(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】台車格納装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220727BHJP
E04H 6/06 20060101ALI20220727BHJP
B65G 1/10 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
E04H6/18 603
E04H6/06 V
B65G1/10 C
(21)【出願番号】P 2018093807
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】巳波 健
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6300998(JP,B1)
【文献】特開2000-110386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
E04H 6/06
B65G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車装置のパレットに台車を載せて格納する台車格納装置であって、
前記パレット上に設置される第1スライダ枠と、
前記第1スライダ枠と前記台車との間に介在させる第2スライダ枠と、
前記第2スライダ枠を前記第1スライダ枠に対して前後方向へ移動させる第1駆動機構と、
前記台車を前記第2スライダ枠に対して前後方向へ移動させる第2駆動機構と、
を備え
、
第1駆動機構は、
前記第1スライダ枠に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第1シャフトと、
各第1シャフトに回転不可能に装着される前後一対の第1スプロケットと、
前記前後一対の第1スプロケットに巻き付けられる第1無端チェーンと、
前記第1無端チェーンと前記第2スライダ枠とを連結させる第1連結部材と、
を備え、
第2駆動機構は、
前記第2スライダ枠に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第2シャフトと、
各第2シャフトに回転不可能に装着される前後一対の第2スプロケットと、
前記前後一対の第2スプロケットに巻き付けられる第2無端チェーンと、
前記第2無端チェーンと前記台車とを連結させる第2連結部材と、
を備えることを特徴とする台車格納装置。
【請求項2】
第1駆動機構と第2駆動機構とを連動させる連動機構を備え、
前記連動機構は、
各第1シャフトに回転不可能に装着されて歯数が前記第1スプロケットよりも多い前後一対の第3スプロケットと、
前記前後一対の第3スプロケットに巻き付けられる第3無端チェーンと、
各第2シャフトに回転不可能に装着されて歯数が前記第2スプロケットよりも少ない前後一対の第4スプロケットと、
前記前後一対の第4スプロケットに巻き付けられる第4無端チェーンと、
前記第3無端チェーンと前記第4無端チェーンとを連結させる第3連結部材と、
を備えることを特徴とする請求項
1に記載の台車格納装置。
【請求項3】
前記第1スプロケットと前記第4スプロケットとは、歯数が同一に設定され、
前記第2スプロケットと前記第3スプロケットとは、歯数が同一に設定され、
前記第1無端チェーン、前記第2無端チェーン、前記第3無端チェーン、および前記第4無端チェーンは、チェーンのピッチが同一に設定されることを特徴とする請求項
2に記載の台車格納装置。
【請求項4】
第1シャフトまたは第2シャフトの端部には、回転駆動手段を着脱可能に接続させる工具接続部が形成されることを特徴とする
請求項1ないし
3のいずれかに記載の台車格納装置。
【請求項5】
前記台車は、前記パレットの前端に対して前方に位置する車輪を備え、
前記第2スライダ枠は、前記パレットの前端に対して前方に位置する車輪を備えることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の台車格納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車格納装置に関し、特に、機械式駐車装置を流用した台車格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、汎用の自動倉庫として、パレットに載せられた物品をフォークリフトで搬入出させるものがある。このような自動倉庫は、例えば、縦横1100mmの規格化されたパレットが使用される。この場合、格納可能な物品のサイズが縦横1000mm程度に限られてしまい、より大型の物品を格納可能な自動倉庫が要望されていた。しかし、大型の自動倉庫を新規に設計した場合、多大な製造コストと時間とを必要とする。