(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】把持装置及び産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/12 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
B25J15/12
(21)【出願番号】P 2018035180
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 至
(72)【発明者】
【氏名】新田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】岩田 俊介
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04240814(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012001326(DE,A1)
【文献】特開昭63-162188(JP,A)
【文献】実開昭63-060591(JP,U)
【文献】特開2016-203264(JP,A)
【文献】特表2013-545626(JP,A)
【文献】特開2008-012637(JP,A)
【文献】特開2005-199385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
カバー部とを備え、
前記カバー部は、前記掌部及び前記指部を覆わず、前記接続部を覆って
おり、前記接続部の軸方向に形成されたスリットを有する
把持装置。
【請求項2】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
カバー部とを備え、
前記カバー部は、前記掌部及び前記指部を覆わず、前記接続部を覆っており、
周囲の状態を検知する検知部が、前記カバー部に設けられて
おり、
前記検知部は、テープ状のスイッチセンサであり、前記カバー部の前記接続部の周囲を覆う筒部の外周に設けられている
把持装置。
【請求項3】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
カバー部とを備え、
前記カバー部は、前記掌部及び前記指部を覆わず、前記接続部を覆っており、
前記高強度部は、
前記掌部、前記指部、及び前記接続部と別体であって、
変形した前記掌部を受け入れるガイド穴と、
前記ガイド穴の軸方向の、前記指部側先端の外側に湾曲部と
を有す
る
把持装置。
【請求項4】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
カバー部とを備え、
前記カバー部は、前記掌部及び前記指部を覆わず、前記接続部を覆っており、
前記掌部、前記指部、前記接続部、及び前記高強度部は、一体に形成されて
おり、
前記高強度部は、前記基端に、前記ケースの底面の外周部に接触する接触面を有する
把持装置。
【請求項5】
前記ケースには脱着部が着脱自在に連結され、前記カバー部は前記脱着部の周囲を覆う請求項1~4のいずれか1項記載の把持装置。
【請求項6】
前記掌部と前記接続部の間が外側に突出する向きに湾曲した外周面を有する請求項1~
5のいずれか1項記載の把持装置。
【請求項7】
前記カバー部は、前記掌部及び前記指部と同じ材質又は/及び色彩で形成されている請求項1~
6のいずれか1項記載の把持装置。
【請求項8】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
前記掌部及び前記指部を除く部分の周囲の少なくとも一部を覆うカバー部とを備え、
前記高強度部は、前記掌部、前記指部、及び前記接続部と別体であって、変形した前記掌部を受け入れるガイド穴と、前記ガイド穴の軸方向の、前記指部側先端の外側に湾曲部とを有する
把持装置。
【請求項9】
掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、
前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、
前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、
前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、
前記掌部及び前記指部を除く部分の周囲の少なくとも一部を覆うカバー部とを備え、
前記掌部、前記指部、前記接続部、及び前記高強度部は、一体に形成されており、前記高強度部は、前記基端に、前記ケースの底面の外周部に接触する接触面を有する
