(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】風向変更部材およびサーバーの冷却方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/08 20060101AFI20220727BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
F24F13/08 B
F24F7/06 B
F24F13/08 A
(21)【出願番号】P 2022003073
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2022-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511089136
【氏名又は名称】センターピア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 芳久
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0031928(US,A1)
【文献】米国特許第06604993(US,B1)
【文献】特開2003-302085(JP,A)
【文献】特開2000-274767(JP,A)
【文献】特許第5451931(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/08
F24F 7/06
H05K 7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバー冷却システム用の床下送風路における冷却用空気の風向を変更する風向変更部材であって、
二本の固定脚を備え、二本の前記固定脚の間に、風向変更パネルと、障害回避部とを有
し、
前記風向変更パネルが、引き出し可能な状態で前記固定脚にそれぞれ収納されている二本の可動脚に保持されており、
前記固定脚における前記可動脚の位置を固定する可動脚固定部材を備え、
前記可動脚の引き出し長さにより、前記障害回避部の高さを変更可能であり、
前記可動脚固定部材は、前記可動脚の長手方向に延びる第1の溝部の所定位置に、前記固定脚の固定部を固定可能であり、
前記可動脚の長手方向における前記風向変更パネルの位置を変更可能であり、
前記可動脚の長手方向に延びる第2の溝部の所定位置に、前記風向変更パネルの取付部を固定可能なパネル固定部材を備えていることを特徴とする、
風向変更部材。
【請求項2】
前記第1の溝部における前記可動脚固定部材の移動可能範囲を規制するストッパーを備えている、
請求項
1に記載の風向変更部材。
【請求項3】
前記風向変更パネルは、複数の風向制御板を備えており、複数の前記風向制御板が前記固定脚の長手方向に並んで配置されている、
請求項1に記載の風向変更部材。
【請求項4】
サーバーが収納された複数のサーバー用ラックを有するデータセンターにおいて、前記サーバー用ラックが載置された床の前記床下送風路に請求項1に記載の風向変更部材を複数配置し、前記床下送風路に空調装置から前記冷却用空気を供給し、前記風向変更部材の前記風向変更パネルを通過させることにより、前記冷却用空気の流れを前記床側に誘導して、前記床に設けられた通気部を通過させることを特徴とする、
サーバーの冷却方法。
【請求項5】
複数の前記風向変更部材には、前記障害回避部の高さが異なる前記風向変更部材が含まれる、
請求項
4に記載のサーバーの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバーラックを設置したデータセンターの空調システムにおいて、床下の冷却用空気の風向きを変更することによりサーバーの冷却効率を向上させる、サーバー冷却用の風向変更部材およびサーバーの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバーを収納したデータセンターでは、二重床の床下における冷却用空気を床に設けられた格子状のグレーチング部分を介してサーバーラックに供給し、ラック内のサーバーを冷却する空調システムが用いられる。
例えば、特許文献1には、冷却用空気を冷却対象であるサーバーラックに効率よく導くために、換気扇と、換気扇から排出される空気を特定の方向に誘導する風向制御板とを備えた床下の空気を床上空間に導く二重床用換気装置が記載されている。また、特許文献2には、空調機から床下空間に提供された冷気が吹き出し口を介してサーバーラック列に提供されるサーバーラック室内システムにおいて、可動羽を備えた衝立を有する、床下空間の高さよりも高さの低い遮蔽部材を床下空間に設置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-166658号公報
