(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】回転型レオメーター用乾燥防止用具
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G01N11/14 B
(21)【出願番号】P 2018113072
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-04-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 清二
(72)【発明者】
【氏名】柚木 俊二
(72)【発明者】
【氏名】大藪 淑美
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-080163(JP,U)
【文献】実開昭55-074684(JP,U)
【文献】特開2016-205938(JP,A)
【文献】特表2012-506996(JP,A)
【文献】特開平07-110293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のレオロジー特性を測定する回転型レオメーターに設置可能な回転型レオメーター用乾燥防止用具であって、
前記回転型レオメーターのセンサーを含む測定部を内部に収容するための収容空間を形成する筐体を備え、
前記筐体は、前記測定部の周囲に立設される平面視略環状の第1側壁と、前記第1側壁の上端に配置され、前記測定部の上方側を覆う上板とを有し、
前記上板の前記測定部側に、溶媒を含浸させた第1多孔質体が設けられて
おり、
前記第1側壁の内周面に、溶媒を含浸させた第2多孔質体が設けられており、
前記第2多孔質体の内周面に、前記第2多孔質体を固定する第2側壁が設けられている、回転型レオメーター用乾燥防止用具。
【請求項2】
前記第2側壁には、その内部を貫通して形成される穴が複数設けられている、請求項
1に記載の回転型レオメーター用乾燥防止用具。
【請求項3】
前記筐体の外側を覆う容器を更に備える、請求項1
又は2に記載の回転型レオメーター用乾燥防止用具。
【請求項4】
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体はフェルト布である、請求項
1から3のいずれか一項に記載の回転型レオメーター用乾燥防止用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型レオメーター用乾燥防止用具に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定対象(試料)が有する粘性・粘弾性等のレオロジー特性を測定する回転型レオメーターが知られている。この回転型レオメーターでは、一般に、試料に外力を与え、当該試料に生じる変形乃至は応力を検出することで、レオロジー特性を測定する。より具体的には、上下一対の円盤から構成されたセンサー間に試料を配置し、トルクモーターを用いて一方の円盤を回転駆動させ、試料に生じる変形乃至は応力に応じたパラメータに基づいて粘性・粘弾性特性を算出する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した回転型レオメーターを用いて試料のレオロジー特性を測定する際に、上下一対の円盤から構成されたセンサー間に配置された試料の外縁側は、大気に露出した状態となっている。そのため、乾燥により被膜が生じやすい試料の粘弾性等を計測する場合には試料の外縁側が乾燥し、その乾燥した物質の特性がそのままトルクに反映されるため、正確な計測ができない虞がある。また、乾燥により硬化が進行しやすい試料を測定する場合も同様に、試料の一部が乾燥すると正確な計測ができない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、回転型レオメーターを用いて測定する際の試料の乾燥を抑制することができ、計測精度を向上させることが可能な回転型レオメーター用乾燥防止用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る回転型レオメーター用乾燥防止用具は、試料のレオロジー特性を測定する回転型レオメーターに設置可能な回転型レオメーター用乾燥防止用具であって、回転型レオメーターのセンサーを含む測定部を内部に収容するための収容空間を形成する筐体を備え、筐体は、測定部の周囲に立設される平面視略環状の第1側壁と、第1側壁の上端に配置され、測定部の上方側を覆う上板とを有し、上板の測定部側に、溶媒を含浸させた第1多孔質体が設けられている。
【0007】
この態様によれば、回転型レオメーターを用いて例えば加温条件で試料の粘弾性を測定する際に、測定部の上方側を覆う上板が加温され、この上板に設けた第1多孔質体に含侵された溶剤を筐体内に蒸散させることができる。これにより、筐体内に収容された試料の乾燥を抑制することができるので、例えば乾燥により被膜が生じやすい試料を用いたとしても、試料の乾燥を抑えながら試料の粘弾性の計測を行うことができる。その結果、回転型レオメーターを用いた計測の精度を向上させることができる。
