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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】レンジフードの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20220727BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220727BHJP
   A47J 36/36 20060101ALI20220727BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20220727BHJP
   F24F 11/76 20180101ALI20220727BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20220727BHJP
【FI】
F24F7/007 C
F24F7/06 101Z
A47J36/36
F24F11/62
F24F11/76
F24F11/89
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018170830
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020041777
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 智和
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092338(JP,A)
【文献】特開2007-205666(JP,A)
【文献】特開2012-177498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
A47J 36/36
F24F 11/62
F24F 11/76
F24F 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気風量を変更可能な排気ファンと、
調理器の天面に存在する熱源の位置および個数を記憶する記憶部と、
前記調理器の前記天面の温度を検知する温度センサーと、を有するレンジフードの制御方法であって、
前記レンジフードを前記調理器の上方に設置したときに、前記調理器の前記天面に存在する前記熱源の位置および個数を特定して、特定された前記熱源の位置および個数を前記記憶部に記憶する段階、を有する、レンジフードの制御方法。
【請求項2】
特定された前記熱源の位置および個数に対応した閾値温度を前記記憶部に記憶する段階と、
前記レンジフードの運転開始後、前記温度センサーが検知した温度と前記閾値温度に応じて前記排気ファンの排気風量を制御する段階と、を有する、請求項に記載のレンジフードの制御方法。
【請求項3】
特定した前記熱源の位置および個数を前記記憶部に記憶する段階は、
前記天面に複数の前記熱源が存在する場合、各熱源から1つずつ順に放熱させ、それぞれ放熱させたときの温度を前記温度センサーで順に検知することで前記熱源の位置と個数を特定して、特定した前記熱源の位置と個数を記憶する、請求項1または2に記載のレンジフードの制御方法。
【請求項4】
特定した前記熱源の位置と個数を前記記憶部に記憶する段階は、特定した前記熱源ごとに前記熱源の種類がバーナー、IHクッキングヒーター、およびグリル吹出口のいずれであるかを記憶する、請求項に記載のレンジフードの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンジフードの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フードに設けた表面温度検知部によって調理器天面の温度を検知し、検知温度に基づいて風量を決定する自動運転機能付きレンジフードがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-241950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレンジフードは表面温度検知部の検知温度に基づきおおよその熱源(バーナーや出力部)の位置や個数を想定することができるが、表面温度検知部の精度に限界があることから正確な情報を得ることはできず、より精密な風量制御を行うことができなかった。
【0005】
このため、調理中の料理や器具から発生する油煙を的確に捕集して排気させられないことがあり、臭い、煙、油が室内に拡散されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、熱源の位置や個数に応じた精密な風量制御を行うことができるレンジフードの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明のレンジフードの制御方法は、排気風量を変更可能な排気ファンと、調理器の天面に存在する熱源の位置および個数を記憶する記憶部と、前記調理器の前記天面の温度を検知する温度センサーと、を有するレンジフードの制御方法であって、
前記レンジフードを前記調理器の上方に設置したときに、前記調理器の前記天面に存在する前記熱源の位置および個数を特定して、特定された前記熱源の位置および個数を前記記憶部に記憶する段階、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンジフードを設置する調理器の熱源の位置および個数を特定できるので、より精密な風量制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の正面図である。
図2】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の側面図である。
図3】本実施形態のレンジフードが備える操作パネルの正面図である。
図4】本実施形態のレンジフードの制御系のブロック図である。
図5】温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を模式的に示す図である。
図6】前面側の2つの熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を模式的に示す図である。
図7】前面側の2つの熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を立体的に表した図である。
図8】背面側の熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を模式的に示す図である。
図9】調理器のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を模式的に示す図である。
