に使用する害虫、ダニ防除用エアゾールは、噴射剤(G)と前記飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が、3.3~200に設定されているので、本構成の害虫、ダニ防除方法に従って、屋内空間に一定量空間噴霧するだけで、当該屋内空間に防除処理が施され、飛翔害虫のみならず、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果を発揮することができる。
【0027】
本発明に係る害虫、ダニ防除方法において、
前記処理工程において、前記定量噴霧用エアゾールバルブを複数回押すことにより、前記害虫、ダニ防除用エアゾールを空間噴霧することが好ましい。
【0028】
本構成の害虫、ダニ防除方法によれば、処理対象の屋内空間の大きさや形状が異なる場合であっても、処理工程において、定量噴霧用エアゾールバルブを複数回(適切な回数)押すことにより、飛翔害虫、匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類に対して防除効果を十分に発揮することができる。
【0029】
本発明に係る害虫、ダニ防除方法において、
前記処理工程において、前記エアゾール原液(L)及び前記噴射剤(G)を合計0.1~3.6mL空間噴霧することが好ましい。
【0030】
本構成の害虫、ダニ防除方法によれば、処理工程において、エアゾール原液(L)及び噴射剤(G)を合計0.1~3.6mL空間噴霧することにより、飛翔害虫、匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類に対して防除効果をより確実に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成や実施例に限定することを意図するものではない。
【0032】
<害虫、ダニ防除用エアゾール>
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールは、害虫、ダニ防除成分と、沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤とを含むエアゾール原液を噴射剤とともに耐圧容器に封入し、これに定量噴射用エアゾールバルブを取り付けて構成される。なお、定量噴射用エアゾールバルブは、本発明の目的にあわせて噴射容量を適切に設定したものであるが、バルブ機構自体は公知のものを使用できるため、図示は省略する。
【0033】
[害虫、ダニ防除成分]
害虫、ダニ防除成分(これを(a)とする。)は、ペルメトリン、シフルトリン、フェノトリン、及びシフェノトリンからなる群から選択される一つが使用される。これらのうち、ペルメトリン、又はシフェノトリンが好ましく使用される。本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールを屋内で一定量空間噴霧処理すると、定量噴射用エアゾールバルブから噴射された噴霧粒子は、空中に長期間浮遊する浮遊性粒子と、比較的速やかに沈降して壁や床面に付着する付着性粒子となるが、浮遊性粒子も最終的には壁や床面に付着し、屋内空間において特にゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果を示すものとなる。本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールは、一種類の害虫、ダニ防除成分(a)のみで優れた防除効果を奏するため、後述する害虫、ダニ防除方法に用いる害虫、ダニ防除用エアゾールの製造等の準備作業を効率化することが可能となる。従って、二種以上の害虫、ダニ防除成分を調合する必要があった従来の害虫、ダニ防除用エアゾールと比べて製造工程を簡素化することができ、生産効率が向上するため、工業的に非常に有用なものと言える。
【0034】
[飽和炭化水素系有機溶剤]
飽和炭化水素系有機溶剤(これを(b)とする。)は、沸点が175~300℃のものが使用される。害虫、ダニ防除成分(a)に飽和炭化水素系有機溶剤(b)を併用することで、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果を示し、床面のべたつきも少ないものとなる。飽和炭化水素系有機溶剤(b)としては、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素系の溶剤が挙げられるが、ノルマルパラフィン、イソパラフィンが好ましい。ノルマルパラフィンの場合、炭素数は11~16が好ましく、12~14がより好ましい。このようなノルマルパラフィンとしては、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカン、ノルマルペンタデカン、ノルマルヘキサデカン等が挙げられ、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカンが好ましく、ノルマルトリデカンがより好ましい。また、これらの成分を含有するネオチオゾール(中央化成株式会社製)等を使用することも可能である。イソパラフィンの場合、炭素数は12~18が好ましく、炭素数12~13がより好ましい。このようなイソパラフィンとしては、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン等が挙げられ、イソドデカン、イソトリデカンが好ましく、イソドデカンがより好ましい。また、これらの成分を含有するアイソパーM(エクソンモービル社製)やIPクリーンLX(出光興産株式会社製)等を使用することも可能である。なお、上述のノルマルパラフィン、イソパラフィンは、二種以上を混合して使用することも可能である。
【0035】
[その他成分]
