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特許7112182電動車両、電動車両の制御方法、コンピュータプログラムおよび電動補助歩行車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】電動車両、電動車両の制御方法、コンピュータプログラムおよび電動補助歩行車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
A61H3/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017083222
(22)【出願日】2017-04-19
(65)【公開番号】P2018175676
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2019-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】三竿 太志郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩明
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】安井 寿儀
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187485(JP,A)
【文献】特開2017-70744(JP,A)
【文献】特開平5-168662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体の一部を支持する身体支持部と、
前記身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を前記身体支持部に設けられた被検知体に基づき、生成する検出部と、
前記検出信号に基づき、車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御する制御部と、
を備え、
前記身体支持部は、一端が本体フレームに回動可能に取り付けられた複数のアーム部材の他端に固定され、
前記身体支持部は、通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、
前記身体支持部は、前記複数のアーム部材の回動より、前記通常位置とは異なる退避位置に移動させられ、前記退避位置において前記シート部に前記使用者が着座することを許容し、
前記複数のアーム部材の前記一端は、前記本体フレームにおいて前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側の箇所に取り付けられており、
前記退避位置は、前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側であり、
前記身体支持部は、前記通常位置において、前記荷重に応じて、前記検出部を含む前記本体フレームに対して相対的に移動可能であり、
前記検出信号は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは前記身体支持部との距離を特定する情報、または前記距離が一定値以下になったかの情報を含み、前記身体支持部が前記退避位置にあるときは前記距離が一定値以下になっていないことを示す情報を含み、
前記制御部は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは、前記距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が前記一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行い、
前記制御部は、前記身体支持部が前記退避位置に移動させられたときは、前記ブレーキを作動するように制御を行う
電動車両。
【請求項2】
前記身体支持部にかかる荷重は、電動車両の設置面に垂直な方向に前記使用者が付与する荷重である
請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記身体支持部と前記本体フレームとの間に、前記身体支持部を本体フレームから離れる方向に付勢する付勢部材
をさらに備えた請求項1または2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記検出部は、前記本体フレームに設置された近接センサであり、
前記制御部は、前記近接センサが前記被検知体を検知した場合に、前記ブレーキを解除し、前記被検知体を検知しない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行う
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記電動車両の傾きを検出し、前記傾きに応じて、作動させるブレーキの種類を切り換える
請求項1ないしのいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記電動車両の傾きの大きさが一定値以上の場合に、逆転ブレーキを作動させ、前記電動車両の傾きの大きさが前記一定値より小さい場合に、発電ブレーキを作動させるように制御を行う
請求項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記制御部は、機械的ブレーキが作動しているときには、発電ブレーキを作動させるように制御を行う
請求項に記載の電動車両。
【請求項8】
使用者の身体の一部を支持する身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を前記身体支持部に設けられた被検知体に基づき検出部が生成し、
前記検出信号に基づき、車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御し、
前記身体支持部は、一端が本体フレームに回動可能に取り付けられた複数のアーム部材の他端に固定され、
前記身体支持部は、通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、
前記身体支持部は、前記複数のアーム部材の回動より、前記通常位置とは異なる退避位置に移動させられ、前記退避位置において、前記シート部に前記使用者が着座することを許容し、
前記複数のアーム部材の前記一端は、前記本体フレームにおいて前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側の箇所に取り付けられており、
前記退避位置は、前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側であり、
前記身体支持部は、前記通常位置において、前記荷重に応じて、前記検出部を含む前記本体フレームに対して相対的に移動可能であり、
前記検出信号は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは前記身体支持部との距離を特定する情報、または前記距離が一定値以下になったかの情報を含み、前記身体支持部が前記退避位置にあるときは前記距離が一定値以下になっていないことを示す情報を含み、
前記身体支持部が前記通常位置にあるときは、前記距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が前記一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行い、
前記身体支持部が前記退避位置に移動させられたときに、前記ブレーキを作動するように制御を行う
電動車両の制御方法。
【請求項9】
電動車両において、使用者の身体の一部を支持する身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を、前記身体支持部に設けられた被検知体に基づき生成する検出部から前記検出信号を取得するステップと、
前記検出信号に基づき、前記電動車両における車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御するステップと
