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特許7111927非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/04 20060101AFI20220726BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20220726BHJP
【FI】
A24D1/04
A24F40/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022057108
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2021530007の分割
【原出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022084908
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019123154
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七崎 裕介
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506594(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114530(WO,A1)
【文献】特表2009-545324(JP,A)
【文献】米国特許第5595196(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/04
A24F 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記チップペーパーは、少なくとも一部にリップリリース剤が塗工され、第1のチップペーパーと第2のチップペーパーとからなり、
前記巻装部が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸口端部を含む第1領域、及びたばこロッド側端部を含む第2領域から構成され、
前記第1領域及び前記第2領域が、下記条件(A)を満たし、
前記第1のチップペーパーは、前記吸口端部を含み、前記第2のチップペーパーの一部に重なるように設けられている、
非燃焼加熱式たばこ。
(A) (第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)>(第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)
【請求項2】
前記マウスピース部が冷却部及びフィルター部を有し、かつ、前記冷却部が複数の開孔を有する、請求項1に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項3】
前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置までの領域であり、
前記第2領域が、及び該17mmの位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、請求項1又は2に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項4】
前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から42.5%の位置までの領域であり、
前記第2領域が、該42.5%の位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、請求項1又は2に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項5】
前記複数の開孔が冷却部の外周面の周方向に配置され、
前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から前記開孔の配置位置までの領域であり、
前記第2領域が、前記開孔の配置位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、請求項2に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項6】
前記第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量に対する、前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量の割合が、1/2以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項7】
前記第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量に対する、前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量の割合が、1/4以下である、請求項6に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項8】
前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量が、0.56μg/mm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項9】
前記リップリリース剤が、少なくともニトロセルロール又はエチルセルロースを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される非燃焼加熱式たばことから構成される電気加熱式たばこ製品が開発されている(特許文献1)。該非燃焼加熱式たばこは、一般的に、たばこ刻みやエアロゾル生成基材等が巻紙により巻装されてなるたばこロッド、加熱によりたばこロッドから発生したエアロゾルを吸引するためのマウスピース、及びこれらを巻装するチップペーパーを備える。
電気加熱式たばこ製品を使用する際には、前記非燃焼加熱式たばこを電気加熱式デバイスに挿入する。そして、ヒーター部材を発熱させることにより、該ヒーター部材に接触する箇所を起点としてたばこロッドが加熱され、たばこロッドが含むエアロゾル生成基材とともに、香喫味成分が使用者にデリバリーされる。
【0003】
たばこに関連する技術分野、特に非燃焼加熱式たばこ製品の分野では、香喫味のさらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-191652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非燃焼加熱式たばこに関連する技術分野において、喫味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制することが要求されている。この要求に対し、同分野では、チップペーパーの塗工剤を対象とした研究はほとんど進められてこなかった。
チップペーパーの塗工剤としては、使用者の唇との付着を低減するために、リップリリース剤が塗工されている。
本発明者は、非燃焼加熱式たばこの使用時に、チップペーパーに塗工されたリップリリース剤が加熱され、該リップリリース剤に含まれる成分が分解されることで、当該分解された成分が、喫味等に不所望な影響を与える物質の発生量の増加に寄与することを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、非燃焼加熱式たばこの使用時にリップリリース剤の成分に由来して発生する、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の量が低減された非燃焼加熱式たばこ、及び電気加熱式たばこ製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、チップペーパーにより巻装された巻装部の特定の領域におけるリップリリース剤の含有量を特定の範囲とすることにより、唇の皮の剥がれの問題の回避、すなわちリップリリース性を確保しつつ、非燃焼加熱式たばこの使用時に、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の発生量を低減できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記チップペーパーは、少なくとも一部にリップリリース剤が塗工され、
前記巻装部が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸口端部を含む第1領域、及びたばこロッド側端部を含む第2領域から構成され、
前記第1領域及び前記第2領域が、下記条件(A)を満たす、非燃焼加熱式たばこ。
(A) (第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)>(第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)
[2] 前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置までの領域であり、
前記第2領域が、及び該17mmの位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[3] 前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から42.5%の位置までの領域であり、
前記第2領域が、該42.5%の位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[4] 前記マウスピース部が冷却部及びフィルター部を有する、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[5] 前記冷却部が複数の開孔を有し、かつ、該複数の開孔が冷却部の外周面の周方向に配置され、
前記第1領域が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から前記開孔の配置位置までの領域であり、
