(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】日傘
(51)【国際特許分類】
A45B 17/00 20060101AFI20220727BHJP
A45B 15/00 20060101ALI20220727BHJP
A45B 25/18 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A45B17/00 A
A45B15/00
A45B25/18 F
(21)【出願番号】P 2020118915
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】392017624
【氏名又は名称】テックワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】板井 仁志
(72)【発明者】
【氏名】伝田 佳史
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253314(JP,A)
【文献】特表平04-503319(JP,A)
【文献】実開昭54-027865(JP,U)
【文献】国際公開第2014/185440(WO,A1)
【文献】特許第045464(JP,C2)
【文献】特開2000-125915(JP,A)
【文献】実開昭55-152119(JP,U)
【文献】特開2011-056072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0125409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 15/00,17/00,25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日傘であって、
前記日傘は、
雨傘用の本体シート
と、
遮熱性で遮光性のカバーシート
とを具備してなり、
前記カバーシートは前記本体シートの上側に被せられてなり、
(
日傘が開いた状態下における
日傘の骨のライン上において前記カバーシートに作用している力)/(
日傘が開いた状態下における
日傘の骨のライン上において前記本体シートに作用している力)が1未満であ
り、
前記本体シートの上側に被せられてなる前記カバーシートと前記本体シートとの間には空気層が有る
日傘。
【請求項2】
{(
日傘が開いた状態下における該
日傘の骨のライン上の該
日傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(
日傘が開いた状態下における該
日傘の骨のライン上の該
日傘が閉じた状態における前記本体シートの中心から先端までの長さ)L2}=1~5mmであり、
前記L2=40~80cmである
請求項1の日傘。
【請求項3】
(日傘が開いた状態下における日傘の骨のライン上において前記カバーシートに作用している力)/(日傘が開いた状態下における日傘の骨のライン上において前記本体シートに作用している力)が0.950~0.995である
請求項1又は請求項2の日傘。
【請求項4】
前記
カバーシートは
、温度20±2℃の試験室内において黒画用紙の5mm上にスペーサを用いて2点以上の試料を保持し試料上部50cmから100V,500Wのレフランプでランプ光を試料すべてに同時に照射して15分後の黒画用紙裏面の表面温度を測定し次に生地の位置を入れ替えて測定してそのデータの平均を測定値とする遮熱性レフランプ法で4℃以上の遮熱性を有する
請求項1~請求項3いずれかの
日傘。
【請求項5】
前記
カバーシートは光反射材を有する
請求項1~請求項4いずれかの
日傘。
【請求項6】
前記光反射材は白色材および金属材の群の中から選ばれる一種または二種以上である
請求項5の
日傘。
【請求項7】
前記
カバーシートは光吸収材を有する
請求項1~請求項5いずれかの
日傘。
【請求項8】
前記光吸収材がカーボンブラックである
請求項7の
日傘。
【請求項9】
前記カバーシートは前記本体シートに対して着脱可能である
請求項1~請求項8いずれかの
日傘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傘に関する。
【背景技術】
【0002】
透明シート(透明な傘生地)を備えた雨傘の前記透明シートの上に遮光性シート(黒色のナイロン製のカバーシート、有色シート)を被せた傘(雨傘兼用日傘)が提案(実用新案登録第3187424号、実用新案登録第3203811号)されている。
【0003】
