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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】防炎シート、組電池及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20220726BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20220726BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20220726BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20220726BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20220726BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220726BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220726BHJP
   H01M 10/6235 20140101ALI20220726BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220726BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220726BHJP
   H01M 10/643 20140101ALN20220726BHJP
   H01M 10/647 20140101ALN20220726BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/293
H01M50/242
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M10/613
H01M10/658
H01M10/6235
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/643
H01M10/647
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022064737
(22)【出願日】2022-04-08
(62)【分割の表示】P 2021209898の分割
【原出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2021014631
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹下 恵介
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/166346(WO,A1)
【文献】特開2018-206605(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167612(WO,A1)
【文献】特開2018-206604(JP,A)
【文献】特表2016-534518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20 -50/298
H01M 10/613-10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の防炎材と、前記一対の防炎材の間に配置された弾性部材と、を有し、
前記防炎材と前記弾性部材との間に、支持層が配置され
前記支持層を構成する材料が、有機材料を主原料として有するものである、防炎シート。
【請求項2】
電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の弾性部材と、前記一対の弾性部材の間に配置された防炎材と、を有し、
前記防炎材と前記弾性部材との間に、支持層が配置され
前記支持層を構成する材料が、有機材料を主原料として有するものである、防炎シート。
【請求項3】
電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の防炎材と、前記一対の防炎材の間に配置された弾性部材と、を有し、
前記防炎材と前記弾性部材との間に、支持層が配置され、
前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記防炎材の材料及び前記弾性部材の材料のいずれか一方が含まれており、前記支持層と前記防炎材又は前記弾性部材が一体化された構造である、防炎シート。
【請求項4】
電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の弾性部材と、前記一対の弾性部材の間に配置された防炎材と、を有し、
前記防炎材と前記弾性部材との間に、支持層が配置され、
前記支持層の少なくとも一方の表面に、前記防炎材の材料及び前記弾性部材の材料のいずれか一方が含まれており、前記支持層と前記防炎材又は前記弾性部材が一体化された構造である、防炎シート。
【請求項5】
前記支持層を構成する材料が、前記弾性部材よりも弾性率が低いとともに、硬度が高い材料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項6】
前記支持層を構成する材料が、無機材料を主原料として有するものである、請求項3又は4に記載の防炎シート。
【請求項7】
前記支持層は、互いに異なる材料からなる2以上の層を積層した構造である、請求項1~のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項8】
前記支持層の一方の表面に前記防炎材の材料が含まれ、他方の表面に前記弾性部材の材料が含まれており、前記防炎材と前記弾性部材とが前記支持層を介して一体化された構造である、請求項1~6のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項9】
前記支持層の厚さは、前記弾性部材よりも厚みが薄い、請求項1~8のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項10】
前記支持層の厚さは、前記弾性部材の厚さの0.5%以上30%以下である、請求項9に記載の防炎シート。
【請求項11】
前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に延びる複数の溝を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項12】
前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に貫通する複数の貫通孔を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項13】
前記弾性部材は、ゴム又はエラストマーにより形成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項14】
前記防炎材は、無機粒子、有機繊維及び無機繊維の少なくとも1種を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項15】
前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、請求項14に記載の防炎シート。
【請求項16】
前記防炎材は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の防炎シート。
【請求項17】
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、請求項16に記載の防炎シート。
【請求項18】
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、請求項16に記載の防炎シート。
【請求項19】
前記防炎材は、無機粒子を含有し、前記無機粒子が、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、請求項16に記載の防炎シート。
【請求項20】
複数の電池セルと、請求項1~19のいずれか1項に記載の防炎シートと、を有し、前記複数の電池セルが直接又は並列に接続された、組電池。
【請求項21】
請求項20に記載の組電池を電池ケースに収容した電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動工具や車両などにおける組電池に用いられる防炎シート、並びに、電動工具や車両などに収容され、電動モータ等の電源として用いられる組電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動工具には、いわゆる商用電源に接続して使用されるものと、その内部に、駆動用電動モータの電源となるための組電池が収容されたものがあり、内部に組電池が収容された電動工具は、操作性が優れている等の観点から多用されている。
組電池は、複数の電池セルが直列又は並列に接続されたものであり、例えば、ポリカーボネート等からなる電池ケースに各電池セルを格納して一体化され、電動工具の内部に収容される。
【0003】
