(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】動作条件下で電流を直接検知することなく、バッテリパックまたはセルの電流及び充電状態を推定する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20220727BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20220727BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220727BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20220727BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220727BHJP
G01R 31/3842 20190101ALI20220727BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20220727BHJP
G01R 31/374 20190101ALI20220727BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R31/367
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H02J7/00 X
G01R31/3842
G01R31/388
G01R31/374
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018100345
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】102017000058171
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】597132126
【氏名又は名称】マニェティ・マレリ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】MAGNETI MARELLI S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ロザンナ・スリア
(72)【発明者】
【氏名】ダニーロ・プリテッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・アウリリオ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0124051(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0295397(US,A1)
【文献】特表2014-505863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143585(US,A1)
【文献】特開2009-204320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
31/36-31/396、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36、
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパックまたはセルによって分配される動作電流(I)を推定する方法であって、
-前記バッテリパックまたはセルの特性評価電圧(Vm)及び特性評価電流(Im)の測定された時間的傾向に関連する、前記バッテリパックまたはセルの特性評価データを取得するステップであって、それぞれの時間的傾向は、複数の特性評価温度値(T
k)のそれぞれの値に関連する、特性評価データを取得するステップと、
-前記バッテリパックまたはセルの、温度及び充電状態「state of charge」(SOC)に応じて、前記バッテリパックまたはセルの動作モデルの複数のパラメータ(P)を決定するために前記特性評価データを処理するステップと、
-前記バッテリパックまたはセルが動作条件下にある間に、前記バッテリパックまたはセルの動作電圧(V)及び動作温度(T)を測定するステップと、
-測定された前記動作電圧(V)、測定された前記動作温度(T)及び複数の前記パラメータ(P)に基づく、前記動作モデルによって、前記バッテリパックまたはセルの動作電流(I)を推定するステップと、を備え、
前記処理するステップは、複数の前記特性評価温度値(T
k)のそれぞれの値のために実行される、次のステージ、
-前記特性評価温度
値(T
k)に関連する前記特性評価電圧(Vm)及び前記特性評価電流(Im)のそれぞれの時間的傾向に沿って複数の時間観測窓(W
i)を特定し、それぞれの特性評価電流(Im
i)及び特性評価電圧(Vm
i)値を検知するステップと、
-それぞれの観測窓(W
i)において、前記バッテリパックまたはセルの充電状態(SOC
i)のそれぞれの値を計算するステップと、
-それぞれの前記観測窓(W
i)において、前記パラメータ(P)のそれぞれの名目上の値に応じた、前記バッテリパックまたはセルの動作モデルによって、それぞれの推定した電圧(V
ABi)を計算し、時間観測窓(W
i)の推定された電圧(V
ABi)と特性評価電圧(Vm
i)の間の差に依存するそれぞれの誤差関数(E
i)を決定するステップと、
-それぞれの観測窓(W
i)において、前記誤差関数(E
i)を最小化することによって、前記バッテリパックまたはセルのモデルの複数の前記パラメータ(P)のそれぞれについての実際の値(P
i)を計算するステップと、
-前記バッテリパックまたはセルの温度と充電状態に応じた複数の前記パラメータ(P)を得るために、それぞれの前記充電状態(SOC
i)及び前記特性評価温度
値(T
k)と、前記観測窓(W
i)において計算される、パラメータの前記実際の値(P
i)を関連付けるステップと、
-前記バッテリパックまたはセルの熱的モデルを定義するステップと、
