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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】非侵入的プロセス流体圧測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G01L7/00 D
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021517421
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052639
(87)【国際公開番号】W WO2020068781
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】16/146,134
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,チャールズ・アール
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第2925319(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/060714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体導管内のプロセス流体圧を非侵入的に測定するための圧力測定システムであって、
前記プロセス流体導管中のプロセス流体圧に応答する前記プロセス流体導管の変形に基づいて可変性ギャップを生成する、前記プロセス流体導管の外面に結合するように構成された測定ブラケット;
前記測定ブラケットに結合された、前記可変性ギャップの測定に基づいて電気信号を提供するように構成されたギャップ測定システム;及び
前記ギャップ測定システムに結合された、前記電気信号及び前記プロセス流体導管に関する情報に基づいてプロセス流体圧を計算し、提供するように構成されたコントローラを含み、
前記プロセス流体導管に関する情報が、前記プロセス流体導管の壁厚さを含む、圧力測定システム。
【請求項2】
前記プロセス流体導管に関する情報が、前記プロセス流体導管の材料タイプの指示を含む、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項3】
前記プロセス流体導管に関する情報が、前記プロセス流体導管の材料のヤング率を含む、請求項2記載の圧力測定システム。
【請求項4】
前記ブラケットが、前記流体導管の周の円弧又は部分を検出する鏡像的構造を含む、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項5】
前記ブラケットが、前記ギャップとともに変化する静電容量を有する可変平行板コンデンサを形成する、前記鏡像的構造の各半分に配置された電極を含む、請求項記載の圧力測定システム。
【請求項6】
前記ブラケットが前記プロセス流体導管と同じ材料で形成されている、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項7】
前記ブラケットが前記プロセス流体導管に溶接されている、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項8】
前記ブラケットが、前記プロセス流体導管に取り付けられるように構成されているクランプを含む、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項9】
前記クランプが、前記プロセス流体導管に解放可能に取り付けられるように構成されている、請求項記載の圧力測定システム。
【請求項10】
前記クランプが、前記プロセス流体導管の前記外面と接触するように構成された一対の付着点を含む、請求項記載の圧力測定システム。
【請求項11】
前記一対の付着点が、前記プロセス流体導管上、互いから直径方向反対側に位置するように構成されている、請求項10記載の圧力測定システム。
【請求項12】
前記プロセス流体導管の前記外面のすぐ近くに配置された、前記プロセス流体導管の前記外面までの距離の示度を提供するように構成された少なくとも一つのギャップセンサをさらに含む、請求項11記載の圧力測定システム。
【請求項13】
少なくとも一つのギャップセンサが、互いから直径方向反対側に配置された一対のギャップセンサを含む、請求項12記載の圧力測定システム。
【請求項14】
前記複数のギャップセンサが前記一対の付着点から90°の位置に配置されている、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項15】
前記複数のギャップセンサが静電容量センサである、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項16】