把持装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項記載の把持装置を設けた産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置及び産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持することを目的とした把持装置として、掌部と、掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより掌部に向かって倒れる複数の指部と、把持本体内に収容された粉粒体とを有する袋状の把持本体を備えた把持装置が開示されている(特許文献1)。当該把持装置は、把持本体内を減圧することにより、掌部が、厚さ方向に変形し、指部が掌部へ向かって倒れるように弾性変形する。この把持装置は、複数の指部を有するため、サイズや形状が異なるワークを汎用的に把持することができ、把持本体内を減圧するのみで把持できるので制御が単純であり、また把持本体をワークに強く押し付ける必要もないため、食品のような柔軟なワークを傷めずに把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の把持装置は、把持本体が劣化や破損などによって破裂した場合、把持本体内に充填された粉粒体が飛散し、ワークを汚染してしまう、という問題がある。粉粒体は、Jamming転移に伴う密度変化によって劣化するので、安定的に使用することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、粉粒体を用いず、より確実にワークを把持することができる把持装置及び産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る把持装置は、掌部と、前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、前記掌部及び前記指部を除く部分の周囲の少なくとも一部を覆うカバー部とを備える。
【0007】
本発明に係る産業用ロボットは、上記把持装置が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高強度部が掌部の外周が収縮するのを防ぐことで、掌部が厚さ方向に変形することにより、指部を掌部に向かって変形させてワークを把持することができるので、粉体を用いず、より確実にワークを把持することができる。把持装置は、カバー部で表面の凹凸部分を覆うことによって、当該凹凸部分に異物が溜まることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る把持装置を適用した産業用ロボットの例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る把持装置の構成を示す縦断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る把持装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るケースの構成を示す縦断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る把持装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る把持装置の使用状態を示す縦断面図である。
【
図7】第1実施形態に係るカバーの変形例を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る検知部の構成を示す部分断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る検知部の変形例(1)を示す部分断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る検知部の変形例(2)を示す部分断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る把持装置の構成を示す縦断面図である。
【
図12】第3実施形態に係る把持本体の構成を示す斜視図である。
【
図13】把持装置の変形例(1)を示す斜視図であり、
図13Aはカバー部が別体型、
図13Bはカバー部が一体型の例である。
【
図14】把持装置の変形例(2)を示す斜視図であり、
図14Aはカバー部が別体型、
図14Bはカバー部が一体型の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る把持装置は、掌部と、前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と、前記指部が形成された側と反対側の、前記掌部の外縁を囲む位置に形成され、ケースに接続される接続部と、前記掌部と前記接続部の間に設けられ、前記掌部の外縁から当該掌部の厚さ方向に所定の長さを有し、前記掌部より変形しにくい高強度部と、前記接続部に接続され、前記高強度部の基端に接触する前記ケースと、前記掌部及び前記指部を除く部分の周囲の少なくとも一部を覆うカバー部とを備える。
【0011】
高強度部が掌部より変形しにくいので、掌部の内面側を減圧した場合、掌部は、外周が収縮せず厚さ方向に変形する。したがって把持本体は、指部が掌部に向かって倒れるように弾性変形するので、粉粒体を用いず、より確実にワークを把持することができる。
【0012】
高強度部は、掌部に比べ、機械的強度が高くなるように形成されている。高強度部は、掌部、指部、及び接続部と別体である場合と、一体である場合を含む。
【0013】
