(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】デジタル移相回路及びデジタル移相器
(51)【国際特許分類】
H01P 1/185 20060101AFI20220726BHJP
H03H 11/20 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01P1/185
H03H11/20 A
(21)【出願番号】P 2022046122
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0158068(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111326839(CN,A)
【文献】特開2016-158035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312986(US,A1)
【文献】米国特許第06816031(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第106785250(CN,A)
【文献】特開2011-259215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00-11/00
H03H 7/18- 7/21
H03H 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延在する信号線路と、
前記信号線路の一方側に離間配置される第1の内側線路と、
前記信号線路の他方側に離間配置される第2の内側線路と、
前記一方側
において前記第1の内側線路
よりも前記信号線路から遠い位置
と前記他方側において前記第2の内側線路よりも前記信号線路から遠い位置のうちの、いずれか一方のみに設けられる外側線路と、
前記第1の内側線路、前記第2の内側線路及び前記外側線路の各一端側に設けられる第1の接地導体と、
前記外側線路の他端側に設けられる第2の接地導体と、
前記第1の内側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第1の接続導体と、
前記第2の内側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第2の接続導体と、
前記外側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第3の接続導体と、
前記外側線路の他端と前記第2の接地導体とを接続する第4の接続導体と、
前記第1の内側線路の他端と前記第2の接地導体とを開閉自在に接続する第1の電子スイッチと、
前記第2の内側線路の他端と前記第2の接地導体とを開閉自在に接続する第2の電子スイッチと
を備えることを特徴とするデジタル移相回路。
【請求項2】
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、前記第1の内側線路及び前記第2の内側線路の外側において多層に形成されている請求項1に記載のデジタル移相回路。
【請求項3】
前記外側線路は、幅が前記第1の内側線路の幅及び前記第2の内側線路の幅よりも広く、かつ多層に形成されている請求項1に記載のデジタル移相回路。
【請求項4】
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、前記第1の内側線路及び前記第2の内側線路の外側において多層に形成され、前記外側線路は、幅が前記第1の内側線路の幅及び前記第2の内側線路の幅よりも広く、かつ多層に形成されている請求項1に記載のデジタル移相回路。
【請求項5】
前記第1の内側線路、前記第2の内側線路及び前記外側線路は、第1の導電層に形成され、
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、絶縁層を挟んで前記第1の導電層と対向する第2の導電層に形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項6】
前記第1の電子スイッチ及び前記第2の電子スイッチは、低遅延モードにおいて同時に閉状態に設定され、高遅延モードにおいて同時に開状態に設定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項7】
前記第1の電子スイッチ及び前記第2の電子スイッチは、電界効果トランジスタであり、
前記電界効果トランジスタのサイズは、前記第1の接地導体の幅と前記第2の接地導体の幅とを合わせた長さ以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項8】
上部電極が前記信号線路に接続され、下部電極が前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方に接続されるコンデンサをさらに備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項9】
前記コンデンサの下部電極と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間にコンデンサ用電子スイッチをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のデジタル移相回路。
【請求項10】
前記コンデンサ用電子スイッチは、低遅延モードにおいて開状態に設定され、高遅延モードにおいて閉状態に設定されることを特徴とする請求項9に記載のデジタル移相回路。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のデジタル移相回路が複数縦続接続されてなることを特徴とするデジタル移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相回路及びデジタル移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、マイクロ波、 準ミリ波あるいはミリ波を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。このデジタル移相回路は、非特許文献1の
