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  • 特許-光モジュール、及び光伝送装置 図1
  • 特許-光モジュール、及び光伝送装置 図2
  • 特許-光モジュール、及び光伝送装置 図3
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  • 特許-光モジュール、及び光伝送装置 図5A
  • 特許-光モジュール、及び光伝送装置 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】光モジュール、及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20220727BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20220727BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220727BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G02B6/42
H01L23/40 Z
H01S5/022
H05K7/20 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018081140
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019191281
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】大森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大竹 寿和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝市
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-093908(JP,A)
【文献】特開平07-074292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0280368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
H01L 23/40
H01S 5/022
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の光サブアセンブリと、
前記1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路と、
第1のケース及び第2のケースを含む、筺体と、
前記第1のケースの外表面に配置される、金属板と、
を備える、光モジュールであって、
前記第1のケースの前記外表面は金属で構成され、
前記筺体は、前記第1のケース及び前記第2のケースが嵌合されることにより、前記筺体の内部に、前記1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の制御回路と、を格納し、
前記金属板の外表面の表面粗さは、前記第1のケースの前記外表面の表面粗さよりさらに低い、
ことを特徴とする、前記金属板との接触箇所にヒートシンクを備える光伝送装置に抜き差しが可能な光モジュール。
【請求項2】
請求項に記載の光モジュールであって、
前記金属板の外表面の平面度は、前記第1のケースの前記外表面の平面度よりさらに高い、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項3】
1又は複数の光サブアセンブリと、
前記1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路と、
第1のケース及び第2のケースを含む、筺体と、
前記第1のケースの外表面に配置される、金属板と、
を備える、光モジュールであって、
前記第1のケースの前記外表面は金属で構成され、
前記筺体は、前記第1のケース及び前記第2のケースが嵌合されることにより、前記筺体の内部に、前記1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の制御回路と、を格納し、
前記金属板の外表面の平面度は、前記第1のケースの前記外表面の平面度よりさらに高い、
ことを特徴とする、前記金属板との接触箇所にヒートシンクを備える光伝送装置に抜き差しが可能な光モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記金属板の熱伝導性が、前記第1のケースの熱伝導性よりさらに高い、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記金属板は板金である、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記金属板の外表面の高さは、前記第1のケースの前記外表面の高さよりさらに高い、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記第1のケースの前記外表面と前記金属板との間に、接着剤、粘着剤、両面テープからなる群より選択される1が配置される、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記第1のケースの前記外表面と前記金属板との間に、熱伝導シートがさらに配置される、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光モジュールであって、