高強度部が、掌部、指部、及び接続部と一体である場合は、掌部の周囲において一様に設けられていてもよいし、部分的に設けられていてもよい。具体的には、高強度部は、掌部に比べて厚肉としてもよい。この場合、高強度部の厚さは、一様である場合に限らず、部分的に厚肉としてもよい。部分的に厚肉である場合とは、掌部の周方向に部分的である場合と、掌部の厚さ方向に平行な方向に部分的である場合とを含む。高強度部は、掌部に比べて機械的強度の高い材料で形成してもよい。機械的強度の高い材料は、掌部と同質であるが硬度が高い材料の場合、掌部と異種材料の場合、フィラーなどの添加物を含む場合、それらの複合材の場合を含む。高強度部は、基端においてケースの一部と接触する。高強度部は、基端においてケースと面接触する場合、及び線接触する場合を含む。基端は、ケースと接触する接触面を有するのが好ましい。ケースは、上ケースと下ケースとを備える場合、上ケースが接触面と接触してもよく、下ケースが接触面と接触してもよい。高強度部は、基端から、掌部と接続される先端までの一定の領域である。先端は、高強度部と掌部の境界であるが、明確に視認できる場合に限られない。先端は、掌部が厚さ方向へ変形する場合の支点になるのが好ましい。
【0014】
掌部及び指部は、把持装置がワークを把持する動作をする際、弾性変形する部分である。掌部及び指部を除く部分とは、把持装置のうち弾性変形する以外の部分であるということもできる。
【0015】
掌部及び指部を除く部分の周囲とは、当該部分の表面に接触する場合に限らず、当該部分の表面から所定の距離だけ離れている場合を含む。
【0016】
カバー部は、前記接続部の周囲の少なくとも一部を覆う第1カバーを有する。第1カバーは、接続部と接している場合と、当該接続部との間に所定の隙間がある場合と、当該接続部との間に他の部材がある場合とを含む。
【0017】
カバー部は、前記ケースに着脱自在に連結される脱着部の、少なくとも一部を覆う第2カバーを有する。第2カバー部は、脱着部と接している場合と、当該脱着部との間に所定の隙間がある場合と、当該脱着部との間に他の部材がある場合とを含む。
【0018】
カバー部に、周囲の状態を検知する検知部が、設けられている。周囲の状態とは、検知対象物との距離が所定の範囲内であることを検知する場合と、温度、湿度、明るさなどの環境情報を検知する場合とを含む。検知対象物との距離が所定の範囲内であることを検知する検知部は、接触センサ及び非接触センサなどが適用される。
【0019】
1.第1実施形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(全体構成)
図1に、本実施形態に係る把持装置10Aを適用した産業用ロボット12の構成を示す。産業用ロボット12は、直交ロボットであって、レール14と、レール14に沿って移動する移動体16と、移動体16に固定されたエアシリンダー18とを備える。レール14は、図中Y軸方向に移動可能に設けられている。
【0020】
エアシリンダー18は、シリンダーチューブ19と、シリンダーチューブ19に対し進退可能に設けられたピストンロッド20とを有する。シリンダーチューブ19には、配管21,22が設けられている。当該配管21,22を通じて、気体が給排気されることにより、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19に対し進退可能となっている。ピストンロッド20の先端には、アダプタプレート23を介して把持装置10Aが設けられている。アダプタプレート23は、図示しないボルトによってピストンロッド20の先端に固定されている。
【0021】
産業用ロボット12は、水平な基台26上に置かれたワークWを、把持装置10Aで把持すると共に、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動することができる。
【0022】
把持装置10Aは、ピストンロッド20に連結された把持本体28Aを備える。把持本体28Aは、気密性と弾性とを有する材料、例えば、天然ゴムや、合成ゴムなどで形成することができる。把持本体28AのJIS K6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度は、60~90程度であるのが好ましい。
【0023】
図2に示すように把持本体28Aは、掌部30と、掌部30の周囲に突出して設けられた複数の指部32Aとを有する。掌部30は略円盤状をなしている。指部32Aは、掌部30と一体に形成されており、掌部30を囲むように放射状に5個設けられている。指部32A同士の間には、所定の間隔が形成されている。指部32Aは、内面31が掌部30と一体に形成されている。指部32Aの外形形状は、適宜選択することができ、例えば、円柱、円錐、円錐台、三角柱、四角柱、三角錐、四角錐、四角錐台、直方体などでもよい。本実施形態の場合、指部32Aは、同一形状で構成されている。なお複数の指部32Aは、全て同一形状である必要はなく、形状が異なっていてもよい。
【0024】