【0008】
上記態様において、第1側壁の内周面に、溶媒を含浸させた第2多孔質体が設けられていてもよい。
【0009】
この態様によれば、回転型レオメーターを用いて例えば加温条件で試料の粘弾性を測定する際に、第1側壁に設けた第2多孔質体に含侵された溶剤を筐体内に蒸散させることができる。これにより、筐体内に収容された試料の乾燥を更に抑制することができる。
【0010】
上記態様において、第2多孔質体の内周面に、第2多孔質体を固定する第2側壁が設けられていてもよい。
【0011】
この態様によれば、第2多孔質体の測定部側に第2側壁が設けられているため、第2多孔質体から測定部側に漏出する溶媒を第2側壁により抑制することができる。
【0012】
上記態様において、第2側壁には、その内部を貫通して形成される穴が複数設けられていてもよい。
【0013】
この態様によれば、第2多孔質体に含浸された溶媒を、第2側壁に形成された穴を介して測定部側に蒸散させることができるので、試料の乾燥を更に抑制することができる。
【0014】
上記態様において、筐体の外側を覆う容器を更に備えていてもよい。
【0015】
この態様によれば、回転型レオメーターを用いて加温条件で試料の粘弾性を測定する際に、筐体の外側を覆う容器によって上方から上板を加温することができるので、上板に設けられた第1多孔質体に含侵された溶剤の蒸散を促進させることができる。これにより、筐体内に収容された試料の乾燥を更に抑制することができる。
【0016】
上記態様において、第1多孔質体及び第2多孔質体はフェルト布であってもよい。
【0017】
この態様によれば、コストの増加を抑えた回転型レオメーター用乾燥防止用具を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転型レオメーターを用いて測定する際の試料の乾燥を抑制することができ、計測精度を向上させることが可能な回転型レオメーター用乾燥防止用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す上板を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示した図である。
【
図4】第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示した図である。
【
図6】第3実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示した図である。
【
図7】動的粘弾性測定により得られたゼラチン水溶液の粘度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。各図において、同一の符号を付したものは、同一の又は同様の構成を有する。
【0021】
<第1実施形態>
図1乃至
図3を参照しながら、第1実施形態における回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成について説明する。
図1は、第1実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す上板を取り外した状態を示す斜視図である。
図3は、
図1に示すIV-IV断面を示す図であって、回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示した図である。尚、
図1においてシャフト3の図示を省略し、
図2においてシャフト3及び上部センサー2aの図示を省略している。
【0022】
回転型レオメーターは、
図3に示すように、上下一対の円盤から構成されたセンサー2a、2bを含み、当該センサー2a、2b間に配置される試料Sのレオロジー特性を測定する。詳細には、上部センサー2aは、シャフト3を介してモーター(図示略)の回転軸に連結されており、モーターが駆動されると、その駆動力がシャフト3に伝達され、上部センサー2aが回転する。このように上部センサー2aを回転駆動させ、センサー2a、2b間に配置された試料Sに生じる応力(トルク)および変位を検出し、試料Sのレオロジー特性を測定する。尚、本実施形態における回転型レオメーターは、試料Sのレオロジー特性を測定する間に、試料Sを加温することが可能な加熱手段(図示略)を備えている。
【0023】
尚、上下一対の円盤から構成されたセンサー2a、2b及び試料Sは、本明細書において、回転型レオメーターの測定部M(以下、単に「測定部M」と称する。)を構成するものである。
【0024】
図3に示すように、回転型レオメーター用乾燥防止用具1は、内部に測定部Mを収容するための収容空間Rを形成する筐体10を備える。
【0025】
筐体10は、円筒状の容器であり、測定部Mの周囲に立設される第1側壁10bと、第1側壁10bの上端に設置される上板10aとから構成される。
【0026】
上板10aは、測定部Mの上方側を覆う上蓋である。上板10aは、分割可能な一対の半円状の板状部材から成り、全体として平面視略円形を呈している。上板10aには、その中央部にシャフト3を通すための貫通孔15が形成されている。上板10aの測定部M側(