図10】調理器のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を立体的に表した図である。
図11】ガス用の調理器に適用するガス用閾値温度を模式的に示す図である。
図12】IH用の調理器に適用するIH用閾値温度を模式的に示す図である。
図13】本実施形態のレンジフードの初期設定の制御方法を示すフローチャートである。
図14図13に続くフローチャートである。
図15】1つのバーナーを点火した後、温度センサーによる調理器の天面の温度の検知状態を模式的に示す図である。
図16】調理器の熱源の位置および個数を特定するためのテンプレートの一例を示す図である。
図17】調理器の熱源の位置および個数を特定するための他のテンプレートの一例を示す図である。
図18】調理器の熱源の位置を特定するため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置情報の一例を示す図である。
図19】調理器の熱源の位置を特定するため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置情報の他の一例を示す図である。
図20】調理器の熱源の位置を特定するため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置情報の他の一例を示す図である。
図21】本実施形態のレンジフードの運転手順を示すフローチャートである。
図22】調理器のグリル吹出口の領域に適用する閾値温度とその他の領域に適用する閾値温度との相違を模式的に示す図である。
図23】調理器で使用されている熱源の数とグリルの使用の有無によって選択される排気風量のモードの一例を示す図である。
図24】本実施形態のレンジフードとは異なるタイプのレンジフードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみに限定されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されている。したがって、各図面における各構成要素の寸法比率は実際とは異なる。また、図面において同一の要素には同一の符号を付し、明細書において重複する説明は省略する。
【0012】
(レンジフードの構成)
図1は、本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の正面図である。また、図2は、本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の側面図である。
【0013】
図1および図2に示すように、本実施形態のレンジフード100は、調理器200の上部に設置される。レンジフード100は調理器200の調理時に生じる臭い、煙、油などを含む臭気や油煙を吸い込み外部に排気する。例示している調理器200はガス用の調理器であり、熱源として、3個のバーナー(以下単にバーナー210とする)および1個のグリル吹出口220を、天面500上に有する。したがって、熱源は、ガス用の調理器に対してはバーナー210であり、IH用の調理器に対してはIHクッキングヒーター(IHヒーターまたは単にヒーターともいう)である。また、ガス用、IH用のいずれの調理器においても、グリルを備える場合は、グリル吹出口220も天面500に存在する熱源である。したがって、本明細書においては、単に「熱源」という場合は、バーナー210またはヒーターと、グリル吹出口220を含む。
【0014】
レンジフード100は、その中央部より左側の前面側の下面に、調理器200の天面500の温度を検知する温度センサー300を有する。温度センサー300は、図示点線で示される領域の温度を検知する。温度センサー300は、たとえば、8×8の64個の領域の温度を別々に検知できるように、複数の画素を持つ複眼の温度センサーである。したがって、温度センサー300は、調理器200の天面500の温度を64の領域ごとに検知することができる。なお、本実施形態では、発明の理解を容易にするために、8×8の64個の領域の温度を別々に検知できる複眼の温度センサーを例示したが、たとえば、16×16の256個の領域の温度を別々に検知できる複眼の温度センサーを用いてもよい。また、さらに多くの領域の温度を別々に検知できる複眼の温度センサーを用いても良い。複眼の温度センサーとしては、たとえば複眼式赤外線センサーを例示することができる。
【0015】
レンジフード100は、その上部に排気部110を備えている。排気部110は、調理器200からの臭気や油煙を排気する。排気部110は、調理器200からの油煙を吸い込む吸気口112、屋外と連通する排気口114、吸気口112と排気口114とを結ぶ通路内に吸気口112から吸い込んだ油煙を排気口114に排気させる排気ファン116を備えている。排気ファン116は図示されていないファンモーターによって駆動される。
【0016】
レンジフード100は、その上部の前面側に、レンジフード100の動作を指示するための操作パネル120を備えている。
【0017】
図3は、本実施形態のレンジフード100が備える操作パネル120の正面図である。操作パネル120は、通常運転に使用するスイッチとして、運転スイッチ121、風量スイッチ122、風量自動スイッチ123、タイマースイッチ124、照明スイッチ125、および常時換気スイッチ126を有する。運転スイッチ121はレンジフード100を動作させる。風量スイッチ122は排気ファン116の排気風量を、弱、中、強に手動で変更可能である。風量自動スイッチ123は温度センサー300が検知する調理器200の天面500の温度に応じて、排気ファン116の排気風量を自動的に切り替える自動モードにする。タイマースイッチ124は排気ファン116を調理終了後に回転させる時間を設定する。照明スイッチ125は調理器200の上面を照らすLED電球の点灯/消灯をする。常時換気スイッチ126は、排気ファン116を手動で回転/停止させることで常時換気の運転/停止を行う。
【0018】
さらにこの操作パネル120は、レンジフードに初期設定を指示することができる。操作パネル120に配置されている複数のスイッチを同時押しすることで、初期設定モード(サービスモード、メンテナンスモードなどともいわれる)に入るように設定されている。たとえば、運転スイッチ121と常時換気スイッチ126を同時押しするなどである。初期設定モードに入ると、後述する制御方法によって、調理器200が備える熱源を順に放熱させ、その際に温度センサー300が検知した天面500の温度分布から調理器200が備える熱源の位置と個数が特定される。熱源の位置および個数は記憶部134(後述)に記憶される。なお、熱源の種類はガス/IH選択スイッチ132(図4参照)により記憶される(詳細後述)。初期設定モードに入る複数のスイッチは、上記のスイッチの組み合わせのほか、他のスイッチの組み合わせでもよいし、それ以外にも、1つのスイッチを長押しするなどでもよい。このようなスイッチの組み合わせや長押しなどは、設置説明書(設置手順書、サービスマニュアルなどとも称されている)に記載しておく。設置説明書は、レンジフードの設置者(設置業者や、初期設定する者(レンジフードの使用者が初期設定する場合、使用者以外の人が初期設定する場合を含む)などを含む。以下同様)が見て、設置者がその手順に従い初期設定をする。
