(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】窒素酸化物削減のための排気ガス処理触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20220727BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220727BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220727BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220727BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220727BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/08 B
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
F01N3/08 A
F01N3/24 B
F01N3/28 301C
(21)【出願番号】P 2019545957
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2018051076
(87)【国際公開番号】W WO2018154463
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チョン,シアオライ
(72)【発明者】
【氏名】チョードゥリー,マームーダ
(72)【発明者】
【氏名】バーク,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】永田 誠
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰治
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕基
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/154391(WO,A1)
【文献】特表2011-510899(JP,A)
【文献】特表2015-533343(JP,A)
【文献】特表2010-519038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、銅、及びそれらの組み合わせから選択される金属で促進された金属促進分子ふるいを含む、窒素酸化物(NO
x)の削減に効果がある選択的触媒還元(SCR)触媒であって、前記金属が前記金属促進分子ふるいの総質量に対して酸化物に基づき、
0.5~1.8質量%
の範囲の量で存在
し、及び前記分子ふるいがゼオライトである、ことを特徴とする選択的接触還元(SCR)触媒。
【請求項2】
前記金属が約1.5質量%以下の量で存在する、請求項
1に記載のSCR触媒。
【請求項3】
前記金属が銅である、請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項4】
前記分子ふるいが、8個の四面体原子の最大環サイズ及び二重6環(d6r)単位を有する小細孔分子ふるいである、請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトが、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有する、請求項
1~4の何れか1項に記載のSCR触媒。
【請求項6】
前記構造型がCHAである、請求項
5に記載のSCR触媒。
【請求項7】
前記分子ふるいが約5~約100のシリカ対アルミナ(SAR)のモル比を有する、請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項8】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後300℃で約60%以上のNO
x転化率を示し、前記熱エージング処理は、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を10%蒸気の存在下で循環させて行い、前記リーン/リッチエージングの循環は、5分間の空気、5分間のN
2、5分間の4%のH
2と残余分のN
2、及び5分間のN
2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返すものである、請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項9】
前記SCR触媒が、熱エージング処理後200℃で少なくとも約0.60g/L以上のNH
3貯蔵率を示し、前記熱エージング処理は、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を10%蒸気の存在下で循環させて行い、前記リーン/リッチエージングの循環は、5分間の空気、5分間のN
2、5分間の4%のH
2と残余分のN
2、及び5分間のN
2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返すものである、請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項10】
リーン燃焼ガソリンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NO
x)を削減するのに効果がある触媒物品であって、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、前記触媒組成物が請求項1から
9のいずれか一項に記載のSCR触媒を含む、触媒物品。
【請求項11】
前記基材担体がハニカム基材である、請求項
10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記ハニカム基材が金属又はセラミックである、請求項
11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記ハニカム基材担体が、通過流動基材又は壁流フィルターである、請求項
11に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記触媒組成物をウォッシュコートの形態で前記基材担体に施与し、前記ウォッシュコートが、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、又はそれらの組み合わせから選択される結合剤をさらに含む、請求項
10に記載の触媒物品。
【請求項15】
排気ガス処理システムであって、
排気ガス流を生成するリーン燃焼ガソリンエンジン;及び
前記リーン燃焼ガソリンエンジンの下流に位置し、前記排気ガス流と流体連通する触媒物品を含み、当該触媒物品が、前記排気ガス流からの窒素酸化物(NO
x)を削減するのに効果があり、当該触媒物品が、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、前記触媒組成物が、請求項1から
9のいずれか一項に記載のSCR触媒を含む、排気ガス処理システム。
【請求項16】
三元変換触媒(TWC)及びリーンNOxトラップ(LNT)のうち少なくとも一方を、前記リーン燃焼ガソリンエンジンの下流、かつ前記SCR触媒の上流位置にさらに含む、請求項
15に記載の排気ガス処理システム。
【請求項17】
前記TWC及び前記LNTの一方又は両方が密に結合した位置にある、請求項
16に記載の排気ガス処理システム。
【請求項18】
リーン燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、
前記排気ガス流を、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を有する触媒物品と接触させることを含み、前記触媒組成物が請求項1から
9のいずれか一項に記載のSCR触媒を含むことにより、前記排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が削減される、方法。