をコンピュータに実行させ、
前記身体支持部は、一端が本体フレームに回動可能に取り付けられた複数のアーム部材の他端に固定され、
前記身体支持部は、通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、
前記身体支持部は、前記複数のアーム部材の回動より、前記通常位置とは異なる退避位置に移動させられ、前記退避位置において、前記シート部に前記使用者が着座することを許容し、
前記複数のアーム部材の前記一端は、前記本体フレームにおいて前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側の箇所に取り付けられており、
前記退避位置は、前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側であり、
前記身体支持部は、前記通常位置において、前記荷重に応じて、前記検出部を含む前記本体フレームに対して相対的に移動可能であり、
前記検出信号は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは前記身体支持部との距離を特定する情報、または前記距離が一定値以下になったかの情報を含み、前記身体支持部が前記退避位置にあるときは前記距離が一定値以下になっていないことを示す情報を含み、
前記ブレーキの作動および解除を制御する前記ステップは、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは、前記距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が前記一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行い、前記身体支持部が前記退避位置に移動させられたときに、前記ブレーキを作動するように制御を行う
コンピュータプログラム。
【請求項10】
車輪を設けた本体フレームと、
使用者の身体の一部を支持し、通常位置において前記使用者が付与する荷重に応じて前記本体フレームに対して相対的に移動可能に設けられた身体支持部と、
前記本体フレームに設けられ、前記身体支持部にかかる荷重に応じて、前記身体支持部との距離に関する検出信号を生成する検出部と、
前記検出信号に基づき、前記車輪に対するブレーキの作動および解除を制御し、前記身体支持部との距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動する制御部と、
を備え、
前記身体支持部は、一端が前記本体フレームに回動可能に取り付けられた複数のアーム部材の他端に固定され、
前記身体支持部は、前記通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、
前記身体支持部は、前記複数のアーム部材の回動より、前記通常位置とは異なる退避位置に移動させられ、前記退避位置において、前記シート部に前記使用者が着座することを許容し、
前記複数のアーム部材の前記一端は、前記本体フレームにおいて前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側の箇所に取り付けられており、
前記退避位置は、前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側であり、
前記検出信号は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは前記身体支持部との距離を特定する情報、または前記距離が一定値以下になったかの情報を含み、前記身体支持部が前記退避位置にあるときは前記距離が一定値以下になっていないことを示す情報を含み、
前記制御部は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときは、前記距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が前記一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行い、前記身体支持部が前記退避位置に移動させられたときに、前記ブレーキを作動するように制御を行う、
電動補助歩行車。
【請求項11】
使用者の身体の一部を支持する身体支持部と、
前記身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を前記身体支持部に設けられた被検知体に基づき生成する、本体フレームに設けられた検出部と、
前記検出信号に基づき、車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御する制御部と、
を備え、
前記身体支持部は、一端が前記本体フレームに回動可能に取り付けられた複数のアーム部材の他端に固定され、
前記身体支持部は、通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、
前記身体支持部は、前記複数のアーム部材の回動により、前記通常位置とは異なる退避位置に移動させられ、前記退避位置において前記シート部に前記使用者が着座することを許容し、
前記複数のアーム部材の前記一端は、前記本体フレームにおいて前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側の箇所に取り付けられており、
前記退避位置は、前記使用者が歩行時に前記身体支持部に前記荷重をかけるときに前記使用者が向く向きと同じ側であり、
前記検出部は、前記身体支持部が前記通常位置にあるときには、前記身体支持部にかかる荷重または前記身体支持部への前記身体の接触に応じて前記ブレーキを解除または前記ブレーキを作動させることを示す検知信号を生成し、前記制御部は、前記検知信号に基づき、前記ブレーキを解除または前記ブレーキを作動させ、
前記検出部は、前記身体支持部が前記退避位置に移動させられたときには、前記ブレーキを作動させることを示す検知信号を生成し、前記制御部は、前記検知信号に基づき、前記ブレーキを作動させ、
前記制御部は、前記電動車両の傾きを検出し、前記電動車両の傾きの大きさが一定値以上の場合に、逆転ブレーキを作動させ、前記電動車両の傾きの大きさが前記一定値より小さい場合に、発電ブレーキを作動させるように制御を行い、前記制御部は、機械的ブレーキが作動しているときには、発電ブレーキを作動させるように制御を行う
電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両、電動車両の制御方法、コンピュータプログラムおよび電動補助歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老人や脚力の弱い人の歩行を補助するために、電動モータ付き歩行補助車(電動補助歩行車)と呼ばれる電動車両が知られている。電動補助歩行車は、歩行時に歩行者(使用者)と一体となって使用され、使用者により与えられる操作力では不足する分の力を発生させるように車輪のモータを駆動する。これにより、使用者の歩行をアシストする。使用者は、電動補助歩行車によって発生させられた力を利用することで、脚力が弱くても、容易に歩行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-187485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動補助歩行車は、使用者の意図に反して(例えば誤動作などで)動き出さない状態にあることが好ましい。例えば、電動補助歩行車は、外出先で使用者の椅子の代用として用いられることもある。使用者が着座する際には、着座前に車体が停止した状態にあり、かつ動き出さない状態にあることが好ましい。また、下りの坂道の途中で使用者が何らかの事由で両手を離した場合には、電動補助歩行車が坂道を下っていかないようにすることが望ましい。
【0005】