前記複数のギャップセンサが光学センサである、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項17】
前記複数のギャップセンサが渦電流近接検出センサである、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項18】
前記複数のギャップセンサが音響エコー位置センサである、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項19】
前記複数のギャップセンサがひずみゲージである、請求項13記載の圧力測定システム。
【請求項20】
前記プロセス流体導管の温度の示度を提供するために前記ブラケットに動作可能に結合された温度センサをさらに含む、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項21】
前記プロセス流体導管に取り付けられるように構成された、前記プロセス流体導管に沿って前記第一のブラケットから離間した第二のブラケットをさらに含み、前記第一及び第二のブラケットの間の前記プロセス流体導管内の障害物が、プロセス流体流に関する圧力差を生成する、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項22】
計算されたプロセス流体圧を離れた場所に送るプロセス流体圧トランスミッタをさらに含む、請求項1記載の圧力測定システム。
【請求項23】
前記プロセス流体圧トランスミッタが、前記測定ブラケットから離間した位置で前記プロセス流体導管に固定されている、請求項22記載の圧力測定システム。
【請求項24】
プロセス流体導管内のプロセス流体圧を非侵入的に測定するためのシステムであって、
前記プロセス流体導管を取り巻くように構成されたバンドと、前記バンドに対して横向きに延びる少なくとも一つのアームとを有する、前記プロセス流体導管の外面に結合するように構成された測定ブラケット;
前記測定ブラケットの前記少なくとも一つのアームに結合されたギャップ測定システムであって、それ自体と前記プロセス流体導管との間の可変性ギャップに基づいて電気信号を提供するように構成されているギャップ測定システム;及び
前記ギャップ測定システムに結合された、前記電気信号及び前記プロセス流体導管に関する情報に基づいてプロセス流体圧を計算し、提供するように構成されたコントローラを含み、
前記バンドのギャップが、前記プロセス流体導管内の圧力変化に応答してたわまないように構成されている高剛性クランプである、システム。
【請求項25】
前記少なくとも一つのアームが、反対方向に延びる複数のアームを含み、各アームが、それに結合されたギャップ測定システムを有する、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
ギャップ測定システムが、前記プロセス流体導管との静電容量を感知するように構成された静電容量変位センサを含み、感知された静電容量が、前記ギャップ測定システムと前記プロセス流体導管との間のギャップを示す、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
前記ギャップ測定システムが渦電流近接検出器を含む、請求項24記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
多くの工業プロセスは、パイプ又は他の導管を通してプロセス流体を運ぶ。そのようなプロセス流体としては、液体、気体及びときには同伴固体がある。これらのプロセス流体流は、衛生的な食品・飲料製造、水処理、高純度医薬品製造、化学処理、炭化水素抽出及び処理を含む炭化水素燃料工業ならびに研磨性及び腐食性のスラリーを利用する水圧破砕技術をはじめとする多様な工業において見られることがある。
【0002】
工業プロセスは、上記のような多くのタイプの物質の製造及び輸送において使用される。そのようなシステムにおいては、多くの場合、圧力関連の情報を一つ以上の遠隔装置、たとえば制御室に送信するプロセス流体圧トランスミッタに電気的に結合されている、又はその一部であるプロセス流体圧センサに通常は含まれている、又は結合されている圧力センサを使用してプロセス流体圧を測定することが有用である。送信は、多くの場合、プロセス制御ループを介する。
【0003】
