(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】ソフトモールド用組成物、これを利用して製造されたソフトモールド
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20220727BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220727BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20220727BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20220727BHJP
G03F 7/028 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F2/44 B
B29C33/40
C08F220/20
G03F7/028
(21)【出願番号】P 2018048342
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0048742
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】康 ▲民▼ 赫
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 幸大
(72)【発明者】
【氏名】金 明 姫
(72)【発明者】
【氏名】朴 政 遇
(72)【発明者】
【氏名】高桑 敦司
(72)【発明者】
【氏名】趙 國 來
(72)【発明者】
【氏名】韓 康 洙
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-148481(JP,A)
【文献】特開2013-049841(JP,A)
【文献】特開2011-136459(JP,A)
【文献】特開2017-160295(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065149(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/018043(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064310(WO,A1)
【文献】Siyuan Wang et al.,Synthesis, Characterization, and UV-Curing Properties of Silicon-Containing (Meth)acrylate Monomers,Journal of Applied Polymer Science,2013年,Vol.129,p.3325-3332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B29C 33/40
G03F 7/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトモールド用組成物の全重量を基準に、
少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー40wt%以上96wt%以下、
少なくとも1つの光開始剤3wt%以上15wt%以下、及び
シロキサン化合物0.1wt%以上50wt%以下、を含
み、
前記シロキサン化合物は、下記の化学式1で表示されるソフトモールド用組成物。
<化学式1>
前記化学式1で、
Xは水素又はメチル基であり、Lは1~40の数であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に1以上5以下の数である。
【請求項2】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、3つ以上のアクリレート基を有する第1アクリレートモノマーを含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、2つ以上のアクリレート基を有する第2アクリレートモノマーを含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane Triacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane propoxylate triacrylate、エトキシル化グリセリントリアクリレート(Ethoxylated glycerine triacrylate)、グリセリン(PO)mトリアクリレート(Glycerine(PO)m Triacrylate
、mは1以上4以下の整数である)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Pentaerythritol Triacrylate)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Tris(2-hydroxyethyl)isocyanurate Triacrylate)、ペンタエリスリトール(EO)nテトラアクリレート(Pentaerythritol(EO)n Tetraacrylate)、nは1以上4以下の整数である)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Ditrimethylolpropane Tetraacrylate)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol Tetraacrylate)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol Pentaacrylate)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol Hexaacrylate)の中から選択される少なくともいずれか1つを含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートを含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光開始剤は、第1紫外線光で活性化される第1光開始剤と、
前記第1紫外線光より長波長である第2紫外線光で活性化される第2光開始剤と、を含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項7】
前記第1光開始剤と前記第2光開始剤との
重量比率は、1:1乃至2:1である請求項6に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー80wt%以上
93wt%以下、
少なくとも1つの光開始剤5wt%以上15wt%以下、及び
前記シロキサン化合物2wt%以上10wt%以下、を含む請求項1に記載のソフトモールド用組成物。
【請求項9】
複数のアクリレート基を有する少なくとも1つのアクリレートモノマーと、
第1波長で活性化される第1光開始剤と、
前記第1波長より長波長である第2波長で活性化される第2光開始剤と、
下記の化学式1で表示されるシロキサン化合物と、を含むソフトモールド用組成物。
<化学式1>
前記化学式1で、
Xは水素又はメチル基であり、Lは1~40の数であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に
1以上5以下の数である。
【請求項10】
複数の凹部を有する凹凸パターンを含み、
前記凹凸パターンは、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー40wt%以上96wt%以下、少なくとも1つの光開始剤3wt%以上15wt%以下、及びシロキサン化合物0.1wt%以上50wt%以下、を含
み、
前記シロキサン化合物は、下記の化学式1で表示されるソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールド。
<化学式1>
前記化学式1で、
Xは水素又はメチル基であり、Lは1~40の数であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に1以上5以下の数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトモールド用組成物、及びこれを利用して製造されたソフトモールドに係る。より詳細には、ナノインプリント(nano imprint)工程に使用されるソフトモールドを製造するための組成物、及び、その組成物を利用して製造されたソフトモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
微細なパターンを有する光学部材の製造、又は、表示装置に含まれる光学パターンを形成する方法として、フォトリソグラフィー(photolithography)法が使用されている。特に、フォトリソグラフィー加工法の中の1つであるナノインプリント(nano-imprint)法は、光学部材又は表示装置に、マイクロサイズ又はナノサイズの微細な光学パターンを形成する方法として使用されている。
【0003】
このようなナノインプリント法の場合、光学パターンを形成するための中間段階で、ソフトモールド(soft mold)を使うことになる。ソフトモールドを利用して精密な光学パターンを形成し、光学部材製造の際の生産性を向上させるために、ソフトモールドの耐久性及び離型力を改善する研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,637,587号公報
【文献】米国特許第9,533,467号公報
【文献】米国特許公開第2013/0049255号明細書
【文献】米国特許公開第2015/0368453号明細書