【0019】
図4は、本実施形態のレンジフード100の制御系のブロック図である。レンジフード100は、排気ファン116、ファンモーター118、操作パネル120、制御装置130、および温度センサー300を有する。排気ファン116、ファンモーター118、および操作パネル120は上記の通りである。制御装置130は、レンジフード100に内蔵されている。
【0020】
制御装置130は、ガス/IH選択スイッチ132、記憶部134、および制御部136を有する。ガス/IH選択スイッチ132は、レンジフード100が設置されるキッチンの調理器の種類がガス調理器かIH調理器かを選択する選択スイッチである。ガス/IH選択スイッチ132は、レンジフード100を調理器の上方に設置するときに設置者が操作する。
【0021】
記憶部134は、調理器の天面500に存在する熱源の種類、位置、および個数を記憶する。熱源の種類とは、熱源がバーナー210かIHヒーター(不図示)かを示す。ここでは、ガス/IH選択スイッチ132により設定されて、記憶部134に記憶される。また、熱源の位置とは、天面500を2次元座標系としたときの座標値である。ここでの2次元座標系は、後述する温度センサー300の区分された検知領域と同じである。また、記憶部134は、記憶した熱源の種類、位置、および個数に対応した閾値温度を記憶する。
【0022】
この閾値温度は排気部110の排気風量を選択するための基準であり、温度センサー300が検知する天面500の温度の領域ごとに対応させて記憶する。閾値温度は、ガス用の調理器200に対して使用するガス用閾値温度とIH用の調理器200に対して使用するIH用閾値温度の両方、さらにグリル吹出口用閾値温度を記憶する。記憶部134に記憶されている閾値温度は、ガス調理器用の閾値温度よりもIH調理器用の閾値温度の方が小さい。また、グリル吹出口用閾値温度はIH調理器用の閾値温度よりさらに小さい。つまり、同じ排気風量となる温度がガス調理器用の閾値温度>IH調理器用の閾値温度>グリル吹出口用の閾値温度となる。また、グリル吹出口用閾値温度も、ガス用の調理器200のグリルとIH用の調理器200のグリルとで異なるグリル吹出口用閾値温度を記憶することが好ましい。これは、グリル内の熱源がガスバーナーの場合は、電熱ヒーターやIHヒーターを使用したグリルの場合と比較して、吹出口からの放熱量も大きくなるためである。この場合、グリル吹出口用閾値温度はガス用>IH用となる。
【0023】
記憶部134は、さらに、調理器200の機種情報ごとに調理器200が備える熱源の位置と個数を記憶する。また、調理器200の機種と調理器200の機種ごとに調理器200が備える熱源の位置と個数を記憶する。
【0024】
制御部136は、運転開始前に、操作パネル120により初期設定が指示されると、調理器200が備える熱源を順に放熱させ、その際に温度センサー300が検知した天面500の温度分布から調理器200が備える熱源の位置を特定する。熱源の位置と個数の特定が行われたときには特定完了処理をする。特定完了処理は、熱源の位置と個数の特定が完了したことを知らせる、音声案内、照明の点灯および消灯、照明の点滅、完了音の鳴動、熱源のオフ、のいずれかである。
【0025】
また、制御部136は、運転開始前に、操作パネル120から入力された機種情報に対応する調理器200の熱源の位置と個数を記憶部134から取り出し、調理器200が備える熱源の位置と個数を特定する。制御部136は、操作パネル120から入力された機種情報に対応する調理器200が記憶部134に記憶されていなかったときには、操作パネル120から入力された熱源の位置と個数を、調理器200が備える熱源の位置と個数として特定する。制御部136は、操作パネル120から選択された調理器200の機種に対応する調理器200の熱源の位置と個数を記憶部134から取り出し、調理器200が備える熱源の位置と個数を特定する。また、制御部136は、天面500の温度分布から調理器200が備える熱源の位置と個数を認識し、認識した熱源の位置と個数を記憶部134に記憶されている熱源の位置と個数と照合して、認識した熱源の位置に最も近い熱源の位置と個数を備える機種を調理器200の機種として特定する。
【0026】
そして、制御部136は、運転開始後に、記憶部134から特定した調理器に対応した閾値温度を取り出し、温度センサー300が検知する天面500の温度と比較して、検知温度が閾値温度となれば、その閾値温度に対応した排気部110の排気風量を選択する。
【0027】
(レンジフード100を構成する各部の動作)
次に、レンジフード100を構成する各部の動作を詳細に説明する。
【0028】
(温度センサー300)
図5は、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を模式的に示す図である。
【0029】
温度センサー300は、複眼の温度センサー300であり、天面500の全体の温度を2次元の領域として検知することができる。温度センサー300は、上記の通り、レンジフード100の下面に取り付けられているので、図5のように、たとえば、調理器200の天面500の温度を、8×8の64に区分された領域(Tij(i=1~8、j=1~8))ごとに検知する。したがって、各領域を示すTijは、T11~T88の64の各領域を示す座標値となる。
【0030】
図6は、前面側の2つのバーナー210A、210Bを用いて調理をしている場合の、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を模式的に示す図である。図6において塗りつぶしの色の濃い領域は、その色の濃さに応じて検知温度が高くなっている。また、図7は、前面側の2つのバーナー210A、210Bを用いて調理をしている場合の、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を立体的に表した図である。図7において立体図形の高さが高い領域は、その高さに応じて検知温度が高くなっている。これらの図を見ると、温度センサー300のT22~T27、T32~T37、T42~T47の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0031】
図8は、背面側のバーナー210Cを用いて調理をしている場合の、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を模式的に示す図である。図8においても、塗りつぶしの色の濃い領域は、その色の濃さに応じて検知温度が高くなっている。背面側のバーナー210Cは前面側の2つのバーナー210A、210Bよりも大きさが小さく、火力も小さいので、その検知温度も図6に比べて低くなっている。この図を見ると、温度センサー300のT43、T44、T53、T54、T63、T64の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0032】
