特許 7112227 アクリル系粘着剤組成物及び粘着シート

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-07-26

(45)【発行日】2022-08-03

(54)【発明の名称】アクリル系粘着剤組成物及び粘着シート

(51)【国際特許分類】

   C09J 133/04 20060101AFI20220727BHJP

   C09J 133/24 20060101ALI20220727BHJP

   C09J 133/14 20060101ALI20220727BHJP

   C09J 11/06 20060101ALI20220727BHJP

   C09J 7/20 20180101ALI20220727BHJP

   C09J 7/38 20180101ALI20220727BHJP

【ＦＩ】

C09J133/04

C09J133/24

C09J133/14

C09J11/06

C09J7/20

C09J7/38

【請求項の数】 10

(21)【出願番号】P 2018064059

(22)【出願日】2018-03-29

(65)【公開番号】P2018172668

(43)【公開日】2018-11-08

【審査請求日】2021-01-05

(31)【優先権主張番号】P 2017070215

(32)【優先日】2017-03-31

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(31)【優先権主張番号】P 2017070248

(32)【優先日】2017-03-31

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(73)【特許権者】

【識別番号】000002174

【氏名又は名称】積水化学工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000796

【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】炭井 佑一

(72)【発明者】

【氏名】安井 伸宜

(72)【発明者】

【氏名】小谷野 春

(72)【発明者】

【氏名】野世渓 元

【審査官】水野 明梨

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１２－１９３２４８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－２１５５２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－２１３２０３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－１２７０１２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－０４４０７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－２０３８９９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－２０５３２９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｃ０９Ｊ １／００－２０１／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

（メタ）アクリル酸エステルと、ヒドロキシ基含有モノマーと、アミノ基含有（メタ）アクリルモノマー及びアミノ基含有（メタ）アクリルアミドモノマーのうちの少なくとも一方であり、第３級アミンであるアミノ基含有化合物と、が重合した（メタ）アクリル共重合体を含み、
前記アミノ基含有化合物の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、０．００１～３質量部未満であり、
シランカップリング剤をさらに含み、
光重合開始剤をさらに含む、アクリル系粘着剤組成物。

【請求項2】

酸価が５ｍｇＫＯＨ／ｇ以下である請求項１に記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項3】

前記シランカップリング剤の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、０．０１～１０質量部である、請求項１又は２に記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項4】

前記シランカップリング剤の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、０．２～１０質量部である、請求項１～３のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項5】

前記シランカップリング剤の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、４～１０質量部である、請求項１～４のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項6】

（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、４０～８０質量部の(メタ)アクリル酸エステル及び５～５０質量部のヒドロキシ基含有モノマーをモノマー成分として含有する（メタ）アクリル共重合体を含有する請求項１～５のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項7】

架橋剤を含まない、１～６のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【請求項8】

請求項１～７のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する光学用透明粘着シート。

【請求項9】

請求項８に記載の光学用透明粘着シートと、前記光学用透明粘着シートの第１の表面に積層された第１の被着体と、前記光学用透明粘着シートの前記第１の表面とは反対の第２の表面に積層された第２の被着体とを備えた光学積層体。

【請求項10】

第１の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、反射防止フィルム、偏光板又はタッチパネルモジュールであり、第２の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、偏光板、タッチパネルモジュール、又はディスプレイパネルモジュールである請求項９に記載の光学積層体。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、アクリル系粘着剤組成物及び粘着シートに関する。

【背景技術】

【0002】

自動車や航空機に搭載されるタッチパネルの前面板として、ガラスだけでなく、安全性又は軽量化の目的で、樹脂板が用いられるようになっており、樹脂板は光学用透明粘着シートによりタッチパネルモジュールと貼り合わされている。しかしながら、樹脂板は、加熱によりアウトガスを発生させる性質を有するため、加熱時に樹脂板と粘着シートとの間にアウトガスに起因する気泡が発生するという問題があった。

【0003】

特許文献１では、水酸基含有モノマー（ａ１）とアミノ基含有モノマー（ａ２）を含有する共重合成分を共重合して得られるアクリル系樹脂（Ａ）を含有するアクリル系粘着剤組成物に関し、アミノ基含有モノマー（ａ２）を添加することで耐発泡性の向上に取り組んでいる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１３-２１３２０３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、アミン化合物を添加するとアクリル系粘着剤組成物は耐発泡性は向上するが、アミン化合物の量が増大すると、経時的な白化又は黄変が起こり、このトレードオフが課題である。

【0006】

本発明の目的は、耐発泡性且つ耐白化性、又は耐発泡性且つ耐黄変性に優れたアクリル系粘着剤組成物および粘着シートを提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明者らは、上記の目的を達成すべく、本発明では、アミノ基含有化合物を比較的少量使用し、更にはシランカップリング剤を用いることで耐発泡性の向上と、耐白化性及び／又は耐黄変性との両立が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0008】

