(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】車両の走行制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20220727BHJP
B60W 50/10 20120101ALI20220727BHJP
B60K 31/00 20060101ALI20220727BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220727BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W50/10
B60K31/00 A
G08G1/16 C
B60T7/12 F
(21)【出願番号】P 2018043332
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
(72)【発明者】
【氏名】難波 亮介
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】財前 元希
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132352(JP,A)
【文献】特開2017-218001(JP,A)
【文献】特開2012-006505(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016116515(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/09
B60W 50/10
B60K 31/00
G08G 1/16
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の操舵および加減速の制御を含む自動走行制御を行う走行制御システムであって、
前記車両の運転者の操作に従って前記車両の操舵および加減速を実施する手動運転モード、運転者によるステアリングホイールの保持を前提として前記自動走行制御を実施する第1運転支援モード、および運転者によるステアリングホイールの保持を必要とせずに前記自動走行制御を実施する第2運転支援モード、を選択的に実行して前記車両の走行制御を行う走行制御装置と、
前記走行制御装置による前記第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において、運転者による当該自動走行制御への介入操作を検出する操作検出装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、
前記第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において検出した前記介入操作が前記車両の操舵制御および加減速制御のいずれに対するものであるかを判定する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記車両の操舵制御および加減速制御のうち、前記介入操作が行われた一方については運転者による操作に応じる制御に切り替え、前記介入操作が行われていない他方については前記第2運転支援モードの自動走行制御と同等の制御を維持する一時的な自動制御縮退処理を実行する第2ステップと、
前記第2ステップの後に、
前記介入操作が行われていない前記他方についての介入操作が追加された場合に前記手動運転モードまたは前記第1運転支援モードを開始する第3ステップと、
を実行することを特徴とする走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動走行制御を実施する走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、例えば特開2007-196809号公報に開示されているように、運転者によるステアリングホイールの保持を前提とせずに車両の自動運転を行う走行制御システムが知られている。運転者によるステアリングホイールの保持を前提としない自動運転とは、SAEによる定義(SAE J3016_201609)のレベル3以上に相当する。
【0003】
また、運転者によるステアリングホイールの保持を前提としない自動運転の実行時において、運転者がステアリングホイール、アクセルペダルまたはブレーキペダルを用いて運転に介入した場合には、手動運転または運転者によるステアリングホイールの保持を前提とした自動運転に切り替える技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者によるステアリングホイールの保持を前提としない自動運転の実行時において、運転者による介入操作に応じて当該自動運転を終了してしまうと、運転者の運転姿勢が整う前に当該自動運転が終了してしまう可能性がある。例えば、周囲の車両の接近等に対して運転者が走行制御システムよりも敏感に反応して咄嗟にブレーキペダルを踏み込んだ場合、運転者がステアリングホイールを保持していない状態で自動運転が終了する可能性がある。