【文献】米国特許公開第2016/0193756号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、反複使用の後にも良好な離型特性を示し、高い耐久性を有するソフトモールドを製造するためのソフトモールド用組成物及びこのような組成物を利用して製造されたソフトモールドを提供することにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態はソフトモールド用組成物の全重量を基準に、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー40wt%以上96wt%以下、少なくとも1つの光開始剤3wt%以上15wt%以下、及びシロキサン化合物0.1wt%以上50wt%以下、を含むソフトモールド用組成物を提供する。
【0007】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、3つ以上のアクリレート基を有する第1アクリレートモノマーを含むことができる。
【0008】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、2つのアクリレート基を有する第2アクリレートモノマーをさらに含むことができる。
【0009】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane Triacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane propoxylate triacrylate、エトキシル化グリセリントリアクリレート(Ethoxylated glycerine triacrylate)、グリセリン(PO)mトリアクリレート(Glycerine(PO)m Triacrylate、mは1以上4以下の整数である)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Pentaerythritol Triacrylate)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Tris(2-hydroxyethyl)isocyanurate Triacrylate)、ペンタエリスリトール(EO)nテトラアクリレート(Pentaerythritol(EO)n Tetraacrylate、nは1以上4以下の整数である)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Ditrimethylolpropane Tetraacrylate)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol Tetraacrylate)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol Pentaacrylate)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol Hexaacrylate)の中から選択される少なくともいずれか1つを含むことができる。なお、「(EO)n」は、コア化合物に対するエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数であり、「(PO)m」は、コア化合物に対するプロピレンオキシド(PO)の平均付加モル数である。
【0010】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは1,4-ブタンジオールジアクリレート(1,4-Butanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol Diacrylate)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9-Nonanediol Diacrylate)、1,10-デカンジオールジアクリレート(1,10-Decanediol Diacrylate)、1,6-ヘキサンジオール(EO)nジアクリレート(1,6-Hexanediol(EO)n Diacrylate)、nは1以上4以下の整数である)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(Hydroxy pivalic acid neopentyl glycol Diacrylate)、ジプロピレングリコールジアクリレート(Dipropylene glycol Diacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropylene glycol Diacrylate)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(Polypropylene glycol Diacrylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(Diethylene glycol Diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(Triethylene glycol Diacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(Tetraethylene glycol Diacrylate)、及びポリエチレングリコールジアクリレート(Polyethylene glycol Diacrylate)の中から選択される少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0011】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートを含むことができる。
【0012】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、ジプロピレングリコールジアクリレートをさらに含むことができる。
【0013】
前記少なくとも1つの光開始剤は、第1紫外線光で活性化される第1光開始剤と、前記第1紫外線光より長波長である第2紫外線光で活性化される第2光開始剤と、を含むことができる。
【0014】
前記第1光開始剤と前記第2光開始剤との比率は1:1乃至2:1である。
【0015】
前記第1光開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(2,2-dimethoxy-1,2-diphenyl ethan-1-one)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-propanone)、2-ヒドロキシル-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]-2-methyl-1-propanone)、及び2-ヒドロキシル-1-{4-[4-(2-ヒドロキシル-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(2-hydroxy-1-{4-[4-(2-hydroxy-2-methyl-propionyl)-benzyl]-phenyl}-2-methylpropan-1-one)の中から選択されるいずれか1つである。
【0016】
前記第2光開始剤は、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1[4-(methylthio)phenyl]-2-morpholinopropan-1-one)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(2-dimethylamino-2-(4-methyl-benzyl)-1-(4-morpholin-4-yl-phenyl)-butan-1-one)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィン酸化物(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenylphosphine oxide)、2、4、6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィナート(2、4、6-trimethylbenzoyl-diphenyl phosphinate)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphineoxide)、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾエート([1-(4-phenylsulfanylbenzoyl)heptylideneamino]benzoate)、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート([1-[9-ethyl-6-(2-methylbenzoyl)carbazol-3-yl]ethylideneamino] acetate)、及びビス(2,4-シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル))フェニル]チタニウム(IV)(Bis(2,4‐cyclopentadienyl)bis[2,6‐difluoro‐3‐(1‐pyrryl)phenyl] titanium(IV))の中から選択されるいずれか1つである。
【0017】
前記少なくとも1つの光開始剤はアルキルフェノン系の第1光開始剤及びアシルホスフィンオキシド系の第2光開始剤を含むことができる。
【0018】
前記少なくとも1つの光開始剤は、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを含むことができる。
【0019】
前記シロキサン化合物は、末端基としてアクリレート基を有することができる。
【0020】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー80wt%以上96wt%以下、前記少なくとも1つの光開始剤5wt%以上15wt%以下、及び前記シロキサン化合物2wt%以上10wt%以下、を含むことができる。
【0021】
