(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】医療器具に対する作業支援装置および作業支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20220727BHJP
A61B 90/96 20160101ALI20220727BHJP
A61B 90/98 20160101ALI20220727BHJP
【FI】
G16H40/40
A61B90/96
A61B90/98
(21)【出願番号】P 2018115944
(22)【出願日】2018-06-19
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
【審査官】竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273571(JP,A)
【文献】特開2017-131335(JP,A)
【文献】特開2009-066260(JP,A)
【文献】特開2009-072338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
A61B 90/96
A61B 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者IDと、症状と、医療行為と、前記医療行為で使用された医療器具に付された器具IDとが関連付けられた患者情報を、外部装置から取得するように構成された患者情報取得部と、
前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも一方と、作業指示とが関連付けられて記憶された作業指示テーブルが記憶された作業記憶部と、
医療器具に付された器具IDを読み取るように構成された医療器具読取部と、
前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDと、前記患者情報取得部によって取得された患者情報と、前記作業指示テーブルとに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が使用された患者の症状または医療行為に応じた作業指示を抽出するように構成された処理部と、
を備え
、
前記処理部は、
前記患者情報取得部によって取得された患者情報に基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が使用された患者の症状または医療行為を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された患者の症状または医療行為、および、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具に対する作業指示を抽出する作業指示抽出部と、
を備え、
前記患者情報には、前記医療行為が行われた日時である医療行為日時が関連付けられ、
前記抽出部は、前記医療行為日時に基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が直近に使用された患者の症状または医療行為を抽出する、医療器具に対する作業支援装置。
【請求項2】
患者IDと、症状と、医療行為
とが関連付けられた患者情報を、外部装置から取得するように構成された患者情報取得部と、
前記医療行為と、前記医療行為で使用された医療器具の器具IDとが関連付けられて記憶された医療行為関連テーブルが記憶された医療行為関連記憶部と、
前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも一方と、作業指示とが関連付けられて記憶された作業指示テーブルが記憶された作業記憶部と、
医療器具に付された器具IDを読み取るように構成された医療器具読取部と、
前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDと、前記患者情報取得部によって取得された患者情報と、前記医療行為関連テーブルと、前記作業指示テーブルとに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が使用された患者の症状または医療行為に応じた作業指示を抽出するように構成された処理部と、
を備え
、
前記処理部は、
前記患者情報取得部によって取得された患者情報、および、前記医療行為関連テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具が使用された患者の患者IDを抽出する患者抽出部と、
前記患者情報取得部によって取得された患者情報に基づいて、前記患者抽出部によって抽出された患者IDに対応した患者の症状または医療行為を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された患者の症状または医療行為、および、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具に対する作業指示を抽出する作業指示抽出部と、
を備え、
前記医療行為関連テーブルには、前記医療行為が行われた日時である医療行為日時が関連付けられ、
前記患者抽出部は、前記医療行為関連テーブルの前記医療行為日時に基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が直近に使用された医療行為を抽出し、前記患者情報取得部によって取得された前記患者情報に基づいて、当該医療行為が行われた患者の患者IDを抽出する、医療器具に対する作業支援装置。
【請求項3】
前記医療器具読取部は、医療器具に付された器具IDを読み取る読取装置によって、医療器具に付された器具IDを読み取る、請求項1
または2に記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項4】
