(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】液体種別判別センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G01N21/41 A
(21)【出願番号】P 2021544214
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017903
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219565
【氏名又は名称】東横化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 清
(72)【発明者】
【氏名】李 丞祐
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05946084(US,A)
【文献】米国特許第06466323(US,B1)
【文献】特開平01-282448(JP,A)
【文献】特開平07-092006(JP,A)
【文献】特表2006-515072(JP,A)
【文献】特表2002-544473(JP,A)
【文献】実開昭63-050044(JP,U)
【文献】特開2018-128277(JP,A)
【文献】特開2016-170077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
A61B 5/06 - A61B 5/22
G01N 1/00 - G01N 1/44
G01N 33/00 - G01N 33/98
G01N 35/00 - G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平凸レンズ、平凸レンズを該レンズのコバで支持するレンズホルダ、平凸レンズの平面に当接して光を出射する出射用光ファイバ、平凸レンズの平面に当接して光を受光する受光用光ファイバ、出射用光ファイバに接続した発光部、及び受光用光ファイバに接続して光量を計測する光量計測部を備えた液体種別判別センサであって、
出射用光ファイバの
コアの端面が平凸レンズのコバ上に位置し、かつ出射用光ファイバの
コアの前記端面における中心軸が平凸レンズのコバ
と一致するように又はコバからレンズホルダ側にシフトするように出射用光ファイバが設けられている液体種別判別センサ。
【請求項2】
受光用光ファイバの
コアの端面が平凸レンズのコバ上に位置している請求項1記載の液体種別判別センサ。
【請求項3】
受光用光ファイバの
コアの端面が、平凸レンズの平面の中心を対称の中心として出射用光ファイバの
コアの端面と対称の位置に設けられている請求項2記載の液体種別判別センサ。
【請求項4】
受光用光ファイバの
コアの端面における中心軸が平凸レンズの平面を貫いている請求項2記載の液体種別判別センサ。
【請求項5】
レンズホルダを装着するブラケットを有し、ブラケットが該ブラケットの上面に降ってきた液体を平凸レンズの凸面の下に誘導する流路又は斜面を有する請求項1~4のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【請求項6】
平凸レンズ、レンズホルダ、出射用光ファイバ及び受光用光ファイバを含む検知部の設置面と平凸レンズの凸面との距離が0.4~0.6mmに保持される請求項1~5のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【請求項7】
平凸レンズの凸面に対向して設けられる反射板を備え、該反射板と平凸レンズの凸面との距離が0.4~0.6mmに保持される請求項1~5のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【請求項8】
光量計測部が、光量に応じて異なる色の光を発光させるレベル表示部を有する請求項1~7のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【請求項9】
光量計測部が、光量に応じて所定のランプを発光させる警告灯を有する請求項1~8のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【請求項10】