前記第1のケースの前記外表面には、平面視して前記金属板の形状と実質的に同じである溝部が形成されている、
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光モジュールが搭載される、光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光伝送装置に関し、特に、簡便な方法で熱伝導を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光送信機能、又は/及び光受信機能を有する光モジュールが用いられている。かかる光モジュールは、光伝送装置に搭載されるのが一般的である。搭載するための作業工程に鑑みて、かかる光モジュールに、光伝送装置に対して抜き差し可能なプラガブルモジュールが広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-153992号公報
【文献】特開2009-152428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光送信機能や光受信機能を実現するために、一般に、光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリ(OSA:Optical SubAssembly)を備えている。また、かかる光モジュールは、1又は複数の制御回路(例えばIC)をさらに備え、1又は複数の制御回路は光サブアセンブリを駆動及び制御する。
【0005】
光モジュールが駆動されるとき、1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路は、熱を発生する。それゆえ、光モジュールから搭載される光伝送装置へ、発生する熱を放出する必要がある。光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路を格納する筺体を備えており、発生する熱は筺体より光伝送装置へ放熱される。放熱性を向上させるために、筺体は金属製など熱伝導率が比較的高い材質で形成され、光伝送装置は光モジュールとの接合箇所にヒートシンクを備えている。放熱性をさらに向上させるために、光モジュールの筐体と光伝送装置のヒートシンクとの間に、熱伝導シートを配置させることが考えられる。しかしながら、光モジュールがプラガブルモジュールである場合に、熱伝導シートが剥がれてしまう恐れがあり、それを抑制する技術が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0006】
近年、光モジュールの高機能化に伴い高密度実装が行われている。光モジュールの発熱量もより多くなっている。それに応じて、ヒートシンクとの接合箇所となる筺体の外表面には、より高い平面度(フラットネス)やより低い表面粗さ(ラフネス)が求められることとなる。特許文献1に開示の技術では、筺体の外表面に複雑な構造を要しており、平面度を損なう上に、抜き差しの容易性(プラガブル性)を損なってしまう。特許文献2に、抜き差し時に熱伝導シートと光モジュールが直接接触しない技術が開示されているが、低い表面粗さを実現することが困難である。なお、特許文献1及び特許文献2に開示される熱伝導シートは、熱伝導率の高いフィラーを含むシリコン系材料やアクリル系材料など軟質な材料で形成される。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、簡便に熱伝導性が向上される、光モジュール及び光伝送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路と、第1のケース及び第2のケースを含む、筺体と、前記第1のケースの外表面に配置される、金属板と、を備える、光モジュールであって、前記筺体は、前記第1のケース及び前記第2のケースが嵌合されることにより、前記筺体の内部に、前記1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の制御回路と、を格納する、ことを特徴とし、前記金属板との接合箇所にヒートシンクを備える光伝送装置に抜き差しが可能である。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光モジュールであって、前記金属板の外表面の表面粗さは、前記第1のケースの外表面の表面粗さよりさらに低くてもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の光モジュールであって、前記金属板の外表面の平面度は、前記第1のケースの外表面の平面度よりさらに高くてもよい。
【0011】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記金属板の熱伝導性が、前記第1のケースの熱伝導性よりさらに高くてもよい。
【0012】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記金属板は板金であってもよい。
【0013】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記金属板の外表面の高さは、前記第1のケースの外表面の高さよりさらに高くてもよい。
【0014】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記第1のケースの外表面と前記金属板との間に、接着剤、粘着剤、両面テープからなる群より選択される1が配置されてもよい。