エアゾール原液(これを(L)とする。)には、上記の害虫、ダニ防除成分(a)、及び沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤(b)に加えて、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、共力剤、溶解補助剤及び賦形剤等を適宜配合することも可能である。防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤としては、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、及びオルト-フェニルフェノール等が挙げられる。芳香剤としては、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、ネロリ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモングラス油、シナモン油、レモンユーカリ油、タイム油、ペリラ油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、樟脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スターアニス油、ラバンジン油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、フェンネル油、ガルバナム油、ヒバ油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、炭素数6~12のアルデヒド(例えば、ヘキシルアルデヒド、オクタナール、ノナナール、ウンデシルアルデヒド、ウンデカナール、デシルアルデヒド等)、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、アセトフェノン、アセチルセドレン、アドキサール、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、アンブレットリッド、アンブロキサン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、ブチルアセテート、エチルブチレート、アセチルオイゲノール、イソアミルサリシレート、インドール、アリルカプロエート、エチルカプロエート、エチルプロピオネート、エチルアセトアセテート、テサロン、α-イオノン、β-イオノン、α-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、β-メチルイオノン、β-イソメチルイオノン、γ-メチルイオノン、γ-イソメチルイオノン、インデン、オウランチオール、オークモスNo.1、オリボン、オキシフェニロン、カリオフィレン、カシュメラン、カルボン、キャロン、クマリン、p-クレジールメチルエーテル、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ゲラニルニトリル、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロゲラニールアセテート、コアボン、サンダロア、サンデラ、サンタレックス、サンタリノール、メチルサリシレート、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトラールジメチルアセタール、シトラサール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、シンナミルアセテート、ジヒドロジャスモン、ジメトール、イソシクロシトラール、ジャスマール、ジャスモラクトン、ジャスモフィラン、スチラリルアセテート、スチラリールプロピオネート、セドロアンバー、セドリルアセテート、セドロール、セレストリッド、テルピネオール、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、ターピニルアセテート、チモール、デルタダマスコン、デルタC6~C13ラクトン、トナリッド、トラセオライド、トリプラール、イソノニルアセテート、ネロール、ネリールアセテート、ネオベルガメート、ノピールアセテート、ノピールアルコール、バクダノール、レボサンドール、ヒヤシンスジメチルアセタール、ヒドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネロール、ヒドロキシシトロネラール、α-ピネン、β-ピネン、ブチルブチレート、p-tert-ブチルシクロヘキサノール、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、o-tert-ブチルシクロヘキサノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート,p-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート、ジフェニルオキサイド、フルイテート、フェンチールアルコール、フェニルエチルフェニルアセテート、イソブチルキノリン、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアセテート、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルサリシレート、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、ジメチルベンジルカルビノール、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス-3-ヘキセノール、シス-3-ヘキセニールアセテート、シス-3-ヘキセニールサリシレート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、ペンタリッド、ベルドックス、オルトボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルネオール、ボルネオール、マンザネート、マイヨール、ミューゲアルデヒド、ミラックアルデヒド、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、ジミルセトール、ムゴール、ムスクTM-II、ムスク781、ムスクC14、ムスクT、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、メンサニールアセテート、メンソネート、メチルアンスラニレート、メチルオイゲノール、メントール、メチルフェニルアセテート、オイゲノール、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