-少なくとも1つの測定時間間隔において、前記測定時間間隔で測定される前記バッテリパックまたはバッテリセルの前記動作電圧(V)及び前記動作温度(T)の値に基づいて、及び前記バッテリパックまたはバッテリセルの前記動作温度(T)に対応する前記パラメータ(P)に基づいて、前記バッテリパックまたはセルの動作モデルによって、消散した電力(P
e
)を推定するステップと、
-前記バッテリパックまたは前記バッテリセルの前記動作温度(T)に基づいて、及び環境温度値(T
e
)に基づいて、ここで両方の温度値は、前記測定時間間隔で測定され、及び前記バッテリパックまたは前記バッテリセルの前記動作温度(T)に対応する前記パラメータ(P)に基づいて、前記バッテリパックまたはセルの熱的モデルによって、消散した熱出力(P
d
)を推定するステップと、
-推定された、前記消散した電力(P
e
)と前記消散した熱出力(P
d
)の差(ΔP)を決定するステップと、
-劣化及び/または経年劣化現象を考慮する前記パラメータ(P)の訂正した値を得るように、前記推定した差(ΔP)によって、前記パラメータを訂正するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記バッテリパックまたはセルの動作モデルは、電気回路モデルであり、モデルパラメータは、電気回路パラメータを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
-それぞれの前記観測窓(W
i)において、前記バッテリパックまたはセルのそれぞれの負荷なし電圧(Voc
i)値を決定するステップと、
-前記観測窓(W
i)で得られた複数の前記負荷なし電圧(Voc
i)及び前記充電状態(SOC
i)値に基づいて、前記バッテリパックまたはセルの負荷なし電圧(Voc)及び前記充電状態(SOC)の関係を定義するステップと、を備え、
それぞれの前記観測窓(W
i)において、パラメータの前記実際の値(P
i)を計算するステップは、それぞれの前記負荷なし電圧(Voc
i)値と、前記バッテリパックまたはセルの前記負荷なし電圧(Voc)及び前記充電状態(SOC)の前記関係も考慮する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の前記観測窓(W
i)を特定するステップは、前記特性評価電流(Im)が過渡電流現象の完全な消耗時に、ゼロであり、その結果として、前記負荷
なし電圧(Voc
i)は、前記特性評価電圧(Vm
i)に対応する、時間窓を特定するステップを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリパックまたはセルの前記充電状態(SOC
i)のそれぞれの値を計算するステップは、
-前記特性評価電流の時間的傾向に基づいて、前記バッテリパックまたはセルの前記充電状態(SOC
i)のそれぞれの値を計算する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記バッテリパックまたはセルの前記電気回路モデルは、負荷
なし電圧(Voc)発生器、バッテリまたはセルの内部抵抗(R
0)及び1以上の回路グループの直列を備え、それぞれは、それぞれの回路グループ抵抗及びそれぞれの回路グループ容量の並列を備え、
回路パラメータPのグループは、前記負荷
なし電圧(Voc)、前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)、1以上の回路グループ抵抗(R
1、R
2)、及び1以上の回路グループ容量(C
1、C
2)を備える、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリパックまたはセルの前記電気回路モデルは、2つの回路グループを備え、前記回路パラメータPのグループは、第1の回路グループ抵抗(R
1)、第1の回路グループ容量(C
1)、第2の回路グループ抵抗(R
2)、第2の回路グループ容量(C
2)を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バッテリパックまたはセルの動作モデルは、訓練された予測アルゴリズムを備え、前記パラメータ(P)は、訓練された予測アルゴリズムのパラメータであり、
前記複数の前記パラメータ(P)を決定するステップは、取得される前記バッテリパックまたはセルの特性評価データによる予測アルゴリズムを訓練するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バッテリパックまたはセルの前記特性評価データを取得するステップは、
-動作条件下で前記バッテリパックまたはセルを使う前に、それぞれの前記特性評価温度
値(T
k)値において、前記バッテリパックまたはセルの前記特性評価電圧(Vm)の及び前記特性評価電流(Im)の時間的傾向を測定するステップ、または、
-前記バッテリパックまたはセルの動作条件下の使用の前に実行される特性評価手順から前記特性評価データを取得するステップ、を備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記処理するステップはさらに、
-動作条件下の前記バッテリパックまたはセルを容易に利用できる電気保存手段で、入力として、温度と充電状態値を受け取り、前記パラメータ(P)のそれぞれの値を提供するように構成されたルックアップテーブルとして、前記バッテリパックまたはセルの動作モデルの前記パラメータ(P)を保存するステップ、を備える請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリパックまたはセルの動作電流を推定するステップは、前
記ルックアップテーブルにアクセスするように構成され、入力として、前記バッテリパックまたはセルに組み込まれたそれぞれのセンサから測定された前記動作電圧(V)及び前記動作温度(T)を受け取るように構成された前記バッテリパックまたはセルと関連する、電子プロセッサによって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バッテリパックまたはセルの熱的モデルは、1以上の熱的セルモデルからなり、
それぞれの前記熱的セルモデルは、熱的セル容量(C
T)、熱的セル抵抗(R
T)、セル温度(T
c)及び環境温度(T