そこで、本発明者は、既存の機械式駐車装置(例えば「特許文献1」参照)を台車格納装置に流用する、すなわち、機械式駐車装置のパレット上に台車を載せて、車両の入出庫位置で、作業者によって台車をパレットから引き出す台車格納装置(自動倉庫)を構想した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した台車格納装置を具現する場合、台車の大型化および積載される物品の重量化により、作業者による台車の操作が困難になる。そこで、例えば、各パレット上にチェーンコンベアを設置し、該チェーンコンベアによってパレット上の台車を移動させることが考えられる。ここで、クレーンを用いて台車の後部に物品を搬入出する場合、台車を、装置前端を超える位置まで移動させる、換言すると、機械式駐車装置の支柱を超えて移動させることが要求される。しかし、チェーンコンベアは、パレットの前端を超えて台車を移動させることができないため、重量がある台車を、装置前端を超える位置まで作業者が移動させる必要があり、作業者の大きな負担になる。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、パレット上の台車を、装置前端を超える位置まで容易に移動させることが可能な台車格納装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の台車格納装置は、機械式駐車装置のパレットに台車を載せて格納する台車格納装置であって、前記パレット上に設置される第1スライダ枠と、前記第1スライダ枠と前記台車との間に介在させる第2スライダ枠と、前記第2スライダ枠を前記第1スライダ枠に対して前後方向へ移動させる第1駆動機構と、前記台車を前記第2スライダ枠に対して前後方向へ移動させる第2駆動機構と、を備え、第1駆動機構は、前記第1スライダ枠に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第1シャフトと、各第1シャフトに回転不可能に装着される前後一対の第1スプロケットと、前記前後一対の第1スプロケットに巻き付けられる第1無端チェーンと、前記第1無端チェーンと前記第2スライダ枠とを連結させる第1連結部材と、を備え、第2駆動機構は、前記第2スライダ枠に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第2シャフトと、各第2シャフトに回転不可能に装着される前後一対の第2スプロケットと、前記前後一対の第2スプロケットに巻き付けられる第2無端チェーンと、前記第2無端チェーンと前記台車とを連結させる第2連結部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パレット上の台車を、装置前端を超える位置まで容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る台車格納装置の正面図である。
【
図2】本実施形態に係る台車格納装置の説明図であって、初期状態における位置関係を示す図である。
【
図3】
図4における要部拡大図であって、第1駆動機構、第2駆動機構、および連動機構の説明図である。
【
図5】本実施形態の作動状態の説明図であって、台車前進完了状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
本実施形態は、
図1に示される機械式駐車装置11を台車格納装置1に流用するものであって、機械式駐車装置11のパレット21に台車2を載せて格納するものである。ここで、機械式駐車装置11は、複数列、複数段(
図1に「5列、3段」を例示する)の格納スペース12を有し、自動車を載せるパレット21を格納スペース12間で昇降、横行させる、いわゆるパズル式立体駐車装置である。
【0010】
なお、機械式駐車装置11は、既存のパズル式立体駐車装置である。よって、明細書の記載を簡潔にすることを目的に、機械式駐車装置11に関する詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、
図1における上下および左右方向を台車格納装置1(機械式駐車装置11および台車2を含む)における上下および左右方向とし、
図2における左右方向を台車格納装置1における前後方向とする。
【0011】
図2に示されるように、台車格納装置1は、台車2と、パレット21上に設置される第1スライダ枠31と、台車2と第1スライダ枠31との間に介在させる第2スライダ枠51とを備える。また、台車格納装置1は、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31に対して前後方向へ移動させる第1駆動機構と、台車2を第2スライダ枠31に対して前後方向へ移動させる第2駆動機構とを備える。