前記ソフトモールド用組成物はホスホン酸をさらに含むことができる。
【0022】
一実施形態は、複数のアクリレート基を有する少なくとも1つのアクリレートモノマーと、第1波長で活性化される第1光開始剤と、前記第1波長より長波長である第2波長で活性化される第2光開始剤と、下記化学式1で表示されるシロキサン化合物と、を含むソフトモールド用組成物を提供する。
【0023】
【0024】
前記化学式1で、Xは水素又はメチル基であり、Lは1以上40以下の数であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に0以上5以下の整数である。
【0025】
前記シロキサン化合物は下記の化学式1-1で表示されうる。
【0026】
【0027】
前記化学式1で、L、m1、m2、n1、n2は請求項1で定義したことと同一である。
【0028】
前記シロキサン化合物は、下記の化学式1-2で表示されうる。
【0029】
【0030】
前記化学式1-2において、L、m1、m2、n1、n2は、化学式1で定義したことと同一である。
【0031】
前記シロキサン化合物は下記の化学式1-3で表示されることができる。
【0032】
【0033】
ソフトモールド用組成物の全体重量を基準に、前記少なくとも1つのアクリレートモノマー40wt%以上96wt%以下、前記第1光開始剤1.5wt%以上12wt%以下、前記第2光開始剤1.5wt%以上3wt%以下;及び前記シロキサン化合物0.1wt%以上50wt%以下、を含むことができる。
【0034】
他の実施形態は、複数の凹部を有する凹凸パターンを含み、前記凹凸パターンは少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー40wt%以上96wt%以下、少なくとも1つの光開始剤3wt%以上15wt%以下、及びシロキサン化合物0.1wt%以上50wt%以下、を含むソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドを提供する。
【0035】
前記シロキサン化合物は、下記の化学式1で表示されうる。
【0036】
【0037】
前記化学式1で、Xは水素又はメチル基であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に0以上5以下の整数である。
【発明の効果】
【0038】
多官能基を有するアクリレートモノマー、及びシロキサン化合物を含むことで、反複使用しても良好な離型特性を示すソフトモールド用組成物を提供することができる。
【0039】
一実施形態のソフトモールドは、高い耐久性を有し、良好な離型特性を有することで、一実施形態のソフトモールドを使用して製造された光学部材の品質を改善し、光学部材製造の際の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】一実施形態のソフトモールドを製造する段階を概略的に示した垂直断面図(1)である。マスターモールド上の全面にソフトモールド用組成物を塗布する段階を示す。
【
図1B】一実施形態のソフトモールドを製造する段階を概略的に示した垂直断面図(2)である。ソフトモールド用組成物の表面について、ベースフィルムで覆うとともに、ローラーにより平坦化する段階を示す。
【
図1C】一実施形態のソフトモールドを製造する段階を概略的に示した垂直断面図(3)である。紫外線を照射してソフトモールド用組成物を硬化する段階を示す。
【
図1D】一実施形態のソフトモールドを製造する段階を概略的に示した垂直断面図(4)である。ソフトモールドを、マスターモールドから分離する段階を示す。
【
図2A】一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した垂直断面図(1)である。基板上に形成された金属層の上に、断続的にパターン形成用レジンを塗布する段階を示す。
【
図2B】一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した垂直断面図(2)である。ソフトモールドの各凹部がパターン形成用レジンの対応する塗布箇所にあてがわれるように、ソフトモールドを基板上に押し当てる段階を示す。
【
図2C】一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した垂直断面図(3)である。紫外線照射により光硬化させて、臨時パターンを形成する段階を示す。
【
図2D】一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した垂直断面図(4)である。光硬化後に、ソフトモールドを引き離した段階を示す。
【
図2E】一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した垂直断面図(5)である。臨時パターンIRで覆われる箇所以外にて金属層をエッチング除去することで、偏光層としてのワイヤグリッドを形成した段階を示す。
【
図3】ソフトモールドの離型力テスト結果を示したグラフである。
【
図4】シロキサン化合物の含量による、一実施形態のソフトモールドの離型力についてのテスト結果を示したグラフである。
【
図5】比較例と一実施形態のソフトモールドとの表面状態を示した図面である。
【
図6】使用回数による離型力の変化を示した図面である。
【
図7A】一実施形態のソフトモールドを最初に使用して形成された光学パターンの形状の表面についての走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)画像(イメージ)である。
【
図7B】
図7AのI-I’領域を切断した断面を示したSEM画像(イメージ)である。
【
図8A】100回使用した一実施形態のソフトモールドを使用して形成された光学パターンの形状の表面に対するSEM画像(イメージ)である。
【
図8B】
図8AのII-II’領域を切断した断面を示したSEM画像(イメージ)である。
【
図9】一実施形態のソフトモールドに製造された偏光部材を含んだ表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定な実施形態を図面に例示し、本文で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとすることではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むこととして理解されるべきである。
【0042】
各図面を説明しながら、類似な参照符号を類似な構成要素に対して使用した。添付された図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して図示したものである。第1、第2等の用語は多様な構成要素を説明するために使用されるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなしに、第1構成要素は第2構成要素と称され、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されるのでありうる。単数の表現は、文脈上、明らかに複数でないものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【0043】
本出願で、“含む”等の用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらを組合したことが存在することを表現しようするものであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組合したものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の“上に”あるとする場合、これは、他の部分の“直ちに上に”ある場合のみでなく、その中間にその他の部分がある場合も含む。
【0044】
以下では、一実施形態のソフトモールド用組成物に対して説明する。一実施形態のソフトモールド用組成物は少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー、少なくとも1つの光開始剤、及びシロキサン化合物を含む。
【0045】
一実施形態でソフトモールド用組成物は1つの多官能アクリレートモノマー、又は2つ以上の複数の多官能アクリレートモノマーを含む。
【0046】
一実施形態のソフトモールド用組成物はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に40wt%以上96wt%以下の多官能アクリレートモノマーを含む。例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物は1つの多官能アクリレートモノマーを40wt%以上96wt%以下に含む。また、一実施形態で複数の多官能アクリレートモノマーの重量の合計がソフトモールド用組成物の全体重量を基準に40wt%以上96wt%以下になる。
【0047】
一実施形態のソフトモールド用組成物に含まれた多官能アクリレートモノマーは1つの反複単位に複数のアクリレート基を有する。多官能アクリレートモノマーは1つの反複単位に2つ以上のアクリレート基を有する。
【0048】
例えば、多官能アクリレートは、モノマー分子内に2つのアクリレート基を有するジアクリレート(diacrylate)であるか、又は3つのアクリレート基を有するトリアクリレート(tricarylate)、4つ以上のアクリレート基を有するテトラアクリレート(tetraacrylate)、ペンタアクリレート(pentaacrylate)、又はヘキサアクリレート(hexaacrylate)等である。しかし、実施形態がこれに限定されることではない。
【0049】
一実施形態のソフトモールド用組成物は単官能アクリレートモノマーを含まない。例えば、単官能アクリレートモノマーは1つのモノマー反複単位に1つのアクリレート基を含む。
【0050】
即ち、一実施形態のソフトモールド用組成物は1つのアクリレート基のみを有する単官能アクリレートモノマーは含まなく、2つ以上の複数のアクリレート基を有する多官能アクリレートモノマーを含む。