図2に示されているように、直線状の信号線路(signal line)の両側に当該信号線路と平行な直線状の内側接地線路(inner lines)、当該一対の内側接地線路において信号線路の反対側つまり信号線路から遠い側に内側接地線路と平行な直線状の外側接地線路(outer lines)、一対の内側接地線路及び一対の外側接地線路の各一端に接続された直線状の第1接地バー、一対の外側接地線路の各他端に接続される直線状の第2接地バー、一対の内側接地線路の各他端と第2接地バーとの間に各々設けられる一対のNMOSスイッチ等を備える。
【0003】
このようなデジタル移相回路は、信号線路における信号波の伝送に起因して一対の内側接地線路あるいは一対の外側接地線路に流れるリターン電流を一対のNMOSスイッチの開/閉に応じて切り替えることにより、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替える。すなわち、デジタル移相回路は、一対の内側接地線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが低遅延モードとなり、一対の外側接地線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが高遅延モードとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したデジタル移相回路は、例えばフェイズドアレイアンテナ等を用いた基地局等に適用されるものであり、実際には多数が縦続接続された状態で半導体基板上に実装される。すなわち、上記デジタル移相回路は、実際の位相器の構成における単位ユニットであり、数十個が縦続接続されることによって所望の機能を発揮する。
【0006】
上述した携帯通信端末では、デジタル移相回路(単位ユニット)の個数分だけ実装面積が必要になるので、デジタル移相回路(単位ユニット)の実装面積を極力小さくすることにより実装面積を抑制したいという技術課題がある。すなわち、デジタル移相回路の実用性を向上させるためには、小型化が重要な技術課題である。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも小型化が可能なデジタル移相回路及びデジタル移相器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、デジタル移相回路に係る第1の解決手段として、所定方向に延在する信号線路と、前記信号線路の一方側に離間配置される第1の内側線路と、前記信号線路の他方側に離間配置される第2の内側線路と、前記一方側または前記他方側において前記第1の内側線路または前記第2の内側線路よりも前記信号線路から遠い位置に設けられる外側線路と、前記第1の内側線路、前記第2の内側線路及び前記外側線路の各一端側に設けられる第1の接地導体と、前記外側線路の他端側に設けられる第2の接地導体と、前記第1の内側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第1の接続導体と、前記第2の内側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第2の接続導体と、前記外側線路の一端と前記第1の接地導体とを接続する第3の接続導体と、前記外側線路の他端と前記第2の接地導体とを接続する第4の接続導体と、前記第1の内側線路の他端と前記第2の接地導体とを開閉自在に接続する第1の電子スイッチと、前記第2の内側線路の他端と前記第2の接地導体とを開閉自在に接続する第2の電子スイッチとを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、デジタル移相回路に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、前記第1の内側線路及び前記第2の内側線路の外側において多層に形成されている、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、デジタル移相回路に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記外側線路は、幅が前記第1の内側線路の幅及び前記第2の内側線路の幅よりも広く、かつ多層に形成されている、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、デジタル移相回路に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、前記第1の内側線路及び前記第2の内側線路の外側において多層に形成され、前記外側線路は、幅が前記第1の内側線路の幅及び前記第2の内側線路の幅よりも広く、かつ多層に形成されている、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、デジタル移相回路に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記第1の内側線路、前記第2の内側線路及び前記外側線路は、第1の導電層に形成され、前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、絶縁層を挟んで前記第1の導電層と対向する第2の導電層に形成される、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、デジタル移相回路に係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記第1の電子スイッチ及び前記第2の電子スイッチは、低遅延モードにおいて同時に閉状態に設定され、高遅延モードにおいて同時に開状態に設定される、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、デジタル移相回路に係る第7の解決手段として、上記第1~第6のいずれかの解決手段において、前記第1の電子スイッチ及び前記第2の電子スイッチは、電界効果トランジスタであり、前記電界効果トランジスタのサイズは、前記第1の接地導体の幅と前記第2の接地導体の幅とを合わせた長さ以上である、という手段を採用する。