本発明は、使用者の意図に反して電動車両が移動しないようにした電動車両、電動車両の制御方法、およびコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動車両は、使用者の身体の一部を支持する身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を生成する検出部と、前記検出信号に基づき、車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の電動車両において、前記身体支持部にかかる荷重は、電動車両の設置面に垂直な方向に前記使用者が付与する荷重である。
【0008】
本発明の電動車両において、前記身体支持部は、前記荷重に応じて、前記検出部を含む本体フレームに対して相対的に移動可能であり、前記検出信号は、前記身体支持部との距離を特定する情報、または前記距離が一定値以下になったかの情報を含み、前記制御部は、前記距離が一定値以下になった場合に、前記ブレーキを解除し、前記距離が前記一定値以下になっていない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行う。
【0009】
本発明の電動車両において、前記身体支持部と前記本体フレームとの間に、前記身体支持部を本体フレームから離れる方向に付勢する付勢部材をさらに備える。
【0010】
本発明の電動車両において、前記検出部は、前記本体フレームに設置された近接センサであり、前記身体支持部には、被検知体が設置されており、前記制御部は、前記近接センサが前記被検知体を検知した場合に、前記ブレーキを解除し、前記被検知体を検知しない場合に、前記ブレーキを作動するように制御を行う。
【0011】
本発明の電動車両において、前記身体支持部は、通常位置において電動車両のシート部に前記使用者が着座することを阻害し、前記通常位置とは異なる退避位置において、前記シート部に前記使用者が着座することを許容する。
【0012】
本発明の電動車両において、前記制御部は、前記電動車両の傾きを検出し、前記傾きに応じて、作動させるブレーキの種類を切り換える。
【0013】
本発明の電動車両において、前記制御部は、前記電動車両の傾きの大きさが一定値以上の場合に、逆転ブレーキを作動させ、前記電動車両の傾きの大きさが前記一定値より小さい場合に、発電ブレーキを作動させるように制御を行う。
【0014】
本発明の電動車両の制御方法は、使用者の身体の一部を支持する身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を生成し、前記検出信号に基づき、車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御する。
【0015】
本発明のコンピュータプログラムは、電動車両において使用者の身体の一部を支持する身体支持部にかかる荷重、または前記身体支持部への前記身体の接触に応じた検出信号を受信するステップと、前記検出信号に基づき、前記電動車両における車輪または無限軌道に対するブレーキの作動および解除を制御するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用者の意図に反して電動車両が移動しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る電動車両の一例として電動補助歩行車を模式的に示す斜視図。
図2図1の歩行車の側面図。
図3】支持パッドを跳ね上げた状態を示す図。
図4】支持パッドとハンドルとの間に設けられた検出機構の詳細構成を示す図。
図5】近接センサの検出信号の一例を表すグラフを示す図。
図6図1の歩行車に搭載される制御システムおよび周辺構成の一例を示す図。
図7】歩行車の傾きに応じたブレーキ制御の例を示す図。
図8】検出機構の別の構成例を示す図。
図9】センサの検出信号を利用して、歩行車の3つの状態を区別する例を示す図。
図10】本実施形態に係る制御部による動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付し、それらについての繰り返しの説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両の一例として電動補助歩行車(以下、歩行車と呼ぶ)100を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の歩行車100の側面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、歩行車100は、本体フレーム11と、本体フレーム11に設けられた一対の前輪12および一対の後輪13と、本体フレーム11に設けられた支持パッド(身体支持部)14と、を備えている。歩行車100は、老人や脚力の弱い人の歩行を補助するために利用される。使用者は、歩行車100の使用時、支持パッド14に前腕や肘を載せて、支持パッド14に体重(荷重)をかけた状態で、ハンドルバー15とブレーキレバー16をつかみながら、歩行動作を行う。歩行車100は、使用者により与えられる力では不足する分の力を発生させるように後輪13に連結したモータ20を駆動することで、歩行車100を自立走行させ、これにより、歩行のアシスト制御を行う。図1の歩行車には、このようなアシスト制御を実行するための制御システム(後述する図6参照)が搭載されている。以下、図1の歩行車100についてさらに詳細に説明する。
【0021】
本体フレーム11は、歩行車100の設置面に垂直な方向から所定の角度だけ傾斜された一対の支持フレーム21を備えている。支持フレーム21は、一例として、パイプ状部材により構成される。支持フレーム21の下端側に、一対の下段フレーム51が水平に配設されている。下段フレーム51の前端側には、一対の前輪12が取り付けられている。下段フレーム51の後端側には、一対のリンク機構55が設けられている。
【0022】
一対の下段フレーム51の上方に、一対の上段フレーム54が配設されている。上段フレーム54の後端側には、一対の後輪フレーム57の一端側が、軸56を介して回動可能に結合されている。後輪フレーム57の他端側には、一対の後輪13がそれぞれ設けられている。一対の後輪13には、それぞれ対応する後輪13を駆動する一対のモータ20が連結されている。モータ20は、サーボモータ、ステッピングモータ、ACモータ、DCモータ等、任意のモータを用いることができ、さらに減速機を一体に形成されたものを用いてもよい。
【0023】
一対の支持フレーム21の上端部には、それぞれ一対のハンドル24が設けられている。一対のハンドル24は、設置面に対して概ね水平であり、一例として、パイプ状部材により構成される。一対のハンドル24には、着座時に使用者が姿勢を安定させるためにつかまるグリップ部23(図2参照)がそれぞれ設けられている。また、一対のハンドル24の前方側には、ハンドル24と一体に、パイプ状のハンドルバー15が形成されている。ハンドルバー15の一端は、一対のハンドル24のうちの一方に、ハンドルバー15の他端は、他方のハンドル24に結合されている。なお、ハンドルバー15が、ハンドル24とは別の素材により構成されてもよい。
【0024】
一対の後輪13の外周には、機械的に接触可能な一対のブレーキシュー25(図1において省略、図2参照)が設けられている。ブレーキシュー25は、本体フレーム11内に配設されたブレーキワイヤー(以下、ワイヤー)の一端に接続され、ワイヤーの他端は、ハンドルバー15の両側に設けられた一対のブレーキユニット61のワイヤー接続機構に連結させられている。なお、ワイヤーは本体フレーム11内に格納されているとするが、ワイヤーを本体フレームの外側に配設して、外観上、使用者から見えるような構成にしてもよい。
【0025】
ハンドルバー15の前下方向に、ハンドルバー15に対向するようにして、ブレーキレバー16が配置されている。ブレーキレバー16の両端部はそれぞれ、一対のブレーキユニット61に連結されている。ブレーキレバー16の両端部は、巻きばね等の付勢手段を介して、ブレーキユニット61に取り付けられている。使用者は、ブレーキレバー16を手前に(図2の矢印R1の方向に)引くことで、ワイヤアクションにより、機械的なブレーキをかけることができる。すなわち、ブレーキレバー16の操作により、ブレーキシュー25を制御できる。
【0026】