プロセス流体圧の測定においては、プロセス流体導管中の開口又は貫入部を使用して圧力センサをプロセス流体に動作的に結合することが比較的一般的である。多くの例においては、分離ダイアフラムが、プロセス流体と直接接触する状態に配置され、プロセス流体圧に応答して屈曲する。分離ダイアフラムの反対側は、分離ダイアフラムの動きを圧力センサの感知ダイアフラムに伝達する充填流体導管中の充填流体と接触する。圧力センサ上の電気的構造(たとえば抵抗、静電容量又は圧電素子)が、圧力センサの受圧ダイアフラムの動きに応答し、プロセス流体圧トランスミッタの測定電子機器を使用して測定可能である信号を提供する。しかし、プロセス流体は、非常に高い温度を有する、非常に腐食性である、又はその両方であるおそれがあるため、この手法は常に実用的であるとはいえない。加えて、圧力センサをプロセス流体に結合するためのプロセス貫入部は一般に、ねじ込みポート又は他の頑丈な機械的マウント/シールを導管中に必要とし、したがって、プロセス流体流システム中、既定の場所で設計されなければならない。したがって、そのような技術は、正確なプロセス流体圧示度を提供するのに有用であるが、いくつかの制限を抱えている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
プロセス流体導管内のプロセス流体圧を非侵入的に測定するためのシステムが提供される。システムは、プロセス流体導管の外面に結合するように構成された測定ブラケットを含む。測定ブラケットは、プロセス流体導管中のプロセス流体圧に応答するプロセス流体導管の変形に基づいて可変性ギャップを生成する。ギャップ測定システムが、測定ブラケットに結合され、可変性ギャップの測定に基づいて電気信号を提供する。コントローラが、ギャップ測定システムに結合され、電気信号及びプロセス流体導管に関する情報に基づいてプロセス流体圧出力を計算し、提供するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】圧力の増大に応答するプロセス流体導管の変形を示す断面概略図である。
図2】本発明の実施形態にしたがって導管変形を検出し、そのような変形をプロセス流体圧に関連させるのに有用な様々なパラメータを示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態の変形検出器を示す概略断面図である。
図4A】本発明の実施形態の、検出構造における温度誘発寸法変化の影響を示す概略断面図である。
図4B】本発明の実施形態の、検出構造における温度誘発寸法変化の影響を示す概略断面図である。
図5】本発明の実施形態の、プロセス流体圧に対するギャップ変化のチャートである。
図6A】圧力が内部から加えられるとき、高剛性クランプから離れる方向へのパイプの外径のたわみの影響を示す。
図6B】圧力が内部から加えられるとき、高剛性クランプから離れる方向へのパイプの外径のたわみの影響を示す。
図7】本発明の実施形態の導管変形検出器の概略斜視図である。
図8】変位センサを強調した、図7に示す実施形態の概略側面図である。
図9】様々な壁厚さを有するステンレス鋼パイプスケジュール(外径4.5インチ)に1,000psiの圧を加えたときの予想表面たわみをまとめた表である。
図10】本発明の一つの実施形態にしたがってパイプ上に配置されたクランプオンセンサの概略断面図である。
図11】本発明の一つの実施形態にしたがって互いに直径方向反対側に配置された近接センサを有するクランプオンセンサを示す概略斜視図である。
図12】センサが締め付けられているパイプに内部から圧力が加えたときの、締め付けられたアセンブリの挙動を示す概略有限要素解析モデルである。
図13】センサが締め付けられているパイプに内部から圧力が加えたときの、締め付けられたアセンブリの挙動を示す概略有限要素解析モデルである。
図14】本発明の実施形態にしたがってプロセス流体導管に締め付けられ、トランスミッタに電気的に結合されたクランプオンセンサの概略図である。
図15】本発明の実施形態のシステム電子機器の概略図である。
図16】本発明の実施形態にしたがってプロセス流体圧推定システムを較正する方法の流れ図である。
図17】本発明の実施形態にしたがってプロセス流体圧を非侵入的なやり方で測定する方法の概略図である。
図18】本発明の実施形態にしたがって流量絞り部の両側に配置された複数の非侵入的プロセス流体圧センサを有する二つの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的な実施形態の詳細な説明
本明細書に記載される実施形態は一般に、プロセス流体導管そのものの実の変形を確実かつ正確に測定し、そのような変形を、正確なプロセス流体圧を評価し、提供することができるようなやり方で特性評価する能力を増強する。
【0007】