発光部が赤色光を発光する請求項1~9のいずれかに記載の液体種別判別センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体種別判別センサに関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応槽における反応の進行度を調べることのできる装置として、平凸レンズの凸面を化学反応槽内の液体と接触させ、該平凸レンズの平面に光を光ファイバで入射させ、該平凸レンズの凸面で全反射を繰り返し、平凸レンズの平面から出射した光を受光し、その受光した光の波長を分析することで全反射により吸収された波長を特定し、その波長によって化学反応槽における反応の進行度を調べる装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置によれば、液体を分析対象とした場合に液体の種類をある程度特定することができる。しかしながら、液体の種類を特定するために平凸レンズから出射した光の分光分析をすることが必要となる。
【0005】
これに対し、本発明は平凸レンズと液体の界面の全反射を利用して液体の種類を特定する装置において、より簡便かつ高精度に液体の種類を特定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、平凸レンズの凸面に液体を接触させ、平凸レンズの平面に出射用光ファイバで光を入射させ、平凸レンズの凸面で全反射を繰り返した光を受光用光ファイバで受光する場合に、(a)受光用光ファイバにおける受光光量は、平凸レンズの凸面に液体が接触していないときの受光光量に対して減少しており、この減少量は液体の屈折率と色に関係することから、予め分析対象となることが予想される液体の色と屈折率と受光光量との関係を調べておくと、分光分析をすることなく簡便に液体の種類を特定できること、また(b)平凸レンズにコバを形成しておくと、平凸レンズを容易に安定的に保持することが可能になること、(c1)出射用光ファイバの端面、特にコアを平凸レンズのコバ上に配置すると、平凸レンズの凸面全体をセンシングエリア(全反射を繰り返す領域)として機能させることが可能になり、凸面に接触している液体の分析精度が向上すること、(c2)特に出射用光ファイバの端面における中心軸を平凸レンズの平面を貫くようにすると、平凸レンズ内に入射した光において、平凸レンズの平面に垂直な方向の光の割合を高めることができ、それにより平凸レンズの凸面に液体が接触しているときの受光用光ファイバにおける受光光量と、凸面に液体が接触していないときの受光用光ファイバにおける受光光量との差が大きくなり、凸面に接触している液体の分析精度が向上すること、を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、平凸レンズ、平凸レンズを該レンズのコバで支持するレンズホルダ、平凸レンズの平面に当接して光を出射する出射用光ファイバ、平凸レンズの平面に当接して光を受光する受光用光ファイバ、出射用光ファイバに接続した発光部、及び受光用光ファイバに接続して光量を計測する光量計測部を備えた液体種別判別センサであって、
出射用光ファイバの端面が平凸レンズのコバ上に位置するように出射用光ファイバが設けられている液体種別判別センサを提供する。
【0008】
また、本発明は、平凸レンズ、平凸レンズを該レンズのコバで支持するレンズホルダ、平凸レンズの平面に当接して光を出射する出射用光ファイバ、平凸レンズの平面に当接して光を受光する受光用光ファイバ、出射用光ファイバに接続した発光部、及び受光用光ファイバに接続して光量を計測する光量計測部を備えた液体種別判別センサであって、
出射用光ファイバの端面が平凸レンズのコバ上に位置し、かつ出射用光ファイバの前記端面における中心軸が平凸レンズの平面を貫くように出射用光ファイバが設けられている液体種別判別センサを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出射用光ファイバの端面、特にコアが平凸レンズのコバ上に位置するように出射用光ファイバが設けられているので、平凸レンズの凸面全体を、全反射を繰り返す領域であるセンシングエリアとして機能させることが可能になる。したがって、平凸レンズの凸面で全反射を繰り返し、受光用光ファイバで受光された光の光量に基づいて平凸レンズが接している液体の種別を判別する際の判別精度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様においては、出射用光ファイバの端面が平凸レンズのコバ上に位置し、かつその端面での出射用光ファイバの中心軸が平凸レンズの平面を貫くように出射用光ファイバが設けられているので、出射用光ファイバから平凸レンズに入射する光において、ファイバの中心軸方向の強度の大きい光の割合を高くすることができる。