【0051】
一実施形態のソフトモールド用組成物は複数の多官能アクリレートモノマーを含む。一実施形態のソフトモールド用組成物は3つ以上のアクリレート基を有する第1アクリレートモノマーを含む。一実施形態のソフトモールド用組成物は3つ以上のアクリレート基を有する複数の第1アクリレートモノマーを含む。
【0052】
一実施形態のソフトモールド用組成物は少なくとも1つの第1アクリレートモノマー以外に2つのアクリレート基を有する第2アクリレートモノマーをさらに含む。
【0053】
3つ以上のアクリレート基を有する第1アクリレートモノマーはトリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane Triacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane propoxylate triacrylate)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(Ethoxylated glycerine triacrylate)、グリセリン(PO)mトリアクリレート(Glycerine(PO)m Triacrylate)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Pentaerythritol Triacrylate)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Tris(2-hydroxyethyl)isocyanurate Triacrylate)、ペンタエリスリトール(EO)nテトラアクリレート(Pentaerythritol(EO)n Tetraacrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Ditrimethylolpropane Tetraacrylate)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol Tetraacrylate)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol Pentaacrylate)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol Hexaacrylate)の中から選択される少なくともいずれか1つである。しかし、実施形態がこれに限定されることではない。
【0054】
一方、エトキシレート変性(EO付加)又はプロポキシレート変性(PO付加)された多官能アクリレートモノマーでEO又はPOの反複単位は4つ以下である。例えば、グリセリン(PO)mトリアクリレートは、グリセリンのほぼ全てのヒドロキシル基にPO付加してからトリアクリレートとしたものであり、ペンタエリスリトール(EO)nテトラアクリレートはEO付加ペンタエリスリトールのテトラアクリレートである。ここで、(PO)m及び(EO)nにて、反複単位の数m及びnは、エチレンオキシド(EO)付加及びプロピレンオキシド(PO)付加の反応の特性により、平均値であり、各々独立に4以下の数である。
【0055】
一実施形態のソフトモールド用組成物に含まれた多官能アクリレートモノマーが、コア化合物に付加されたEO鎖又はPO鎖の末端をアクリレート基として多官能アクリレートモノマーである場合、アルキレンオキシド・アクリレート鎖の数は4つ以下である。アルキレンオキシド・アクリレート鎖の数が5つ以上である場合、このような多官能アクリレートモノマーを使用して製造されたソフトモールドのモジュラスが低下し、耐久性及び耐化学性が低下されることができる。
【0056】
一方、第1アクリレートモノマーはトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートモノマーを含む。
【0057】
2つのアクリレート基を有する第2アクリレートモノマーは1,4-ブタンジオールジアクリレート(1,4-Butanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol Diacrylate)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9-Nonanediol Diacrylate)、1,10-デカンジオールジアクリレート(1,10-Decanediol Diacrylate)、1,6-ヘキサンジオール(EO)nジアクリレート(1,6-Hexanediol(EO)n Diacrylate)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(Hydroxy pivalic acid neopentyl glycol Diacrylate)、ジプロピレングリコールジアクリレート(Dipropylene glycol Diacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropylene glycol Diacrylate)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(Polypropylene glycol Diacrylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(Diethylene glycol Diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(Triethylene glycol Diacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(Tetraethylene glycol Diacrylate)、及びポリエチレングリコールジアクリレート(Polyethylene glycol Diacrylate)の中から選択される少なくともいずれか1つである。しかし、実施形態がこれに限定されることではない。
【0058】
一実施形態のソフトモールド用組成物は2つの第1アクリレートモノマーを含む。例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物はトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートを含む。トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートの重量はソフトモールド用組成物の全体の重量を基準に40wt%以上96wt%以下である。例えば、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートの重量はソフトモールド用組成物の全重量を基準に80wt%以上96wt%以下である。
【0059】
一実施形態のソフトモールド用組成物は2つの第1アクリレートモノマー及び1つの第2アクリレートモノマーを含む。例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物はトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレートを含む。トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレートの重量の合計はソフトモールド用組成物全体重量を基準に40wt%以上96wt%以下である。例えば、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレートの重量の合計はソフトモールド用組成物の全重量を基準に80wt%以上96wt%以下である。
【0060】
一方、一実施形態のソフトモールド用組成物は多官能アクリレートオリゴマーをさらに含む。多官能基のアクリレートオリゴマーは上述した多官能アクリレートモノマーの反複単位を含む。
【0061】
一実施形態のソフトモールド用組成物はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に3wt%以上15wt%以下の少なくとも1つの光開始剤を含む。具体的に一実施形態のソフトモールド用組成物はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に5wt%以上15wt%以下の少なくとも1つの光開始剤を含む。
【0062】
一実施形態のソフトモールド用組成物は複数の光開始剤を含む。一実施形態のソフトモールド用組成物は第1紫外線光で活性化される第1光開始剤及び第2紫外線光で活性化される第2光開始剤を含む。第2紫外線光は第1紫外線光より中心波長が長波長である紫外線光である。
【0063】
例えば、第1紫外線光は中心波長が345nmである紫外線波長領域の光であり、第2紫外線光は中心波長が365nmである紫外線波長領域の光である。
【0064】
一実施形態のソフトモールド用組成物は第1光開始剤と第2光開始剤を1:1乃至2:1の比率に含む。一方、第1光開始剤と第2光開始剤との重量の合計はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に3wt%以上15wt%以下であり、例えば第1光開始剤と第2光開始剤との重量の合計はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に5wt%以上15wt%以下である。
【0065】
一実施形態で、第1光開始剤はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に1.5wt%以上12wt%以下に含まれ、第2光開始剤はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に1.5wt%以上3wt%以下に含まれる。
【0066】
一実施形態のソフトモールド用組成物で少なくとも1つの光開始剤が3wt%未満に含まれる場合、多官能アクリレートモノマーの重合反応度が低いので、重合反応が十分に発生しない可能性がある。また、ソフトモールド用組成物で少なくとも1つの光開始剤が15wt%超で含まれる場合、多官能アクリレートモノマーに対する光開始剤の相溶性(compatibility)が低下しうる。