すなわち、本発明は以下の通りである。

【0009】

項１．
アミノ基含有化合物を含み、アミノ基含有化合物の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、０．００１～３質量部未満であり、シランカップリング剤をさらに含む、アクリル系粘着剤組成物。

【0010】

項２．前記アミノ基含有化合物が第３級アミンである項１に記載のアクリル系粘着剤組成物。

【0011】

項３．前記アミノ基含有化合物がアミノ基含有（メタ）アクリルモノマー及びアミノ基含有（メタ）アクリルアミドモノマーのうちの少なくとも一方である項１又は２に記載のアクリル系粘着剤組成物。

【0012】

項４．酸価が５ｍｇＫＯＨ／ｇ以下である項１～３のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【0013】

項５．（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量を１００質量部として、０．０１～１０質量部のシランカップリング剤を含む項１～４のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【0014】

項６．（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、４０～８０質量部の(メタ)アクリル酸エステル及び５～５０質量部のヒドロキシ基含有モノマーをモノマー成分として含有する（メタ）アクリル共重合体を含有する項１～５のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。

【0015】

項７．項１～６のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する光学用透明粘着シート。

【0016】

項８．項７に記載の光学用透明粘着シートと、前記光学用透明粘着シートの第１の表面に積層された第１の被着体と、前記光学用透明粘着シートの前記第１の表面とは反対の第２の表面に積層された第２の被着体とを備えた光学積層体。

【0017】

項９．第１の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、反射防止フィルム、偏光板又はタッチパネルモジュールであり、第２の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、偏光板、タッチパネルモジュール、又はディスプレイパネルモジュールである項９に記載の光学積層体。

【発明の効果】

【0018】

本発明のアクリル系粘着剤組成物及び粘着シートは、自動車や航空機に搭載されるタッチパネルに適用した場合でも、優れた耐発泡性と、白化抑制性及び／又は耐黄変性とを発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体を備える画像表示装置を示す斜視図およびその一部の分解斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

本明細書において、「及び／又は」は少なくとも一方の意味であり、例えば「Ａ及び／又はＢ」は、Ａのみ、Ｂのみ、及びＡとＢの両方のいずれかを指す。

【0021】

本明細書において、「（メタ）アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を指す。従って、例えば（メタ）アクリル酸には、アクリル酸とメタクリル酸が含まれ、(メタ)アクリル酸エステルにはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが含まれる。その他の「（メタ）アクリル」が用いられている化合物についても同様である。

【0022】

本明細書において、「アクリル系粘着剤組成物」とは、アクリル酸エステルを主成分として含有する粘着性組成物を指す。

【0023】

１．アクリル系粘着剤組成物
本発明の光学用透明粘着シートは、（モノ）アクリル酸エステルを主成分モノマーとして含有するアクリル系粘着性組成物中のモノマーを重合させて（メタ）アクリル共重合体とすることにより形成される。

【0024】

本発明の一実施形態のアクリル系粘着性組成物の構成成分について説明する。

【0025】

アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル（Ａ）及びヒドロキシ基含有モノマー（Ｂ）をモノマー成分として含有する。

【0026】

(メタ)アクリル酸エステル（Ａ）は、アクリル系粘着剤におけるベースポリマーを構成するモノマー主成分であり、１種のみを使用することもできるし、２種以上の(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて使用することもできる。(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた場合の各々の(メタ)アクリル酸エステルの割合は任意に選択し得る。(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは炭素数１～１５の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。

【0027】

（メタ）アクリル酸エステル（Ａ）としては、例えば、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、プロピル（メタ）アクリレート、イソプロピル（メタ）アクリレート、ブチル（メタ）アクリレート、イソブチル（メタ）アクリレート、ｓ－ブチル（メタ）アクリレート、ｔ－ブチル（メタ）アクリレート、ペンチル（メタ）アクリレート、ヘキシル（メタ）アクリレート、ヘプチル（メタ）アクリレート、オクチル（メタ）アクリレート、２－エチルヘキシル（メタ）アクリレート、イソオクチル（メタ）アクリレート、ノニル（メタ）アクリレート、イソノニル（メタ）アクリレート、デシル（メタ）アクリレート、イソデシル（メタ）アクリレート、ウンデシル（メタ）アクリレート、ドデシル（メタ）アクリレート、トリデシル（メタ）アクリレート、テトラデシル（メタ）アクリレート、ペンタデシル（メタ）アクリレート、ヘキサデシル（メタ）アクリレートなどのアルキルエステル（メタ）アクリレート；イソボルニル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレート、ジシクロペンタニル（メタ）アクリレートなどの、脂環式炭化水素基を有する（メタ）アクリル酸エステル；フェニル（メタ）アクリレート、ベンジル（メタ）アクリレート、フェノキシエチル（メタ）アクリレート、フェノキシジエチレングリコール（メタ）アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する（メタ）アクリル酸エステル；などが挙げられる。