したがって、平凸レンズの凸面で全反射を繰り返し、受光用光ファイバで受光された光の光量に基づいて平凸レンズが接している液体の種別を判別する際の判別精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明によれば、受光用光ファイバで受光した光の光量に基づいて液体の種別を判別できるので装置構成が簡便になり、装置の製造コストを低減させることができる。例えば、本発明の液体種別判別センサは従前より液体の判別に用いられているCharge Coupled Device(CCD)分光光度計、錘とロードセルを用いたプロセス用比重計等と比して製造コストを1/5以下にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例の液体種別判別センサの概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施例の液体種別判別センサの検知部の正面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施例の液体種別判別センサの検知部の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施例の液体種別判別センサの検知部の断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施例の液体種別判別センサの検知部の断面図である。
【
図3D】
図3Dは、反射板を設けた状態の実施例の液体種別判別センサの検知部の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の液体種別判別センサの検知部の分解図である。
【
図5A】
図5Aは、平凸レンズが液体と接していない状態において、出射用光ファイバから平凸レンズに入射した光の伝搬状態の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、平凸レンズが液体と接している状態において、出射用光ファイバから平凸レンズに入射した光の伝搬状態の説明図である。
【
図6】
図6は、比較例の検知部の平凸レンズが液体と接している状態において、出射用光ファイバから平凸レンズに入射した光の伝搬状態の説明図である。
【
図7A】
図7Aは、レベル表示部と警告灯の点灯状態の説明図である。
【
図7B】
図7Bは、レベル表示部と警告灯の点灯状態の説明図である。
【
図7C】
図7Cは、レベル表示部と警告灯の点灯状態の説明図である。
【
図7D】
図7Dは、レベル表示部と警告灯の点灯状態の説明図である。
【
図8】
図8は、受光光量に対応した検出電圧と液体の屈折率の関係図である。
【
図9】
図9は、レベル表示部と警告灯のランプの閾値の設定例である。
【
図10A】
図10Aは、液体種別判別センサの漏液センサとしての用途の説明図である。
【
図10B】
図10Bは、液体種別判別センサの漏液センサとしての用途の説明図である。
【
図11】
図11は、液体種別判別センサの配管内の液体種別判別センサとしての用途の説明図である。
【
図12】
図12は、液体種別判別センサの液面センサとしての用途の説明図である。
【
図13】
図13は、液体種別判別センサの槽内管理センサとしての用途の説明図である。
【
図14】
図14は、実施例で試験した、出射用光ファイバと受光用光ファイバの平凸レンズにおける当接位置の説明図である。
【
図15】
図15は、実施例で計測した、出射用光ファイバと受光用光ファイバのピッチと液体非接触時の電圧との関係図、及び同様のピッチと屈折率が異なる液体の電圧差との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または同等の構成要素を表している。
【0014】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施例の液体種別判別センサ1の概略構成図である。この液体種別判別センサ1は、検出又は判別すべき液体に接触させる平凸レンズを備えた検知部2、及び制御部3を有する。
図2は検知部2の正面図、
図3A~3Dは検知部2の断面図、
図4は検知部2の分解図である。
【0015】
検知部2は、平凸レンズ10、平凸レンズ10を該レンズのコバ10aで支持するレンズホルダ11、平凸レンズの平面10bに当接して光を出射する出射用光ファイバ12、平凸レンズの平面10bに当接して光を受光する受光用光ファイバ13を有している(
図3A~3D)。一方、制御部3は、出射用光ファイバ12に接続する出射用光コネクタ31、該コネクタ31に接続した発光部、受光用光ファイバ13に接続する受光用光コネクタ32、該コネクタ32に接続して受光用光ファイバ13で受光された光の光量を計測する光量計測部、計測した光量のレベル表示部33等を有している(