日傘のシートとして遮熱性シートが提案(特開2007-325757、特開2008-115488、特開2011-56072、WO2014/185440)されている。前記特開2007-325757にあっては、前記シートは酸化チタン含有塗料を塗布して表面に酸化チタン含有塗膜層を有する。前記特開2008-115488にあっては、前記シートは、裏面に、下塗コーティング層と上塗コーティング層とを有し、前記下塗コーティング層はバインダーと酸化チタンと黒色顔料とを固形分重量比率で10:10~4:1.2~0.5の割合で含む固形分で20~50g/m2の厚さであり、前記上塗コーティング層は着色料を含む固形分で8~25g/m2であり、JIS L 1055 A法で照度10万Luxの遮光性試験で99.99%以上の遮光性を有する。前記特開2011-56072にあっては、前記シートは、少なくとも明色シートと暗色シートとの積層を有するものであり、前記明色シートはシート上面側、前記暗色シートはシート下面側の面を形成し、前記明色シートは傘上方から照射された太陽光をシート面で反射する光反射性シートであり、前記暗色シートは前記明色シートを通過した光や太陽光が地面で反射して入射した光を吸収する光吸収性シートである。前記WO2014/185440にあっては、前記シートは、少なくとも1層の合成樹脂フィルムと少なくとも1層の繊維布帛とからなり、前記合成樹脂フィルムが酸化チタンを10~70質量%の割合で含有する多層シートである。これ等の公報における技術にあっては、前記日傘の傘シートが酸化チタン含有層を有する。この酸化チタン含有層は、酸化チタン含有塗膜であったり、酸化チタンを含有する樹脂フィルム層であったりする。酸化チタンの代わりに、酸化アルミニウムや金属粒子(例えば、Al等)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3187424号
【文献】実用新案登録第3203811号
【文献】特開2007-325757
【文献】特開2008-115488
【文献】特開2011-56072
【文献】WO2014/185440
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1,2にあっては、透明シート(透明な傘生地)の上に遮光性シート(有色シート)を被せる事によって、雨傘を日傘として用いる事が出来るようにしたものである。これ等の特許文献1,2における遮光性シート(有色シート)は遮光を目的としたものに過ぎない。
【0006】
前記特許文献3,4,5,6にあっては、日傘の生地(シート)として、遮光性では無く、遮熱性を有するシートが提案されている。すなわち、遮熱性に優れたシートを用いたから、この日傘を開いて(差して:広げて)いると、その下に居る者の温度が多少は低くなっている。従って、熱中症に掛かり難いであろう。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1,2の日傘や前記特許文献3,4,5,6の日傘の遮熱性よりも更に遮熱性に優れた日傘が求められている。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、遮熱性に優れた日傘を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記特許文献1,2の日傘を開いていても暑さを実感する理由を検討した。その結果、遮光シートで太陽光を遮ったとしても熱まで遮断されていないからである事に気付いた。
【0010】
それでは、前記特許文献3,4,5,6の傘では傘シートに遮熱性シートが用いられているのに、何故、遮熱性がもう一つなのかは中々理解でき難かった。しかし、遮熱性シートが用いられていると雖も、更なる遮熱性が求められていた。
【0011】
本発明者は、遮熱性シートの遮熱性に加えて、空気による遮熱(断熱)作用も利用すれば、より一層の遮熱効果が発揮できるであろうとの啓示を得るに至った。
【0012】
本発明は斯かる啓示に基づいて達成された。
【0013】
本発明は、
傘本体シート表面に被せられたカバーシートを具備する傘であって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
(傘が開いた状態下における前記カバーシートに作用している力)/(傘が開いた状態下における前記傘本体シートに作用している力)が1未満である
傘を提案する。
【0014】
本発明は、
傘本体シート表面に被せられたカバーシートを具備する傘であって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
{(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記傘本体シートの中心から先端までの長さ)L2}=1~5mmであり、
前記L2=40~80cmである
傘を提案する。
【0015】
本発明は、
傘本体シート表面に被せられたカバーシートを具備する傘であって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
{(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記傘本体シートの中心から先端までの長さ)L2}=1~5mmであり、