【0028】

(メタ)アクリル酸エステル（Ａ）の含有量は、好ましくは（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、４０～９５質量部であり、より好ましくは４０～８０質量部である。

【0029】

ヒドロキシ基を含有するモノマー（Ｂ）としてはヒドロキシ（メタ）アクリレートが挙げられ、ヒドロキシ（メタ）アクリレートとしては例えば、２－ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、３－ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート、４－ヒドロキシブチル（メタ）アクリレート、６－ヒドロキシヘキシル（メタ）アクリレートなどのヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートのアルキルの炭素数は２～６であることが好ましい。ヒドロキシ基を含有するモノマーは、１種のみを使用することもできるし、２種以上を組み合わせて使用することもできる。

【0030】

ヒドロキシ基を含有するモノマー（Ｂ）の含有量は、好ましくは（メタ）アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量１００質量部に対し、５～５０質量部である。この範囲にあることにより、アクリル系粘着剤組成物に白化抑制性及び重合安定性が付与される。含有量が５質量部以上であると加熱及び加湿時のアクリル系粘着剤組成物の白化がより効果的に抑制される。また、含有量が５０質量部以下であると、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分の重合反応が安定的に進行する。

【0031】

アクリル系粘着剤組成物は、アミノ基含有化合物（Ｃ）を含み、アミノ基含有化合物の含有量が、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、０．００１～３質量部未満であり、シランカップリング剤をさらに含む。

【0032】

アミノ基含有化合物（Ｃ）は、好ましくは第３級アミンである。

【0033】

また、アミノ基含有化合物（Ｃ）は、好ましくはアミノ基含有（メタ）アクリルモノマー及びアミノ基含有（メタ）アクリルアミドモノマーのうちの少なくとも一方である。

【0034】

アミノ基含有（メタ）アクリルモノマーの例としては、アミノメチル（メタ）アクリレート、アミノエチル（メタ）アクリレート、アミノプロピル（メタ）アクリレート、アミノイソプロピル（メタ）アクリレート等のアミノアルキル（メタ）アクリレート；Ｎ－（ｔ－ブチル）アミノエチル（メタ）アクリレートを初めとするＮ－アルキルアミノアルキル（メタ）アクリレート等の一置換アミノ基含有（メタ）アクレート；Ｎ，Ｎ－ジメチルアミノエチル（メタ）アクリレート、Ｎ，Ｎ－ジエチルアミノエチル（メタ）アクリレート、Ｎ，Ｎ－ジメチルアミノプロピル（メタ）アクリレート、Ｎ，Ｎ－ジエチルアミノプロピル（メタ）アクリレートを初めとするＮ，Ｎ－ジアルキルアミノアルキル（メタ）アクリレート等の二置換アミノ基含有（メタ）アクレート；等が挙げられる。中でも、Ｎ，Ｎ－ジアルキルアミノアルキル（メタ）アクリレートが好ましい。

【0035】

アミノ基含有（メタ）アクリルアミドモノマーの例としては、ジメチルアミノプロピル（メタ）アクリルアミド等のＮ，Ｎ－ジアルキルアミノアルキル（メタ）アクリルアミド等が挙げられる。

【0036】

アミノ基含有化合物（Ｃ）の含有量の上限は、耐黄変性の観点から、より好ましくは、１．５質量部、さらに好ましくは０．８質量部である。また、該含有量の下限は、より好ましくは、０．０５質量部である。

【0037】

シランカップリング剤（Ｄ）としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ－メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ－メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ－グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ－グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ－グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、２－（３，４－エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、γ－アミノプロピルトリメトキシシラン、γ－アミノプロピルトリエトキシシラン、Ｎ－（２－アミノエチル）－３－アミノプロピルトリエトキシシラン、Ｎ－（２－アミノエチル）－３－アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ－メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ－メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、およびγ－メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。上記シランカップリング剤（Ｄ）は、１種のみが用いられてもよく、２種以上が併用されてもよい。なかでも、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。

【0038】

（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対して、上記シランカップリング剤（Ｄ）の含有量は好ましくは１０質量部以下である。シランカップリング剤（Ｄ）の含有量は好ましくは（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対して０．０１～１０質量部であり、より好ましくは０．０５質量部以上、５質量部以下である。このように、従来に比べて比較的高濃度のシランカップリング剤を含有させることで、光学用透明粘着シートを樹脂板に適用した際に、粘着シート及び樹脂板との積層体の白化を抑制することができる。特に、上記アミノ基含有化合物（Ｃ）として第３級アミンを用いた場合、耐発泡性を維持しつつ耐白化性を向上させることができる。上記シランカップリング剤（Ｄ）の含有量が、特に０．０１質量部以上（好ましくは０．０５質量部以上）であると、アクリル系粘着剤組成物及びそれより形成された粘着シートの白化及び／又は黄変を防ぐことができる。上記シランカップリング剤（Ｄ）の含有量が１０質量部以下であると、離型紙または離型フィルムを粘着シートから容易に剥離することができる。