図1)。
【0016】
(検知部)
図3A等に示したように検知部2において、レンズホルダ11は耐薬品性樹脂で底部に開口部を有する有底筒状に形成されており、この開口部に平凸レンズ10が嵌められ、開口部の内壁全周がコバ10aの全周を押さえている。このようにレンズホルダ11がコバ10aで平凸レンズ10を支持することによりレンズホルダ11における平凸レンズ10の支持状態が安定し、これらが密着した状態を維持することができる。また、レンズホルダ11内の気密性が向上し、防水防塵を確保することができるので、検知部2は屋外設置にも好適となる。加えて、平凸レンズ10とレンズホルダ11とが真空密着の状態となるので、平凸レンズ10をレンズホルダ11に嵌め込むだけで固定され、外れにくくなる。また、レンズホルダ11の屈折率を出射用光ファイバ12のクラッドの屈折率に合わせることで、出射用光ファイバ12のコアから平凸レンズ10に入射した光を、平凸レンズ10のコバ10aとレンズホルダ11との界面で効率的に全反射させることができる。
【0017】
ここで、レンズホルダ11の形成材料としては、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の耐薬品性樹脂を使用することが好ましい。また平凸レンズ10としては、合成石英、合成樹脂、高屈折率ガラス等で形成された、曲率半径3~4mm、レンズ径4~6mm、コバ厚1~3mmのレンズを使用することができる。
【0018】
レンズホルダ11内では、該レンズホルダ11に支持された平凸レンズ10上に遮光部品14が設けられ、その上にレンズホルダ11と同様に耐薬品性樹脂で形成されたブッシュ15が設けられている。レンズホルダ11の内面において平凸レンズ10を囲む部分は、平凸レンズ10の平面10bと面一の面11aとなっている。
【0019】
出射用光ファイバ12はブッシュ15内に圧入され、遮光部品14を通り、出射用光ファイバ12の端面12aが平凸レンズの平面10bとレンズホルダ11の内側の面11aに当接する。このとき端面12a、特にコアは平凸レンズのコバ10a上に位置する(
図3A~3C)。また、出射用光ファイバ12の端面12aにおける中心軸A1は、コバ10aからレンズホルダ11側にシフトしていてもよいが(
図3A、3B)、好ましくは平凸レンズの平面10bを貫いている(
図3C)。
【0020】
受光用光ファイバ13もブッシュ15内に圧入され、遮光部品14を通り、受光用光ファイバ13の端面13aが平凸レンズの平面10b及びレンズホルダ11の内側の面11aに当接する。このとき端面13a、特にコアは平凸レンズのコバ10a上に位置している(
図3A~3C)。そして、受光用光ファイバ13の端面13aにおける中心軸A2は、コバ10aからレンズホルダ11側にシフトしていてもよく(
図3A)、平凸レンズの平面10bを貫いていてもよい(
図3B、3C)。受光用光ファイバ13の端面13aは、平凸レンズ10の平面10bの中心を対称の中心として出射用光ファイバ12の端面12aと対称の位置に設けられていることが好ましい(
図3A、3C)。
【0021】
出射用光ファイバ12と受光用光ファイバ13を上述の位置に設けることにより、この検知部2では、
図5Aに示すように、出射用光ファイバ12から平凸レンズ10に入射する光では、その中心軸A1方向の高強度の光の割合が高くなる。さらに、出射用光ファイバ12から出射された光が平凸レンズの凸面10cで全反射を繰り返すセンシングエリアDとして該凸面10cの全径を広く利用することができる。
【0022】
図5Bに示すように平凸レンズ10の凸面10cが液体xに接触すると、出射用光ファイバ12から入射した光は凸面10cで全反射を繰り返し、あるいは検知部2の設置面Pで反射されて受光用光ファイバ13で受光される。この受光光量は平凸レンズ10の凸面10cが液体xと接触していない場合に比して低減しており、低減量は液体xの屈折率と色に依存するので受光光量から液体種別を判別することが可能となる。よって、上述のように平凸レンズ10の凸面10cにおけるセンシングエリアDを広くし、平凸レンズ10に入射する光において出射用光ファイバ12の中心軸A1方向の高強度の光の割合が高くなることにより液体種別の判別精度を向上させることが可能となる。
【0023】
これに対し
図6に示したように、出射用光ファイバ12の端面12aと受光用光ファイバ13の端面13aをそれぞれ完全に平凸レンズ10の平面10b内に配置すると、平凸レンズ10に入射する光の強さと方向のばらつきが大きくなり、センシングエリアDも狭くなるので、液体xの種類の判別精度が低下する。
【0024】