【0067】
一実施形態のソフトモールド用組成物で第1光開始剤及び第2光開始剤を全て含む場合、第2光開始剤が1.5wt%未満で含まれれば、官能アクリレートモノマーの重合度が低下され、第2光開始剤が3wt%超で含まれれば、多官能アクリレートモノマーに対する第2光開始剤の相溶性が低下しうる。
【0068】
第1光開始剤は、アルキルフェノン系光開始剤(alkylphenone based photoinitiator)である。第2光開始剤はアルキルフェノン系光開始剤、アシルホスフィンオキシド系光開始剤(acylphosphineoxide based photoinitiator)、オキシムエステル系光開始剤(oxime ester based photoinitiator)、又は チタノセン系光開始剤(titanocene based photoinitiator)である。
【0069】
第1光開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(2,2-dimethoxy-1,2-diphenylethan-1-one)、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)、2-ヒドロキシル-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-propanone)、2-ヒドロキシル-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]-2-methyl-1-propanone)、及び2-ヒドロキシル-1-{4-[4-(2-ヒドロキシル-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(2-hydroxy-1-{4-[4-(2-hydroxy-2-methyl-propionyl)-benzyl]-phenyl}-2-methylpropan-1-one)の中から選択されるいずれか1つである。
【0070】
第2光開始剤は、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1[4-(methylthio)phenyl]-2-morpholinopropan-1-one)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(2-dimethylamino-2-(4-methyl-benzyl)-1-(4-morpholin-4-yl-phenyl)-butan-1-one)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィン酸化物(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenylphosphine oxide)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィナート(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenyl phosphinate)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphineoxide)、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]、ベンゾエート([1-(4-phenylsulfanylbenzoyl)heptylideneamino]benzoate)、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート([1-[9-ethyl-6-(2-methylbenzoyl)carbazol-3-yl]ethylideneamino] acetate)、及びビス(2,4-シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル))フェニル]チタニウム(IV)(Bis(2,4‐cyclopentadienyl)bis[2,6‐difluoro‐3‐(1‐pyrryl)phenyl] titanium(IV))の中から選択されるいずれか1つである。
【0071】
例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物は、第1光開始剤として1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを含み、第2光開始剤としてビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを含む。具体的に一実施形態のソフトモールド用組成物は1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン1.5wt%以上12wt%以下、及びビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド1.5wt%以上3wt%以下を含む。一実施形態のソフトモールド用組成物はソフトモールド用組成物の全体重量を基準に1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン6wt%及びビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド3wt%を含む。
【0072】
一実施形態のソフトモールド用組成物は、第1光開始剤と第2光開始剤を全て含んで多官能アクリレートモノマーの重合度を高める。一実施形態のソフトモールド用組成物は第1光開始剤と第2光開始剤とを同時に含んで多官能アクリレートモノマーの重合反応度を増加させて一実施形態のソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドの耐久性を増加させることができる。
【0073】
一実施形態のソフトモールド用組成物はシロキサン化合物を含む。一実施形態のソフトモールド用組成物は、ソフトモールド用組成物の全体の重量を基準に、0.1wt%以上50wt%以下、好ましくは1wt%以上30wt%以下、より好ましくは1wt%以上で20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下または5wt%以下のシロキサン化合物を含む。例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物は、ソフトモールド用組成物の全重量を基準に、2wt%以上10wt%以下、または2wt%以上5wt%以下のシロキサン化合物を含む。
【0074】
一実施形態で、シロキサン化合物は、アクリレート基を末端基として有する。例えば、シロキサン化合物は、末端基としてアクリレート基を有するシロキサン高分子である。具体的に、シロキサン化合物は、両末端に各々アクリレート基を有するシロキサン高分子である。
【0075】
一実施形態に含まれたシロキサン化合物は下記の化学式1で表示される。
【0076】
【0077】
前記化学式1で、Xは水素又はメチル基であり、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に0以上5以下の整数である。
【0078】
化学式1を参照すれば、一実施形態に含まれたシロキサン化合物は、シロキサングループをコアとし、両末端にアクリレート基を有する。一実施形態に含まれ、化学式1で表示されるシロキサン化合物は、分子量が204g/mol以上3500g/mol以下である。
【0079】
ここで、コアをなすシロキサン鎖は、炭素数1~3のアルキル基側鎖を有するジアルキルシロキサン、またはその他の線状のポリシロキサンであってよく、典型的には、ジメチルシロキサン鎖である。コアをなすシロキサン鎖の重合度(上記化学式1のL)は、1~50、好ましくは2~40または3~30である。
【0080】
一方、化学式1で表示されるシロキサン化合物にて、m1及びm2は互いに同一の整数であり、n1及びn2は互いに同一の整数であるが、実施形態がこれに限定されることではない。例えば、m1及びm2は互いに異なる整数であり、n1及びn2は互いに異なる整数である。
【0081】
一実施形態に含まれたシロキサン化合物は、下記の化学式1-1又は下記の化学式1-2で表示される。
【0082】
【0083】
【0084】
前記化学式1-1及び化学式1-2にて、m1及びm2は各々独立に2以上30以下の整数であり、n1及びn2は各々独立に0以上5以下の整数である。
【0085】
一実施形態のソフトモールド用組成物にて、シロキサン化合物は、離型剤(release material)の機能を果たす。一実施形態でシロキサン化合物が0.1wt%未満で含まれる場合、シロキサン化合物は離型剤としての機能を十分に果たすことができないので、このようなソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドの場合、良好な離型特性を示すことができない。また、一実施形態でシロキサン化合物が50wt%超過で含まれる場合、ソフトモールドの耐久性が低下されうる。
【0086】
一実施形態のソフトモールド用組成物は下記の化学式1-3で表示されるシロキサン化合物を含む。下記の化学式1-3のシロキサン化合物は、上記化学式1にて、n1+n2が2(平均値)であり、m1及びm2がいずれも6であり、コアをなすジメチルシロキサン鎖の重合度が約5~30である場合に相当する。
【0087】
【0088】
一実施形態のソフトモールド用組成物は40wt%以上96wt%以下の少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー、3wt%以上15wt%以下の少なくとも1つの光開始剤、及び0.1wt%以上50wt%以下のシロキサン化合物を含む。
【0089】
例えば、一実施形態のソフトモールド用組成物は組成物は80wt%以上96wt%以下の少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー、5wt%以上15wt%以下の少なくとも1つの光開始剤、及び2wt%以上10wt%以下のシロキサン化合物を含む。