【0039】

アクリル系粘着剤組成物は、任意選択で、高極性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。このような高極性モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、（メタ）アクリロイルモルフォリン、ビニルモルフォリン、ジアルキル（メタ）アクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリルアミドなどが挙げられる。

【0040】

また、アクリル系粘着剤組成物は、任意選択で、導電性材料の腐食を進行させない程度の少量の（メタ）アクリル酸を含んでいてもよい。少量の（メタ）アクリル酸は、耐発泡性の向上に寄与するが、多量の（メタ）アクリル酸は耐白化性及び耐黄変性を損なうため、(メタ)アクリル酸の含有量は、（メタ）アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量１００質量部に対し、０．５質量部以下であることが好ましく、０．２５質量部以下であることがより好ましい。

【0041】

上記成分（Ａ）及び（Ｂ）の含有量は限定されないが、好ましくは、アクリル系粘着剤組成物は、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し、４０～８０質量部の(メタ)アクリル酸エステル（Ａ）及び５～５０質量部のヒドロキシ基含有モノマー（Ｂ）をモノマー成分として含有する（メタ）アクリル共重合体を含有する。この場合、(メタ)アクリル酸は含まないことが好ましいが、(メタ)アクリル酸が含まれる場合、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対し０．２５質量部以下であることが好ましい。

【0042】

本発明のアクリル系粘着剤組成物には、必要に応じて各種添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂（例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など）、熱安定剤、酸化防止剤、静電気防止剤、増粘剤、充填剤、着色剤（顔料又は染料など）、紫外線吸収剤、界面活性剤などの公知の各種添加剤が挙げられる。このような添加剤は、添加される場合、通常、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対して０．０１～１０質量部程度である。

【0043】

また、より優れた耐発泡性、耐白化性及び／又は耐黄変性を提供するため、アクリル系粘着剤組成物の 酸価は５ｍｇＫＯＨ／ｇ以下であることが好ましい。また、耐腐食性の観点からも、アクリル系粘着剤組成物の 酸価は５ｍｇＫＯＨ／ｇ以下であることが好ましい。

【0044】

２．アクリル系粘着剤組成物の製造方法、アクリル系粘着剤、及び粘着シート
上記アクリル系粘着剤の製造方法としては、例えば、上記（メタ）アクリル共重合体を構成するモノマー成分の混合物を重合開始剤の存在下でラジカル重合させて（メタ）アクリル共重合体を製造し、アクリル系粘着剤を得る方法が挙げられる。該混合物には、これに必要に応じて上述の各種添加剤等、他の成分を加えることができる。

【0045】

重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物（過酸化物系開始剤）又はアゾ系化合物（アゾ系開始剤）などが挙げられる。なかでも、ＩＴＯなどの金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とする場合に該金属薄膜に与える影響を考慮すると、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましい。

【0046】

上記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。

【0047】

有機過酸化物としては、例えば、１，１－ビス（ｔ－ヘキシルパーオキシ）－３，３，５－トリメチルシクロヘキサン、ｔ－ヘキシルパーオキシピバレート、ｔ－ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、２，５－ジメチル－２，５－ビス（２－エチルヘキサノイルパーオキシ）ヘキサン、ｔ－ヘキシルパーオキシ－２－エチルヘキサノエート、ｔ－ブチルパーオキシ－２－エチルヘキサノエート、ｔ－ブチルパーオキシイソブチレート、ｔ－ブチルパーオキシ－３，５，５－トリメチルヘキサノエート、ｔ－ブチルパーオキシラウレートなどが挙げられる。

【0048】

アゾ系化合物としては、例えば、２，２´－アゾビスイソブチロニトリル、２，２´－アゾビス－２－メチルブチロニトリル、２，２´－アゾビス（２－メチルプロピオン酸）ジメチル、４，４´－アゾビス－４－シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、２，２´－アゾビス（２－アミジノプロパン）ジヒドロクロライド、２，２´－アゾビス［２－（５－メチル－２－イミダゾリン－２－イル）プロパン］ジヒドロクロライド、２，２´－アゾビス（２－メチルプロピオンアミジン）二硫酸塩、２，２´－アゾビス（Ｎ，Ｎ´－ジメチレンイソブチルアミジン）ジヒドロクロライドなどが挙げられる。

【0049】

重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分１００質量部に対して０．００１～５０質量部、好ましくは０．０１～１０質量部程度である。

【0050】

本発明では、各モノマー成分を用いて重合させて得られた（メタ）アクリル共重合体はそのまま乾燥させて用いてもよく、また、（メタ）アクリル共重合体をさらに架橋剤で架橋させることにより硬化させて用いてもよい。（メタ）アクリル共重合体を架橋させることにより、剥離ライナーなどの）基材の剥離性及び粘着性に加えて、（メタ）アクリル共重合体に耐熱性などの耐久性も付与される。なお、（メタ）アクリル共重合体の架橋は、アクリル系粘着剤層の形成の際や、形成後に行うことができる。