(傘が開いた状態下における前記カバーシートに作用している力)/(傘が開いた状態下における前記傘本体シートに作用している力)が1未満である
傘を提案する。
【0016】
本発明は、
傘本体シート表面に被せられたカバーシートを具備する傘であって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
{(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記傘本体シートの中心から先端までの長さ)L2}=1~5mmであり、
前記L2=40~80cmであり、
(傘が開いた状態下における前記カバーシートに作用している力)/(傘が開いた状態下における前記傘本体シートに作用している力)が1未満である
傘を提案する。
【0017】
本発明は、上記傘であって、傘が開いた状態下における前記傘本体シートと前記カバーシートとの間には空気が存在する傘を提案する。
【0018】
本発明は、
傘本体シート表面に被せられたカバーシートを具備する傘であって、
傘が開いた状態下における前記傘本体シートと前記カバーシートとの間には空気が存在し、
前記カバーシートは遮熱性シートである
傘を提案する。
【0019】
本発明は、上記傘であって、前記遮熱性シートは遮熱性レフランプ法で4℃以上の遮熱性を有する傘を提案する。
【0020】
本発明は、上記傘であって、前記遮熱性シートは光反射材を有する傘を提案する。
【0021】
本発明は、上記傘であって、前記遮熱性シートは光吸収材を有する傘を提案する。
【0022】
本発明は、上記傘であって、前記光反射材は白色材および金属材の群の中から選ばれる一種または二種以上である傘を提案する。
【0023】
本発明は、上記傘であって、前記光吸収材がカーボンブラックである傘を提案する。
【0024】
本発明は、上記傘であって、前記カバーシートは前記傘本体シートに対して着脱可能である傘を提案する。
【0025】
本発明は、
傘の傘本体シート表面に着脱可能に被せられるカバーシートであって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
(傘が開いた状態下における前記カバーシートに作用している力)/(傘が開いた状態下における前記傘本体シートに作用している力)が1未満である
カバーシートを提案する。
【0026】
本発明は、
傘の傘本体シート表面に着脱可能に被せられるカバーシートであって、
前記カバーシートは遮熱性シートであり、
{(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記傘本体シートの中心から先端までの長さ)L2}=1~5mmであり、
前記L2=40~80cmである
カバーシートを提案する。
【0027】
本発明は、上記カバーシートであって、前記遮熱性シートは遮熱性レフランプ法で4℃以上の遮熱性を有するカバーシートを提案する。
【0028】
前記特許文献1,2は遮光の考えを示しているに過ぎない。此処には遮熱の考えが無い。前記特許文献1,2における透明シートと遮光性シートとが一体であっても離間していても、遮光の観点から鑑みると、差は無い。すなわち、透明シートと遮光性シートとの間に空気層が有っても無くても遮光性には差が無い。従って、遮熱の為に、透明シートと遮光性シートとの間に空気層を設けなければならないと言う発想は、前記特許文献1,2からは、生まれ得ない。
前記特許文献3,4,5,6には遮熱の考えが有る。しかし、前記特許文献3,4,5,6は遮熱性シート(傘本体シート)しか存在しない。すなわち、シートは一枚しか無い。従って、例えば透明シート(傘本体シート)と遮熱性シートとの間に空気層(断熱層:遮熱層)を積極的に設けようとする発想が、前記特許文献3,4,5,6には、無い。
そうすると、前記特許文献1,2と前記特許文献3,4,5,6が単に存在していたとしても、これ等の文献から、傘本体シート(例えば、透明シート)に被せるカバーシートを遮熱性シートで構成すると共に、カバーシートを被せた場合には両シート間に空気が残存するように構成する技術思想は生まれない。
更には、遮熱性向上を考えた場合、当業者は前記特許文献3,4,5,6における遮熱性シート自体の遮熱性の向上を検討するのが普通であろう。シートを複数枚用い、前記複数枚のシート間に空気層を存在させ、遮熱性の向上を図ろうとする発想には至らないであろう。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、遮熱性シートによる遮熱効果に加えて、傘本体シートとカバーシートとの間に残存する空気による遮熱(断熱)効果を利用するようにしてなるから、日傘として用いた場合のクーリング効果(暑さを感じ難くさせる効果)に富む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明における傘本体シートとカバーシートとの関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は傘である。特に、日傘として用いられる傘である。勿論、雨傘として用いる事も出来る。前記傘は傘本体シートを具備する。この傘本体シートは、例えば雨傘としても用いられる傘のシートである。前記シートは、例えば透明ないしは半透明の樹脂シートである。樹脂としては、例えば天然ゴム、
イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、クロロプレンゴム、クロロスルホン化
ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ニトリル イソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどから選ばれるゴム、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂
、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。勿論、他の素材であっても良い。例えば布地であっても良い。布地は、天然繊維が用いられたものでも、合成繊維が用いられたものでも、両者が併用されたものでも良い。前記シートは、例えば防水性および/または撥水性および/または耐水性および/または不透水性を具備する。前記傘本体シートは、日傘としての特徴である遮光性および/または遮熱性を有していても有していなくても良い。前記傘はカバーシートを具備する。前記カバーシートは、例えば樹脂製である。前記傘本体シートと同じ素材が用いられても異なる素材が用いられても良い。勿論、他の素材であっても良い。前記カバーシートは前記傘本体シート表面に被せられる。前記カバーシートは前記傘本体シートに対して着脱可能(着脱自在も含まれる。)である。着脱可能と言う事は前記傘本体シートと前記カバーシートとが別材である事を意味する。かつ、前記傘本体シートと前記カバーシートとが一体で無い事を意味する。前記カバーシートは遮熱性シートである。
【0032】
前記遮熱性シートは、例えばシート中に光反射材(例えば、光反射性の粒子(粉末も含まれる。))を含有したものでも良い。例えば、前記シートの組成物と光反射材との混合物からシートを作製することによって、光反射材含有シートが得られる。或いは、シート表面に光反射材含有フィルムを貼り合わせる事によっても得られる。又は、シート表面に光反射材が設けられたものでも良い。これはシート表面に光射反材含有塗料を塗布・乾燥する事によって得られる。シート表面に光射反材を被着(例えば、蒸着とかスパッタ等の手段による被着)させる事によっても得られる。
【0033】
前記光反射材は、例えば白色顔料である。前記白色顔料としては、例えば酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。白色顔料としては、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムが好ましい。特に、二酸化チタンは、光触媒効果による清浄化の点からも、好ましい。酸化チタンとしては、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンが挙げられる。これらの中でも熱安定性に優れるという理由からルチル型酸化チタンが特に好ましい。前記光反射材は、例えば金属材である。前記金属材としては、例えば金属Al,Ag,Ti,Ni,Cu,Cr,Sn,Pt,SUS(ステンレス)等が挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。金属材としてはAlが好ましい。前記光反射材は平均粒径が15μm以下のものが好ましかった。より好ましくは5μm以下であった。更に好ましくは2μm以下であった。好ましくは0.1μm以上であった。より好ましくは0.2μm以上であった。前記平均粒径はレーザー回折散乱法により測定された値である。
【0034】
前記遮熱性シートは、例えばシート中に光吸収材(例えば、光吸収性の粒子(粉末も含まれる。))を含有したものでも良い。例えば、前記シートの組成物と光吸収材との混合物からシートを作製することによって、光吸収材含有シートが得られる。或いは、シート表面に光吸収材含有フィルムを貼り合わせる事によっても得られる。又は、シート表面に光吸収材が設けられたものでも良い。これはシート表面に光吸収材含有塗料を塗布・乾燥する事によって得られる。シート表面に光吸収材を被着(例えば、蒸着とかスパッタ等の手段による被着)させる事によっても得られる。
【0035】
前記光吸収材は、例えばカーボンブラックである。前記カーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0036】
前記遮熱性シートは、光反射材を有する層と光吸収材を有する層との両方を有するものでも良い。勿論、どちらか一方でも良い。
【0037】