【請求項19】
三元変換触媒(TWC)及びリーンNO
xトラップ(LNT)のうち少なくとも一方を前記リーン燃焼ガソリンエンジンの下流、かつ前記SCR触媒の上流位置に含む1つ以上の触媒物品を、前記排気ガス流と接触させることをさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にガソリン排気ガス処理触媒、特にエンジン排気中のNOxを低減することができる触媒の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンを搭載した車両からの排気ガスは、典型的には1つ以上の三元変換(TWC)自動車触媒で処理される。これらは、化学量論的空気/燃料条件で、又はその近くで動作するエンジンの排気中の、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)汚染物質を削減するのに効果がある。化学量論的条件がもたらされる空気の燃料に対する正確な比率は、燃料中の炭素と水素の相対的比率と共に変化する。空気対燃料(A/F)比は、内燃エンジンなどにおける燃焼プロセスで存在する空気の燃料に対する質量比である。化学量論的A/F比によれば、ガソリンなどの炭化水素燃料が完全燃焼し、二酸化炭素(CO2)及び水が生ずる。よって符号λは、所与の燃料について特有のA/F比を化学量論的A/F比で除した結果を表すのに使用されるため、λ=1は、化学量論的混合気であり、λ>1は、燃料リーン混合気であり、λ<1は、燃料リッチ混合気である。
【0003】
電子式燃料噴射システム及び空気取り入れシステムを有する従来のガソリンエンジンは、リーン排気とリッチ排気との間を迅速かつ連続的に循環する、絶えず変化する空気燃料混合気を提供する。近年は燃費を改善するために、ガソリン燃料エンジンはリーン条件下で動作するように設計される。「リーン条件」とは、そのようなエンジンに供給される燃焼混合気中の燃料に対する空気の比を化学量論比を超えて維持し、結果として排気ガスが「リーン」となるようにすること、すなわち、排気ガスの酸素含有量が比較的高いことを指す。リーン燃焼ガソリン直接噴射(GDI)エンジンは、過剰な空気中で燃料の燃焼を実行することにより、温室効果ガス排出の低減に貢献することができる燃費向上効果を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーン燃焼ガソリンエンジンを搭載した車両からの排気ガスは、典型的にはTWC触媒で処理される。これは、リーン条件下で動作するエンジンの排気中のCO及びHC汚染物質を削減するのに効果がある。排出規制基準を満たすために、NOxの排出も低減しなければならない。しかしながら、TWC触媒は、ガソリンエンジンがリーン運転しているときのNOx排出の低減には効果がない。NOxを低減するために最も有望な技術のうちの2つは、アンモニア選択的接触還元(SCR)触媒とリーンNOxトラップ(LNT)である。リーン燃焼ガソリンエンジンに所定のSCR触媒を使用することは、そのような触媒が過渡的なリーン/リッチ条件下の高温で熱安定性を示すことが予想されるので、課題が示される。当該技術分野では、リーン燃焼ガソリンエンジンからのNOx排出を削減するのに効果があり、同時に十分な高温熱安定性も示すSCR触媒が継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、窒素酸化物(NOx)の削減に効果がある選択的接触還元(SCR)触媒であって、鉄、銅、及びそれらの組み合わせから選択される金属で促進された金属促進分子ふるいを含み、その金属が金属促進分子ふるいの総質量に対して酸化物に基づき2.6質量%以下の量で存在する、SCR触媒を提供する。分子ふるいへの金属装填量を低減すると、高温のリーン/リッチエージング後のSCR触媒の熱安定性を高めることができると判定された。所定の実施形態では、金属は、約2.0質量%以下、又は約1.8質量%以下、又は約1.5質量%以下の量で存在する。例えば、金属は、約0.5質量%~約2.5質量%、又は約0.5質量%~約1.8質量%の量で存在することができる。所定の実施形態では、金属は銅である。
【0006】
SCR触媒の分子ふるいは、例えば、8個の四面体原子の最大環サイズ及び二重6環(d6r)単位を有する小細孔の分子ふるいであってよい。いくつかの実施形態では、分子ふるいはゼオライト、例えばAEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有するゼオライトである。いくつかの実施形態では、構造型はCHAである。分子ふるいは、シリカ対アルミナのモル比(SAR)を、約5~約100などの様々な範囲で有することができる。
【0007】
所定の実施形態では、SCR触媒は、熱エージング処理後、300℃で約60%以上のNOx転化率を示す。この熱エージング処理は、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を10%の蒸気の存在下で循環させて行い、リーン/リッチエージングの循環は、5分間の空気、5分間のN2、5分間の4%のH2と残余分のN2、及び5分間のN2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返す。加えて、SCR触媒の所定の実施形態は、上記の熱エージング処理後、200℃で少なくとも約0.60g/L以上のNH3貯蔵率を示す。
【0008】
別の態様では、本発明は、リーン燃焼ガソリンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)を削減するのに効果がある触媒物品であって、その触媒物品が、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、その触媒組成物が本発明の任意の実施形態のSCR触媒を含む、触媒物品を提供する。例示的な基材担体には、例えば金属又はセラミックから構成されてよいハニカム基材が含まれる。例示的なハニカム基材担体には、通過流動基材又は壁流フィルターが含まれる。触媒組成物は、ウォッシュコートの形態で基材担体に施与することができ、ウォッシュコートは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、又はそれらの組み合わせから選択される結合剤などの更なる材料を含むことができる。
【0009】
なおさらに、本発明には、排気ガス流を生成するリーン燃焼ガソリンエンジンと、リーン燃焼ガソリンエンジンの下流に位置し、排気ガス流と流体連通する任意の本発明の実施形態の触媒物品とを含む、排気ガス処理システムが含まれる。排気ガス処理システムは、例えば、三元変換触媒(TWC)及びリーンNOxトラップ(LNT)のうち少なくとも一方を、リーン燃焼ガソリンエンジンの下流、かつSCR触媒の上流位置にさらに含むことができる(TWC及びLNTの一方又は両方が密に結合(close-coupled)した位置にある)。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、リーン燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、排気ガス流を触媒物品と接触させることを含み、その触媒物品は、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、その触媒組成物は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が削減されるように任意の本発明の実施形態のSCR触媒を含む、方法を提供する。
【0011】
本開示は、限定するものではないが、以下の実施形態を含む。
【0012】
実施形態1:鉄、銅、及びそれらの組み合わせから選択される金属で促進された金属促進分子ふるいを含み、窒素酸化物(NOx)の削減に効果がある選択的接触還元(SCR)触媒であって、その金属が金属促進分子ふるいの総質量に対して酸化物に基づき2.6質量%以下の量で存在する、選択的接触還元(SCR)触媒。
【0013】