、γ-C6~C13ラクトン(例えば、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン等)、ライムオキサイド、メチルラベンダーケトン、ジヒドロリナロール、リグストラール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、リラール、ルバフラン、ローズフェノン、ローズオキサイド、ベンゾイン、ペルーバルサム、トルーバルサム、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ジヒドロターピニルアセテート、1,8-シネオール、7-アセチ-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタハイドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、4-アセトキシ-3-アミルテトラハイドロピラン、トリシクロデセニルアセテート、β-ナフチルメチルエステル、ベンゾフェノン、ベンジルベンゾエート、ジメチルヘプタノール、マイラックアルデヒド、クミンアルコール、メントン、チオメントン、シクロヘキシサリシレート、サンタリナアルコール、バニリン、エチルバニリン、イソロンギフォラノン、バグダノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、2,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサハイドロシクロペンタベンゾピラン、ジメチルベンジルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、ウンデカラクトンガンマ、シクロガルバナム、テルペニルアセテート、1-ヘキサノール、シス-3-ヘキシルアセテート、1,4-シネオール、α-テルピネン、p-サイメン、シス-オシメン、シス-β-オシメン、リメトール、トランス-β-オシメン、ターピノレン、2-ペンチロキシグリコール酸アリル、2-n-ペンチルシクロペンタノン、ベンジルブチレート、エチルアセテート、カプロン酸エチル、イソアミルブチレート、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート、アリルイソブチルオキサアセテート、アリル-n-アミルオキシアセテート、アリルシクロヘキシルアセテート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、アリルフェノキシアセテート、アニシルアセテート、p-メンタン-3,8-ジオール、メチルジヒドロジャスモン酸、6-アセチル-1,1,2,4,4,7-ヘキサメチルテトラリン、シンナミルフォーメート、プレゴン、ガラクソリド、カンファー、ネラール、ペリラアルデヒド、インドールアロマ、ジヒドロテルピニルアセテート、γ-テルピネン、フェニル酢酸エチル、メチルヘプテノン、酢酸プレニル、p-シメン、β-ナフチルメチルエーテル、酢酸ヘキシル、2-メチルペンタン酸エチル、1-ヘキサノール、マルトール、シクロヘキサンプロピオン酸アリル、α,3,3-トリメチルシクロヘキサンメタノールホルマート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分等が挙げられる。共力剤としては、ピペロニルブトキサイド、オクチルビシクロヘプテンジカルボキシイミド等が挙げられる。溶解補助剤としては、ミリスチン酸イソプロピル等の炭素数16~20の高級脂肪酸エステル、エタノール、イソプロパノール等の炭素数2~3の低級アルコール等が挙げられる。
【0036】
[エアゾール原液の特性]
エアゾール原液(L)中の害虫、ダニ防除成分(a)の含有量は、8~80w/v%であることが好ましく、10~70w/v%であることがより好ましく、20~70w/v%であることがさらに好ましい。エアゾール原液(L)中の害虫、ダニ防除成分(a)の含有量が上記の範囲にあれば、エアゾールが噴射された際、噴霧粒子が空間処理による匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類の防除に適した状態で形成され、適切な防除効果を得ることができる。エアゾール原液(L)中の害虫、ダニ防除成分(a)の含有量が上記の範囲から外れると、エアゾールが噴射された際、噴霧粒子が適切な状態で形成されない虞がある。
【0037】
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、エアゾール原液(L)の20℃における比重は、0.78~1.15に調整され、好ましくは0.80~1.10に調整され、より好ましくは0.85~1.05に調整される。エアゾール原液(L)の比重は、害虫、ダニ防除成分(a)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との配合比率を変更したり、その他成分を添加することで調整することができる。エアゾール原液(L)の20℃における比重が0.78~1.15の範囲にあれば、本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールを屋内の処理空間で一定量噴射すると、害虫、ダニ防除成分(a)を含む噴霧粒子は、最終的に床面全体に略均一に拡散して付着する付着性粒子となり、屋内空間においてゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果が得られる。なお、本明細書では、ノックダウン効果や致死効果に基づく駆除効果に加え、忌避効果を合わせて防除効果と呼ぶ。駆除効果が低くても十分な忌避効果があれば、実用上、防除が達せられる場面も多い。また、エアゾール原液(L)の20℃における比重が上記の範囲にあると、噴霧粒子(付着性粒子)が沈降に至る過程において隙間や物陰にも進入するため、ゴキブリ等が隙間や物陰から飛び出すフラッシング効果も十分に期待し得る。エアゾール原液(L)の20℃における比重が0.78未満であると、床面への噴霧粒子(すなわち、害虫、ダニ防除成分(a))の付着量が不足する虞がある。エアゾール原液(L)の20℃における比重が1.15を超えると、床面への噴霧粒子の付着状態が不均一になり、防除効果が低下する虞がある。