【0051】

上記の架橋剤としては、従来公知のものを用いることができるが、ポリイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物が好ましく、特にポリイソシアネート系化合物が好適である。架橋剤は単独で又は２種以上混合して使用することができる。なお、ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネート系化合物の使用量は、例えば、（メタ）アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量１００質量部に対して０．０１～２０質量部（好ましくは０．０５～１５質量部）程度である。一実施形態では、上記（メタ）アクリル共重合体を含有する本発明のアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含む。別の実施形態では、上記（メタ）アクリル共重合体を含有する本発明のアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含まない。

【0052】

（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量は、アクリル系粘着剤組成物の量１００質量部に対し通常５０質量部以上であり、好ましくは６０質量部、より好ましくは７０質量部、さらに好ましくは８０質量部（アクリル系粘着剤組成物の量に対し通常５０質量％以上であり、好ましくは６０質量％、より好ましくは７０質量％、さらに好ましくは８０質量％である。一実施形態では、特に（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分は、（メタ）アクリル酸エステル（Ａ）、ヒドロキシ基含有モノマー（Ｂ）、及び任意選択のジアルキル（メタ）アクリルアミド及び／又はジエチルアクリルアミドの合計量が上記の割合を満たす。

【0053】

本発明のアクリル系粘着剤組成物からなるアクリル系粘着剤としては、その調製過程でいかなる形態も取りうるが、取り扱い性の面で、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系、光重合系などの形態で用いることが好ましい。アクリル系粘着剤は単独で又は２種以上組み合わせて使用することができる。

【0054】

本発明の光学用透明粘着シートは、上記の（メタ）アクリル共重合体を含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層から形成される。粘着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。粘着剤層の厚みとしては、高透明性などを損なわない範囲であれば特に制限されないが、例えば、１～数千μｍ程度の範囲から選択することができる。

【0055】

なお、粘着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、慣用のコーター（グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど）を用いて、アクリル系粘着剤を所定の面（例えば、基材表面など）に塗布することにより、粘着剤層を形成することができる。

【0056】

粘着シートは、前記粘着剤層を有していれば、その構成は特に制限されない。具体的には、粘着シートとしては、例えば、（１）粘着剤層のみから形成された構成の基材レス両面粘着シート、（２）基材の少なくとも一方の面に粘着剤層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の基材付き両面粘着シート、（３）基材の一方の面に粘着剤層が形成された構成の基材付き粘着シートなどが挙げられる。なお、粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、基材の両面に形成された粘着剤層（粘着剤層）が粘着剤層であってもよく、基材の一方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層であり且つ基材の他方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層以外の粘着剤層（「非粘着剤層」と称する場合がある）であってもよい。

【0057】

基材としては、紙などの紙系の基材、布、不織布、ネットなどの繊維系の基材；金属箔、金属板などの金属系の基材；プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系の基材；ゴムシートなどのゴム系の基材；などの適宜な薄層体を用いることができる。基材として、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。基材には剥離ライナーが含まれ、剥離ライナーは、粘着シート又はテープ用の公知の剥離ライナーを用いることができる。基材は本発明の光学用透明粘着シートを貼り合わせる被着体として機能する。

【0058】

粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の光学用透明粘着シートは、テープ状、シート状などの形態を有することができる。従って、粘着シートには、粘着シート又は粘着テープが含まれる。

【0059】

本発明の光学用透明粘着シートを製造する方法は特に限定されない。基材レスの光学用透明粘着シートを製造する方法として、例えば、上記アクリル系粘着剤組成物を離型材の離型処理面に塗工することによって塗膜を形成し、得られた塗膜の上に、離型処理面が塗膜に接するようにして新たに用意した離型材を重ね合わせて積層体を得た後、得られた積層体をゴムローラなどにより加圧する方法などが挙げられる。

【0060】

また、本発明の光学用透明粘着シートを製造する方法として、上記（メタ）アクリル共重合体の原料となるモノマー成分の混合物を、塊状重合によってラジカル重合させ、上記（メタ）アクリル系共重合体を製造すると同時にシート化まで行う方法も好適である。

【0061】

上記塊状重合は、重合熱の除去がしやすく、反応制御がしやすいことから、光重合であることが好ましい。

【0062】

特に、本発明の光学用透明粘着シートを製造する方法として、モノマー成分の混合物、光重合開始剤、及び、必要に応じて添加剤などを含有し、かつ、溶剤を含有しないモノマー組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成した後、このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせ、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射などの光照射を行うことにより、モノマー成分の混合物をラジカル重合させる方法が好適に用いられる。なお、上記透明な合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。

【0063】

本発明の光学用透明粘着シートを光重合によって製造する場合には、重合と同時に架橋構造を形成できることから、モノマー成分の混合物は、重合性官能基を２個以上有する多官能（メタ）アクリレートを含有してもよい。