図3において、上板10aの下方側)には、溶媒(例えば、水)を吸収可能な多孔質体11a(第1多孔質体)が貼り付けられている。多孔質体11aは、例えば、上板10aの裏面に沿うように板状の多孔質材で構成することができるが、多孔質体11aの形状や大きさは特に限定されず、適宜変更可能である。
【0027】
第1側壁10bは、測定部Mを囲むように平面視略環状に形成されている。第1側壁10bの径方向内側(すなわち、側壁10bの測定部M側)には、溶媒(例えば、水)を吸収可能な多孔質体11b(第2多孔質体)が設けられている。多孔質体11bは、
図2に示すように、測定部Mの周囲を覆うように第1側壁10bの内周面に沿って配置されている。
【0028】
多孔質体11bの径方向内側には、
図2及び
図3に示すように、第1側壁10bよりも径方向寸法が小さい平面視略環状の第2側壁12が設けられている。第2側壁12は、多孔質体11bと測定部Mとの間に、着脱自在に設置される。このような平面視略環状の第2側壁12を多孔質体11bの内周面に沿って設置することにより、第2側壁12と第1側壁10bとの間の間隙に多孔質体11bを固定することができる。
【0029】
第2側壁12には、
図2に示すように、穴Hが複数形成されている。穴Hは、第2側壁12の内周面から外周面まで連通するように複数形成されている。本実施形態において、第2側壁12の外周面に沿うように多孔質体11bが配置されているため、多孔質体11bに含まれる溶媒が蒸散される際には、第2側壁12の穴Hを介して測定部M側に蒸散した溶媒を流通させ易くすることができる。その結果、試料Sの乾燥を更に抑制することができる。
【0030】
尚、多孔質体11a、11bは、予め吸収させた溶媒を保持可能な機能を有する程度に多数の孔を有する材料であれば適宜変更することが可能である。多孔質体としては、例えばフェルト布、コットンパフ等の不織布、ニトリルゴムやポリウレタン等の合成高分子製スポンジ、アルミナセラミックス等の多孔質セラミックスが挙げられるが、これらの材料に限定されない。
【0031】
以上説明した、第1実施形態は、測定部Mの周囲を囲む多孔質体11b及び第2側壁12を含むが、これらの部材を含まない構成としても良い。すなわち、本実施形態における回転型レオメーター用乾燥防止用具は、試料S及び当該試料Sのレオロジー特性を測定するセンサー2a、2bを含む測定部Mを内部に収容するための収容空間Rを形成する筐体10を備え、筐体10は、測定部Mの周囲に立設される第1側壁10bと、第1側壁10bの上端に配置され、測定部Mの上方側を覆う上板10aとを有し、上板10aの下方側に、溶媒を含浸させた多孔質体11aが設けられる構成としても良い。
【0032】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成について説明する。
図4は、第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の概略構成を示す斜視図である。
図5は、
図4のV-V断面を示す図であって、回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示した図である。
【0033】
図4及び
図5に示す回転型レオメーター用乾燥防止用具1bは、第1実施形態で示した回転型レオメーター用乾燥防止用具1の構成に円筒容器20を追加したもので、それ以外の構成及び機能は第1実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具1と同じである。したがって、第1実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具1と同じ部分については第1実施形態のものと同一の符号を用い、それらについての説明は省略する。
【0034】
図4及び
図5に示す回転型レオメーター用乾燥防止用具1bでは、測定部Mを内部に収容した筐体10の外側を覆う円筒容器20が設けられている。円筒容器20は、加温・加熱機能を備えたカバー(フード)であり、このカバーによって筐体10を覆うことにより、測定部Mを含む筐体10の温度を制御することが可能となっている。例えばゼラチン水溶液などを所定の加温条件下で計測する場合、円筒容器20の内部が当該所定の加温条件に保持されるように、円筒容器20に備わる加温・加熱機能により温度制御される。このように構成することにより、回転型レオメーターを用いて、例えばゼラチン水溶液などを加温条件下で計測する場合、円筒容器20を設けない構成と比較して、円筒容器20によって上方側から上板10aを加温させ易くすることができる。そのため、上板10aに貼り付けた多孔質体11aから溶媒を蒸散させ易くすることができ、試料Sの乾燥を更に抑制することができる。
【0035】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成について説明する。
図6は、第3実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具の構成を模式的に示す図である。
【0036】