e)によって特性評価される、請求項
1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
1に記載の方法。
【請求項13】
前記訂正するステップは、
-電力と熱出力の差(ΔP)により、訂正因子(G)を決定するステップと、
-前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)の更新された推定を得るために、前記訂正因子(G)を、前記内部抵抗(R
0)の値に乗じるステップと、
-前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)の更新された推定により、電力(P
e)を再計算するステップと、
-前記差(ΔP)があらかじめ決められたしきい値以下に減るまで、決定するステップ、乗じるステップ、及び再計算するステップを反復するステップと、
-前記反復の終わりに得られた更新された推定を前記バッテリまたはセルの内部抵抗(R
0)値と見なすステップと、を備える請求項
1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
さらに、
-動作条件下で前記バッテリパックまたはセルを使用する前に、異なる温度値及び使用時間に応じて、前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)の値の変化の特性を評価するステップと、
-前記内部抵抗の前記特性評価データを保存するステップと、
-方法が適用されたとき、前記バッテリパックまたはセルの動作条件下で、前記バッテリパックまたはセルの実際の使用の経過時間を考慮して、前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)の前記特性評価データによって、前記バッテリまたはセルの前記内部抵抗(R
0)の訂正値を使用するステップと、を備える請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記バッテリパックまたはセルの前記充電状態(SOC)を推定する方法であって、
-請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の、前記バッテリパックまたはセルの動作時間に沿って、前記バッテリパックまたはセルにより分配される前記動作電流(I)を推定するステップと、
-前記バッテリパックまたはセルの動作開始時から現在時まで動作する、前記動作電流(I)の推定された時間的傾向に基づき、初期充電状態(SOC
0)から前記バッテリパックまたはセルの前記充電状態(SOC)を推定するステップと、を備える方法。
【請求項16】
一体化した電流センサを除外しても、前記バッテリパックまたはセルを制御するように構成された前記バッテリパックまたはセルの制御装置であって、
装置は、前記バッテリパックまたはセルの測定された動作電圧(V)値と前記バッテリパックまたはセルの測定された動作温度(T)値を受け取るように構成され、
装置は、請求項1乃至
14のいずれか1項に記載された、前記バッテリパックまたはセルの前記動作電流(I)を推定する方法を実行する及び/または請求項
15に記載された前記バッテリパックまたはセルの前記充電状態(SOC)を推定する方法を実行するように構成された電子処理手段を備える、バッテリパックまたはセル制御装置。
【請求項17】
一体化された電流センサを備えることなく、動作するように構成されたバッテリパックまたはセルであって、
前記バッテリパックまたはセルの動作電圧(V)を検知するように構成された、電圧センサと、
前記バッテリパックまたはセルの動作温度(T)を検知するように構成された、温度センサと、
請求項
16に記載の制御装置と、を備えるバッテリパックまたはセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気器具を制御する、電子方法及びシステムの技術的部門に関連する。
【0002】
特に、本発明は、動作条件下で電流を直接検知することなく、バッテリ、または自動車のバッテリパックまたは、同様に、バッテリセル(単にセル「cell」としてこの明細書で定義される)の、動作電流及び充電状態を推定する方法に関連する。
【0003】
さらに、本発明は、前記方法を実行する、バッテリパックまたはセル、電流センサを備える必要なく、前記方法の長所によって、動作電流及び充電状態をモニタできる自動車のバッテリパックまたはセルの制御装置に関連する。
【背景技術】
【0004】
電気化学的なセル(特に、自動車分野において、電気またはハイブリッド駆動自動車の動作システム及びバッテリという観点において)から構成されるバッテリ、バッテリパックまたはセルの電圧及び電流を知ることは、バッテリ、バッテリパックまたはセルの正しい管理及び制御のとても重要な情報である。
【0005】
バッテリパックまたはセルの複数のセルの電圧、電流、温度の取得は、セルのパフォーマンス及び耐久性の低下、また、極端な場合、重大な結果として、バッテリパックまたはセルの火災または爆発まで至る、熱暴走「thermal runaway」として知られる現象をもたらす、2次物理化学プロセスのきっかけを避けるように、セルそれ自身の充電状態を知り、バッテリパックまたはセルの正しい管理及び保護するために、必要とされる。
【0006】
さらに、いくつかのモジュールまたは全てのバッテリパックまたはセルに共通の、電流を知ることは、セルの充電状態(SOC)を決定するために役立つ。
【0007】
共通の背景技術の解決方法において、バッテリまたはセルの電流を知ることは、通常、バッテリパックまたはセルそれ自身に設置された、シャントタイプの物理電流センサまたはホール効果ベースのセンサを使って、そのような電流の直接検知によって得られる。
【0008】
シャントタイプセンサについて言えば、電流は、バッテリまたはセル電流が循環する既知の値の抵抗の電圧を測定することによって、決定される。
【0009】
ホール効果ベースのセンサについて言えば、電流は、バッテリまたはセルの電流によって横切られ、電磁場を受ける導体に発生するホール電圧を測定することによって、決定される。
【0010】