例えば、使用者は、ブレーキレバー16を手前側に(ハンドルバー15に近づける方向に)ブレーキ作動位置まで引く。ブレーキレバー16と連結されたワイヤーのアクションによって、ブレーキシュー25が移動し、後輪13の外周を押圧する。これによって、機械的なブレーキが行われる。使用者がブレーキレバー16から手を離すと、ブレーキレバー16は元の位置(通常位置)に戻る。これに伴って、ブレーキシュー25も後輪13から離れ機械的なブレーキが解除される。また、ブレーキレバー16は矢印R1の反対方向(下側)に降ろすことができるようになっている。ブレーキレバー16をパーキング位置まで降ろすことで、ワイヤアクションを介して、ブレーキシュー25で後輪13を押圧した状態を維持するパーキングブレーキがかけられる。また、ブレーキレバー16が、本体フレーム11内の配線を介して、ユーザIF基板(図6参照)に電気的に接続されてもよい。この場合、ブレーキレバー16またはブレーキユニット61にはブレーキスイッチが取り付けられており、ブレーキレバー16の状態(ブレーキレバー16が通常位置にあるのか、ブレーキ作動位置にあるのか、パーキング位置にあるのかなど)をユーザIF基板に通知できる。
【0027】
一対のハンドル24の上方に、一対のハンドル24にまたがるようにして、支持パッド14が搭載されている。支持パッド14は、使用者の身体の一部を支持する身体支持部の一形態である。本実施形態では、使用者の前腕または肘またはこれらの両方を支持する使用形態を想定する。ただし、あご、手、または胸など、別の部位を支持する使用形態も可能である。
【0028】
ハンドル24と支持パッド14との間には、使用者により歩行車100が歩行に使用されているかを検出するための検出機構71が設けられている。具体的には、検出機構71は、支持パッド14に使用者から荷重(体重)がかけられているか、または使用者が支持パッド14に接触しているかを検出する。検出機構71の詳細は後述する。支持パッド14の形状は、一例として馬蹄状であるが、これに限定されず、他の任意の形状でもよい。支持パッド14は、一例として、スポンジまたはゴム製素材のようなクッション材を、木板または樹脂板などの板材の上に置き、樹脂性や布製の任意の被覆材で被覆したものとして構成される。ただし、この構成に限定されず、他の任意の構成でもよい。
【0029】
支持パッド14の下面の左右両側には、一対のアーム部材26の一端側が、固定されている。アーム部材26の他端側は、一対のハンドルバー15の外側にそれぞれ回動可能に取り付けられている。使用者は、支持パッド14を上方に押し上げる(跳ね上げる)ことで、支持パッド14が、図2の矢印R2の方向に回動し、所定位置(退避位置)で固定される。図3に、回動後の状態を示す。シート部37上には、使用者の上半身を収容する空間が確保される。この状態で、使用者は、一対のグリップ部23を両手でつかみながら、支持パッド14を背中側にして、シート部37に着座できる。グリップ部23をつかむことで、使用者は、着座の際、自身の姿勢を安定させることができる。このように、支持パッド14は、押し上げられる前の位置(通常位置)において歩行車のシート部37に使用者が着座することを阻害し、押し上げられた後の位置(退避位置)において、シート部37に使用者が着座することを許容する。
【0030】
ここでは、使用者が手動で支持パッド14を押し上げる構成を示したが、別の例として、図示しないロック機構を設け、ロック機構により固定を解除することで、自動的に支持パッド14が押し上げられる構成でもよい。または、アーム部材26を回動させる電動機構(モータ等)を設け、電動機構をスイッチ起動により作動させることで、支持パッド14を押し上げる構成でもよい。
【0031】
一対の上段フレーム54の間には、収容部27(図2参照)が吊り下げられるように設けられている。収容部27は、上方が開口した袋形状を有する。収容部27は、樹脂性でもよく、布製であってもよい。収容部27の蓋部として、上述した着座用のシート部37が設けられている。収容部27内には、後述する制御システム(図6参照)におけるメイン制御基板81、ユーザIF基板82、バッテリ87およびスピーカ85などが設置されている。
【0032】
収容部27の後ろ側に、一対の上段フレーム54から下方向に延在したレバー28が設けられている。レバー28は、使用者がレバー28を脚で踏みつけることが可能な位置に配設されている。使用者がレバー28を下げることで一対の後輪フレーム57および一対の後輪13が、一対の前輪12に近づくようにリンク機構55が折り畳まれる。その結果、歩行車100を折畳むことができる。
【0033】
図4は、検出機構71の詳細構成を示す図である。図4の上には、使用者が支持パッド14に荷重を加えていない状態、図4の下には、使用者が支持パッド14に荷重を加えた状態が示される。
【0034】
図4の上に示すように、一対のハンドル24の一方のハンドル24内に、磁石(被検知体)77を非接触で検知する近接センサ(検出部)72が固定設置されている。近接センサ72は、本体フレーム11内の配線を介して、後述するユーザIF基板(図6参照)に接続されている。近接センサ72として、例えば、一定値(閾値)以上の磁場の強さでオン(ハイレベルまたは導通)の信号を出力し、一定値未満の磁場の強さに対してはオフ(ローレベルまたは絶縁)の信号を出力するホールICなどを用いることができるが、これに限定されない。オンとオフの関係は逆でもかまわない。ただし、一定値以上の磁場の強さで導通の信号を出力する場合、信号線が断線した時にブレーキがかかるため安心である。なお、磁石と近接センサの位置関係は逆でもかまわない。
【0035】
支持パッド14の左右両側下部には、前後方向(図4の紙面に沿って左右方向)に延在するように、一対の支持部材73が取り付けられている。左右方向(図4の紙面に垂直な方向)における支持部材73の幅は、ハンドル24またはグリップ部23と同程度か、これより少し広いまたは狭いものとするが、これに限定されない。支持部材73は、支持パッド14が使用者により荷重をかけられたときに(例えば、設置面に対して垂直な方向に荷重をかけられたときに)、支持部材73が下方へ移動し、ハンドル24(グリップ部23を含む)へ押さえつけられる。支持パッド14は、支持部材73の厚みに応じた位置で止まる。
【0036】
一対の支持部材73の前端側の内部には、上下方向に貫通する空隙部が形成されている。この空隙部内に、上下方向へ付勢力を有するばね(付勢部材)74が配置されている。ばね74の種類は、一例として巻きばねであるが、他の任意の構成でもよい。また、ばね以外の付勢部材を用いてもよい。ばね74の上部は、任意の保護部材75を介して支持パッド14に固定されている。ばね74の下部には、キャップ76がかぶせられている。ばね74の下部は、支持パッド14に荷重がかけられていない状態では、支持部材73の下面から突出して、キャップ76を介して、ハンドル24の上面に接触している。この状態で、支持パッド14に荷重をかけると、はね74が縮んで、支持部材73の下面から突出していた部分が、支持部材73内の空隙部に収まることで、支持パッド14がハンドル24側に移動し、支持部材73の下面がハンドル24およびグリップ部23に押圧される。なお、キャップ76および保護部材75は、一例として樹脂性であるが、これに限定されない。
【0037】
一対の支持部材73の一方(近接センサ72が設置されたハンドルと同じ側の支持部材)の内部には、磁石77が設置されている。磁石77の形状は、矩形、円柱など、何でもかまわない。磁石77の位置は、少なくとも、支持パッド14に荷重がかけられていない状態では、近接センサ72が磁石77を検知できず、支持パッド14に荷重がかけられた状態では、近接センサ72が磁石を検知できる必要がある。この条件を満たす限り、磁石の位置および磁力は、任意でよい。ただし、荷重がかけられていない状態でも、走行中の振動などで支持パッド14がハンドル24に接近する可能性があるため、それを誤検知しないように構成する。
【0038】
なお、磁石の磁力は、使用者の携帯品や装飾品等に通常用いられ得る磁石よりも大きいことが望ましい。これにより、近接センサ72が磁石から検知外の範囲に離れている場合(例えば支持パッド14が押し上げられた状態のとき)に、使用者が近接センサ72に接近することで、近接センサ72が誤検知するのを防止できる。