前記外部装置は、電子カルテが記憶された装置である、請求項1から
3までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項5】
前記症状は、前記患者の病気の内容である、請求項1から
4までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項6】
前記医療行為は、診察または手術の内容である、請求項1から
5までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項7】
前記作業指示テーブルは、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも前記一方と、回収を行う回収工程と、前記回収工程における医療器具に対する作業指示である回収作業指示と、が関連付けられており、
前記処理部は、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具に対する回収作業指示を抽出する、請求項1から
6までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項8】
前記作業指示テーブルは、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも前記一方と、洗浄を行う洗浄工程と、前記洗浄工程における医療器具に対する作業指示である洗浄作業指示と、が関連付けられており、
前記処理部は、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具に対する洗浄作業指示を抽出する、請求項1から
7までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項9】
前記処理部によって抽出された洗浄作業指示を洗浄機に送信することで作業を指示するように構成された指示部を備えた、請求項
8に記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項10】
前記作業指示テーブルは、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも前記一方と、滅菌を行う滅菌工程と、前記滅菌工程における医療器具に対する作業指示である滅菌作業指示と、が関連付けられており、
前記処理部は、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具に対する滅菌作業指示を抽出する、請求項1から
9までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項11】
前記処理部によって抽出された滅菌作業指示を滅菌機に送信することで作業を指示するように構成された指示部を備えた、請求項
10に記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項12】
前記作業指示テーブルは、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも前記一方と、組み立てを行う組立工程と、前記組立工程における医療器具に対する作業指示である組立作業指示と、が関連付けられており、
前記処理部は、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具に対する組立作業指示を抽出する、請求項1から
11までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項13】
前記作業指示テーブルは、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも前記一方と、保管を行う保管工程と、前記保管工程における医療器具に対する作業指示である保管作業指示と、が関連付けられており、
前記処理部は、前記作業指示テーブルに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDに付された医療器具に対する保管作業指示を抽出する、請求項1から
12までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置。
【請求項14】
請求項1から
13までの何れか1つに記載された医療器具に対する作業支援装置と、
器具IDを読み取る読取装置と、
を備えた、医療器具に対する作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に対する作業支援装置および作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、手術や診察などの医療行為で使用される医療器具に関連したシステムとして、特許文献1には、医療行為に対する予定および実施内容を管理する医療行為管理システムが開示されている。医療行為管理システムにおいて、医療行為者(例えば医師または看護師)は、予め定められた複数の術式の中から少なくとも1つの術式を選択することで、手術の予定(以下、予定情報という。)を入力する。また、医療行為管理システムには、医療行為に使用される医療器具の情報と術式とが対応付けられたデータが記憶されており、医療行為者によって選択された術式に応じて、医療器具の情報が選択される。
【0003】