【0015】
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記第1のケースの外表面と前記金属板との間に、熱伝導シートがさらに配置されていてもよい。
【0016】
(9)本発明に係る光伝送装置は、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光モジュールが搭載される、光伝送装置であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、簡便に熱伝導性が向上される、光モジュール及び光伝送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る光モジュール2外観図である。
図3】本発明の実施形態に係る光伝送装置と光モジュールとの接合箇所を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る光モジュールの構成を示す斜視図である
図5A】本発明の実施形態に係る光受信モジュールの断面図である。
図5B】本発明の実施形態に係る光受信モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11とIC12を備えている。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1に、複数の光モジュール2が搭載されており、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0021】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール2は、プリント回路基板21と、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信する光送信モジュール23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光受信モジュール23A及び光送信モジュール23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22B(FPC)を介して接続されている。光受信モジュール23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介して光送信モジュール23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光受信モジュール23Aや光送信モジュール23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。プリント回路基板21は、光受信モジュール23Aより伝送される電気信号を制御する制御回路(例えばIC)や、光送信モジュール23Bへ伝送する電気信号を制御する制御回路(例えばIC)を備えている。
【0022】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3(図示せず:例えば光ファイバ3A,3B)を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の光伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0023】
図2は、当該実施形態に係る光モジュール2の外観図である。当該実施形態に係る光モジュール2は、QSFP-DD(MSA規格)に適応しており、光モジュール2の伝送レートは400Gbit/sである。図2に示す通り、光モジュール2は、筺体100を備える。筺体100は、上ケース101(第1のケース)及び下ケース102(第2のケース)を含む。光モジュール2(すなわち、光モジュール2の筺体100)はさらに金属板103を備え、上ケース101の外側(上側)の表面に配置される。
【0024】
図3は、当該実施形態に係る光伝送装置1と光モジュール2との接合箇所200を示す模式断面図である。光伝送装置1は、光モジュール2の金属板103との接合箇所にヒートシンク30を備えている。光モジュール2が光伝送装置1に搭載されると、光伝送装置1と光モジュール2との接合箇所200において、金属板103とヒートシンク30とが物理的に接することとなる。なお、光モジュール2は、光ファイバへ接続される側の端部に、プルタブ50をさらに備え、光モジュール2を光伝送装置1に抜き差しする際に、ユーザはプルタブ50を利用すればよい。特に、光モジュール2を抜く(除去)する際に、プルタブ50は有用である。
【0025】
図4は、当該実施形態に係る光モジュール2の構成を示す斜視図である。上ケース101としたケース102とが分離された状態で、内部に格納される主要な部品がそれぞれ示されている。簡単のために、主要な部品のみを示しており、それ以外の部品は図示を省略している。図4に示す通り、光モジュール2は、2個の光サブアセンブリ104,105(1又は複数の光サブアセンブリ)を備えている。図2に示す光受信モジュール23Aは、一般に1又は複数の光サブアセンブリを備えるが、ここでは、1個の光サブアセンブリ104を備えている。光サブアセンブリ104は、4個の100Gbit/s級(より具体的にはPAM4信号による50GBaud級)の受信素子を備えたROSA(Receiver Optical SubAssembly)である。すなわち、光サブアセンブリ104は4個または4波の光入力とそれに対応した4チャンネルの電気出力を備えている。図2に示す光送信モジュール23Bは、一般に1又は複数の光サブアセンブリを備えるが、ここでは、1個の光サブアセンブリ105を備えている。光サブアセンブリ105は、100Gbit/s級(より具体的にはPAM4信号による50GBaud級)の発光素子を備えたTOSA(Transmitter Optical SubAssembly)である。すなわち、光サブアセンブリ105は4チャンネルの電気入力とそれに対応した4個または4波の光出力を備えている。光サブアセンブリ104,105の筐体はBOX型である。
