IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キッツの特許一覧

<>
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図1
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図2
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図3
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図4
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図5
  • 特許-一斉開放弁とその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】一斉開放弁とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20220727BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20220727BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20220727BHJP
   F16K 1/36 20060101ALI20220727BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A62C35/68
F16K31/122
F16K1/34 D
F16K1/36 J
F16K1/42 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018115768
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019218984
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小林 達朗
(72)【発明者】
【氏名】林 健司
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3200953(JP,U)
【文献】特開2001-333995(JP,A)
【文献】特開平11-304014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
A62C 2/00-99/00
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー内部が連通穴を介して一次側流路と二次側流路とに仕切られ、外部流路に接続された圧力制御室の圧力変化に応じてピストン状弁体が昇降動して連通穴を開閉する一斉開放弁であって、芯金を軟質材で被覆して成形したシートリングが前記連通穴の弁座面に装着され、前記ボデー内に装着した円筒保持体の内周面をピストン状弁体が昇降動すると共に、前記円筒保持体の下端部で前記シートリングが保持され、このシートリングの外周径が前記円筒保持体の下端部内周の内径より大としたことを特徴とする一斉開放弁。
【請求項2】
前記シートリングの外周には、環状外周リブが形成され、この環状外周リブの外径が前記円筒保持体の下端部の内径よりも大径に設けられている請求項1に記載の一斉開放弁。
【請求項3】
前記円筒保持体に少なくとも3つ以上の脚部が設けられ、この脚部の下端内周に前記シートリングを外周側から挟持する係合段部が形成され、この係合段部の段部面で前記シートリングの外周上面を位置決めし、かつ前記係合段部の内周面で前記シートリングの外周面を挟持させて一体化させた請求項1又は2に記載の一斉開放弁。
【請求項4】
前記シートリングの前記芯金との挟着位置における前記軟質材の表裏面に環状リブが形成され、この環状リブで前記弁座面と閉止状態の前記ピストン状弁体とのシール性を維持させた請求項1乃至3の何れか1項に記載の一斉開放弁。
【請求項5】
前記ピストン状弁体の上部中心位置に逆止弁が装着され、この逆止弁は、前記一次側流路から前記圧力制御室へ流体を通過させ、かつ、前記圧力制御室から前記一次側流路への流体の通過を阻止する状態に設けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の一斉開放弁。
【請求項6】