【0015】
本発明では、デジタル移相回路に係る第8の解決手段として、上記第1~第7のいずれかの解決手段において、上部電極が前記信号線路に接続され、下部電極が前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方に接続されるコンデンサをさらに備える、という手段を採用する。
【0016】
本発明では、デジタル移相回路に係る第9の解決手段として、上記第8の解決手段において、前記コンデンサの下部電極と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間にコンデンサ用電子スイッチをさらに備える、という手段を採用する。
【0017】
本発明では、デジタル移相回路に係る第10の解決手段として、上記第9の解決手段において、前記コンデンサ用電子スイッチは、低遅延モードにおいて開状態に設定され、高遅延モードにおいて閉状態に設定される、という手段を採用する。
【0018】
また、本発明では、デジタル移相器に係る解決手段として、上記第1~第10のいずれかの解決手段に係るデジタル移相回路が複数縦続接続されてなる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来よりも小型化が可能なデジタル移相回路及びデジタル移相器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るデジタル移相回路Aの機能構成を示す概念図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るデジタル移相回路Aの実装形態を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るデジタル移相回路Aの低遅延モードを示す概念図(a)及び高遅延モードを示す概念図(b)である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るデジタル移相器Bの機能構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、
図1に示すように信号線路1、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、外側線路3、第1の接地導体4a、第2の接地導体4b、コンデンサ5、第1の接続導体6a、第2の接続導体6b、第3の接続導体6c、第4の接続導体6d、第5の接続導体6e、第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c、第4の電子スイッチ7d及びスイッチ制御部8を備える。
【0022】
信号線路1は、所定方向に延在する直線状の帯状導体である。すなわち、この信号線路1は、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。このような信号線路1には、手前側から奥側に向かって、つまり手前側の他端(入力端)から奥側の一端(出力端)に向かって信号電流が流れる。この信号電流は、マイクロ波、 準ミリ波あるいはミリ波の波長域を有する高周波信号である。
【0023】
このような信号線路1は、電気的には分布回路定数としてのインダクタンスL1を有する。このインダクタンスL1は、信号線路1の長さ等、信号線路1の形状に応じた大きさの寄生インダクタンスである。また、この信号線路1は、電気的には分布回路定数としての静電容量C1をも有する。この静電容量C1は、信号線-内側、外側線路間あるいはシリコン基板間の寄生容量である。
【0024】
第1の内側線路2aは、このような信号線路1の一方側(
図1における右側)に離間配置される直線状の帯状導体である。この第1の内側線路2aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。また、この第1の内側線路2aは、信号線路1と所定距離を隔てて平行に設けられている。すなわち、第1の内側線路2aは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0025】
第2の内側線路2bは、上記信号線路1の他方側(
図1における左側)に離間配置される直線状の帯状導体である。この第2の内側線路2bは、第1の内側線路2aと同様に一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。また、この第2の内側線路2bは、信号線路1に対して第1の内側線路2aと同様な距離を隔てて平行に設けられている。すなわち、第2の内側線路2bは、第1の内側線路2aと同様に信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0026】
外側線路3は、上述した信号線路1の一方側において、第1の内側線路2aよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。この外側線路3は、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。また、この外側線路3は、第1の内側線路2aを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。このような外側線路3は、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0027】
なお、外側線路3については、信号線路1の一方側ではなく、信号線路1の他方側つまり第2の内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けてもよい。すなわち、この外側線路3は、信号線路1の一方側または他方側において第1の内側線路2aまたは第2の内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けられる。
【0028】