【0006】
本発明は前述した問題を解決するものであり、運転者による介入操作に応じてステアリングホイールの保持を前提としない自動運転を終了する場合において、運転者が運転姿勢を整えることができる走行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の走行制御システムは、車両に搭載され、前記車両の操舵および加減速の制御を含む自動走行制御を行う走行制御システムであって、前記車両の運転者の操作に従って前記車両の操舵および加減速を実施する手動運転モード、運転者によるステアリングホイールの保持を前提として前記自動走行制御を実施する第1運転支援モード、および運転者によるステアリングホイールの保持を必要とせずに前記自動走行制御を実施する第2運転支援モード、を選択的に実行して前記車両の走行制御を行う走行制御装置と、前記走行制御装置による前記第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において、運転者による当該自動走行制御への介入操作を検出する操作検出装置と、を備え、前記走行制御装置は、前記第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において検出した前記介入操作が前記車両の操舵制御および加減速制御のいずれに対するものであるかを判定する第1ステップと、前記第1ステップの後に、前記車両の操舵制御および加減速制御のうち、前記介入操作が行われた一方については運転者による操作に応じる制御に切り替え、前記介入操作が行われていない他方については前記第2運転支援モードの自動走行制御と同等の制御を維持する一時的な自動制御縮退処理を実行する第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記介入操作が行われていない前記他方についての介入操作が追加された場合に前記手動運転モードまたは前記第1運転支援モードを開始する第3ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者による介入操作に応じてステアリングホイールの保持を前提としない自動運転を終了する場合において、運転者が運転姿勢を整えることができる走行制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】自動運転終了処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0011】
図1において、符号1は、自動車等の車両の走行制御システムであり、車両の自律的な自動運転を含む走行制御を実施する。以下では、走行制御システム1が搭載される車両のことを自車両と称する。
【0012】
自車両は、運転者が運転操作を行うための操作部201を備える。操作部201は、アクセルペダル201a、ブレーキペダル201bおよびステアリングホイール201sを含む。操作部201には、自車両の手動運転と自動運転を切り替える操作を行うスイッチが含まれていてもよい。
【0013】
走行制御システム1は、走行制御装置100を中心として、状態量検出装置10、外部環境認識装置20、加減速制御装置30、操舵制御装置40、操作検出装置50、および警報制御装置60等が情報通信ネットワーク150を介して互いに接続されて構成されている。
【0014】
状態量検出装置10は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサおよび舵角センサ等を備え、自車両の車速、前後方向の加速度、ヨーレート、舵角等の状態量を検出する。なお、状態量検出装置10に含まれる複数のセンサの少なくとも一部は、自車両が備える他の装置に付属するセンサを共用する形態であってもよい。例えば、状態量検出装置10に含まれる自車両のヨーレートを検出する角速度センサは、自車両が備える横滑り防止装置が備える角速度センサと共用であってもよい。
【0015】
外部環境認識装置20は、自車両の外部環境を認識するセンサ等からの情報に基づいて自車両前方の道路形状、および自車両の周囲に存在する物体の位置や形状を認識し、当該認識結果を出力する。外部環境認識装置20は、例えば、カメラによって撮像された画像に既知の画像処理を施すことによって自車両前方の道路形状および物体の位置や形状を認識し、またミリ波レーダやレーザレーダ等のレーダ装置によって自車両の周囲に存在する物体の位置を認識する。
【0016】
なお、外部環境認識装置20は、GNSS等の測位装置により検出される自車両の位置情報と、予め記憶している地図情報と、に基づいて自車両前方の道路形状を認識してもよい。また、外部環境認識装置20は、路車間通信等の車外インフラとの無線通信によって取得した情報に基づいて自車両前方の道路形状を認識してもよい。