【0039】
以下、図4を用いて、支持パッド14に使用者が荷重をかける際の動作を説明する。図4の上に示すように、使用者が支持パッド14に荷重を加える前では、ばね74の付勢力が、支持パッド14の重量よりも大きいため、磁石77と近接センサ72は互いに離れた状態である。この状態では、近接センサ72は、磁石77を検知せず、オフ(ローレベル)の検出信号を生成および出力する。また、支持パッド14を押し上げた状態(図3参照)のときも同様に、近接センサ72は、磁石77を検知しないため、オフの検出信号を生成および出力する。
【0040】
一方、図4の下に示すように、使用者が支持パッド14に荷重を加えた状態では、使用者が与える荷重と支持パッド14の重量との合計が、ばね74の付勢力よりも大きくなるため、ばね74が縮んで、磁石77と近接センサ72との距離が近くなる。磁石77との距離が一定値以下になると、つまり、磁石77の移動量(すなわち支持パッド14の移動量)が一定値以上になると、近接センサ72は、磁石77(すなわち支持パッド14)を検知する。近接センサ72は磁石77を検知すると、オン(ハイレベル)の検出信号を生成および出力する。
【0041】
近接センサ72の検知信号は、図示しない配線を介して、後述するユーザIF基板(図6参照)に入力される。
【0042】
図5に近接センサの検出信号の一例のグラフを示す。時刻t0では、支持パッド14に荷重がかけられた状態であり、近接センサ72の検出信号はオン(ハイレベル)である。その後の時点t1で、使用者が支持パッド14から離れたため、支持パッド14には荷重がかけられていない状態となり、近接センサ72の検出信号がオフ(ローレベル)に変化している。
【0043】
本実施形態の制御部(後述する図6参照)は、近接センサ72の検出信号(出力信号)に応じて、ブレーキの作動および解除を制御することを特徴の1つとしている。詳細は後述する。
【0044】
図6は、歩行車100に搭載される制御システムおよび周辺構成の一例を示す図である。図6の制御システムは、メイン制御基板81、ユーザIF(InterFace)基板82、操作パネル83、調整パネル84、スピーカ85、バッテリ87およびモータ(右モータ、左モータ)20を備えている。モータ20は、図1に示したモータ20に対応する。メイン制御基板81、ユーザIF基板82、スピーカ85およびバッテリ87は、一例として収容部27内に配置されるが、これらのうちの一部または全部が、別の場所に配置されてもよい。メイン制御基板81またはユーザIF基板82またはこれらの両方に時計(図示せず)が設けられていてもよい。
【0045】
バッテリ87は、モータ20、メイン制御基板81、ユーザIF基板82等の各要素に電力を供給するものである。バッテリ87は、充放電可能な電池(2次電池)であるが、これに限定されない。
【0046】
操作パネル83は、歩行車100の電源オンおよび電源オフの設定、音声音量の設定などを、使用者が手動で行うパネルである。調整パネル84は、アシスト制御モードのオンおよびオフの設定や、最高速度の調整、ブレーキの強さの調整などを行うためのパネルである。操作パネル83および調整パネル84は、一例として液晶タッチパネルにより構成されるが、ボタン式など、他の任意の構成でもよい。操作パネル83および調整パネル84は、歩行車100の任意の箇所(使用者が操作しやすい箇所)に設けられる。操作パネル83に近接センサ72をオフに設定できる手段を備えることもできる。近接センサ72をオフにすることで、支持パッド14を押し上げた状態で、アシスト制御を実行させるようにしてもよい。
【0047】
ユーザIF基板82は、調整パネル84、操作パネル83、メイン制御基板81、ブレーキスイッチ(ブレーキSW)86、近接センサ(パッドスイッチ)72、スピーカ85とそれぞれのIFを介して、接続されている。ブレーキスイッチ86は、使用者によりブレーキレバー16によるブレーキ操作またはパーキングブレーキ操作が行われたことを検出すると、その旨を通知する信号を出力する。近接センサ72は、磁石77を検知すると(すなわち、支持パッド14が押圧されたことを検知すると)、オン信号を出力し、それ以外の場合は、オフ信号を出力する。操作パネル83または調整パネル84に、ブレーキ操作またはパーキングブレーキ操作が行われたことを示すランプを設けてもよい。また、操作パネル83または調整パネル84に、支持パッド14が押圧されていることを通知するランプを設けてもよい。
【0048】
ユーザIF基板82は、近接センサ72、ブレーキSW86、調整パネル84、および操作パネル83から入力される信号を、メイン制御基板81に送信する。また、ユーザIF基板は音声ガイド部89を備えており、音声ガイド部89は、近接センサ72、ブレーキSW86、調整パネル84、および操作パネル83から入力される信号またはメイン制御基板81から入力される信号に基づき、音声ガイドの信号を生成して、スピーカ85に出力する。スピーカ85は、入力された信号に基づき音声を出力する。例えば、使用者が電源をオンにすれば、「電源をオンにしました」旨の音声メッセージを出力する。また、歩行車100が停止しているまたは支持パッド14に荷重がかかっていない状態で、一定時間以上、ブレーキレバー16が降ろされていないと(パーキングブレーキがかけられていないと)、「ブレーキレバーを降ろして下さい」等、パーキングブレーキを促す音声メッセージを出力する。あるいは操作パネル83に搭載されているLEDなどで視覚的に警告表示してもよい。
【0049】
メイン制御基板81は、全体の制御を行う制御部90を搭載している。制御部90は、マイコン、プロセッサまたはCPUなどのプログラム実行演算装置である。本実施形態では、制御部90がマイコンであるとする。不揮発性メモリ91は、制御部90を動作させるためのプログラムコード、制御部90が生成する情報またはデータ、制御部90の動作に必要な情報またはデータ、他の要素から受信した情報またはデータ等を格納する。制御部90は、不揮発性メモリ91内のプログラムコードを読み出して実行することで制御を行う。不揮発性メモリ91は、フラッシュメモリ(NAND型メモリなど)、MRAM、またはFRAMなど、任意のメモリでよい。制御部90は、プログラム実行装置ではなく、特定用途向け集積回路(ASIC)、または、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの装置でもよい。
【0050】
制御部90は、加速度センサ92を用いて、歩行車100の状態(姿勢など)を計算する。加速度センサ92は、単軸、2軸または3軸のものを、一つまたは複数使用できる。代わりにジャイロセンサを使用してもよい。制御部90は、右モータ20に内蔵されたホールICの信号から右モータ20の状態(例えばロータまたはモータ軸の回転位置、速度、回転数等)を把握する。また、制御部90は、左モータ20に内蔵されたホールICの信号から左モータ20の状態を把握する。制御部90は、これらの情報を利用して、使用者の付与力では不足する力を補うように左右の両モータ20の駆動を制御(アシスト制御)する。
【0051】
制御部90は、近接センサ72の検出信号に基づき、ブレーキ制御を行う。具体的には、検出信号がオンの場合には(支持パッド14に荷重がかけられている場合には)、ブレーキを解除し、オフの場合には(支持パッド14に荷重がかけられていない場合には)、ブレーキを作動するように制御を行う。ブレーキの種類としては、発電ブレーキまたは逆転ブレーキなどがある。使用するブレーキの種類は、予め定めたもの、または後述するように状況(歩行車の傾き)に応じて選択したものを用いることができる。
【0052】
発電ブレーキは、モータ20のU、V、W相の間をショートさせ(通常の駆動を停止し)、モータ20の回転により発電する逆起電力を利用して、制動力(ブレーキ力)を得るものである。発電ブレーキの特徴として、電力を回生できるとともに、ブレーキがなめらかであるが、歩行車100を完全に停止させることができない、またブレーキ力が弱いといったことが挙げられる。
【0053】
逆転ブレーキは、車輪が前方に進もうとしているときにはモータを後方に駆動し、後方に進もうとしているときには前方に駆動することで、車体をその場に停止させるものである。逆転ブレーキの特徴として、ブレーキ力が強く、その場で車体を停止させることができるが、電力消費が大きい、また振動が生じるといったことが挙げられる。