前述の両方の場合は、バッテリパックそれ自身またはセルの複雑さとコストの増加の不利益を必然的に伴う、複数の電流センサを備える、バッテリパックまたはセルを提供する必要性を想定している。
【0011】
それゆえ、電流センサによって、そのような電流の直接の取得に関わらず、バッテリまたはセルの電流(すなわち、「バッテリまたはセル電流」)を推定する方法を特定する必要が生じる。
【0012】
このアプローチは、しかしながら、実際に使用できるように十分に正確な電流推定を得るさらなる技術的な問題に遭遇する。実際に、必要とされた正確さは、(例えば5%に相当またはそれより小さい)制限されたパーセンテージの範囲内で推定の誤差を最小化することを提供する。
【0013】
そのような正確なバッテリまたはセルの電流の推定を得ることは、実際のバッテリまたはセルの電流が、得られた瞬間において、その瞬間に検知されたバッテリまたはセルの動作電圧に依存するだけでなく、複雑な振る舞いで、バッテリまたはセルの温度と充電状態(今後、その過程及び寿命)にも依存するので、全く容易でない。それゆえ、バッテリまたはセルの電圧及び温度を知ることによって、必要とされる正確さで、バッテリまたはセル電流を得ることができる、単一の分析式はない。
【0014】
さらに、バッテリまたはセル電流と他のバッテリまたはセルの電気的、熱的量の関係は、劣化及び経年劣化にも依存するので、さらに、そのような態様を適切に考慮する推定方法を有する必要性が、さらに感じられる。
【0015】
既知の解決法は、この関連で、上記で言及された必要を満足しない。
【0016】
前述を参照して、主に自動車応用の分野で、特に電気またはハイブリッドの自動車のバッテリパックとの関連で、バッテリまたはセルの電流及び充電状態を推定し、バッテリまたはセルの電流及び充電状態に関して十分正確な情報を提供する一方で、動作条件下で、バッテリまたはセルの電流を直接取得する必要を避ける方法の必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0017】
少なくとも部分的に、背景技術を参照して上記に示される欠点を克服すること、特に考えられる技術部門で感じられる上述の必要を満たすことができるような、電流それ自身の直接の取得を必要とすることなく、バッテリまたはセルの電流及び充電状態を十分に正確に推定することを提供することができる、バッテリパックまたはセルの動作電流及び充電状態を推定する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0018】
特に、本発明は、シャントまたはホール効果タイプの物理電流センサを用いる必要なく、バッテリまたはセルが電流によって横切られるとき、バッテリまたはセルの端部において電圧のみを測定することによって、バッテリまたはセルの電流を決定する方法を提供することが目的である。それによって、バッテリまたはセルの端部において、電圧を直接測定することのみで、バッテリパックまたはセルを完全に管理することが可能であり、それにより、温度及び経年劣化を含む、異なる変化に応じて、電圧測定とその内部抵抗の特性評価から電流を決定する。
【0019】
そのような目的は、請求項1による電流を推定する方法で達成される。
【0020】
そのような方法のさらなる実施形態は、請求項2-15によって定義される。
【0021】
請求項16によるバッテリパックまたはセルの充電状態を推定する方法が、本発明の別の目的である。
【0022】
本発明の目的は、また前述の方法を実行することができる、請求項17で定義される、バッテリパックまたはセルの制御装置及び、請求項18で定義される、電流センサなしで、前述の制御器具によって制御されるバッテリパックまたはセルでもある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明による電流を推定する方法及び充電状態を推定する方法、及び関連する制御装置及びバッテリパックまたはセルのさらなる特徴及び利点は、添付した図を参照して、示す及び制限しない実施例を手段として得られる、好ましい実施形態の続く記載から明白になるであろう。
【0024】
【
図1】図式的に、本発明による推定方法の実施形態を、ブロック図によって、示す。
【
図2】本発明による方法の実施形態に適合された、バッテリまたはセルの電気モデルの図を示す。
【
図3】図式的に、方法の実施形態で用いられた、プロセスアルゴリズムを、ブロック図によって、示す。
【
図4A】方法の入力データを構成することができる、バッテリパックまたはセルの、電圧の測定された時間的傾向を示す。
【
図4B】方法の入力データを構成することができる、バッテリパックまたはセルの、特性評価電流の測定された時間的傾向を示す。
【
図6】バッテリまたはセルの充電状態SOCの推定された時間的傾向を示す。
【
図7】バッテリまたはセルの負荷なし電圧Vocの推定された時間的傾向を示す。
【
図8】バッテリまたはセルの充電状態及び負荷なし電圧(関数)の間の推定された関係の実施例を示す。
【
図9】バッテリまたはセルの充電状態及び負荷なし電圧の間の逆の(逆関数)推定された関係の実施例を示す。
【
図10】バッテリまたはセルの端部において測定された電圧と本発明の方法によって推定された対応する電圧の比較のグラフを示す。
【
図11】方法の典型的な実施形態で推定された、充電状態に応じたバッテリまたはセル(方法で使われるバッテリまたはセルの可能なモデルに関連する)の回路パラメータの値を示す。
【
図12】本発明による方法の実施形態に適合された、バッテリまたはセルの熱的モデルの図を示す。
【
図13】図式的に、方法の実施形態で用いられた、劣化及び/または経年劣化に応じた、パラメータを訂正及び更新した、アルゴリズムを、ブロック図によって、示す。
【
図14】発明の方法で推定された、バッテリまたはセルの測定された電流から導き出す充電状態とバッテリまたはセルの電流から導き出す充電状態の比較のグラフを示す。
【
図15】本発明の方法で推定された測定されたバッテリまたはセルの電流及びバッテリまたはセルの電流の比較のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1-15を参照して、バッテリまたはセルによって分配された動作電流Iを推定する方法が、これから記載される。