電動工具内に収容される電池セルとしては、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。しかし、電池の内部短絡や過充電などが原因で、1つの電池セルに熱暴走が生じた場合(すなわち「異常時」の場合)、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こることで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0004】
また、近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。このような、車両に用いられる電池セルにおいても、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられており、上述の電動工具内に収容される電池セルと同様に、電池セルの熱暴走が発生するおそれがある。
【0005】
上記のような熱暴走の発生に対する対策として、例えば、特許文献1には、ある電池セルに過電流が流れ込むなどの理由により異常発熱が発生した場合に、隣接する電池セルへの類焼を防止・抑制することができる組電池が提案されている。上記特許文献1に記載の組電池は、複数の電池セルと、それを保持する金属材料からなるブロックで構成されており、このブロックは複数の小ブロックで構成されるものである。また、ブロックと電池セルとの隙間の大小を調整している。
【0006】
このように構成された特許文献1に係る組電池によれば、電池セルを保持するブロックが金属材料からなるため、熱をすばやく拡散することができるとされている。
【0007】
また、特許文献2には、二次電池の放熱性を向上し、性能劣化の改善を目的としたバッテリーパックが開示されている。上記特許文献2に記載のバッテリーパックは、複数の二次電池をケース内に収納したものであり、複数の二次電池とケースとの間に、所定の値以上の熱伝導率を有し、圧力により形状が変化する板形状のゴムシートが配置されている。
【0008】
上記特許文献2によると、ゴムシートの熱伝導率が比較的高いため、二次電池の熱を、ケースを介して良好に放電することができることが記載されている。また、このバッテリーパックは、ゴムシートが弾力性を有するため、落下時に損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-96271号公報
【文献】特開2004-146161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、電池セルに熱暴走が生じると、この電池の内部でガスが発生し、内圧が上昇することにより電池セルの変形を引き起こし、この変形が大きい場合には、ケースが破壊されることがある。
このような電池セルの変形は、組電池化した電池セルに対し充放電サイクルを行う場合(すなわち「通常使用時」の場合)においてもわずかに発生しており、充放電の際に電池セルの内圧の上昇及び低下が繰り返された場合に、電池セルに対して、ケースによる押圧及び緩和が繰り返され、電池の性能が低下する原因となる。
【0011】
上記特許文献1に係る組電池は、電池セルを保持するブロックが金属材料からなるため、熱をすばやく拡散することができるが、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下について、考慮されていない。
また、上記特許文献1に記載の組電池は、複数のブロックが必要であり、また、ブロックと電池セルとの隙間を変化させるため、組電池が搭載される電子機器や電動工具等に応じて、ブロックの設計が必要となる。したがって、ブロックの設計及び組電池の組立が煩雑になるという問題点がある。
【0012】
さらに、特許文献2に記載のバッテリーパックは、電池セルに熱暴走が生じた場合に、隣接する他の電池セルの熱暴走の抑制について、考慮されていない。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる防炎シート、並びに、各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができ、設計及び組立が容易である組電池及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、防炎シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0015】
[1] 電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の防炎材と、前記一対の防炎材の間に配置された弾性部材と、を有する、防炎シート。
【0016】
また、防炎シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[10]に関する。
【0017】
[2] 前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に延びる複数の溝を有する、[1]に記載の防炎シート。
【0018】
[3] 前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に貫通する複数の貫通孔を有する、[1]又は[2]に記載の防炎シート。
【0019】
[4] 前記弾性部材は、ゴム又はエラストマーにより形成されている、[1]~[3]のいずれか1つに記載の防炎シート。
【0020】
[5] 前記防炎材は、無機粒子、有機繊維及び無機繊維の少なくとも1種を含有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の防炎シート。
【0021】
[6] 前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、[5]に記載の防炎シート。
【0022】
[7] 前記防炎材は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載の防炎シート。
【0023】
[8] 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、[7]に記載の防炎シート。
【0024】
[9] 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、[7]に記載の防炎シート。
【0025】
[10] 前記防炎材は、無機粒子を含有し、前記無機粒子が、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、[7]に記載の防炎シート。
【0026】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[11]及び[12]の構成により達成される。
【0027】
[11] 複数の電池セルと、[1]~[10]のいずれか1つに記載の防炎シートと、を有し、前記複数の電池セルが直接又は並列に接続された、組電池。
【0028】
[12] 電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池であって、
前記電池セルと、
前記電池セルの外周面の少なくとも一部を被覆する防炎材と、
前記電池セルの外周面における前記防炎材により被覆された領域の少なくとも一部を被覆する弾性部材と、を有する、組電池。
【0029】
また、組電池に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[13]~[16]に関する。
【0030】
[13] 前記弾性部材は、前記防炎材により被覆された領域を前記電池セルの周方向に被覆し、前記電池セルを押圧する、[12]に記載の組電池。
【0031】
[14] 前記弾性部材は、両端部が開口した筒状体である、[13]に記載の組電池。
【0032】
[15] 前記弾性部材は、前記筒状体の内表面において、前記筒状体の一端部から他端部に延びる複数の溝を有する、[14]に記載の組電池。
【0033】
[16] 前記弾性部材は、前記筒状体の一端部から他端部に貫通する複数の貫通孔を有する、[14]又は[15]に記載の組電池。
【0034】
また、本発明の上記目的は、電池パックに係る下記[17]の構成により達成される。
【0035】
[17] [11]~[16]のいずれか1つに記載の組電池を電池ケースに収容した電池パック。
【発明の効果】
【0036】
本発明の防炎シートは、一対の防炎材と、この一対の防炎材の間に配置された弾性部材を有するため、異常時において、電池セル間の熱の伝播を抑制することができるとともに、弾性部材が電池セルの変形に対して柔軟に変形し、電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本発明の組電池は、電池セルの外周面の少なくとも一部を被覆する防炎材を有するため、異常時において、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、防炎材の外周面の少なくとも一部を被覆する弾性部材を有するため、弾性部材が電池セルの変形に対して柔軟に変形し、電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる。さらに、弾性部材が筒状体であると、弾性部材は伸縮性を有するため、電池セルの種類に応じて、弾性部材及び電池ケースの設計を変更する必要がなく、容易に各電池セルに取り付けることができる。
【0038】
本発明の電池パックは、上記組電池を収容したものであるため、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を阻止することができるとともに、容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の実施形態に係る防炎シートを用いた組電池を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る電池パックを模式的に示す断面図である。