【0054】
ここで、制御部90は、歩行車100の傾きの情報を利用して、発電ブレーキと逆転ブレーキを切り換えてもよい。歩行車100の傾きは、一例として、傾斜センサ119を用いることで検出できる。傾斜センサ119は、車体の傾きを測定し、測定した傾きを表す信号を、検出信号として出力する。
【0055】
図7に歩行車100の傾きの情報を利用したブレーキ制御の例を示す。図7(A)に示すように、傾斜センサ119の検出信号が、傾きが一定角度以上であることを示す場合は、制御部90は、車体が傾斜面(坂道など)に存在すると判断し、逆転ブレーキを選択する。一方、図7(B)に示すように、傾斜センサ119の検出信号が、傾きが一定角度未満であることを示す場合は、車体は平坦面(平地など)に存在すると判断し、発電ブレーキを選択する。
【0056】
すなわち、平地などの平坦面では、発電ブレーキでも、車体を停止させることが可能できる。また、使用者がシート部37に長時間着座する場合には、逆転ブレーキでは消費電力が増大するが、発電ブレーキでは、消費電力が少なく、電力消費の節約になる。そのため、平坦面の場合は、発電ブレーキを選択することが望ましい。一方、坂道等の傾斜面では、逆転ブレーキでないと、車体が坂道を下ってしまう危険性がある。そのため、傾斜面の場合は、逆転ブレーキを選択することが望ましい。
【0057】
なお、発電ブレーキまたは逆転ブレーキに代えて、その場で車体を停止可能な他のブレーキ、例えばブレーキシュー25を用いた機械的ブレーキを実行してもよい。
【0058】
また制御部90は、ブレーキスイッチからの信号を利用して、機械的なブレーキもしくは、発電ブレーキまたは逆転ブレーキをかける制御を行う構成も可能である。
【0059】
本例では、歩行車100の傾きを測定するために傾斜センサ119を用いたが、加速度センサ92を利用して、歩行車100の傾きを算出してもよい。この場合、重力加速度を加速度センサ92で計測することで、傾きを算出できる。加速度センサも、傾斜センサに相当するといえる。
【0060】
図6の構成では、メイン制御基板81とユーザIF基板82との2つの基板が存在したが、これらの基板に搭載されている構成を1つの基板にまとめてもよい。また、メイン制御基板81またはユーザIF基板82に、所定の通信方式で有線または無線の通信を行う通信回路を設けて、外部装置と通信可能に構成してもよい。通信を利用して、本歩行車の状態を外部の装置に通知してもよいし、外部からアップデート用のデータを取得して、不揮発性メモリ91内のプログラムを更新してもよい。また、通信を利用して、近接センサ72のオン・オフの閾値を調整することもできる。外部の装置に通知する歩行車100の状態の例としては、GPS(Global Positioning System)などを利用した現在位置、歩行車100における異常の発生の有無などがあるが、これらに限定されない。例えば、支持パッド14に荷重がかけられた状態、支持パッド14に荷重がかけられていない状態、支持パッド14が押し上げられた状態の区別する情報を通知してもよい。
【0061】
本実施形態において、モータ20は各後輪13に取り付けられているが、これに限定されず、モータ20が一対の前輪12にのみ取り付けられてもよい。または、モータ20が、一対の前輪12および一対の後輪13の全てに取り付けられてもよい。また、車輪(後輪13)の制動部としてモータ20を用いたが、モータ20とは別に、車輪の制動部を、モータ20とは別に設けてもよい。例えば機械的ブレーキを行ってもよいし、電磁ブレーキを用いてもよい。
【0062】
本実施形態においては、モータ20により一対の後輪(車輪)13を駆動する例を用いて説明したが、これに限定されず、起動輪、転輪、遊動輪(誘導輪)を囲むように一帯に接続された履板の環である無限軌道をモータにより駆動してもよい。この場合、無限軌道がブレーキ(制動)の対象となる。
【0063】
本実施形態では、一対のハンドル24の一方に近接センサ72を配置し、当該一方のハンドルに対向する支持部材73内に磁石77を配置したが、一対のハンドル24の両方にそれぞれ近接センサを配置し、一対の支持部材73のそれぞれに磁石77を配置してもよい。
【0064】
本実施形態では、近接センサ72と磁石77を用いて支持パッド14の接近を検出したが、磁力センサと磁石を用いて検出してもよい。また、非検知体として磁石の代わりに銅などの金属を用いてもよい。この場合、金属用の近接センサを検出部として用いればよい。また、磁石や金属等の非検知体を使用せず、支持パッド14との距離に応じた信号(支持パッド14の移動量に応じた信号)を出力する測距センサを検出部として用いてもよい。測距センサの例として、赤外線センサ、超音波センサを用いてもよい。測距センサは、検出対象物(例えば支持パッド14)との距離が一定値以下になると、オン信号を出力する。測距センサの代わりに、リミットセンサを検出部として用いてもよい。この場合、支持パッド14が接近してリミットセンサのスイッチを押しこむことで、リミットセンサが導通し、リミットセンサからオン信号が出力される。近接センサや磁力センサ、測距センサ等、使用するセンサの種類に応じて、センサの検出感度を高めるために、センサに対向するハンドル表面部分を空隙にしたり、この部分の素材をハンドルとは別の素材にしたりしてもよい。
【0065】
本実施形態では、使用時に支持パッド14に荷重をかけることで支持パッド14が下方(設置面に垂直な方向)に移動する構成を示したが、支持パッド14に荷重をかけても、支持パッド14の位置が動かないように、固定的な設置する構成も可能である。この場合、検出部として、近接センサや測距センサ等ではなく、荷重センサまたは歪みセンサを用いてもよい。荷重センサまたは歪みセンサは、支持パッド14内に設けてもよいし、ハンドル24や支持フレーム21などのフレームに取り付けてもよい。荷重センサは、支持パッド14自体の重さと、使用者による荷重と支持パッド14の重さとの合計との間を区別できれば、任意の種類のセンサを用いることができる。荷重センサは、静電容量式でも、歪ゲージ式でもよい。いずれの方式でも、検出した値が閾値以上または閾値未満であれば、支持パッド14に荷重がかかっている(使用者が歩行車を歩行に使用している)と判断できる。
【0066】
また、使用者が支持パッド14に触っているか否かを検出することで、使用者が歩行車100を歩行に使用しているかを確認してもよい。例えば使用者が着座しているときは、支持パッド14に触れていないため、このとき使用者は本歩行車を歩行に使用していないと言える。支持パッド14への接触有無を検出するための検出部としては、一例として、静電センサ、圧電センサまたは圧力センサなどを用いることができる。これらの少なくともいずれかのセンサを用いることで、静電容量または圧力の変化を利用して、使用者が支持パッド14に触れているか否かを検出できる。センサの設置箇所は、使用者が歩行時に接触(押圧)する支持パッド14内が考えられるが、他の任意の箇所でもよい。
【0067】
また、本実施形態で使用する近接センサ等のセンサは、支持パッド14までの距離または支持パッド14への荷重に応じて、オン信号(距離または荷重が一定値に達したことを示す)またはオフ信号(距離または荷重が一定値に達していないことを示す)を出力した。別の構成として、センサが測定する物理量(距離、重さ、歪み、圧力など)に応じて、センシング値として一定範囲内の値(アナログ値)を検出し、検出した値を表す信号(電圧または電流)を出力してもよい。この場合、検出する値は、支持パッド14までの距離または支持パッド14への荷重を特定する情報に相当する。メイン制御基板81の制御部90で、信号が示す電圧または電流の値に基づき、使用者が支持パッド14に荷重をかけているか(使用者が歩行車100を歩行に使用しているか)を判断する。例えば、電圧または電流の値が閾値以上(または閾値未満)のときは、支持パッド14に荷重がかかっている(使用者が歩行車100を歩行に使用している)と判断し、ブレーキを解除するように制御を行う。一方、閾値未満(または閾値以上)の時は、荷重がかかっていない(使用者が歩行車100を歩行に使用していない)と判断して、ブレーキを作動させるように制御を行う。