【0026】
光モジュール2は、プリント回路基板21上に配置される制御用IC106,107をさらに備える。ここで、制御用IC106,107が、1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路である。プリント回路基板21はさらに図示しない電気部品を有している。プリント回路基板21は下ケース102に格納される。光モジュール2は、放熱シート111,112,113,114をさらに備える。放熱シート111,112はそれぞれ、制御用IC106,107の上面に貼付される。放熱シート113,114はそれぞれ、光サブアセンブリ104,105のうちボックス型筺体の上面に貼付される。すなわち、放熱シート113,114はそれぞれ、光サブアセンブリ104,105の上面の少なくとも一部に貼付される。筺体100は、上ケース101及び下ケース102が嵌合されることにより、筺体100の内部に、1又は複数の光サブアセンブリ(ここでは、光サブアセンブリ104,105)と、1又は複数の制御回路(制御用IC106,107)と、を格納する、上ケース101及び下ケース102が嵌合される状態では、放熱シート111,112,113,114,上ケース101の内側(下側)の表面の表面と物理的に接触する。放熱シート111,112,113,114は、熱伝導率の高いフィラーを含むシリコン系又はアクリル系などの材料によって形成される熱伝導シートであり、駆動時に光サブアセンブリ104,105及び制御用IC106,107に発生する熱を上ケース101に伝導させるための放熱部である。放熱部は放熱シートに限定されることはなく、放熱グリスであってもよい。
【0027】
金属板103は、上ケース101の外側(上側)の表面に配置されるが、金属板103と上ケース101の外側の表面との間に、接着剤120が配置され、接着剤120が金属板103を上ケース101の外側の表面上に固定する。接着剤120は熱伝導性の高い材料によって形成されるのが望ましい。また、上ケース101から金属板103へ放熱するのに問題とならないよう、接着剤120は薄く貼付されるのが望ましい。接着剤120の代わりに、ロウ付けによって金属版103が固定されてもよい。なお、上ケース101と下ケース102とは、取付ねじ125によって固定される。
【0028】
当該実施形態に係る光モジュール2の主な特徴は、金属板103が上ケース101の外側の表面(外表面)に配置されることにある。上ケース101及び下ケース102は金属製であり、例えば、アルミニウム合金や亜鉛合金などを材料に形成される。上ケース101及び下ケース102を成型するためには、ダイキャストや切削などの加工工程が一般的である。しかしながら、ダイキャストや切削によって上ケース101を成型すると、上ケースの外側の表面を、より高い平面度(より平坦な平面)やより低い表面粗さ(より平滑な表面粗さ)を実現することが困難となる。ここで、平面度とは、平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさである。また、表面粗さとは、部品の加工面の状態(凹凸)を表すものであり、高さ、深さ、間隔が異なる山、谷が連続する周期的な形状の粗さの度合いである。また、ダイキャスト成型後に表面研磨などにより平面度を高めることや表面粗さをより平滑にすることも可能だが、コスト面で非常に不利となる。標準規格において、光モジュール2の筐体100と光伝送装置1のヒートシンク30との接合箇所200における筺体100の表面の平面度や表面粗さはより厳しいものが求められてくることが考えられる。これに対して、当該実施形態に係る光モジュール2では、かかる接合箇所200に金属板103が配置されており、より高い平面度やより低い表面粗さを実現することを容易にしている。高い平面度や低い表面粗さである外側の表面を有する金属板103とヒートシンク30とが物理的に接触することで、より高い密着度で接することができ、接触熱抵抗を低くすることができ、放熱性が向上される。
【0029】
金属板103は、板金であるのが望ましい。板金は金属材料をローラーに通して圧縮することで形成されるが、板金による金属板の表面を、より低い表面粗さに加工することは容易である。金属板103を上ケース101の外側の表面に配置することにより、簡便な方法で、より低い表面粗さを有する筺体100の表面を実現することが出来ている。金属板103の外側の表面の表面粗さが、上ケース101の外側の表面の表面粗さよりさらに低い、すなわち、より平滑である(より鏡面に近い)のが望ましい。金属板103の外側の表面の平面度が、上ケース101の外側の表面の平面度よりさらに高いのが望ましい。板金は、様々な種類の金属(合金を含む)で実現可能であるので、金属板103に高い熱伝導性を有する金属材料(例えば、銅)を用いて形成することができる。金属板103(を構成する金属)の熱伝導性が、上ケース101(を構成する金属)の熱伝導性より、さらに高いのが、放熱性向上の観点から望ましい。
【0030】