前記第2領域が、前記開孔の配置位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、[4]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[6] 前記第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量に対する、前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量の割合が、1/2以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[7] 前記第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量に対する、前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量の割合が、1/4以下である、[6]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[8] 前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量が、0.56μg/mm未満である、[1]~[7]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[9] 前記リップリリース剤が、少なくともニトロセルロール又はエチルセルロースを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[10] ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、[1]~[9]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非燃焼加熱式たばこの使用時にリップリリース剤の成分に由来して発生する、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の量が低減された非燃焼加熱式たばこ、及び電気加熱式たばこ製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非燃焼加熱式たばこの一態様を示す概略図である。
図2】非燃焼加熱式たばこの一態様の一部を変更した態様を示す概略図である。
図3】非燃焼加熱式たばこの一態様の一部を変更した態様を示す概略図である。
図4】非燃焼加熱式たばこの一態様における開孔の一態様を示す概略図である。
図5】電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの外周面を加熱する態様を示す概略図である。
図6】電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの内部を加熱する態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
なお、図1~6に示す非燃焼加熱式たばこの概略図は、説明のために各種の部材を適宜大きく表したり、小さく表したりしており、本発明の実施形態の実際の大きさや比率を表したものではない。
また、巻装部とは、チップペーパー及びこれに塗工されるリップリリース剤を含む概念である。
また、本明細書において、特段の断りが無い限り、巻装部の「外側」とは、非燃焼加熱式たばこの使用時に使用者の唇が接触する面を意味し、「内側」とは、その反対側の面を意味する。
また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0012】
<1.非燃焼加熱式たばこ>
本発明の一実施形態である非燃焼加熱式たばこ(以下、単に「非燃焼加熱式たばこ」とも称する。)は、たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記チップペーパーは、少なくとも一部にリップリリース剤が塗工され、
前記巻装部が、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸い口端部を含む第1領域、及びたばこロッド側端部を含む第2領域から構成され、
前記第1領域及び前記第2領域が、下記条件(A)を満たす、非燃焼加熱式たばこ。
(A) (第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)>(第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)
上記実施形態である非燃焼加熱式たばこの一例を図1に示す。以下、当該図1を参照しながら非燃焼加熱式たばこの説明を行う。なお、図1では、チップペーパーの片側全体にリップリリース剤が均一な濃度で塗工されているように図示されているが、そのような限定はされず、塗工箇所によって濃度差が生じていてよい。これは他の図においても同様とする。
図1におけるhの方向が、非燃焼加熱式たばこの長軸方向である。
【0013】
非燃焼加熱式たばこは、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅(本明細書においては、たばこロッド部側の底面の幅とする。)、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。しかし、本明細書においては、上述した通り、長軸方向はhで示された方向であると規定している。したがって、w≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長軸方向と呼ぶ。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、図1に示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅w、これに直交する長さが高さhとなる。
【0014】
非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さhは、特段制限されず、例えば、通常35mm以上であり、40mm以上であることが好ましく、45mm以上であることがより好ましい。また、通常105mm以下であり、95mm以下であることが好ましく、85mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱式たばこの柱状体の底面の幅wは、特段制限されず、例えば、通常5mm以上であり、5.5mm以上であることが好ましい。また、通常10mm以下であり、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
以下、非燃焼加熱式たばこを構成する各構成部の説明を行う。
【0015】
<1-1.巻装部>
[巻装部の第1領域と第2領域]
図1に示すように、たばこロッド部10及びマウスピース部11がチップペーパー12により巻装されてなる巻装部は、第1領域12a及び第2領域12bから構成される。なお、図1には示されていないが、たばこロッド部10は、後述するように、たばこ充填物が巻紙により巻装されたものである。さらに、当該チップペーパーは、少なくとも一部にリップリリース剤13が塗工されている。
該第1領域12aは、前記非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部を含む領域であり、該第2領域12bは、該第1領域よりも前記巻装部のたばこロッド部側に位置する領域である。該第1領域と該第2領域は、隣接する領域である。
図1において、第1領域におけるリップリリース剤とは、13aで示される部分であり、第2領域におけるリップリリース剤とは、13bで示される部分である。
なお、第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量を、単に「第1領域のリップリリース剤の量」とも称し、また、第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量を、単に「第2領域のリップリリース剤の量」とも称する。
【0016】
従来の非燃焼加熱式たばこでは、通常、チップペーパーの全面にリップリリース剤が塗工されており、かつ、該面内でリップリリース剤の濃度を変える、つまり、上記条件(A)を満たすようにリップリリース剤を塗工することは行われていない。この場合には、リップリリース剤の塗工目的であるリップリリース性の確保は達成されるものの、使用時において、加熱により生じるリップリリース剤由来の物質がチップペーパー全面から発生してしまう。
一方で、上記条件(A)を満たすようにリップリリース剤が塗工された場合、第1領域のリップリリース剤により、リップリリース性の確保が達成されるだけでなく、第2領域のリップリリース剤の量が第1領域のリップリリース剤の量よりも少ないために、上記の従来の非燃焼加熱式たばこよりも、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量が低減される。なお、チップペーパーの少なくとも一部にリップリリース剤が塗工されるが、リップリリース性の確保の観点から、リップリリース剤の塗工部分としては、マウスピース部に備えられ得る後述のフィルター部が直下に存在するチップペーパーの領域の少なくとも一部が塗工されている態様が好ましく、その領域の全面に塗工されているものも好ましい態様である。
第1の領域及び第2の領域の態様は、特段制限されないが、特に好ましい態様について以下に説明する。
【0017】
(1)第1の態様
第1の領域及び第2の領域の第1の態様は、第1領域が、非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置までの領域であり、第2領域が、及び該17mmの位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、という特徴を有する態様である。