この医療器具には、識別番号が付与されている。医療行為者は、手術の実施内容を登録する際、手術に使用する医療器具の識別番号を、読取装置を使用して読み取る。そして、読み取られた識別番号は、医療行為管理システムにおいて、上記予定情報と関連付けられて管理される。このことで、手術の予定情報と、使用される医療器具などの実施内容とが関連付けられる。そのため、実施内容に含まれるデータのうち、予定情報に含まれるデータとして、上述の入力された予定情報のデータを使用することができるため、実施内容の管理を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医療器具によっては、使用後に洗浄や滅菌が行われることで、複数の患者に対して繰り返し使用される。繰り返し使用される医療器具に対して、使用後、例えば回収、洗浄、組立、滅菌、保管などの所定の工程の作業が順に行われる。患者には、例えば他の人に感染し易い病気を患っているものや、他の人には感染し難い病気を患っているものがいる。そのため、同じ医療器具であっても、使用した患者の病気などの症状によって、各工程で行われる作業が異なることがあり得る。例えば、感染し易い病気を患っている患者に対して使用された医療器具と、感染し難い病気を患っている患者に対して使用された医療器具とでは、同じ医療器具であっても各工程で行われる作業が異なることがあり得る。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用された医療器具に対して、適切な作業指示を作業者に提供することが可能な医療器具に対する作業支援装置および作業支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医療器具に対する作業支援装置は、患者情報取得部と、作業記憶部と、医療器具読取部と、処理部とを備えている。前記患者情報取得部は、患者IDと、症状と、医療行為と、前記医療行為で使用された医療器具に付された器具IDとが関連付けられた患者情報を、外部装置から取得するように構成されている。前記作業記憶部には、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも一方と、作業指示とが関連付けられて記憶された作業指示テーブルが記憶されている。前記医療器具読取部は、医療器具に付された器具IDを読み取るように構成されている。前記処理部は、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDと、前記患者情報取得部によって取得された患者情報と、前記作業指示テーブルとに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が使用された患者の症状または医療行為に応じた作業指示を抽出するように構成されている。
【0008】
本発明に係る医療器具に対する作業支援装置によれば、外部装置から患者情報を取得することで、器具IDが付された医療器具がどのような医療行為、または、患者に対して使用されたかを得ることができる。そして、医療器具読取部によって医療器具の器具IDを読み取ることで、作業対象となる医療器具の器具IDを得ることができる。よって、作業対象となる医療器具の器具IDと、患者情報に含まれる器具IDとを照らし合わせることで、作業対象となる医療器具が使用された医療行為または患者の症状を得ることができる。したがって、作業対象となる医療器具が使用された医療行為または患者の症状に応じた適切な作業指示の内容を、作業指示テーブルに基づいて抽出することができる。その結果、医療行為または患者の症状の内容に応じて、医療器具の適切な作業指示の内容を作業者に提供することができる。
【0009】
本発明に係る医療器具の他の作業支援装置は、患者情報取得部と、医療行為関連記憶部と、作業記憶部と、医療器具読取部と、処理部とを備えている。前記患者情報取得部は、患者IDと、症状と、医療行為と、前記医療行為で使用された医療器具に付された器具IDとが関連付けられた患者情報を、外部装置から取得するように構成されている。前記医療行為関連記憶部には、前記医療行為と、前記医療行為で使用された医療器具の器具IDとが関連付けられて記憶された医療行為関連テーブルが記憶されている。前記作業記憶部には、前記器具IDと、前記症状または前記医療行為のうち少なくとも一方と、作業指示とが関連付けられて記憶されている。前記医療器具読取部は、医療器具に付された器具IDを読み取るように構成されている。前記処理部は、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDと、前記患者情報取得部によって取得された患者情報と、前記医療行為関連テーブルと、前記作業指示テーブルとに基づいて、前記医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具が使用された患者の症状または医療行為に応じた作業指示を抽出するように構成されている。
【0010】
本発明に係る医療器具の他の作業支援装置によれば、外部装置から患者情報を取得し、患者情報と医療行為関連テーブルとから、医療器具読取部によって読み取られた器具IDが付された医療器具がどの患者に使用されたかを得ることができる。また、患者情報から、作業対象となる医療器具が使用された医療行為または患者の症状を得ることができる。したがって、作業対象となる医療器具が使用された医療行為または患者の症状に応じた適切な作業指示の内容を、作業指示テーブルに基づいて抽出することができる。その結果、医療行為または患者の症状の内容に応じて、医療器具の適切な作業指示の内容を作業者に提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用された医療器具に対して、適切な作業指示を作業者に提供することが可能な医療器具に対する作業支援装置および作業支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る作業支援システムを示す概念図である。
【
図6】滅菌工程の作業を指示する手順におけるデータの流れを示した図である。
【
図7】第2実施形態に係る作業支援システムのブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係る患者情報テーブルの構成例を示す図である。
【
図9】医療行為関連テーブルの構成例を示す図である。
【