把持本体28Aは、指部32Aが形成された側と反対側の、掌部30の外縁を囲む位置に接続部38が一体に形成されている。接続部38は筒状であって、本図の場合、上端に円形の開口を有する。把持本体28Aは、掌部30から接続部38に向かって外側に突出する向きに湾曲した外周面34を有する。指部32Aは、中実である。指部32Aの材質は、その他の部分(掌部30や接続部38)と同じ材質、または異なる材質でもよく、さらに均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材、フィラーなどの添加物を含んでもよい。把持本体28Aの開口は、接続部38に挿入されたケース36によって密閉されている。把持本体28Aとケース36は、接続部38の外周に巻かれたバンド65によって固定されている。ケース36は、脱着部64に着脱自在に連結される。
【0025】
脱着部64は、ワンタッチ継手であり、一端がピストンロッド20の先端に設けられたアダプタプレート23に接続され、他端がケース36の継手62に接続される。脱着部64は、継手62が差し込み方向に差し込まれると接続され、リリース部が差し込み方向に押されることによって接続が解除される。脱着部64は、ワンタッチ継手に限らず、ねじによって継手62と接続される継手でもよい。脱着部64には、周面に給排気口73が設けられている。当該給排気口73は、図示しないが、配管の一端に接続される。配管の他端は、例えば三方弁を介して真空ポンプに接続されている。三方弁は、真空ポート、給排気ポート、大気解放ポートを有し、真空ポートが真空ポンプに、給排気ポートが把持装置10Aに、大気解放ポートが外部にそれぞれ接続される。当該配管を通じて、気体が、把持本体28Aの内から外へ、及び把持本体28Aの外から内へ、流通する。
【0026】
把持本体28Aは、接続部38と掌部30の間に、掌部30より厚さ方向に変形しにくい高強度部42を備える。高強度部42は、把持本体28Aの掌部30の内部空間に配置されている。高強度部42は、掌部30以外、すなわち掌部30の外周が収縮しないように、把持本体28Aを保持する。高強度部42の材質は、把持本体28Aの減圧下において変形しなければ足り、例えば硬質樹脂や金属を用いることができる。高強度部42の材質は、必ずしも均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材でもよい。
【0027】
本図に示す高強度部42は、変形した掌部30を受け入れるガイド穴47と、ガイド穴47の軸方向の指部32A側先端の外側に湾曲部46とを有する枠状部材である。本実施形態の場合、高強度部42は、円筒状部材であって、全体として先端に向かって先細になっている。高強度部42の指部32A側に湾曲部46が設けられている。湾曲部46は、外側に向かって凸形状である。ガイド穴47は、掌部30に対応した高強度部42の中央であって、内径が掌部30と略同じ大きさであるのが好ましい。
【0028】
高強度部42は、外径Dと前記ガイド穴47内径dの比が1.0:0.98~1.0:0.6であるのが好ましい。例えば、高強度部42の外径Dが80mmの場合、内径dが48~78mmの範囲であれば、指部32Aは掌部30の中心に向かってより確実に弾性変形する。
【0029】
さらに平面視における指部32Aの基端の中心位置よりも半径方向の外側に、高強度部42の指部側先端が位置するのが好ましい。すなわち、指部32Aの半径方向の長さをLとした場合、当該指部32Aの内側からの距離TがL/2以上である位置で高強度部42の指部側先端が指部32Aの基端に接触するのが好ましい。高強度部42の指部側先端が、指部32Aの中心位置よりも半径方向の内側で指部32Aの基端に接触した場合(TがL/2より小さい場合)、指部32Aは、掌部30の中心に向かって弾性変形しにくくなる。
【0030】
把持装置10Aは、掌部30及び指部32Aを除く周囲に、カバー部72Aが設けられている。カバー部72Aは、接続部38の周囲を覆う第1カバー66Aと、脱着部64の周囲を覆う第2カバー68とを有する。カバー部72Aは、ケース36より柔らかい材料、例えば、樹脂やゴムなどの弾性材料で形成されている。カバー部72Aの材質は、クッション性に優れた材料、例えば発泡材を用いてもよい。またカバー部72Aの材質は、把持本体28Aと同じ材質、または異なる材質でもよく、さらに均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材、フィラーなどの添加物を含んでもよい。さらにカバー部72Aは、発泡スチロールなどで形成することによって、万が一、他の対象物に衝突した場合、つぶれることで、対象物に与える衝撃を吸収することとしてもよい。
【0031】
第1カバー66Aは、バンド65が巻かれた接続部38の周囲を覆う筒部69と、筒部69の一端に設けられた環状突起71とを有する。環状突起71は、筒部69の中心軸に向かって突出している。第2カバー68は、脱着部64を覆う筒状部材である。第1カバー66Aと第2カバー68は、同軸上に配置され、端部同士の間に隙間がないように重ねられている。
【0032】
図3に示すように、第2カバー68には、軸方向にスリット70Aが1つ形成されている。第2カバー68は、スリット70Aを中心として円周方向外向きへ力を加えることによって、弾性変形しスリット70Aが開く。円周方向外向きの力を除去することによって、第2カバー68は弾性変形してスリット70Aが閉じる。第2カバー68は、給排気口73に通じる貫通穴が設けられている。当該貫通穴は、第2カバー68の上部であって、厚さ方向に貫通している。