【0017】
加減速制御装置30は、運転者による操作部201の操作および後述する走行制御装置100から出力される指示に基づき、自車両が備える原動機および制動装置の動作を制御する電子制御装置である。加減速制御装置30は、自車両の加速および減速と発進および停止を制御する。言い換えれば、加減速制御装置30は、自車両の前後方向の運動を制御する。
【0018】
自車両が備える原動機は、1つまたは複数の内燃機関であってもよいし、1つまたは複数の電動モータであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、制動装置は、自車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して制動力を発生する形態に限られず、自車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する形態のものであってもよい。
【0019】
なお、実際の加減速制御装置30は、原動機を制御する電子制御装置および制動装置を制御する電子制御装置の複数の電子制御装置を含み、これらが情報通信ネットワーク150を介して協調動作することにより実現されている。
【0020】
操舵制御装置40は、運転者による操作部201の操作および後述する走行制御装置100から出力される指示に基づき、自車両が備える操舵装置の動作を制御する電子制御装置である。なお、操舵装置は、舵角の変更によって自車両にヨーモーメントを付加する形態の装置に加えて、左右輪における制動力差または駆動力差の発生によって自車両にヨーモーメントを付加する形態の装置をさらに備えていてもよい。操舵制御装置40は、操舵装置の動作により発生する自車両のヨーモーメントを制御する。すなわち、操舵制御装置40は、自車両の左右方向の運動を制御する。
【0021】
操作検出装置50は、運転者による操作部201の操作を検出する。操作検出装置50は、アクセルペダル201aの操作を検出するアクセルペダルセンサ50a、ブレーキペダル201bの操作を検出するブレーキペダルセンサ50b、およびステアリングホイール201sの操作を検出するステアリングセンサ50sを含む。操作検出装置50の一部または全部の構成は、状態量検出装置10の構成を兼ねていてもよい。
【0022】
アクセルペダルセンサ50aは、例えばアクセルペダル201aの踏み込み量を検出するセンサである。また、ブレーキペダルセンサ50bは、例えばブレーキ液圧を検出するセンサである。また、ステアリングセンサ50sは、例えば、運転者がステアリングホイール201sに加えるトルクを検出する操舵トルクセンサである。
【0023】
なお、ブレーキペダルセンサ50bは、自車両のブレーキランプの点灯を制御するためのブレーキペダル201bの操作を検出するスイッチを含んでいてもよい。また、ステアリングセンサ50sは、ステアリングホイール201sに設けられたタッチセンサを含んでいてもよい。
【0024】
警報制御装置60は、運転者に向けた警報を発生する報知装置を制御する電子制御装置である。報知装置は、例えば画像や文字を表示する表示装置、光を発する発光装置、音を発するスピーカ、振動を発するアクチュエータ、またはこれらの組み合わせ、を含む。
【0025】
走行制御装置100は、加減速制御装置30および操舵制御装置40を制御する電子制御装置であり、自車両の走行制御を行う。走行制御装置100は、状態量検出装置10、外部環境認識装置20および操作検出装置50により検出される自車両の状態量および外部環境の認識結果と、運転者による操作部201の操作の認識結果との情報に基づいて、加減速制御装置30および操舵制御装置40を制御する。
【0026】
本実施形態の走行制御装置100は、手動運転モード、第1運転支援モードおよび第2運転支援モードを含む複数の運転モード(動作モード)を備え、これらを選択的に実行して自車両の走行制御を行う。
【0027】
ここで、自車両の走行制御とは、自車両の加減速および操舵の制御が少なくとも含まれる。また、自車両の走行制御には、自車両の外部環境の認識結果に対する反応の実行も含まれる場合もある。
【0028】
手動運転モードは、運転者が、操作部201を用いて、自車両の加減速および操舵の一方または両方を制御する運転モードである。すなわち、手動運転モードは、運転者が自車両の走行制御の全てを実施する場合と、運転者が自車両の走行制御の一部を実施し残りの走行制御を走行制御装置100が実施する場合と、を含む。前者の場合は、自動車の自動運転レベルの定義のうちの、いわゆるSAEによる定義のレベル0に相当し、後者の場合はレベル1に相当する(SAE J3016_201609)。以下では、SAEによる定義の自動運転レベルについて、SAEレベル0、SAEレベル1等と称するものとする。