一方、レンズホルダ11に嵌められたブッシュ15は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の耐薬品性樹脂で形成されたブラケット16と係合する(
図3A~3C)。この係合により、平凸レンズ10の凸面10cと該凸面10cに対向する検知部2の設置面Pとの距離hが0.4~0.6mmに保持されることが好ましい。このような距離hとすることにより、平凸レンズ10の凸面10cと検知部2の設置面Pとの間に液体が浸透して平凸レンズ10の凸面10cが液体で濡れやすくなる。これに対し、距離hが広すぎると平凸レンズ10のセンシングエリアDを液体xで濡らすために凸面10cと設置面Pとの間に保持させることが必要となる液体が不用に多くなる。反対に、距離hが狭すぎると組み立て公差の設定が難しくなる。
【0025】
検知部2の設置面Pに凹凸があることにより出射用光ファイバ12から出射された光のうち設置面Pで反射された光が受光用光ファイバ13で受光されにくい場合、設置面Pが石、コンクリート等で形成されていることにより検知部2の設置時に平凸レンズ10の凸面10cが傷つくおそれのある場合などにおいては、
図3Dに示すように、平凸レンズ10の凸面10cに対向するように反射板17を検知部2の設置面Pに設けてもよい。この場合、平凸レンズ10の凸面10cと反射板17との間には、上述の距離hが保持されるようにすることが好ましい。
【0026】
ブラケット16には、検知部2を所定の設置位置にネジ等で固定できるように孔部37と切り欠き部38が設けられている(
図1)。また、ブラケット16の上面に降ってきた液体が平凸レンズ10の凸面10cの下に誘導されるようにする流路18や斜面19が形成されている(
図2)。これにより検知部2の設置箇所に僅かな液体が降ってきた場合でも、その液体の種別を判別することが可能となる。
【0027】
なお、この検知部2では上述のように光ファイバ12、13と平凸レンズ10を用いて液体種別を判別するので、判別すべき液体がガソリンなどの可燃物で発火の危険を有するものであっても、検知部2の設置箇所が防爆エリアであっても、安全に使用することができる。
【0028】
(制御部)
制御部3は、その筐体30の表面に、出射用光ファイバ12に接続する出射用光コネクタ31と、受光用光ファイバ13に接続する受光用光コネクタ32を有する。出射用光コネクタ31は筐体30内に組み込まれた発光部と接続し、受光用光コネクタ32は筐体30内に組み込まれた光量計測部と接続している(
図1)。
【0029】
発光部は発光ダイオード(light emitting diode、以下、LED)光源等で構成され、所定波長の光を出射用光コネクタ31に送る。発光部には市販のLEDライト、光ファイバアンプ等を使用することができる。出射用光コネクタ31に送る光の波長を可変としてもよい。出射用光コネクタ31に送る光として赤色光を使用した場合、平凸レンズ10に接触している液体が赤色光を吸収しやすい青色系の液体であると、赤色光が平凸レンズ10に出射されてから受光用光ファイバ13で受光されるまでの間に赤色光が液体に吸収されやすく、平凸レンズ10が液体と接触していることによる受光光量の減少量が多くなるので液体の判別精度が向上する。また赤色光は、可視光であるため、平凸レンズ10に光が出射されていることを肉眼で確認でき、一般に危険を示す色と認識される点でも好ましい。なお、紫外線はレンズホルダ11を形成する樹脂を劣化させるので好ましくなく、また、検知部2を屋外設置した場合には太陽光を誤検知する虞があるため検知部の遮光が必要となる点でも好ましくない。
【0030】
一方、光量計測部はフォトダイオード等の受光素子で構成され、受光用光ファイバ13で受光された光の光量が電圧として計測される。制御部3は、その筐体30の表面に受光光量のレベルを示すレベル表示部33、警告灯34、閾値設定用ロータリーディップスイッチ35、感度調整用トリマ36を有している。レベル表示部33では複数のLEDランプが配列しており、光量計測部で計測された光量に応じた数のLEDランプが点灯する。LEDランプとして発光色の異なるものを備えていることが好ましい。例えば、光量計測部で計測された光量が、平凸レンズ10が液体に接触していない状態に相当する場合、
図7Aに示すように緑色ランプGの一部を点灯させ、他のランプを消灯させる。光量計測部で計測された光量が、平凸レンズ10が水に接触している状態に相当する場合、
図7Bに示すように緑色ランプG及び黄色ランプYの一部を点灯させ、他のランプを消灯させる。同様に所定の第1の液体(例えば、エチルアルコール)との接触に相当する場合には