図9は、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を模式的に示す図である。図9においても、塗りつぶしの色の濃い領域は、他の領域よりも検知温度が高い領域である。また、図10は、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を立体的に表した図である。図10において立体図形の高さが高い領域は、その高さに応じて検知温度が高くなっている。この図を見ると、温度センサー300のT73~T76の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0033】
図6図10に示すように、温度センサー300は、全ての領域の天面500の温度を領域ごとに検知することができ、バーナー210Aと210Bを用いて料理をしている場合には、温度センサー300のバーナー210Aに対応する領域とバーナー210Bに対応する領域のみの温度が高くなる。また、バーナー210Cを用いて料理をしている場合には、温度センサー300のバーナー210Cに対応する領域のみの温度が高くなる。さらに、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合には、温度センサー300のグリル吹出口220に対応する領域のみの温度が高くなる。もちろん、バーナー210A、バーナー210B、バーナー210C、およびグリルを用いて調理をしている場合には、温度センサー300のバーナー210A、バーナー210B、バーナー210C、およびグリル吹出口220に対応する領域の温度が高くなる。したがって、天面500の温度分布を見れば、バーナー210A~Cのどの熱源が放熱しているのか、調理器200のグリルが使用されているのかなどを容易に特定できる。
【0034】
図11は、ガス用の調理器200に適用するガス用閾値温度を模式的に示す図である。この閾値温度は、温度センサー300が検知する天面500の温度の全ての領域に対応している。たとえば、ガス用の調理器200により料理をしている時に温度センサー300が図6および図7のように分布する天面500の温度を検知した場合には、Tijの領域の天面500の温度とGijの領域の閾値温度とを比較する。たとえば、領域T11の天面500の温度と領域G11の閾値温度とを比較し、領域T12の天面500の温度と領域G12の閾値温度とを比較し、ということを、領域T88の天面500の温度と領域G88の閾値温度との比較が終わるまで64の全ての領域に対して行う。
【0035】
図12は、IH用の調理器200に適用するIH用閾値温度を模式的に示す図である。この閾値温度は、ガス用閾値温度と同様に、温度センサー300が検知する天面500の温度の全ての領域に対応している。たとえば、IH用の調理器200により料理をしている時に温度センサー300が図6および図7のように分布する天面500の温度を検知した場合には、Tijの領域の天面500の温度とCijの領域の閾値温度とを比較する。たとえば、領域T11の天面500の温度と領域C11の閾値温度とを比較し、領域T12の天面500の温度と領域C12の閾値温度とを比較し、ということを、領域T88の天面500の温度と領域C88の閾値温度との比較が終わるまで64の全ての領域に対して行う。
【0036】
(初期設定例1)
次に、初期設定動作について説明する。ここでは初期設定例1として、熱源を次々に点火し(放熱させ)、複眼の温度センサー300によってそれら熱源の位置を特定するための制御方法を説明する。
【0037】
ここでは、天面500に3個のバーナー210と1個グリル吹出口がある場合を想定して説明する。図13および14は、本実施形態のレンジフード100の初期設定時の制御方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは制御部136によって処理される。
【0038】
まず、上記したように、操作パネル120の、あらかじめ決められた複数のスイッチの同時押しにより、初期設定モードに入る。また、この段階で(レンジフードの設置時)にガス/IH選択スイッチ132により、レンジがガスかIHかの別を選択しておく。ガスが選択されたかIHが選択されたかの別は記憶部134に記憶される(ガス/IH選択スイッチ132が電子式スイッチの場合は、レンジフードの電源が入ったのち、選択内容に応じて制御部136により記憶部134に記憶される。また、ガス/IH選択スイッチ132が物理的な転換スイッチの場合、レンジフードの電源が入ったのちスイッチの方向に応じてガスか、IHかの別が記憶部134に記憶される)。
【0039】
初期設定モードに入った後、制御部136は、温度センサー300をオンにする(S11)。続いて、制御部136は、レンジがガスレンジであると記憶部134に記憶されている場合は、1つのバーナー210の点火を促すための案内を出力する。または、レンジがIHレンジであると記憶部134に記憶されている場合は、1つのIHヒーターの点火を促す案内を出力する(以下カッコ内はIHヒーターが選択された場合である)(S12)。この案内は、たとえば、あらかじめ決められたビープ音(ピー音)の長さや断続回数などとしてもよいし、照明の点滅発光などとしてもよい。案内の説明と、対応する音の長さや断続回数、または照明の点滅回数や点消灯の長さなどは設置説明書に記載しておく。また、対応する音声案内を記憶部134に記憶しておいて、それを流すようにしてもよい(後述の各ステップにおける案内やエラー出力においても同様である)。
【0040】
S12の案内を受けてレンジフードの設置者が1つのバーナー210(ヒーター)を点火する(S13)。
【0041】
続いて、制御部136は、温度センサー300でバーナー210(ヒーター)の位置を特定できたか否かを判断する(S14)。ここでバーナー210(ヒーター)の位置を特定できたなら(S14)、その位置を1つのバーナー210(ヒーター)の位置として記憶部134へ記憶すると共に、記憶部134に記憶する個数を1個加算する(S15)。このとき、記憶した位置は熱源の種類情報としてバーナー210(ヒーター)であることも記憶する。続いて、制御部136は検知完了の案内を出力する(S16)。
【0042】
ここで、S13において1つのバーナー210を点火した後、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を説明する。図15は、1つのバーナー210を点火した後、温度センサー300による調理器200の天面500の温度の検知状態を模式的に示す図である。
【0043】