第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3の各一端側に設けられる直線状の帯状導体である。この第1の接地導体4aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体であり、電気的に接地されている。
【0029】
このような第1の接地導体4aは、同一方向に延在する第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3に直交するように設けられている。また、このような第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3の各一端側において、左右方向に延在するように第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3から所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0030】
ここで、第1の接地導体4aは、左右方向における一端(
図1における右端)が外側線路3の右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、この第1の接地導体4aは、左右方向における他端(
図1における左端)が第2の内側線路2bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。
【0031】
第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3の各他端側に設けられる直線状の帯状導体である。この第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aと同様に一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体であり、第1の接地導体4aと同様に電気的に接地されている。
【0032】
このような第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aと同様に、同一方向に延在する第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3に直交するように設けられている。また、このような第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3の各他端側において、左右方向に延在するように第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3から所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0033】
ここで、このような第2の接地導体4bは、左右方向における一端(
図1における右端)が外側線路3の右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、第2の接地導体4bは、左右方向における他端(
図1における左端)が第2の内側線路2bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。すなわち、第2の接地導体4bは、左右方向における位置が第1の接地導体4aと同一である。
【0034】
コンデンサ5は、一端が第5の接続導体6eを介して信号線路1に接続され、他端が第4の電子スイッチ7dを介して第2の接地導体4bに接続される平行平板である。このコンデンサ5は、平行平板の対向面積に応じた静電容量Caを有する。すなわち、この静電容量Caは、信号線路1と第2の接地導体4bとの間に設けられる回路定数である。
【0035】
第1の接続導体6aは、第1の内側線路2aの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。すなわち、この第1の接続導体6aは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の内側線路2aの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0036】
第2の接続導体6bは、第2の内側線路2bの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。すなわち、この第2の接続導体6bは、第1の接続導体6aと同様に上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の内側線路2bの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0037】
第3の接続導体6cは、外側線路3の一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。すなわち、この第3の接続導体6cは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が外側線路3の一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0038】
第4の接続導体6dは、外側線路3の他端と第2の接地導体4bとを電気的かつ機械的に接続する導体である。すなわち、この第4の接続導体6dは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が外側線路3の他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0039】
第5の接続導体6eは、信号線路1の他端とコンデンサ5の上部電極とを電気的かつ機械的に接続する導体である。すなわち、第5の接続導体6eは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が信号線路1の一端の下面に接続し、他端(下端)がコンデンサ5の上部電極に接続する。
【0040】