ボデー内部が連通穴を介して一次側流路と二次側流路とに仕切られ、外部流路に接続された圧力制御室の圧力変化に応じてピストン状弁体が昇降動して連通穴を開閉する一斉開放弁であって、前記ボデー内に装着した円筒保持体の内周面を前記ピストン状弁体が昇降動する状態で前記連通穴の弁座面に装着するシートリングを前記円筒保持体の係合段部に対して仮着状態で装着し、前記円筒保持体を前記シートリングと一体化した状態で前記ボデー内に装着させることを特徴とする一斉開放弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備や泡消火設備などの消火設備に使用される一斉開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の消火設備で使用される一斉開放弁においては、通常、弁箱内部が隔壁により仕切られて一次側管路と二次側管路とが設けられ、隔壁には一次側管路と二次側管路とを連通する連通口が形成されている。弁箱内には有底円筒形状のピストン弁体が連通口方向に昇降動するように設けられ、その周面が弁箱内部を摺動しながら底面側が連通口側に接離することで流路が開閉可能に構成される。
【0003】
このような一斉開放弁として、例えば、特許文献1の一斉開放弁が開示されている。この一斉開放弁では、本体内部に略円筒形状のライナーが装着され、このライナーの内部にピストン弁体が摺動する状態で取り付けられる。本体の連通口にはシートリングが装着され、このシートリングはライナーの下端に形成された段部と隔壁により挟着されて抜け出しが防止されている。ピストン弁体の底面にはOリングが装着され、弁閉時にはこのOリングがシートリング表面にシールするようになっている。
【0004】
一方、特許文献2の一斉開放弁では、本体内部の略円筒形状のライナーに形成された脚の下部に段部が形成され、この段部とボデーの連通口外周側に形成された段部との間にシートリングが収容された状態で保持され、脚の下端がシートリングに近接して配置されてシートリングの連通口からの抜け出しが防止されている。シートリングの表面にはゴムや樹脂によるシール部材が被着され、弁閉時には、ピストン弁体の底面がシートリングに当接することでシールしようとしている。
【0005】
上記の消火設備では、火災に備えてその機能を十分に発揮することが要求され、このことから、一斉開放弁については、通常時には、ピストン弁体に装着されたOリング或はボデー側のシートリングにより弁閉状態を維持して一次側管路から二次側管路への漏水を防止し、火災時には、ピストン弁体がシートリングに張り付くことなくスムーズに昇動して通水できることが求められる。これを満足するために定期的な点検がおこなわれ、一斉開放弁の点検時には、シートリングの清掃や交換がおこなわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-333995号公報
【文献】特開2014-66304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の特許文献1の一斉開放弁では、ピストン弁体底面にOリングが装着された構造になっているため、弁開時に一次側管路から二次側管路に流体が流れるときにこの流体によりOリングを脱落させる方向に力が働き、特に、微小開度時で流れが速くなると、Oリングがその装着溝からずれたり脱落して、弁閉時のシール性を確保できなくなるおそれがある。
これに対して、点検時にOリングを装着し直したり或は清掃・交換が必要になり、これらを実施する場合、Oリング装着用の溝への着脱作業が容易でないことから手間がかかり、Oリングの抜け出しを防止するために溝を三角溝に設ける場合、形状が複雑になることから寸法精度も要求されて加工が難しくなるという問題も有している。
【0008】
一方、後者の特許文献2の一斉開放弁においては、シートリングをボデー連通口外周の段部内周側に係止させ、この上からライナーを装着して脚の段部内に係止させる構造であることから、点検時等においてシートリングをボデー内に組込む際には、ボデーの上方開口部からシートリングを装入しつつ段部内側の適切な位置に装着する必要がある。これにより、仮にシートリングが円周方向に位置ずれした状態で組み込まれていると、ピストン弁体の下降時に適切にシールできなくなって漏れを生ずる可能性が生じると共に、シートリングの装着にも手間がかかるという問題も有していた。
しかも、ボデー段部やライナー段部とシートリング外周面との間に隙間が生じている場合、この隙間を介して微小開度時などにシートリングが円周方向に位置ずれすることによってもシール性の悪化につながる。