図15においては、バーナー210Aを点火した状態を示している。この状態で、温度センサー300は、領域TIJ=T33の位置で最も高い温度を検知している(図中、色の濃い方が検知温度が高い)。これにより制御部136は、S15において領域TIJ=T33の位置にバーナー210があると記憶部134に記憶し、個数を1個加算して記憶する。
【0044】
一方、S14において、バーナー210(ヒーター)の位置を特定できない場合、制御部136は、エラーを出力する(S31)。その後、設置者がバーナー210(ヒーター)を消火する(S32)。その後処理は終了する。
【0045】
図13に戻り手順の説明を続ける。S16の後、検知完了の案内を受けて、設置者はバーナー210(ヒーター)を消火する(S17)。
【0046】
続けて設置者は、未設定のバーナー210の有無、およびグリルの有無を入力する(S18)。入力も、操作パネル120内のいずれかのスイッチを押すことで未設定のバーナー210の有無、グリルの有無を入力できることを、設置説明書などに記載しておく。たとえば、風量スイッチ122の長押し(たとえば3秒程度)で未設定バーナー(ヒーター)あり、風量自動スイッチ123の長押し(たとえば3秒程度)でグリルあり(このとき未設定バーナー(ヒーター)はなし)、常時換気スイッチ126の長押し(たとえば3秒程度)で未設定バーナー(ヒーター)もグリルもなしなどとする。もちろんこのようなスイッチ操作はどのような組み合わせであってもよい。
【0047】
続いて、制御部136は、S18の入力から未設定のバーナー210(ヒーター)があるか否かを判断する(S19)。ここで、未設定のバーナー210(ヒーター)があれば(S19:YES)、S12へ戻り、処理を継続する。S12へ戻ってから処理を継続することで、2つ目、3つ目のバーナー210(ヒーター)がその位置と共に、バーナー210(ヒーター)の個数も記憶されることになる。
【0048】
一方、未設定のバーナー210(ヒーター)がなければ(S19:NO)、制御部136はS18の入力からグリルがあるか否かを判断する(S20)。ここで、グリルがなければ(S:NO)、処理を終了する。
【0049】
一方、グリルがあれば(S20:YES)、制御部136はグリル点火の案内を出力する(S21)。その後、設置者がグリルを点火する(S22)。グリルの点火でグリル吹出口220からグリル内の排気が行われて天面500から放熱されることになる。
【0050】
続いて、制御部136は、温度センサー300でグリル吹出口220の位置を特定できたか否かを判断する(S23)。ここでグリル吹出口220の位置を特定できたなら(S23:YES)、その位置をグリル吹出口220の位置として記憶部134へ記憶し、個数を1個加算する(S24)。このとき、記憶した位置は熱源の種類情報としてグリル吹出口220であることも記憶する。
【0051】
なお、熱源の個数は、バーナー210(ヒーター)とグリル吹出口220を分けずに熱源の個数として記憶している。しかし、S15での個数をバーナー210(ヒーター)の個数とし、S24での個数をグリル吹出口220の個数(普通は1個である)として、分けて記憶するようにしてもよい。
【0052】
続いて、制御部136は検知完了の案内を出力する(S25)。
【0053】
図示しないが、グリル吹出口220の位置も、図15を参照して説明したと同様に、S23の時点で温度センサー300が検知した領域Tijにグリル吹出口220があるものとして記憶部134に記憶することになる。
【0054】
その後、S25の案内を受けた設置者がグリルを消火し(S26)、制御部136は温度センサー300をオフにして(S26)、処理を終了する。
【0055】
一方、S23において、グリル吹出口220の位置を特定できない場合、制御部136は、エラー出力する(S34)。その後、設置者がグリルを消火する(S35)。その後、処理は終了する。
【0056】
以上により、バーナー210(ヒーター)およびグリル吹出口220の位置と共に、バーナー210(ヒーター)およびグリル吹出口220の総数が熱源の個数として記憶される。
【0057】
(初期設定例2)
次に、初期設定例2として、検知した天面500の温度分布とテンプレートとを用いている熱源の位置を特定するための制御方法を説明する。
【0058】
図16は、調理器200の熱源の位置と個数を特定するためのテンプレート140の一例を示す図である。このテンプレート140は図5に示したように、3個のバーナー210とグリルを有する調理器200に適用するものである。また、図17は、調理器200の熱源の位置と個数を特定するためのテンプレート140の他の一例を示す図である。このテンプレート150は、2個のバーナー210とグリルを有する調理器200に適用するものである。
【0059】
これらのテンプレート140、150は、制御部136の記憶部134に記憶させておく。なお、テンプレート140、150は、制御部136の記憶部134に替えて、外部のサーバーの記憶部134に記憶させるようにしても良い。調理器200は種々のメーカーから様々なタイプのものが発売されている。したがって、現在発売されている全てのタイプの調理器200のテンプレートを記憶させておくことが好ましい。
【0060】
このテンプレートは、レンジフード100を現場で設置する際に、調理器200のメーカー名および型番により選択できるようにしておくと良い。具体的な選択のパターンとしては、たとえば、図示しないが、レンジフードの制御部136と接続する設定用のコンピューター(たとえば、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン、その他の専用端末など)を用いて設定する。これにより設定用のコンピューターのキーボードやマウスを用いて、調理器200のメーカー名および型番を入力することができる。入力された型番は制御部136へ伝達され、記憶部134からテンプレートが選択設定される。なお、接続したコンピューターにテンプレートを記憶しておいて、コンピューター上で調理器200に合ったテンプレートを選択し、記憶部134へそのテンプレートを記憶させるようにしてもよい。また、たとえば、操作パネル120の各スイッチの組み合わせや長押しなどによって、メーカー名および型番を入力するようにしてもよい。この場合、メーカー名や型番を個々に設定させるのではなく、設置説明書などに、バーナー210(ヒーター)およびグリル吹出口220の配置が同じ代表例となるメーカー名および型番(または代表例に対応させた個別の番号などでもよい)を示して、それに対応させた操作パネル120の各スイッチを押す手順を説明しておく。これにより、手順にしたがって設置者が操作パネル120の各スイッチを押すことで、テンプレートを選択できるようにする。なお、代表例によるテンプレートの選択は、コンピューターを接続した場合でも同様に行うこともできる。このような代表例によりテンプレートを選択させる場合、記憶部134へ記憶するテンプレートは、代表例となっているメーカーおよび型番に対応したテンプレートだけでよい。もちろん、代表例が複数ある場合はそれら複数の代表例に対応したテンプレートが必要である。