前記遮熱性シートは、遮熱性レフランプ法で、例えば4℃以上の遮熱性を有する。好ましくは5℃以上であった。更に好ましくは6℃以上であった。本明細書において、遮熱性レフランプ法は次の方法による。例えば、温度20±2℃の試験室内において、黒画用紙の5mm上にスペーサを用いて2点以上の試料を保持し、試料上部50cmからレフランプ(100V500W)でランプ光を試料すべてに同時に照射して、15分後の黒画用紙裏面の表面温度を測定する。次に生地の位置を入れ替えて測定し、そのデータの平均を測定値とする。例えば、日本洋傘振興協議会の遮熱性に対して一般財団法人カケンテストセンターが行っている方法である。
【0038】
{(傘が開いた状態下における前記カバーシートに作用している力)/(傘が開いた状態下における前記傘本体シートに作用している力)}が1未満である。前記シートはシート中心部が固定されている。前記シートは傘の骨の先端部(露先部)においても固定されている。従って、傘が開かれた状態にあっては、傘の骨によって、前記シートは凸状(ドーム状)に押し拡げられている。この押拡状態にあっては、前記シートには力(押拡力:引張力)が作用している。前記値(比)が、例えば0.950~0.995であった。このように構成させておくと、傘が開いた状態下では、空気(例えば、空気層)が前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在するようになる。すなわち、前記傘本体シートは強く引っ張られているのに対して、前記カバーシートは前記傘本体シートに比べて緩く引っ張られているに過ぎないので、空気(例えば、空気層)が前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する。前記値(比)が1[前記傘本体シートを凸状(ドーム状)に押し拡げる力と前記カバーシートを凸状(ドーム状)に押し拡げる力とが同じ]の場合には、前記カバーシートは前記傘本体シートに強く密着する。そうすると、前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する空気量が少ない。これは空気層による断熱効果(遮熱効果)が小さい(期待でき難い)。前記値(比)が0.80と言った如きの小さ過ぎる値であると、前記カバーシートは前記傘本体シート上に乗っ掛かっている状況に過ぎない。これは前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する空気層の厚さが厚い事を意味する。これは遮熱効果が大きくなる事を意味する。しかし、前記カバーシートが前記傘本体シートから離れ過ぎるようになる。場合によっては、前記カバーシートが旗めくようにもなるであろう。これは見栄えや傘を持っている時の使用感を低下せしめる。従って、前記値(比)が、例えば0.950~0.995の場合は好ましかった。
【0039】
{(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記カバーシートの中心から先端までの長さ)L1-(傘が開いた状態下における該傘の骨のライン上の該傘が閉じた状態における前記傘本体シートの中心から先端までの長さ)L2}が、例えば1~5mmであった。前記L2は、例えば40~80cmであった。このように構成させておくと、傘が開いた状態下では、空気(例えば、空気層)が前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する。すなわち、前記傘本体シートおよび前記カバーシートが傘の骨によって凸状(ドーム状)に押し拡げられた状態下では、前記傘本体シートは強く引っ張られているのに対して、前記カバーシートは緩く引っ張られているに過ぎない。従って、空気(例えば、空気層)が前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する。前記(L1-L2)が、例えば10mmと言った値になると、前記カバーシートは益々緩く引っ張られる。これは前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する空気層の厚さが厚くなる事を意味する。これは遮熱効果が大きくなる事を意味する。しかし、前記カバーシートが前記傘本体シートから離れ過ぎるようになる。場合によっては、前記カバーシートが旗めくようにもなるであろう。これは見栄えや傘を持っている時の使用感を低下せしめる。L1=L2の場合、傘が開いた状態下においては、前記カバーシートは前記傘本体シートに強く密着する。そうすると、前記傘本体シートと前記カバーシートとの間に存在する空気量が少ない。これは空気層による断熱効果(遮熱効果)が小さい(期待でき難い)。従って、前記値(L1-L2)が、例えば1~5mmは好ましかった。勿論、この値はL2が40~80cmである事を前提としている。前記L1,L2は、前記シートの中心部におけるシート固定点と前記シートの先端部におけるシート固定点との間の長さである。例えば、前記傘本体シートは、一般的には、傘の石突が傘本体シートの中心部に設けられた孔に挿入配置されて前記傘本体シートの中心部が固定され、かつ、傘本体シートの先端部に取り付けられた円筒部材(キャップ)が傘の親骨の露先に挿入配置されて前記傘本体シートの先端部が固定されている。