非燃焼加熱式たばこの一般的な使用態様では、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置までの領域である第1領域にリップリリース剤が塗工されていれば、使用時における喫煙者の唇と非燃焼加熱式たばことの接触領域(「リップ接触領域」とも称する。)を考慮すると、十分なリップリリース性を確保することができる。さらに、当該17mmの位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である第2領域におけるリップリリース剤の塗工量を減少させることにより、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる。
【0018】
第1領域と第2領域とを区分する、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部からの位置は、上記の理由から17mmとすることができるが、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる観点から、15mmであることが好ましく、13mmであることがより好ましく、10mmであることが特に好ましい。当該位置をこれ以上吸口端部側に近づけると、リップリリース性の確保が困難になる。
【0019】
(2)第2の態様
第1の領域及び第2の領域の第2の態様は、第1領域が、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から42.5%の位置までの領域であり、第2領域が、該42.5%の位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、という特徴を有する態様である。
上記の第1の態様と同様に、非燃焼加熱式たばこの一般的な使用態様を考慮すると、当該非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から42.5%の位置までの領域である第1領域にリップリリース剤が塗工されていれば、十分なリップリリース性を確保することができ、かつ、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる。
【0020】
第1領域と第2領域とを区分する、当該非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対する非燃焼加熱式たばこの吸口側端部からの比率は、上記の理由から42.5%とすることができるが、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる観点から、37.5%であることが好ましく、32.5%であることがより好ましく、25%であることが特に好ましい。当該位置をこれ以上吸口端部側に近づけると、リップリリース性の確保が困難になる。
【0021】
(3)第3の態様
本実施形態である非燃焼加熱式たばこにおけるマウスピース部は、冷却部及びフィルター部を有していてもよい。この場合においてとり得る態様である、第1の領域及び第2の領域の第3の態様は、冷却部が複数の開孔を有し、かつ、該複数の開孔が冷却部の外周面の周方向に配置され、第1領域が、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から前記開孔の配置位置までの領域であり、第2領域が、前記開孔の配置位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域である、という特徴を有する態様である。
冷却部における開孔とは、使用時において、該開孔より吸口端側に希釈空気を導入することにより、冷却部やフィルター部中の空気と煙流れを制御することを可能とするものである。一般的に、該開孔が設けられる位置より吸口端側の領域が、リップ接触領域となる。つまり、この開孔位置より吸口端側の領域にリップリリース剤が塗工されていれば、十分なリップリリース性を確保することができる。そして、上記の第1の態様でも述べたように、第2領域におけるリップリリース剤の塗工量を減少させることにより、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる。特に、通常、開孔位置を境界にマウスピース部中の空気や煙の流れが変化し、開孔よりも吸口端側の巻装部の温度が、開孔よりもたばこロッド側の巻装部の温度よりも大きく低下する傾向があるため、開孔位置よりもたばこロッド側の巻装部中のリップリリース剤の含有量を減少させることにより、リップリリース剤由来の物質の発生量を大きく減少させることができる。
上記の開孔は、本分野において、「ベンチレーション開孔」と称されることもある。
【0022】
開孔は、冷却部の外周面の周方向に配置される(具体的には、冷却部における非燃焼加
熱式たばこの長軸方向に垂直な面上に配置される)が、その周方向の配置(「円周配置」とも称する。)の数は、特段制限されず、2つ以上存在していてもよいが、この場合において、一般的に円周配置が設けられるのはリップ接触領域の外側であるため、第1の領域と第2の領域との境界となる円周配置は、吸口端に最も近い円周配置とする。
開孔の位置は、特段制限されないが、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を減少させることができる観点から、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の該巻装部の長さに対して、前記非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmとすることが好ましく、15mmであることがより好ましく、13mmであることがさらに好ましく、10mmであることが特に好ましい。
【0023】
[巻装部の構成]
巻装部を構成するチップペーパー、及びこれに塗工されるリップリリース剤の構成は、特段限定されない。図1に示すように、1枚のチップペーパーの全面にリップリリース剤が塗工される態様が一般的であるが、以下の図2(a)~(f)の説明に示すような態様、さらには、これらを組合せた態様とすることができる。
図2(a):1枚のチップペーパーの一部にリップリリース剤が塗工されていない態様
図2(b):1枚のチップペーパーの第2領域にリップリリース剤が塗工されていない態様
図2(c):1枚のチップペーパーの面内でリップリリース剤に濃度勾配が存在する態様図2(d):2枚以上のチップペーパーが重なり、その上にリップリリース剤が塗工される態様
図2(e):2枚以上のチップペーパーが重なり、それぞれのチップペーパーにリップリリース剤が塗工される態様
図2(f):2枚以上のチップペーパーの一部が重なり、その上にリップリリース剤が塗工される態様
これらの図2(a)~(f)の中でも、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量をより減少させることができる観点から、図2(b)の態様が好ましい。
【0024】
巻装部の第1領域におけるサイズ度は、特段制限されないが、使用後の唇離れの観点から、通常0.2秒以上であり、0.3秒以上であることが好ましく、0.4秒以上であることがより好ましい。一方で、通常2.0秒以下であり、1.5秒以下であることが好ましく、1.0秒以下であることがより好ましい。
また、巻装部の第2領域におけるサイズ度は、特段制限されないが、喫味影響の観点から、通常0.01秒以上であり、0.03秒以上であることが好ましく、0.05秒以上であることがより好ましい。一方、通常0.20秒以下であり、0.15秒以下であることが好ましく、0.10秒以下であることがより好ましい。
サイズ度は、以下の条件で測定することができる。
測定装置:表面・サイズ度テスター Model EST12(日本ルフト(株)製)
サンプル(試験紙):温度23℃、湿度50RH%の環境で24時間保持した後、20mm×70mmに裁断した紙
測定方法:上記測定装置の測定セル内に注入した試験液(水)の中に試験紙を浸漬し、その時点から厚さ方向へ低エネルギーの超音波を発射する。超音波を受信する受信機の超音波強度の時間変化を測定することで、試験液と試験紙が接触する時点からの濡れ、浸漬を評価することができる。本明細書におけるサイズ度は、試験紙が試験液に完全に含侵した時点を測定開始時として得られる透過率ピークにおいて、該測定開始時から透過率ピークの最大値が得られるまでの時間(MAX値)とする。
【0025】
巻装部における水との接触角は、使用後の唇離れの観点から、第1領域、及び第2領域ともに90°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましい。
接触角は、以下の条件で測定することができる。
測定装置:接触角計 Model DMC-MC3((株)共和電業製)
サンプル(試験紙):温度23℃、湿度50RH%の環境で24時間保持した後、20mm×70mmに裁断した紙
測定方法:両面テープでスライドガラスに試験紙を貼り付け、液(水)滴量7μL、測定開始1000ms、接触角評価法θ/2法の条件で測定することができる。
【0026】
[チップペーパー]
巻装部を構成するチップペーパー12の材料は、特段制限されず、一般的な植物性の繊維(パルプ)で作製された紙や、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシート、ポリマー系のシート、アルミ箔のような金属箔等を用いることができる。なお、ここでいうチップペーパーとは、例えば、たばこロッド部とマウスピース部とを連結するなど、非燃焼加熱式たばこにおける複数のセグメントを接続するシートのことである。
【0027】
チップペーパーの製造方法は、特段制限されず、一般的な方法を適用することができ、例えば、パルプを主成分とする態様の場合、パルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化する方法が挙げられる。なお、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的に喫煙物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。また、パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0028】