【0061】
テンプレート140は、熱源が位置する3つの領域142、144、146の情報とグリル吹出口220が位置する領域148の情報を有している。また、テンプレート150は、熱源が位置する2つの領域152、154の情報とグリル吹出口220が位置する領域156の情報を有している。
【0062】
上記の初期設定例1では、温度センサー300が最高温度を検知した領域を用いて熱源の位置や個数を特定したが、このような温度センサー300が検知する温度分布だけでは、これらを正確に特定できない場合もある。これは、温度センサー300が調理器200の調理面の中心の真上に設置されていないことに起因する。温度センサー300は、実際には、図1に示すように、レンジフード100の中央部より左側の前面側の下面に設けている。また、温度センサー300は調理器200に向けて傾斜させて設けている。このため調理器200の調理面の温度を斜めから検知することになり、温度センサー300の各領域が温度を検知する範囲は歪む。この歪みのため、熱源の位置および個数の特定が正確にできなくなる恐れがある。
【0063】
これに対し、初期設定例2では、調理器200に適合するテンプレートが図16のテンプレート140であった場合、制御部136は、温度センサー300が検知した温度分布とテンプレート140とを照合する。そして、テンプレート140の熱源、すなわち。バーナー210やヒーター、およびグリル吹出口220の位置を示す領域142、144、146の情報を頼りに、熱源の位置および個数を特定する。このように、テンプレートを用いることによって、熱源の位置および個数の特定がより正確にできる。なお、上記の内容は発明の理解を容易にするために簡素化して説明したものである。実際には、テンプレートを使用しても離隔や設置奥行きの問題が生じる。したがって、実際には離隔距離ごと、設置奥行きごとにテンプレートを用意しておくことが好ましい。
【0064】
(初期設定例3)
初期設定例3は、温度センサー300で検知した天面500の温度分布と調理器-レンジフード離隔距離を用いて熱源の位置および個数を特定するための制御方法である。
【0065】
図18図20は、調理器200の熱源の位置を特定するため、調理器200とレンジフード100との離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置情報の一例を示す図である。図18は離隔距離が60cmの場合、図19は離隔距離が80cmの場合、図20は離隔距離が100cmの場合をそれぞれ示す。
【0066】
上記したように、温度センサー300が調理器200の調理面の中心の真上に設置されていないため、温度センサー300の各領域が温度を検知する範囲はこれらの図に示すように歪む。このため、調理器200とレンジフード100との離隔距離の相違によって、たとえば、同じバーナー210Aであっても、温度センサー300がバーナー210の温度を検知する領域がずれる。同様に、同じグリル吹出口220であっても、温度センサー300がグリル吹出口220の温度を検知する領域がずれる。
【0067】
このずれのため、熱源の位置および個数の特定が正確にできなくなる。このため、調理器200とレンジフード100との離隔距離ごとに、各熱源の位置が温度センサー300のどの領域に該当するのか、という情報を、制御部136の記憶部134に記憶させておく。調理器200とレンジフード100との離隔距離は、現場でレンジフード100を調理器200の上方に設置後、設定できるようにする。この設定には、たとえば上記の初期設定例2で紹介したように、コンピューターを接続したり、あらかじめ設定説明書などに記載した操作パネル120の各スイッチの押し方の手順によって行ったりするとよい。
【0068】
上記のように、調理器200の熱源の位置の特定は、調理器200と温度センサー300との離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口の位置との位置情報を用い、離隔距離を設定することによって行うことができる。
【0069】
なお、上記の手法に加えて、グリル吹出口220の位置は、ガス調理器かIH調理器かによって、位置の特定手法を変えても良い。たとえば、調理器200の中央より背面側で、かつ、幅300~600mm×奥行40~80mm相当の範囲よりも小さい範囲で横長に温度上昇している位置をグリル吹出口220とする。また、IH調理器が選択されている場合には、たとえば、調理器200の中央より背面側で、かつ、幅10~30mm×奥行40~80mm相当の範囲よりも小さい範囲で集中的に所定の領域で温度上昇している位置をグリル吹出口220とする。このような特定手法を採用することによって、より精度よくグリル吹出口220の位置を特定できる。
【0070】
このように、グリル吹出口220の位置の特定は、ガス/IH選択スイッチ132によりガス調理器が選択されている場合には、調理器200の中央部よりも背面側の天面500の温度の高い領域が一定の範囲で横長に分布している部分により行う。また、ガス/IH選択スイッチ132によりIH調理器が選択されている場合には、調理器200の中央部よりも背面側の天面500の温度の高い領域が調理器200の一定の範囲よりも狭い領域で集中している部分により行うことができる。
【0071】
以上説明した3つの初期設定例により、熱源の位置および個数、またグリルの有無などを正確に把握することができる。
【0072】
特に、初期設定例1では、操作パネル120からの入力だけで、熱源の位置および個数を設定できる。また、初期設定例2および3では、テンプレートを用いたり、調理器200とレンジフード100との離隔距離を設定したりすることによって、熱源の位置および個数を正確に設定することができる。また、離隔距離に応じて閾値温度を変えても良い。具体的には、離隔距離が近いほど閾値温度を高く、離隔距離が遠いほど閾値温度を低く設定するようにしても良い。このように、離隔距離に応じて閾値温度を変えると、各熱源の位置、数、グリルの有無、グリル吹出口220の位置をより正確に把握することができる。
【0073】
(運転例)
次に、初期設定終了後の運転例を説明する。ここでは、操作パネル120(図3参照)の風量自動スイッチ123が選択されているときに動作を説明する。
【0074】
図21は、本実施形態のレンジフードの運転手順を示すフローチャートである。このフローチャートの手順も制御部136によって実行される。
【0075】
制御部136は、ガス/IH選択スイッチ132が、「ガス」、「IH」のどちらを選択しているのかを判断する(S100)。「ガス」を選択していれば(S100:ガス)、制御部136は、記憶部134に記憶されている閾値温度のうち、温度センサー300が検知した天面500の温度との比較をする閾値温度として、図11に示したガス用閾値温度を選択する(S110)。一方、「IH」が選択されていれば(S100:IH)、制御部136は、図12に示したIH用閾値温度を選択する(S120)。