【0033】
脱着部64は、天面に設けられた取り付け穴78を通じて図示しないボルトをアダプタプレート23にねじ込むことによって、アダプタプレート23に固定される。
【0034】
図4に示すように、ケース36は、ステンレスなどの金属製、又はプラスチックなどの硬質の樹脂製であるのが好ましく、下ケース52と、上ケース54とを有する。下ケース52は、中央に貫通穴56を有する底部58と、当該底部58の外縁に一体に形成された筒状部60とを有する。下ケース52の先端面である底面の外縁Rは、面取り加工が施されている。面取り加工は、底面の外縁を削り、角面や丸面とする加工が適用できる。面取り加工の大きさは、接続部38が局所的に厚さ方向に変形するのを防ぐうえで、小さいほうが好ましい。
【0035】
上ケース54は、円盤状の部材であり、厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴59と、当該貫通穴59に連通した継手62とを有する。継手62は、シール材57を介して上ケース54にねじ止めされている。当該継手62は、脱着部64とワンタッチで連結される。下ケース52と上ケース54は、筒状部60の上端において、図示しないシール材を介して一体化されている。
【0036】
第1カバー66Aを継手62に挿入して、接続部38とケース36の上側から被せるように第1カバー66Aを装着する。次いで、継手62を脱着部64に連結する(
図5)。続いて、脱着部64を覆うように、スリット70Aを開いて第2カバー68を脱着部64の周囲に装着する。上記のようにしてカバー部72Aが装着された把持装置10Aを得ることができる。
【0037】
(動作及び効果)
上記のように構成された把持装置10Aが設けられた産業用ロボット12の動作及び効果について説明する。なお、以下に示す条件は、一例である。産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19内に退避し、エアシリンダー18が収縮した状態を原点とする。また把持装置10Aは、初期状態において把持本体28A内の圧力が大気圧である。すなわち三方弁は、真空ポートが遮断され、給排気ポートが大気解放ポートと繋がっている状態である。
【0038】
産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動することで、基台26上に置かれたワークWの鉛直線上に把持装置10Aを位置決めする(
図1)。次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、指部32AがワークWの側面に到達するまで、エアシリンダー18を伸長させる。
【0039】
次いで三方弁は、大気解放ポートが遮断され、給排気ポートが真空ポートと繋がった状態に切り替えられる。これにより把持装置10Aは、配管を通じて、把持本体28A内の気体を吸引し、把持本体28A内の圧力を例えば-0.03MPa以下に減圧する。
【0040】
把持本体28Aは、高強度部42により掌部30の外周面34の形状が保持された状態を維持する。そうすると掌部30が、高強度部42のガイド穴47に吸い込まれるようにして厚さ方向に変形する(
図6)。掌部30が厚さ方向へ変形するのに伴い、指部32Aの内面31が掌部30の中心へ引っ張られる。そうすると指部32Aは、掌部30へ向かって倒れるように弾性変形する。これにより指部32Aは、主に内面31がワークW表面に接触する。本図に示す立方体のワークWの場合、指部32AはワークWの側面に接触する。上記のように把持装置10Aは、把持本体28A内を減圧することにより、ワークWを把持する。把持装置10Aは、把持本体28A内の圧力に応じた把持力を発揮する。すなわち、把持装置10Aの把持力は、把持本体28A内の圧力が低い程、大きくなる。
【0041】
次いで産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダー18を収縮することにより、ワークWを基台26から持ち上げることができる。さらに産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動したり、レール14がY軸方向に移動したりすることにより、水平方向へワークWを自在に移動することができる。
【0042】
所望の場所へ移動した後、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、ワークWが基台26に接触するまでエアシリンダー18を伸長させる。次いで、三方弁は、真空ポートが遮断され、給排気ポートが大気解放ポートと繋がっている状態に切り替えられる。そうすると把持本体28A内へ大気解放ポートから配管を通じて気体が流入する。把持本体28A内の圧力が大気圧に戻るのに伴い、掌部30がガイド穴47から押し出され元の状態に戻る。掌部30が元の状態に戻るのに伴い、指部32Aが開き、ワークWを手放す。
【0043】
次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダー18を収縮することにより、把持装置10AをワークWから切り離す。以上のようにして産業用ロボット12は、基台26上に置かれたワークWを、把持装置10Aで把持することにより、所望の位置へ移動することができる。