図2において、パレット21は、床面FL(機械式駐車装置11の設置面)に着地されている。また、
図2において、第2スライダ枠51は、第1スライダ枠31に対する後退端位置に位置している。さらに、
図2において、台車2は、第2スライダ枠51に対する後退端位置に位置している。以下、
図2に示される位置関係にある状態を「初期状態」と称する。
【0012】
台車2は、上面が開口した直方体の箱形状に形成され、物品が収容される収容部3と、収容部3の底板3Aの前端部に左右一対で設けられる車輪4(
図2に「右側の車輪4」のみ表示)を備える。車輪4は、上端部が収容部3の底板3Aに固定された左右一対のブラケット5(
図2に「右側のブラケット5」のみ表示)の下端部に装着され、前後方向へ転動するように舵角が固定されている。台車2の車輪4は、パレット21の前端よりも前方に位置している。台車2は、初期状態のとき、前側部分がパレット21の前端からオーバーハングされる(張り出している)。
【0013】
第1駆動機構は、第1スライダ枠31の枠体32に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第1シャフト33F,33Rと、各第1シャフト33F,33Rに回転不可能に装着される前後一対の第1スプロケット35,37と、前後一対の第1スプロケット35,37に巻き付けられる第1無端チェーン41と、第1無端チェーン41の上側の直線部分と第2スライダ枠51の枠体52の後部とを連結させる第1連結部材63とを備える。なお、第1シャフト33F,33Rの両端部は、枠体32に設けられた軸受(図示省略)によって回転可能に支持される。
【0014】
第2スライダ枠51は、枠体52の前端部に左右一対で設けられる車輪53(
図2に「右側の車輪53」のみ表示)を備える。車輪53は、上端部が枠体52に固定された左右一対のブラケット54(
図2に「右側のブラケット54」のみ表示)の下端部に装着され、前後方向へ転動するように舵角が固定されている。車輪53は、台車2の車輪4よりも後方に位置し、かつパレット21の前端よりも前方に位置する。第2スライダ枠51は、初期状態のとき、前側部分がパレット21の前端からオーバーハングされる(張り出している)。なお、枠体52は、初期状態のとき、パレット21と台車2との間の上下方向の間隔に位置している。
【0015】
第2駆動機構は、第2スライダ枠51の枠体52に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第2シャフト55F,55Rと、各第2シャフト55F,55Rに回転不可能に装着される前後一対の第2スプロケット58,60と、前後一対の第2スプロケット58,60に巻き付けられる第2無端チェーン62と、第2無端チェーン62の上側の直線部分と台車2の後部とを連結させる第2連結部材65とを備える。なお、第2シャフト55F,55Rの両端部は、枠体52に設けられた軸受(図示省略)によって回転可能に支持される。
【0016】
台車格納装置1は、第1駆動機構と第2駆動機構とを連動させる連動機構を備える。連動機構は、各第1シャフト33F,33Rに回転不可能に装着される前後一対の第3スプロケット36,38と、前後一対の第3スプロケット36,38に巻き付けられる第3無端チェーン42と、各第2シャフト55F,55Rに回転不可能に装着される前後一対の第4スプロケット57,59と、前後一対の第4スプロケット57,59に巻き付けられる第4無端チェーン61と、第3無端チェーン42の上側の直線部分と第4無端チェーン61の上側の直線部分とを連結させる第3連結部材64とを備える。
【0017】
第1スプロケット35と第3スプロケット36とは、前側の第1シャフト33Fに相対回転不可能に設けられる。第3スプロケット36の歯数は、第1スプロケット35の歯数の2倍に設定される。同様に、第1スプロケット37と第3スプロケット38とは、後側の第1シャフト33Rに相対回転不可能に設けられる。第1スプロケット37の歯数は、第1スプロケット35の歯数と同一に設定される。また、第3スプロケット38の歯数は、第3スプロケット36の歯数と同一に設定される。すなわち、第3スプロケット38の歯数は、第1スプロケット37の歯数の2倍に設定される。
【0018】
第4スプロケット57と第2スプロケット58とは、前側の第2シャフト55Fに相対回転不可能に設けられる。第2スプロケット58の歯数は、第4スプロケット57の歯数の2倍に設定される。同様に、第4スプロケット59と第2スプロケット60とは、後側の第2シャフト55Rに相対回転不可能に設けられる。第4スプロケット59の歯数は、第4スプロケット57の歯数と同一に設定される。また、第2スプロケット60の歯数は、第2スプロケット58の歯数と同一に設定される。すなわち、第2スプロケット60の歯数は、第4スプロケット59の歯数の2倍に設定される。