【0029】
また、手動運転モードでは、運転者に、自車両の外部環境の認識と、当該外部環境の認識結果への反応の決定が求められる。
【0030】
第1運転支援モードは、SAEレベル2に相当する。すなわち、第1運転支援モードは、走行制御装置100が自車両の加減速および操舵の両方を制御するが、運転者による自車両の外部環境の認識と、当該外部環境の認識結果への反応の決定と、の実行が必要とされる運転モードである。
【0031】
具体的に本実施形態では、走行制御装置100は、第1運転支援モードを実行する際に、運転者によるステアリングホイール201sの保持を要求する。言い換えれば、本実施形態では、走行制御装置100は、ステアリングセンサ50sにより、運転者によるステアリングホイール201sの保持を検出している場合に、第1運転支援モードを実行することができる。したがって、第1運転支援モードとは、運転者によるステアリングホイール201sの保持を前提とした自動走行制御である。
【0032】
第2運転支援モードは、SAEレベル3または4に相当する。すなわち、第2運転支援モードは、走行制御装置100が自車両の加減速および操舵の両方を制御し、また走行制御装置100が自車両の外部環境の認識と、当該外部環境の認識結果への反応の決定も実行する運転モードである。
【0033】
すなわち、第2運転支援モードとは、運転者によるステアリングホイール201sの保持を必要としない自動走行制御である。
【0034】
走行制御装置100、例えば運転者が操作部201を用いることによって入力される指示に応じて、手動運転モード、第1運転支援モードおよび第2運転支援モードを選択的に実行する。
【0035】
本実施形態では一例として、第2運転支援モードはSAEレベル3に相当するものとする。したがって、走行制御装置100による第2運転支援モードの実行時において、自動運転の継続が困難となった場合には、走行制御装置100による第2運転支援モードの走行制御動作は縮退運転状態となり、運転者による走行制御の一部または全部の引き継ぎが必要とされる。
【0036】
第2運転支援モードの実行時において、自動運転の継続が困難となる場合とは、例えば自動運転に対応する路車間通信設備等のインフラが設けられた道路から自車両が退出する場合や、外部環境認識装置20による道路の認識が不可能となる場合等に発生し得る。
【0037】
第2運転支援モードの実行時において、自動運転の継続が困難となった場合には、走行制御装置100は、第2運転支援モードの実行を終了して手動運転モードまたは第1運転支援モードを実行する。そして、当該運転モードの移行時には、走行制御装置100は、警報制御装置60を制御して、運転者に第2運転支援モードの終了と走行制御の引き継ぎ要求を報知する。
【0038】
また、第2運転支援モードの実行時において、運転者による操作部201を用いた走行制御への介入操作を検出した場合に、走行制御装置100は、第2運転支援モードの実行を終了して手動運転モードまたは第1運転支援モードを実行する。自動運転中の自車両の走行制御への運転者による介入操作は、オーバーライド等と称される。
【0039】
図2は、第2運転支援モードの実行時において、運転者による介入操作を検出した場合に走行制御装置100が実行する自動運転終了処理のフローチャートである。
【0040】
具体的に、走行制御装置100は、第2運転支援モードの実行時において、操作検出装置50が備えるアクセルペダルセンサ50a、ブレーキペダルセンサ50bおよびステアリングセンサ50sのいずれかによって運転者の介入操作を検出した場合に、
図2に示す
図2に示す自動運転終了処理を実行する。
【0041】
自動運転終了処理では、まずステップS10において、走行制御装置100は、操作検出装置50が検出した運転者の介入操作が、操舵制御に対するものであるか否かを判定する。運転者による介入操作は、自車両の操舵制御または加減速制御に対するものであるから、言い換えれば、ステップS10では、走行制御装置100は、操作検出装置50が検出した運転者による介入操作が、操舵制御および加減速制御のいずれに対するものであるかを判定する。
【0042】
ステップS10において、運転者による介入操作が操舵制御であると判定した場合には、走行制御装置100は、ステップS20に移行する。すなわち、介入操作がステアリングセンサ50sによって検出されたものであれば、走行制御装置100は、ステップS20に移行する。ステップS20では、走行制御装置100は、操舵自動制御縮退処理を実行する。
【0043】
操舵自動制御縮退処理の実行期間中は、走行制御装置100は、自車両の操舵制御については手動運転モードと同等または第1運転支援モードと同等の制御を実行し、自車両の加減速制御については第2運転支援モードと同等の制御を実行する。
【0044】