シートリングを取り外すときには、ボデーからライナーを取り外した後に、ボデー開口部から手を入れてシートリングを抜き出す必要があるため手間を要していた。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、シートリングの取付け構造を簡略化しつつ、組付け時や流体の流れによるシートリングのずれや脱落を防止して弁閉時のシール性を確保し、シートリングの組込みや取り外し作業も容易な一斉開放弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ボデー内部が連通穴を介して一次側流路と二次側流路とに仕切られ、外部流路に接続された圧力制御室の圧力変化に応じてピストン状弁体が昇降動して連通穴を開閉する一斉開放弁であって、芯金を軟質材で被覆して成形したシートリングが連通穴の弁座面に装着され、ボデー内に装着した円筒保持体の内周面をピストン状弁体が昇降動すると共に、円筒保持体の下端部でシートリングが保持され、このシートリングの外周径が円筒保持体の下端部内周の内径より大とした一斉開放弁である。
【0011】
請求項2に係る発明は、シートリングの外周には、環状外周リブが形成され、この環状外周リブの外径が円筒保持体の下端部の内径よりも大径に設けられている一斉開放弁である。
【0012】
請求項3に係る発明は、円筒保持体に少なくとも3つ以上の脚部が設けられ、この脚部の下端内周にシートリングを外周側から挟持する係合段部が形成され、この係合段部の段部面でシートリングの外周上面を位置決めし、かつ係合段部の内周面でシートリングの外周面を挟持させて一体化させた一斉開放弁である。
【0013】
請求項4に係る発明は、シートリングの芯金との挟着位置における軟質材の表裏面に環状リブが形成され、この環状リブで弁座面と閉止状態のピストン状弁体とのシール性を維持させた一斉開放弁である。
【0014】
請求項5に係る発明は、ピストン状弁体の上部中心位置に逆止弁が装着され、この逆止弁は、一次側流路から圧力制御室へ流体を通過させ、かつ、圧力制御室から一次側流路への流体の通過を阻止する状態に設けられた一斉開放弁である。
請求項6に係る発明は、ボデー内部が連通穴を介して一次側流路と二次側流路とに仕切られ、外部流路に接続された圧力制御室の圧力変化に応じてピストン状弁体が昇降動して連通穴を開閉する一斉開放弁であって、ボデー内に装着した円筒保持体の内周面をピストン状弁体が昇降動する状態で連通穴の弁座面に装着するシートリングを円筒保持体の係合段部に対して仮着状態で装着し、円筒保持体をシートリングと一体化した状態でボデー内に装着させる一斉開放弁の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、弁閉時のシートリングを連通穴の弁座面に装着した状態で円筒保持体の下端部で保持し、このシートリングの外周径を円筒保持体の下端部の内周の内径よりも大としたことにより、シートリングの取付け構造を簡略化できる。この場合、組付け時や装着後の流体の流れによるシートリングのずれや脱落を確実に防止し、弁閉時には高シール性を維持できる。しかも、シートリングは、芯金を軟質材で被覆したことにより、弁閉時の軟質材の内外径側への余分な変形を防いでシール性を向上して漏れを確実に防止できる。芯金によりシートリングのたわみを防いだ状態で円筒保持体に所定の状態で装着でき、特に、外径側への過度な軟質材の変形を阻止することで、シートリングの損傷を防いでいる。シートリングを円筒保持体に仮着した状態でボデー内に一体に着脱できるため、組込みや取り外し作業が容易となる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、環状外周リブの外径を装着部の内径よりも大径に設けていることにより、環状外周リブを円筒保持体の下端内周に強い圧力で当接させた状態でシートリングを円筒保持体に保持でき、位置ずれや脱落を防止した状態でボデー内の所定位置に円筒保持体と共にシートリングを容易に着脱できる。弁座面に対してシートリングを芯出し状態で配置できるため、弁閉時におけるシール性が向上する。
【0017】
請求項3に係る発明によると、少なくとも3つ以上設けた脚部にシートリングを取付けることで、弁開時の一次側流路から二次側流路への流路を大口径に確保しつつ、3点支持以上の支持によってシートリングを芯出し状態で強固に円筒保持体に装着できる。脚部の係合段部の段部面でシートリングの外周上面を位置決めし、内周面でシートリングの外周面を挟持させることで、シートリングを上下方向及び径方向への移動を阻止して位置決め状態で一体化し、この位置ずれ防止状態で所定位置に配置したシートリングに対し、ピストン状弁体を下降させて所定のシール性を発揮可能になる。
【0018】
請求項4に係る発明によると、環状リブの過剰な変形を芯金で防いでこの環状リブによるシール性を高めた状態で、この環状リブにより弁座面と閉止状態のピストン状弁体とのシール性を維持してこれらとの間の漏れを確実に防止する。