第1の電子スイッチ7aは、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとを開閉自在に接続するトランジスタ(電界効果トランジスタ)である。この第1の電子スイッチ7aは、図示するように例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第1の内側線路2aの他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、またゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0041】
このような第1の電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいてドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切替える。すなわち、第1の電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8によって第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの接続をON/OFFする。
【0042】
第2の電子スイッチ7bは、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとを開閉自在に接続するトランジスタである。この第2の電子スイッチ7bは、第1の電子スイッチ7aと同様にMOS型FETであり、ドレイン端子が第2の内側線路2bの他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、またゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0043】
このような第2の電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいてドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切替える。すなわち、第2の電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8によって第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの接続をON/OFFする。
【0044】
第3の電子スイッチ7cは、信号線路1の一端と第1の接地導体4aとを開閉自在に接続するトランジスタである。この第3の電子スイッチ7cは、上述した第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bと同様にMOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路1の一端に接続され、ソース端子が第1の接地導体4aに接続され、またゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。なお、第3の電子スイッチ7cについては、信号線路1の一端と第1の接地導体4aとの間ではなく、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に設けてもよい(
図1参照)。
【0045】
このような第3の電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいてドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切替える。すなわち、第3の電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8によって信号線路1の一端と第1の接地導体4aとの接続をON/OFFする。
【0046】
第4の電子スイッチ7dは、コンデンサ5の下部電極と第2の接地導体4bとを開閉自在に接続するトランジスタである。この第4の電子スイッチ7dは、上述した第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b及び第3の電子スイッチ7cと同様にMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ5の他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、またゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0047】
このような第4の電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいてドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切替える。すなわち、第4の電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8によってコンデンサ5の他端と第2の接地導体4bとの接続をON/OFFする。なお、第4の電子スイッチ7dは、本発明のコンデンサ用電子スイッチに相当する。
【0048】
スイッチ制御部8は、上述した第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c及び第4の電子スイッチ7dを制御する制御回路である。すなわち、このスイッチ制御部8は、4つの出力ポートを備えており、各出力ポートから個別のゲート信号を出力して第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c及び第4の電子スイッチ7dの各ゲート端子に供給することにより第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c及び第4の電子スイッチ7dのON/OFF動作を制御する。
【0049】
ここで、
図1ではデジタル移相回路Aの機械的構造が解り易いようにデジタル移相回路Aを斜視した模式図を示しているが、実際のデジタル移相回路Aは、半導体製造技術を利用することにより、
図2に示すように多層構造物として形成される。
【0050】