【0068】
また、支持パッド14、支持部材73またはアーム部材26に傾斜センサまたは加速度センサを取り付け、あるいはアーム部材26とハンドルバー15との接合部に角度センサを取り付けることにより、支持パッド14、支持部材73またはアーム部材26と、ハンドルバー15とのなす角度を計測してもよい。この場合、支持パッド14に荷重が加わっていないときには、荷重が加わっているときと比べて、支持パッド14、支持部材73またはアーム部材26と、ハンドルバー15との成す角度が大きくなるため、これを利用して、荷重の有無を検出することができる。例えば、支持パッド14に荷重が加わっているときには、支持パッド14とハンドルバー15は平行に近くなるが、荷重がかかっていないときには、一定以上の角度をなすため、荷重の有無を検出することができる。あるいは、逆に支持パッド14、支持部材73またはアーム部材26の取り付け方によっては、支持パッド14に荷重が加わっているときに、荷重が加わっていないときと比べて、支持パッド14、支持部材73またはアーム部材26と、ハンドルバー15との成す角度が大きくなることも考えられる。この場合も同様にして、荷重の有無を検出することができる。
【0069】
また、近接センサ72と磁石77の配置箇所は図4に示した以外に、別の箇所も可能である。その例を図8に示す。アーム部材26のハンドルバー15との連結部80の長さをアーム部材26と反対方向に延長し、その先端付近に磁石79を配置する。その近傍のハンドルバー15の内部に近接センサ78を配置する。図8の上に示すように、支持パッド14に荷重が加わっていないときは、磁石79と近接センサ78間の距離が離れているため、近接センサ78は磁石79を検知しない。図8の下に示すように、支持パッド14に荷重が加わると、連結部80の先端が、近接センサ78に近づくように回動し、この結果、磁石79が近接センサ78に接近し、近接センサ78が磁石79を検知する。磁石79と近接センサ78の配置を逆にしてもよい。別の構成として、磁石79と近接センサ78の代わりに、荷重センサや距離センサを用いてもよい。例えば距離センサを連結部80の先端付近に配置し、所定の箇所(例えばハンドルバー15の予め定めた部分)との距離を距離センサで計測してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、センサがオン信号またはオフ信号を出力する例を主として述べたが、上述したように、センサによっては、センシング値をアナログ値として検出できるため、これを利用して、2値(ローレベルおよびハイレベル)だけでなく、より多くのレベルを判断できる。当該センサの例として、磁力センサや測距センサ、荷重センサなどがある。このことを利用して、3つの状態、すなわち、支持パッド14に荷重をかけた状態、支持パッド14から使用者が離れた状態(支持パッド14から手を離した状態)、支持パッド14を押し上げた状態を判定することができる。例えば、センサは、検出信号として、センシング値が閾値A以上であれば、ハイレベル信号を出力し、閾値A未満かつ閾値B以上であれば、ミドルレベル信号を出力し、閾値B未満であれば、ローレベル信号を出力する。制御部90では、ハイレベル信号であれば、支持パッド14に荷重をかけた状態、ミドルレベル信号であれば、支持パッド14から離れた状態、閾値B未満であれば、支持パッド14を押し上げた状態と判断できる。なお、制御部90が、センサからセンシング値の信号を受信し、センシング値を閾値Aまたは閾値Bまたはこれらの両方と比較してもよい。
【0071】
図9に、近接センサ72の代わりに磁力センサを用いた場合の、磁力センサの検出信号の一例のグラフを示す。測距センサや荷重センサなどでも同様のグラフとなる。時刻t2では、支持パッド14に荷重がかけられた状態であり、磁力センサの検出信号はハイレベルである。時刻t3で、使用者が支持パッド14から離れると、磁石77の入った支持パッド14が磁力センサから離れるために、磁力センサの検出信号は、ミドルレベルとなる。その後、時刻t4で着座しようと使用者が支持パッド14を押し上げると、磁石77がさらに離れるため、磁力センサの検出信号はローレベルとなる。それぞれのレベルの識別は、閾値Aおよび閾値Bを適切に定めることで判断できる。この構成によれば、手放しと着座を区別できるため、手放しのときは逆転ブレーキ、着座のときは発電ブレーキを選択することができる。この際、傾斜面か平坦面かの情報を使用しないこともできるし、併用することもできる。例えば、傾斜面で着座状態にしようと支持パッド14を押し上げたときには、傾斜面で着座しないようにスピーカ85を通して警告することもできる。
【0072】
ここではアナログ値での検出が可能な磁力センサ等を利用して3つの状態を区別する例を示したが、検知レベルが異なる複数の近接センサを用いて、3つの状態を判断することもできる。例えば、図4において近接センサ72に対しグリップ23側に別の近接センサ(補助センサと呼ぶ)を並べて配置し、補助センサに対向するように支持部材73内に別の磁石(補助磁石と呼ぶ)を配置する。支持パッド14に荷重をかけない状態では、近接センサ72は磁石77を検知せず、補助センサは補助磁石を検知する。支持パッド14に荷重をかけた状態では、近接センサ72は磁石77を検知し、補助センサも補助磁石を検知する。支持パッド14を押し上げた状態では、近接センサ72は磁石77を検知せず、補助センサも補助磁石を検知しない。よって、近接センサ72の検出信号と補助センサの検出信号を利用することで、上述した3つの状態を区別可能である。補助センサと補助磁石はここで述べた例に限られず、例えば、図8に示した近接センサ78と磁石79でもよい。また、補助磁石を用いず、複数の近接センサと一つの磁石を用いて、3つの状態を判断することもできる。このとき、検知レベルが同じ複数の近接センサを用いる場合と、検知レベルが異なる複数の近接センサを用いる場合が考えられる。前者のように、検知レベルが同じ複数の近接センサを用いる場合、各近接センサを、磁石に対する距離が異なるように(例えば電動車両の設置面に垂直な方向に並べて)配置する。支持パット14に荷重をかけない状態では、一方の近接センサが磁石を検知せず、他方の近接センサが磁石を検知する。支持パッド14に荷重をかけた状態では、両方の近接センサが磁石を検知する。支持パッド14を押し上げた状態では、両方の近接センサが磁石を検知しない。よって、複数の近接センサの検出信号を利用することで、上述した3つの状態を区別可能である。一方、後者のように、検知レベルが異なる複数の近接センサを用いる場合も、支持パット14に荷重をかけない状態では、一方の近接センサが磁石を検知せず、他方の近接センサが磁石を検知し、支持パット14に荷重をかけた状態では、両方の近接センサが磁石を検知し、支持パッド14を押し上げた状態では、両方の近接センサが磁石を検知しないとの条件を満たす任意の箇所にそれぞれの近接センサを配置すればよい。これによっても、複数の近接センサの検出信号を利用することで、上述した3つの状態を区別可能である。
【0073】
図10は、本実施形態に係る制御部90による動作の一例を示すフローチャートである。
【0074】
制御部90は、アシスト制御モードを実施している(S101)。すなわち、制御部90は、使用者の操作力だけでは不足する分の力を発生させるようにモータ20を駆動することで、後輪13の回転をアシストする。
【0075】
制御部90は、近接センサ72の検出信号を受信し、検出信号に基づき、使用者が支持パッド14を押圧しているか(荷重をかけているか)を判断する(S102)。例えば、支持パッド14が所定位置から一定以上の距離を移動した場合に、近接センサ72が支持パッド14(より詳細には支持パッド14に対して取り付けられた磁石77)を検出し、オン信号を出力する。それ以外の場合は、近接センサ72は、オフ信号を出力する。制御部90は、検出信号がオン信号の場合は、使用者が支持パッド14を押圧していると判断し、オフ信号の場合は、使用者は支持パッド14を押圧していないと判断する。ここでは近接センサ72を用いて判断したが、前述したように、荷重センサなど別のセンサを用いてもよい。また、支持パッド14を押圧しているか否かではなく、支持パッド14を使用者が触っているかを判断してもよい。この場合、前述したように、静電センサ、または圧力センサなどを用いてもよい。