【0038】
[噴射剤]
噴射剤(これを(G)とする。)としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)、ノルマルペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル(DME)、及びHFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、並びに窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、及び圧縮空気等の圧縮ガスが挙げられる。上記の噴射剤(G)は、単独又は混合状態で使用することができるが、LPGを主成分としたものが使い易い。なお、噴射剤(G)は、ゲージ圧(20℃)を0.1~0.7MPaに調整して使用することが好ましい。
【0039】
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)は、3.3~200に設定され、3.5~200に設定されることが好ましく、4.0~100に設定されることがより好ましく、4.5~50に設定されることがさらに好ましい。容量比率(G/b)が、3.3~200の範囲にあることで、本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールを用いて空間噴霧処理を行うだけで、飛翔害虫のみならず、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して優れた防除効果を発揮することができる。容量比率(G/b)が上記範囲を外れると、匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対する防除効果が低下したり、エアゾールとしての使い勝手が悪くなる虞がある。また、エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)は、0.05~1に設定されることが好ましく、0.17~1に設定されることがより好ましく、0.25~0.67に設定されることがさらに好ましい。容量比率(L/G)が、0.05~1の範囲にあれば、エアゾールの噴射後に浮遊性粒子及び付着性粒子が適切に形成され、飛翔害虫から匍匐害虫や屋内塵性ダニ類まで幅広く防除効果を発揮することができる。
【0040】
[定量噴霧用エアゾールバルブ]
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、定量噴霧用エアゾールバルブは、一回当たりの噴射容量が、0.1~1.0mLに設定されることが好ましく、0.1~0.9mLに設定されることがより好ましく、0.2~0.4mLに設定されることがさらに好ましい。噴射容量が0.1~1.0mLの範囲にあれば、溶剤として、沸点が175~300℃の飽和炭化水素系有機溶剤(b)を使用し、空間噴霧処理を行った場合でも、床面のべたつきを低減することができるとともに、噴射時に液不足や液だれ等の問題を起こす虞もない。この定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫、ダニ防除用エアゾールのバルブ操作(エアゾールの噴射)を適度な回数行えば、屋内空間(処理空間)に浮遊性粒子及び付着性粒子が形成され、優れた防除効果を発揮することができる。また、定量噴霧用エアゾールバルブの操作ボタンを操作してエアゾールを噴射したとき、定量噴霧用エアゾールバルブの噴口からの距離が5cmの位置で測定される噴射力が3~50gfとなるように設定されることが好ましく、5~40gfとなるように設定されることがより好ましく、10~35gfとなるように設定されることがさらに好ましい。噴射力が3~50gfの範囲であれば、害虫、ダニ防除成分(a)を含む噴霧粒子は、屋内の処理空間の床面全体に沈降及び付着し、匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類に対して実用上十分な防除効果が得られる。噴射力は、エアゾール原液(L)の組成、噴射剤の成分、噴射剤の比率、エアゾール容器の内圧、噴口の形状等により適宜調整することができる。噴射力の測定は、例えば、デジタルフォースゲージ(FGC-0.5、日本電産シンポ株式会社製)を用いて行うことができる。
【0041】
定量噴霧用エアゾールバルブにおける操作ボタン、噴口、ノズル等のアクチュエーターの形状や、耐圧容器の形状等については、特に限定されないが、用途、使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、上から押して噴射する操作ボタンと斜め上方向きのノズルとを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。
【0042】
定量噴霧用エアゾールバルブにおける噴口は、その数、形状、サイズは特に限定されない。一例を挙げると、噴口の数は1個であってもよく、2個以上であってもよいが、簡便で低コストで製造できるという観点からすれば、噴口の数は1個であることが好ましい。また、噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、多角形等の他、各種不定形であってもよい。噴口の開口面積は、0.03~16.0mmであることが好ましく、0.05~8.0mmであることがより好ましい。例えば、噴口の数が1個で、噴口の形状が円形の場合、噴口のサイズ(噴口直径)は、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましい。また、噴口直径は、3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。
【0043】
定量噴霧用エアゾールバルブにおけるノズルは、水平ないし斜め上方向きのノズルが好ましい。ノズルの長さは、2.0~80mmが好ましく、3.0~70mmがより好ましく、5.0~30mmがさらに好ましい。
【0044】
定量噴霧用エアゾールバルブにおける操作ボタンは、プッシュダウンタイプやトリガータイプのボタンを採用することができる。