【0026】
方法は、第1に、バッテリパックまたはセルの特性評価電圧Vm及び特性評価電流Imの測定された時間的傾向に関連する、バッテリパックまたはセルの特性評価データを取得するステップを備える。前記時間的傾向のそれぞれは、複数の特性評価温度値Tkのそれぞれの値に関連付けられる。
【0027】
さらにバッテリパックまたはセルの温度及び充電状態SOCに応じた、バッテリパックまたはセルの動作モデルの複数のパラメータPを決定するために前記の特性評価データを処理する方法が提供される。
【0028】
その後、バッテリパックまたはセルが動作条件下にある間、測定された動作電圧V、測定された動作温度T及び前述の複数のパラメータP(前にバッテリパックまたはセルの温度及び充電状態に応じて決定されたように)に基づいて、前記の動作モデルによって、バッテリパックまたはセルの動作電圧V及び動作温度Tを測定し、バッテリパックまたはセルの動作電流Iを推定する方法が提供される。
【0029】
動作電流Iは、バッテリパックまたはセルの瞬間的な動作電圧V、瞬間的な温度Tが検知されたとき、バッテリパックまたはセルに流れる瞬間的な電流であることに注目すべきである。そのような動作電流Iは、それゆえ、前記のパラメータT、V及びPに基づいて推定される。
【0030】
パラメータPは、次に、すでに上記で記述されたように、下記で記載されるように、バッテリパックまたはセルの温度及び充電状態SOCに基づいて、さらに処理することによって、得られる。
【0031】
本明細書で記載された方法において、処理するステップは、前記の複数の特性評価温度値Tkのそれぞれの値で処理される、いくつかのステージを備える。
【0032】
特に、処理するステップは、特性評価温度Tkに関連した、特性評価電圧Vm及び特性評価電流Imのそれぞれの時間的傾向に沿った複数の時間観測窓Wiを特定することと、それぞれ特性評価電流Imiと特性評価電圧Vmi値を検知することを含む。
【0033】
それゆえ、それぞれの観測窓Wiにおいて、バッテリパックまたはセルの充電状態SOCiのそれぞれの値を計算する方法が提供される。
【0034】
さらに、それぞれの観測窓Wiにおいて、パラメータPのそれぞれの名目上の値に応じて、バッテリパックまたはセルの動作モデルによって、それぞれ推定された電圧VABiを計算し、時間観測窓Wiの推定された電圧VABiと特性評価電圧Vmiの差に依存するそれぞれの誤差関数Eiを決定する方法が提供される。
【0035】
さらに、それぞれの観測窓Wiにおいて、前記の誤差関数Eiを最小化することによって、バッテリパックまたはセルのモデルの複数のパラメータPのそれぞれの実際の値Piを計算する方法が提供される。
【0036】
最終的に、それぞれの充電状態SOCi及び特性評価温度Tkと観測窓Wiにおいて計算される、パラメータの実際の値Piを関連付けるステップは、バッテリパックまたはセルの温度及び充電状態SOCに応じた、前記の複数のパラメータPを得るために、提供される。
【0037】
方法の実施形態によると、さらに、それぞれの観測窓Wiにおいて、バッテリパックまたはセルの負荷なし電圧Vociのそれぞれを決定し、観測窓Wiにおいて得られる複数の負荷なし電圧Voci及び充電状態SOCi値に基づいて、バッテリパックまたはセルの負荷なし電圧Voc及び充電状態SOCの関係を定義する、特性評価データを処理する前記のステップが提供される。
【0038】
そのような場合において、それぞれの観測窓Wiにおいて、パラメータの実際の値Piを計算するステップは、それぞれの負荷なし電圧Voci値及び決定されたバッテリパックまたはセルの負荷なし電圧Voc及び充電状態SOCの関係も考慮する。
【0039】
特定の実施形態によると、複数の観測窓Wiを特定するステップは、特性評価電流Imが過渡電流現象の完全な消耗時に、ゼロであり、その結果、負荷なし電圧Vociが特性評価電圧Vmiに対応する、時間窓を特定することを備える。
【0040】
特定の実施形態によると、バッテリパックまたはセルの充電状態の値を計算するステップは、特性評価電流の時間的傾向に基づく、バッテリパックまたはセルの充電状態(SOCi)のそれぞれの値を計算することを備える。
【0041】
方法の異なる可能な実施形態によると、バッテリパックまたはセルの異なる動作モデルを使うことができる。
【0042】
方法の典型的な実施形態によると、バッテリパックまたはセルの動作モデルは、電気回路モデルである。そのような場合において、モデルパラメータは、電気回路パラメータを含む。
【0043】
図2で示された実施例において、バッテリパックまたはセルの電気回路モデルは、負荷のない電圧Voc発生器、1以上の回路グループの直列に配置されたバッテリまたはセルの内部抵抗R
0を備え、それぞれは、回路グループ抵抗及び回路グループ容量の並列を備える。そのような場合において、回路パラメータPの群は、負荷のない電圧Voc、バッテリまたはセルの内部抵抗R
0、1以上の回路グループ抵抗R
1、R
2、及び1以上の回路グループ容量C
1、C
2を備える。
【0044】
特に
図2の実施例は、2次モデル(通常、正確で、同時に、相対的に単一のモデルを有するように使われる)、すなわち2つの回路グループを備えるモデルを示す。そのような場合において、回路パラメータPの群は、バッテリまたはセルの内部抵抗R
0及び負荷なし電圧Vocに加えて、第1の回路群抵抗R
1、第1の回路群容量C
1、第2の回路群抵抗R
2、第2の回路群容量C
2を備える。
【0045】
いくつかのパラメータ、偶数の非回路パラメータで特性評価される、他のタイプのモデル、偶数の非回路モデルを使用する方法が提供されることに注目すべきである。
【0046】
1つの実施形態において、例えば、バッテリパックまたはセルの動作モデルは、訓練された予測アルゴリズムを備え、パラメータPは、訓練された予測アルゴリズムのパラメータである。そのような場合において、複数のパラメータPを決定するステップは、取得されるバッテリパックまたはセルの特性評価データによる予測アルゴリズムを訓練することを備える。
【0047】
例えば、Nパラメータのニューラルネットワークを使用することができる。
【0048】
電気回路モデル(例えば、
図2に示されているもの)の実施例に戻ると、モデルパラメータ(Voc、R