【0044】
把持本体28Aは、指部32Aと、高強度部42を有することにより、粉体を用いず、より確実にワークWを把持することができる。把持装置10Aは、粉体を用いていないので、万一、把持本体28Aが破裂しても、ワークWを汚染することがない。
【0045】
指部32Aは、指部32Aの先端が下向きの状態だけでなく、横向きや上向きの状態であっても、形状が保持される。したがって把持装置10Aは、基台26上のワークWを持ち上げるだけでなく、垂直な壁面や、天井に吊り下げられたワークWを把持することができる。指部32Aは、Jamming転移後の粉体に比べ剛性が高いので、より確実にワークWを把持することができる。
【0046】
把持装置10Aは、把持本体28Aを減圧して掌部30を確実に厚さ方向に変形させることにより、ワークWを把持することができるので、把持本体28AをワークWに押し付ける必要がない。したがって把持装置10Aは、食品などの柔らかいワークWを押し潰さずに把持できるので、ワークWの損傷を防止することができる。
【0047】
把持本体28Aは、内部が減圧される程度によって指部32Aの変形量、及び把持力を変えることができる。したがって把持装置10Aは、ワークWの大きさや硬さに合わせて、把持力を変えることができるので、汎用性を向上することができる。掌部30がガイド穴47に吸い込まれるようにして厚さ方向に変形するので、指部32Aは掌部30へ向かってより鋭角に変形する。したがって把持装置10Aはより小さいワークWも把持することができる。
【0048】
指部32Aは、高強度部42に湾曲部46が形成されていることにより、掌部30が湾曲部46に接触しながら厚さ方向に変形するので、指部32Aが連続的、かつ、ゆるやかに変形する。したがって把持装置10Aは、柔らかくワークWを把持することができる。因みに高強度部に湾曲部が形成されていない把持装置では、指部は座屈するように変形する。
【0049】
把持装置10Aは、カバー部72Aでケース36表面、接続部38及び脱着部64が覆われているので、バンド65や脱着部64が露出しない。したがってバンド65や脱着部64の凹凸部分に異物が溜まることを防止できる。
【0050】
把持本体28Aより硬質のケース36や脱着部64が露出しないため、ユーザに対し与える圧迫感を軽減することができる。したがって把持装置10Aは、ユーザと作業領域を共有して協調作業を行う強調ロボットに適用した場合、ユーザの心理的な負担を軽減することができる。
【0051】
カバー部72Aは、クッション性に優れた材質で形成することによって、対象物に衝突した場合、対象物へ与える衝撃を軽減することができる。カバー部72Aと、接続部38及び脱着部64の間に、隙間を設けることによって、よりクッション性を高めることができる。
【0052】
把持装置10Aは、把持本体28Aと同じ材質又は/及び色彩で形成されたカバー部72Aを設けることによって、金属など異なる材質で形成されたケース36及び脱着部64を隠すことができ、外観を統一することができる。
【0053】
(変形例)
上記実施形態の場合、カバー部72Aは、第1カバー66Aと第2カバー68とが別体である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、
図7に示すように、第1カバー66Aと第2カバー68とを一体にしたカバー部72Bを用いることとしてもよい。カバー部72Bは、第1カバー66A及び第2カバー68を軸方向に平行に貫くスリット70Bが1つ形成されている。カバー部72Bは、脱着部64に装着した後でも、接続部38及び脱着部64を覆うように、スリット70Bを開いて接続部38及び脱着部64の周囲に装着することができる。本変形例に係る把持装置10Bは、カバー部72Bを備えることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
上記実施形態の場合、高強度部42は円筒状部材である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、平面視において長円形状、多角形や、楕円形などの枠状部材としてもよい。高強度部は、把持本体の形状に合わせて、外形形状を適宜変更することができる。高強度部のガイド穴は、円形状に限らず、多角形状であってもよい。
【0055】
把持本体は、1種の材料で形成してもよいし、複数の異なる材料で形成された膜を積層して形成してもよい。また把持本体は、部分的に異なる材料で形成してもよい。把持本体の厚さは、一定でなくてもよく、部分的に厚肉部又は薄肉部を設けてもよい。
【0056】
2.第2実施形態
第2実施形態について図を参照して説明する。上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。第2実施形態に係る把持装置は、
図8に示すように、検知部61が設けられたカバー部72Cを備える。本図に示す検知部61は、テープ状のスイッチセンサであり、第1カバー66Bの筒部69の外周に巻き付けられている。
【0057】