図10】第2実施形態において、滅菌工程の作業を指示する手順におけるデータの流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る医療器具に対する作業支援装置(以下、単に作業支援装置という。)を備えた作業支援システムについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る作業支援システム100を示す概略図である。
図1に示すように、作業支援システム100は、医療器具5に対する作業者の作業を支援するためのシステムである。
【0015】
医療器具5は、病院において行われる医療行為で使用される器具である。医療器具5は、例えばトラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置、剪刀、メス(例えばレーザーメスや電気メス)、超音波カッター、メスホルダー、カニューレ、鑷子、開創器、スケール、ゾンデ、エレバ、ラスパ、吸引管、開胸器、閉胸器、持針器、注射器、金属ボール、膿盆、コップ、ピン、ミラー、やすり、開口器、クレンメ、ハンドピース、エレパトリューム、ノミ、鋭匙、剥離子、鏡、縫合針、スタンツェ、受水器、針、圧子、ブジー、通気管、骨片打ち込み棒、リウエル、ラジオペンチ、ハンマー、角度計、温度計、穿孔器、スポイト、金属綿棒、浣腸器、シリンジおよび内視鏡などである。ただし、上記例は、医療器具5の一部を列挙したに過ぎず、医療器具5は上記例に限定されない。
【0016】
医療器具5には、1つの部品で構成されていてもよいし、複数の部品で構成されていてもよい。複数の部品で構成された医療器具5として、例えば腹腔鏡外科手術で用いられるトラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置などが挙げられる。このような医療器具5は、複数の構成部品からなり、手術後に回収され、複数の構成部品に分解される。ここでは、医療器具5を構成する部品のことを構成部品という。また、構成部品がさらに複数の構成部品からなる場合があるが、このような場合は全て構成部品と称する。
【0017】
本実施形態では、医療行為とは、医師が患者に対して行う医療に関する行為のことをいう。医療行為とは、医療現場、例えば病院で行われる行為である。医療行為には、手術および診察が含まれる。
【0018】
図2は、循環サイクル10の説明図である。
図2に示すように、医療器具5は、所定の循環サイクル10において繰り返し使用可能なものである。なお、医療器具5に対する循環サイクル10における繰り返し回数は特に限定されず、医療器具5および医療器具5を構成する構成部品の種類によって異なるものである。本実施形態では、循環サイクル10は、手術・診察工程11と、回収工程12と、洗浄工程13と、組立工程14と、滅菌工程15と、保管工程16とから構成されている。
【0019】
手術・診察工程11は、医療器具5を用いて医療行為の一例である手術または診察を行う工程である。ここでは、手術・診察工程11では、所定の場所に保管された医療器具5を所定の場所から取り出し、手術または診察が行われる。回収工程12は、手術・診察工程11の後に行われる工程であり、手術または診察が行われた後、使用された医療器具5を回収する工程である。なお、医療器具5が複数の構成部品によって構成されている場合、回収工程12では、医療器具5を個々の構成部品に分解する作業が含まれていてもよい。洗浄工程13は、回収工程12の後に行われる工程であり、回収された医療器具5または医療器具5の個々の構成部品を洗浄する工程である。洗浄工程13では、例えば洗浄機80(
図1参照)を使用して、医療器具5に対する洗浄が行われる。
【0020】
組立工程14は、洗浄工程13の後に行われる工程であり、洗浄された医療器具5の構成部品を組み立てて、1つの医療器具5を完成させる工程である。組立工程14は、複数の構成部品によって構成された医療器具5を組み立てる工程である。例えば、1つの構成部品によって構成された医療器具5や、回収工程12で分解されなかった医療器具5の場合、組立工程14は省略されてもよい。滅菌工程15は、組立工程14の後に行われる工程であり、組み立てられた医療器具5を滅菌処理する工程である。滅菌工程15では、例えば滅菌機85(
図1参照)を使用して、医療器具5に対する滅菌処理が行われる。以下、滅菌処理のことを単に滅菌ともいう。保管工程16は、滅菌された医療器具5を所定の場所に保管する工程である。なお、保管工程16の後には、手術・診察工程11が行われる。
【0021】
ところで、循環サイクル10の各工程12~16では、医療器具5の種類ごとに作業内容が異なることがあり得る。また、同じ医療器具5であっても、患者の症状や医療行為の内容によって、各工程12~16で行われる作業が異なることがあり得る。例えば、同じ医療器具5であっても、使用された患者の症状や医療行為の内容によって、洗浄工程13における洗浄の方法などが異なることがあり得る。一例として、感染する可能性が高い症状の患者に医療器具5を使用した場合、洗浄工程13では、用手洗浄で医療器具5を洗浄したり、洗浄力が相対的に高い洗剤を使用して医療器具5を洗浄したりするとよい。一方、感染する可能性が低い症状の患者に対して医療器具5を使用した場合、洗浄工程13では、上記と同じ医療器具5であっても、器械洗浄で医療器具5を洗浄したり、洗浄力が相対的に低い洗剤を使用して医療器具5を洗浄したりするとよい。このように、医療器具5の種類によって、各工程12~16ごとに異なる作業が行われることがあると共に、同じ医療器具5であっても、同じ工程12~16で異なる作業が行われることがあり得る。
【0022】
このような循環サイクル10では、工程12~16ごとに作業者が割り振られており、作業者は、担当の工程12~16の作業のみを行うことが多い。また、作業対象となる医療器具5の種類が多数あり、従来では作業者は経験則で作業を行っていた。上述のように、医療器具5の使用状況によって作業内容が変更されることがあり、全ての医療器具5に対して適切な作業を行うことは困難であった。