チップペーパー12の長軸方向の高さは、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常15mm以上であり、20mm以上であることが好ましく、25mm以上であることがより好ましい。一方で、通常55mm以下であり、50mm以下であることが好ましい。
チップペーパー11の厚さは、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常30μm以上であり、35μm以上であることが好ましい。一方で、通常150μm以下であり、140μm以下であることが好ましい。
【0029】
チップペーパー12の坪量は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常30g/m以上であり、35g/m以上であることが好ましい。一方で、通常150g/m以下であり、140g/m以下であることが好ましい。
チップペーパー12の通気度は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、10コレスタ単位以下であることが好ましい。
【0030】
<1-2.リップリリース剤>
本実施形態におけるリップリリース剤の固形分は、分析のし易さや、実際の固形分を考慮して、その100%がニトロセルロースであってもよく、その100%がエチルセルロースであってもよく、また、これらを任意の割合で混合した混合物であってもよい。また当該リップリリース剤の固形分は、ニトロセルロース及び/又はエチルセルロース以外の成分をさらに含む混合物であってもよい。
従来、非燃焼加熱式たばこにおいて、リップリリース剤を対象とした喫味等への影響の
調査は行われてこなかった。本発明者は、全面にリップリリース剤が塗工された巻装部を有する非燃焼加熱式たばこと、上記条件(A)を満たす非燃焼加熱式たばこを用意し、使用後の非燃焼加熱式たばこに含まれるTSNAの含有量を両者で比較する実験を行った。その結果、全面にリップリリース剤が塗工された巻装部を有する非燃焼加熱式たばこの方が、条件(A)を満たす非燃焼加熱式たばこよりも、多くのTSNAを含有していることがわかった。この原因について、本発明者は、以下のように考察した。
リップリリース剤に用いられる代表的な成分として、セルロースの硝酸エステルであるニトロセルロースが挙げられる。通常、ニトロセルロースは、セルロースを硝酸及び硫酸の混酸で処理して得られるものである。このニトロセルロースが加熱により分解されて硝酸が生じ、当該硝酸とたばこ原料中のマイナーアルカノイドとが反応することによりTSNAが生じた。全面にリップリリース剤が塗工された巻装部を有する非燃焼加熱式たばこは、一部にリップリリース剤が塗工された巻装部を有する非燃焼加熱式たばこよりも、リップリリース剤が加熱される領域が広くなる。そのため、ヒーターの熱が、直接又は間接的にリップリリース剤に伝わり、リップリリース剤の一部が過度に加熱されたため、上記のような結果となったと考えられる。
なお、TSNAとは、たばこ特異的なニトロソアミンの総称であり、N’-ニトロソノルニコチン(NNN)、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、N’-ニトロソアナタビン(NAT)、N’-ニトロソアナバシン(NAB)により代表される。
【0031】
リップリリース剤にニトロセルロースが含まれる場合には、上述したようにTSNAが発生するが、ニトロセルロース以外にも、喫味等へ不所望な影響を及ぼす物質を発生させる可能性のある成分がリップリリース剤には含まれている。例えば、リップリリース剤に用い得るエチルセルロースは、喫味等に不所望な変化を起こすおそれがある。
本実施形態におけるリップリリース剤に含まれる材料は、特段制限されず、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、及びこれらの混合物等が挙げられるが、TSNAの発生を抑制できる観点からは、ニトロセルロースが含まれるリップリリース剤に特に有利となる。
【0032】
リップリリース剤は、上記のニトロセルロース及びエチルセルロース以外の成分が含まれていてもよく、例えば、炭酸カルシウム等のフィラーを用いることができる。これらのリップリリース剤の成分は、市販品を用いることができる。
【0033】
リップリリース剤のチップペーパーへの塗工方法は特段制限されず、一般的な塗工方法を適用することができる。リップリリース剤は、通常1.0~30.0重量%の水溶液もしくは酢酸エチル溶液として用いることができ、そのような水溶液もしくは酢酸エチル溶液を、例えばグラビア印刷のような適当な印刷法を用いることにより、本発明の実施形態にかかるチップペーパーに塗工できる。印刷以外の公知の手段、例えば、インクジェット印刷により不透明インキを塗工する方法や、噴霧する方法や含浸する方法によりリップリリース剤を本発明の実施形態にかかるチップペーパーに塗工してもよい。
また、リップリリース剤は、少なくともチップペーパーの第1領域における外側表面の一部に塗工されている必要があるが、さらに、内側表面に塗工されていてもよい。ただし、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量を低減させる観点からは、リップリリース剤がチップペーパーの内側表面に塗工されていないことが好ましい。
【0034】
[リップリリース剤の含有量]
リップリリース剤の含有量は、上記のとおり条件(A)を満たす。
該条件(A)を満たすことにより、リップリリース性の確保が達成され、かつ、使用時におけるリップリリース剤に由来する物質の発生が低減され、喫味に不所望な影響を与える物質の発生量を抑制することができる。
第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量に対する、前記第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量の割合は、特段制限されないが、リップリリース性の確保、及び使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量低減の観点から、1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましく、1/6以下であることが特に好ましく、1/8以下であることが最も好ましい。
【0035】
第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量は、第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量よりも多ければ、特段制限されないが、通常、0.20μg/mm以上、1.00μg/mm以下であり、好ましくは0.25μg/mm以上、0.75μg/mm以下である。
【0036】
第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量は、特段制限されないが、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量低減の観点から、使用時におけるリップリリース剤由来の物質の発生量低減の観点から、0.56μg/mm未満であることが好ましく、0.28μg/mm未満であることがより好ましく、0.14μg/mm未満であることが特に好ましく、0μg/mmであること、つまり塗工していないことが最も好ましい。
リップリリース剤の含有量の測定方法は、特段制限されないが、例えば、非燃焼加熱式たばこからから、巻装部を構成するチップペーパーを剥離した後、第1領域と第2領域とに切断して分けた後、それらの重量を計り、それぞれの領域におけるチップペーパーの重量を引いてリップリリース剤の塗工重量を算出し、さらに、これらをそれぞれの面積で除することにより、第1領域及び第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量を求めることができる。
また、算出可能であれば、製造時におけるリップリリース剤の塗工重量を面積で除した値や、リップリリース剤を塗工する前後でのチップペーパーの重量差から求めた塗工重量を対象領域の面積で除した値を採用してもよい。
なお、リップリリース剤は一定の加熱により茶色に変色する性質を有することから、リップリリース剤の含有の程度を簡易的に推測する方法として、非燃焼加熱式たばこの使用前後における、チップペーパー表面の変色具合を観察する方法を採用することができる。
【0037】
また、吸光光度測定により、リップリリース剤の含有量を測定することができる。例えば、リップリリース剤としてニトロセルロースを用いた場合には、次の方法により算出した値を用いることができる。
まず、以下に示す方法により検量線用標準試料作製し、吸光光度測定を行い、ASTM
D3133-01に従って、検量線用標準試料の吸光光度測定結果から検量線を作成する。そして、以下に示す方法により測定試料を作製し、吸光光度測定を行う。上記検量線及び測定試料の吸光光度測定の結果から、測定試料中のニトロセルロースの含有重量を求めることができ、これを対象領域の面積で除することにより、対象領域のリップリリース剤の塗工量を求めることができる。
なお、リップリリース剤の成分がニトロセルロース以外の場合、下記のアセトンを該成分が溶解し得る溶媒に変更する対応や、吸光波長を変更する等の対応により、同様に測定することができる。
【0038】
<検量線用標準試料の作製>
(1)標準試料(塗工前のリップリリース剤)を6g程度ナス型フラスコ等の容器に計り取った後、エバポレーターを用いて揮発成分を飛ばして濃縮する。
(2)得られた不揮発成分をアセトンで溶解させながらピペットで100mlメスフラスコに移し、アセトンで100mlにメスアップする。
(3)50mlのナス型フラスコを4個準備し、それぞれに、(2)で得られた溶液を0、1、3、5mlずつ計り取り、合計量が10mlとなるように10、9、7、5mlのアセトンを添加する。さらに、これら全てのナス型フラスコに10%KOH 10mlを添加し、冷却管にセットして60℃の恒温水槽上で1時間の還流を行う。