すなわち、走行制御装置100が操舵自動制御縮退処理を実行している期間中は、自車両の操舵制御は、SAEレベル0から2のいずれかに相当する状態となり、自車両の加減速制御は、SAEレベル3に相当する状態が維持される。
【0045】
したがって、ステップS20の操舵自動制御縮退処理の実行期間中は、運転者による介入操作に従った自車両の操舵制御が行われるとともに、自車両の加減速制御については走行制御装置100による自動制御が継続される。
【0046】
ステップS30では、走行制御装置100は、操舵自動制御縮退処理の実行期間中に、運転者による加減速制御に対する介入操作がさらに追加されたか否かを判定する。
【0047】
ステップS30の判定において、加減速制御に対する介入操作がさらに追加されたと判定した場合には、走行制御装置100は、ステップS110に移行する。ステップS110では、走行制御装置100は、警報制御装置60を制御し、第2運転支援モードから手動運転モードまたは第1運転支援モードへの運転モードの切り替えを報知装置を用いて運転者に報知する。
【0048】
そして、ステップS120において、走行制御装置100は、手動運転モードと同等または第1運転支援モードの実行を開始する。ステップS120の実行により、自動運転終了処理は終了する。
【0049】
また、ステップS30のNOへの分岐およびステップS40のNOへの分岐のループに示すように、操舵自動制御縮退処理の実行期間中に、加減速制御に対する介入操作が追加されない場合には、走行制御装置100は、操作検出装置50によって操舵制御への介入操作の終了を検出するまで待機する。
【0050】
ステップS40のYESへの分岐に示すように、操舵自動制御縮退処理の実行期間中において、操作検出装置50によって操舵制御への介入操作の終了を検出した場合には、走行制御装置100は、ステップS110に移行する。
【0051】
ステップS110では、走行制御装置100は、警報制御装置60を制御し、第2運転支援モードから手動運転モードまたは第1運転支援モードへの運転モードの切り替えを報知装置を用いて運転者に報知する。
【0052】
そして、ステップS120において、走行制御装置100は、手動運転モードと同等または第1運転支援モードの実行を開始する。ステップS120の実行により、自動運転終了処理は終了する。
【0053】
一方、ステップS10において、運転者による介入操作が加減速制御であると判定した場合には、走行制御装置100は、ステップS50に移行する。すなわち、介入操作がアクセルペダルセンサ50aまたはブレーキペダルセンサ50bによって検出されたものであれば、走行制御装置100は、ステップS50に移行する。ステップS50では、走行制御装置100は、加減速自動制御縮退処理を実行する。
【0054】
加減速自動制御縮退処理の実行期間中は、走行制御装置100は、自車両の加減速制御については手動運転モードと同等または第1運転支援モードと同等の制御を実行し、自車両の操舵制御については第2運転支援モードと同等の制御を実行する。
【0055】
すなわち、走行制御装置100が加減速自動制御縮退処理を実行している期間中は、自車両の加減速制御は、SAEレベル0から2のいずれかに相当する状態となり、自車両の操舵制御は、SAEレベル3に相当する状態が維持される。
【0056】
したがって、ステップS50の加減速自動制御縮退処理の実行期間中は、運転者による介入操作に従った自車両の加減速制御が行われるとともに、自車両の操舵制御については走行制御装置100による自動制御が継続される。
【0057】
ステップS60では、走行制御装置100は、加減速自動制御縮退処理の実行期間中に、運転者による操舵制御に対する介入操作がさらに追加されたか否かを判定する。
【0058】
ステップS60の判定において、操舵制御に対する介入操作がさらに追加されたと判定した場合には、走行制御装置100は、ステップS110に移行する。ステップS110では、走行制御装置100は、警報制御装置60を制御し、第2運転支援モードから手動運転モードまたは第1運転支援モードへの運転モードの切り替えを報知装置を用いて運転者に報知する。
【0059】
そして、ステップS120において、走行制御装置100は、手動運転モードと同等または第1運転支援モードの実行を開始する。ステップS120の実行により、自動運転終了処理は終了する。
【0060】
また、ステップS60のNOへの分岐およびステップS70のNOへの分岐のループに示すように、加減速自動制御縮退処理の実行期間中に、操舵制御に対する介入操作が追加されない場合には、走行制御装置100は、操作検出装置50によって加減速制御への介入操作の終了を検出するまで待機する。
【0061】
ステップS70のYESへの分岐に示すように、加減速自動制御縮退処理の実行期間中において、操作検出装置50によって加減速制御への介入操作の終了を検出した場合には、走行制御装置100は、ステップS110に移行する。