【文献】特許5451931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の二重床用換気装置のように、床下の冷却用空気をサーバーラックに導く換気扇を用いる場合、換気扇用の電源が必要になるため空調システムの規模が大きく、複雑になる。さらに、換気扇が故障する虞もある。このため、設計、運用および保守管理費用が増大する原因となる。また、SDGs(持続可能な開発目標)およびESG(環境、社会、カバナンス)の観点から、データセンターの空調システムは、できるだけ環境負荷の少ない設計とすることが望まれる。
【0005】
特許文献2のサーバーラック室内システムは、床下空間の高さよりも高さの低い遮蔽部材を床下空間に設置して可動羽の角度を調整することにより、換気扇を用いることなく、サーバーラック室全体にわたって冷気を可及的均一に提供する。しかし、サーバーラック室の床下空間にはケーブル配線などが張り巡らされる。このため、同文献に記載の遮蔽部材のように衝立てを設置する場合、床下空間における設置個所、設置方向、設置高さに制約があり、適切な位置および高さに設置することが困難であった。
そこで、本発明は、データセンターの空調システムにおいて、環境負荷を増大させることなく、床下の冷却用空気の風向きを変更して、サーバーの冷却効率を向上させることができる、床下への設置および高さの調整が容易なサーバー冷却用の風向変更部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するための手段として以下の構成を備えている。
[1]サーバー冷却システム用の床下送風路における冷却用空気の風向を変更する風向変更部材であって、二本の固定脚を備え、二本の前記固定脚の間に、風向変更パネルと、障害回避部とを有し、前記風向変更パネルが、引き出し可能な状態で前記固定脚にそれぞれ収納されている二本の可動脚に保持されており、前記固定脚における前記可動脚の位置を固定する可動脚固定部材を備え、前記可動脚の引き出し長さにより、前記障害回避部の高さを変更可能であり、前記可動脚固定部材は、前記可動脚の長手方向に延びる第1の溝部の所定位置に、前記固定脚の固定部を固定可能であり、前記可動脚の長手方向における前記風向変更パネルの位置を変更可能であり、前記可動脚の長手方向に延びる第2の溝部の所定位置に、前記風向変更パネルの取付部を固定可能なパネル固定部材を備えていることを特徴とする、風向変更部材。
障害回避部によって床下送風路におけるケーブルなどを避けることができるため、データセンターの空調システムにおける床下送風路の状況に応じて、風向変更部材を設置することが容易である。
【0007】
固定脚から可動脚を引き出す長さにより障害回避部および風向変更部材の高さを調整することができる。このため、床下送風路の状況および冷却用空気供給装置からの距離に応じて、適切な位置および高さに風向変更パネルを設置することが容易である。また、固定脚からの可動脚の引き出し長さを異ならせて、風向変更パネルに対する二本の固定脚の長さに差をつけることができる。このため、例えば、床下送風路に段差などがあるときでも、風向変更部材を安定性よく設置できる。
第1の溝部を可動脚の側面に設けることにより、可動脚の間における風向変更パネルの幅を広くとることができる。
固定脚から可動脚を引き出す長さに加えて、可動脚の長手方向における風向変更パネルの位置を変更可能とすることで、障害回避部および風向変更パネルの高さの調整可能な範囲がより広くなる。
【0008】
[2]前記第1の溝部における前記可動脚固定部材の移動可能範囲を規制するストッパーを備えている、[1]に記載の風向変更部材。
第1の溝部における可動脚固定部材の移動可能な範囲をストッパーで規制することにより、固定脚から可動脚が抜けることを防止できる。
【0010】
[3]前記風向変更パネルは、複数の風向制御板を備えており、複数の前記風向制御板が前記固定脚の長手方向に並んで配置されている、[1]に記載の風向変更部材。
風向変更パネルを鉛直方向に設置することにより、床下送風路における水平方向の冷却用空気の風向を効率的に変更することができる。
【0011】
[4]サーバーが収納された複数のサーバー用ラックを有するデータセンターにおいて、前記サーバー用ラックが載置された床の前記床下送風路に[1]に記載の風向変更部材を複数配置し、前記床下送風路に空調装置から前記冷却用空気を供給し、前記風向変更部材の前記風向変更パネルを通過させることにより、前記冷却用空気の流れを前記床側に誘導して、前記床に設けられた通気部を通過させることを特徴とする、サーバーの冷却方法。
[5]複数の前記風向変更部材には、前記障害回避部の高さが異なる前記風向変更部材が含まれる、[4]に記載のサーバーの冷却方法。