図7Cに示すように緑色ランプG、黄色ランプY及び赤色ランプRの一部を点灯させ、他のランプを消灯させる。同様に所定の第2の液体(例えば、イソプロピルアルコール)との接触に相当する場合には
図7Dに示すように緑色ランプG、黄色ランプY及び赤色ランプRを点灯させる。
【0031】
また、必要により警告灯34を点灯させてもよい。警告灯34も発光色の異なるLEDランプから構成することができ、警告のレベルに応じて点灯させるランプの色を、例えば緑色から黄色又は赤色に変えてもよい。さらに、検出された液体が、検知部2の設置箇所における異常な漏液の虞を示す場合に、設置箇所の管理システムに警告信号が発信されるようにしてもよい。
【0032】
受光光量に応じてレベル表示部33のLEDランプや警告灯34をどのように点灯させるかは、予め、光量計測部で計測された電圧と液体の屈折率との関係を、例えば、種々の濃度のショ糖水溶液からなる屈折率標準液(以下、標準液という)を用いて計測しておき、個々のLEDランプを点灯させる閾値を設定すればよい。例えば、標準液の屈折率と光量計測部で計測された電圧とに
図8の関係がある場合に、
図9に示すようにレベル表示部33の緑色ランプG、黄色ランプY及び赤色ランプR、ならびに警告灯34の黄色ランプY及び赤色ランプRを点灯させる電圧の閾値(1)~(5)を設定し、検出された電圧が閾値を下回った場合に対応するランプを点灯させる。この閾値(1)~(5)は適宜変更できるようにすることが好ましい。本実施例では閾値(1)を、平凸レンズ10が水に接触した状態に対応させるために800mVに設定し、検出電圧が800mVを超えている場合にはレベル表示部33で緑色ランプG1またはG2が点灯し、800mV以下になるとランプG1、G2に加えて黄色ランプY3が点灯し、警告灯34も黄色に点灯するようにしている。閾値(2)~(5)は
図9に示した閾値に設定しており、例えば検出電圧が610mV以下になると緑色ランプG1、G2、黄色ランプY3、Y4に加えて赤色ランプR5が点灯し、警告灯34も赤色に点灯する。閾値(2)~(5)は閾値設定用ロータリーディップスイッチ35で変更可能である。
【0033】
なお、受光光量に対応する電圧と、屈折率との関係のみでは、平凸レンズ10が接触している液体の種類の判別をすることはできないが、検知部2を設置する個々の場所に応じて検出される液体の種類は限定されるので、検知部2を設置する場所ごとに検出すべき液体の種類に応じて警告灯34の点灯の閾値を定めることが好ましい。例えば、ガソリンの屋外配管の継ぎ手付近に検知部2を設置した場合、判別対象となる液体はガソリンと、雨水となるが、ガソリンと雨水とは屈折率が異なることから、検出された当該液体が、雨水なのかガソリンなのか、それらの混合液なのかを判別することができ、ガソリン又はガソリンの混合液であることが検出された場合には継ぎ手における漏液が問題になるので、警告灯34が点灯し、警告信号が発信されるようにする。
【0034】
なお、本発明において光量計測部による計測結果の表示方法は、LEDランプの発光色と発光したLEDランプの個数を利用して光量を表す方法に限られない。例えば、計測結果を数値で表示してもよい。
【0035】
(用途)
・漏液センサ
本発明の液体種別判別センサは、漏液の危険性がある箇所に設置して漏液の有無を検知する漏液センサとして使用することができる。その場合、単なる液体の検知ではなく、漏液が問題となる所定の種類の液体の検知を常時行うことが可能となる。例えば、
図10Aに示すように、屋外設置されている配管40の継手部分41の下に検知部2を設置し、該配管40を通る液体の屈折率を予め調べておくことにより、検知部2が雨水wに接触している場合には警告灯34に黄色ランプを点灯させ、
図10Bに示すように、検知部2が継手部分41から漏れた液体xに接触している場合には、それが雨水wにより希釈されている場合でも、警告灯34に赤色ランプを点灯させることができる。さらに、異常な漏液に対する警告の発信機能により、液漏れの有無を24時間体制で常時監視することが可能となる。同様にして、配管の経年劣化や腐食などによる漏液、各種装置からの液漏れも常時監視することが可能となる。この場合、レンズホルダ11やブッシュ15を耐薬品性樹脂で形成することにより、漏液が問題となる液体が酸性又はアルカリ性であっても、腐食性であっても、漏液した液体に検知部2を接触させることが可能となる。
【0036】
・配管内の液体種別の判別センサ
図11に示すように、異なる液体x又は液体yが通る配管42に検知部2を設置することにより、検知部2の設置箇所で液体x又は液体yのいずれが配管42内を流れているかを判別することができる。
【0037】
・液面センサ