【0019】
請求項5に係る発明によると、逆止弁により、一次側流路から圧力制御室に流体を通過させ、一方、圧力制御室から一次側流路への流体の通過を阻止し、一次側管路と圧力制御室の内圧を同圧に保つように機能する。この逆止弁をピストン状弁体の上面側の中心部に設けることで、鋳造や鍛造によるピストン状弁体の形成が容易になる。
請求項6に係る発明によると、シートリングを円筒保持体に仮着した状態でボデー内に一体に着脱して組込みや取り外し作業が容易となり、ボデーへの円筒保持体の装着時には、その装着と同時にシートリングをボデー内の所定位置に取付けでき、一方、点検時等においては、ボデーから円筒保持体を抜出すことでこの円筒保持体と一体にシートリングを取外してこのシートリングの清掃や交換をおこなえる。しかも、シートリングの装着時には、このシートリングを円筒保持体の係合段部で位置決めし、移動を阻止した状態で円筒保持体にシートリングを一体化でき、シートリングの装着後には、この位置ずれ防止状態で所定位置に配置したシートリングに対し、ピストン状弁体を下降させて所定のシール性を発揮可能になる。


【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明における一斉開放弁の実施形態を示す縦断面図である。
図2図1における要部の分離断面図である。
図3】円筒保持体とピストン状弁体との分離状態を示す斜視図である。
図4】(a)は、シートリングの中央縦断面図である。(b)は、図1におけるA部拡大断面図である。
図5】(a)は、図1におけるB部拡大断面図である。(b)は、(a)の平面図である。
図6図1の一斉開放弁の弁開状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明における一斉開放弁を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一斉開放弁の実施形態の縦断面図、図2は、図1における要部の分離断面図を示している。図3は、円筒保持体とピストン状弁体との分離状態を示している。
【0022】
図に示した一斉開放弁は、図示しないスプリンクラー設備や泡消火設備などの消火設備に設けられ、送水元弁として常時は閉止状態にあり、火災時等には自動制御によりスプリンクラーヘッドから同時に放水するための開放弁として動作するように設けられる。一斉開放弁には、火災報知機と連動する自動式と人為的な手動式とがあり、本実施形態では、感知ラインの減圧による圧力信号で自動的に作動する減圧型と呼ばれる自動式の一斉開放弁の場合を説明する。
【0023】
図1において、本発明における減圧型の一斉開放弁は、ボデー1、シートリング2、円筒保持体3、ピストン状弁体4、逆止弁5、バタフライ弁6を有している。
【0024】
ボデー1は、鋳造により内部に隔壁1aを有する中空状に形成され、この隔壁1aには連通穴10が穿孔されている。ボデー1内部は連通穴10を介して一次側流路11と二次側流路12とに仕切られ、連通穴10の外縁側には、シートリング2装着用の弁座面13が切削加工により形成されている。
【0025】
ボデー1内において、ピストン状弁体4の背面の上部側には、圧力制御用の円筒穴状の圧力制御室14が設けられ、この圧力制御室14の上部には拡径状の係止段部15が形成される。圧力制御室14には円筒保持体3が装着可能に設けられ、この円筒保持体3の内周側にピストン状弁体4が昇降動自在な状態で内挿される。
【0026】
ボデー1の両端側には配管フランジ16、16が設けられ、この配管フランジ16を介して、一次側流路11、二次側流路12に図示しない外部の一次側配管、二次側配管がそれぞれ接続される。図示しないが、一次側配管には消化液源、例えば消化液タンクや貯水槽に接続され、この消火液源から消火剤(流体)が一斉開放弁側に供給可能に設けられている。一方、二次側配管にはスプリンクラーヘッドや泡ヘッドが設けられる。
【0027】
圧力制御室14には、後述の蓋体20を介して外部流路である感知ライン27が接続され、この感知ライン27には図示しない感知ヘッドが設けられ、この感知ヘッドを介して火災が感知可能に設けられる。
【0028】
圧力制御室14の係止段部15よりも上部には開口部21が設けられ、この開口部21に圧力制御室14を閉鎖する蓋体20が嵌め込み状態で取付け可能に設けられる。蓋体20の内部には、感知ライン27との接続用の接続流路22が形成されている。
【0029】