実施形態2:金属が約2.0質量%以下の量で存在する、実施形態1に記載のSCR触媒。
【0014】
実施形態3:金属が約1.8質量%以下の量で存在する、実施形態1又は2に記載のSCR触媒。
【0015】
実施形態4:金属が約1.5質量%以下の量で存在する、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0016】
実施形態5:金属が約0.5質量%~約2.5質量%の量で存在する、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0017】
実施形態6:金属が約0.5質量%~約1.8質量%の量で存在する、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0018】
実施形態7:金属が銅である、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0019】
実施形態8:分子ふるいが、8個の四面体原子の最大環サイズ及び二重6環(d6r)単位を有する小細孔分子ふるいである、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0020】
実施形態9:分子ふるいがゼオライトである、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0021】
実施形態10:ゼオライトが、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有する、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0022】
実施形態11:構造型がCHAである、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0023】
実施形態12:分子ふるいが約5~約100のシリカ対アルミナ(SAR)のモル比を有する、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0024】
実施形態13:SCR触媒が、熱エージング処理後300℃で約60%以上のNOx転化率を示し、この熱エージング処理は、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を10%の蒸気の存在下で循環させて行い、リーン/リッチエージングの循環は、5分間の空気、5分間のN2、5分間の4%のH2と残余分のN2、及び5分間のN2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返すものである、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0025】
実施形態14:SCR触媒が、熱エージング処理後、200℃で少なくとも約0.60g/L以上のNH3貯蔵率を示し、この熱エージング処理は、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を10%の蒸気の存在下で循環させて行い、リーン/リッチエージングの循環は、5分間の空気、5分間のN2、5分間の4%のH2と残余分のN2、及び5分間のN2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返すものである、先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【0026】
実施形態15:リーン燃焼ガソリンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)を削減するのに効果がある触媒物品であって、その触媒物品が、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、その触媒組成物が先行の実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒を含む、触媒物品。
【0027】
実施形態16:基材担体がハニカム基材である、先行の実施形態のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0028】
実施形態17:ハニカム基材が金属又はセラミックである、先行の実施形態のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0029】
実施形態18:ハニカム基材担体が通過流動基材又は壁流フィルターである、先行の実施形態のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0030】
実施形態19:触媒組成物をウォッシュコートの形態で基材担体に施与し、ウォッシュコートが、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、又はそれらの組み合わせから選択される結合剤をさらに含む、先行の実施形態のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0031】
実施形態20:排気ガス処理システムであって、排気ガス流を生成するリーン燃焼ガソリンエンジン;及びリーン燃焼ガソリンエンジンの下流に位置し、排気ガス流と流体連通する触媒物品、を含み、その触媒物品が、排気ガス流からの窒素酸化物(NOx)を削減するのに効果があり、その触媒物品が、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、その触媒組成物が、先行する実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒を含む、排気ガス処理システム。
【0032】
実施形態21:三元変換触媒(TWC)及びリーンNOxトラップ(LNT)のうち少なくとも一方を、リーン燃焼ガソリンエンジンの下流、かつSCR触媒の上流位置にさらに含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0033】
実施形態22:TWC及びLNTの一方又は両方が密に結合した位置にある、先行する実施形態のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0034】
実施形態23:リーン燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、排気ガス流を触媒物品と接触させることを含み、その触媒物品は、基材担体と、その上に配置された触媒組成物を含み、その触媒組成物は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)が削減されるように先行する実施形態のいずれか一項に記載のSCR触媒を含む、方法。
【0035】
実施形態24:三元変換触媒(TWC)及びリーンNOxトラップ(LNT)のうち少なくとも一方を、リーン燃焼ガソリンエンジンの下流、かつSCR触媒の上流位置に含む1つ以上の触媒物品を、排気ガス流と接触させることをさらに含む、先行の実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
本開示におけるこれら及び他の特徴、態様、及び優位性は、以下の詳細な記述を、以下に簡単に記述する添付図面と併せて読むことから明らかとなる。本発明は、上記の実施形態の2、3、4又はより多い任意の組み合わせ、及び本開示に説明する2、3、4又はより多い特徴又は要素の任意の組み合わせを含み、そのような特徴又は要素が本明細書の具体的な実施形態の記述で明示的に組み合わされているか否かを問わない。本開示は、開示する発明の任意の区別可能な特徴又は要素を、その様々な態様及び実施形態のいずれにおいても、文脈が明らかに別段の意味を示す場合を除き、組み合わせ可能であることを意図していると見なされるように、全体論的に読まれることを意図している。本発明における他の態様及び優位性は以下の記述から明らかとなる。
【0037】