0、R
1、R
2、C
1、C
2)は、充電状態SOCと温度の関数であることに注目すべきである。
【0049】
電圧、電流及び温度の関係は、次の式(1)で表される。
【0050】
【0051】
ここで、電圧VAB(t)は、バッテリセルまたはセルの終端の電圧を示し、I(t)はセルを循環する電流である。
【0052】
温度依存は、それぞれ温度に依存する、パラメータ(Voc、R0、R1、R2、C1、C2)に含まれるので、潜在している。
【0053】
ジュール効果によって消散した電力とエネルギは、次の式(2)で表される。
【0054】
【0055】
すでに上記で記述されたように、電気パラメータは温度に依存し、さらに、バッテリセルまたはセルの充電状態、特に負荷なし電圧Vocに依存する。
【0056】
モデルを効果的に使うために、それゆえ、異なる充電状態SOCと温度T値に対するパラメータを特性評価する必要がある。
【0057】
この目的を達成するために、特性評価データを処理するステップを、一般論として、すでに上記で記載されて、提供している。
【0058】
さらなる詳細は、これによって、
図2の電気回路モデルが使われている方法の実施形態を参照して、処理するステップに用いられているアルゴリズムに提供されている。
【0059】
アルゴリズムを処理するそのような実施例は、
図3に図式的に示されている。
【0060】
温度を変えてあらかじめ定義され、設定されたKに対応する、Kの時間的傾向、すなわち電圧及び電流傾向を有すると見なす。k=1に関して、第1の温度は設定され(Tk=T1)、温度T1のバッテリまたはセルで取得される、電圧及び電流の時間的傾向が、選択される。
【0061】
電圧と電流の時間的傾向は、例えば、バッテリまたはセルの、「オフライン」で特性を評価するステップで取得される。それゆえ、そのような電圧とそのような電流は、それぞれ上記で定義された、特性評価電圧Vm及び特性評価電流Imに対応する。
【0062】
特性評価電圧Vmと特性評価電流Imの時間的傾向の実施例は、温度28℃、20アンペアアウア(Ah)チタン酸リチウム(LTO)バッテリセルまたはセルについて言えば、それぞれ、
図4A及び4Bに示される。
【0063】
Vm及びImの前記時間的傾向において、電流がゼロであり、例えば、セルそれ自身の挙動が決定されると考えることができることなど、時間間隔の間、ゼロ値で残る、すなわち、回路モデルの容量C
1及びC
2がかなり放電された状態で、時間観測窓W
iは、特定される。
図4A及び4Bにおいて、観測窓W
iの終わりは、「X」マークによって示される。
【0064】
第1の時間観測窓の拡大が、特性評価電圧Vmに関して、
図5Aで、特性評価電流Imに関して、
図5Bで示される。
【0065】
次のステージは、測定された電流Imに基づいて、充電状態(SOC)を計算することである。充電状態SOCを、例えば、次の式(4)に基づいて、いわゆる「クーロンカウンタ」技術で、計算することができる。
【0066】
【0067】
ここで、Qnomは、1クーロンの放電割合で推定された、セルの名目上の容量(示されている実施例において、20Ahの値を有する)である。
【0068】
時間の関数として計算されている、充電状態SOCは、
図6に示される。
【0069】
その後、負荷なし電圧Vocも、時間の関数として計算される。この目的を達成するために、観測窓Wiの最初と終わりの点は、電流がゼロであり、それゆえ、容量C1及びC2の端部の電圧が無視できると考慮できる、「変化しない」点であることに注目すべきである。それゆえ、そのような点において、負荷なし電圧Vocは、測定された電圧Vmと一致する。他の点において、負荷なし電圧Vocの計算は、前に推定された充電状態SOCの関数の線形補間として実行されることができる。
【0070】
時間の関数として計算された負荷なし電圧Vocは、
図7に示される。
【0071】
前記情報に基づいて、負荷なし電圧Vocの関数として充電状態SOC、すなわち、図が
図8に示されるSOC=f(Voc)、を計算することが可能である。
【0072】
同様に、逆関数を負荷なし電圧Vocを充電状態SOCと結び付けて、すなわち図が
図9に示されるVoc=f
-1(SOC)で得ることができる。
【0073】
VocとSOCの関係を参照して、第iの観測窓Wiが設定された時点で、次の関係が、有効である。
【0074】
【0075】
ここで、下付文字1及び2は、それぞれ時間観測窓の最初及び終わりの点を示す。より小さいΔSOC=SOC2-SOC1はそのような近似関係をより正確にする。
【0076】
現時点で、残っている回路パラメータ(R0、R1、R2、C1、C2)を得ることができる:それぞれの観測窓Wiにおいて、モデルは、それぞれ測定された電流Imiで促され、前記5つの回路パラメータの組み合わせが、測定された電圧Vmとモデルによって推定された電圧VABの誤差を最小化するように、決定される。
【0077】
そのような誤差の最小化プロセスの終わりに、推定された電圧V
ABは、
図10(図のスケールにおいて、2つの電圧は、実際には区別ができない)に示されるように、測定された特性評価電圧Vmを高い精度で、再現する。
【0078】
特性評価温度T
k(特定の場合において、28℃)についての処理手順の終わりに、モデルのすべてのパラメータは、
図11の図に示されるように、充電状態SOCの関数として得られる。
【0079】
処理手順は複数の特性評価温度Tkで反復される。理想的には、手順は、いくつもの温度値で実行されることができる。
【0080】
全手順の終わりに、それゆえ、バッテリパックまたはセルのモデルの回路パラメータのそれぞれの値は、充電状態SOCの値の関数として、及び異なる動作温度値の関数として入手可能である。
【0081】
処理手順の結果は、「ルックアップテーブル」の形で、集められ、保存することができる。
【0082】
実際には、方法の実施形態によると、処理はさらに電子保存手段(動作条件でバッテリパックまたはセルにアクセス可能な)に、入力として温度と充電状態を受け取り、出力としてパラメータPのそれぞれの値を提供するように構成された、ルックアップテーブルとして、バッテリパックまたはセルの動作モデルのパラメータPを保存するステップを備える。