すなわち、デジタル移相回路Aは、信号線路1、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3が第1の導電層R1に形成され、第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、絶縁層Iを挟んで第1の導電層R1と対向する第2の導電層R2に形成される。第1の導電層R1の構成要素、第2の導電層R2の構成要素、コンデンサ5並びに第1~第4の電子スイッチ7a~7dは、ビア(スルーホール)によって相互に接続される。すなわち、このビアは、絶縁層I内に埋設され、上述した第1の接続導体6a、第2の接続導体6b、第3の接続導体6c及び第4の接続導体6dとして機能する。
【0051】
このような多層構造のデジタル移相回路Aにおいて、例えば第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bの外側の領域において多層に形成されている。これら第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bの多層化は、第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bのインピーダンスの低下を狙うものであり、デジタル移相回路Aの全体的な損失の低減を図るものである。
【0052】
また、外側線路3は、図示するように幅(
図2における上下方向の寸法)が第1の内側線路2aの幅及び第2の内側線路2bの幅よりも広く形成されている。また、外側線路3は、多層に形成されている。この外側線路3の幅広化及び多層化は、外側線路3のインピーダンスの低下を狙うものである。外側線路3のインピーダンスを低下させることにより、低遅延モードにおけるデジタル移相回路Aの損失と高遅延モードにおけるデジタル移相回路Aの損失差の縮小を図ることができる。
【0053】
なお、上述した第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bの多層化と外側線路3の幅広化及び多層化とは、必要に応じていずれか一方のみを満足すればよい。すなわち、第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bの多層化のみを行ってもよく、あるいは外側線路3の幅広化及び多層化のみを行ってもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係るデジタル移相回路Aの動作について、
図3を参照して詳しく説明する。
【0055】
このデジタル移相回路Aは、第1~第4の電子スイッチ7a~7dの導通状態に応じて動作モードが切替えられる。すなわち、デジタル移相回路Aの動作モードには、スイッチ制御部8によって第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bのみがON状態に設定される低遅延モードと、同じくスイッチ制御部8によって第4の電子スイッチ7dのみがON状態に設定される高遅延モードとがある。
【0056】
低遅延モードにおいて、スイッチ制御部8は、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bをON状態に設定し、また第4の電子スイッチ7dをOFF状態に設定する。すなわち、低遅延モードでは、高周波信号が信号線路1の入力端(他端)から出力端(一端)まで伝搬するまで第1の伝搬遅延時間TLによって、高遅延モードにおける第2の位相差θHよりも小さな第1の位相差θLが発生する。
【0057】
この低遅延モードについてさらに詳しく説明すると、第1の内側線路2aは、第1の電子スイッチ7aがON状態に設定されることにより、他端が第2の接地導体4bと接続された状態となる。すなわち、第1の内側線路2aは、一端が第1の接続導体6aを介して第1の接地導体4aに常時接続されており、他端が第1の電子スイッチ7aを介して第2の接地導体4bと接続されることによって一端と他端との間に電流が流れ得る第1の通電経路を形成する。
【0058】
一方、第2の内側線路2bは、第2の電子スイッチ7bがON状態に設定されることにより、他端が第2の接地導体4bと接続された状態となる。すなわち、第2の内側線路2bは、一端が第2の接続導体6bを介して第1の接地導体4aに常時接続されており、他端が第2の電子スイッチ7bを介して第2の接地導体4bと接続されることによって一端と他端との間に電流が流れ得る第2の通電経路を形成する。
【0059】
そして、このような第1の内側線路2aの両端接続状態において、信号線路1に入力端から出力端に向かって信号電流が流れると、当該伝搬に起因して第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bには、
図3(a)に示すように一端から他端に向かって信号電流のリターン電流が流れる。
【0060】
すなわち、第1の通電経路を形成する第1の内側線路2aには、信号線路1における信号電流の通電によって信号電流の通電方向とは逆方向の第1のリターン電流D1が流れる。また、第2の通電経路を形成する第2の内側線路2bには、信号線路1における信号電流の通電によって信号電流の通電方向とは逆方向、つまり第1のリターン電流D1と同方向に第2のリターン電流D2が流れる。
【0061】
ここで、第1の内側線路2aに流れる第1のリターン電流D1及び第2の内側線路2bに流れる第2のリターン電流D2は、いずれも信号電流の通電方向に対して逆方向である。したがって、第1のリターン電流D1及び第2のリターン電流D2は、信号線路1と第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bとの電磁気的な結合に起因して、信号線路1のインダクタンスL1を減少させるように作用する。このインダクタンスL1の低減量をΔLsとすると、信号線路1の実効的なインダクタンスLmは(L1-ΔLs)となる。
【0062】
また、信号線路1は、上述したように寄生容量としての静電容量C1を有している。低遅延モードでは、第4の電子スイッチ7dがOFF状態に設定されるので、コンデンサ5は、信号線路1と第2の接地導体4bとの間に接続されていない状態である。すなわち、コンデンサ5の静電容量Caは、信号線路1を伝搬する高周波信号に影響を与えない。したがって、信号線路1を伝搬する高周波信号には、(Lm×C1)1/2に比例した第1の伝搬遅延時間TLが作用する。
【0063】