本発明の実施形態に関する理解を提供するため、添付図面を参照するが、これらは必ずしも等尺で描かれておらず、またこれらの図面において参照番号は本発明の例示的実施形態の構成要素を指す。これらの図面は単に模範例であり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の実施形態に関する理解を提供するため、添付図面を参照するが、これらは必ずしも等尺で描かれておらず、またこれらの図面において参照番号は本発明の例示的実施形態の構成要素を指す。これらの図面は単に模範例であり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0039】
【
図1】
図1Aは、本発明による触媒組成物を含み得るハニカム型基材の透視図である。
図1Bは、
図1Aに対して拡大し、
図1の担体の端面と平行な面に沿って取得した、
図1Aに示す複数のガス流通路の拡大図を示す、部分断面図である。
【
図2】
図2は、壁流フィルター基材の断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の触媒が利用される排出処理システムの実施形態の概略図を示す。
【
図4】
図4は、実施例に従って調製された試料の空気エージング及びリーン/リッチエージング後のBET表面積を示す棒グラフである。
【
図5】
図5は、実施例で説明するSCR触媒の着火試験結果をグラフで示す。
【
図6】
図6は、実施例で説明するSCR触媒のNH
3貯蔵能を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記述する前に、本発明は、以下の記述で説明する構成又は方法工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態及び、様々な手段による実施又は実行が可能である。
【0041】
本開示で使用する用語に関して、以下の定義を提供する。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別段の意味を示す場合を除き、複数形を含む。よって例えば、「触媒」への言及には、2つ以上の触媒の混合物などが含まれる。
【0043】
本明細書で使用する「削減する」という用語は、量の減少を意味し、「削減」は、任意の手法によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0044】
本明細書で使用する「ガソリンエンジン」という用語は、ガソリンで運転するように設計された火花点火式の内燃エンジンを指す。近年は燃費を改善するために、ガソリン燃料エンジンはリーン条件下で動作するように設計される。「リーン条件」とは、そのようなエンジンに供給される燃焼混合気中の燃料に対する空気の比を化学量論比を超えて維持し、結果として排気ガスが「リーン」となるようにすること、すなわち、排気ガスの酸素含有量が比較的高い(λ>1)ことを指す。例えば、リーン燃焼ガソリン直接噴射(GDI)エンジンは、過剰な空気中で燃料の燃焼を実行することにより、温室効果ガス排出の低減に貢献することができる燃費向上効果を提供する。1つ以上の実施形態では、エンジンは、化学量論的ガソリンエンジン又はリーン燃焼ガソリン直接噴射エンジンから選択される。
【0045】
本明細書で使用する「流」という用語は、固体又は液体の微粒子物質を含有し得る流動気体の任意の組合せを幅広く指す。「気体流」又は「排気ガス流」という用語は、気体の構成物質の流れ、例えば、エンジンの排気を意味し、取り込まれた非気体成分、例えば、液体小滴、固体微粒子などを含有し得る。エンジンの排気ガス流は典型的には、燃焼生成物、不完全燃焼の生成物、窒素の酸化物、可燃性の及び/又は炭素質の微粒子物質(煤煙)、及び未反応の酸素及び窒素をさらに含む。
【0046】
本明細書で使用する「耐火性金属酸化物支持体」及び「支持体」という用語は、下部の高表面積材料を指し、化合物又は元素は更にこの上に担持される。支持体粒子は典型的には、20Åよりも大きい細孔及び広い細孔分布を有する。本明細書で定義するように、そのような耐火性金属酸化物支持体は、分子ふるい、具体的にはゼオライトを除く。特有の実施形態では、高表面積耐火性金属酸化物支持体、例えば「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持材料を利用することができ、これらは典型的にはグラム当たり60平方メートル(「m2/g」)を超える、しばしば最大で約200m2/g又はそれ以上のBET表面積を示す。そのような活性アルミナは通常、アルミナのガンマ相とデルタ相の混合物であるが、かなりの量のイータ、カッパ、及びシータアルミナ相も含有し得る。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物は、所与の触媒中の触媒成分の少なくともいくつかの支持体として使用することができる。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、シリカ、チタニア、及び他の材料は、そのような用途に既知である。
【0047】
本明細書で使用する「BET表面積」という用語は、N2吸着によって表面積を判定するためのブルナウアー、エメット、テラーの方法を指すというその通常の意味を有する。細孔直径と細孔容積は、BET型のN2吸着又は脱着実験を使用して判定することもできる。
【0048】
本明細書で使用する「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価原子価状態を有し、一酸化炭素(CO)及び/又は水素などの還元剤と還元条件下で積極的に反応し、次いで酸素又は窒素酸化物などの酸化剤と酸化条件下で反応する実体を指す。酸素貯蔵成分の例には、希土類酸化物、特にセリア、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びそれらの混合物が含まれる。
【0049】
「卑金属」という用語は、一般に、空気及び湿気に曝されると比較的容易に酸化又は腐食する金属を指す。1つ以上の実施形態では、卑金属は、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、ストロンチウム(Sr)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の卑金属を含む。
【0050】
本明細書で使用する「白金族金属」又は「PGM」という用語は、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及びルテニウム、及びそれらの混合物を含む元素周期表で定義される1つ以上の化学元素を指す。
【0051】
促進剤金属の装填量が高い所定のSCR触媒は、リッチ/リーン循環条件下で乏しい熱安定性を示す。常に理論に束縛されるわけではないが、例えばCu及び/又はFe装填量が高いSCR触媒は、ゼオライト微細孔中のCu(II)及び/又はFe(III)カチオンが近接すると不安定になると考えられる。すなわち、高温でのリッチエージング条件下でカチオンが還元されて金属Cu及び/又は金属Feナノ粒子を形成すると考えられる。リーン条件下では、これらの金属Cu及び/又は金属Fe種は、サイト分離したCu及び/又はFeカチオンの代わりに凝集した形態でCuO及び/又はFe2O3に酸化される。その結果、ゼオライト構造は継続的にCu及び/又はFeカチオン種を失い、最終的に崩壊する。驚くべきことに、比較的低いCu及び/又はFe装填量を含む触媒は、特に高温(たとえば、850℃)で、リーン/リッチエージング下でより高い熱安定性を示すことがわかった。
【0052】
よって本発明の第一の態様の実施形態によれば、ガソリンエンジン排気ガスからのNOxを削減するのに効果がある触媒が提供され、触媒は、鉄、銅、及びそれらの組み合わせから選択される金属で促進された金属促進分子ふるいを含み、金属は、金属促進分子ふるいの総質量に対して酸化物に基づき2.6質量%以下の量で存在する。
【0053】