図3図3は、2種の無機粒子を含有する防炎材を模式的に示した断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材の形状例を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材の他の形状例を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材のさらに他の形状例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルが変形した場合であっても、電池ケース及び電池の性能に影響を与えることがない組電池を提供するため、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者は、各電池セルの外周面の少なくとも一部を防炎材により被覆し、防炎材により被覆された領域の少なくとも一部を弾性部材で被覆することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0041】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0042】
[防炎シート]
図1は、本発明の実施形態に係る防炎シートを用いた組電池を模式的に示す断面図である。
各電池セル2は、電極3を有する電極面2aと、電極面2aに直交する面である外周面2bとを有し、各電池セル2は、その外周面2b同士が対向するように配置され、電極3及び不図示のコネクタ等を介して直列又は並列に接続されている。
複数の電池セル2の間には、防炎シート10が配置されている。防炎シート10は、一対の防炎材4と、この一対の防炎材4の間に配置された弾性部材5とを有する。すなわち、図1に示すように、防炎材4は、電池セル2の外周面の少なくとも一部を被覆しており、弾性部材5は、防炎材4により被覆された領域の少なくとも一部を被覆している。そして、これら複数の電池セル2と防炎材4とが電池ケース30に収容されることにより、組電池100が構成されている。
【0043】
このように構成された防炎シート10においては、電池セル2の間に配置された場合に、異常時に一方の電池セルに熱暴走が発生すると、防炎材4により、隣接する電池セルへの熱の伝播が抑制される。したがって、一方の電池セルに隣接した他方の電池セルが熱を受けることを抑制でき、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
【0044】
また、防炎シート10は、一対の防炎材4の間に弾性部材5を有し、この弾性部材5は、電池セル2の変形を抑制する効果と、電池セル2の変形を吸収する効果とを有する。すなわち、異常時に電池セル2が変形した場合に、弾性部材5は電池セル2の変形を抑制しつつ、電池セル2の変形に対して柔軟に変形する。したがって、電池セル2に不要な圧力が印加されることを抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態において、電池セル2の外周面2bの一部に接触するように防炎材4が配置されており、弾性部材5は電池セル2に接触していない。このような構成とすると、異常時に電池セル2が高温になった際に、弾性部材5まで熱が到達しにくいため、弾性部材5の溶融を防止することができる。また、通常時において、電池セル2の温度が変化した場合であっても、弾性部材5との間に防炎材4が配置されているため、弾性部材5に与えられる温度変化は小さくなり、弾性部材5の劣化を防止することができる。
【0046】
ただし、弾性部材5を構成する材料によっては、電池セル2の外周面2bに接するように、すなわち、一対の弾性部材5の間に防炎材4を配置するように構成された防炎シートを用いることもできる。詳細には、図1に示す防炎材4の位置に弾性部材5が配置され、弾性部材5の位置に防炎材4が配置されることとなる。後述するように、防炎材4には、ナノ粒子等の粒径が極めて小さい無機粒子が含まれることがあり、一対の弾性部材5の間に防炎材4が配置される構成であると、無機粒子が防炎材4から脱落することを防止することができる。このように、弾性部材5と防炎材4との位置関係は、防炎材4の材質、弾性部材5の耐熱性や、弾性、耐久性等を考慮し、適切に選択することが好ましい。
【0047】
なお、電池セル2は、通常使用時である充放電サイクルにおいても、わずかに変形が発生している。すなわち、複数の電池セル2の間の隙間が小さい場合には、電池セル2の膨張時に、電池セル2は対向する他の電池セル2から圧力を受け、電池セル2の収縮時には、その圧力は消失する。このように、電池セル2に対する押圧と緩和が繰り返されると、電池性能が低下する原因となる。
本実施形態においては、通常使用時である充放電サイクルにおける電池セル2のわずかな変形に対しても、弾性部材5が柔軟に変形するため、電池セル2の電池性能の低下を抑制することができる。
【0048】
本実施形態において、電池セル2は角形であっても丸型であってもよい。
また、本実施形態において、防炎シート10は、複数の電池セル2の間に配置されていたが、電池セル2の外周面2bを周方向に被覆していてもよい。例えば、電池セル2の外周面2bに周方向に巻回するように防炎材4が配置され、弾性部材5のみが隣り合う電池セル2の間に配置されるような防炎シート10を使用することができる。また、電池セル2の外周面2bに周方向に巻回するように防炎材4が配置され、さらに、弾性部材5が防炎材4の外周面2bに巻回するように配置されるものであってもよい。
【0049】
電池セル2の外周面2bを周方向に被覆するように、防炎材4及び弾性部材5が配置された組電池と、この組電池を有する電池パックの例について、以下に詳細に説明する。
【0050】
[電池パック]
図2は、本発明の実施形態に係る電池パックを模式的に示す断面図である。
電池パック1は、樹脂等により形成された電池ケース7に、以下に詳細に説明する組電池6が収容されたものである。
【0051】
[組電池]
各電池セル2は、電極3を有する電極面2aと、電極面2aに直交する面である外周面2bとを有し、各電池セル2は、その外周面2b同士が対向するように配置され、電極3及び不図示のコネクタ等を介して直列又は並列に接続されている。
電池セル2の外周面2bは防炎材4により被覆され、さらに防炎材4の外周面は弾性部材5により被覆されており、これにより、組電池6が構成されている。なお、弾性部材5は、両端部が開口した筒状体であり、電池セル2及び防炎材4の外周面を周方向に被覆している。なお、本実施形態において弾性部材5(筒状体)の両端部とは、弾性部材5の長手方向(図2において上下方向)における一方の端部及び他方の端部の両方、すなわち、筒状体の開口端部を意味する。
【0052】
このように構成された組電池6においては、電池セル2の外周面2bが防炎材4により被覆されているため、異常時に一方の電池セルに熱暴走が発生した場合に、防炎材4により、周囲への熱の伝播が抑制される。したがって、一方の電池セルに隣接した他方の電池セルが熱を受けることを抑制でき、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
【0053】
また、電池セル2及び防炎材4のさらに外周面を被覆し、電池セル2を押圧する弾性部材5は、電池セル2の変形を抑制する効果と、電池セル2の変形を吸収する効果とを有する。すなわち、異常時に電池セル2が変形した場合に、弾性部材5は電池セル2の変形を抑制しつつ、電池セル2の変形に対して柔軟に変形する。したがって、電池ケース7の破壊を抑制することができる。
さらに、異常時に、電池セル2が高温になり、内圧の上昇により破裂した場合であっても、電池セル2は弾性部材5により被覆されているため、例えば、電池セル2の破片や電池セル2に存在していた有機電解液などが、他の電池セル2に到達して悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0054】
なお、電池セル2は、通常使用時である充放電サイクルにおいても、わずかに変形が発生している。すなわち、電池セル2と電池ケース7との隙間が小さい場合には、電池セル2の膨張時に、電池セル2は電池ケース7から圧力を受け、電池セル2の収縮時に、電池ケース7からの圧力は消失する。このように、電池セル2に対する押圧と緩和が繰り返されると、電池性能が低下する原因となる。
本実施形態においては、通常使用時である充放電サイクルにおける電池セル2のわずかな変形に対しても、弾性部材5が柔軟に変形するため、電池セル2の電池性能の低下を抑制することができる。
【0055】
本実施形態において、電池セル2は角形であっても丸型であってもよい。
また、図2に示すように、防炎材4は電池セル2の外周面の全面を被覆し、電池セル2を押圧するように構成されていることも好ましいが、上記したような熱暴走の連鎖を抑制することができるものであれば、図1に示すように、必要に応じて、一部の領域が被覆されていない構成も好適に用いることができる。
さらに、弾性部材5は、防炎材4により被覆された電池セル2の外周面全面を被覆する必要はなく、上記したような弾性部材5が奏する効果が期待できるものであればよい。例えば、図1に示すように、電池セル2の外周面2bの一部が被覆されるものであってもよい。このような構成であっても、上述のとおり、弾性部材5による効果を十分に得ることができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る組電池を構成する防炎材4及び弾性部材5について、詳細に説明する。