そして、信号線路1の出力端(一端)における高周波信号は、このような第1の伝搬遅延時間TLに起因して信号線路1の入力端(他端)における高周波信号より位相が第1の位相差θLだけ遅れたものとなる。すなわち、低遅延モードでは、第1のリターン電流D1及び第2のリターン電流D2によって信号線路1のインダクタンスL1がインダクタンスLmに低減されることによって、信号線路1が有する本来の伝搬遅延時間が減少し、この結果として信号線路1が本来有する位相差よりも小さな第1の位相差θLが実現される。
【0064】
ここで、低遅延モードでは、第3の電子スイッチ7cがON状態に設定されることにより、信号線路1の損失を意図的に増加させている。この損失付与は、低遅延モードにおいて高周波信号に与える損失を高遅延モードにおいて高周波信号に与える損失と同程度にしようとするためのものである。
【0065】
すなわち、低遅延モードにおける高周波信号の損失は、高遅延モードにおける高周波信号の損失よりも明確に小さい。この損失差は、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替えた場合にデジタル移相回路Aから出力される高周波信号の振幅差を招来させるものである。このような事情に対して、デジタル移相回路Aでは、低遅延モードで第3の電子スイッチ7cをON状態に設定することにより、上記振幅差を解消している。
【0066】
一方、高遅延モードにおいて、スイッチ制御部8は、第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7cをOFF状態に設定し、また第4の電子スイッチ7dをON状態に設定する。すなわち、高遅延モードでは、高周波信号が信号線路1の入力端(他端)から出力端(一端)まで伝搬するまで第2の伝搬遅延時間THによって、低遅延モードにおける第1の位相差θLよりも大きな第2の位相差θHが発生する。
【0067】
この高遅延モードでは、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bがOFF状態に設定されるので、第1の内側線路2aには第1の通電経路が形成されず、また第2の内側線路2bには第2の通電経路が形成されない。したがって、第1の内側線路2aに流れる第1のリターン電流D1は極めて小さくなり、また第2の内側線路2bに流れる第2のリターン電流D2は極めて小さくなる。
【0068】
これに対して、外側線路3は、一端が第3の接続導体6cを介して第1の接地導体4aに接続され、また他端が第4の接続導体6dを介して第2の接地導体4bに接続されている。すなわち、外側線路3には一端と他端との間に電流が流れ得る第3の通電経路が予め形成されている。したがって、高遅延モードでは、信号線路1における信号電流に起因して、
図3(b)に示すように外側線路3の一端から他端に向かって第3のリターン電流D3が流れる。
【0069】
この第3のリターン電流D3は、信号線路1における信号電流の通電方向に対して逆方向である。したがって、第3のリターン電流D3は、信号線路1と外側線路3との電磁気的な結合に起因して信号線路1のインダクタンスL1を減少させ得る。
【0070】
しかしながら、信号線路1と外側線路3との距離は、信号線路1と第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bとの距離よりも大きい。したがって、第3のリターン電流D3は、第1のリターン電流D1及び第2のリターン電流D2よりもインダクタンスL1を減少させる作用が小さい。第3のリターン電流D3に起因するインダクタンスL1の低減量をΔLhとすると、信号線路1の実効的なインダクタンスLpは(L1-ΔLh)となる。また、外側線路3が信号線路1の片側にしかないので、外側線路3が信号線路1の両側ある場合と比較してインダクタンスL1を減少させる作用が小さい。
【0071】
一方、信号線路1は寄生容量としての静電容量C1を有している。また、高遅延モードでは、第4の電子スイッチ7dがON状態に設定されるので、信号線路1と第2の接地導体4bとの間にはコンデンサ5が接続されている。すなわち、信号線路1は、コンデンサ5の静電容量Caと静電容量C1(寄生容量)とを合算した静電容量Cbを有する。したがって、信号線路1を伝搬する高周波信号には、(Lp×Cb)1/2に比例した第2の伝搬遅延時間THが作用する。
【0072】
そして、信号線路1の出力端(一端)における高周波信号は、このような第2の伝搬遅延時間THに起因して信号線路1の入力端における高周波信号より位相が第2の位相差θHだけ遅れたものとなる。すなわち、高遅延モードでは、第3のリターン電流D3によって信号線路1のインダクタンスL1がインダクタンスLpに低減されることによって、また第4の電子スイッチ7dがON状態に設定されることによって、低遅延モードの第1の位相差θLよりも大きな第2の位相差θHが実現される。
【0073】
ここで、高遅延モードでは、第3の電子スイッチ7cがOFF状態に設定される。すなわち、高遅延モードでは、信号線路1の損失を意図的に増加させる処置は施されない。この結果、高遅延モードにおける高周波信号の出力振幅は、低遅延モードにおける出力振幅に近づく。なお、第3の電子スイッチ7cについては必ずしも必要なものではなく、削除してもよい。
【0074】
以上が本実施形態に係るデジタル移相回路Aの全体的な動作であるが、このようなデジタル移相回路Aは、以下のような効果を奏する。
【0075】
すなわち、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、第1の内側線路2aまたは第2の内側線路2bの外側のみに外側線路3を備える。これに対して、非特許文献1に開示された従来のデジタル制御型の移相回路は、一対の内側接地線路の各々について外側接地線路を備える構成を採用する。したがって、本実施形態によれば、第1の内側線路2aの外側のみに外側線路3を備えるので、従来よりも小型化が可能なデジタル移相回路Aを提供することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、半導体製造技術を用いることにより第1の内側線路2a、第2の内側線路2b及び外側線路3が第1の導電層R1に形成され、また第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bが絶縁層Iを挟んで第1の導電層R1と対向する第2の導電層R2に形成される。