本明細書で使用する「選択的接触還元」(SCR)という用語は、窒素還元物を使用して窒素の酸化物を二窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用する「窒素酸化物」又は「NOx」という用語は、窒素の酸化物を言う。SCRプロセスは、窒素と水が形成される窒素酸化物のアンモニアとの接触還元を使用する:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準のSCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(遅いSCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(速いSCR反応)
【0054】
SCRプロセスで使用する触媒は、理想的には、広い範囲の使用温度条件にわたって、例えば、約200℃~約600℃以上まで、水熱条件下で、良好な触媒活性を維持することができるべきである。水熱条件は、実際にしばしば発生する。例えば粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である、煤煙フィルターの再生中などである。
【0055】
「分子ふるい」という用語は、ゼオライト及び他の骨格材料(例えば、同形置換材料)を指す。分子ふるいは、一般に四面体型サイトを含有し、実質的に均一な細孔分布を有する酸素イオンの広範な三次元ネットワークに基づく材料であり、平均細孔径は典型的には20Åほどである。細孔径は、環サイズによって定義される。1つ以上の実施形態によれば、骨格型によって分子ふるいを定義することにより、SAPO、ALPO及びMeAPO、Geシリケート、あらゆるシリカ、及び同じ骨格型を有する類似の材料などの、任意の及びあらゆるゼオライト又は同形骨格材料が含まれることを意図していることが理解されよう。
【0056】
一般に、分子ふるい、例えばゼオライトは、角共有のTO4四面体から構成される連通型3次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義され、ここで、TはAl、Si、又は任意にPである。アニオン性骨格の電荷を均衡させるカチオンは骨格酸素に緩やかに相関しており、残りの細孔容積は水分子で満たされる。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0057】
本明細書で使用する「ゼオライト」という用語は、ケイ素及びアルミニウム原子を含む分子ふるいの具体的な例を指す。ゼオライトは、ゼオライトの型及びゼオライト格子に含まれるカチオンの型及び量に応じて、直径が約3~10オングストロームのかなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。ゼオライト及び他の分子ふるいのシリカ対アルミナのモル比(SAR)は、広範囲にわたって変化することができるが、一般には2以上である。1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、約5から約250;約5から約200;約5から約100;及び約5から約50を含む、約2から約300の範囲のSARモル比を有する。1つ以上の具体的な実施形態では、分子ふるいは、約10から約200、約10から約100、約10から約75、約10から約60、及び約10から約50;約15から約100、約15から約75、約15から約60、及び約15から約50;約20から約100、約20から約75、約20から約60、又は約20から約50の範囲のSARモル比を有する。
【0058】
より具体的な実施形態では、アルミノシリケートゼオライト骨格型への言及は、骨格内で置換されたリン又は他の金属を含まない分子ふるいに材料を限定する。しかしながら、明確にすると、本明細書で使用する「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、ALPO、及びMeAPO材料などのアルミノフォスフェート材料を除き、より広い用語「ゼオライト」は、アルミノシリケート及びアルミノフォスフェートを含むことを意図している。「アルミノフォスフェート」という用語は、アルミニウム及びリン原子を含む分子ふるいの別の具体的な例を指す。アルミノフォスフェートは、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。
【0059】
1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、独立して、一般的な酸素原子により結合されて三次元ネットワークを形成するSiO4/AlO4四面体を含む。他の実施形態では、分子ふるいはSiO4/AlO4/PO4四面体を含む。1つ以上の実施形態の分子ふるいは、主に、(SiO4)/AlO4、又はSiO4/AlO4/PO4四面体の固いネットワークによって形成される空隙の幾何学形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子に関して6、8、10、又は12個の環原子から形成される。1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、6、8、10、及び12を含む12ほどの環サイズを含む。
【0060】
1つ以上の実施形態によれば、分子ふるいは、それによって構造が特定される骨格トポロジーに基づくことができる。典型的に、任意のゼオライトの骨格型、例えばABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、又はそれらの組み合わせなどの骨格型を使用することができる。
【0061】
1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、8環小細孔アルミノシリケートゼオライトを含む。本明細書で使用する「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい、例えば約3.8オングストローム程度の細孔開口部を指す。「8環」ゼオライトという語句は、8環の細孔開口部及び二重6環の二次構造単位を有し、二重6環構造単位の4環による連結から生じるケージ様構造を有するゼオライトを指す。1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子ふるいである。
【0062】
ゼオライトは、二次構造単位(SBU)と複合構造単位(CBU)で構成され、多くの異なる骨格構造に現れる。二次構造単位は最大16個の四面体原子を含有し、非キラルである。複合構造単位はアキラルである必要はなく、骨格全体の構造のために必ずしも使用できるとは限らない。例えば、ゼオライトのある群は、その骨格構造に単4環(s4r)複合構造単位を有する。4環では、「4」は四面体シリコンとアルミニウム原子の位置を示し、酸素原子は四面体原子の間に位置する。他の複合構造単位には、たとえば、単6環(s6r)単位、二重4環(d4r)単位、及び二重6環(d6r)単位が含まれる。d4r単位は、2つのs4r単位を結合して作成される。d6r単位は、2つのs6r単位をつなげて作られる。d6r単位には、12個の四面体原子がある。所定の実施形態で使用される例示的なゼオライト骨格型には、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、EMT、ERI、FAU、GME、IFY、IRN、JSR、KFI、LEV、LTA、LTL、LTN、MER、MOZ、MSO、MWF、MWW、NPT、OFF、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、UFI、及びWENが含まれる。所定の有利な実施形態では、ゼオライト骨格は、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI、及びそれらの組み合わせから選択される。他の具体的な実施形態では、分子ふるいは、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される骨格型を有する。なおさらなる具体的な実施形態では、分子ふるいは、CHA、AEI、及びAFXから選択される骨格型を有する。1つ以上の非常に具体的な実施形態では、分子ふるいはCHA骨格型を有する。
【0063】