【0057】
〔防炎材〕
本実施形態に係る組電池6に用いられる防炎材4としては、有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方を含有することが好ましく、必要に応じて無機粒子を含有することがより好ましい。本実施形態においては、これらの材料を、例えばシート状に加工したものを使用することができる。防炎材4を構成する材料としては、断熱性を有することが重要であるため、断熱性能が高い材料から選択される。
【0058】
断熱性能を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、防炎材4の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、防炎材4の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
【0059】
なお、防炎材4の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0060】
<無機粒子>
無機粒子としては、耐熱性を有する化合物からなるものであることが好ましく、単一の材質の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の材質の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できるため、断熱性能を向上させることができる。2種以上の無機粒子が含有されている場合に、各無機粒子の好ましい材質、形状及び粒子径について、以下に説明する。
【0061】
図3は、2種の無機粒子を含有する防炎材4を模式的に示した断面図である。図3に示す防炎材4は、一例として、第1の無機粒子41、第2の無機粒子12の他に、後述する2種の無機繊維(第1の無機繊維31、第2の無機繊維32)、有機繊維43及びバインダ9も含まれている。
【0062】
第1の無機粒子41及び第2の無機粒子12としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子41とし、大径の無機粒子を第2の無機粒子12として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0063】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ムライト(Al13Si)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、ジルコン(ZrSiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al)等が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0064】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において防炎材4内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0065】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0066】
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって防炎材が圧縮され、防炎材4の内部の密度が上がった場合であっても、防炎材4の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0067】
なお、本発明において、無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、防炎材に隣接して配置された電池セルが熱膨張し、防炎材に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、防炎剤中のシリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0068】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、防炎材4内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、防炎材4の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0069】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0070】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、防炎材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0071】
なお、後述するように、本実施形態に係る防炎材4及び弾性部材5は、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることも好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0072】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子41として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、防炎材4の中心付近にある第1の無機粒子41(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、防炎材4の中心付近の第1の無機粒子41が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0073】
(窒化物粒子)
窒化物粒子としては、窒化ホウ素(BN)等が好適に挙げられる。
【0074】
(炭化物粒子)
炭化物粒子としては、炭化ホウ素(BC)等が好適に挙げられる。
【0075】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0076】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0077】
(無機バルーン)
本発明に用いる防炎材4は、無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、防炎材4内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、防炎材4の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0078】
(無機バルーンの含有量:防炎材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、防炎材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0079】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0080】
<第2の無機粒子>
防炎材4に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子12は、第1の無機粒子41と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子12としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0081】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、防炎材に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子51として、ナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子12として、第1の無機粒子41よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、防炎材4に含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0082】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子12を防炎材4に含有させる場合に、第2の無機粒子12の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子12の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0083】
(第1の無機粒子と第2の無機粒子の含有量)
第1の無機粒子41がシリカナノ粒子であり、第2の無機粒子12が金属酸化物である場合に、第1の無機粒子41の含有量が、第1の無機粒子41と第2の無機粒子12との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であると、輻射伝熱の抑制に必要な金属酸化物粒子の量と、伝導・対流伝熱の抑制とクッション性に必要なシリカナノ粒子の量を最適化できる。
その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わってもバランスよく高い断熱性が得られると考えられる。