【0090】
好ましい具体的な一実施形態(後述の実施例1に対応)において、ソフトモールド用組成物は、80wt%以上のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)、1wt%以上のトリメチロールプロパントリアクリレート、6wt%以上の1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、3wt%のビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、及び2wt%以上10wt%以下のシロキサン化合物を含む。一方、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)とトリメチロールプロパントリアクリレートとの重量の合計は96wt%以下であり、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドとの重量の合計は15wt%以下である。
【0091】
より具体的な一実施形態(後述の実施例1に対応)においては、上記の離型剤としてのシロキサン化合物の含量が、2重量%である場合に、例えば、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)の含量を80~90wt%、トリメチロールプロパントリアクリレートの含量を1~3wt%、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトンの含量を6~8wt%、ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドの含量を3~5wt%とすることができる。なお、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレートにおけるエチレンオキシド(EO)の付加モル数は、場合により、2~5などとしても良い。なお、上記の反応性の離型剤としてのシロキサン化合物の含量を例えば1~10重量%の範囲で変化させる場合、他の各アクリレート化合物の含量を均等に減らすかまた増加させることができる。すなわち、離型剤以外のアクリレート化合物の比率を維持したま離型剤を増減することができる。
【0092】
また、好ましい他の具体的な一実施形態(後述の実施例2に対応)において、ソフトモールド用組成物は60wt%以上のジプロピレングリコールジアクリレート、20wt%以上のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)、1wt%以上のトリメチロールプロパントリアクリレート、6wt%以上の1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、3wt%のビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、及び2wt%以上10wt%以下のシロキサン化合物を含む。一方、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートの重量の合計は96wt%以下であり、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドの重量の合計は15wt%以下である。
【0093】
より具体的な他の一実施形態(後述の実施例2に対応)においては、上記の離型剤としてのシロキサン化合物の含量が、2重量%である場合に、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレート60wt%~70wt%、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)の含量を20~30wt%、トリメチロールプロパントリアクリレートの含量を1~3wt%、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトンの含量を6~8wt%、ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドの含量を3~5wt%とすることができる。なお、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレートにおけるエチレンオキシド(EO)の付加モル数は、場合により、2~5などとしても良い。なお、上記の反応性の離型剤としてのシロキサン化合物の含量を例えば1~10重量%の範囲で変化させる場合、他の各アクリレート化合物の含量を均等に減らすかまた増加させることができる。すなわち、離型剤以外のアクリレート化合物の比率を維持したま離型剤を増減することができる。
【0094】
一方、一実施形態のソフトモールド用組成物は界面活性剤をさらに含む。一実施形態で界面活性剤はホスホン酸(phosphonic acid)を含む。一実施形態でソフトモールド用組成物はフルオロカーボンチェーン(フッ化炭素鎖;fluorocarbon chain)を有するホスホン酸又はアルキルチェーン(alkyl chain)を有するホスホン酸を含む。一実施形態はソフトモールド用組成物の全重量を基準に1wt%以下のホスホン酸をさらに含む。
【0095】
一実施形態のソフトモールド用組成物はホスホン酸を界面活性剤としてさらに含んで以後の説明するマスターモールドに対するソフトモールドの離型特性をさらに改善することができる。
【0096】
上述した一実施形態のソフトモールド用組成物は多官能アクリレートモノマー及びシロキサン化合物を含んで、高い弾性係数と硬度とを有しながら、同時に低い離型力値を有するソフトモールドの製造に使用されることができる。また、一実施形態のソフトモールド用組成物を利用して高い耐久性と耐化学性とを有するソフトモールドを製造することができる。
【0097】
以下では、上述した一実施形態のソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドに対して説明する。一実施形態のソフトモールドに対する説明では上述した一実施形態のソフトモールド用組成物に対して説明した内容と重複される内容に対しては再び説明しなく、差異点を主に説明する。
【0098】
図1A乃至
図1Dは、一実施形態のソフトモールド用組成物を利用してソフトモールドを製造する段階を概略的に示した図面である。
【0099】
図1Aは、一実施形態のソフトモールド用組成物SRがマスターモールド(master mold、HM)に提供される段階を示す。上述した一実施形態のソフトモールド用組成物SRは、供給ノズルSN1を通じて、マスターモールドHMに提供される。マスターモールドHMは、金属材質で形成される。マスターモールドHMは、製造しようとするソフトモールドの形状を反映したナノパターンを含む。マスターモールドHMに形成されたナノパターンの凹部に、提供されたソフトモールド用組成物SRが満たされる。ここで、マスターモールドHMに提供されるソフトモールド用組成物SRは、上述した一実施形態のソフトモールド用組成物である。なお、供給ノズルSN1からの供給は、インクジェット方式またはこれに類似の方法により行うことができる。
【0100】
具体的に、ソフトモールド用組成物SRは、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー、少なくとも1つの光開始剤(photoinitiator)、及びシロキサン化合物を含む。一方、ソフトモールド用組成物SRにて、少なくとも1つの光開始剤は、第1紫外線光で活性化される第1光開始剤、及び、第1紫外線光より長波長である第2紫外線光で活性化される第2光開始剤を含む。
【0101】
即ち、一実施形態で、ソフトモールド用組成物は、複数の多官能アクリレートモノマー、複数の光開始剤、及びシロキサン化合物を含む。
【0102】
また、一実施形態のソフトモールド用組成物SRは、40wt%以上96wt%以下の少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー、3wt%以上15wt%以下の少なくとも1つの光開始剤、及び、0.1wt%以上50wt%以下のシロキサン化合物を含む。
【0103】
図1Bは、提供されたソフトモールド用組成物SRの表面を平坦化する段階を示す。提供されたソフトモールド用組成物SR上に、ローラーRL1を移動させて、マスターモールドHM上に配置されたソフトモールド用組成物SRの厚さを均一にする。提供されたソフトモールド用組成物SRの上には、ベースフィルムSFが、さらに提供される。ベースフィルムSFは、高分子樹脂で形成される。例えば、ベースフィルムSFは、透明な高分子フィルムである。例えば、ベースフィルムSFは、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate)を含んで形成される。ベースフィルムSFは、ソフトモールド用組成物SRを支持する支持体の役割をする。
【0104】
図1Cは、提供されたソフトモールド用組成物SR(
図1B)を硬化する段階を示す。外部光源LUから提供された紫外線光を利用して、マスターモールドHM上に提供されたソフトモールド用組成物SR(
図1B)を硬化させて、一実施形態のソフトモールドSMを製造する。この際、外部光源LUは、345nmの中心波長を有する第1紫外線光と、365nmの中心波長を有する第2紫外線光を、全て提供する。
【0105】
図1Dは、
図1Cで説明した紫外線硬化段階の後に、製造された一実施形態のソフトモールドSMを、マスターモールドHMから分離する段階を示す。一実施形態のソフトモールドSMは、多官能アクリレートモノマー及びシロキサン化合物を含んだ、上述した一実施形態のソフトモールド用組成物で製造されることで、高い耐久性と良好な離型性とを有することによって、欠損される部分が生じることなく、マスターモールドHMから容易に分離されうる。
【0106】
上述した
図1A乃至