ゼオライトCHA骨格型分子ふるいには、近似式(Ca,Na2,K2,Mg)Al2Si4O12・6H2O(例えば、水和カルシウムアルミニウムシリケートなど)のゼオライト群の天然のテクトシリケート鉱物が含まれる。ゼオライトCHA骨格型分子ふるいの3つの合成形態は、1973年にJohn Wiley&Sonsによって発行されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。Breckによって報告された3つの合成形態は、J.Chem.Soc.、第2822ページ(1956年)、Barrer et alに記述されているゼオライトK-G;英国特許第868,846号(1961年)に記述されているゼオライトD;及び米国特許第3,030,181号に記述されているゼオライトRであり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。ゼオライトCHA骨格型の別の合成形態であるSSZ-13の合成は、米国特許第4,544,538号に記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。CHA骨格型を有する分子ふるいの合成形態であるシリコアルミノホスフェート34(SAPO-34)の合成は、米国特許第4,440,871号及び第7,264,789号に記述されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。CHA骨格型を有するさらに別の合成分子ふるい、SAPO-44を作製する方法は、米国特許第6,162,415号に記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
上述のように、1つ以上の実施形態では、分子ふるいは、あらゆるアルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、MeAPSO、及びMeAPO組成物を含むことができる。これらには、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44、Ti-SAPO-34、及びCuSAPO-47が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用する「促進」という用語は、分子ふるいに固有の不純物とは対照的に、分子ふるい材料に意図的に添加される成分を指す。よって促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒と比較して触媒の活性を高めるために、意図的に添加される。アンモニアの存在下における窒素酸化物の選択的接触還元を促進するために、1つ以上の実施形態では、適した金属が独立して分子ふるいに交換される。1つ以上の実施形態によれば、分子ふるいは銅(Cu)及び/又は鉄(Fe)で促進される。具体的な実施形態では、分子ふるいは銅(Cu)で促進される。他の実施形態では、分子ふるいは銅(Cu)及び鉄(Fe)で促進される。なおさらなる実施形態では、分子ふるいは鉄(Fe)で促進される。
【0066】
驚くべきことに、促進剤金属の含有量が低いと、800℃以上、特に850℃以上の温度でのリーン/リッチエージング条件下で非常に安定した触媒が得られることがわかった。1つ以上の実施形態では、金属の酸化物として計算される、触媒の促進剤金属含有量は、金属促進分子ふるいの総質量に対して、2.6質量%以下の量で存在し、例えば金属が約2.5質量%以下、約2.3質量%以下、約1.8質量%以下、約1.5質量%以下、約1.2質量%以下、又は約1.0質量%以下の量で存在する実施形態がある。金属含有量の例示的な範囲には、約0.5質量%~約2.5質量%、又は約0.5質量%~約1.8質量%が含まれる。1つ以上の実施形態では、促進剤金属含有量は、揮発性のないことをベースとして報告される。
【0067】
所定の実施形態では、本発明の金属促進分子ふるいは、高温で、例えば、850℃で5時間、リーン/リッチ条件を循環させて(リーン/リッチエージング)、10%蒸気の存在下で行う熱エージング処理後に、驚くほど強い水熱安定性を示す。このリーン/リッチエージング循環は5分間の空気、5分間のN2、5分間の4%のH2と残余分のN2、及び5分間のN2からなる4つの工程をエージング期間に達するまで繰り返す。特に、本発明の実施形態は、上記のエージング処理後に驚くほど強いSCR性能及びNH3貯蔵性能を示すことが判定された。例えば、このようなエージング処理後、本発明の金属促進分子ふるいの所定の実施形態は、300℃で約60%以上(例えば、300℃で約65%以上、約70%以上、又は約75%以上)のNOx転化率をもたらす。なおさらに、そのようなエージング処理後、本発明の金属促進分子ふるいの所定の実施形態は、200℃で少なくとも約0.60g/L以上(例えば、200℃で約0.65g/L以上、約0.70g/L以上、又は約0.75g/L以上)のNH3貯蔵率をもたらす。
【0068】
基材
1つ以上の実施形態では、本発明の触媒組成物は、基材上に配置される。本明細書で使用する「基材」という用語は、触媒材料が典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置される、モノリス材料を意味する。ウォッシュコートは、触媒の所与の固形分(例えば、30~90質量%)を液体中に含有するスラリーを調製することにより形成され、このスラリーは次いで基材上に被覆され、乾燥してウォッシュコート層をもたらす。本明細書で使用する「ウォッシュコート」という用語は、当該技術における通常の意味を有しており、基材材料、例えば、ガス流の通路が処理されるのに十分な多孔性があるハニカム型担体部材等に施与される、薄く接着性のある触媒又は他の材料の被覆を意味する。
【0069】
本発明の金属促進分子ふるいを含有するウォッシュコートは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、又はそれらの組み合わせから選択される結合剤を任意に含むことができる。結合剤の装填量は、典型的には、ウォッシュコートの質量に対して約0.1~10質量%である。
【0070】
1つ以上の実施形態では、基材は、通過流動ハニカムモノリス又は微粒子フィルターの1つ以上から選択され、触媒材料はウォッシュコートとして基材に施与される。
【0071】
図1A及び1Bは、本明細書に記載の触媒組成物を被覆した通過流動基材の形態である例示的基材2を図示する。
図1Aを参照すると、例示的基材2は円筒形状及び円筒形外側表面4、上流側端面6、及び端面6と同一の対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された微細で平行なガス流通路10を複数有する。
図1Bで分かるとおり、流動通路10は壁12によって形成され、担体2を通って上流端面6から下流端面8へと延び、通路10は、例えばガス流などの流体の流動が担体2をそのガス流通路10経由で長軸方向に通過できるよう、障害物がない状態である。
図1Bでより容易に分かるとおり、壁12は、ガス流通路10が実質的に規則的な多角形を有するような寸法及び構成である。記載のとおり、望ましい場合には触媒組成物を複数の明確に異なる層に施与することができる。図示されている実施形態では、触媒組成物は担体部材の壁12に接着された別個の底部層14及び底部層14を覆って被覆された第2の別個の上部層16の両方からなる。本発明は、1つ以上(例えば2、3、又は4層)の触媒層を使用して実施してもよく、
図1Bに示す二層の実施形態に限定されない。
【0072】
1つ以上の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミック又は金属である。任意の適した基材を用いてよく、例えば、微細で平行なガス流通路が基材の入口面又は出口面から基材を通って延び、通路は流体の流動が通過できるように開放されている型のモノリス基材を用いてよい。通路は、その流体入口から流体出口に向かう本質的にまっすぐな道であり、通路を通過するガスが触媒材料と接触するように触媒材料がウォッシュコートとして被覆された壁によって画定される。モノリス基材の流動通路は薄壁のチャネル(channel)であり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形等の任意の適した断面形状及び寸法であってよい。このような構造は、断面の1平方インチ当たり約60~約900個、又はそれ以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含有し得る。