【0045】
[耐圧容器]
耐圧容器は、所定の耐圧性能を有するものであれば材質は特に限定されないが、アルミニウムやブリキ等の金属製、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製、耐圧ガラス製のものを使用することができる。耐圧容器が合成樹脂製又は耐圧ガラス製である場合、内容物を視認できるように半透明又は透明にすることも可能である。耐圧容器の形状は、円柱状の他、変形したものであってもよい。耐圧容器の容量は、10~200mLであることが好ましく、20~100mLであることがより好ましい。
【0046】
[噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)]
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールにおいて、定量噴霧用エアゾールバルブから噴霧される噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)が、15~80μmに設定されていることが好ましく、15~50μmに設定されていることがより好ましく、20~40μmに設定されていることがさらに好ましい。噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)が上記の範囲にあれば、エアゾールを噴射した際、噴霧粒子が空間処理による匍匐害虫や屋内塵性ダニ類の防除に適した状態で形成され、適切な防除効果を得ることができる。噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)は、エアゾール原液(L)の組成、噴射剤の成分、噴射剤の比率、エアゾール容器の内圧、噴口の形状やノズル長等により適宜調整することができる。
【0047】
なお、本発明において、噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)は、粒度分布測定装置により測定され、自動演算処理装置により解析された体積平均粒子径(Dv50)を意味する。具体的には、体積平均粒子径(Dv50)は、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(SPRAYTEC model STP5321、Malvern社製)を用い、レーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、害虫、ダニ防除用エアゾールの噴口との距離が50cmとなるように、かつ、噴霧粒子がレーザービームを垂直に通過するようにエアゾールの位置を調整する。そして、エアゾールの噴射中に測定を行い、噴霧粒子の粒度分布を自動演算処理装置により解析し、体積積分分布に基づく噴霧粒子の50%体積平均粒子径(Dv50)を求めることができる。
【0048】
<害虫、ダニ防除方法>
本発明の害虫、ダニ防除方法は、上記の害虫、ダニ防除用エアゾールを用いて行われるものであり、屋内空間において、害虫、ダニ防除用エアゾールを一定量空間噴霧することにより、当該屋内空間を防除処理する処理工程を実施する。この処理工程において、定量噴霧用エアゾールバルブを押す回数は一回でも防除効果は得られるが、定量噴霧用エアゾールバルブを複数回(適切な回数)押すことにより、害虫、ダニ防除用エアゾールを屋内空間全体に空間噴霧すれば、処理対象の屋内空間の大きさや形状が異なる場合であっても、飛翔害虫、匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類に対して防除効果を十分に発揮することができる。また、エアゾール原液(L)及び噴射剤(G)を合計0.1~3.6mL空間噴霧すれば、飛翔害虫、匍匐害虫及び屋内塵性ダニ類に対して防除効果をより確実に発揮することができる。
【0049】
上記の処理工程では、屋内空間の気中への害虫、ダニ防除成分の放出量が0.1~50mg/mとなるように設定されることが好ましく、0.5~50mg/mとなるように設定されることがより好ましい。さらに、屋内空間の気中に、害虫、ダニ防除成分の放出量が0.1~50mg/mとなるようにエアゾール原液を噴射した場合、噴射から1時間後までに重量として害虫、ダニ防除成分の10%以上が屋内空間の床面全体に拡散して付着するよう設定されることが好ましく、30%以上が屋内空間の床面全体に拡散して付着するよう設定されることがより好ましく、50%以上が屋内空間の床面全体に拡散して付着するよう設定されることがさらに好ましい。ここで、害虫、ダニ防除成分は、エアゾール原液の噴射後に形成される浮遊性粒子と付着性粒子とに含まれており、このうち付着性粒子は比較的早期に(1時間後までに)沈降して壁や床面に到達し、浮遊性粒子も最終的には壁や床面に付着する。なお、害虫、ダニ防除成分が「屋内空間の床面全体に拡散して付着する」とは、付着した害虫、ダニ防除成分によって床面が害虫防除効果を発揮し得る状態となっていればよく、必ずしも殺虫成分が物理的に床面全体に付着していることを要するものではない。噴射から1時間後までに重量として害虫、ダニ防除成分の10%以上が前記屋内空間の床面全体に拡散して付着することで、本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールは、床面を徘徊する匍匐害虫に対する防除効果が優れたものとなる。また、処理対象となる屋内空間の体積は特に限定されないが、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)であることが好ましい。この場合、屋内空間に侵入した飛翔害虫、並びに匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対して防除効果が得られるのは勿論のこと、屋内空間全体に害虫、ダニ防除成分が行き渡るため、屋内空間に設置された家具どうしの隙間や家具と壁との隙間に潜む匍匐害虫や屋内塵性ダニ類に対しても防除効果が得られる。ただし、より容積の大きな屋内空間や、より容積の小さな屋内空間においても、その屋内空間の容積にあわせて、屋内空間の気中に、害虫、ダニ防除成分の放出量が0.1~50mg/mとなるように噴射回数、噴射容量等を適宜設定することで、屋内空間の体積に関わらず同様の防除効果を得ることができる。本発明の害虫、ダニ防除方法を実施するにあたり、害虫、ダニ防除用エアゾールの使用頻度は、害虫やダニの発生頻度や状況に応じて適当な時期に、害虫、ダニ防除成分の放出量が上記の範囲となるように施用すればよい。