【0023】
そこで、本実施形態では、作業支援システム100は、各工程12~16において、医療器具5の使用状況に応じた作業を指示することで、作業者の作業を支援する。詳しくは後述するが、本実施形態では、
図1に示すように、作業支援システム100は、患者情報が記憶されている外部装置40と連携して、外部装置40から患者情報を取得する。そして、作業支援システム100は、取得した患者情報に基づいて、回収工程12と、洗浄工程13と、組立工程14と、滅菌工程15と、保管工程16とにおける医療器具5の最適な作業内容を作業者に指示する。
【0024】
本実施形態では、
図1に示すように、医療器具5に識別標識6が設けられている。この識別標識6は、医療器具5と他の医療器具5とを区別するためのものである。例えば、識別標識6には、器具ID106が記録されている。器具ID106は、数字やアルファベットなどによって構成された文字列であり、医療器具5ごとに異なるものである。例えば、器具ID106は、医療器具5ごとに付されている。ただし、医療器具5が複数の構成部品によって構成され、回収工程12において複数の構成部品に分解された医療器具5の場合、構成部品ごとに識別標識6が設けられ、器具ID106が付されている。なお、識別標識6の種類は特に限定されない。例えば、識別標識6は、一次元バーコードであってもよいし、二次元バーコートであってもよいし、ICタグであってもよい。本実施形態では、後述する読取装置30によって識別標識6を読み取ることで、医療器具5の器具ID106を取得することができる。
【0025】
ここでは、作業支援システム100は、医療器具5に設けられた識別標識6から器具ID106を読み取ることで、医療器具5に対する作業指示を行う。本実施形態では、作業支援システム100は、上述のように、循環サイクル10の回収工程12、洗浄工程13、組立工程14、滅菌工程15および保管工程16で行われる医療器具5に対する作業を支援する。しかしながら、作業支援システム100は、上記工程12~16のうちの一部の工程で行われる医療器具5に対する作業を支援するシステムであってもよい。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すように、作業支援システム100は、読取装置30と、外部装置40と、医療器具5に対する作業支援装置(以下、作業支援装置という。)50と、を備えている。
【0027】
読取装置30は、医療器具5に設けられた識別標識6の器具ID106を読み取るものである。読取装置30は、識別標識6に記録された器具ID106を読み取り、読み取った器具ID106を作業支援装置50に送信する。なお、読取装置30の種類は特に限定されず、識別標識6の器具ID106を読み取ることが可能なものであればよい。例えば、識別標識6が二次元コードの場合、読取装置30は、二次元コードを読み取ることが可能な二次元コードリーダであるとよい。例えば、識別標識6がICタグの場合、読取装置30は、ICタグリーダであるとよい。本実施形態では、読取装置30は、非接触式の装置である。しかしながら、読取装置30は、接触式の装置であってもよい。なお、この読取装置30は、各工程12~16に設けられるものである。読取装置30の設置場所は、例えば各工程12~16が行われる作業空間である。
【0028】
外部装置40は、作業支援装置50および読取装置30とそれぞれ別体であり、作業支援装置50と電気的に接続されている。外部装置40は、作業支援装置50と通信可能に接続されている。外部装置40は、コンピュータであり、CPUと、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えている。外部装置40は、専用のコンピュータで実現されるものであってもよいし、汎用のコンピュータで実現されるものであってもよい。外部装置40は、例えば医師が使用する装置である。
【0029】
本実施形態では、外部装置40には、患者の電子カルテが記憶されている。電子カルテには、患者情報が記憶されている。言い換えると、外部装置40には、電子カルテとしての患者情報が記憶されている。ここで、「患者情報」とは、患者の医療に関する情報であり、患者の患者IDと、患者の症状と、患者に対する医療行為に関する医療情報と、医療行為で使用された医療器具5に付された器具ID106などが少なくとも含まれた情報のことである。
【0030】
図3は、患者情報テーブルT1の構成例を示す図である。本実施形態では、外部装置40には、電子カルテ内の患者情報として、患者情報テーブルT1(
図3参照)が記憶されている。ここで、テーブルとは、データベースを構成するテーブルのことをいう。本実施形態に係る患者情報テーブルT1には、患者ID101、患者名102、症状103、医療行為104、医療行為日時105、医療行為104に対して使用された医療器具5の器具ID106などの項目が存在する。なお、患者情報テーブルT1には、上述した項目以外の項目が含まれていてもよい。ここで、症状103には、患者の病名や、患者内に潜伏しているウィルス情報などが含まれる。
【0031】
次に、作業支援装置50について説明する。作業支援装置50は、医療器具5の使用状況に応じた作業を作業者に指示することで、作業者の作業を支援する装置である。作業支援装置50は、コンピュータであり、CPUと、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えている。ここでは、コンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、医療器具5に対する作業者の作業を支援する。作業支援装置50は、専用のコンピュータで実現されるものであってもよいし、汎用のコンピュータで実現されるものであってもよい。
【0032】