【0084】
<無機繊維>
無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0085】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面または多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0086】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、防炎材4の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより連続した空隙が生じやすくなるので断熱性の低下を招くおそれがある。
【0087】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、防炎材の成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0088】
なお、無機繊維は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。図3に示すように、防炎材4は、例えば、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32を有することが好ましい。性状が互いに異なる2種の無機繊維を含有することにより、防炎材4の機械的強度及び無機粒子の保持性を向上させることができる。
【0089】
(平均繊維径及び繊維形状が異なる2種の無機繊維)
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31の平均繊維径が、第2の無機繊維32の平均繊維径よりも大きく、第1の無機繊維31が線状又は針状であり、第2の無機繊維32が樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。平均繊維径が大きい(太径の)第1の無機繊維31は、防炎材4の機械的強度や形状保持性を向上させる効果を有する。2種の無機繊維のうち一方、例えば、第1の無機繊維31を第2の無機繊維32よりも太径にすることにより、上記効果を得ることができる。防炎材4には、外部からの衝撃が作用することがあるため、防炎材4に第1の無機繊維31が含まれることにより、耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
また、防炎材4の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維31が線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
【0090】
より具体的には、防炎材4の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維31の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。第1の無機繊維31が太すぎると、防炎材4への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、第1の無機繊維31の平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
なお、第1の無機繊維31は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、第1の無機繊維31は短すぎても形状保持性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
【0091】
一方、平均繊維径が細い(細径の)第2の無機繊維32は、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるとともに、防炎材4の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第2の無機繊維32を第1の無機繊維31よりも細径にすることが好ましい。
【0092】
より具体的に、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるためには、第2の無機繊維32は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径である第2の無機繊維32は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細径の無機繊維が細すぎると破断しやすく、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が低下する。また、他の無機繊維や無機粒子等を保持せずに、繊維が絡み合ったままで防炎材4中に存在する割合が多くなり、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力の低下に加えて、成形性や形状保持性にも劣るようになる。そのため、第2の無機繊維32の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
なお、第2の無機繊維32は、長くなりすぎると成形性や形状保持性が低下するため、第2の無機繊維32の繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
【0093】
また、第2の無機繊維32は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。第2の無機繊維32がこのような形状であると、防炎材4において、他の無機繊維や無機粒子等と絡み合う。そのため、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が向上する。また、防炎材4及び弾性部材5が押圧力や風圧を受けた際に、第1の無機繊維31と第2の無機繊維32が絡み合っていることにより、防炎材4が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
【0094】
なお、樹枝状とは、2次元的又は3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
第2の無機繊維32が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
【0095】
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、第2の無機繊維32の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力や、第2の無機繊維32同士、第1の無機繊維31と第2の無機繊維32との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
【0096】
上述の実施形態では、防炎材4の機械的強度や形状保持性、並びに無機粒子や無機繊維等の保持性を向上させる方法として、平均繊維径及び繊維形状が互いに異なる第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32を用いている。ただし、ガラス転移点や平均繊維径が互いに異なる第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32を用いることによっても、防炎材4の機械的強度、形状保持性及び粒子の保持性を向上させることができる。
【0097】
上記のとおり、本実施形態においては、防炎材4の機械的強度や形状保持性及び粒子の保持性を向上させるために、種々の組み合わせの無機繊維を使用することが好ましい。以下、上記図3に示す実施形態とは異なる組み合わせの第1の無機繊維及び第2の無機繊維について説明するが、本明細書においては、便宜上、無機繊維に関する他の実施形態を、図3を用いて説明する。
【0098】
(ガラス転移点が互いに異なる2種の無機繊維)
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維32は、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。また、上記2種の無機繊維とともに、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含む第1の無機粒子41を使用することにより、さらに一層断熱性能を向上させることができる。
【0099】
結晶質の無機繊維の融点は、通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維31は、高温にさらされると、その表面が第2の無機繊維32より先に軟化して、他の無機繊維や無機粒子等を結着する。したがって、防炎材4に上記のような第1の無機繊維31を含有させることにより、断熱層の機械的強度を向上させることができる。
第1の無機繊維31としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiOを含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0100】
第2の無機繊維32は、上述のとおり、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維32としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