【0050】
<防除対象害虫>
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法が対象とする害虫は、特に限定されないが、室内で飛翔して人に被害や不快感を与える害虫、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ブユ類、アブ類、ハチ類、ヨコバイ類などの各種飛翔害虫の他、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類、トコジラミ類、アリ類、イエダニ、コクヌストモドキ、コクゾウムシ、シバンムシ、ダンゴムシ、ワラジムシなどの匍匐害虫、及びケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類が挙げられる。これらの害虫、ダニ類のうち、特にゴキブリ類、トコジラミ類、屋内塵性ダニ類に対しては、より優れた防除効果を発揮することができる。
【実施例
【0051】
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法の効能を確認するため、本発明の構成を備えたエアゾール製品(実施例1~10)を調製し、本発明の害虫、ダニ防除方法に従って、害虫、ダニ防除試験を実施した。また、比較のため、本発明の構成を備えていないエアゾール製品(比較例1~4)も調製し、同様の試験を実施した。
【0052】
〔実施例1〕
害虫、ダニ防除成分(a)としてペルメトリンを使用し、飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてノルマルトリデカン(沸点235℃、メルク社製)を使用し、ペルメトリン含有量が60w/v%となるようにノルマルトリデカンに溶解させてエアゾール原液(L)を調製した。次に、このエアゾール原液(L)10mLと、噴射剤(G)として液化石油ガス(LPG)30mLとを、エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)が0.33(=25/75)となるように、噴射容量が0.2mLである定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器(耐圧容器)に加圧充填し、ノズル付きのアクチュエーターを装着し、実施例1の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。実施例1の害虫、ダニ防除用エアゾールは、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が6.0であった。
【0053】
〔実施例2〕
エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)が0.25(=20/80)であり、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が8.0であること以外は実施例1と同様にして、実施例2の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0054】
〔実施例3〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてノルマルペンタデカン(沸点271℃、富士フイルム和光純薬社製)を使用し、エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)が0.25(=20/80)であり、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が8.0であること以外は実施例1と同様にして、実施例3の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0055】
〔実施例4〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてアイソパーM(沸点240℃、エクソンモービル社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0056】
〔実施例5〕
害虫、ダニ防除成分(a)としてシフェノトリンを使用し、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が6.8であること以外は実施例1と同様にして、実施例5の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0057】
〔実施例6〕
害虫、ダニ防除成分(a)としてシフェノトリンを使用し、飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてアイソパーM(沸点240℃、エクソンモービル社製)使用し、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が6.8であること以外は実施例1と同様にして、実施例6の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0058】
〔実施例7〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてアイソパーM(沸点240℃、エクソンモービル社製)を使用し、定量噴霧用エアゾールバルブの噴霧容量を1.0mLとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0059】
〔実施例8〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてイソドデカン(沸点180℃、富士フイルム和光純薬社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0060】
〔実施例9〕