圧力制御室14は、接続流路22を介して感知ライン27と連通されることで、感知ヘッドによる火災感知により圧力変化するように設けられ、この圧力変化に応じてピストン状弁体4が昇降動し、このピストン状弁体4のシートリング2への接離により連通穴10を開閉し、これによって一次側流路11と二次側流路12との間が弁開或は弁閉状態に動作する。
【0030】
蓋体20の中央位置には雌螺子23が貫通して形成され、この雌螺子23に雄螺子24を有するロッド25がOリング26で外周シールされた状態で螺着され、このロッド25が蓋体20に対して進退自在に設けられる。ロッド25は、蓋体20に対して進退することでその先端面25aの圧力制御室14への進入状態を調節可能であり、この先端面25aに対してピストン状弁体4の上面側を当接させることで、ピストン状弁体4の上昇を適宜の位置に規制可能になっている。一方、ロッド25を締め込んで先端面25aでピストン状弁体4を押圧するようにすれば、このピストン状弁体4でシートリング2を押圧シールする弁閉状態を維持することもできる。
【0031】
図4(a)、図4(b)において、シートリング2は、鋼材等により環状に形成された芯金30がゴム材料からなる軟質材31で被覆されて設けられ、弁座面13に当接状態で装着可能に設けられる。シートリング2の表裏面にはそれぞれシール面32、32が形成され、一方、シートリング2の外周には適宜の高さ及び厚さを有する環状外周リブ33が形成され、この環状外周リブ33の外周径(外径)φDがシートリング2の外周径となる。後述するように、環状外周リブ33の外周径φDは、円筒保持体3の下端部の内周の内径よりも大径に設けられる。
【0032】
シートリング2において、芯金30との挟着位置におけるゴム31の表裏面には、環状リブ34がそれぞれ形成される。環状リブ34は、ボデー1内の弁座面13、閉止状態のピストン状弁体4にそれぞれ当接シール可能な径及び高さにより形成され、この環状リブ34で弁座面13、閉止状態のピストン状弁体4とのシール性を維持するようになっている。シートリング2の内径は、連通穴10の内径と略同径に設けられる。
【0033】
図2図3において、円筒保持体3は、適宜の樹脂材料により形成され、円筒状の円筒部40と、この円筒部40の下部に設けられる脚部41とを有している。円筒部40は、開口部21からボデー1の圧力制御室14の内壁に嵌合可能な外径に設けられ、この円筒部40の上端には、係止段部15に係止可能な外径を有する環状鍔部42が形成されている。
【0034】
図3に示すように、脚部41は、少なくとも3つ以上形成され、本実施形態では3つの脚部41が形成されている。これら脚部41同士の間には、弁開時に流体が通過可能な連通部43が設けられる。脚部41の下端内周には切欠き状の係合段部50が形成され、この係合段部50にシートリング2が装着されることで、シートリング2が係合段部50によって外周側から挟持された状態で装着される。脚部41の先端側外周には、先方側に向けて傾斜したテーパ面51が形成されている。
【0035】
係合段部50は、平面状の段部面52と、円弧状の内周面53とを有し、段部面52は、シートリング2のシール面32との対向側、内周面53はシートリング2の外周面である環状外周リブ33との対向側にそれぞれ設けられる。係合段部50にシートリング2を装着したときには、段部面52でシール面32の外周上面を位置決めし、かつ内周面53で環状外周リブ33を挟持して一体化させることが可能となり、このとき、内周面53が円弧状であることから、略円形状のシートリング外周に沿うように当接させて容易な抜け出しが防がれている。
これにより、シートリング2を円筒保持体3の係合段部50に対して仮着状態で所定位置に装着でき、円筒保持体3をシートリング3と一体化した状態でボデー1内に着脱可能となる。
【0036】
図1において、シートリング2を装着した円筒保持体3をボデー1内に装着する場合には、ボデー1の開口部21からこれらを圧力制御室14に挿入するようにし、このとき、環状鍔部42が係止段部50に係止することで円筒保持体3がボデー1の高さ方向に位置決めされた状態となり、この円筒保持体3下部に装着されたシートリング2が弁座面13の適宜位置に所定圧力で装着される。このようにして、ボデー1内に装着した円筒保持体3の下端部でシートリング2を連通穴10が外縁側に芯出し状態で保持し、円筒保持体3の内周面側で圧力制御室14の周面が構成される。円筒保持体3の内周側にはピストン状弁体4が嵌合状態で装着され、このピストン状弁体4が円筒保持体3に対して昇降動可能に設けられる。
【0037】
図2に示すピストン状弁体4は、有底の略筒状に形成され、上部に拡径円柱部60、下部にこの拡径部よりも縮径した円柱部61が形成される。拡径円柱部60は、円筒保持体3の円筒部40の内側を摺動可能な外径に形成され、この拡径円柱部60の外周にはシール用Oリング62が装着される。一方、円柱部61は、脚部41との間に隙間を有しつつその内側を昇降動可能な外径に形成され、この円柱部61の底面には、シートリング2に当接シール可能な環状シール面63が形成される。