図1Dの段階にて製造された、一実施形態のソフトモールドSMは、凸凹パターンを含む。一実施形態のソフトモールドSMは、複数の凹部(recess)RSを有する凹凸パターンを含む。一実施形態のソフトモールドは、複数の凹部RSと、凹部RSの間に配置される突出部EPとを有する凹凸パターンを含む。複数の凹部RSを有する凸凹パターンは、ナノサイズのパターンである。例えば、凹凸パターンの凹部RSの幅、複数の凹部RSの間の間隔、及び複数の凹部RSの深さは、いずれも、数ナノメータ(nanometer)乃至数百ナノメータである。好ましい一実施形態において、凹部RSの幅及び間隔は、20~100nmであり、凹部RSの深さは、40~200nmである。また、幅に対する深さの比率は、1.5~8、特には2~6とすることができる。
【0107】
図2A乃至
図2Eは、一実施形態のソフトモールドを使用して光学部材を製造する段階を概略的に示した図面である。例えば、
図2A乃至
図2Eで製造された光学部材は、ワイヤグリッド(wire-grid)偏光層である。
【0108】
図2Aは、金属層が積層された基板にパターン形成用レジンIR-Pを提供する段階を示す。パターン形成用レジンIR-Pはレジン供給部SN2を通じて提供される。ここで、レジン供給部SN2は、ノズルの形態であり、光学部材を製造するために、パターン形成が必要である領域ごとに、パターン形成用レジンIR-Pを一定量ずつ吐出して塗布する。しかし、実施形態がこれに限定されることはなく、パターン形成用レジンIR-Pは多様なコーティング方法を利用して提供されうる。
【0109】
図2Aで、基板SUBは、光学部材が配置される支持部材である。基板SUBはガラス基板であるが、実施形態がこれに限定されることではない。例えば、基板SUBは高分子樹脂で形成されたプラスチック基板、又は表示装置のアレイ基板であってもよい。基板SUBの上には、予め、金属層MLが提供されている。金属層MLは、例えばアルミニウム(Al、aluminum)等を含むが、実施形態がこれに限定されることではない。
図2Aを参照すれば、パターン形成用レジンIR-Pは、金属層ML上に提供される。例えば、パターン形成用レジンIR-Pはフォトレジストである。
【0110】
図2Bは、提供されたパターン形成用レジンIR-Pの上に、一実施形態のソフトモールドSMを提供する段階を示す。基板SUB上に断続的に塗布されたパターン形成用レジンIR-Pにより、ソフトモールドSMの凹部RS内が満たされる。特には、ストライプ状または島状に形成された、パターン形成用レジンIR-Pの各塗布パターンが、ソフトモールドSMにおける対応する凹部に入り込むようにして、順次、凹部が満たされていく。加圧ローラーRL2は、ソフトモールドSM上に配置されて移動することで、ソフトモールドSMが、金属層MLを有する基板SUB上に、突き当てられて配置されるようにする。
【0111】
図2Cは、
図2Aで提供されたパターン形成用レジンIR-P(
図2A)を光硬化する段階を示す。外部光源LUはソフトモールドSM上に配置される。外部光源LUは、ソフトモールドSMを透過してパターン形成用レジンIR-P(
図2A)を硬化させることで臨時パターンIRを形成するようにする紫外線光を提供する。パターン形成用レジンIR-P(
図2A)を光硬化させて得られた臨時パターンIRは、金属層ML上に固定されて形成される。臨時パターンIRは、ソフトモールドSMの凹部RS(
図2B)に対応するサイズを有するパターンである。すなわち、臨時パターンIRの各ストライプまたは各島状パターンは、幅及び厚み方向寸法が、対応する凹部RSと実質上同一であり、隣り合うものとの間の間隔も実質上同一である。
【0112】
図2Dは、一実施形態のソフトモールドSM(
図2C)を除去した状態を示す。一実施形態のソフトモールドSM(
図2C)は多官能アクリレートモノマー及びシロキサン化合物を含むソフトモールド用組成物で製造されて良好な離型特性を有することによって臨時パターンIRから容易に剥離されうる。
【0113】
図2Eは、基板SUB上に形成された光学パターンML-Pを示す。光学パターンML-Pは
図2Dの臨時パターンIRが形成された金属層MLを蝕刻(エッチング)して形成される。例えば、
図2Eで基板SUB上に形成された光学パターンML-Pはワイヤグリッド偏光層の微細パターンを示す。即ち、一実施形態のソフトモールドSM(
図2C)は高い弾性係数と低い離型力とを有することによって、ソフトモールドSM(
図2C)が良好な臨時パターンIRを形成し、これから製造された光学部材やはり良好な光学パターンML-Pを有することができる。
【0114】
一実施形態のソフトモールド用組成物は、多官能アクリレートモノマー及びシロキサン化合物を含むことで、硬度及び弾性係数が高く、低い離型力を有するソフトモールドを製造することができる。また、一実施形態のソフトモールドは優れた耐久性と良好な離型特性とを有することによって、使用回数が増加しても容易に剥離されるので、光学パターン形成の際、生産性を増加させることができる。
【0115】
以下では、実施形態及び比較例を参照しながら、本発明の一実施形態に係るソフトモールド用組成物で製造された、一実施形態のソフトモールドについて、具体的に説明する。また、以下に示す実施例は、本発明の理解を助けるための一例示であり、本発明の範囲がこれに限定されることではない。
【実施例】
【0116】
1.ソフトモールドの製造
ソフトモールドは、上述の
図1A乃至
図1Dの段階により製造した。すなわち、ソフトモールド用組成物をマスターモールドに提供し、提供されたソフトモールド用組成物を、紫外線光を利用して光硬化することで製造した。この光硬化のためには、提供されたソフトモールド用組成物に、345nmの中心波長を有する紫外線光と、365nmの中心波長を有する紫外線光とが提供された。
【0117】
2.ソフトモールドの評価
上述したソフトモールドの製造方法で製造されたソフトモールドについての離型力と耐久性とを評価した。離型力は、 製造されたソフトモールドの初期(1回目)の離型力と、使用回数に応じて変化する離型力とを各々評価した。
【0118】
ソフトモールドの耐久性は、硬度と弾性係数とで評価した。硬度と弾性係数とはナノインデンター(Nano-indenter;株式会社東陽テクニカの「Nano Indenter G200」)で測定した。硬度と弾性係数とを測定するにあたり、測定サンプルは、ベースフィルムSFを除いた厚さが2μmとなるように製造した。
【0119】
表1と
図3は、一実施形態のソフトモールド用組成物と比較対象サンプルの離型力評価結果を示した。表1及び
図3で実施形態は一実施形態のソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドに対する結果であり、サンプル1及びサンプル2は各々ソフトモールド用組成物がシロキサン化合物を含まない場合の離型力テスト結果を示した。表1に開示された実施形態とサンプル1及びサンプル2に使用されたアクリレートモノマーはトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)であり、実施形態に使用されたモノマーはトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)及びトリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0120】
また、第1光開始剤は、1-ヒドロキシル-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、第2光開始剤はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを使用した。また、シロキサン化合物には、下記の化学式1-3で表示されるシロキサン化合物を使用した(化学式1-1にて、n1=1、n2=1、L=1)。
【0121】
【0122】
【0123】
表1及び
図3の結果を参照すれば、シロキサン化合物を含む一実施形態のソフトモールド用組成物で製造された実施例1の場合、比較対象である比較サンプル1及び比較サンプル2に比べて低い離型力値を示すことが分かる。これと比較して、比較サンプル1と比較サンプル2は、シロキサン化合物を含まないことから、実施例に比べて高い離型力値を示すことを確認することができる。なお、実施例1の組成物の詳細な構成は、後述の表2に示す。
【0124】
一方、比較サンプル1と比較サンプル2とは、、実施例1の組成から、シロキサン化合物及びトリメチロールプロパントリアクリレートを省くとともに、2種の光開始剤の含量及び比率を異ならせた場合に該当する。その他の点では、実施例1と同一であり、アクリレートモノマーの構成及び構成比、並びに含まれる成分は実施例1と同一である。比較サンプル2は、比較サンプル1に比べて光開始剤の総量が多い場合であり、
図3の結果を参照すれば、ソフトモールド用組成物にて光開始剤の総量が増加するにしたがって離型力が減少したことが分かる。
【0125】
図4は、一実施形態のソフトモールド用組成物で離型剤の含量にしたがう離型力の値を示したグラフである。
図4に図示された離型力評価に使用された実施例1~2及び比較例1のソフトモールド製造に使用されたソフトモールド用組成物の組成比は表2に示した。
【0126】
【0127】
表2に示したソフトモールド用組成物中、実施例1と実施例2及び比較例いずれでも、第1光開始剤はソフトモールド用組成物全体重量を基準に6wt%含まれ、第2光開始剤はソフトモールド用組成物全体重量を基準に3wt%含まれた。上記表2の中で、括弧の中には、離型剤の量の変化の範囲、及び、これに伴う各アクリレート成分の量の変化の範囲を示している。上記の「トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(EO=3)」は、トリメチロールプロパンに、一分子あたり3個のエチレンオキシドを付加してエトキシレートとした後、アクリル酸のトリエステルとした化合物である。
【0128】
実施例1及び実施例2で、離型剤としての反応性のシロキサン化合物には、下記の化学式1-3で表示されたシロキサン化合物が使用された。
【0129】
【0130】