定量噴霧用エアゾールバルブの噴霧容量を0.4mLとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0061】
〔実施例10〕
エアゾール原液(L)と噴射剤(G)との容量比率(L/G)が0.05(=5/95)であり、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が38.0であること以外は実施例1と同様にして、実施例10の害虫、ダニ防除用エアゾールを得た。
【0062】
〔比較例1〕
害虫、ダニ防除成分(a)としてシペルメトリン及びプロフルトリンを使用し、シペルメトリン含有量が55w/v%、及びプロフルトリン含有量が5w/v%となるようにノルマルトリデカンに溶解させてエアゾール原液(L)を調製し、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が5.8であること以外は実施例1と同様にして、比較例1のエアゾールを得た。
【0063】
〔比較例2〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)としてノルマルデカン(沸点172℃、富士フイルム和光純薬社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のエアゾールを得た。
【0064】
〔比較例3〕
飽和炭化水素系有機溶剤(b)として流動パラフィン(沸点310℃)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のエアゾールを得た。
【0065】
〔比較例4〕
ペルメトリン含有量が7.5w/v%となるようにノルマルトリデカンに溶解させてエアゾール原液(L)を調製したこと、噴射剤(G)と飽和炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)が3.2であること以外は実施例1と同様にして、比較例4のエアゾールを得た。
【0066】
実施例1~10の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び比較例1~4のエアゾールの各構成を以下の表1にまとめる。
【0067】
【表1】
【0068】
次に、本発明の害虫、ダニ防除用エアゾールの防除効果を確認するため、実施例1~10の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び比較例1~4のエアゾールについて、匍匐害虫及びダニ類を対象とした防除効果確認試験、並びにエアゾール使用後の床面のべたつき確認試験を実施した。
【0069】
<ゴキブリに対する防除効果確認試験>
20×20cmのガラス板合計4枚を閉めきった容積25mの部屋(面積が10mである6畳の部屋に相当、以下同じ。)の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約20cmのプラスチックリングを配置し、各リング内に所定の供試昆虫(チャバネゴキブリ:♀成虫5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例1~6、8、及び10、並びに比較例1~4では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例9では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を、供試昆虫を含むプラスチックリングごと別部屋に移し、供試昆虫に餌を与え、さらに24時間後に致死率を求めた。そして、チャバネゴキブリの致死率が90~100%であるものを「A」、75~85%であるものを「B」、50~70%であるものを「C」、50%未満であるものを「D」と評価した。
【0070】
<トコジラミ類に対する防除効果確認試験>
20×20cmのガラス板合計4枚を閉めきった容積25mの部屋の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約10cmのプラスチックリングを配置し、各リング内に所定の供試昆虫(トコジラミ:5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例1~6、8、及び10、並びに比較例1~4では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例9では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を、供試昆虫を含むプラスチックリングごと別部屋に移し、さらに24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。そして、トコジラミの致死率が90~100%であるものを「A」、75~85%であるものを「B」、50~70%であるものを「C」、50%未満であるものを「D」と評価した。
【0071】
<屋内塵性ダニに対する防除効果確認試験>
直径約4cmの綿布4個を閉めきった25mの部屋の4隅に設置し、実施例1~6、8、及び10、並びに比較例1~4では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例9では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。供試エアゾールの噴霧24時間後に綿布を取り出し、これを直径4cmのシャーレにはめ込み、その中央部に誘引用培地50mgを配置した。別に、直径9cmのシャーレに供試コナヒョウヒダニを培地とともに約10000匹放ち、この中央部に先に用意した直径4cmのシャーレを配置した。また、同様の手順にて、処理しない綿布を用いて無処理区とした。そして、24時間後に綿布上に侵入したダニ数を計数し、下式(1)に従って忌避率(%)を求めた。
忌避率(%) = (m-n)/m × 100 ・・・(1)
m:無処理区の侵入ダニ数
n:処理区の侵入ダニ数
そして、コナヒョウヒダニの忌避率が90~100%であるものを「A」、75~85%であるものを「B」、50~70%であるものを「C」、50%未満であるものを「D」と評価した。
【0072】
<床面のべたつき確認試験>