図12に示すように、液体槽43の所定の液面の高さに検知部2を設置することにより、液体槽43内において液面センサとして使用することができる。また、この液体槽43を、液体が所定の反応を行う反応槽として使用する場合には、この液体槽43に取り付けた検知部2を、槽内で進んでいる反応経過のチェックに使用することができる。
【0038】
・槽内管理センサ
図13に示すように、薬液xを貯留していた液体槽43を水wで洗浄する場合の配管42に検知部2を設置することにより、液体槽43内に薬液xが残っている状態と、洗浄が完了して液体槽43内に水wだけが存在する場合とを区別する槽内管理センサとして使用することができる。これにより、無用に洗浄を重ねることを省略でき、効率的に槽内を洗浄することが可能となる。この他、本発明の液体種別判別センサは種々の場面で使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
出射用光ファイバと受光用光ファイバを平凸レンズに当接させるにあたり、それらの好適な位置を調べるため、
図3C、3Dに示した検知部2において、平凸レンズ10に対して出射用光ファイバ12の中心軸A1と、受光用光ファイバ13の中心軸A2との距離(ピッチ)を
図14に示すように変えた。そしてそれぞれのピッチにおいて、出射用光ファイバ12のコア及び受光用光ファイバ13のコアが平凸レンズ10の平面10bに当接している部分の面積とこれらのコアの断面積との割合(%)を求めた。結果を
図14に示す。この場合、平凸レンズ10の仕様は次の通りである。
【0040】
平凸レンズの仕様
レンズ材料:合成石英
平面10bの直径:5.0mm
凸面10cの曲率半径:3.69mm
コバ10aの厚さ:1.5mm
【0041】
それぞれのピッチにおいて、平凸レンズ10に液体が接触していないときの光量計測部における電圧を求めた。結果を
図15に示す(同図の右縦軸)。また、平凸レンズ10の凸面10cを屈折率1.33の液体(水)に浸漬させた状態と、屈折率1.44の液体(ガソリン)に浸漬させた状態のそれぞれにおいて光量計測部で電圧を計測し、それらの差を求めた。この電圧差も
図15に示す(同図の左縦軸)。
【0042】
図15から、出射用光ファイバ12のコアと受光用光ファイバ13のコアとが平凸レンズ10のコバ10a上に配置されていると、平凸レンズ10に接触させる液体の屈折率を変えた場合に、各ピッチにおいて光量計測部で電圧の差を計測できることが分かり、この場合に計測される電圧の差が大きいのは、出射用光ファイバと受光用光ファイバのそれぞれのコアの平凸レンズに当接している部分の面積のコアの断面積に対する面積が95~73%の場合(即ち、出射用光ファイバと受光用光ファイバのピッチが4.2~4.6mmの場合)であり、光ファイバ端面の全面が平凸レンズに当接している場合ではないことがわかる。
【0043】
また、出射用光ファイバと受光用光ファイバのピッチが4.2~4.6mmの場合に、平凸レンズが液体と接触していないときの電圧が最も大きいのはピッチ4.6mmであること、したがって、この測定系では液体種別の判別精度を高くするため、ピッチを4.6mmとするのが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0044】
1 液体種別判別センサ
2 検知部
3 制御部
10 平凸レンズ
10a コバ
10b 平面
10c 凸面
11 レンズホルダ
11a 面
12 出射用光ファイバ
12a 端面
13 受光用光ファイバ
13a 端面
14 遮光部品
15 ブッシュ
16 ブラケット
17 反射板
18 流路
19 斜面
30 筐体
31 出射用光コネクタ
32 受光用光コネクタ
33 レベル表示部
34 警告灯
35 ロータリーディップスイッチ
36 感度調整用トリマ
37 孔部
38 切り欠き部
40 配管
41 継手部分
42 配管
43 液体槽
A1、A2 中心軸
D センシングエリア
h 平凸レンズの凸面と液体種別判別センサの設置面との距離
P 設置面
w 雨水(水)
x 液体(薬液)
y 液体
【要約】
液体種別判別センサ1は、平凸レンズ10、平凸レンズ10を該レンズのコバ10aで支持するレンズホルダ11、平凸レンズの平面10bに当接して光を出射する出射用光ファイバ12、平凸レンズの平面10bに当接して光を受光する受光用光ファイバ13、出射用光ファイバ12に接続した発光部、及び受光用光ファイバ13に接続して光量を計測する光量計測部を備える。出射用光ファイバの端面12aが平凸レンズのコバ10a上に位置し、好ましくはその端面12aにおける中心軸A1が平凸レンズの平面10bを貫くように出射用光ファイバ12が設けられている。