実施例2の組成物は、実施例1の組成物と比較して、アクリレートモノマーとしてジプロピレングリコールジアクリレートをさらに含むことにおいて差異がある。実施例1の組成物の粘度は60cp以上であり、実施例2の組成物は、ジアクリレートをさらに含むことによって、20cp以下の低い粘度を示した。
【0131】
図4を参照すれば、実施例1と実施例2で、いずれも、シロキサン化合物の含量が増加することで、ソフトモールドの離型力の値が減少することが分かる。特に、実施例1での離型力の変化を観察すれば、0.5wt%以下のシロキサン化合物が追加される場合にも、離型力低下の効果が大きいであろうことが示されており、また、10wt%以上のシロキサン化合物が追加される場合には、離型力に、大きい変化が無いことが分かる。実施例1及び実施例2で、離型力の値は、0.02kgf以下まで減少した。
【0132】
これと比較して、比較例1では、離型剤として弗素系離型剤を使用した。弗素系離型剤の含量が0.5wt%までは実施例1と類似の離型力の値を示したが、比較例の場合、離型剤の含量が0.5wt%よりさらに増加しても離型力の値が減少しなかった。
【0133】
図5は、一実施形態のソフトモールド用組成物でシロキサン化合物の比率を変化させた実施例と比較例の表面状態を示したことであり、
図6はソフトモールド用組成物でシロキサン化合物の比率を変化させた実施例と比較例の使用回数にしたがう離型力の変化を示したグラフである。
【0134】
図5及び
図6に図示された離型力の評価に使用された、実施例及び比較例のソフトモールドを製造するのに使用されたソフトモールド用組成物の組成比は表2に示した。
【0135】
【0136】
表3で、実施例1と実施例2は、上述した表2の実施例1及び実施例2で使用されたソフトモールド用組成物と同一の組成及び組成比を有する。表3で比較例2は表2の比較例1と比較して、離型剤としてポリジメチルシロキサン(平均重合度が約20)を使用したことにおいて差異がある。
【0137】
図5は、比較例と実施例1でのソフトモールドの表面ウェッティング(wetting)特性を示した写真である。ウェッティング特性は製造されたソフトモールド表面に油性ペンでマーキング(marking)テストをして評価した。比較例(ref)の場合、ソフトモールド表面に油性ペンで表示された部分が明確に観察されたのであるが、実施例1に対する実験では、シロキサン化合物の含量が増加するほど、油性ペンでのマーキングが良好に行い得ず、油性ペンでなぞった部分が明確に表示されなくなったことが分かる。これは、シロキサン化合物を含む実施例の場合、表面での撥水又は撥油能力が優れることを示す。
図5で、2wt%、5wt%、及び10wt%は、それぞれ、ソフトモールド用組成物に含まれたシロキサン化合物の重量比を示したものであって、シロキサン化合物の含量が増加するほど、表面ウェッティング性が低下することが分かる。
【0138】
即ち、実施形態のソフトモールドの場合、比較例(ref)に比べて高い撥水及び撥油能力を有することによって、提供されたパターン表面に対して低い離型力を有することができる。したがって、比較例と比較して相対的に小さい力で容易に実施例のソフトモールドをパターン表面から除去することができる。
【0139】
図6は、ソフトモールドの使用回数に応じる離型力の変化を示した。比較例及び実施例1~2のいずれにおいても、使用回数が増加することによって離型力値が増加するということを確認することができる。
【0140】
しかし、比較例に比べて、実施例1及び実施例2の場合、同一の反複使用回数を基準に、より低い離型力の値を示すことが分かる。特に、実施例2の場合は、実施例1の場合よりも低い離型力値を示すことが分かる。これについては、1回使用した後のみならず、100回まで反複使用する場合にも同一の結果を示した。
【0141】
即ち、ジアクリレートモノマーをさらに含んだソフトモールド用組成物で製造された実施例2の場合に、実施例1に比べて、良好な離型特性を有するということを確認することができる。
【0142】
一実施形態のソフトモールド用組成物は、比較例で使用された弗素系離型剤又はポリジメチルシロキサンに比べて、アクリレートモノマーとの相溶性が高い離型剤成分である、末端アクリレート基含有シロキサン化合物を含むことで、ソフトモールド用組成物の全重量に対する離型剤の相対的な含量を増加させることができ、これにしたがって、ソフトモールドが、低い離型力の値を有するようにすることができる。
【0143】
即ち、ソフトモールド用組成物にシロキサン化合物を含むことによってソフトモールドの離型力を減少させることができ、ソフトモールドを形成されたパターンから容易に脱着させることができる。
【0144】
図7A乃至
図7Bは、一実施形態のソフトモールド用組成物で製造された一実施形態のソフトモールドを1回使用して形成された光学パターンの形状を示した。
図8A乃至
図8Bは一実施形態のソフトモールド用組成物で製造された一実施形態のソフトモールドを1回使用して形成された光学パターンの形状を示した。
【0145】
図7Aは、実施例1のソフトモールドを使用して形成した光学パターンの表面を示したSEMイメージであり、
図7Bは、
図7AのI-I’線に対応する断面を示したSEMイメージである。
図7A及び
図7Bは、製造された実施例1のソフトモールドを最初(1回目)に使用して製造された光学パターンのイメージを示した。
【0146】
図8Aは、100回使用した実施例1のソフトモールドを使用して形成した光学パターンの表面を示したSEMイメージであり、
図8Bは、
図8AのII-II’線に対応する断面を示したSEMイメージである。
図8Aの平面イメージで一部の異物質が観察されるが、
図8Bの断面イメージを見る時、概ね良好な光学パターン形状を示すことを確認することができる。
【0147】
即ち、実施形態のソフトモールドは100回以上使用しても優れた耐久性及び良好な離型特性を示すことが分かる。
【0148】
図9は、ワイヤグリッド偏光層を含む表示装置の一実施形態を示した断面図である。
図9に図示された表示装置DDは、第1基板SUB1の上部面に形成されたワイヤグリッド偏光層WGPを含む。即ち、ワイヤグリッド偏光層WGPはインセルタイプの偏光層である。
【0149】
図9に図示された表示装置DDは、第1基板SUB1、第1基板SUB1と対向して配置される第2基板SUB2、及び第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に配置される液晶層LCLを含む液晶表示装置である。
【0150】
第1基板SUB1の上には、ナノサイズの光学パターンML-Pを含むワイヤグリッド偏光層WGPが配置される。また、ワイヤグリッド偏光層WGPは、反射パターンML-Rをさらに含む。
【0151】
第1基板SUB1の上には、ワイヤグリッド偏光層WGPをカバーするベース絶縁膜ILとベース絶縁膜IL上に配置された画素アレイとを含む。画素アレイは薄膜トランジスタTRと画素電極PEとを含む。また、薄膜トランジスタTRはゲート電極GE、ゲート絶縁膜GI、半導体層SL、及びソース電極SEとドレーン電極DEを含む。
【0152】
第1基板SUB1と対向する第2基板SUB2の一面には、カラーフィルター層CFと遮光層BMとが配置される。
【0153】
ワイヤグリッド偏光層WGPで光学パターンML-Pは、表示装置DDの表示領域に対応して配置され、反射パターンML-Rは非表示領域に対応して配置される。
図9の図示を参照すれば、反射パターンML-Rは薄膜トランジスタTRに対応して配置される。
【0154】
図9に図示されなかったが、表示装置DDの第1基板SUB1の下方には、バックライトユニット(図示せず)が配置される。バックライトユニット(図示せず)から第1基板SUB1を通じて提供された光は、光学パターンML-Pを有するワイヤグリッド偏光層WGPで偏光される。
【0155】
一方、
図9に図示された表示装置DDで、第2基板SUB2の上には、偏光層PLが配置される。
図9で偏光層PLは、第2基板SUB2の上面に配置されることととして図示されたが、実施形態がこれに限定されることはなく、偏光層PLは第2基板SUB2の下面に配置されてもよい。上面に配置される場合、偏光層PLはインセル偏光層である。偏光層PLは、ワイヤグリッド偏光層WGPと直交する偏光軸を有する。偏光層PLは、フィルムタイプの偏光部材であるか、又はコーティング型偏光層である。例えば、偏光層PLは偏光子を有する偏光フィルムである。また、偏光層PLは、異色性染料を含む物質をコーティングして形成される。
【0156】
図9に図示された表示装置DDの実施形態で、ワイヤグリッド偏光層WGPは、上述した一実施形態のソフトモールドを利用して形成される。一実施形態のソフトモールドは良好な離型特性と高い耐久性とを有するので、これを利用して形成されたワイヤグリッド偏光層WGPを含む表示装置DDの生産性を向上させることができる。
【0157】
一実施形態のソフトモールド用組成物は、シロキサン化合物を含むことで、ソフトモールドが低い離型力の値を示すようにすることができる。また、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーを含むことで、ソフトモールドの耐久性を向上させることができる。
【0158】
即ち、多官能アクリレートモノマーとシロキサン化合物を含んだソフトモールド用組成物で製造されたソフトモールドは、高い耐久性と、良好な離型特性を有することによって、マスターモールド、又は、ナノインプリント法で形成されたパターンから容易に脱着でき、ソフトモールドの反複使用回数を増加させることができるので、光学部材製造工程での生産性を向上させることができる。
【0159】
以上では本発明の望ましい実施形態を参照して説明したが、該当技術分野の熟練された当業者又は該当技術分野に通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることを理解させることができる。
【0160】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されることではなく、特許請求の範囲によって定まれなければならない。
【符号の説明】
【0161】
SR ソフトモールド用組成物
SM ソフトモールド
HM マスターモールド
RS 凹部(recess)
DD 表示装置
WGP ワイヤグリッド偏光層