【0083】
そのような場合において、方法の実施形態によると、バッテリパックまたはセルの動作電流を推定するステップは、前記保存されたルックアップテーブルにアクセスするように構成され、入力として、バッテリパックまたはセルに組み込まれたそれぞれのセンサから生じる測定された動作電圧Vと動作温度T値を受け取るように構成された、バッテリパックまたはセルに関連する電子プロセッサによって、実行される。
【0084】
本明細書において、バッテリパックまたはセルの特性評価データを取得するステップは、広い意味で、限定されない実施例を手段として、ここから下記で記載される実施形態に記載されているそれらを含む、多くの異なる方法で実行されることができる、前の特性を評価する段階に続いて、そのようなデータを利用可能にするように、理解されるに違いない。
【0085】
方法の可能な実施形態において、バッテリパックまたはセルの特性評価データを取得するステップは、動作条件下でバッテリパックまたはセルを使用する前に、それぞれの特性評価温度Tk値における、バッテリパックまたはセルの特性評価電圧Vm及び特性評価電流Imの時間的傾向を測定することを備える。
【0086】
方法の別の可能な実施形態において、バッテリパックまたはセルの特性評価データを取得するステップは、バッテリパックまたはセルの動作条件下で使用する前に、実行される特性を評価する手順で特性評価データを取得することを備える。
【0087】
方法のさらなる可能な実施形態において、特性評価データを取得するステップは、バッテリパックまたはセルの入手可能なデータシートから特性評価データを導き出すことを備える。
【0088】
バッテリパックまたはセルの動作モデルのパラメータが、前に記載されたように、バッテリまたはセルの温度と充電状態の両方を考慮して、決定されると、バッテリパックまたはセルの動作電流Iを推定することが可能である。
【0089】
これは、例えば、次の方程式(5)に基づいて、なされることができる。
【0090】
【0091】
ここで、
【0092】
【0093】
反復法の、次のステージ(ステップ:Ts)を離散化することで、次の式が得られる。
【0094】
【0095】
【0096】
ここで、下付文字OLDをつけて、反復法の前のステージTsから得られたI、IR1、IR2、C1、C2、R1及びR2の値が示される。
【0097】
方法の前に記載された実施形態は、適当な方法で、いかなる動作条件でも、そのような電流を直接検知する必要なく、バッテリパックまたはセルの電流の信頼性のある推定を得るように、バッテリパックまたはセルの充電状態及び動作温度を考慮することができる。
【0098】
電流の実際の値からの推定の狂いのさらなる原因は、バッテリまたはセル及びその構成要素の劣化及び/または経年劣化に由来することがかもしれない。
【0099】
実際には、回路モデルのパラメータが、バッテリまたはセルが新しいか特性を評価することが実行されたときのものである場合有効である。充電状態と温度のそのようなパラメータの依存は、バッテリまたはセルの劣化により、徐々に変化する。それゆえ、厳しく言うと、特性を評価することは、バッテリパックまたはセルがハイブリッドまたは電気自動車に取り付けられた後、これは簡単ではなく、または、実現可能ではないが、周期的に実行されるべきである。
【0100】
そのような態様に対処し、及び経年劣化及び劣化に関連する要因も考慮して、モデルのパラメータを正しく推定しようとするために、方法のさらなる実施形態は、続くさらなるステップを提供する。
【0101】
第1に、バッテリパックまたはセルの熱的モデルが、前述の動作モデルに追加して、定義される。
【0102】
その後、少なくとも1つの測定時間間隔(t0-t1)において、消散した電力Peを、バッテリパックまたはバッテリセルの電圧Vと温度Tcの前記間隔(t0-t1)で測定された値に基づいて、及びバッテリパックまたはバッテリセルの前記温度Tcにおいて推定されるパラメータPに基づいて、バッテリパックまたはセルの動作モデルによって推定する。
【0103】
さらに、同じ測定時間間隔(t0-t1)において、消散した熱出力Pdを、バッテリパックまたはバッテリセルの温度Tcの前記値に基づいて、及び前記間隔(t0-t1)で測定された環境温度Te値に基づいて、及びバッテリパックまたはバッテリセルの温度Tcにおいて推定されるパラメータPに基づいて、バッテリパックまたはセルの熱的モデルによって推定する。
【0104】
その後、前に推定された消散した電力Peと消散した熱出力Pdの差ΔPを決定するためのステップを実行する。
【0105】
最終的に、そのような劣化及び/または経年劣化の現象を考慮するために、パラメータPの更新値を得るように、前記推定された差ΔPに基づいてパラメータPを、修正する。
【0106】
方法の実施形態によると、バッテリパックまたはセルの熱的モデルは、それぞれの熱的セルモデルが、熱的セル容量CT、熱的セル抵抗RT、セル温度Tc及び環境温度Teによって特性評価される、1以上の熱的セルモデルから成り立って使われる。
【0107】
熱的セル容量CT及び熱的セル抵抗RTパラメータは、セル及びバッテリパックまたはセルの特定の形態に特有である。
【0108】
特に、方法に使われる熱的モデルの実施例は、例えば、図式的に
図12に示されるものなど、1次熱的モデルである。
【0109】
そのような熱的モデルによると、次の関係(6)が有効である。
【0110】
【0111】
ここで、パラメータの意味するものは、すでに上記に記載されている。
【0112】
時間間隔(t0-t1)で消散した熱エネルギETは次の式(7)によって計算されることができる。
【0113】
【0114】
現時点で、与えられた時間間隔で消散したエネルギ及び/または熱及び電力を利用可能に有するので、パラメータの値は更新されることができる。
【0115】
特に、
図13のブロック図で示される実施形態によって、モデルパラメータを修正する前記ステップは、前に記載されたように、劣化を除外して決定される値から始まる、内部抵抗R
0パラメータの修正を備える。
【0116】
この目的を達成するために、修正因子Gが、推定された電力と推定された熱出力の差ΔPに基づいて、決定される。その後、劣化を除外して有効な、バッテリまたはセルの内部抵抗R0値は、バッテリまたはセルの内部抵抗R0の更新された推定を得るために、前記修正因子Gで乗じられる。