検知部61は、図示しないが、筒部69の半径方向外側に配置された外側電極と、半径方向内側に配置された内側電極とを有し、回路に電気的に接続されている。ビード63に荷重が加えられると、図示しない外側電極が内側電極に接触し、回路が閉じる。ビード63に加えられた荷重を除去すると、外側電極が復帰し、回路が開く。検知部61は、筒部69の外周に固定されたガイド部67に装着されている。
【0058】
ガイド部67は、筒部69の外周面に形成された環状溝に固定されている。ガイド部67は、表面にガイド溝を有する帯状の部材である。ガイド部67は、筒部69表面に巻き付けられ、接着剤、両面テープ、ボルトとナットなどによって固定される。
【0059】
把持装置が検知対象物に接触するなどして、ビード63に荷重が加えられると、回路が閉じ、異常を検知する。把持装置は、異常を検知すると、直ちに産業ロボットに動作を停止させる。把持装置は、検知対象物に接触したことを検知し、産業用ロボットの動作を停止することによって、衝突による被害を軽減することができる。
【0060】
本実施形態の場合、検知部61は、スイッチである場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、検知部61は、荷重センサでもよい。また検知部61は、非接触センサ、例えば、光電センサでもよい。検知部61が非接触センサの場合、把持装置は、検知対象物への接触を未然に防止することができる。
【0061】
検知部61は、筒部69に固定したガイド部67に装着する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、
図9に示すカバー部72Cは、予め、筒部69にガイド溝が形成された第1カバー66Cを有する。当該第1カバー66Cに検知部61を装着することによって、ガイド部を省略できるので、その分、部品点数を削減することができる。
【0062】
図10に示すカバー部72Eは、検知部61が一体成形によって第1カバー66Dに設けられている。一体成形することによって、検知部61をカバー部72Eに組み付ける作業を省略できるので、その分、製造工程を簡略化することができる。
【0063】
3.第3実施形態
第3実施形態に係る把持装置は、高強度部が、掌部、指部、及び接続部と一体である把持本体を備える点が、上記第1実施形態と異なる。上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
図11に示す把持本体28Bは、掌部30と、掌部30の周囲に突出して設けられた複数の指部32Aとを有する。把持本体28Bは、掌部30から接続部38に向かって外側に突出する向きに湾曲した外周面34を有する。
【0064】
把持本体28Bは、接続部38と掌部30の間に、掌部30より厚さ方向に変形しにくい高強度部74を備える。高強度部74は、掌部30や接続部38と一体に形成されている。高強度部74は、下ケース52と接触する基端76、及び、基端76から前記指部32A側に離れており前記掌部30に接続される先端75を有する。高強度部74は、掌部30に比べ変形しにくいが、完全な剛体ではなく、掌部30の中心へ向かって基端76を支点にして微視的に変形する。
【0065】
基端76は、掌部30の外縁から掌部30の厚さ方向に離れた位置、すなわち掌部30から接続部38の上部開口側へ離れた位置に設けられている。本実施形態の場合、基端76は、ケース36の底面の外周部に接触する接触面を有する。高強度部74は、接触面に連続した掌部30の中心側に、ガイド空間40に接する内周面77を有する。掌部30の内側は、略平坦な内面48と、当該内面48の周囲に設けられた外側に凸となる曲面50とを有する。内周面77と、掌部30の内面48は、曲面50で接続されている。
【0066】
高強度部74の先端75は、内周面77と曲面50の間に配置されている。先端75は、掌部30が厚さ方向へ変形する場合の支点となる。
【0067】
高強度部74は、
図12に示すように、掌部30の周囲を囲むように接続部38の形状に合わせて形成されており、本図の場合、環状である。接触面は、高強度部74の上面である。ケース36の底面の外周部が、高強度部74の接触面に接触する。
【0068】
把持装置10Cは、カバー部72Aを備えることによって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
高強度部74は、掌部30及び指部32Aと一体に形成されており、掌部30の厚さ方向の変形に合わせ微視的に変形する。これにより、指部32Aが、掌部30の変形によって連続的、かつ、ゆるやかに変形する。したがって把持装置10Cは、柔らかくワークWを把持することができる。因みに高強度部74を有しない把持本体では、指部は座屈するように変形する。
【0070】
把持本体28Bは、掌部30、指部32A、高強度部74、接続部38が一体で形成されていることにより、部品点数及び製造工数を削減することができる。減圧時により多くの負荷がかかる掌部30と高強度部74が一体に形成されていることにより、把持本体28Bの破損を防止し、耐久性を向上することができる。
【0071】