従って、この場合にあっては、前記L2は、前記傘本体シートの中心部と前記露先に固定されている傘本体シートの先端部との間の寸法である。これに対して、例えば前記カバーシートは、傘の石突がカバーシートの中心部に設けられた孔に挿入配置されて前記カバーシートの中心部が固定され、かつ、カバーシートの先端側に設けられた孔(開口:ハトメ)が傘の親骨の露先に挿入配置されて前記カバーシートの先端部が固定されている。従って、この場合にあっては、前記L1は、前記カバーシートの中心部と前記孔(開口:ハトメ)中心部との間の寸法である。これから判る通り、この場合は、前記カバーシートの全長は前記L1より1~2cm程度長い。これは、前記孔(開口:ハトメ)位置より先端側を把持して前記カバーシートを傘の親骨の露先に挿入配置する作業を容易にする為である。前記カバーシートを露先に固定する方法は前記孔(開口:ハトメ、ボタンホール)であっても、カバーシート先端に露先にかぶせる円筒部材(キャップ)を縫い付ける方法、その他の方法でもよい。カバーシート先端にかぶせるキャップを縫い付ける方法の場合、前記L1は前記カバーシートの中心部と前記キャップを縫い付けた先端部との間の寸法である。
【0040】
前記カバーシートは前記傘本体シートに対して着脱可能(着脱自在も含まれる。)である。
【0041】
前記傘は、傘としての基本的な要素を備えている。例えば、中棒、手元、親骨、受骨、露先、石突などである。勿論、前記要素は必要に応じて取捨選択される。
【0042】
以下、具体的な実施形態が挙げられる。しかし、本発明は以下の例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0043】
図1は開かれた状態での傘の側面図である。
図2は傘本体シートとカバーシートとの関係を示す断面図である。この断面図では、傘本体シートとカバーシートとの関係が強調されている。
【0044】
図1,2中、1は中棒、2は手元、3は親骨、4は露先、5は石突である。
【0045】
6は傘本体シート、7はカバーシートである。傘本体シート6の素材は雨傘に用いられるシートの素材を用いる事が出来る。防水性(あるいは不透水性または撥水性)を有する素材ならば如何なる素材でも良い。傘本体シート6は、例えば透明シートである。カバーシート7は遮熱性シートである。カバーシート(遮熱性シート)7は光反射性材料(例えば、二酸化チタン粒子または金属Al粒子)を用いて構成されている。前記遮熱性シート7は、遮熱性レフランプ法で4℃以上の遮熱性を有する。前記傘本体シート6やカバーシート7の製造方法は公知の方法が用いられても良い。
【0046】
カバーシート7は傘本体シート6上に被せられている。傘本体シート6は内側に存在しており、カバーシート7は外側に存在している(
図1参照)。傘本体シート6の取付方は着脱自在型でも固定型でも良い。傘本体シート6の傘への取付構造は周知である。従って、詳細は省略される。カバーシート7の取付方は着脱自在型でも固定型でも良い。この取付構造も傘本体シート6の傘への取付構造を応用できる。本実施形態では、カバーシート7は着脱自在である。
【0047】
傘本体シート6及びカバーシート7とは次の関係を有する。
{傘が閉じた状態において、親骨3に沿ったラインにおける[カバーシート7の中心部(石突5)から先端部(露先4)に至る長さ]}L1-{傘が閉じた状態において、親骨3に沿ったラインにおける[傘本体シート6の中心部(石突5)から先端部(露先4)に至る長さ]}L2=4mm,L2=50cmである。この長さの大小関係は親骨3に沿った以外のラインでも満たされている。すなわち、カバーシート7の長さ(動径方向の長さ)の方が傘本体シート6の長さ(動径方向の長さ)よりも多少長い。従って、傘が開いた状態下では次の関係が満たされている。(カバーシート7に作用している力)/(傘本体シート6に作用している力)}<1。すなわち、傘が開いた状態下では、傘本体シート6がドーム状に張っている力は強い(大きい)のに対して、カバーシート7がドーム状に張っている力は弱い(小さい:緩やかである)。
図1に示されるような傘が開いた状態下にあっては、傘本体シート6とカバーシート7との間には空気層8が存在している。
【0048】
上記の如くに構成させた傘(日傘)が用いられていると、太陽光が降りかかって来ても、太陽光はカバーシート7で遮られ、かつ、カバーシート7が遮熱性シートであり、しかもカバーシート7と傘本体シート6との間に存在する空気層8によっても効果的に遮熱が行われ、傘(日傘)の内側(下)に居る者にとってのクーリング効果が大きかった。因みに、傘本体シート6とカバーシート7とが一体的に貼り合わされた素材が用いられた日傘と比べても、クーリング効果に優れていた。
【符号の説明】
【0049】
1 中棒
2 手元
3 親骨
4 露先
5 石突
6 傘本体シート
7 カバーシート
8 空気層