【0038】
図5(a)、図5(b)において、ピストン状弁体4の上面側は環状にくり抜かれて上部中心位置に突起部64が形成され、この突起部64の中央に逆止弁装着用の装着穴部65と、この装着穴部65から一次側流路11に連通可能な内部流路66が設けられる。突起部64の上面側は、溝部からなる流路部67が十字状に形成され、この流路部67よりも高い部分に図1のロッド25の先端面25aが当接する当接面69が形成される。ピストン状弁体4は、圧縮スプリング68を介して円筒保持体3の内周側にOリング62により液密状に装着され、円筒保持体3内をシール状態でスムーズに摺動可能に設けられる。
【0039】
図5(a)に示した逆止弁5は、円筒状のキャップ部材70、シート部材71、ボール弁体72を有し、これらが組合わせられた状態で装着穴部65に取付けられる。キャップ部材70は、内部にボール弁体72を収容可能な収容部73を有し、この収容部73に続けて圧力制御室14に連通する貫通孔74が設けられる。キャップ部材70の外周にはオネジ部75が設けられ、このオネジ部75と装着穴部65に形成されたメネジ部76との螺着により逆止弁5が装着穴部65に装着可能に設けられる。
【0040】
シート部材71は、ボール弁体72が着座可能な略円錐状のシール面部77を有し、ボール弁体72が収容された状態のキャップ部材70に、嵌め込みにより取付けられる。これにより、ボール弁体72の抜け出しが阻止された状態で、このボール弁体72が収容部73内を昇降動可能に設けられる。ボール弁体72の上昇時には、このボール弁体72と貫通孔74との間に生じる隙間を介して弁開状態になり、ボール弁体72の下降時には、このボール弁体72がシール面部77に着座して弁閉状態となる。
【0041】
上記の構造により、一斉開放弁において、ピストン状弁体4の弁閉状態で一次側流路11が開状態であるときには、この一次側流路11から内部流路66を介して逆止弁5内に流体が流れ込もうとし、この流体の流体圧によりボール弁体72がシール面部77から離間する方向に収容部73内を移動する。これにより、一次側流路11から貫通穴74を介して圧力制御室14に流体が流れ込み、圧力制御室14内が流体で満たされた状態となる。一方、これと同時に、ボール弁体72にはシール面部77に着座しようとする力が加わるため、圧力制御室14から一次側流路11への流体の通過(逆流)が阻止されている。
【0042】
図1図6において、バタフライ弁6は、ボデー内流路への開放弁として一次側流路11及び二次側流路12の配管フランジ16付近に設けられる。バタフライ弁6は、操作用ステム80とこのステム80に接続されたジスク81とを有し、ステム80の回転操作によりジスク81を介して一次側流路11、二次側流路12がそれぞれ開閉可能に設けられる。バタフライ弁6は、一斉開放弁の作動試験等に応じて適宜開閉操作され、一斉開放弁を動作可能な状態にするときには、一、二次側の双方のバタフライ弁6、6を弁開状態とする。
【0043】
続いて、上述した一斉開放弁の動作を述べる。
図1における通常時には、一、二次側のバタフライ弁6が弁開状態とされ、一次側流路11と一次側配管、二次側流路12と二次側流路がそれぞれ連通した状態にある。
ピストン状弁体4は、圧縮スプリング68の弾発力によりシートリング2側に付勢され、シートリング2の環状リブ34を有するシール面32が、弁座面13とピストン状弁体4の環状シール面63とにそれぞれ密着してシール性が維持されている。これにより、ピストン状弁体4によって一次側流路11と二次側流路12とが遮断されて弁閉状態が維持されている。
【0044】
この状態において、一次側管路から一次側流路11に流体が供給されると、この流体は内部流路66からボール弁体72を押圧しながら逆止弁5を介して圧力制御室14に流れ込んでこの圧力制御室14が流体で満たされ、さらに、圧力制御室14から感知ライン27を介して感知ヘッドまでの経路に流体が流れ込んでこれらが流体で満たされ、火災を感知可能な待機状態となる。
【0045】
感知ヘッドが火災を感知して放水がおこなわれると、感知ライン27を介して圧力制御室14に充填されていた流体の減少により圧力制御室14内の圧力が低下する。これによって、一次側流路11内の水圧が、圧力制御室14内の圧力及び圧縮スプリング68の弾発力による力を上回り、この圧力差により図6に示すようにピストン状弁体4が上方へと押し上げられ、このピストン状弁体4とシートリング2との間に開口する連通部43から、一次側流路11の流体が二次側流路12へと流入し、二次側流路12から二次側配管に流体が供給されて二次側配管に設けられたスプリンクラーヘッドや泡ヘッドから消火用の放水がおこなわれる。