本実施形態では、作業支援装置50は、読取装置30および外部装置40と電気的に接続されており、かつ、通信可能に接続されている。作業支援装置50は、読取装置30および外部装置40と、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。ここでは、作業支援システム100は、いわゆるクライアントサーバシステムであってもよいし、クラウドコンピューティングであってもよいし、スタンドアローンシステムであってもよい。
【0033】
図4は、作業支援装置50のブロック図である。本実施形態では、
図4に示すように、作業支援装置50は、記憶部51と、作業記憶部53と、患者情報取得部61と、医療器具読取部63と、処理部60と、指示部67とを備えている。処理部60は、抽出部64と作業指示抽出部65とを備えている。
【0034】
図5は、作業指示テーブルT2の構成例を示す図である。作業記憶部53には、例えば作業指示テーブルT2(
図5参照)が予め記憶されている。作業指示テーブルT2は、各工程12~16において、医療器具5を使用した患者の症状103に応じた作業指示202が示されたテーブルである。
図5に示すように、作業指示テーブルT2は、医療器具5に付された器具ID106と、患者の症状103と、工程を示す工程ID201と、器具ID106が付された医療器具5に対する作業指示202とが関連付けられたテーブルである。言い換えると、作業指示テーブルT2には、器具ID106、症状(例えば病気)103、工程ID201、および、工程に対する作業指示202などの項目が存在する。ここで、「関連付けられた」とは、テーブルの同じ行に記載された項目同士のことをいう。また、工程に対する作業指示202のうち、回収工程12における医療器具5に対する作業指示202のことを回収作業指示といい、洗浄工程13における医療器具5に対する作業指示202のことを洗浄作業指示という。また、組立工程14における医療器具5に対する作業指示202のことを組立作業指示といい、滅菌工程15における医療器具5に対する作業指示202のことを滅菌作業指示といい、保管工程16における医療器具5に対する作業指示202のことを保管作業指示という。
【0035】
なお、作業指示テーブルT2に存在する症状103、および、工程に対する作業指示202の内容などは、IDによって管理されていてもよい。例えば、症状IDと症状とが関連付けられた症状テーブルが記憶部51に予め記憶されており、症状テーブルを参照することで、症状IDから症状を特定するようなものであってもよい。この場合、作業指示テーブルT2の症状103の項目は、症状IDである。以下の説明において、各テーブルの項目は、IDで管理されるものであってもよいし、それぞれの名称で管理されるものであってもよい。例えば各工程は、工程IDによって管理されていてもよいし、工程名によって管理されていてもよい。
【0036】
図5の作業指示テーブルT2は、1つのテーブルによって構成されていてもよいし、複数のテーブルによって構成されていてもよい。仮に、作業指示テーブルT2が複数のテーブルによって構成されている場合、作業指示テーブルT2は、回収作業指示テーブルと、洗浄作業指示テーブルと、組立作業指示テーブルと、滅菌作業指示テーブルと、保管作業指示テーブルとを有していてもよい。ここで、回収作業指示テーブルは、器具ID106と、症状103と、回収作業指示とが関連付けられたテーブルであり、洗浄作業指示テーブルは、器具ID106と、症状103と、洗浄作業指示とが関連付けられたテーブルである。組立作業指示テーブルは、器具ID106と、症状103と、組立作業指示とが関連付けられたテーブルであり、滅菌作業指示テーブルは、器具ID106と、症状103と、滅菌作業指示とが関連付けられたテーブルである。保管作業指示テーブルは、器具ID106と、症状103と、保管作業指示とが関連付けられたテーブルである。
【0037】
記憶部51には、例えば作業記憶部53に記憶された作業指示テーブルT2(
図5参照)以外のテーブルが記憶されていてもよい。例えば、記憶部51には、図示しない作業履歴テーブルが記憶されていてもよい。この作業履歴テーブルは、医療器具5に対する作業の履歴に関するテーブルである。作業履歴テーブルには、器具ID、症状、回収日時(または、回収開始日、回収終了日)、洗浄日時(または、洗浄開始日、洗浄終了日)、洗浄方法、組立日時(または、組立開始日、組立終了日)、滅菌日時(または、滅菌開始日、滅菌終了日)、滅菌方法、保管日時(または、保管開始日、保管終了日)、および、払出日時(または、払出開始日、払出終了日)などの項目が存在する。ここで、洗浄方法には、例えば用手洗浄、単層式自動洗浄、多層式自動洗浄、超音波洗浄、薬品洗浄などが含まれる。滅菌方法には、例えばオートクレーブ(AC)、プラズマ、ガスなどが含まれる。
【0038】
患者情報取得部61は、患者情報が記憶された外部装置40から患者情報を取得する。本実施形態では、患者情報取得部61は、外部装置40から所定の間隔ごと(例えば、1日に1回や1週間に1回など)に患者情報を取得する。ここでは、患者情報取得部61は、外部装置40に患者情報取得信号を送信する。そして、患者情報取得信号を取得した外部装置40は、患者情報取得部61に患者情報を送信する。ここでは、外部装置40は、患者情報取得部61に患者情報の一例として、患者情報テーブルT1(
図3参照)を送信する。患者情報取得部61は、患者情報テーブルT1を受信することで患者情報を取得する。なお、
図4に示すように、受信した患者情報テーブルT1は、記憶部51に記憶される。患者情報取得部61は、外部装置40の患者情報テーブルT1の全項目を取得してもよいし、一部の項目のみを取得するように構成されていてもよい。
【0039】