(4)還流後、氷上で室温まで冷却し、濾紙を用いて濾過を行った後、得られた濾液を50mlのメスフラスコに入れ、アセトン/水(重量比で2/1)の混合溶液を用いてメスアップする。
【0039】
<測定試料の作製(第1領域を対象とした場合)>
(1)非燃焼加熱式たばこから、その巻装部を構成するチップペーパーを剥離し、第1領域を切り出し、これを細片化した後、該細片化されたチップペーパーを三角フラスコ等の容器に入れ、アセトン100mlを加えた後、30分の超音波抽出を行う。
(2)該抽出液を300mlナス型フラスコに移し、エバポレーターを用いてアセトンを揮発させた後、アセトン10mlと10%KOH 10mlを加え、60℃の湯浴上で1時間の還流を行う。
(3)該ナス型フラスコを氷上で室温まで冷却し、濾過を行った後、得られた濾液を50mlメスフラスコに入れて、アセトン/水(重量比で2/1)の混合溶液を用いてメスアップする。
【0040】
<1-3.たばこロッド部>
たばこロッド部10の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができる。例えば、たばこ充填物が巻紙により巻装されたものを用いることができる。
【0041】
[たばこ充填物]
たばこ充填物の構成は、特段制限されないが、たばこ刻みを含む組成物から構成されるもの(以下、第一のたばこ充填物ともいう)と、後述する複数のたばこシートから構成されるもの(以下、第二のたばこ充填物ともいう)、又は単一のたばこシートから構成されるもの(以下、第三のたばこ充填物ともいう)を挙げることができる。
たばこロッド部(本明細書において、単に「たばこロッド」とも称する)は、柱状形状を有していることが好ましく、この場合には、たばこロッド部の底面の幅に対するたばこロッド部の長軸方向の高さで表されるアスペクト比が1以上であることが好ましい。
たばこロッド部の底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅は当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、図1に示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅、これに直交する長さが高さとなる。たばこロッド部を構成するたばこ充填物の高さは12~70mm程度、幅は4~9mm程度であることが好ましい。
たばこロッド部は、非燃焼加熱式たばこを加熱するためのヒーター部材等との嵌合部を有していてもよい。
【0042】
まず、第一の充填物から説明する。第一の充填物に含まれるたばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μmになるように粉砕して均一化したものをシート加工したもの(以下、単に均一化シートともいう)を刻んだものであってもよい。さらに、たばこロッド部の長手方向と同程度の長さを有する均一化シートを、たばこロッド部の長手方向と略水平に刻んだものをたばこロッド部に充填する、いわゆるストランドタイプであってもよい。たばこ刻の幅は0.5~2.0mmがたばこロッド部に充填するうえで好ましい。たばこロッド部中のたばこ充填物の含有量は、円周22mm、長さ20mmのたばこロッド部の場合、200~800mg/ロッド部を挙げることができ、250~600mg/ロッド部が好ましい。前記たばこ刻み及び均一化シートの作製に用いるたばこ葉について、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。混合物については、目的とする味となるように、前記の各品種を適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つ目の方法は、抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法である。2つ目の方法は、水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシートを作製する方法である。3つ目の方法は、水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法である。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0043】
たばこ充填物の水分含有量は、たばこ充填物の全量に対して10~15重量%を挙げることができ、11~13重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、たばこロッド部の製造時の巻上適性を良好にする。
第一のたばこ充填物に含まれるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.5~2.0mmに刻んだものを用いてもよい。
また、均一化シートの粉砕物を用いる場合、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.5~2.0mmに刻んだものを用いてもよい。
【0044】
第一のたばこ充填物は、エアロゾル煙を生成するエアロゾル生成基材を含む。当該エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
第一のたばこ充填物中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な喫味の付与の観点から、たばこ充填物の全量に対して通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは15~25重量%である。
【0045】
第一のたばこ充填物は、香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0046】
第一のたばこ充填物中の香料の含有量は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、通常10000ppm以上であり、好ましくは20000ppm以上であり、より好ましくは25000ppm以上であり、また、通常50000ppm以下であり、好ましくは40000ppm以下であり、より好ましくは33000ppm以下である。
【0047】
第一のたばこ充填物における充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱式たばこの性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上であり、また、通常800mg/cm以下であり、好ましくは600mg/cm以下である。
上記の第一のたばこ充填物は、それが内側になるように巻紙によって巻装されてたばこロッド部を形成する。
【0048】
第二のたばこ充填物は、同心状に配置された複数のたばこシートから構成される。本明
細書において、「同心状に配置されている」とは、すべてのたばこシートの中心が略同じ位置にあるように配置されていることをいう。本明細書において「シート」とは、略平行な1対の主面、および側面を有する形状をいう。第二の充填物は、非燃焼加熱式たばこの長手方向と直交する方向に、複数のたばこシートを同心状に巻き回して構成される。
シート基材としては、例えば、たばこ粉末等のたばこ材料等が挙げられるが、特に、たばこ材料が好ましい。たばこ材料の基材シートに、必要に応じて香味を発生しうる成分を担持したたばこシートであることが好ましい。たばこシートは、加熱に伴ってエアロゾルを生成する。エアロゾル生成基材としてグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加し得る。かかるエアロゾル生成基材の添加量は、たばこシートの乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、15~25重量%がより好ましい。
【0049】
同心状に配置される前の素材としてのたばこシートについて説明する。
たばこシートは、抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。なお、第一のたばこ充填物で説明した均一化シートを用いることもできる。
抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)乾燥たばこ葉を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、たばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004-510422号公報参照)。
スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水、パルプ及びバインダと、砕いたたばこ葉を混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。この場合、水、パルプ及びバインダと、砕いたたばこ葉を混合したスラリーに対して紫外線照射もしくはX線照射することでニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい。
【0050】
この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。1)粉粒状のたばこ葉と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。
前記の各方法で用いる原料のたばこ葉の種類は、第一の充填物で説明したものと同じものを用いることができる。
たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料(たばこ葉)の含有量はたばこシート全重量に対して50~95重量%であることが好ましい。また、たばこシートはバインダを含んでもよく、係るバインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダ量としては、たばこシート全重量に対して1~20重量%であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。本明細書においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。