上ケース101の外側の表面に金属板103を配置したことにより、ヒートシンク30との接続箇所200に放熱シートが配置される場合と異なり、光モジュール2の抜き差しによる、金属板103の剥がれが問題となることはない。
【0031】
図5A及び図5Bは、光モジュール2の断面図である。図5Aは、図3に示す円Aのうち光モジュール2の部分を拡大したものであり、図5Bは、図3に示す円Bのうち光モジュール2の部分を拡大したものである。図5Aに示す部分は、金属板103の外側端部(光ファイバー3に接続される側の端部)を含む部分である。図5Bに示す部分は、金属板103の内側端部(光伝送装置1に接続される側の端部)を含む部分である。上ケース101の外側の表面が平坦であり、平坦な部分の一部にそのまま金属板103を配置してもよい。しかしながら、当該実施形態に係る上ケース101の外側の表面は、金属板103が格納されるよう、また、金属板103の厚みに応じて、溝部を形成しているのが望ましい。溝部は、平面視して、金属板103の形状と実質的に同じであるのが望ましく、厳密には、金属板103の外縁より所定の幅で外側に広がる形状が望ましい。所定の幅は、作製精度などを考慮して可能な小さい値であるのが望ましい。金属板103が接着剤120によって固定される状態で、金属板103の外側の表面の高さが、上ケース101の外側の表面の高さより、さらに高いのが、光モジュール2を抜き差しする際の金属板103の擦れや搭載時のヒートシンク30との密着度の観点から望ましい。ここで、上ケース101の外側の表面の高さとは、金属板103の外縁より外側に広がる平坦面の高さをいう。なお、ここで、「高い」とは、筺体100の内部に対してより外側に位置することを言う。
【0032】
ここでは、金属板103は接着剤120を用いて上ケース101の外側の表面に固定されているが、これに限定されることはなく、熱伝導性両面テープ、両面テープ、又は粘着剤のいずれかを用いて金属板103を上ケース101の外側の表面に固定してもよい。さらに、上ケース101の外側の表面と金属板103との間に、柔軟性のある熱伝導シート(放熱シート)を配置してもよい。熱伝導シートの両面それぞれに両面テープが添付されている熱伝導シートが用いられているし、上ケース101の外側の表面と熱伝導シート、及び熱伝導シートと金属板103との間をそれぞれ、接着剤、(熱伝導性)両面テープ、粘着剤からなる一群より選択されるいずれかによって固定してもよい。光モジュール2が光伝送装置1に搭載されると、金属板103に接触するヒートシンク30により押し付けられ、熱伝導シートの柔軟性により、金属板103とヒートシンク30との密着度がさらに向上するという格別の効果を奏する。搭載時に金属板103がヒートシンク30によって押し付けられ、上ケース101により近づくことを考慮し、搭載時に金属板103の上面の高さが、上ケース101の外側の面の高さより高くなるよう、光モジュール2が光伝送装置1に搭載されていない状態で、金属板103の上面の高さが、上ケース101の外側の面より(接着剤120のみによって金属板103が固定されている場合と比べて)さらに高くなっているのが望ましい。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る光モジュール、光伝送装置、及び光伝送システムについて説明した。本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能であり、本発明を広く適用することができる。上記実施形態で説明した構成を、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0034】
上記実施形態では、光モジュール2はQSFP-DDに適応しているが、これに限定されることはなく、他の規格に適応していてもよい。接合箇所における筺体の表面の表面粗さがより低い値(又は、平面度がより高い値)が求められる規格において、本発明は格別の効果を奏する。
【0035】
上記実施形態では、金属板103は板金であるとしたが、これに限定されることなく、所望の表面粗さ(や平面度)となる表面を実現することが出来るのであれば、他の加工方法により形成されていてもよい。上記実施形態では、制御回路は駆動用ICとしたが、これに限定されることなく他の構成であってもよい。
【0036】
上記実施形態では、光モジュール2は4チャンネルの光サブアセンブリ104,105を備えるとしたが、これに限定されることなく、1又は複数の光サブアセンブリを備えていてもよい。上記実施形態では、光サブアセンブリ104,105の筐体はBOX型であるとしたが、これに限定されることはない。光サブアセンブリの筐体が円筒型であってもよい。また、光モジュール2は、光送信機能又は光受信機能のいずれかのみに限定されていてもよい。すなわち、光モジュール2は、光送信サブアセンブリ又は光受信サブアセンブリのいずれかのみを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 光伝送装置、2 光モジュール、3,3A,3B 光ファイバ、11,21 プリント回路基板、12 IC,22A,22B フレキシブル基板、23A,100 光受信モジュール、23B,光送信モジュール、30 ヒートシンク、50 プルタブ、100 筺体、101 上ケース、102 下ケース、103 金属板、104,105 光サブアセンブリ、106,107 制御用IC,111,112,113,114 放熱シート、120 接着剤、125 取付ねじ、200 接合箇所。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B