第2の無機繊維32が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維31よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維31が軟化しても、第2の無機繊維32は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。
また、第2の無機繊維32が溶融又は軟化しないと、防炎材4に含まれる各粒子間、粒子と繊維との間、及び各繊維間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
【0101】
第2の無機繊維32が結晶質である場合に、第2の無機繊維32としては、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等を使用することができる。
第2の無機繊維32として挙げられた繊維のうち、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維32は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
なお、上記第2の無機繊維32として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
【0102】
また、第2の無機繊維32が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維31よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維32として用いてもよい。
なお、第2の無機繊維32としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0103】
なお、上記のとおり、第1の無機繊維31は第2の無機繊維32よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維31が先に軟化するため、第1の無機繊維31で他の無機繊維や無機粒子等を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維32が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維31の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維31と第2の無機繊維32とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維32が先に軟化するおそれがある。
したがって、第2の無機繊維32が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維32のガラス転移点は、第1の無機繊維31のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
【0104】
なお、第1の無機繊維31の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維32の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0105】
(ガラス転移点及び平均繊維径が互いに異なる2種の無機繊維)
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維32は、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、第1の無機繊維31の平均繊維径が、第2の無機繊維32の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
【0106】
上述のとおり、本実施形態に係る防炎材4が2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31の平均繊維径が、第2の無機繊維32よりも大きいことが好ましい。また、太径の第1の無機繊維31が非晶質の繊維であり、細径の第2の無機繊維32が、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であることが好ましい。これにより、第1の無機繊維31のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、細径である第2の無機繊維32が、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維32が繊維の形状で残存するため、防炎材4の構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
【0107】
なお、この場合であっても、第1の無機繊維31の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維32の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0108】
また、防炎材4には、上記第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32の他に、異なる無機繊維が含まれていてもよい。
【0109】
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31の含有量は、防炎材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維32の含有量は、防炎材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0110】
また、第1の無機繊維31の含有量は、防炎材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、第2の無機繊維32の含有量は、防炎材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、第1の無機繊維31による形状保持性や押圧力耐性、抗風圧性、及び第2の無機繊維32による無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。
【0111】
<有機繊維>
有機繊維43としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。合成繊維としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる繊維が選択可能であり、例えば、変性されたポリエチレンテレフタラート(PET;PolyEthylene Terephthalate)繊維、ポリエチレン(PE;PolyEthylene)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリブチレンテレフタラート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリウレタン繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアセタール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニルフタルアミド繊維等からなる合成繊維を使用することができる。
【0112】
本実施形態において使用することができる合成繊維の種類及び構造等について、より詳細に以下に説明する。
ビニロン(vinylon):ビニルアルコール単位を質量比で65%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニラール(vinylal):アセタール化の水準の異なるポリビニルアルコールの長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,chlorofiber):塩化ビニル単位を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニリデン(polyvinylidene chloride,chlorofiber):塩化ビニリデン単位(-CH-CCl-)を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル(acrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル系(modacrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で35%以上、85%未満含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ナイロン(nylon,polyamide):繰り返しているアミド結合の85%以上が脂肪族又は環状脂肪族単位と結合している長鎖状合成高分子から成る繊維。