障害回避部により床下送風路におけるケーブルなどを避けることができるため、データセンターの空調システムにおける床下送風路の状況に応じて、風向変更部材を設置し、サーバーの冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、換気扇を用いないで床下の冷却用空気の風向きを変更できるため、環境負荷を増大させることなく、サーバーの冷却効率を向上させることができる。また、固定脚と風向変更パネルとの間に障害回避部を備えているため、床下空間におけるケーブルなどの障害物の状況に応じて、適切な位置に風向変更パネルを設置することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る風向変更部材の構成を説明する斜視図である。
【
図2】複数のサーバー用ラックを有するデータセンターを模式的に示す平面図である。
【
図3】床下送風路における風向変更部材の使用態様を示す模式図である。
【
図4】
図1の風向変更部材の固定脚から可動脚を引き出した状態を示す斜視図である。
【
図5A】可動脚の引き出し長さを最小にした状態を示す側面図である。
【
図5B】可動脚の引き出し長さを最大にした状態を示す側面図である。
【
図6】
図1の風向変更部材の可動脚における風向変更パネルを下側に移動した状態を示す斜視図である。
【
図7】風向変更部材を床下送風路に設置した状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施態様について、図面を参照して以下に説明する。各図に示す座標は、方向や部材の位置関係を示すためのものである。
図1は、本発明の実施形態に係る風向変更部材1の構成を説明する斜視図である。
風向変更部材1は、サーバー冷却システム用の床下送風路における冷却用空気の風向を変更するために用いられるものであり、二本の固定脚11を備え、二本の固定脚11の間に、風向変更パネル12と、障害回避部13とを有する。固定脚11の間に設けた障害回避部13により、床下送風路における配線等の障害を回避して、風向変更パネル12を設置することができる。
【0015】
また、二本の固定脚11の間に風向変更パネル12を設けることにより、衝立状にした場合よりも風向変更部材1の床占有面積を小さくすることができる。このため、風向変更部材1を設置する際における自由度が高くなる。例えば、既にサーバーラックが配置され、諸々の配線が張り巡らされた状態の床下送風路であっても風向変更部材1の設置が容易である。
【0016】
風向変更パネル12は、複数の風向制御板121および開口部122を備えている。複数の風向制御板121は、固定脚11の長手方向(Y軸方向)に並んで配置されている。風向制御板121は、
図1における手前側に突出する板であり、
図1の奥側よりも手前側のほうが上方(Y1側)となるように、Y軸に対して斜めに設けられている。このため、
図1の奥側を上流、手前側を下流として冷却用空気を通過させる際、冷却用空気風向をY1側に変更することができる。
【0017】
複数の風向制御板121が鉛直方向(Y軸方向)に並ぶように、風向変更部材1の風向変更パネル12を設置することにより、風向変更パネル12の開口部122を通過する冷却用空気の風向を上方(Y1方向)に変更することができる。例えば、冷却用空気を供給するエアコンの吹出口の近傍は、冷却用空気の流速が大きいため、床下送風路の上のサーバー用ラックに冷却用空気が届きにくい。そこで、風向変更部材1を設置することで、風向変更パネル12によりサーバー用ラックへの冷却用空気を導いて、強制空冷力を大きくすることができる。
【0018】
風向制御板121の水平方向に対する角度は固定されている。しかし、風向制御板121の角度の異なる、風向変更パネル12に取り換え可能な構成としてもよい。この構成によれば、サーバー冷却システムや風向変更部材1を配置する位置に応じて風向制御板121の角度を設定し、具体的な状況に応じてカスタマイズすることが可能である。
【0019】
図2はサーバー用ラック21を載置するデータセンター2内におけるサーバー冷却システムを模式的に示す平面図である。
図3は床下送風路25における風向変更部材1の使用態様を模式的に示す一部断面図である。同図では、冷却用空気の向きを白抜き矢印で示している。
【0020】
データセンター2には、複数のサーバーが配置されたサーバー用ラック21の間に、網板(グレーチング)などにより構成される通気部22が設けられる。そして、クーラー24から供給された冷却用空気が床下送風路25に供給され、二重床における上側の床23に設けられた通気部22を介してサーバー用ラック21に供給されてサーバーの冷却に用いられる。
図3に示すように、風向変更部材1を床下送風路25に配置することにより、クーラー24から供給された冷却用空気(床下エアフロー)の風向を通気部22(Y1)側に変えることが可能である。このため、冷却用空気によるサーバー用ラック21内のサーバーの冷却効率を向上させることができる。
【0021】
図2および
図3に示すように、本実施形態のサーバーの冷却方法は、サーバーが収納された複数のサーバー用ラック21を有するデータセンター2において実施される。サーバー用ラック21が載置された床23の床下送風路25に風向変更部材1を複数配置し、冷却用空気をクーラー(空調装置)24から床下送風路25に供給する。そして、風向変更部材1の風向変更パネル12を通過させて、冷却用空気の流れを通気部22(床23、Y1)側に誘導して、床23に設けられた通気部22を通過させる。