【0073】
セラミック基材は、任意の適した耐熱材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、シリコンニトライド、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどで作製されてよい。本発明の実施形態の触媒に有用な基材は、本来は金属であってもよく、1種以上の金属又は金属合金から構成されていてもよい。金属基材は任意の金属基材、例えば開口部又は「型抜き部分」をチャネル壁に有するものなどを含み得る。金属基材は様々な形状で、例えばペレット、波形シート又はモノリス形態などの形状で用いてよい。金属基材の具体的な例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的な又は主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含有し得、これら金属の合計は、有利には、各場合とも基材の質量に対して、少なくとも約15質量%の合金、例えば、約10~25質量%のクロム、約1~8質量%のアルミニウム及び約0~約20質量%のニッケルを含み得る。
【0074】
基材が微粒子フィルターである1つ以上の実施形態では、微粒子フィルターはガソリン微粒子フィルター又は煤煙フィルターから選択することができる。本明細書で使用する「微粒子フィルター」又は「煤煙フィルター」という用語は、排気ガス流から煤煙などの粒子状物質を除去するように設計されたフィルターを指す。微粒子フィルターには、ハニカム壁流フィルター、部分ろ過フィルター、金網フィルター、巻き繊維フィルター、焼結金属フィルター、発泡フィルターが含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施形態では、微粒子フィルターは触媒煤煙フィルター(CSF)である。触媒CSFは、例えば、NOをNO2に酸化するための本発明の触媒組成物で被覆された基材を含む。
【0075】
1つ以上の実施形態では、触媒材料を担持するのに有用な壁流フィルタ基材は、基材の長手方向軸に沿って延びる複数の微細で実質的に平行なガス流通路を有する。典型的には、各通路は基材本体の一端で塞がれ、互い違いになっている通路は反対側の端面で塞がれる。このようなモノリス基材は、1平方インチの断面あたり約900以上の流動通路(又は「セル」)を含有し得るが、はるかに少ないものを用いてもよい。例えば、基材は、1平方インチあたり、約7~600の、より通常は約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。本発明の実施形態で使用する多孔性壁流フィルターは、前述の要素が白金族金属をその上に含む又はその中に含有することから触媒することができる。触媒材料は、基材壁の入り口側に単独で、出口側に単独で、入り口と出口の両方に又は壁自身が、あらゆる、又は一部の触媒材料からなり得る。別の実施形態では、本発明は、基材の入り口及び/又は出口壁上に、1つ以上の触媒層及び1つ以上の触媒層の組み合わせを使用することを含み得る。
【0076】
図2で分かるとおり、例示の基材は複数の通路52を有する。通路はフィルター基材の内部壁53によって管状に閉塞される。基材は入口端部54と出口端部56を有する。互い違いになっている通路は、入口端部で入口プラグ58により、出口端部で出口プラグ60により塞がれて、入口54と出口56で逆の市松模様を形成する。ガス流62は、塞がれていないチャネル入口64を通って入り、出口プラグ60によって止められ、チャネル壁53(これは多孔性である)を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58のために壁の入口側に戻ることはできない。本発明で使用される多孔性壁流フィルターは、基材の壁が、その上に1つ以上の触媒材料を有することから、触媒することができる。
【0077】
排気ガス処理システム
本発明のさらなる態様は、排気ガス処理システムに関する。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムはガソリンエンジン、特にリーン燃焼ガソリンエンジン、及びエンジンの下流にある本発明の触媒組成物を含む。
【0078】
1つの例示的な排出処理システムを、排出処理システム20の概略図である
図3に図示する。記載のとおり、排出処理システムは、リーン燃焼ガソリンエンジンなどのエンジン22の下流にある連続的な複数の触媒成分を含むことができる。触媒成分のうち少なくとも1つが、本明細書で説明する本発明のSCR触媒となる。本発明の触媒組成物は、多数の更なる触媒材料と組み合わせてもよく、また更なる触媒材料と相対的に様々な位置に配置してもよい。
図3は5つの触媒成分24、26、28、30、32を連続的に図示しているが、触媒成分の総数は変動してもよく、5つの成分は単に一例である。
【0079】
表1は、限定することなく、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は排気管を介して次の触媒に接続され、エンジンが触媒Aの上流にあり、触媒Aは触媒Bの上流にあり、触媒Bは触媒Cの上流にあり、触媒Cは触媒Dの上流にあり、触媒Dは触媒E(存在する場合)の上流にあることに留意されたい。表中の構成要素A~Eへの言及は、
図3と同じ名称で相互参照することができる。
【0080】
表1に記載するTWC触媒は、エンジンの排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)汚染物質を削減するために従来使用され、及び所定の条件下で窒素酸化物(NOx)を酸化することができ、典型的には、酸素貯蔵成分(例えばセリア)及び/又は耐火性金属酸化物支持体(例えばアルミナ)上に担持された白金族金属(PGM)を含む、任意の触媒であってよい。TWC触媒は、支持体に含浸された卑金属成分も含むことができる。
【0081】
表1に記載するLNT触媒は、NOxトラップとして従来使用され、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeO2など)及び触媒NO酸化及び還元用の白金族金属(Pt及びRhなど)を含むNOx吸着剤組成物を含む、任意の触媒であってよい。
【0082】
表中のTWC-LNTへの言及は、TWC及びLNTの両方の機能を有する触媒組成物を指す(例えば、基材上に層状フォーマットの又は無作為混合フォーマットのいずれかでTWC及びLNT触媒組成物を有する)。
【0083】
表中のSCRへの言及は、本発明のSCR触媒組成物を含むことができるSCR触媒を指す。SCRoF(又はフィルター上のSCR)への言及は、本発明のSCR触媒組成物を含むことができる微粒子又は煤煙フィルター(例えば、壁流フィルター)を指す。SCR及びSCRoFの両方が存在する場合、一方又は両方が本発明のSCR触媒を含むことができ、又は触媒のうち1つが従来のSCR触媒(例えば、従来の金属装填量レベルを有するSCR触媒)を含んでもよい。
【0084】
表中のFWC(商標)(又は4元触媒)への言及は、TWC触媒と微粒子フィルター(例えば壁流フィルター)を組み合わせるBASF触媒の商品名を指す。
【0085】
表中のAMOxへの言及は、アンモニア酸化触媒を指し、これは、排気ガス処理システムから抜け出たアンモニアを除去するために、本発明のもう1つの実施形態の触媒の下流に設けることができる。具体的な実施形態では、AMOx触媒はPGM成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを備えたボトムコートと、SCR機能を備えたトップコートとを含み得る。