【0064】

上記多官能（メタ）アクリレートとしては、例えば、１，６－ヘキサンジオールジ（メタ）アクリレート、１，４－ブタンジオールジ（メタ）アクリレート、ポリプロピレングリコールジ（メタ）アクリレート、水添ポリブタジエンジ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ（メタ）アクリレート、ポリウレタンジ（メタ）アクリレート、ポリエステルジ（メタ）アクリレートなどが挙げられる。なかでも、得られる光学用透明粘着シートの応力分散性の低下が小さく粘着性能に優れる点から、１，６－ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。

【0065】

モノマー成分の混合物が上記多官能（メタ）アクリレートを含有する場合、上記多官能（メタ）アクリレートの配合量としては、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部中の好ましい下限が０．０２質量部、好ましい上限が５質量部である。上記多官能（メタ）アクリレートの配合量が０．０２質量部以上であると、上記（メタ）アクリル共重合体の架橋が充分であり、得られる光学用透明粘着シートは、凝集力が得られ加工性が良好である。上記多官能（メタ）アクリレートの配合量が５質量部以下であると、得られる光学用透明粘着シートは、被着体に対する粘着力及び初期接着性が得られ、信頼性が維持される。上記多官能（メタ）アクリレートの配合量のより好ましい下限は（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部中０．０５質量部、より好ましい上限は３質量部である。

【0066】

上記光重合開始剤としては、例えば、４－（２－ヒドロキシエトキシ）フェニル（２－ヒドロキシ－２－プロピル）ケトン（ＢＡＳＦ社製、商品名「ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）２９５９」）などのケトン系光重合開始剤、α－ヒドロキシ－α，α’－ジメチル－アセトフェノン（ＢＡＳＦ社製、商品名「ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）１１７３」）、メトキシアセトフェン、２，２－ジメトキシ－２－フェニルアセトフェン（ＢＡＳＦ社製、商品名「ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）６５１」）、２－ヒドロキシ－２－シクロヘキシルアセトフェノン（ＢＡＳＦ社製、商品名「ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）１８４」）などのアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。

【0067】

上記光重合開始剤の配合量としては、（メタ）アクリル共重合体のモノマー成分全量１００質量部に対する好ましい下限が０．０１質量部、好ましい上限が５質量部である。上記光重合開始剤の配合量が０．０１質量部以上であると、モノマー成分の混合物の重合が進行し、得られる光学用透明粘着シートは、凝集力を有し必要な物性が得られる。上記光重合開始剤の配合量が５質量部以下であると、光照射時にラジカル発生量が低く維持され、得られる（メタ）アクリル共重合体の分子量が良好となる。上記光重合開始剤の配合量のより好ましい下限は０．０３質量部、より好ましい上限は１質量部である。

【0068】

上記光照射に用いられるランプとしては、例えば、波長４００ｎｍ以下に発光分布を有するランプなどが挙げられる。上記波長４００ｎｍ以下に発光分布を有するランプとしては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達してモノマー成分の混合物を効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。

【0069】

上記光照射における光照射強度および照射時間は、（メタ）アクリル共重合体の重合度又は光学用透明粘着シートの性能などに合わせて、当業者により適宜選択することができる。

【0070】

本発明の光学用透明粘着シートは、前処理、各種製造プロセス段階、製品使用中などで高温下及び／又は高湿度下にさらされても、白化及び／又は黄変が抑制される。

【0071】

本発明の光学用透明粘着シートは、耐発泡性と、白化抑制性及び／又は耐黄変性とに優れている。

【0072】

本発明の光学用透明粘着シートは、光学的に透明な部材を備えた電気製品、電子製品、若しくは光学機器、例えば携帯電話、スマートフォン、パソコン、電子ペーパー、タブレット型パーソナルコンピューターおよびゲーム機などの画像表示装置（例えば液晶ディスプレイ、ＯＥＣＤディスプレイ、エレクトロウェッティング方式ディスプレイ）を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着したり、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる。上記粘着シートはこれら以外の光学フィルムなどの光学用途にも適用可能である。

【0073】

本発明の光学用透明粘着シートを介して基材同士が積層された光学積層体もまた、本発明に包含される。

【0074】

本発明に係る光学積層体は、光学用透明粘着シートと、光学用透明粘着シートの第１の表面に積層された第１の被着体と、光学用透明粘着シートの第１の表面とは反対の第２の表面に積層された第２の被着体とを備える。第１の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、反射防止フィルム、偏光板又はタッチパネルモジュールであることが好ましい。第２の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、飛散防止フィルム、超複屈折フィルム、偏光板、タッチパネルモジュール、又はディスプレイパネルモジュールであることが好ましい。

【0075】

カバーパネルが、カバーガラス、ポリカーボネート板、または、ポリメチルメタクリレート板であり、第１の被着体が、カバーガラス、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。