医療器具読取部63は、医療器具5に付された器具ID106を読み取るように構成されている。医療器具読取部63は、医療器具5に付与された器具ID106を読取装置30によって読み取る。例えば、読取装置30には、医療器具5の識別標識6を読み取る読取部(図示せず)が備えられている。作業者は、読取装置30の読取部を医療器具5の識別標識6にかざす。このことで、読取装置30は、識別標識6に記録された器具ID106を読み取ることができる。なお、読取装置30は、器具ID106を読み取った後、器具ID106を医療器具読取部63に送信する。医療器具読取部63は、器具ID106を受信する。なお、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106は、記憶部51に記憶される。
【0040】
なお、読取装置30は、上述のように、各工程12~16の作業を行う空間に配置されている。すなわち、各工程12~16には、その工程12~16の専用の読取装置30が設けられている。例えば、読取装置30には、どの工程12~16の読取装置であるかを示す工程ID201が割り振られていてもよい。そして、読取装置30によって医療器具5の器具ID106が読み取られた際、読取装置30は、器具ID106と共に、工程ID201を医療器具読取部63に送信してもよい。医療器具読取部63は、工程ID201を受信し、受信した工程ID201は、記憶部51に記憶される。
【0041】
処理部60は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106と、患者情報取得部61によって取得された患者情報と、作業指示テーブルT2とに基づいて、医療器具読取部63によって読み取られた器具IDが付された医療器具5が使用された患者の症状103に応じた作業指示202を抽出するように構成されている。ここでは、処理部60は、上述のように、抽出部64と作業指示抽出部65とを備えている。
【0042】
抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された患者の症状103を、患者情報取得部61によって取得された患者情報テーブルT1に基づいて抽出する。なお、読み取られた器具ID106が付された医療器具5が複数の患者に対して使用された場合、抽出部64は、患者情報テーブルT1の医療行為日時105(
図3参照)に基づいて、医療器具5が直近に使用された患者の症状103を抽出する。
【0043】
作業指示抽出部65は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106の医療器具5に対する作業指示202を、抽出部64によって抽出された患者の症状103、および、作業指示テーブルT2に基づいて抽出する。ここでは、作業指示抽出部65は、作業指示テーブルT2から医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106を特定する。そして、作業指示抽出部65は、
図5に示すように、読取装置30に付された工程ID201であって、記憶部51に記憶された工程ID201と、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106と、抽出部64によって抽出された症状103とが関連付けられたときの作業指示202を作業指示テーブルT2に基づいて抽出する。
【0044】
指示部67は、処理部60(詳しくは、作業指示抽出部65)によって抽出された作業指示202の内容を作業者に指示する。なお、作業者に作業指示を指示する方法は特に限定されない。本実施形態では、
図1に示すように、例えば作業支援装置50は、端末70に通信可能に接続されている。端末70は、例えばコンピュータであり、制御部71と表示画面72を備えている。端末70は、いわゆるタブレット型端末であってもよい。この場合、指示部67は、作業指示抽出部65によって抽出された作業指示202を端末70に送信する。このとき、端末70の制御部71は、受信した作業指示202を表示画面72に表示する。なお、この端末70は、作業支援装置50と別体で構成されていてもよいし、一体的に構成されていてもよい。
【0045】
本実施形態では、
図1に示すように、作業支援システム100は、洗浄機80と滅菌機85とを備えている。作業支援装置50は、洗浄機80および滅菌機85に通信可能に接続されている。洗浄機80は、洗浄工程13で使用される装置であり、かつ、医療器具5を洗浄するために使用される装置である。ここでは、洗浄機80は、制御部81と、表示画面82とを備えている。滅菌機85は、滅菌工程15で使用される装置であり、かつ、医療器具5を滅菌するために使用される装置である。ここでは、滅菌機85は、制御部86と、表示画面87とを備えている。作業指示抽出部65によって抽出された作業指示202が洗浄作業指示の場合、指示部67は、洗浄作業指示を洗浄機80に送信する。このとき、洗浄機80の制御部81は、受信した洗浄作業指示を表示画面82に表示する。作業指示抽出部65によって抽出された作業指示202が滅菌作業指示の場合、指示部67は、滅菌作業指示を滅菌機85に送信する。このとき、滅菌機85の制御部86は、受信した滅菌作業指示を表示画面87に表示する。
【0046】
以上、本実施形態に係る作業支援システム100の構成について説明した。次に、医療器具5に対する作業者の作業を支援する手順について説明する。本実施形態では、医療器具5は、循環サイクル10(
図2参照)において繰り返し使用されるものである。ここでは、循環サイクル10の工程12~16において、その工程12~16の作業が開始される際、作業者は、まず読取装置30を使用して、医療器具5に付された器具ID106を読み取る。そして、器具ID106を読み取った後、作業支援装置50は、器具ID106が付された医療器具5に対して適切な作業指示202を提示する。作業者は、その作業指示202に沿って作業を開始する。なお、本実施形態では、各工程12~16において、医療器具5に付された器具ID106の読み取りから作業指示202を抽出するまでの手順は同じである。そのため、ここでは、一例として滅菌工程15の作業を支援する手順について