【0022】
本実施形態のサーバーの冷却方法によれば、データセンター2における、床下送風路25を介してサーバー用ラック21に供給される冷却用空気の均一性を向上させることができる。また、特定のサーバー用ラック21の冷却効率を向上させる必要がある場合、その近傍に風向変更パネル12を設置する。これにより、当該サーバー用ラック21に冷却用空気を集中的に供給し、サーバー用ラック21内のサーバー冷却効率を向上させることができる。
【0023】
図4は、風向変更部材1の固定脚11から可動脚14を引き出した状態を示す斜視図である。同図に示すように、風向変更パネル12は、二本の可動脚14に保持されており、可動脚14は引き出し可能な状態で固定脚11にそれぞれ収納される(
図1参照)。風向変更部材1は、固定脚11を断面略コ字状の形状とし、可動脚14を固定脚11の内面に沿って摺動可能な断面矩形の形状として、可動脚14を引き出し可能な状態で固定脚11に収納することができる。固定脚11は、可動脚14を収納した状態で風向変更パネル12が位置する側が開放されており、その間に風向変更パネル12が配置される。
【0024】
風向変更部材1は、固定脚11における可動脚14の位置を固定する可動脚固定部材15を備えている。可動脚14の側面には、可動脚14の長手方向に沿って溝部141が設けられており、溝部141に沿って可動脚固定部材15が摺動して移動可能である。また、溝部141の長手方向における両端部近傍にはストッパー142が設けられており、ストッパー142により可動脚固定部材15の移動可能範囲を規制する。可動脚14自体に溝部141を持たせることにより、風向変更パネル12の幅方向(X軸方向)の寸法を大きくすることができる。
【0025】
可動脚固定部材15は、固定脚11の固定部111と、可動脚14の溝部141との位置関係を固定する。例えば、固定脚11の側面を貫通する孔を固定部111として用い、ボルトなどを可動脚固定部材15として用いることができる。固定部111を貫通させた可動脚固定部材15を固定する溝部141における位置によって、可動脚14の引き出し長さLを決めることができる。可動脚固定部材15は、可動脚14の固定状態と引き出し可能な状態とを切り替える、レバー、ハンドルなどを備えていてもよい。
【0026】
障害回避部13の高さHは、可動脚14の引き出し長さLを変えることにより、変更可能である。このように、風向変更部材1は、固定脚11に対する風向変更パネル12の位置を変えて使用することができる。
【0027】
風向変更部材1は、固定脚11から可動脚14を引き出す長さLにより障害回避部13の高さHを調整することができる。したがって、床下送風路25の物理的な状況、およびクーラー24からの距離に応じて、適切な高さに風向変更パネル12を設置することが容易である。このため、本実施形態のサーバーの冷却方法は、障害回避部13の高さHが異なる複数の風向変更部材1を用いて実施することが容易である(
図3参照)。
【0028】
可動脚固定部材15は、引き出し長さLを異ならせて、固定脚11における可動脚14の位置を固定することができる。風向変更部材1を設置する際に、
図4に一点鎖線で示すように、風向変更パネル12の下方(Y2側)の二本の固定脚11の長さを異ならせた状態で用いてもよい。例えば、段差がある箇所に設置する場合、段差に合わせて固定脚11の長さを調整することによって、床下送風路25(
図3参照)における設置の安定性が向上する。
【0029】
図5Aおよび
図5Bは、
図4におけるX1側の可動脚14をX1側からX2側に向かって見た側面図である。
図5Aが可動脚14の引き出し長さL(
図4参照)を最小にした状態を示しており、
図5Bが可動脚14の引き出し長さLを最大にした状態を示している。
図5Aおよび
図5Bでは、説明の便宜上、固定脚11における固定部111が設けられている面を省略して示している。
【0030】
図5Aに示すように、可動脚14が固定脚11の内側に収納された状態では、可動脚固定部材15が溝部141のY1側のストッパー142にあたり、可動脚14のY2方向への移動が規制される。これにより、固定脚11のY2側の端から可動脚14が突出して、固定脚11のY2の端を覆う緩衝部材112が損傷することを防止できる。
【0031】
図5Bに示すように、引き出し長さLが最大となるまで可動脚14が固定脚11から引き出された状態では、可動脚固定部材15が溝部141のY2側のストッパー142にあたり、可動脚14のY1方向への移動が規制される。これにより、固定脚11から可動脚14が抜けることを防止できる。
【0032】
ストッパー142は、溝部141に取り外し可能な状態で、所定位置に固定される。ストッパー142の位置は変更可能であり、ストッパー142を固定する位置により、溝部141における可動脚固定部材15の移動可能範囲を調整できる。