【0019】
ここで、第1無端チェーン41のピッチと第3無端チェーン42のピッチとは、同一に設定される。すなわち、前側の第1シャフト33Fの回転数と後側の第1シャフト33Rの回転数とは同一であり、第1シャフト33F,33Rとを回転させたとき、第3無端チェーン42の速度は、第1無端チェーン41の速度の2倍である。同様に、第4無端チェーン61のピッチと第2無端チェーン62のピッチとは、同一に設定される。すなわち、前側の第2シャフト55Fの回転数と後側の第2シャフト55Rの回転数とは同一であり、第2シャフト55F,55Rを回転させたとき、第2無端チェーン62の速度は、第4無端チェーン61の速度の2倍である。
【0020】
また、本実施形態では、第1スライダ枠31側の第1スプロケット35,37の歯数と第2スライダ枠51側の第4スプロケット57,59の歯数とが同一に設定され、かつ第1スライダ枠31側の第3スプロケット36,38の歯数と第2スライダ枠51側の第2スプロケット58,60の歯数とが同一に設定される。さらに、本実施形態では、第1無端チェーン41、第2無端チェーン62、第3無端チェーン42、および第4無端チェーン61のピッチとが同一に設定される。すなわち、第1スライダ枠31側の第1シャフト33F,33Rと第2スライダ枠51側の第2シャフト55F,55Rとを同一方向かつ同一回転数で回転させると、第1スライダ枠31側の第1無端チェーン41と第2スライダ枠51側の第4無端チェーン61とは、同一方向(時計回り方向/反時計回り方向)へ同一速度で周回(一定の軌道上を移動)し、第1スライダ枠31側の第3無端チェーン42と第2スライダ枠51側の第2無端チェーン62とは、同一方向へ同一速度で周回する。
【0021】
ここで、
図3において、第1スプロケット37を1回転させたときの、第1無端チェーン41の周回軌道上の1点が直線で(
図3における左右方向へ)移動する距離をLとすると、第3無端チェーン42の周回軌道上の1点が直線で移動する距離は2Lである。つまり、
図3において、第1スプロケット37を反時計回り方向へ1回転させたとき、第1無端チェーン41に連結された第1連結部材63、延いては第1連結部材63に連結された第2スライダ枠51は、距離Lだけ左方向へ移動する。同時に、第3無端チェーン42に連結された第3連結部材64、延いては第3連結部材64に連結された第4無端チェーン61の上側の直線部分上の1点は、第1スライダ枠31、延いてはパレット21に対して距離2Lだけ左方向へ移動する。
【0022】
ここで、
図3において、第2スライダ枠51は、第1スライダ枠31、延いてはパレット21に対して距離Lだけ左方向へ移動しているので、第3連結部材64は、第2スライダ枠51に対して距離L(2L-L)だけ左方向へ移動する。換言すると、第3連結部材64と第4無端チェーン61との連結部64Aは、第2スライダ枠51の第4スプロケット59に対して距離Lだけ左方向へ移動する。すなわち、第4無端チェーン61の上側の直線部分上の1点は、第4スプロケット59に対して左方向へ距離Lだけ相対移動する。そして、連結部64Aが第4スプロケット59に対して距離Lだけ左方向へ移動する、換言すると、第4無端チェーン61の上側の直線部分上の1点が距離Lだけ左方向へ移動すると、第4スプロケット59および第2スプロケット60は、
図3における反時計回り方向へ1回転する。
【0023】
第2スプロケット60が1回転すると、第2連結部材65と第2無端チェーン62との連結部65A、延いては第2連結部材65に連結された台車2は、第2スプロケット60、延いては第2スライダ枠51に対して距離2Lだけ前進(
図2、
図3における左方向へ移動)する。ここで、第2スライダ枠51は、第1スライダ枠31、延いてはパレット21に対して距離Lだけ前進しているので、台車2は、第1スライダ枠31、延いてはパレット21に対して距離3L(2L+L)だけ前進することになる。すなわち、本実施形態では、第1シャフト33F,33Rを
図2、
図3における反時計回り方向へ回転させて第2スライダ枠51をパレット21(第1スライダ枠31)に対して距離Lだけ前進させると、台車2は、パレット21(第1スライダ枠31)に対して距離3Lだけ前進する。
【0024】
なお、台車2および第2スライダ枠51が前進端位置に位置した状態(
図5参照)から、第1シャフト33F,33Rを
図2、
図3における時計回り方向へ回転させて第2スライダ枠51をパレット21(第1スライダ枠31)に対して距離Lだけ後退(
図2、
図3における右方向へ移動)させると、台車2は、パレット21(第1スライダ枠31)に対して距離3Lだけ後退する。なお、