【0062】
ステップS110では、走行制御装置100は、警報制御装置60を制御し、第2運転支援モードから手動運転モードまたは第1運転支援モードへの運転モードの切り替えを報知装置を用いて運転者に報知する。
【0063】
そして、ステップS120において、走行制御装置100は、手動運転モードと同等または第1運転支援モードの実行を開始する。ステップS120の実行により、自動運転終了処理は終了する。
【0064】
以上に説明したように、走行制御装置100は、第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において検出した介入操作が自車両の操舵制御に対するものである場合には、操舵については手動運転モードと同等または第1運転支援モードと同等の制御を実行し、かつ加減速については第2運転支援モードと同等の制御を維持する操舵自動制御縮退処理を実行し、その後、手動運転モードまたは前記第1運転支援モードに移行する。
【0065】
また、走行制御装置100は、第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において検出した介入操作が自車両の加減速制御に対するものである場合には、加減速については手動運転モードと同等または第1運転支援モードと同等の制御を実行し、かつ操舵については第2運転支援モードと同等の制御を維持する加減速自動制御縮退処理を実行し、その後、手動運転モードまたは前記第1運転支援モードに移行する。
【0066】
すなわち、走行制御装置100は、第2運転支援モードの自動走行制御の実行時において、運転者による介入操作を検出した場合には、手動運転モードまたは第1運転支援モードに移行するが、この第2運転支援モードの終了時において、自車両の操舵制御および加減速制御のうち、運転者による介入操作が行われた一方については運転者による操作に応じる制御(SAEレベル0から2のいずれかに相当する制御)に切り替え、介入操作が行われていない他方については走行制御装置100による自動制御(SAEレベル3に相当する制御)を維持する一時的な自動制御縮退処理を実行する。
【0067】
本実施形態の走行制御システム1を備える自車両が第2運転支援モードで自動走行中である場合において、例えば運転者がステアリングホイール201sを操作すると、走行制御装置100は、操舵自動制御縮退処理を実行した後に手動運転モードまたは前記第1運転支援モードに移行する。また例えば、本実施形態の走行制御システム1を備える自車両が第2運転支援モードで自動走行中である場合において、運転者がアクセルペダル201aまたはブレーキペダル201bを操作すると、走行制御装置100は、加減速自動制御縮退処理を実行した後に手動運転モードまたは前記第1運転支援モードに移行する。
【0068】
第2運転支援モードの自動走行中における運転者の介入操作は、例えば自車両前方への他車両の急な割り込み等に対して運転者が走行制御装置100よりも敏感に反応する場合等に起こり得る。
【0069】
運転者によるステアリングホイールの保持を必要としない第2運転支援モードの自動走行中において、運転者が咄嗟の判断により介入操作を行う場合、運転者の姿勢が整っていない可能性が考えられ、ステアリングホイール201sによる介入操作と、ペダル(アクセルペダル201aまたはブレーキペダル201b)による介入操作のうちいずれか一方が先行して行われ、他方の実行が遅れる可能性がある。
【0070】
ここで、本実施形態の走行制御システム1では、即時に手動運転モードまたは前記第1運転支援モードに移行せずに、一時的な自動制御縮退処理を実行するため、咄嗟の介入操作後に運転者がステアリングホイール201sとペダルの操作が可能な姿勢を整えるまでの時間を生み出すとともに、当該時間中において自車両の走行制御の一部が走行制御装置100および運転者の制御下から離れてしまうことを防止することができる。以上に説明したように、本実施形態の走行制御システム1によれば、運転者による介入操作に応じてステアリングホイールの保持を前提としない自動運転を終了する場合において、運転者が運転姿勢を確実に整えることができる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の走行制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 走行制御システム、
10 状態量検出装置、
20 外部環境認識装置、
30 加減速制御装置、
40 操舵制御装置、
50 操作検出装置、
50a アクセルペダルセンサ、
50b ブレーキペダルセンサ、
50s ステアリングセンサ、
60 警報制御装置、
100 走行制御装置、
150 情報通信ネットワーク、
201 操作部、
201a アクセルペダル、
201b ブレーキペダル、
201s ステアリングホイール。