図6に示す回転型レオメーター用乾燥防止用具1cは、第2実施形態で示した回転型レオメーター用乾燥防止用具1bの構成に溶媒供給装置30を追加したもので、それ以外の構成及び機能は第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具1bと同じである。したがって、第2実施形態の回転型レオメーター用乾燥防止用具1bと同じ部分について第1実施形態のものと同一の符号を用い、それらについての説明は省略する。
【0037】
図6に示す回転型レオメーター用乾燥防止用具1cは、上板10aに貼り付けた多孔質体11aに溶媒を供給する溶媒供給装置30を備える。
【0038】
溶媒供給装置30は、貯留部31と、連結管32と、吸液材33とを備える。貯留部31は、溶媒(例えば水)を貯留したタンクである。連結管32は、貯留部31と上板10aに貼り付けた多孔質体11aとの間を連結し、内部に溶媒を流通させることが可能な管路である。吸液材33は、連結管32内部に設けられ、貯留部31内の溶媒を毛細管現象により吸い上げて、上板10aに貼り付けた多孔質体11aに溶媒を供給するための部材である。吸液材33は、例えば、繊維質から成る布状体から構成することができるが、これに限定されるものでなく、毛細管現象により液体が浸透可能な部材であれば他の様々な部材を採用することが可能である。
【0039】
このように構成することにより、上板10aの多孔質体11aに含まれる溶媒が蒸散して多孔質体11aが乾燥したとしても、溶媒供給装置30により多孔質体11aに引き続き溶媒を供給することができるので、回転型レオメーターを用いた測定が長時間に及ぶ場合でも試料Sの乾燥を抑制することができる。その結果、回転型レオメーターを用いた計測の精度をより一層向上させることができる。
【0040】
尚、
図6に示す回転型レオメーター用乾燥防止用具1cにおいて、上板10aに貼付した多孔質体11aと測定部Mを囲むように側面側に設けた多孔質体11bとを接触させる構成とすることで、溶媒供給装置30により多孔質体11aに供給した溶媒を、当該多孔質体11aを介して多孔質体11bにも供給することができる。これにより、多孔質体11a及び多孔質体11bからより長く溶媒を蒸散させることができ、長時間を要する測定でも試料Sの乾燥をより一層抑制することができる。
【0041】
以下、具体的な実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるわけではない。
【0042】
[実施例1]
(1)試料調製
顆粒状ゼラチン(牛骨由来Bタイプ、新田ゼラチン株式会社製)を脱イオン水に溶解してゼラチンの10質量%水溶液を調製した。そのゼラチン水溶液をエッペンドルフチューブに約1.5mLごとに小分けして収容し、冷蔵庫で保管した。粘度測定に用いる前に、エッペンドルフチューブを60℃で30分間加温して、ゲル化したゼラチンを融解した。
【0043】
(2)粘度測定
(2-1)乾燥防止具
図4及び
図5を参照しながら説明した、回転型レオメーター用乾燥防止用具1bを用いた。同図に示す上板10a、第1側壁10b、及び第2側壁12は、それぞれアルミニウム製の部材を用いた。上板10aの多孔質体11a及び測定部Mの周囲を囲む多孔質体11bとして、フェルト布を貼付した。多孔質体11bの内周面側には多孔質体11bを固定するための第2側壁12を設置した。尚、回転型レオメーターを用いた測定の前に、上板10aに貼付された多孔質体11a及び測定部Mの周囲を囲む多孔質体11bに脱イオン水を含ませた。
【0044】
(2-2)試料の設置
上部センサー2aとしてコーンプレート型センサー(内径50mm、コーン角1°)を付属した回転型レオメーター(MCR302、アントンパール株式会社製)を用いて、ゼラチン水溶液の粘度を振動モードにて測定した。まず、測定部温度を50℃に設定した。60℃に加温したゼラチン水溶液0.6mLをマイクロピペットで吸い上げ、下部センサー2b(
図5)に注ぎ、上部センサー2aを所定位置へと移動させた。回転型レオメーター用乾燥防止用具1の上板10aを第1側壁10bに乗せ、円筒容器20を所定位置へと移動させた(
図4参照)。
【0045】
(2-3)せん断履歴の統一
せん断速度60s-1の回転を60秒間付与した後、センサーを静止させて60秒間置き、サンプルのせん断履歴を統一した。この工程において、回転開始10秒後と60秒後の粘度を比較し、引き続き行う動的粘弾性測定の前にサンプル粘度に有意な変化が生じたか否かを確認した。回転開始10秒後の粘度に対する60秒後の粘度の比(%)を「粘度比A」と定義する。
【0046】
(2-4)粘度測定
その後、周波数0.5Hz、剪断応力0.5Paに制御した動的粘弾性測定を行い、粘度変化を30分間追跡した。動的粘弾性を開始した時点での粘度に対する10分後、20分後、および30分後の粘度の比(%)をそれぞれ「粘度比B10」、「粘度比B20」、および「粘度比B30」と定義する。
【0047】
(3)結果
粘度測定の結果を表1及び表2に示す(以下同様)。粘度比Aは99.1%であり、短時間での異常な粘度変化は生じなかった。動的粘弾性測定により得られた粘度の時間変化を、