【0117】
その後、内部抵抗R0の更新された推定に基づいて、電力Peを再計算し、その後、差ΔPがあらかじめ決められたしきい値未満に減らされるまで、決定することと、乗じることと、再計算する前記ステップを繰り返すステップが提供される。最終的に、前記反復法の終わりにおいて得られる更新された推定は、バッテリまたはセルの内部抵抗R0値として考えられる。
【0118】
また、劣化及び/または経年劣化の存在するバッテリまたはセルの電気動作パラメータを推定においても、目的とされる方法の代替の実施形態は、動作条件下でバッテリパックまたはセルを使う前に、異なる温度値と使用の時間に応じたバッテリまたはセルの内部抵抗R0の値の変化の特性評価をし、バッテリまたはセルの内部抵抗の特性評価データを保存するステップを備える。
【0119】
さらに、方法が、バッテリパックまたはセルの動作条件下で適用されたとき、バッテリまたはセルの内部抵抗R0の修正された値は、バッテリパックまたはセルの実際の使用の経過時間を考慮して、バッテリまたはセルの内部抵抗R0の前記特性評価データによって、用いられる。
【0120】
本発明は、また、バッテリパックまたはセルの充電状態SOCを推定する方法を備える。そのような方法は、上記で記載された実施形態のいずれか1つによって、バッテリパックまたはセルの動作時間に沿って、バッテリパックまたはセルによって分配される動作電流Iを推定するステップを備える。その後、バッテリパックまたはセルの動作開始の瞬間から現在の瞬間まで、動作する、動作電流Iの推定された時間的傾向に基づく、最初の充電状態SOC0からバッテリパックまたはセルの充電状態SOCを推定する方法が提供される。
【0121】
特に、実施形態によると、前述の式はこの目的において使われることができる(4)。
【0122】
【0123】
そのような方法は、比較が、物理センサによって、取得される電流を測定することによって推定される充電状態SOC
Imisと、物理電流センサを除外して、この方法に基づいて推定される充電状態SOC
Iestの間でなされる、
図14の実施例を手段として示されるように、3%と同じかそれより低い誤差で、充電状態を正確に推定することができる。
【0124】
図15において、比較は、測定された電流I
misと本発明の方法によって推定されたように推定された電流I
estでなされる。注目されることができるように、5%と同じかそれより低い、高い正確性が得られる。
【0125】
本発明は、さらに一体化された電流センサを除外しても、バッテリパックまたはセルを制御するように構成されたバッテリパックまたはセル制御装置を備え、装置は、バッテリパックまたはセルの測定された動作電圧V値及びバッテリパックまたはセルの測定された動作温度T値を受け取るように構成されている。
【0126】
装置は、上記に記載された実施形態のいずれかによって、バッテリパックまたはセルの動作電流Iを推定する方法を実行、及び/または上記に記載された実施形態のいずれか1つによって、バッテリパックまたはセルの充電状態SOCを推定する方法を実行するように構成された電子処理手段を備える。
【0127】
本発明は、さらに、一体化された電流センサを備えることなく、動作するように構成されたバッテリパックまたはセルを備える。
【0128】
バッテリパックまたはセルは、バッテリパックまたはセルの動作電圧Vを検知するように構成された、電圧センサ、バッテリパックまたはセルの動作温度Tを検知するように構成された、温度センサ、前に記載されたものによる制御装置を備える。
【0129】
注目されることができるように、本発明の目的は、記載された推定する方法によって、そのそれぞれの動作特徴の長所によって、完全に達成される。
【0130】
実際には、バッテリまたはセルの電流及びバッテリまたはセルの充電状態を推定する方法は、適切なセンサによって、バッテリまたはセルの電流を直接取得する必要なく、バッテリまたはセルの電圧及び温度のみを「オンライン」での取得(すなわち、バッテリまたはセルは動作条件下である間)に基づく。
【0131】
これは、さらに、複雑さとコストを減らすことに関して、明らかな利点を導き出すバッテリパックまたはセルから電流センサを排除する(並びに対応する配線、電流信号を取得するハードウェアシステム及び関連のあるソフトウェア管理も排除する)ことが可能である。
【0132】
本方法が物理電流センサの存在下で用いられたとしても、電流の追加の間接の推定を得る方法を提供すること、この方法の使用は、ついでの利益として、安全の観点から有益な、合同性または妥当性の推定をする可能性をどちらにせよ提供するであろうことは注目すべきである(ISO26262規格)。
【0133】
さらに、前に詳細に記載されているように、バッテリまたはセルの電流及びバッテリまたはセルの充電状態を推定する方法は、実用的に、効果的に用いられるように、十分正確な推定を得ることができる。特に、記載された方法は、5%より低い誤差でバッテリパックまたはセルを流れる瞬間電流を推定し、3%より低い誤差で充電状態を推定することができる。
【0134】
同様な利点を、前記推定方法を実行する、本発明による制御装置、並びに装置及び制御システムを使って、電流センサのなくてもよい、そのような推定方法から利益を得る、本発明によるバッテリパックまたはセルを参照して特定することができる。
【0135】
当業者は、付随する要求を満足するために、続く請求項の範囲から逸脱することなく、上記に記載された電流を推定する方法、充電状態を推定する方法、制御装置及びバッテリパックまたはセルの実施形態の他の機能的な均等物に、要素を改良し、適合し、置き換えることができる。
【0136】
可能な実施形態に付属するように記載された特徴のそれぞれは、記載された他の実施形態から独立に達成されることができる。用語「備える」(comprising)は、他の要素またはステップを排除することがなく、用語「1つの」(a)または「1つの」(one)は複数を排除することがないことも留意すべきである。より明確に説明するために、さまざまな部分に適切なハイライトをする要求を許容するので、図はノンスケールで描かれている。