【0051】
第二のたばこ充填物は、幅の異なる複数のたばこシートを準備して、底部から頂部に向かって幅が小さくなるように積層した積層体を調製し、これを巻管に通して巻き上げ成形することで製造できる。この製造方法によれば、該複数のたばこシートが、長手方向に延在するとともに、該長手方向軸を中心として同心状に配置されるようになる。また、該長手方向軸と、最内層のたばこシートとの間に、長手方向に延在する嵌合部が形成されてもよい。
この製造方法において、積層体は巻上げ成形後に隣接する前記たばこシート間に非接触
部が形成されるように調製されることが好ましい。
複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部(隙間)が存在すると、香味流路を確保して香味成分のデリバリー効率を高めることができる。他方で、複数のたばこシートの接触部分を介してヒーターからの熱を外側のたばこシートに伝達できるので高い熱伝熱効率を確保することができる。
【0052】
複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部を設けるために、例えば、エンボス加工したたばこシートを用いる、隣接するたばこシート同士の全面を接着せずに積層する、隣接するたばこシート同士の一部を接着して積層する、あるいは隣接するたばこシート同士の全面あるいは一部を、巻上げ成形後に剥がれるように軽度に接着して積層することで積層体を調製する方法を挙げることができる。
巻紙を含めたたばこロッド部を調製する場合には、積層体の最底部に上記の巻紙を配置してもよい。
また、積層体の最頂部にマンドレル等の筒状ダミーを載置して第二のたばこ充填物を形成した後に、当該ダミーを除去することで、嵌合部を形成することもできる。
各たばこシートの厚みについては制限されないが、伝熱効率と強度の兼ね合いから、200~600μmが好ましい。各たばこシートの厚みについては、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
第二のたばこ充填物を構成するたばこシートの枚数は、特段制限されないが、例えば2枚、3枚、4枚、5枚、または6枚を挙げることができる。
【0053】
第三のたばこ充填物は、折りたたまれた単一のたばこシートから構成される。当該シートは、たばこロッド部の長手方向と同程度の長さを有し、たばこロッド部の長手方向と水平に複数回折り返され充填される、いわゆるギャザーシートであってもよい。当該シートの厚さは伝熱効率と強度の兼ね合いから、200~600μmが好ましい。
第三のたばこ充填物に用いられるシート基材は、上記第二のたばこ充填物と同様のものを用いることができる。
【0054】
[巻紙]
巻紙の構成は、特段制限されず、一般的なものを用いることができる。例えば、巻紙に用いられる原紙としては、セルロース繊維紙を用いることができ、より具体的には、麻もしくは木材あるいはそれらの混合物を挙げることができる。なお、ここでいう「巻紙」とは、たばこ充填物を巻装するためのものである。
巻紙は填料を含んでいてもよく、填料の種類は限定されるものではなく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、硫化亜鉛などの金属硫化物、石英、カオリン、タルク、ケイソウ土、石膏などが挙げられ、特に、白色度や不透明度の向上及び加熱速度の増加の観点から炭酸カルシウムを含んでいることが好ましい。
巻紙中の填料の配合割合は、特に限定されるものではなく、通常1~50wt%であり、5~45wt%であることが好ましく、10~42wt%であることがより好ましく、20~40wt%であることが特に好ましい。なお、例えば、炭酸カルシウムの含有量を求める場合、灰分測定により、又は、抽出後、カルシウムイオンを定量することにより求めることができる。
上記範囲の下限を下回ると巻紙が焦げやすくなり、また、上限を上回ると巻紙の強度が大きく低下し、巻上性が悪化し得る。
【0055】
巻紙には、原紙や填料以外の種々の助剤を添加してもよく、例えば、耐水性を向上させるために、耐水性向上剤を添加することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
助剤として、紙力増強剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、カチオンでんぷん、酸化でんぷん、CMC、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げられる。特に、酸化でんぷんについては、極少量用いることにより、通気度が向上することが知られている(特開2017-218699号公報)。
また、巻紙は、適宜コーティングされていてもよい。
【0056】
巻紙には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩(例えばナトリウム塩)、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体(例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体)を挙げることができる。
【0057】
巻紙の坪量は、通常20~45g/mであり、25~40g/mであることが好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び巻上性を維持することができる。
巻紙の通気度は、通常0~120コレスタ単位であり、5~100コレスタ単位であることが好ましく、10~80コレスタ単位であることがより好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び喫味を維持することができる。
【0058】
<1-4.マウスピース部>
非燃焼加熱式たばこ1の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができる。例えば、図3に示すように、冷却部15やフィルター部16を有していてよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0059】
[冷却部]
冷却部の構成は、たばこ主流煙を冷却する機能を有していれば、特段制限されず、例えば、厚紙を円筒状に加工したものを挙げることができる。この場合は円筒状の内側は空洞であり、エアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が空洞内の空気と接触して冷却される。
【0060】
図3に示すように、非燃焼加熱式たばこ1は、冷却部15と、リップリリース剤により覆われ得るチップペーパー12の一部に、外部からの空気を取り入れるための開孔(図示せず)を有してもよい。そのような開孔が存在することで、使用時に外部から冷却部15の内部に空気が流入し、前記たばこロッド部が加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルが生成されることを促進させることができる。図4に示すように、また、冷却部15は、上述の「1-1.巻装部」の第3の態様で述べたように、冷却部15が複数の開孔18を有する場合、該複数の開孔18が冷却部15の外周面の周方向に配置される。その周方向の配置の数は、特段制限されず、2つ以上存在していてもよい。なお、図4の冷却部は、空洞17を有する円筒形状としているが、該形状には限定されない。また、図4では、第1の領域と第2の領域との境界は省略した。
開孔は、径が100~1000μmであることが好ましく、300~800μmであることがより好ましい。開孔は、略円形もしくは略楕円形であることが好ましく、略楕円形の場合の前記径は長径を表す。
【0061】
図4に示すように、チップペーパー12やリップリリース剤13について、冷却部の開孔が貫通するように孔を有していてよく、また、孔を有していなくともよいが、冷却効果を促進する観点から、孔を有している方が好ましい。
また、上述の「1-1.巻装部」の第3の態様で述べたように、開孔は、冷却部の外周面の周方向に配置されるが、その周方向の配置(「円周配置」とも称する。)の数は、特段制限されず、2つ以上存在していてもよいが、この場合において、一般的に円周配置が設けられるのはリップ接触領域の外側であるため、第1の領域と第2の領域との境界となる円周配置は、吸口端に最も近い円周配置とする。
また、冷却部の内側に、紙、ポリマーフィルム、または金属箔などシート形状の部材をギャザー加工したものを充填してもよい。この場合、これら部材の比熱を利用して前記蒸気を冷却することもできる。
冷却部の長軸方向の高さは、特段制限されないが、冷却機能を確保する観点から、通常5~40mmであり、10~35mmであることが好ましく、15~30mmであることがより好ましい。
【0062】
[フィルター部]
フィルター部16の構成は、一般的なフィルターとしての機能を有していれば、特段制限されず、例えば、セルロースアセテートトウを円柱状に加工したものを挙げることができる。セルロースアセテートトウの単糸繊度、総繊度は特に限定されないが、円周22mmのフィルター部の場合は、単糸繊度は5~12g/9000m、総繊度は12000~30000g/9000mであることが好ましい。セルロースアセテートトウの繊維の断面形状は、Y断面でもよいしR断面でもよい。セルロースアセテートトウを充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上するためにトリアセチンをセルロースアセテートトウ重量に対して、5~10重量%添加してもよい。
図3ではフィルター部16は単一のセグメントから構成されているが、複数のセグメントから構成されていてもよい。複数のセグメントから構成されている場合、例えば上流側(たばこロッド側)にセンターホール等の中空のセグメントを配置し、下流側(使用者の吸口端側)のセグメントとして吸口断面がセルロースアセテートトウで充填されたアセテートフィルターを配置する態様を挙げることができる。このような態様によれば、生成するエアロゾルの無用な損失を防ぐとともに、非燃焼加熱式たばこの外観を良好にすることができる。また、吸いごたえの感覚変化や咥え心地の観点から、上流側にアセテートフィルターを配置し、下流側にセンターホール等の中空のセグメントを配置する態様でもよい。なお、当該アセテートフィルターの代わりに、シート状のパルプ紙を充填したペーパーフィルターを用いる態様でもよい。