【0076】
制御部90は、使用者が支持パッド14を押圧していると判断した場合は(S102のYES)、後輪13を制動することなく(ブレーキをかけることなく)、後輪13の回転のアシストを継続する。
【0077】
一方、制御部90は、使用者が支持パッド14を押圧していていないと判断した場合(S102のNO)、歩行車100が平坦面および傾斜面のいずれに存在するかを判断する(S103)。具体的には、制御部90は、傾斜センサ119から受信される検出信号を確認し、検出信号が一定角度以上の傾きを示す場合、歩行車100が傾斜面に存在すると判断し、一定角度未満の傾きを示す場合、歩行車100が平坦面に存在すると判断する。この場合の傾斜とは、前後方向、左右方向のいずれかでもよいし、併用してもよい。
【0078】
制御部90は、歩行車100が平坦面に存在すると判断した場合は、発電ブレーキをかける(S104)。一方、歩行車100が傾斜面に存在すると判断した場合は、逆転ブレーキをかける(S105)。制御部90は、アシスト制御モードを終了するかを判断する(S106)。
【0079】
アシスト制御モードを終了する場合としては、例えば、使用者が操作パネル83で電源オフの指示を入力した場合、調整パネル84でアシスト制御モードの終了指示を入力した場合、または、ブレーキ(発電ブレーキまたは逆転ブレーキ)をかけた状態が一定時間以上継続し、アシスト制御モードを強制終了する場合などがある。アシスト制御モードを終了する場合は(YES)、本処理を終了する。なお、逆転ブレーキをかけている状態でアシスト制御モードを強制終了する場合、機械的なブレーキを自動的にかけるように制御してもよい。
【0080】
アシスト制御モードを終了しない場合は(S106のNO)、近接センサ72からオフ信号を受信している間(オン信号を受信する前までは)、ブレーキをかけた状態を維持する。なお、発電ブレーキをかけた状態で歩行車100が傾斜面に移動するなどした場合は、制御部90は、使用するブレーキを逆転ブレーキに変更する(S103の「傾斜面」、S105)。制御部90は、ブレーキをかけた状態で、近接センサ72の検出信号がオン信号に代わった場合は(S102のYES)、すなわち、使用者が歩行車100を歩行に使用している(歩行車100を用いて歩行している、または歩行しようとしている)と判断した場合は、後輪13の制動を停止し(ブレーキを解除し)、後輪13の回転のアシストを継続する。
【0081】
なお、ブレーキレバー16を下して機械的ブレーキを実行している場合には、歩行車100の傾きの大きさに係わらず、発電ブレーキを使用するようにしてもよい。例えば、機械的ブレーキを実行している場合には、傾斜面の場合であっても、発電ブレーキを使用するようにしてもよい。これによって、機械的ブレーキ実行時の逆転ブレーキによるモータの過電流に伴う焼き付き故障を有効に防ぐことができる。また、機械的ブレーキによるブレーキ力が弱いときでも、発電ブレーキによるブレーキ力を得ることができる。
【0082】
以上、本実施形態によれば、使用者が支持パッド14から離れた状態では、自動的にブレーキが作動するようにしたことにより、歩行車100が自動的に動き出すことを効果的に防止できる。よって、使用者は、歩行車100を安心して使用できる。
【0083】
また、歩行車100が停止している状態、または等速走行している状態(なお停止している状態も等速走行している状態の一例である)では、使用者から支持パッド14に荷重をかけられた場合に、これを検出して、使用者が歩行車100を歩行に使用していること(歩行しようとしていること、または歩行していること)を把握できる。この場合、ブレーキを解除する、またはブレーキの解除を維持する。これにより、使用者は、歩行車100を用いて歩行できる。
【0084】
また、本実施形態によれば、支持パッド14までの距離に基づき、制御部90は、使用者が歩行車100を歩行に使用していることを検出する。このため、使用者は、自らが歩行車100を歩行に使用していることを体感的に、歩行車100に伝えることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、ばね(付勢部材)74により、支持パッド14が、ブレーキが作動する位置(ブレーキ作動位置)に保持される。このため、ばね74に抗する荷重が使用者から付与されない状態において、歩行車100が動き出すことを効果的に防止できる。よって、使用者は、歩行車100を安心して使用できる。使用者は、歩行車100を歩行に使用するときは、支持パッド14に寄りかかり、荷重をかける(体重を預ける)ことで、ばね74に抗する力を発生させ、支持パッド14をブレーキ作動位置から移動させることができる。これにより、ブレーキが解除され、これにより、使用者は、歩行車100を用いて歩行できる。
【0086】
また、本実施形態によれば、支持パッド14が押し上げられた位置(退避位置)のときは、支持パッド14には荷重がかけられていないため、ブレーキが作動した状態が維持される。このため、歩行車100が動き出すことを効果的に防止できる。よって、使用者は、歩行車100のシート部37に安心して着座できる。
【0087】
また、本実施形態によれば、支持フレーム21に設置された近接センサ72と、支持パッド14に設置された磁石(被検知体)77とを用いる。使用者が支持パッド14に荷重をかけたときに、支持パッド14の移動にともなって磁石77が近接センサ72に接近し、近接センサ72が磁石77(すなわち支持パッド14)を検知する。近接センサ72を本体フレームに設置することで、近接センサ72と制御部90とをつなぐ配線を本体フレーム内に収容できる。それによりブレーキワイヤーやブレーキセンサハーネスなどと束ねて配線をすっきりさせることができる。また近接センサ72を完全に内部に収納できることによって物理的な外力によっての破壊がなくなり、また防水・防塵性が保ちやすくなる。また、近接センサ72は、支持パッド14がブレーキ作動位置にあるときは、磁石77を検知しない位置に配置されているため、誤検知を有効に防ぐことができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、歩行車100の傾きに応じて、歩行車100が平坦面および傾斜面のいずれに存在するかを判断し、使用するブレーキの種類を、発電ブレーキと逆転ブレーキ間で切り換える。平坦面の場合は、発電ブレーキを選択することで、消費電力を低減する。傾斜面の場合は、歩行車100をその場で確実に停止させるために、逆転ブレーキを選択する。発電ブレーキまたは逆転ブレーキに代えて、機械的ブレーキを選択してもよい。このように、歩行車100の傾きの情報を利用することで、状況に応じて、適切なブレーキを選択できる。
【0089】
また、本実施形態によれば、ブレーキレバー16を下して機械的ブレーキを実行している場合には、歩行車100の傾きの大きさに係わらず(傾斜面の場合であっても)、発電ブレーキを使用する。これによって、機械的ブレーキ実行時の逆転ブレーキによるモータの過電流に伴う焼き付き故障を有効に防ぐことができる。また、機械的ブレーキによるブレーキ力が弱いときでも、発電ブレーキによるブレーキ力を得ることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記本実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
100:電動歩行車
11:本体フレーム
12:前輪
13:後輪
14:支持パッド
15:ハンドルバー
16:ブレーキレバー
20:モータ
21:支持フレーム
23:グリップ部
24:ハンドル
25:ブレーキシュー
26:アーム部材
27:収容部
37:シート部
51:下段フレーム
54:上段フレーム
55:リンク機構
57:後輪フレーム
61:ブレーキユニット
71:検出機構
72、78:近接センサ
73:支持部材
74:バネ
75:保護部材
76:キャップ
77、79:磁石
90:制御部
119:傾斜センサ
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