図3を参照すると、台車2は、第2スライダ枠51の枠体52上を転動可能なローラ7を備える。ローラ7は、台車2の収容部3の底板3Aの後端部の、第2連結部材65よりも前側に配置される。また、第2スライダ枠51は、第1スライダ枠31の枠体32上を転動可能なローラ67を備える。ローラ67は、第2スライダ枠51の枠体52の下面に、前後方向へ間隔をあけて複数個が配置される。さらに第1スライダ枠31の第1シャフト33F,33Rの端部には、回転駆動手段として、例えば、空圧式インパクトレンチ等の回転工具を接続させる断面が多角形形状(例えば、六角形)の工具連結部(図示省略)が形成される。
【0025】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、作業者は、出庫の要領で機械式駐車装置11(
図1参照)の操作パネル(図示省略)を操作し、所望のパレット21(台車2)を呼び出す。すると、機械式駐車装置11は、必要に応じて、パレット21を格納スペース12間で昇降、横行させながら、対象のパレット21を入出庫位置に搬送する。
図2は、所望のパレット21が入出庫位置に位置決めされた初期状態を示す。当該初期状態、すなわち、パレット21が床面FL(機械式駐車装置11の設置面)に着地され、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31に対する後退端位置に位置し、台車2が第2スライダ枠51に対する後退端位置に位置した状態では、台車2の車輪4および第2スライダ枠51の車輪53は、床面FLに着地している。
【0026】
次に、作業者は、回転工具(例えば、空圧式インパクトレンチ)を前側の第1シャフト33Fの工具連結部に連結させる。この状態で、回転工具を作動させて第1シャフト33Fを
図2、
図3における反時計回り方向へ回転させると、第1スプロケット35,37に巻き付けられた第1無端チェーン41と第3スプロケット36,38に巻き付けられた第3無端チェーン42とが、
図2における反時計回り方向へ周回する。このとき、第3無端チェーン42のチェーン速度は、第1無端チェーン41のチェーン速度の2倍である。第2スライダ枠51は、第1連結部材63を介して第1無端チェーン41に連結されているので、第1スライダ枠31、延いてはパレット21に対して前進する。
【0027】
一方、第3連結部材64によって、第3無端チェーン42の上側の直線部分と第4無端チェーン61の上側の直線部分とが連結され、かつ第3無端チェーン42のチェーン速度が第1無端チェーン41のチェーン速度、延いては第2スライダ枠51の移動速度の2倍であるので、第1シャフト33F,33R、延いては第1スプロケット35,37および第3スプロケット36,38の回転数は、同一である。第2連結部材65によって、台車2と第2無端チェーン62の上側の直線部分とが連結されているので、台車2は、第2スライダ枠51に対して、第4無端チェーン61のチェーン速度の2倍の速度で前進する。すなわち、第2スライダ枠51の第1スライダ枠31(パレット21)に対する移動速度をVとすると、台車2は、第1スライダ枠31(パレット21)に対して3V(2V+V)の速度に増速されて前進する。
【0028】
換言すると、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離Lだけ前進すると、台車2は、第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離3Lだけ前進する。ここで、
図4は、台車2の前端が、台車格納装置1の前端位置P、換言すると、機械式駐車装置11の支柱(図示省略)を超え、第2スライダ枠51の前端が台車格納装置1の前端位置Pを超えていない状態を示す。なお、台車2の車輪4および第2スライダ枠51の車輪53は、台車2および第2スライダ枠51の前進に伴い、床面FL上を転動する。
【0029】
そして、
図5は、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31に対する前進端位置に位置し、台車2が第2スライダ枠51に対する前進端位置に位置した状態(以下「台車前進完了状態」と称する)を示す。この台車前進完了状態では、台車2の後端は、台車格納装置1の前端位置P、換言すると、機械式駐車装置11の支柱(図示省略)よりも前方(
図5における左側)に位置している。なお、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31に対する前進端位置に到達した時点で、台車2が第2スライダ枠51に対する前進端位置に到達するように、第1駆動機構および第2駆動機構は、第2スライダ枠51および台車2の移動を規制するメカストッパ(図示省略)を備えている。
【0030】
他方、
図5の台車前進完了状態で物品(図示省略)の台車2への搬入出が行われた後、当該台車2を機械式駐車装置11に戻す(格納する)場合、作業者は、前側の第1シャフト33Fの工具連結部に連結させた回転工具を作動させ、第1シャフト33Fを