図1は、誇張されたプロセス流体導管変形を示す概略図である。図1の左側部分に示すように、プロセス流体導管100(断面で示す)は0の内圧Pを有する。鏡像的又は正反対の構造104がプロセス流体導管100の外面102に取り付けられている。一例において、各半分は、プロセス流体導管100の外径102に溶接部103で溶接されている鏡像的なZ字形構造である。図示するように、内圧P=0で、鏡像的なZ字形構造104は比較的小さいギャップ106を有する。図1の右側部分では、内圧P(P>0)が導管100の内径105全体に等しく加えられ、それにより、導管100の外径102を増大させている。これが起こると、鏡像的なZ字形構造104の各半分はわずかに離れ、ギャップ106(Gとも標識する)が増す。したがって、パイプの外面に仮付け溶接又は他のやり方で取り付けることができる一対のブラケット(比較的小さいギャップがブラケットどうしを切り離す)で構成された専用のアセンブリを使用して、プロセス流体圧を推論又は推定することができることが見てとれる。プロセス流体導管100の内圧が増すにつれギャップは分離する。この操作技術の重要な局面が、温度によって誘発される影響を減らしながらも圧力感度を最大化するようなやり方でのブラケット又は他の適当な構造の設計である。
【0008】
図2は、動作理論をさらに説明するために様々な量を示す、図1に関して例示した構造の概略図である。図2中、プロセス流体導管100は内半径a及び外半径bを有する。加えて、鏡像的なZ字形構造は、プロセス流体導管100の中心108からギャップ106までの距離として定義される高さを有する。図示する例において、この高さはRsと定義される。さらに、鏡像的なZ字形構造104の半径方向に延びる壁と壁との間の分離角が掃引角度θと定義される。本明細書に記載される実施形態は一般に、圧力Pが導管に導入されたときの、厚肉導管の外周の変化(ΔSと定義)を定量化する。外圧はゼロであると仮定する。しかし、以下に記す式は、周囲大気圧などの外圧が異なる状況をも受け入れるように容易に適合させることができる。ゼロ外圧の仮定の下、外周の変化(ΔS)は以下の式から決定される。
【0009】
【数1】
【0010】
式中、Eは導管のヤング率であり、a及びbはパイプのそれぞれ内半径及び外半径である。
【0011】
中括弧内の量は、圧力が加えられたときのプロセス流体導管の外面のフープひずみ(strain)の変化である。圧力Pが加えられると、ブラケット間のギャップ間隔106が、以下の式にしたがって、Gから新たな値G(P)に移行することが見てとれる。
【0012】
【数2】
【0013】
上記式2は以下のように書き換えることができる。
【0014】
【数3】
【0015】
式中、Kは、以下の式によって定義される増幅率である。
【0016】
【数4】
【0017】
式4において、θもしくはRsが大きくなるとき、又はGが小さくなるとき、常にKが大きくなることが見てとれる。図3は、本発明の実施形態の静電容量ベースのギャップ変化検出器を示す概略断面図である。見てとれるように、電極110及び112が、それぞれ絶縁体107及び109を介して、鏡像的なZ字形ギャップ測定構造のそれぞれの部分に取り付けられている。ギャップ面は平行板コンデンサの平板であり、圧力が増すと分離する。ギャップ間隔とともに静電容量がどのように変化するかに関する式を以下に記す。
【0018】
【数5】
【0019】
上記式中、Aはバーの端部の面積であり、G(P)は圧力Pにおけるギャップであり、εは自由空間の誘電率であり、0.225pf/inの値を有する。
【0020】
温度変化が上記センサのタイプにどのように影響するのかを理解するためには、熱の影響を最小限に抑えるために形状寸法を考慮することが重要である。図4Aは、図1に示す台形構造の概略図であり、温度が上昇すると何が起こるかを示す。熱の影響を最小限に抑える中で一つの重要な考慮事項が、センサブラケットをパイプ材料と一致させることである。したがって、プロセス流体導管がたとえば304ステンレス鋼で形成されているならば、センサブラケットもまた、304ステンレス鋼で作られるべきである。同様に、プロセス流体導管が炭素鋼で形成されているならば、センサブラケットもまた、炭素鋼でできているべきである、などである。これが当てはまる場合、ギャップは、同じ幅の材料に等しい量だけ拡大する。
【0021】
ギャップの温度誘発変化(ΔG)は、G・αmetal・ΔTであると考えることができる。圧力が加わると、センサブラケットは、角度θで掃引される弧長の変化によって決定されて離れ始める。この弧長変化は、式2を介して、先に示したように測定可能であるギャップ変化へと変換される。温度変化とともに、弧長もまた拡大するが、ギャップに向かって突出するセンサブラケットピースは内向きに拡大する。正味の効果は、ギャップが、ギャップ間隔(すなわちG)に比例するが、弧長には比例しない量だけ認めうるほど変化するということである。したがって、この設計は、温度感度の相応な増加なしで、圧力効果を増幅する(弧長変化を介して)。加えて、熱シールド、断熱材及び銅熱トレースの使用が、センサに対する温度過渡の影響を減らすのに役立つであろう。さらには、測定ブラケットに隣接して配置されるが、圧力に応答しないように配置されるさらなるブラケットが、同相除去又は単純な比演算技術によって温度過渡の影響を排除するのに役立つであろう。
【0022】