【0033】
図7は、風向変更部材1の可動脚14における風向変更パネル12を下(Y2)側に移動した状態を示す斜視図である。同図に示すように、風向変更部材1は、固定脚11の長手方向(Y軸方向)における風向変更パネル12の位置を変更可能である。このため、固定脚11から可動脚14を引き出す長さLに加えて、可動脚14の長手方向(Y軸方向)における風向変更パネル12の位置を変更することにより、風向変更パネル12を配置する高さをより広範囲で調整することが可能になる。
【0034】
可動脚14は、風向変更パネル12側の面に可動脚14の長手方向(Y軸方向)に延びる溝部143を備えている。固定脚11に収納された状態において(
図1参照)、可動脚14の溝部143は、断面コ字状の固定脚11における開口した部分に位置する。そして、パネル固定部材16により、溝部143における所定位置に、風向変更パネル12の取付部123を固定可能に構成されている。
【0035】
風向変更部材1では、風向変更パネル12の四つの角に取付部123が設けられており、それぞれが4つのパネル固定部材16によって溝部143に固定される。パネル固定部材16としては、溝部143に沿って移動可能であるとともに、所定位置で固定可能な部材が用いられる。パネル固定部材16としては、例えば、ボルト、ナット、およびワッシャーの組み合わせなどが挙げられる。
【0036】
図6は、風向変更部材1を床下送風路25に設置した状態を模式的に示す正面図である。なお、同図には風向変更部材1をX軸方向に二つ並べて設置した場合を例示しているが、風向変更部材1を一つで設置または三つ以上並べて設置してもよい。
【0037】
同図に示すように、床下送風路25の二重床の下側の床26には、通気部22を支持する床上げ部材としての柱27が設けられている。このため、固定手段3を用いて、この柱27に風向変更部材1の固定脚11を固定することにより、風向変更部材1を設置できる。なお、複数の風向変更部材1を並べて設置する場合、隣り合う風向変更部材1の固定脚11同士を固定手段3により連結してもよい。固定手段3としては、紐、ワイヤー、結束バンド、クランプ、ボルトとナット、マジックバンドなどを用いることができる。
【0038】
風向変更部材1は、二本の固定脚11の間に障害回避部13としての空間を備えている。このため、床下送風路25の床26上に設置された、または設置される予定の配線等の障害28を避けて、風向変更部材1を配置することが容易である。
【0039】
エアコンの吹出口の床26からの高さに応じて、風向変更部材1を設置することにより、風向変更パネル12で冷却用空気の風向を変更することができる。また、固定脚11から可動脚14を引き出す長さにより、風向変更部材1自体の高さを調節できる。このため、床下送風路25の床26から通気部22までの高さに応じて、風向変更部材1の高さを調整して、風向変更パネル12を適切な高さに設置することができる。
【0040】
図8は、風向変更部材1をY軸のY1方向からY2方向に見たときの平面図である。同図に示すように、風向変更部材1の固定脚11は、Z1方向、X1方向およびZ2方向の三つの側面にほとんど凹凸が無く、また、XZ面における占有面積が小さい。このように、風向変更部材1は、設置における制約が小さいため、床下送風路25における柱27への固定が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、クーラーからの冷却用空気を二重床における床下送風路に供給し、床下から冷却用空気を吹き出して各サーバーラックに提供してサーバーを冷却するデータセンターの冷却システムにおける、冷却用空気の風向を変更する風向変更部材として有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 :風向変更部材
2 :データセンター
3 :固定手段
11 :固定脚
111 :固定部
112 :緩衝部材
12 :風向変更パネル
121 :風向制御板
122 :開口部
123 :取付部
13 :障害回避部
14 :可動脚
141 :溝部(第1の溝部)
142 :ストッパー
143 :溝部(第2の溝部)
15 :可動脚固定部材
16 :パネル固定部材
21 :サーバー用ラック
22 :通気部
23 :床
24 :クーラー
25 :床下送風路
26 :床
27 :柱
28 :障害
L :引き出し長さ
H :高さ
【要約】
【課題】ケーブルの配置状況などの床下空間の物理的な事情に応じて、適切な位置に風向変更パネルを配置することが容易な、換気扇を用いないでサーバーの冷却効率を向上させることができる風向変更部材を提供する。
【解決手段】風向変更部材1は、サーバー冷却システム用の床下送風路における冷却用空気の風向を変更するものであり、二本の固定脚11、11を備え、二本の前記固定脚11、11の間に風向変更パネル12と、障害回避部13とを有している。
【選択図】
図1