図5における時計回り方向へ回転させる。これにより、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離Lだけ後退すると、台車2は、第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離3Lだけ後退する。このとき、台車2の車輪4および第2スライダ枠51の車輪53は、台車2および第2スライダ枠51の前進に伴い、床面FL上を転動する。
【0031】
そして、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31に対する後退端位置に到達し、台車2が第2スライダ枠51に対する後退端位置に到達することで(
図2参照)、作業者は、回転工具を第1シャフト33Rから切り離し、台車格納装置1の前端位置Pよりも前方(機械式駐車装置11のゲート(図示省略)の外側)へ移動する。なお、第2スライダ枠51が第1スライダ枠31に対する後退端位置に到達した時点で、台車2が第2スライダ枠51に対する後退端位置に到達するように、第1駆動機構および第2駆動機構は、第2スライダ枠51および台車2の移動を規制するメカストッパ(図示省略)を備えている。
【0032】
次に、作業者は、入庫の要領で機械式駐車装置11(
図1参照)の操作パネル(図示省略)を操作し、入出庫位置に位置するパレット21(台車2)を機械式駐車装置11の所定の格納スペース21へ格納する。機械式駐車装置11は、必要に応じて、パレット21を格納スペース12間で昇降、横行させながら、対象のパレット21を所定位置に格納する。
【0033】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、機械式駐車装置11のパレット21に台車2を載せて格納する台車格納装置1であって、パレット21上に設置される第1スライダ枠31と、第1スライダ枠31と台車2との間に介在させる第2スライダ枠51と、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31に対して前後方向へ移動させる第1駆動機構と、台車2を第2スライダ枠51に対して前後方向へ移動させる第2駆動機構と、を備えるので、パレット21上の台車2を、機械式駐車装置11の前端を超える位置まで前進させることができる。
【0034】
第1駆動機構は、第1スライダ枠31に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第1シャフト33F,33Rと、各第1シャフト33F,33Rに回転不可能に装着される前後一対の第1スプロケット35,37と、前後一対の第1スプロケット35,37に巻き付けられる第1無端チェーン41と、第1無端チェーン41と第2スライダ枠51とを連結させる第1連結部材63と、を備え、第2駆動機構は、第2スライダ枠51に設けられ、前後方向へ間隔をあけて相互に平行に配置される一対の第2シャフト55F,55Rと、各第2シャフト55F,55Rに回転不可能に装着される前後一対の第2スプロケット58,60と、前後一対の第2スプロケット58,60に巻き付けられる第2無端チェーン62と、第2無端チェーン62と台車2とを連結させる第2連結部材65と、を備えるので、第1スプロケット35,37を一方向へ回転させて第1無端チェーン41を一方向へ周回させることにより、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31に対して前進させることができ、第2スプロケット58,60を一方向へ回転させて第2無端チェーン62を一方向へ周回させることにより、台車2を第2スライダ枠51に対して前進させることができる。また、第1スプロケット35,37を他向へ回転させて第1無端チェーン41を他方向へ周回させることにより、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31に対して後退させることができ、第2スプロケット58,60を他方向へ回転させて第2無端チェーン62を他方向へ周回させることにより、台車2を第2スライダ枠51に対して後退させることができる。
【0035】