また、フィルターの製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料、香料保持材等)の添加を適宜設計できる。
【0063】
<2.電気加熱式たばこ製品>
電気加熱式たばこ製品の一実施形態は、ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、上記の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品である。
電気加熱式たばこ製品の態様としては図5に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様であってもよく、図6に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様であってもよい。なお、図5及び図6に示す電気加熱式デバイス2には空気導入孔が設けられているが、ここでは図示しない。以下、図5を用いて電気加熱式たばこ製品を説明する。
電気加熱式たばこ製品3は、電気加熱式デバイス2の内部に配置された、ヒーター部材23に、上記で説明した非燃焼加熱式たばこ1が接触するように挿入されて使用される。
電気加熱式デバイス2は、例えば樹脂性の躯体22の内部に、電池ユニット20と制御
ユニット21とを有する。
非燃焼加熱式たばこ1を電気加熱式デバイス2に挿入すると、たばこロッド部の外周面が電気加熱式デバイス2のヒーター部材23と接触し、やがてたばこロッド部の外周面の全部と巻装部の外周面の一部がヒーター部材に接触する。
電気加熱式デバイス2のヒーター部材23は、制御ユニット21による制御により発熱する。その熱が非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部に伝わることで、たばこロッド部のたばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等が揮発する。
【0064】
該ヒーター部材は、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20~225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。また、内部に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とする金属製等の棒状ヒーター、錐状ヒーターも挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
図5に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターを用いることができる。一方で、図6に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様である場合は、上記の平板状ヒーターや柱状ヒーター、錐状ヒーターを用いることができる。
該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部の長軸方向の長さをLmmとしたときに、L±5.0mmの範囲内とすることができる。該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部に十分に熱を伝え、たばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等を十分に揮発させる、すなわちエアロゾルデリバリーの観点から、Lmm以上であることが好ましく、喫味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制する観点からL+0.5mm以下、L+1.0mm以下、L+1.5mm以下、L+2.0mm以下、L+2.5mm以下、L+3.0mm以下、L+3.5mm以下、L+4.0mm以下、L+4.5mm以下又はL+5.0mm以下であることが好ましい。
【0065】
該ヒーター部材による非燃焼加熱式たばこの加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、電気加熱式たばこ製品ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、電気加熱式デバイスに非燃焼加熱式たばこを挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱式たばこにおける、該デバイスに挿入されている部分の外周面の温度がX(℃)になるまで加熱し、その後、該温度がX(℃)以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記X(℃)は、エアロゾルデリバリー量の観点から、80℃以上400℃以下であることが好ましい。具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃とすることができる。
電気加熱式デバイスで非燃焼加熱式たばこを加熱する際の、該非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度は、後述する方法で測定する。
ヒーター部材による加熱により、たばこロッド部から生じるエアロゾル生成基材や香味成分等を含む蒸気は、冷却部やフィルター部等から構成されるマウスピース部を通して使用者の口腔内に到達する。
【0066】
<3.喫煙試験>
喫煙試験は、Canadian Intense Regime(CIR)を参考に下記の条件で行う。
例えば、上述した電気加熱式たばこ製品を使用し、非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部を挿入した後に、ヒーター温度を17秒間以内で230℃まで昇温し、当該温度を23秒間維持した後、170℃~175℃の温度範囲で一定に保つ。この後、喫煙試験はボルグワルド社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行う。この際、冷却部の外周に施された外部空気導入孔はふさがずに喫煙試験を行う。喫煙試験で発生した主流煙をケンブリッジパッドに捕集し、パフ動作を8回行なった後にケンブリッジパッドを取り出す。
【0067】
<4.非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度の測定方法>
電気加熱式デバイスで非燃焼加熱式たばこを加熱する際の、該非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度は、以下の方法で測定する。
非燃焼加熱式たばこの巻装部の外周面において、該非燃焼加熱式たばこを使用する際に、電気加熱式デバイスのヒーター部材の入口側端部の位置(以後「b2点」ともいう)、該ヒーター部材の入口側端部から吸口側に5.0mmの位置(以後「b1点」ともいう)、該ヒーター部材の入口側端部から吸口側に7.5mmの位置(以後「a3点」ともいう)、該ヒーター部材の入口側端部から吸口側に13.5mmの位置(以後「a2点」ともいう)、及び、該ヒーター部材の入口側端部から吸口側に15.5mmの位置(以後「a1点」ともいう)の5点の温度が測定できるように、熱電対(東亜電器株式会社製、型番TI-SP-K)を貼り付ける。熱電対の貼り付けには、ポリイミドテープ(厚さ50μm)をカットして用いる。
熱電対を貼り付けた前記非燃焼加熱式たばこを、電気加熱式デバイスに挿入した後、上述の<3.喫煙試験>におけるヒーター温度下での、各測定点の最高温度を記録し、非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度とする。
【0068】
<5.TSNA量の測定方法>
非燃焼加熱式たばこ中のTSNA量の測定方法は、特段制限されないが、例えば、測定対象を0.1M(mol/L)の酢酸アンモニウム水溶液に加え、攪拌抽出(180rpm、60min)を行い、その後、ガラス繊維フィルターでろ過し、得られたろ液をイオンクロマトグラフィーに供して行うことができる。なお、移動相としては、酢酸水溶液及び酢酸メタノール溶液を用いることができる。
測定対象は、非燃焼加熱式たばこを、長軸方向に対し垂直に切断して分割することで作製することができる。前記のように複数に分割された非燃焼加熱式たばこの、全てを測定対象としてもよく、その一部を測定対象としてもよい。
【0069】
<6.硝酸態窒素の測定方法>
硝酸態窒素は、ニトロセルロースの分解により生じる物質である。
非燃焼加熱式たばこ中の硝酸態窒素量の測定方法は、特段制限されないが、例えば、ISO15517:2003に従い、下記の条件により測定することができる。
・分析装置:オートアナライザー(SYNCA 1H(ビーエルテック社製))
・分析試料の調製:分析対象の紙材料を任意の大きさに刻み、蒸留水を加えて一定時間振とう抽出した後、濾過し、得られた濾液を用いる。
・分析手順:
(1)硝酸態窒素標準液及び分析試料をオートアナライザーにセットし、全チューブから蒸留水を流す。蒸留水は、チューブ内の気泡が等間隔になるまでを流す。
(2)試薬用チューブからブリッジ水を流し、チャートベースラインを確認する。
(3)各チューブから流す液体を対応する試薬に入れ替える。試薬は、ベースラインが安定するまで流す。
(4)ベースラインが安定した後、分析を開始する。
(5)分析終了後、標準液の測定値から検量線を作成する。
(6)分析試料の測定を行う。
(7)得られた検量線、及び分析試料の測定結果から定量計算を行う。
硝酸態窒素含有割合は、以下の式(1)により算出できる。
硝酸態窒素含有割合(%)=((C×V×100)×100)/m×1000×1000 (1)
C:検量線により得られた硝酸態窒素含有量(mg/l)
V:溶液量(ml)
m:試料重量(g)
【実施例
【0070】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
[巻装部を形成するチップペーパーの準備]