【0077】
このような本実施形態によれば、デジタル移相回路Aが形成される半導体チップにおける専有容積を従来よりも小さくすることが可能であり、この結果として例えば半導体チップの小型化を実現することが可能である。また、外側線路3が信号線路1の片側にしかないので、外側線路3が信号線路1の両側ある場合と比較してインダクタンスL1を減少させる作用が小さい。
【0078】
また、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが低遅延モードにおいて同時にON状態(閉状態)に設定され、また第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが高遅延モードにおいて同時にOFF状態(開状態)に設定される。
【0079】
このような本実施形態によれば、低遅延モードにおいて第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bのいずれか一方のみをON状態(閉状態)に設定した場合よりも、位相差を大きくすることが可能である。すなわち、本実施形態によれば、低遅延モードにおいて第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bのいずれか一方のみをON状態(閉状態)に設定した場合よりも高遅延モードに対する位相差を大きく設定することが可能である。
【0080】
また、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、一端が信号線路1に接続され、他端が第2の接地導体4bに接続されるコンデンサ5をさらに備える。このような本実施形態によれば、コンデンサ5を設けない場合に比較して低遅延モードにおける第1の位相差θL及び高遅延モードにおける第2の位相差θHをより大きく設定することができる。
【0081】
ここで、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、コンデンサ5の他端を第2の接地導体4bに接続したが、これに代えてコンデンサ5の他端を第1の接地導体4aに接続してもよく、あるいはコンデンサ5の他端を第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bの両方に接続してもよい。すなわち、本実施形態におけるコンデンサ5は、一端が信号線路1に接続され、他端が第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bの少なくとも一方に接続されていればよい。
【0082】
さらに、本実施形態に係るデジタル移相回路Aは、コンデンサ5の他端と第2の接地導体4bとの間に第4の電子スイッチ7d(コンデンサ用電子スイッチ)をさらに備える。このような本実施形態によれば、低遅延モードと高遅延モードとでコンデンサ5の接続/非接続を切替えることができるので、低遅延モードにおける第1の位相差θLと高遅延モードにおける第2の位相差θHとの差異を大きく設定することができる。
【0083】
最後に、このような本実施形態に係るデジタル移相回路Aを複数用いたデジタル移相器Bについて説明する。
【0084】
このデジタル移相器Bは、
図4に示すように、本実施形態に係るデジタル移相回路Aが複数縦続接続されてなるものである。すなわち、このデジタル移相器Bは、第1のデジタル移相回路A
1、第2のデジタル移相回路A
2、(中略)、第nのデジタル移相回路A
n、つまりn個のデジタル移相回路Aが直線状に縦続接続された移相回路である。
【0085】
このような本実施形態によれば、第1のデジタル移相回路A1、第2のデジタル移相回路A2、(中略)、第nのデジタル移相回路Anの各々が従来のデジタル制御型の移相回路よりも小型なので、従来よりも小型化が可能なデジタル移相器Bを提供することが可能である。
【0086】
なお、本実施形態のデジタル移相回路Aにおいて、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bの各サイズが、第2の接地導体4bの幅と第1の接地導体4aの幅とを合わせた幅H1(
図4参照)以上に設定されてもよい。より好ましくは、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bの各サイズは、幅H1と同等か幅H1よりも多少はみ出る程度に設定される。これによって第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bにおける損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0087】
A…デジタル移相回路、B…デジタル移相器、I…絶縁層、R1…第1の導電層、R2…第2の導電層、1…信号線路、2a…第1の内側線路、2b…第2の内側線路、3…外側線路、4a…第1の接地導体、4b…第2の接地導体、5…コンデンサ、6a…第1の接続導体、6b…第2の接続導体、6c…第3の接続導体、6d…第4の接続導体、7a…第1の電子スイッチ、7b…第2の電子スイッチ、7c…第3の電子スイッチ、7d…第4の電子スイッチ(コンデンサ用電子スイッチ)、8…スイッチ制御部
【要約】
【課題】従来よりも小型化が可能なデジタル移相回路及びデジタル移相器を提供する。
【解決手段】所定方向に延在する信号線路と、信号線路の一方側に離間配置される第1の内側線路と、信号線路の他方側に離間配置される第2の内側線路と、一方側または他方側において第1の内側線路または第2の内側線路よりも信号線路から遠い位置に設けられる外側線路と、第1の内側線路、第2の内側線路及び外側線路の各一端に接続される第1の接地導体と、外側線路の他端に接続される第2の接地導体と、第1の内側線路の他端と第2の接地導体との間に設けられる第1の電子スイッチと、第2の内側線路の他端と第2の接地導体との間に設けられる第2の電子スイッチとを備える。
【選択図】
図1