【0076】
IH用閾値温度はガス用閾値温度よりも低い値が設定されている。IH用の調理器200の熱源の温度は、ガス用の調理器200の熱源の温度よりも低く出る傾向があるからである。IH用の調理器200ではガス用の調理器200ほど天面500の温度が上がっていなくとも、多量の臭気と油煙を発生することがある。IH用閾値温度をガス用閾値温度よりも低い値とすることで、IH用の調理器200でも、適切な排気風量で臭気と油煙を排気できるようになる。すなわち、臭気と油煙の捕集性能をガス用の調理器200とIH用の調理器200とで同一にでき、臭気と油煙の捕集性能が調理器200の種類に依らない。
【0077】
続いて、制御部136は、複眼の温度センサー300により、調理器200の天面500の温度を検知する。天面500の温度は領域ごとに検知される(S130)。具体的には、図6図10に示したように、温度センサー300の全ての領域TIJ=T11~T88の温度を検知する。
【0078】
次に、制御部136は、グリル吹出口220の部分に適用させる閾値温度を下げる(S140)。この時点では、既に初期設定としてグリル吹出口220の位置が熱源の位置として記憶部134に記憶されている。したがって、記憶部134からその位置を取り出し、該当する温度センサー300の領域の検知温度と比較させる閾値温度を下げる。一般的にグリル吹出口220から排出される臭気や油煙の温度は熱源の部分から排出される臭気や油煙の温度よりも低い。このため、グリル吹出口220の検知温度が低くとも臭気や油煙が大量に排出されている場合がある。したがって、吹出口の位置に該当する領域の閾値温度を下げることによって、グリル吹出口220の検知温度が熱源の検知温度よりも低い場合でも、排気ファン116による排気風量を増加させることができ、グリル吹出口220からの臭気や油煙の捕集率が向上する。
【0079】
図22は、調理器200の熱源の領域に適用する閾値温度とグリル吹出口220の領域に適用する閾値温度との相違を模式的に示す図であり、風量の設定に用いる閾値温度の一例である。
【0080】
図22に示すように、(Gij=G73~G76の4つの領域)の閾値温度の大きさは、その領域以外の領域の閾値温度の大きさと比較して小さくなっている。これは、調理器200がガスの場合でもIHの場合でも同様である。Gij=G73~G76の4つの領域は、図9および図10に示したように、調理器200の中央より背面側に位置するグリル吹出口220の領域(Tij=T73~T76)と合致する領域である。記憶部134には、一律の大きさの閾値温度が記憶されているが、制御部136は、初期設定の処理で特定したグリル吹出口220の位置に基づいて、グリル吹出口220の位置に該当する領域の閾値温度を下げる。理解し易いように切りのいい温度で説明すると、グリル吹出口220の検知温度に20℃をプラスした温度が50℃以上であれば、排気ファン116を強のモードに設定する。つまり、グリル吹出口220の検知温度が30℃以上であれば排気ファン116を強のモードに設定する。また、熱源の検知温度が50℃以上であれば排気ファン116を強のモードに設定する。したがって、この場合、グリル吹出口220の領域(Gij=G73~G76の4つの領域)の閾値温度は、他の領域よりも閾値温度の大きさを20℃下げている。
【0081】
続いて、制御部136は、調理器200の天面500の温度と閾値温度とを比較する(S150)この比較は、具体的には次の手順で行われる。まず、グリル吹出口220の領域の検知温度とグリル吹出口220の領域に該当する部分の閾値温度とを比較する。グリル吹出口220の温度は図9および図10に示すようにTij=T73~T76の4つの領域で検知されているので、これと図22の閾値温度Gij=G73~G76の4つの領域とを比較する。まず、T73とG73とを比較し、次に、T74とG74とを比較し、ということをT76とG76との比較まで順に行ない、検知温度が閾値温度よりも高い領域の数Xをカウントする。グリル吹出口220の領域の比較が終了したら、その他の領域の検知温度と閾値温度とを比較する。この比較は、Tij=T73~T76の4つの領域を除く、Tij=T11~T88に対して行う。まず、T11とG11とを比較し、次に、T12とG12とを比較し、ということをT88とG88との比較まで順に行ない、検知温度が閾値温度よりも高い領域の数Yをカウントする。
【0082】
続いて、制御部136は、S150の比較結果により、排気風量を選択する(S160)。続いて、制御部136は、選択された、第1モードまたは第2モードの排気風量で排気ファン116を駆動する。この排気風量の選択と排気ファン116の駆動は、次のような手法で行う。
【0083】
上記のように、グリル吹出口220の領域で検知温度が閾値温度よりも高い領域の数がXであり、グリル吹出口220以外の領域で検知温度が閾値温度よりも高い領域の数がYであったとすると、閾値温度を超えている領域の合計はX+Yである。このX+Yの数があらかじめ設定した判定値Zを超えていないときには、制御部136は、排気風量を第1モードに設定する。一方、このX+Yの数があらかじめ設定した判定値Zを超えているときには、制御部136は、排気風量を第1モードよりも排気風量が大きい第2モードに設定する。
【0084】
このように、制御部136は、ガス調理器が選択されているときには天面500の温度とガス調理器用の閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて排気風量を選択し、IH調理器が選択されているときには天面500の温度とIH調理器用の閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択する。
【0085】
また、上記のように、制御部136は、天面500の温度から少なくとも調理器200のグリル吹出口220の位置を特定し、グリル吹出口220に該当する領域の閾値温度は他の領域の閾値温度よりも小さい値を用いて比較し比較結果に応じて排気風量を選択する。
【0086】
さらに、制御部136が選択する排気風量は、閾値温度を超える天面500の温度の領域の合計数(X+Y)が所定の数(判定値Z)を超えている場合には、より大きい排気風量のモード(第2モード)を選択する。
【0087】
制御部136が上記のようにして排気風量を設定すると、検知された天面500の温度が低く臭気や油煙が多く発生しているような場合でも、排気風量を増加させることができ、汚染空気の拡散を有効に防止できる。
【0088】
図23は、調理器で使用されている熱源の数とグリルの使用の有無によって選択される排気風量のモードの一例を示す図である。
【0089】