リップリリース剤(DIC社製のCHG LRニスT)を準備した。また、チップペーパーとして、日本製紙パピリア製のチップペーパー(坪量37g/mm、厚み40μm)を使用し、巻円周は22mm、巻き長さは40mmとなるような大きさで準備した。
上記リップリリース剤を溶媒(酢酸エチル等含有)で希釈したものを上記のチップペーパーに印刷により塗工した後、乾燥させて溶媒を飛ばした。この際、非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置までの領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量が0.56μg/mmとなるように均一に塗工し、該17mmの位置から巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部までの領域にはリップリリース剤を塗工しなかった。
【0072】
[たばこロッド部の作製]
たばこ充填物として、あらかじめ香料2g/100g、エアロゾル生成基材(グリセリン)40/100gをシートたばこの刻みに混合したものを準備した。高速巻き上げ機を用い、巻紙(日本製紙パピリア製、坪量35g/m、厚み52μm)でたばこ充填物を巻き上げた。
1本あたりの刻み重量は0.8g、巻円周は22mm、巻き長さは68mmとした。
巻き上げたたばこロッド部は水準毎に200本ずつプラスチックの密閉容器に入れて保管した。
【0073】
[非燃焼加熱式たばこの作製]
前記方法で作製したたばこロッド部を長さ20mmに切断した。その後、たばこロッド部を、長さ20mmの紙管の外周に希釈空気孔を施した冷却部と、長さ8mmの貫通孔を有したセンターホールフィルターで構成される支持部と、長さ7mmの酢酸セルロース繊維が充填されたフィルター部とを、上記で準備したチップペーパーにより手作りで巻装することで巻装部を形成し、非燃焼加熱式たばこを作製した。
作製した非燃焼加熱式たばこの巻装部の5点に、熱電対(東亜電器株式会社製、型番TI-SP-K)を貼り付けた。当該5点は、上述の<4.非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度の測定方法>で説明したa1点、a2点、a3点、b1点及びb2点である。熱電対の貼り付けには、ポリイミドテープ(厚さ50μm)を10mm×5mmにカットしたものを用いた。これを実施例1とした。
なお、上記の希釈空気孔とは、上述した開孔に相当するものであり、非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、非燃焼加熱式たばこの吸口側端部から17mmの位置に周方向に配置された。
【0074】
<比較例1>
実施例1の巻装部の準備において、チップペーパーの全面にリップリリース剤を単位面積当たりの含有量が0.56μg/mmとなるように均一に塗工したこと以外は、実施例1と同様にして非燃焼加熱式たばこを作製した。つまり、(第1領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)=(第2領域における単位面積当たりのリップリリース剤の含有量)となるような条件でリップリリース剤の塗工を行った。これを比較例1とする。
【0075】
<喫煙試験>
実施例1及び比較例1で作製した各非燃焼加熱式たばこを喫煙試験に供した。喫煙試験に供した電気加熱式たばこ製品として、上述した構成を有するものを使用した。非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部を挿入した後に、ヒーター温度を17秒間以内で230℃まで昇温し、当該温度を23秒間維持した後、170℃~175℃の温度範囲で一定に保った。この後、喫煙試験はボルグワルド社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行った。冷却部の外周に施された外部空気導入孔はふさがずに喫煙試験を行なった。喫煙試験で発生した主流煙はケンブリッジパッドに捕集された。パフ動作を8回行なった後でケンブリッジパッドを取り出した。
上記喫煙試験の間、非燃焼加熱式たばこの巻装部の上述の5点(a1点、a2点、a3点、b1点及びb2点)に取り付けられた熱電対により、非燃焼加熱式たばこにおける巻装部の外周面の各点の最高温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
<TSNAの測定>
以下の方法に従い、喫煙試験後の非燃焼加熱式たばこに含まれるTSNA量を測定した。
喫煙試験後の非燃焼加熱式たばこを以下の(A)~(D)の領域で4分割した。
(A)非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、吸口側端部からたばこロッド側へ27.5mmの位置までの領域(上述の温度測定におけるa1点、a2点及びa3点を含む領域)
(B)非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、(A)における27.5mmの位置から、たばこロッド側へ7.5mmの位置までの領域(上述の温度測定におけるb1点及びb2点を含む領域)
(C)非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、(B)における7.5mmの位置から、たばこロッド端部側へ5mmの位置までの領域(実施例1及び比較例1において、チップペーパーが巻装された、たばこロッド側端部までの領域)
(D)非燃焼加熱式たばこの長軸方向で、(C)における5mmの位置から、たばこロッド端部までの領域(実施例1及び比較例1において、チップペーパーにより巻装されていない領域)
上記の4分割された非燃焼加熱式たばこの領域(A)~(D)のうち、巻装部である領域(A)~(C)を測定対象とし、各測定対象を0.1M(mol/L)の酢酸アンモニウム水溶液に加え、攪拌抽出(180rpm、60min)を行った。その後、抽出液をガラス繊維フィルターでろ過し、得られたろ液をイオンクロマトグラフィーに供することでTSNA量を測定した。なお、移動相としては、酢酸水溶液及び酢酸メタノール溶液を用いた。実施例1及び比較例1を用いて行った各測定対象のTSNA含有量を表1に示す。
【0077】
[硝酸態窒素の測定]
非燃焼加熱式たばこ中の硝酸態窒素量は、ISO15517:2003に従い、下記の条件により測定を行った。
・分析装置:オートアナライザー(SYNCA 1H(ビーエルテック社製))
・分析試料の調製:上記のTSANAの測定と同様に、喫煙試験後の非燃焼加熱式たばこを(A)~(D)の領域で4分割し、任意の大きさに刻み、蒸留水5mlを加えて15分
間振とう抽出した後、濾過し、得られた濾液を用いた。
・分析手順:
(1)硝酸態窒素標準液及び分析試料をオートアナライザーにセットし、全チューブから蒸留水を流す。蒸留水は、チューブ内の気泡が等間隔になるまでを流す。
(2)試薬用チューブからブリッジ水を流し、チャートベースラインを確認する。
(3)各チューブから流す液体を対応する試薬に入れ替える。試薬は、ベースラインが安定するまで流す。
(4)ベースラインが安定した後、分析を開始する。
(5)分析終了後、標準液の測定値から検量線を作成する。
(6)分析試料の測定を行う。
(7)得られた検量線、及び分析試料の測定結果から定量計算を行う。
硝酸態窒素含有割合は、以下の式(1)により算出できる。
硝酸態窒素含有割合(%)=((C×V×100)×100)/m×1000×1000 (1)
C:検量線により得られた硝酸態窒素含有量(mg/l)
V:溶液量(ml)
m:試料重量(g)
【0078】
[サイズ度]
サイズ度は、以下の条件で測定した。
測定装置:表面・サイズ度テスター Model EST12(日本ルフト(株)製)
サンプル(試験紙):温度23℃、湿度50RH%の環境で24時間保持した後、20mm×70mmに裁断した紙
測定方法:上記測定装置の測定セル内に注入した試験液(水)の中に試験紙を浸漬し、その時点から厚さ方向へ低エネルギーの超音波を発射した。本明細書におけるサイズ度は、試験紙が試験液に完全に含侵した時点を測定開始時として得られる透過率ピークにおいて、該測定開始時から透過率ピークの最大値が得られるまでの時間(MAX値)とした。
実施例1について、喫煙試験前の非燃焼加熱式たばこの巻装部の第2領域を用いて上記測定を行ったところ、サイズ度は0.476秒(複数回測定の平均値)となった。一方で、比較例1について、同様に巻装部の第2領域を用いて上記測定を行ったところ、サイズ度は0.082秒(複数回測定の平均値)となった。
【0079】
[接触角]
接触角は、以下の条件で測定した。
測定装置:接触角計 Model DMC-MC3((株)共和電業製)
サンプル(試験紙):温度23℃、湿度50RH%の環境で24時間保持した後、20mm×70mmに裁断した紙
測定方法:両面テープでスライドガラスに試験紙を貼り付け、液(水)滴量7μL、測定開始1000ms、接触角評価法θ/2法の条件で測定した
実施例1について、喫煙試験前の非燃焼加熱式たばこの巻装部の第2領域を用いて上記測定を行ったところ、接触角は101.6°(複数回測定の平均値)となった。一方で、比較例1について、同様に巻装部の第2領域を用いて上記測定を行ったところ、接触角は94.0°(複数回測定の平均値)となった。
【0080】
【表1】
【0081】
上記の表1から、(A)~(C)の全ての領域において、比較例1よりも実施例1の方が、TSNAの量及び硝酸態窒素の割合が減少していることが分かる。
【符号の説明】
【0082】
1 非燃焼加熱式たばこ
10 たばこロッド部
11 マウスピース部
12a チップペーパー(第1領域)
12b チップペーパー(第2領域)
12 チップペーパー
13a リップリリース剤(第1領域)
13b リップリリース剤(第2領域)
13 リップリリース剤
14 第1領域と第2領域との境界を表す線
15 冷却部
16 フィルター部
17 空洞
18 開孔
2 電気加熱式デバイス
20 電池ユニット
21 制御ユニット
22 躯体
23 ヒーター部材
3 電気加熱式たばこ製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6