図7の実線G1で示す。粘度の時間変化から算出された粘度比B
10、粘度比B
20、および粘度比B
30はそれぞれ107%、109%、および110%であり、計測開始から30分後でさえ、粘度の増加率は10%以内であった。
【0048】
[実施例2]
(1)試料調製
実施例1と同様にした。
【0049】
(2)粘度測定
円筒容器20を使用しなかったことを除き、実施例1と同じ手順と方法で測定した。
【0050】
(3)結果
粘度比Aは98.5%であり、短時間での異常な粘度変化は生じなかった。動的粘弾性測定により得られた粘度の時間変化を、
図7の破線G2で示す。粘度の時間変化から算出された粘度比B
10、粘度比B
20、及び粘度比B
30は、それぞれ106%、112%、及び121%であった。
【0051】
[実施例3]
(1)試料調製
実施例1と同様にした。
【0052】
(2)粘度測定
円筒容器20を使用せず、第1側壁10bの内側の多孔質体11bを除いたことを除き、実施例1と同じ手順と方法で測定した。
【0053】
(3)結果
粘度比Aは98.6%であり、短時間での異常な粘度変化は生じなかった。粘度の時間変化から算出された粘度比B10、粘度比B20、及び粘度比B30は、それぞれ110%、116%、及び135%であった。
【0054】
[比較例1]
(1)試料調製
実施例1と同様にした。
【0055】
(2)粘度測定
円筒容器20を使用せず、上板10a(
図3)を取り外したことを除き、実施例1と同じ手順と方法で測定した。
【0056】
(3)結果
粘度比Aは102%であり、短時間での異常な粘度変化は生じなかった。しかし、動的粘弾性測定への移行直後から乾燥による急激な粘度値の上昇が見られ、粘度比B10は193%に達したため、動的粘弾性測定を10分で終了した。
【0057】
[比較例2]
(1)試料調製
実施例1と同様にした。
【0058】
(2)粘度測定
図1~
図6を参照しながら説明した、回転型レオメーター用乾燥防止用具1、1b、1cを使用しなかったことを除き、実施例1と同じ手順と方法で測定した。
【0059】
(3)結果
粘度比Aは103%であり、短時間での異常な粘度変化は生じなかった。しかし、動的粘弾性測定へ移行後、乾燥による粘度値の上昇が見られた。粘度の時間変化から算出された粘度比B10、粘度比B20、および粘度比B30は、それぞれ104%、128%、および196%であり、動的粘弾性測定を開始してから20分後までに粘度増加率が10%を超えた。
【0060】
【0061】
【0062】
実施例3及び比較例1、2に示す結果より、測定部Mの上方側を覆う上板10aに多孔質体11aを設けることにより、多孔質体11bに含まれる溶媒が蒸散されて試料Sの乾燥が抑制され、その結果、粘度値の上昇を抑えることが可能であることが分かる。
【0063】
実施例2及び実施例3に示す結果より、測定部Mの上方側を覆う上板10aに多孔質体11aを設けることに加え、測定部Mの周囲に多孔質体11bを設けた方が、筐体10内に蒸散される溶媒の量が増加し、試料Sの乾燥を更に抑制することが可能であることが分かる。
【0064】
実施例1及び実施例2に示す結果より、筐体10の外側を覆う円筒容器20を設けることで、回転型レオメーターを用いて加温条件下で試料Sを測定する際に、円筒容器20により上板10aが加温されて上板10aに貼付された多孔質体11bに含まれる溶媒の蒸散が促進され、試料Sの乾燥をより一層抑制することが可能であることが分かる。
【0065】
以下、第2側壁12(
図3等)を設置しない場合の参考例について説明する。
[参考例1]
(1)試料調製
実施例1と同様にした。
【0066】
(2)粘度測定
以下の点を変更したことを除き、実施例1と同じ手順と方法で測定した。
・円筒容器20を使用しなかった。
・第2側壁12(
図3等)を取り外し、第1側壁10bの内側にフェルト布を設置する 代わりに捻ったキムワイプ(日本製紙クレシア社製、製品名)を設置した。
・過剰な脱イオン水をキムワイプ(日本製紙クレシア社製、製品名)に含ませ、溢れた 水をセンサー2外縁部に到達させた。
【0067】
(3)結果
キムワイプ(日本製紙クレシア社製、製品名)から溢れた水が、試料Sとして用いたゼラチン水溶液と接触・混合し、粘度比Aは91.3%となった。
【0068】
参考例1に示す結果より、第1側壁10bの内側に配置した多孔質体11bから流出した溶媒がセンサー2外縁部に到達すると、溶媒と試料Sが混ざり、試料Sの粘度が短時間で低下することが分かる。したがって、
図1~
図3を参照しながら説明したように、第1側壁10bと第2側壁12との間の間隙に多孔質体11bが固定されるように第2側壁12を設置することで、多孔質体11bからセンサー2側へ向かう水の漏出を防ぐことができることが分かる。
【0069】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…回転型レオメーター用乾燥防止用具、2…センサー、3…シャフト、10…筐体、10a…筐体、10b…第1側壁、11a、11b…多孔質体、12…第2側壁、20…円筒容器、30…溶媒供給装置、M…測定部、R…収容空間、S…試料