制御部136は、初期設定の処理で、調理器200で使用されている熱源の位置および個数を特定している。調理器200で使用されている熱源の位置および個数、そして熱源の種類情報と、温度センサー300が検知した天面500の温度に基づいて、排気風量を選択する。
【0090】
図23では、熱源としてバーナー210(またはヒーター)とグリル吹出口220を分けて特定(設定)した場合を説明する。たとえば、使用している熱源としてバーナー210(ヒーター)の個数が0~2のときには、閾値温度t1(図21でグリル吹出口220の領域に適用する閾値温度)を超えるグリルの数と閾値温度t2(図22でグリル吹出口220以外の領域で適用する閾値温度)を超えるバーナー210(ヒーター)の個数の合計が2以上であれば、制御部136は、排気風量を第2モードに設定する。また、使用している熱源としてのバーナー210(ヒーター)の個数が3個のときには、閾値温度t1を超えるグリルの個数が1以下、または、閾値温度t2を超える熱源の個数が1以下のときには制御部136は、排気風量を第2モードに設定する。これら以外の条件であれば、制御部136は、排気風量を第1モードに設定する。制御部136の排気風量の設定の具体的な態様は、図23に示す通りである。
【0091】
このように、制御部136は、天面500の温度に基づき調理器200で使用している熱源の数と位置、および前記グリルの使用の有無を特定し、使用している熱源に該当する領域の天面500の温度と閾値温度とを領域ごとに比較すると共に、グリルが使用されているときにはグリル吹出口220に該当する領域の天面500の温度と閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて排気風量を選択する。
【0092】
上記のように、閾値温度を超えている領域の数や使用されている熱源やグリルの数などによって排気風量を設定する以外に、最も大きい排気風量が必要な閾値温度に基づき排気風量を選択することも考えられる。
【0093】
たとえば、温度センサー300が検知した天面500の温度の内、1つの領域の検知温度が、最も大きい排気風量が必要な閾値温度を超えていたとすると、閾値温度を超えている領域が1つだけであっても、制御部136は、最大の排気風量で排気ファン116を駆動させる。
【0094】
このような制御をすることによって、天面500の温度が急激に上昇した場合でも、その温度上昇に追従するように、早めに排気風量を上げることができ、汚染空気の拡散を効率的に防止できる。
【0095】
また、制御部136は、グリル吹出口220の位置に該当する領域およびその他の領域、またはグリル吹出口220の位置に該当する領域および熱源の位置に該当する領域、のいずれかの区分された領域の天面500の温度の平均値と閾値温度とを比較し比較結果に応じて排気風量を選択しても良い。
【0096】
このような制御をすることによって、排気ファン116を無駄に作動させることなく、かつ、排気が必要なときには確実に排気させることができる。
【0097】
次に、図21のフローチャートに戻って、制御部136は、停止信号があるか否かを判断する(S180)。停止信号がなければ(S180:NO)、S130のステップに戻り、S130~S170までの処理を繰り返す。一方、停止信号があれば(S180:YES)、レンジフード100の運転を停止する(S190)。
【0098】
以上のように、本実施形態のレンジフード100によれば、グリル吹出口220の領域に適用する閾値温度を他の領域に適用する閾値温度より下げて適用しているので、グリル吹出口220から吹き出す臭気や油煙に合わせて排気風量を設定することができ、グリル吹出口220から排出される臭い、煙、油が室内に拡散されることを防止できる。
【0099】
また、上記の実施形態では、排気ファン116の風量のみを自動制御するレンジフード100を例示したが、本発明は、図24に示すような、本実施形態のレンジフードとは異なるタイプのレンジフード、すなわち、油煙の油を捕獲するディスク119を備えたレンジフード100に対しても適用できる。なお、ディスク119は、調理運転中に回転し油煙から油を捕獲するフィルタとして機能するものである。
【0100】
ディスク119を備えたレンジフードの場合、排気ファン116と同様に、ディスク119の回転数制御を行っても良い。つまり、ディスク119の回転数制御も排気ファン116の排気風量の制御と同様に、熱源の位置や使用個数、グリルの使用有無、レンジフード100と調理器200との離隔距離や調理器200の天面500の温度の分布からディスク119の回転数を決定し、制御するようにしても良い。また、このようなディスク119を備えたレンジフード100の場合、排気ファン116の自動風量制御は行わず、ディスクの自動回転数制御のみを行ってもよい。
【0101】
また、上記の実施形態では、排気風量のモードとして、第1モードと第2モードとの2つのモードを有する場合を例示したが、排気風量の異なるモードとして3つ以上の複数のモードを備えても良い。
【0102】
また、レンジフード100を自動運転させる場合、設定したモードのうち、全てのモードから最適なモードを選択して排気風量を変更する仕様を採用しても良いし、特定のモードから最適なモードを選択して排気風量を変更する仕様を採用しても良い。たとえば、排気風量の選択が弱・中・強の3段階から選べるレンジフード100の場合、自動運転では、弱・中・強の3段階のモードから、たとえば中と強の2つの段階のモードを制御対象として中と強とで排気風量が切り替わり、手動運転の場合のみ、弱も選択可能とする仕様を採用しても良い。
【0103】
また、上記の実施形態では、熱源に依らず一律に同一の閾値温度を適用したが、熱源ごとに閾値温度を変えても良い。温度センサー300と各熱源との距離は異なるため、その距離に応じて閾値温度を変えても良い。たとえば、本実施形態では、熱源が4個(バーナー(ヒーター)3個、およびグリル吹出口1個)で、温度センサー300はレンジフード100の手前側、かつ使用者側から見て左側に設けられているため、左手前の熱源の閾値温度を最も低く設定するようにしてもよい。
【0104】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて様々な形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
100 レンジフード、
110 排気部、
112 吸気口、
114 排気口、
116 排気ファン、
118 ファンモーター、
120 操作パネル、
121 運転スイッチ、
122 風量スイッチ、
123 風量自動スイッチ、
124 タイマースイッチ、
125 照明スイッチ、
126 常時換気スイッチ、
130 制御装置、
132 ガス/IH選択スイッチ、
134 記憶部、
136 制御部、
200 調理器、
210 バーナー、
220 グリル吹出口、
300 温度センサー、
500 天面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24