【0076】

光学積層体の具体例としては、光学用透明粘着シートを介してカバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されたカバーパネル－タッチパネルモジュール積層体や、光学用透明粘着シートを介してカバーパネルとディスプレイパネルモジュールとが接着されたカバーパネル－ディスプレイパネルモジュール積層体や、光学用透明粘着シートを介してタッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとが接着されたタッチパネルモジュールディスプレイパネルモジュール積層体などが挙げられる。上記カバーパネルとしては、ガラス板や樹脂板が好適に用いられる。上記光学用透明粘着シートは、カバーパネルがポリカーボネート板またはアクリル板である場合に特に好適である。

【0077】

また、上記光学用透明粘着シートを介して金属または金属酸化物により形成された透明電極層付フィルムの２つが積層された透明電極層付フィルム積層体も、光学用積層体として好ましい。

【0078】

上記光学積層体と画像表示部とを備える画像表示装置に、上記光学積層体は好適に用いられる。

【0079】

図１は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を含む画像表示装置１を示す斜視図およびその一部の分解斜視図である。

【0080】

画像表示装置１０は、表面を保護するためのカバーパネル１３が、タッチパネルモジュール１４上に、光学用透明粘着シート１２を介して貼り合わされた構造を有する。タッチパネルモジュール１４は、金属薄膜付フィルム１６と、光学用透明粘着シート１７と、金属薄膜付フィルム１６と、光学用透明粘着シート１７と、支持体１８とがこの順で積層された構造を有する。光学用透明粘着シート１２と、金属薄膜付フィルム１６と、光学用透明粘着シート１７と、金属薄膜付フィルム１６とがこの順で積層された部分は、金属薄膜付フィルム積層体１９である。この金属薄膜付フィルム積層体１９と、光学用透明粘着シート１７と、支持体１８とがこの順で積層された部分は、タッチパネルモジュール２０である。

【0081】

図１において、上記タッチパネルモジュールは、光学用透明粘着シート１７を介してディスプレイパネルモジュールに貼り合わされるが、その際には、タッチパネルモジュールから支持体１８を剥離した状態で貼り合わされる。

【0082】

上記画像表示装置１０としては、携帯電話および携帯情報端末などが挙げられる。上記支持体１８としては、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。

【0083】

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。

【実施例】

【0084】

（実施例１）
（１）（メタ）アクリル酸エステル系共重合体溶液の製造
温度計、攪拌機、冷却管、紫外線照射装置を備えた反応器に、２－エチルヘキシルアクリレートを４５質量部、イソボルニルアクリレートを３０質量部、４－ヒドロキシブチルアクリレートを２５質量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド０．０５質量部、２，２－ジメトキシ－１，２－ジフェニルエタン－１－オン（ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）６５１、ＢＡＳＦ）０．０５質量部加え、窒素ガスを吹き込んで窒素置換した後、粘度（ＢＨ粘度計Ｎｏ．５ローター、１０ｒｐｍ、測定温度２５℃）が約４Ｐａ・ｓになるまで反応器内に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合した光学用粘着剤組成物を作製した。各成分の含有量（質量部）を表１に示した。

【0085】

（２）粘着シートの製造
上記（１）で得られた光学用粘着剤組成物の溶液に光重合開始剤（ＩＲＧＡＣＵＲＥ（登録商標）６５１、ＢＡＳＦ社製）を０．０５質量部、シランカップリング剤（ＫＢＭ－４０３、エポキシ構造を有するシランカップリング剤、信越化学工業社製）を表中に示す質量部加えて攪拌した。得られた溶液を離型ポリエチレンテレフタレートフィルム（ＳＰ３０００、東洋クロス社製）の離型処理面上に塗工し、さらに離型ポリエチレンテレフタレートフィルム（ＳＰ４１０７、東洋クロス社製）の離型処理面が上記塗工により形成された粘着剤層に面するように、かつ粘着剤層の厚みが３００μｍとなるように離型ポリエチレンテレフタレートフィルムに重ね合わせて、ケミカルランプにて照度２ｍＷ／ｃｍ２の紫外線を３６０秒間照射して光学用透明粘着シートを製造した。

【0086】

（実施例２～１０、比較例１～２）
（メタ）アクリル酸エステル系共重合体を構成するモノマー種及び比率などを表１のようにした以外は実施例１と同様にして、実施例２～１０及び比較例１～２の光学用透明粘着シートを得た。

【0087】

（評価）
実施例及び比較例で得られた粘着シートについて、下記の評価を行った。結果を表１に示す。実施例１～１０の光学用透明粘着シートは、耐発泡性、及び耐白化性（実施例１～６及び８～１０についてはさらに耐黄変性）に優れていた。さらに、実施例１～９の光学用透明粘着シートは、これらの性質に加えて、耐腐食性にも優れていた。