【0086】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、成分A、B、C、D、又はEのうち任意の1つ以上を、壁流フィルター、又は通過流動ハニカム基材などの微粒子フィルター上に配置することができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(密結合位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、車両本体の下の位置(床下位置、UF)に触媒組成物を更に有する。例えば、所定の実施形態では、TWC及びLNTの一方又は両方がCC位置にあり、残りの構成要素がUF位置にある。
【0087】
【0088】
エンジン排気処理の方法
本発明の別の態様は、ガソリンエンジン、特にリーン燃焼ガソリンエンジンの排気ガス流を処理する方法に関する。この方法は、本発明の1つ以上の実施形態による触媒をガソリンエンジンの下流に配置し、エンジン排気ガス流を触媒上に流すことを含むことができる。1つ以上の実施形態では、本方法は、上記のように更なる触媒成分をエンジンの下流に配置することをさらに含む。
【0089】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を記述する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を記述する前に、本発明は、以下の記述で説明する構成又は方法工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な手段で実施又は実行することができる。
【実施例】
【0090】
実施例1-比較例
CuO3.2%のCu-SSZ-13:機械的攪拌機と蒸気加熱機を備えた容器に、シリカ対アルミナ比が30であるNH4
+交換SSZ-13の懸濁液を添加した。容器の内容物を攪拌しながら60℃に加熱した。酢酸銅の溶液を反応混合物に添加した。固体をろ過し、脱イオン水で洗浄して風乾した。得られたCu-SSZ-13を空気中550℃で6時間焼成した。得られた生成物は、ICP分析によって判定したCuOに基づき3.2質量%の銅含有量を有した。
【0091】
実施例2
CuO2.4%のCu-SSZ-13:例1の調製手順に従い、ICP分析によって判定したCuOに基づき2.4質量%の銅含有量を有するCu-SSZ-13を得た。
【0092】
実施例3
CuO1.7%のCu-SSZ-13:例1の調製手順に従い、ICP分析によって判定したCuOに基づき1.7質量%の銅含有量を有するCu-SSZ-13を得た。
【0093】
実施例4
CuO1.1%のCu-SSZ-13:例1の調製手順に従い、ICP分析によって判定したCuOに基づき1.1質量%の同含有量を有するCu-SSZ-13を得た。
【0094】
実施例5
CuO0.6%のCu-SSZ-13:例1の調製手順に従い、ICP分析によって判定したCuOに基づき0.6質量%の銅含有量を有するCu-SSZ-13を得た。
【0095】
実施例6
CuO1.7%のCuSAPO-34:例3の調製手順及び前駆体としてのNH4
+-SAPO-34に従い、ICP分析によって判定したCuOに基づき1.7質量%の銅含有量のCuSAPO-34を得た。
【0096】
実施例7-エージングと試験
粉末試料は、石英管を取り付けた水平管炉内でエージングした。エージングは、850℃で5時間、空気の流れ(空気エージング)又はリーン/リッチ条件の循環(リーン/リッチエージング)のいずれかで10%の蒸気の存在下で実行した。リーン/リッチエージングの場合、エージングの循環は、5分間の空気、5分間のN2、5分間の4%のH2と残余分のN2、及び5分間のN2を含む;このような循環は、所望のエージング期間に達するまで繰り返される。
【0097】
図4は、850℃で5時間の空気エージング及びリーン/リッチエージング後の比較例1と実施例3との間のBET表面積の比較を提供する。比較例1は、ディーゼル用途に典型的な装填量である3.2%のCuOを含有した。例3は、比較例1よりも有意に低い1.7%のCuOを含有した。空気エージング条件下で、両実施例は、>550m
2/gのBET表面積を維持した。しかしながら、リーン/リッチエージング条件下では、BET表面積の有意な劣化が比較例1で観察された。対照的に、実施例3は、リーン/リッチエージング条件下で空気エージング試料に匹敵する表面積を維持した。表2は、リーン/リッチエージング後の異なるCuO装填量のCu-SSZ-13及びCuSAPO-34のBET表面積をまとめたものである。ガソリンエンジン(リーンGDIなど)用途に、より関連するリーン/リッチエージング条件下での高い熱安定性には、低いCuO装填量が重要であることが明確に示されている。表2のデータから分かるように、約2.0質量%未満又は約1.8質量%未満の銅装填量は、そのような銅装填量が利用される場合、BET表面積がエージング後に事実上変化しないため、特に有利である。
【0098】
【0099】
実施例8
3つのCu-CHA触媒スラリーを、セル密度400cpsi(1平方インチあたりのセル数)及び壁厚4milを有する1.0インチ(直径)×3.0インチ(長さ)の円筒モノリス基材に被覆した。3つの触媒は、以下の表3で説明するように、異なるCuO装填量を有した。被覆した基材を200℃の通過流動乾燥機でフラッシュ乾燥し、450℃で2時間焼成した。
【0100】
【0101】
3つのSCR触媒を、850℃で5時間、実施例7に記述の水平実験室反応器でリーン/リッチ条件下でエージングした。SCR性能及びNH3貯蔵能を、ガスマニホールド、ガスシリンダー、及びマスフローコントローラー、水ポンプ及び蒸発器、垂直管状炉、試料ホルダー、ラムダセンサー、熱電対、及びMKSマルチガスFT-IR分析器を備えた実験室反応器で評価した。2つの試験プロトコルは次のとおりであった:
i) SCR着火試験:500ppmのNO、550ppmのNH3、5%のH2O、5%のCO2、10%のO2と残余分のN2、空間速度(SV)=60Khr-1、T=150~490℃
ii) NH3貯蔵試験:吸着:500ppmのNH3、5%のH2O、5%のCO2、10%のO2、SV=60Khr-1、T=200℃;脱着:T=200~490℃
【0102】
SCR着火試験結果を
図5にプロットする。従来のCu3.2%のCHA触媒Aからは、300℃以上の温度で約40%の低いNOx転化率が得られ、SCR成分が所与のエージング条件下で実質的に分解されたことを示した。対照的に、銅含有量が低減された触媒B及びCは、同じエージング処理後、触媒Aを大幅に上回った。銅の装填量が最小である触媒のSCR活性は、最高のSCR活性をもたらした。このデータは、ガソリンSCR用途、特にリーン燃焼ガソリンエンジン用途では、CuOの装填量を低減することが望ましいことを示唆している。
【0103】
NH
3貯蔵試験の結果を
図6に示す。CuO装填量を低減した2つの触媒は、温度がプログラムされた脱着プロセスで同等のNH
3貯蔵能を示した。触媒Aは、CuOの装填量が高いものの、分解のためにはるかに低い貯蔵能を示した。
【0104】
本明細書を通して「一実施形態」、「所定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記述される特有の特徴、構造、材料、又は特性が、本発明の実施形態の少なくとも1つに含まれることを意味する。よって、本明細書全体の様々な場所での「1つ以上の実施形態」、「所定の実施形態」、「一実施形態」又は「実施形態」などの語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特有の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態で、任意の適した様態で組み合わせてよい。
【0105】
本明細書における本発明は、特有の実施形態を参照して記述しているが、これらの実施形態は本発明の原理及び施与例を単に例示するものであることを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して様々な変更及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある変更及び変形を含むことが意図されている。