高強度部は、指部に対応した位置に設けられた複数の帯状体でもよい。高強度部は、掌部の周囲であって指部の基端にあたる位置に、均等に配置される。高強度部は、上面に接触面、掌部側の内面に内周面を有する。高強度部の先端は、内周面と曲面の間に配置されている。高強度部は、帯状体とすることによって、環状に形成する場合に比べ、材料を削減することができるので、その分、軽量化を図ることができる。
【0072】
高強度部は、掌部の厚さ方向に平行に、所定の間隔をあけて配置された、複数の環状の凸部でもよい。掌部から最も離れた位置にある凸部の上面が接触面である。凸部の掌部側の内面が内周面である。
【0073】
高強度部は、掌部の厚さ方向を長手方向とする複数の凸条でもよい。凸条は、掌部の周囲に、所定の間隔をあけて配置される。凸条の上面が接触面であり、掌部側の内面が内周面である。
【0074】
高強度部は、掌部より機械的強度が高い材質で形成してもよい。高強度部は、インサート成形によって、指部及び掌部と一体形成することで得られる。
【0075】
4.変形例
上記実施形態の場合、指部32Aは、掌部30を囲むように放射状に5個設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、
図13Aに示す把持装置10Dは、2個の指部32Bを有する把持本体28Cを備える。指部32Bは、掌部を挟んで両側に配置されており、扁平形状である。把持装置10Dは、カバー部72Aを備えることによって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
図13Bに示す把持装置10Eは、把持本体28Cと、カバー部72Bとを備える。把持装置10Eは、カバー部72Bを備えることによって上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
図14Aに示す把持装置10Fは、3個の指部32Cを有する把持本体28Cを備える。指部32Cは、掌部を囲むように放射状に配置されており、先細形状である。把持装置10Fは、第1カバー80と第2カバー81が別体であるカバー部72Cを備える。把持装置10Fは、カバー部72Cを備えることによって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
図14Bに示す把持装置10Gは、把持本体28Cと、カバー部72Dとを備える。カバー部72Dは、第1カバー80と第2カバー81が一体に形成されている。把持装置10Gは、カバー部72Dを備えることによって上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
上記実施形態では、産業用ロボット12として直交ロボットの例を示したが、本発明はこれに限らず、スカラロボット、垂直多関節ロボットなどに適用することができる。すなわち把持装置は、産業用ロボットによってX軸、Y軸、Z軸を中心に回転しても、ワークWを把持すると共に、把持した状態を維持することができる。把持装置はエアシリンダーに設ける場合について説明したが、油圧シリンダーに設けてもよい。
【0080】
把持装置は、指部に爪部を設けることとしてもよい。爪部は、合成樹脂製の板状部材や、円錐状部材、サック状の部材を用いることができる。
【0081】
把持装置には、ワークWを撮影するカメラ、把持したワークWの重量を測定する重量計、ワークWと把持本体との距離を測定する近接センサなどを設けてもよい。上記カメラなどは、ピストンロッド20とアダプタプレート23との間に挟んで固定されたブラケットに固定することができる。アダプタプレート23がブラケットを有する形状であってもよい。
【0082】
把持本体は、平面視において長方形状でもよい。この場合、指部は、掌部の長辺に沿って2個を一組として、掌部を挟んで両側に複数組設けるのが好ましい。掌部が厚さ方向へ変形するのに伴い、指部の内面が掌部の中心へ引っ張られる。そうすると指部は、掌部へ向かって倒れるように弾性変形する。この場合、指部は、対向する長辺に向かって倒れるように弾性変形する。したがって当該把持本体を備えた把持装置は、円筒形状や角柱形状など、長尺部材を容易に把持することができる。
【0083】
指部は、弾性部を内部に有することとしてもよい。弾性部は、指部内に充填され、当該指部の形を有する。弾性部の形は、把持本体の指部内に挿入され一定の形を保持できれば、指部の内面との間に多少隙間が生じていてもよい。弾性部の材質は、樹脂またはゴムであるのが好ましい。弾性部の材質は、必ずしも均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材でもよい。弾性部は、フィラーなどの添加物を含んでもよい。弾性部は、指部の内面との間に、隙間がないように配置されるのが好ましい。
【0084】
高強度部は、同心円状に配置された複数、例えば3個のリング体を組み合わせて形成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10A~G 把持装置
12 産業用ロボット
28A~C 把持本体
30 掌部
32A~C 指部
36 ケース
38 接続部
40 ガイド空間
42 高強度部
46 湾曲部
47 ガイド穴
61 検知部
64 脱着部
66A~D、80 第1カバー
68、81 第2カバー
72A~E カバー部