図5は、本明細書に記載される特定の実施形態のモデル結果を示す。外径4.5インチの304ステンレス鋼スケジュール10パイプに圧を加えたときの中心から約2.8インチのRs値における理論的(モデル)ギャップ変化が示されている。図示する例においては、1,000psi圧力変化が2.7ミル(0.0027インチ)のギャップ変化を生成し、これは、当業者には周知の多様な手段(静電容量変位がその一つである)によって容易に検出されるのに十分な大きさである。
【0023】
上記実施形態は一般に、プロセス流体導管の外面又は外径に直接取り付けられている(すなわち、溶接又は他のやり方で接着されている)鏡像的又は正反対の構造を提供したが、本明細書に記載される実施形態は、プロセス流体導管を直接締め付ける構造を用いて実施することもできることが明示的に考慮される。
【0024】
図6A及び6Bは、図7に示すクランプオンセンサのさらなる実施形態につながる導管変形を示す。図6A及び6B中、パイプ502を取り巻く太いバンド500があり、これを高剛性クランプと見なすことができる。クランプは、パイプが加圧されたとき認めうるほどたわまないように頑丈に設計されている。図6Bは、中間部に高剛性クランプ500を有する、1,000psiに加圧された304ステンレス鋼パイプ(スケジュール40)の有限要素シミュレーションを示す。形状は、よりよく示すために誇張されている。興味深いことは、パイプ直径がクランプ500から比較的短い距離(この例においてはわずか3インチ(縦方向))でその完全なたわみを取り戻すということである。この性質を使用して、図7に示すような有用な圧力センサを構築することができる。
【0025】
図7及び8は、比較的動かないブラケットに固定されているアーム512と、図6Bにしたがって圧力とともにたわむパイプの外面508との間のギャップ変化を検出するセンサ504、506の位置を示す、それぞれ簡略化斜視図及び側面図である。
【0026】
この設計の場合、検出されるギャップは以下にしたがって変化する。
【0027】
【数6】
【0028】
式中、変数a、b、E及びPは前記と同じに定義される。
【0029】
バンド500は、パイプ502の周りにボルト締め又は他の方法で固定することができるヒンジ式クランプ又は一対のクランプ半分として形成される。アーム512は、バンド500に取り付けられ、そこから横向きに延びる。この横向きの延長は、好ましくは、図6Bに示すように、内圧に応答するパイプ502の変形が完全に展開するように、バンド500の縁を少なくとも3インチ超える。バンド500及びアーム512は、好ましくは、図4A及び4Bに関して挙げた論拠にしたがってすでに説明したように、熱膨張の影響を最小限に抑えるために、パイプと同じ材料から構築される。したがって、温度の変化とともに、クランプ500及びアーム512は、パイプ502とほぼ同じやり方でサイズを変化させる。図示する例において、アーム512は、バンド500から上流と下流の両方に延び、ギャップ測定システム又は検出器504、506が各アーム512の端部のすぐ近くに配置されている。一例において、各検出器504、506は、検出器とパイプ502との間のギャップとともに変化するパイプ502との静電容量を有する静電容量センサである。
【0030】
実例として、図9は、様々な厚さの壁スケジュールを有する外径4.5インチの304ステンレス鋼パイプの場合のksi(1,000psi)あたりの予想ギャップ変化を表にまとめたものである。
【0031】
図10は、本発明にしたがってパイプ202の周りに配置されたクランプオンセンサ200のもう一つの実施形態の概略断面図である。図示するように、クランプオンセンサ200は、付着点250、252でパイプ202の外径に物理的に付着するように構成されている。クランプ200は、好ましくは、熱膨張/ヒステリシスの影響を補償するために、パイプ202と同じ材料から構築されている。したがって、温度の変化とともに、クランプ200は、パイプ202とほぼ同じやり方でサイズを変化させる。しかし、クランプ200は、付着点250、252から約90°に配置された一対の近接センサ260、262を含む。このようにして、パイプ202内の圧力が増し、パイプ202が外向きに変形するとき、近接センサ260、262は、パイプ202の外面までの距離の減少を測定する。近接センサ260、262は、測定回路218(図15に示す)などの適切な測定回路に結合され、パイプへの近接の示度、ひいてはパイプ内のプロセス流体圧の示度を提供する。
【0032】
図11は、互いに直径方向反対側に配置された近接センサ260及び262を有するクランプオンセンサ200を示す概略斜視図である。
【0033】
上記の説明から、プロセス流体導管の外径の円周の変化は、加えられた圧力だけでなく、プロセス流体導管の材料及びパイプ壁の厚さにも基づくということが明らかである。したがって、本明細書に記載される実施形態は一般に、特定のプロセス流体導管に取り付けられた後での非侵入的プロセス流体圧測定システムの較正を含む。