【0046】
なお、上記実施形態において、シートリング2の芯金30を鋼材、軟質材31をゴム材料に設けているが、芯材20がシートリング2全体の極度の変形を防止し、軟質材31がシール性を確保できる材料であれば、それぞれ適宜材料により設けることができる。
【0047】
次いで、本発明の一斉開放弁の上記実施形態における作用を説明する。
図1図4において、本発明の一斉開放弁は、円筒保持体3の脚部41の下端内周に形成した係合段部50にシートリング2を保持しているので、このシートリング2を円筒保持体3のボデー1へ装着すると同時に、ボデー1内の所定位置に容易に取付けることができる。一方、点検時等において、シートリング2の清掃や交換が必要な場合には、円筒保持体3をボデー1から抜出すことでこの円筒保持体3と一体にシートリング2を取外しできるため、開口部21から手を入れてシートリング2のみを取り出す必要もない。円筒保持体3のボデー1への装着時には、脚部41の先端側外周に設けたテーパ面51により開口部21から挿入しやすくなっている。
【0048】
シートリング2を芯金30で補強し、このシートリング2の外周径を係合段部50の内周よりも大径に設けていることにより、必要以上のたわみによる変形を防ぎつつ、円筒保持体3へのずれや脱落を防止した同芯状態でシートリング2を装着でき、この状態でボデー1内に一体に組込みできる。円筒保持体3のボデー1への装着時には、環状鍔部42が係止段部15に係止することで所定位置に位置決めされ、シートリング2の円周方向への位置ずれを防いだ状態で弁座面13に正確に装着できる。そして、円筒保持体3内にピストン状弁体4が嵌合状態で摺動可能に装着されているため、ボデー1内に芯出し状態で装着されたシートリング2に正確にピストン状弁体4を当接シールさせて弁閉時の漏れを防ぐことが可能となる。
【0049】
シートリング2の外周に環状外周リブ33を設け、この環状外周リブ33の外周径φDを係合段部50の内周面53の内径φdよりもやや大径に設けていることで、環状外周リブ33を線接触により係合段部50の内周面53に強い圧力で当接させ、シートリング2の位置ずれや脱落を確実に防止できる。
【0050】
係合段部50(内周面53)を3つの脚部41に設け、この内周面53でシートリング2の外周側を挟持させていることにより、脚部41による3点支持でシートリング2を外周側から均等に保持して芯出し状態とし、かつ係合段部50の段部面52でシートリング2の外周上面をシートリング2を高さ方向に位置決めした状態で装着できる。これにより、円筒保持体3の所定位置にシートリング2を一体化し、弁座面13の所定位置に取付けできる。
【0051】
シートリング2の芯金30との挟着位置におけるゴム31の表裏面に環状リブ34を形成し、この環状リブ34で弁座面13と閉止状態のピストン状弁体4とのシール性を維持することにより、弁閉時におけるゴム31の過剰な変形を防いでシール性を確保し、シートリング2の消耗も抑えている。
【0052】
ピストン状弁体4の上部中心位置に逆止弁5を装着していることにより、このピストン状弁体4の側部に逆止弁を配置する場合に比較して形状が単純化するため、鋳造や鍛造などによる成形加工や成形後の加工も容易になり、工数を抑えつつピストン状弁体4を容易に形成できる。
【0053】
しかも、図5に示すように、突起部64の上面側に溝部からなる流路部67を十字状に形成し、この流路部67よりも高い位置にロッド25当接用の当接面69を設けている。このため、ピストン状弁体4が上昇したりロッド25を下降させた際に、ロッド25の先端面25aが当接面69に当接して逆止弁5を傷付けることがない。これに加えて、貫通孔74を塞ぐこともないため、ロッド25が当接面69に当接したときにも、逆止弁5の一次側流路11から二次側流路12に流体を流す機能を維持できる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ボデー
2 シートリング
3 円筒保持体
4 ピストン状弁体
5 逆止弁
10 連通穴
11 一次側流路
12 二次側流路
13 弁座面
14 圧力制御室
27 感知ライン(外部流路)
30 芯金
31 ゴム(軟質材)
33 環状外周リブ
34 環状リブ
41 脚部
50 係合段部
52 段部面
53 内周面
φD 外周径
φd 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6