【0088】

（１）耐発泡性の評価
得られた粘着シートを４５ｍｍ×６０ｍｍの平面形状を有するように裁断した。裁断された粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着シートの露出した面を厚み１ｍｍの樹脂板（商品名「ＭＲ－５８」（三菱ガス化学社製）上に貼り合わせた。更に、粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着シートの露出した面をガラス板（商品名「Ｓ－９１１２」、ＭＡＴＳＵＮＡＭＩ社製）上に貼り合わせて、樹脂板上に、粘着シートとガラス板とがこの順で積層されているモジュール積層体である試験片を得た。

【0089】

その後、得られたモジュール積層体を４５℃、０．４５ＭＰａのオートクレーブにて１５分間処理を行った後、２３℃、５０％ＲＨの環境下で一晩放置し、翌日から温度８５℃かつ８５％ＲＨの条件で１０００時間静置し、カバーパネル－タッチパネルモジュール積層体を得た。得られたカバーパネル－タッチパネルモジュール積層体の接着界面における気泡発生状態を目視により観察した。

【0090】

０．１ｍｍ以上の大きさの気泡が全く観察されなかった場合を「○（耐発泡性なし）」、０．１ｍｍ以上の大きさの気泡が１つのカバーパネル－タッチパネルモジュール積層体当たり１個以上観察された場合を「×（耐発泡性あり）」として、気泡発生状態を評価した。

【0091】

（２）耐白化性の評価
上記の（１）に示したように、樹脂板／粘着剤層／ガラス板の層構造を有する試験片を作製した。

【0092】

次に、この試験片を８５℃かつ相対湿度（ＲＨ）８５％の高温高湿下に放置し、放置開始前及び１０００時間放置後の試験片のΔヘイズ値（％）を、分光測色計（製品名「ＣＭ-３６００Ｄ」、コニカミノルタ社製）を用いて測定し、下記式により算出した。

【0093】

Δヘイズ値（％）
＝｛１０００時間放置後のヘイズ値（％）｝－｛放置開始前のヘイズ値（％）｝
Δヘイズ値が、１以下であった場合を「○」とし、１よりも大きく３以下である場合を「△」とし、３よりも大きい場合を「×」として評価した。

【0094】

（３）耐黄変性の評価
上記の（１）に示したように、樹脂板／粘着剤層／ガラス板の層構造を有する試験片を作製した。

【0095】

次に、この試験片を８５℃かつ相対湿度（ＲＨ）８５％の高温高湿下に放置し、放置開始前及び１０００時間放置後の試験片のΔｂ＊値（％）を、分光測色計（製品名「ＣＭ-３６００Ｄ」、コニカミノルタ社製）を用いて測定し、下記式により算出した。

【0096】

Δｂ*値（％）
＝｛１０００時間放置後のｂ*値（％）｝－｛放置開始前のｂ*値（％）｝
Δｂ＊値が、１以下であった場合を「○」とし、１よりも大きい場合を「△」、１．５よりも大きい場合を「×」として評価した。

【0097】

（４）酸価の測定
粘着シートの両面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したものを試料として、以下のようにして酸価を測定した。

【0098】

１００ｍＬの三角フラスコに試料０．５ｇ～１ｇとトルエン／メタノール＝７０／３０（容量）混合溶媒６０ｍＬを投入し、室温で一晩撹拌しながら分散させた後、電位差滴定装置を用いて０．１ｍｏｌ／Ｌ水酸化カリウムアルコール溶液で電位差滴定を行い、得られた変曲点を終点とした。同様の方法で空試験も行い、下式より酸価を算出した。なお、電位差滴定装置としては、京都電子工業社製 ＡＴ－５００Ｎを使用し、電極として複合ガラス電極を使用した。

【0099】

【数1】

【0100】

（５）耐腐食性の評価
樹脂板に代えて金属酸化物薄膜付ガラス板（製品名「ＩＴＯ膜付きガラス（スパッタ品）０００２」、ＧＥＯＭＡＴＥＣ社製）を使用する以外は上記の（１）と同様の方法によって、金属酸化物薄膜ガラス板上に粘着シートとガラス板とがこの順で積層されているモジュール積層体である試験片（金属酸化物薄膜ガラス板／粘着剤層／ガラス板の層構造を有する）を得た。

【0101】

次に、この試験片を８５℃かつ相対湿度（ＲＨ）８５％の高温高湿下に放置し、放置開始前及び１０００時間放置後の試験片の金属酸化物薄膜付ガラス板の抵抗測定値を、非接触抵抗値測定器（製品名「ＥＣ－８０Ｐ」、ナプソン社製）を使用して金属酸化物薄膜付ガラス側から測定した。得られた測定値に基づいて、抵抗変化率を下記式により算出した。

【0102】

抵抗変化率（％）
＝｛（１０００時間放置後の測定値－放置開始前の測定値）／放置開始前の測定値｝×１００
抵抗変化率が２０％以下であった場合を「○」とし、２０％よりも大きい場合を「×」として評価した。

【0103】

【表1】

【図1】