アラミド(aramid):2個のベンゼン環に直接結合しているアミド又はイミド結合が質量比で85%以上であり、イミド結合がある場合は、その数がアミド結合の数を超えない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエステル(polyester):テレフタル酸と2価アルコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレンテレフタラート(PET;polyethylene terephthalate):テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリトリメチレンテレフタラート(PTT;polytrimethylene terephthalate):テレフタル酸と1,3-プロパンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリブチレンテレフタラート(PBT;polybutylene terephthalate):テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレン(PE;polyethylene):置換基のない飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリプロピレン(PP;polypropylene):2個当たり1個の炭素原子にメチル基の側鎖がある飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、立体規則性があり、他に置換基のない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリウレタン(elastane,polyurethane):ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含み、張力をかけないときの長さの3倍に伸長したとき、張力を除くとすぐ元の長さに戻る長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ乳酸(polylactide):乳酸エステル単位を質量比で50%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
有機繊維43の平均繊維長及び平均繊維径の好ましい範囲は、無機繊維と同様である。
【0113】
<その他の材料>
本実施形態において用いることができる防炎材4は、上記第1の無機粒子41及び第2の無機粒子12、第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32や有機繊維43の他に、結合材、着色剤等のように、防炎材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
【0114】
(結合材)
本発明の防炎材4は、バインダ9のような結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に防炎材4がシリカナノ粒子を含む場合には、防炎材4としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、無機粒子を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。上記第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32も結合剤として機能する。
【0115】
なお、バインダ9としては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
【0116】
本発明に用いる防炎材4において、結合材の含有量は、防炎材全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。本発明に用いる防炎材4において、結合材の含有量は、防炎材全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0117】
本発明に用いる防炎材4の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。防炎材の厚さが上記範囲内であると、充分な断熱性及び機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
【0118】
〔弾性部材〕
本実施形態に係る組電池6に用いられる弾性部材5としては、電池セル2の変形に対して柔軟に変形する弾性と、隣り合う電池セル2の間に防炎シート10を配置したときや、防炎材4で被覆された電池セル2に弾性部材5を装着した際に、電池セル2の膨張や収縮を吸収し、電池セル2を押圧する伸縮性とを有するものを使用することができる。このような弾性部材5としては、例えば、ゴム又はエラストマーを用いることができる。
なお、図2に示す弾性部材5は、両端部が開口した筒状体であり、外表面及び内表面は平滑に形成されたものであるが、弾性部材5の形状は上記図2に示す形状に限定されない。
【0119】
図4は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材の形状例を示す斜視図である。なお、以下に示す弾性部材の形状は、全て、図2に示す組電池6の弾性部材5に代えて使用することができるため、以下に示す種々の形状の弾性部材を組電池6に適用したものとして、その効果等を説明する。
図4に示すように、筒状体である弾性部材15の内表面には、弾性部材15の一端部15aから他端部15bに延びる複数の溝16が形成されている。なお、本実施形態において弾性部材5(筒状体)の一端部15a及び他端部15bとは、それぞれ弾性部材5の長手方向(図4において上下方向)における一方の端部及び他方の端部を意味し、すなわち、筒状体の開口端部を示す。
【0120】
このように構成された弾性部材15を用いた組電池においては、図2に示す組電池6と同様に、電池セル2が高温になった場合に、防炎材4により熱の伝播が抑制されるとともに、弾性部材15は、電池セル2の変形を抑制しつつ、電池セル2の変形に応じて変形するため、電池ケース7の破損、及び電池セル2の電池性能の低下を抑制することができる。
【0121】
また、弾性部材15は、その内表面に溝16を有するため、弾性部材15と防炎材4との間に空隙部が形成される。したがって、防炎材4によっても伝播の抑制が困難であった一部の熱が、弾性部材15側に伝播された場合に、空隙部における気体が熱せられ、高温の気体が、空隙部を介して弾性部材15の一端部15a及び他端部15b側に排出される。その結果、新たな気体が空隙部に導入されるため、電池セル2を効果的に冷却することができる。
【0122】
なお、弾性部材15に形成される溝16の数、深さ及び周方向の幅等は特に制限されない。溝16の数、深さ及び周方向の幅を変化させることにより、弾性部材15の弾性及び伸縮性等を変化させることができるため、要求される特性及び電池ケース7における電池セル2を収容する領域のサイズに応じて、種々に設計することができる。
また、溝16は、必ずしも弾性部材15の長手方向に平行な方向に形成される必要はないが、電池セル2の熱を隣接する電池セル2に伝播させないようにするために、熱せられた気体は電池セル2の電極面2a側及び電極面2aに対向する面側に排出されることが好ましい。したがって、溝16を形成する場合は、弾性部材15の一端部15aから他端部15bに延びるように形成すればよい。
溝16が弾性部材15の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。なお、溝16は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
上記所定の角度とは、上記平行な方向に対して0°超であることが好ましい。一方、上記所定の角度が45°以下であると、熱せられた高温気体を効率よく排出することができる理由から好ましく、30°以下であることがより好ましい。
【0123】
図5は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材の他の形状例を示す斜視図である。図5に示すように、筒状体である弾性部材25は、図2に示す弾性部材5と同様に、内表面及び外表面は平滑に形成されているが、その内部に、一端部25aから他端部25bに貫通する複数の貫通孔27が形成されている。
【0124】
このように構成された弾性部材25を用いた組電池においても、上記弾性部材5及び弾性部材15を使用した場合と同様の効果を得ることができる。また、弾性部材25は、厚み方向の内部に貫通孔27を有するため、貫通孔27の内部が空隙部となっている。したがって、電池セル2から発生した熱が弾性部材25まで到達した場合に、貫通孔27の内部の気体が熱せられた後、高熱の気体が、貫通孔27を介して弾性部材25の一端部15a及び他端部15b側に排出される。その結果、新たな気体が貫通孔27内に導入されるため、電池セル2を効果的に冷却することができる。
【0125】
なお、弾性部材25に形成される貫通孔27の数及び大きさ等は特に制限されない。図4に示す弾性部材15と同様に、要求される弾性部材25の特性及び電池ケース7における電池セル2を収容する領域のサイズに応じて、種々に設計することができる。
また、貫通孔27は、必ずしも弾性部材25の長手方向に平行な方向に形成される必要はなく、貫通孔27を形成する場合は、弾性部材25の一端部25aから他端部25bに延びるように形成すればよい。
貫通孔27が弾性部材25の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して上記所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。なお、貫通孔27は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
【0126】