【0034】
図12及び13は、センサが締め付けられているパイプに内部から圧力が加えられたときの、締め付けられたアセンブリの挙動を示す簡略化概略有限要素解析モデルである。図示する例において、変形スケールが50倍に誇張されている。円で囲まれた区域は、圧力が加えられたときギャップ間隔がどのように減少するのかを強調する。二つの効果が存在することに注目すること。一つの効果は、パイプが外向きに拡張することであり、第二に、機械的効果により、ブラケットの側面が内向きに移動することである。これが、ギャップ変化を、導管直径の単なる変化よりも大きく増幅する。そのうえ、装置の出力は、二つのセンサの合計になるように構成されることができ、これが、信号を倍増させるだけでなく、左右の乱れを最小限に抑える。理由は、二つのギャップの合計は左右の動きの下でも一定に留まるからである。したがって、正味のギャップは、導管内に圧力が加えられた場合にのみ変化する。その結果、図1に関して上述したシングルブラケット手法のほぼ4倍の大きさの信号出力を有するロバストな測定が得られる。最後に、クランプがパイプと同じ材料から作られている場合、熱の影響は依然として低い。
【0035】
図14は、クランプオンセンサ200がプロセス流体導管202に締め付けられ、次いで、導管202に沿ってクランプオンセンサ200からいくぶん離間しているプロセス流体圧トランスミッタ204に電気的に結合されている例を示す。クランプオンセンサ200は、プロセス流体導管202がプロセス流体圧の変化に反応するとき変化する一つ以上のギャップに関する示度を提供するように構成されている。クランプオンセンサ200内の一つ以上のギャップセンサからの電気信号は、トランスミッタハウジング206内の電子機器に提供されて処理されてプロセス流体圧出力を提供し、その後、そのプロセス流体圧出力が制御室などの遠隔電子機器に送られる。
【0036】
図7及び14に示す実施形態は、プロセス流体導管への特定の恒久的な取り付け(すなわち溶接)を要しないという点で特に有利であると考えられる。したがって、図7及び14に示す実施形態は、プロセス流体圧を測定することが望まれる任意の場所でプロセス流体導管に取り付けることができる。クランプオンセンサ200からのトランスミッタ204の離間は、トランスミッタ取り付けから生じ得る外乱を最小限に抑えるのに有益である。別々の取り付けはまた、温度及び/又は腐食ならびにパイプ壁厚さ測定など、さらなるプロセス測定を実施する可能性をも提供する。
【0037】
図15は、ハウジング206内の電子機器の概略図である。図示するように、パワーモジュール210は、「至すべて」と標識された矢印212によって示すように、トランスミッタの様々な構成要素にパワーを提供するように構成されている。トランスミッタがワイヤレストランスミッタである実施形態において、パワーモジュールは、バッテリ(充電式又は非充電式)と、トランスミッタ内の様々な構成要素に適切な電圧及び電流レベルを提供するための適当なパワーコンディショニング構成要素とを含み得る。トランスミッタ204が有線プロセス通信ループ又はセグメントに結合するように構成されている実施形態において、パワーモジュール210は、プロセス通信ループ又はセグメントを介して提供される電気エネルギーから、トランスミッタ204を作動させるために必要なすべてのパワーを導出するように適合されることができる。
【0038】
通信モジュール214は、コントローラ216に結合され、プロセス通信標準プロトコルにしたがって通信する能力をコントローラ216に提供する。有線プロセス通信標準プロトコルの例は、Highway Addressable Remote Transducer(HART(登録商標))プロトコル及びFOUNDATION(商標)Fieldbusプロトコルを含む。通信モジュール214が適合されることができるワイヤレスプロセス通信プロトコルの例は、公知のWirelessHARTプロトコル(IEC62591)である。
【0039】
コントローラ216は、ギャップ測定に基づいてプロセス流体圧推定出力を決定するための命令又はプログラム工程を実行することができる適当な電気的論理デバイス又は装置であることができる。一例において、コントローラ216は、中に配置された関連するタイミング及びメモリ回路を有するマイクロプロセッサである。コントローラ216は測定モジュール218に結合され、測定モジュール218は、コントローラ216が、ギャップセンサに提供される電気信号を示す情報を得ることを許す一つ以上のアナログ・デジタル変換器を含むことができる。適当なギャップセンサの一例が上記平行板コンデンサ構造である。しかし、ギャップを示す情報を正確かつ確実に得ることができる適当な技術を使用することができることが明確に考慮される。このような技術の例は、光学技術(干渉法、減衰など);渦電流近接検出;音響エコー位置、ひずみゲージ技術および磁気技術(可変磁気抵抗、インダクタンス、ホールセンサなど)を含む。