第1駆動機構と第2駆動機構とを連動させる連動機構を備え、連動機構は、各第1シャフト33F,33Rに回転不可能に装着されて歯数が第1スプロケット35,37よりも多い前後一対の第3スプロケット36,38と、前後一対の第3スプロケット36,38に巻き付けられる第3無端チェーン42と、各第2シャフト55F,55Rに回転不可能に装着されて歯数が第2スプロケット58,60よりも少ない前後一対の第4スプロケット57,59と、前後一対の第4スプロケット57,59に巻き付けられる第4無端チェーン61と、第3無端チェーン42と第4無端チェーン61とを連結させる第3連結部材64と、を備えるので、例えば、前側の第1シャフト33Fを駆動して一方向へ回転させることにより、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31(パレット21)に対して前進させることができ、第2スライダ枠51の前進に連動させて、台車2を第2スライダ枠51に対して前進させることができる。
【0036】
第1スプロケット35,37と第4スプロケット57,59とは、歯数が同一に設定され、第2スプロケット58,60と第3スプロケット36,38とは、歯数が同一で、かつ第1スプロケット35,37および第4スプロケット57,59の歯数の2倍に設定され、第1無端チェーン41、第2無端チェーン62、第3無端チェーン42、および第4無端チェーン61は、チェーンのピッチが同一に設定されるので、台車2を、第2スライダ枠51の移動速度の3倍の速度に増速して前進させることができる。換言すると、第2スライダ枠51を第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離Lだけ前進させたとき、台車2を第1スライダ枠31(パレット21)に対して距離3Lだけ前進させることができる。
【0037】
第1シャフト33F,33Rまたは第2シャフト55F,55Rの端部には、回転駆動手段を着脱可能に接続させる工具接続部が形成されるので、例えば、前側の第1シャフト33Fに回転工具を連結させ、当該回転工具を作動させることにより、第1駆動機構および第2駆動機構に動力を付与することができる。
【0038】
台車2は、パレット21の前端に対して前方に位置する車輪4を備え、第2スライダ枠51は、パレット21の前端に対して前方に位置する車輪53を備えるので、台車2の車輪4および第2スライダ枠51の車輪53がパレット21と床面FLとの段差を乗り越えることがなく、台車2および第2スライダ枠51を円滑に移動(前進/後退)させることができる。
【0039】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
本実施形態では、第3スプロケット36,38および第2スプロケット58,60の歯数を、第1スプロケット35,37および第4スプロケット57,59の歯数の2倍に設定したが、第1スプロケット35,37と第4スプロケット57,59との歯数が同一で、第2スプロケット58,60と第3スプロケット36,38との歯数が同一で、第3スプロケット36,38および第2スプロケット58,60の歯数が第1スプロケット35,37および第4スプロケット57,59の歯数より多く、かつ第1無端チェーン41、第2無端チェーン62、第3無端チェーン42、および第4無端チェーン61のピッチが同一であれば、当該倍数に限定する必要はない。
本実施形態では、前側の第1シャフト33Fの工具連結部に回転工具を連結させたが、後側の第1シャフト33Rの工具連結部に回転工具を連結させて、第1駆動機構および第2駆動機構に動力を付与することができる。
本実施形態では、連動機構によって第1駆動機構と第2駆動機構とを連動させたが、連動機構は必須ではなく、第1駆動機構と第2駆動機構とを切り離して構成することができる。この場合、第1駆動機構の第1シャフト33F,33Rに工具連結部を形成するのに加え、第2駆動機構の第シャフト55F,55Rに工具連結部を形成し、例えば、回転工具によって前側の第1シャフト33Fを駆動(回転)させて第2スライダ枠51を第1スライダ枠31(パレット21)に対して前進させた後、回転工具によって第2シャフト55Fを駆動(回転)させて台車2を第2スライダ枠31に対して前進させる。すなわち、台車2をパレット21に対して2段階で前進させる。
本実施形態では、動力源として回転駆動手段である回転工具を用いたが、例えば、パレット21が入出庫位置に位置決めされると、第1シャフト33F,33Rのいずれか一方が、電動モータおよび減速機構等により構成される動力伝達ユニットに連結されるように構成することができる。
また、本実施形態では、台車2の車輪4の舵角および第2スライダ枠51の車輪53に、舵角が固定された一方向車輪を用いたが、全方向車輪を用いることができる。この場合、例えば、最下段に位置するパレット21を横行させるようなとき、台車2の車輪4および第3スライダ枠51の車輪53が、床面FL(機械式駐車装置11の設置面)で引き摺られるようなことがなく、パレット21を円滑に横行させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 台車格納装置、2 台車、11 機械式駐車装置、21 パレット、31 第1スライダ枠、51 第2スライダ枠