図6は、本発明の実施形態に係る組電池に適用される弾性部材のさらに他の形状例を示す斜視図である。図6に示すように、筒状体である弾性部材35は、複数のチューブが、その長手方向に並列に配置されて、隣接した面同士が互いに接着された形状となっている。したがって、図4に示す弾性部材15と同様に、内表面に複数の溝36が形成されているとともに、図5に示す弾性部材25と同様に、厚み方向の内部に、一端部35aから他端部35bに貫通する複数の貫通孔37が形成されている。
【0127】
このように構成された弾性部材35を用いた組電池においても、上記弾性部材5,15,25を使用した場合と同様の効果を得ることができる。また、弾性部材35は、溝36を有し、弾性部材35と防炎材4との間に空隙部が形成されるとともに、貫通孔37も有している。したがって、空隙部と貫通孔37との双方の存在により、熱せられた気体が、弾性部材35の一端部35a及び他端部35b側に排出される効果が高くなり、より一層効果的に電池セル2を冷却することができる。
【0128】
なお、弾性部材35に形成される貫通孔37の数及び大きさ、並びに溝36の深さ等は、適宜設計することができる。
また、上記弾性部材15及び弾性部材25の場合と同様に、溝36及び貫通孔37が弾性部材35の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して上記所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。溝36及び貫通孔37は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
【0129】
さらに、図4図6に示す弾性部材は、全て筒状体の形状を有するものとしたが、図1に示す防炎シート10に適用する場合に、弾性部材5は、筒状体である必要はない。すなわち、図4図6に示す弾性部材をシート状にしたものを使用することができる。具体的には、図1に示す弾性部材5は、防炎材4に対向する面に直交する一端面から、この一端面に対向する他端面に向かって延びる複数の溝を有していてもよい。
また、弾性部材5は、防炎材4に対向する面に直交する一端面から、この一端面に対向する他端面に貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。
さらに、弾性部材5は、上記溝及び貫通孔を同時に有するものであってもよい。
シート状の弾性部材5を使用する場合に、溝及び貫通孔が延びる方向を、熱を放出させたい方向となるようにして、弾性部材5を配置することが好ましい。
【0130】
〔支持層〕
上述のとおり、本実施形態に係る防炎シート10は、上記防炎材4と、例えば弾性部材5とを有するが、さらに、防炎材と弾性部材との間に、不図示の支持層が配置されることが好ましい。支持層とは、防炎材の形状を支持し、防炎シートの強度を保持する効果を有するものであり、防炎シート10が支持層を有することにより、電池セルの変形による押圧力が部分的に防炎材にかかることを防止することができ、防炎材の破壊を抑制することができる。
【0131】
支持層を構成する材料としては、上記弾性部材よりも弾性率が低いとともに、硬度が高い材料を使用することができ、例えば、有機材料又は無機材料を主原料として有するものを使用することができる。支持層を形成する主原料として、有機材料を用いた場合には、支持層自体が柔軟性を有するものとなるため、防炎シートとしても柔軟性が得られ、組電池への組付け作業を容易にすることができる。また、支持層を形成する主原料として、無機材料を用いた場合には、支持層自体が耐熱性を有するものとなるため、防炎シートの耐熱性をより一層向上させることができる。
【0132】
なお、支持層は、互いに異なる材料からなる2以上の層を積層した構造であってもよい。また、支持層の少なくとも一方の表面に、上記防炎材の材料及び上記弾性部材の材料のいずれか一方が含まれて、支持層と防炎材又は弾性部材が一体化された構造であってもよい。このように、支持層と、防炎材及び弾性部材の少なくとも一方とが一体化された構造を有していると、防炎シートの強度を向上させる効果のみでなく、弾性部材と防炎材との滑りによる位置ずれを抑制する効果も得ることができ、さらに、発塵抑制効果も得ることができる。また、支持層の一方の表面に上記防炎材の材料が含まれ、他方の表面に上記弾性部材の材料が含まれて、防炎材と弾性部材とが支持層を介して一体化した構造とすることがより好ましく、これにより、位置ずれの抑制効果及び発塵抑制効果をより一層向上させることができる。
【0133】
支持層の厚さは特に限定しないが、弾性部材及び防炎材が配置されるスペースを十分に得るために、弾性部材よりも厚みが薄いことが好ましい。したがって、支持層の厚さは、弾性部材の厚さの0.5%以上30%以下であることが好ましく、1.0%以上10%以下であることがより好ましい。なお、支持層と弾性部材が一体化された構造であっても、支持層を構成する部分の厚さと、弾性部材を構成する部分の厚さとの関係は、上記範囲とすることが好ましい。
【0134】
<電池ケース>
図2に示すような本実施形態に係る組電池6を収容する電池ケース7の材質及び形状は特に限定されない。電池ケース7の材質としては、ポリカーボネートの他、PP、PET、ポリアミド(PA;polyamide)、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS;Steel Use Stainless)等を使用することができる。また、電池ケース7の形状は、適用される電動工具等の機器に応じて、自由に選択することができる。
なお、図2に示す本実施形態に係る組電池6は、各電池セル2が独自に断熱性を有しているとともに、電池セル2の膨張及び収縮が他の領域に影響を与えないため、電池ケース7に収容されていなくてもよい。例えば、防炎材4及び弾性部材5により被覆された複数の電池セル2をまとめて、バンド等により固定して組電池とすることにより、そのままの形態で電動工具等の機器の内部に格納することもできる。このように、電池ケース7を使用しないで、防炎材4及び弾性部材5により被覆された複数の電池セル2を隣接して配置した場合に、隣り合う電池セル2間は、図1に示す防炎シート10と同様の構成となる。
【0135】
[組電池の組立方法]
図1に示す本実施形態に係る組電池は、電池セル2間に防炎シート10を介在させることにより、容易に組み立てることができる。また、図2に示す本実施形態に係る組電池6は、電池セル2を防炎材4で被覆し、これに、例えば筒状体である弾性部材5を被せるのみで、上記効果を有する組電池を容易に組み立てることができる。また、各電池セル2のそれぞれに、防炎材4及び弾性部材5を取り付けるため、電池ケース7の煩雑な設計が不要である。
さらに、本実施形態においては、防炎材4がシート状のものであると、電池セル2の形状及び大きさにかかわらず、容易に電池セル2の外周面を覆う大きさや、所望の大きさに加工することができる。また、弾性部材5が筒状である場合に、弾性部材5は伸縮性を有するため、電池セル2の形状及び大きさに影響されず、種々の電池セル2に取り付けることができる。
【0136】
なお、本実施形態に係る組電池及び電池パックは、電動工具の他、電動アシスト自転車、電動バイク、電動車両等に好適に用いることができる。
【0137】
なお、本実施形態の組電池は、図1及び図2に例示した組電池に限定されず、隣り合う電池セル2間のみでなく、電池セル2と、その外側に配置されるケース(例えば、電池ケース30)との間に、防炎シート10を配置することもできる。
【0138】
このように構成された組電池においては、ある電池セルが発火した場合に、電池ケースの外側に炎が広がることを抑制することができる。
例えば、本実施形態に係る組電池は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、防炎シート10を、各電池セル間に介在させるだけでなく、電池セル2と電池ケースとの間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池を構成することができる。
【0139】
本実施形態の組電池において、電池セル2と電池ケースとの間に防炎シート10を配置する場合に、防炎シート10と電池セル2とは、接触していても、隙間を有していてもよい。ただし、防炎シート10と電池セル2との間に隙間を有していない場合であっても、防炎シート10は、弾性部材5を有しているため、いずれかの電池セルの温度が上昇し、体積が膨張した際に、電池セルの変形を許容することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 電池パック
2 電池セル
2a 電極面
3 電極
4 防炎材
5,15,25,35 弾性部材
6 組電池
7 電池ケース
9 樹脂バインダ
10 防炎シート
12 第2の無機粒子
16,36 溝
27,37 貫通孔
31 第1の無機繊維
32 第2の無機繊維
41 第1の無機粒子
43 有機繊維
【要約】
【課題】異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができ、設計及び組立が容易である組電池及び電池パックを提供する。
【解決手段】各電池セル2は、電極3を有する電極面2aと、電極面2aに直交する面である外周面2bとを有し、各電池セル2は、電極3及び不図示のコネクタ等を介して直列又は並列に接続されている。電池セル2の外周面は防炎材4により被覆され、さらに防炎材4の外周面は弾性部材5により被覆されており、これにより、組電池6が構成される。弾性部材5は両端部が開口した筒状体であり、電池セル2及び防炎材4の外周面を周方向に被覆している。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6