【0040】
測定モジュール218は、変化するギャップを示す電気的示度を提供する一つ以上のギャップセンサ220に結合されている。上記の実施形態において、ギャップセンサは単一の平行板コンデンサであることができる。しかし、上記のような他の形態のギャップ測定を使用することもできる。
【0041】
図16は、本発明の実施形態にしたがってそのようなシステムを較正する方法の流れ図である。方法300は、非侵入的プロセス流体圧測定システムを特定のプロセス流体導管に取り付けるブロック302から始まる。取り付けは、鏡像的なZ字形構造をそのような導管に溶接する形態であってもよいし、クランプオン構造をプロセス流体導管に締め付ける形態であってもよい。次いで、ブロック304で、第一の既知の圧(P1)をプロセス流体導管内に生成する。内圧P1がプロセス流体導管内に存在する間、ブロック306に示すように、一つ以上のギャップセンサを使用してギャップ測定値を得る。次いで、ブロック308で、第二の既知の圧(P2)をプロセス流体導管内に生成し、ブロック310で、ギャップを再び測定する。二つの既知の圧および二つの測定ギャップを用いて、定数(パイプ壁厚さおよびヤング率に関連する)に関してシステムを解く。いくつかの実施形態において、これらの量は、ユーザインタフェース又はプロセス通信を介してシステムに直接入力されてもよいし、システムが注文又は他の方法で製造されるときユーザによって選択されてもよいことに留意すること。ブロック312で、パイプ壁厚さ及びヤング率312の既知の量を、動作中に使用に備え、メモリ、たとえばコントローラ216のメモリに記憶する(314)。
【0042】
図17は、プロセス流体圧を非侵入的に測定する方法の流れ図である。方法400は、プロセス流体導管の外面に取り付けられている構造のギャップを測定するブロック402から始まる。次いで、ブロック404で、ヤング率および導管壁厚さに関連する情報を得る。ブロック406で、測定ギャップならびに得られたヤング率及びパイプ壁厚さを使用して、プロセス流体導管内のプロセス流体圧を計算する。最後に、ブロック408で、計算されたプロセス流体圧を出力として提供する。この出力は、たとえばユーザインタフェースを介するローカル表示の形態であってもよいし、たとえばプロセス通信ループを介して有線又はワイヤレスで遠隔電子装置に送られてもよい。
【0043】
本明細書に記載される実施形態は一般に、強化型多変数測定にも適している。クランプオンセンサは、プロセス熱測定を、クランプオン圧力センサアセンブリ内に配置された温度センサを介して統合することもできるし、非侵入的プロセス流体温度推定技術を使用してトランスミッタハウジングアタッチメント206中に統合することもできる。加えて、固有パイプ特性評価(すなわち壁厚さ、材料タイプ)及び腐食情報を提供する、ハウジングアタッチメント206に統合されたセンサから情報を得ることもできる。
【0044】
図18は、流量絞り部の両側に配置された複数の非侵入的プロセス流体圧センサの二つの例を示す。第二のクランプオンセンサの使用は、パイプ中の絞り部をはさんでの圧力降下を測定するように構成されることもできる。この絞り部の知識に基づいて、二つの圧力測定がプロセス流体の流量の示度を提供することができる。
【0045】
実施形態は一般に、導管の外面に溶接又は他のやり方で恒久的に取り付けられる鏡像的なアセンブリ、又はクランプオンアセンブリに関して説明されたが、パイプの区分が、一対の取り付けフランジと、パイプの短いスプール区分に事前に取り付けられた非侵入的センサとを有することができるスプールアセンブリを提供することもできることが明示的に考慮される。その場合、プロセスへの非侵入的プロセス流体圧測定システムの設置は、その一対の取り付けパイプフランジを使用してスプールを取り付けるほどに簡単である。
【0046】
図1に関して説明された実施形態は、二つの構成要素の間にギャップを有し、それらの構成要素がギャップによって物理的に切り離されている鏡面的又は正反対の構造を示すが、プロセス流体導管の周の変化に対してギャップ変化の適量の機構減衰を提供するために、それらの構成要素がたとえばはさみヒンジ点を介して機械的に結合されることもできることが明示的に考慮される。加えて、内蔵ギャップセンサを使用して、パイプの振動または他の機械的摂動を検出することもできる。最後に、上記のように、製品全体をワイヤレスにすることもできる。
図1
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図4A
図4B
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図6A
図6B
図7
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図18