20×20cmのガラス板を25mの部屋の4隅に設置し、実施例1~6、8、及び10、並びに比較例1~4では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例9では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら4ショット噴霧した。噴霧処理30分後、指先でガラス板の表面に触れて感触を確認することによりべたつきを三段階で評価した。10人の研究員により、3点(ほとんどべたつかない)、2点(僅かにべたつく)、1点(べたつく)と点数化し、平均点が2.4~3.0点であるものを「A」、1.7~2.3点であるものを「B」、1.0~1.6点であるものを「C」と評価した。
【0073】
夫々の確認試験の結果を以下の表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1~10の害虫、ダニ防除用エアゾールは、いずれも秤量・混合等の製造の準備作業の効率性に優れ、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果において良好な結果を示した。特に、定量噴射用エアゾールバルブの1回当たりの噴霧容量が0.1~0.9mLである実施例1~6、及び8~10は、床面のべたつきも少なく、室内での使用により適しているものであった。また、飽和炭化水素系有機溶剤(b)として、炭素数11~16のノルマルパラフィンであるノルマルトリデカンを用いた実施例1、2、5、9、及び10、並びにノルマルペンタデカンを用いた実施例3は、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果において優れたものであり、炭素数12~14のノルマルパラフィンであるノルマルトリデカンを用いた実施例1、2、5、9、及び10は、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果においてより優れたものであった。また、飽和炭化水素系有機溶剤(b)として、炭素数は12~18のイソパラフィンであるアイソパーMを用いた実施例4、6、7、並びにイソドデカンを用いた実施例8は、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果において優れたものであり、炭素数12~14であるイソドデカンを用いた実施例8は、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果においてより優れたものであった。
【0076】
一方、比較例1のエアゾールは、実施例1や実施例5のエアゾールにおいて、害虫、ダニ防除成分(a)として、シペルメトリンに少量のプロフルトリンを加えて防除成分全体の含有量を60w/v%に調整したものであるが、実施例1や実施例5のエアゾールと比べると、害虫(特に、チャバネゴキブリ)に対して防除効果が劣るものとなった。これは、複数種の防除成分を使用する場合でも、その組み合わせが適切なものでなければ、期待される程度の防除効果が得られるとは限らないことを示している。言い換えれば、一種の防除成分であっても、本発明のように適切な成分を使用すれば、実用的な害虫、ダニ防除効果を得ることが可能となる。また、比較例1のエアゾールは、二種以上の害虫、ダニ防除成分を配合するものであるため、実施例1~10の害虫、ダニ防除用エアゾールと比べて、準備作業(秤量・調合等の製造作業)に時間や手間を要し、効率性において必ずしも満足できるものではなかった。また、比較例2及び3と実施例1~10との比較から、沸点が175~300℃である飽和炭化水素系有機溶剤(b)を含むことで、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果が向上することが分かった。さらに、比較例4と実施例1~10との比較から、炭化水素系有機溶剤(b)との容量比率(G/b)を3.3以上とすることで、空間噴霧処理における害虫、ダニ防除効果が向上することが分かった。なお、エアゾールとしての使い勝手を考慮すると、容量比率(G/b)は200以下とすることが適当である。
【0077】
<噴霧粒子の体積平均粒子径の測定>
実施例2、4、及び8の害虫、ダニ防除用エアゾールについて、25℃における噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)を測定した。各エアゾールを25℃に設定した室温で2~3時間静置し、各エアゾールの温度を25℃の恒温とした。体積平均粒子径(Dv50)の測定においては、25℃において、レーザー粒度分布測定装置SPRAYTEC model STP5321(Malvern社製)を用い、レーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、害虫、ダニ防除用エアゾールの噴口との距離が50cmとなるように、かつ、噴霧粒子がレーザービームを垂直に通過するようにエアゾールの位置を調整した。エアゾールの噴射ボタンを1回押して、噴射中に測定を行い、噴霧粒子の粒度分布を自動演算処理装置により解析し、体積積分分布に基づく噴霧粒子の50%体積平均粒子径(Dv50)を求めた。
【0078】
測定は3回行い、その平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例2、4、及び8はいずれも、噴霧粒子の体積平均粒子径(Dv50)が、15~80μmの範囲に入っており、定量噴霧用エアゾールバルブから噴霧された噴霧粒子が空間処理による匍匐害虫や屋内塵性ダニ類の防除に適した状態で形成されることが確認された。なお、本発明者らは、体積平均粒子径(Dv50)が、約15μm、約50μm、及び約80μmの噴霧粒子についても、空間処理による匍匐害虫や屋内塵性ダニ類の防除に一定の効果が認められることを確認している(データ示さず)。これらの体積平均粒子径(Dv50)は、エアゾール原液(L)の組成、噴射剤の成分、噴射剤の比率、エアゾール容器の内圧、噴口の形状やノズル長等により適宜調整した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の害虫、ダニ防除用エアゾール、及び害虫、ダニ防除方法は、屋内用としてだけではなく、広範な用途で、害虫、ダニ防除を目的として利用することが可能である。