図6に沿って説明する。具体的には、器具ID106が「m1」である医療器具5の滅菌作業指示を提示する手順について説明する。
【0047】
本実施形態では、滅菌工程15の作業の支援が実行される前において、患者情報取得部61は、患者情報テーブルT1を外部装置40から取得している。そして、取得した患者情報テーブルT1は記憶部51に記憶されているものとする。以下の説明において、分解されていない医療器具5の場合、医療器具5とは医療器具5そのものである。他方、複数の構成部品に分解された医療器具5の場合、医療器具5は、構成部品に適宜読み替えられるものとする。
【0048】
まず滅菌工程15の作業者は、読取装置30を手に持ち、滅菌対象となる医療器具5に設けられた識別標識6に読取装置30の読取部(図示せず)をかざす。このことで、読取装置30は、識別標識6に記録された器具ID106を読み取る(ステップS101)。ここでは、識別標識6から器具ID106の「m1」が読み取られ、「m1」が医療器具読取部63に送信される(ステップS102)。また、ステップS102では、滅菌工程15の工程ID201である「s15」が医療器具読取部63に送信される。そして、医療器具読取部63は、器具IDの「m1」、および、工程IDの「s15」を記憶部51に記憶する(ステップS103)。
【0049】
次に、抽出部64は、器具IDが「m1」である医療器具5が直近で使用された患者の症状103を、
図3の患者情報テーブルT1から特定する(ステップS104)。本実施形態では、
図3に示すように、患者情報テーブルT1には、症状103と、医療行為104と、医療行為104が行われた医療行為日時105と、医療行為104で使用された医療器具5の器具ID106とが関連付けられている。ここでは、まず抽出部64は、患者情報テーブルT1から器具ID106が「m1」である行を抽出し、抽出した行の患者の症状103を抽出する。ここで、複数の患者の症状103が抽出された場合、医療行為日時105が最も直近の患者の症状103を特定する。ここでは、
図3の患者情報テーブルT1において、器具ID106が「m1」と関連付けされた症状103は、「a1」と「a3」である。そのうち、医療行為日時105が直近であるのは、症状103が「a1」である。そのため、ここでは、器具ID106が「m1」の症状103として、「a1」が特定される。なお、特定された症状103の「a1」は、記憶部51に記憶される(ステップS105)。
【0050】
次に、作業指示抽出部65は、
図5の作業指示テーブルT2から作業指示202を抽出する(ステップS106)。ここでは、作業指示抽出部65は、器具ID106が「m1」であり、工程ID201が「s15」である行を作業指示テーブルT2から抽出する。そして、作業指示抽出部65は、先ほど抽出した行のうち、患者の症状103が「a1」である行の作業指示202を抽出する。本実施形態では、作業指示202である「c15-1」が抽出される。なお、「c15-1」には、器具IDが「m1」の医療器具5において、滅菌工程15で行われる作業指示202であって、症状103が「a1」に対応した適切な作業指示202が示されている。以上のようにして、作業指示抽出部65は、症状103に応じた作業指示202の内容を抽出することができる。なお、抽出された作業指示202の「c15-1」は、記憶部51に記憶される(ステップS107)。
【0051】
次に、指示部67は、記憶部51に記憶された作業指示202である「c15-1」を抽出する(ステップS108)。そして、指示部67は、作業指示202である「c15-1」を滅菌機85に送信する(ステップS109)。作業指示202の「c15-1」を受信した滅菌機85は、この「c15-1」の作業指示を表示画面87(
図1参照)に表示する。作業者は、この「c15-1」に関する内容に沿って、器具IDが「m1」である医療器具5の滅菌処理を行う。
【0052】
以上、本実施形態では、外部装置40から患者情報テーブルT1(
図3参照)を取得することで、器具ID106が付された医療器具5がどのような医療行為104で使用されたかを得ることができる。そして、医療器具読取部63によって医療器具5の器具ID106を読み取ることで、作業対象となる医療器具5の器具ID106を得ることができる。よって、作業対象となる医療器具5の器具ID106と、患者情報に含まれる器具ID106とを照らし合わせることで、作業対象となる医療器具5が使用された患者の症状103を特定することができる。したがって、作業対象となる医療器具5が使用された患者の症状103に対する適切な作業指示202の内容を、作業指示テーブルT2(
図5参照)に基づいて抽出することができる。その結果、患者の症状103に応じて、医療器具5に対する適切な作業指示202の内容を作業者に提供することができる。
【0053】
本実施形態では、患者の症状103に応じて、医療器具5に対する作業指示202を作業者に対して適切に指示することができるため、例えば作業者がその作業に慣れていない初心者であっても、適切に作業を行うことができる。
【0054】
本実施形態では、抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が直近に使用された患者の症状103を、医療行為日時105(
図3参照)に基づいて抽出する。このことによって、例えば医療器具5が複数の患者に対して使用された場合であっても、直近に使用された患者の症状103を特定することができる。よって、直近に使用された患者の症状103に応じた作業指示202を作業者に提供することができる。
【0055】
本実施形態では、医療器具読取部63は、医療器具5に付された器具ID106を読み取る読取装置30(
図1参照)によって、器具ID106を読み取る。ここでは、読取装置30の読取部(図示せず)を器具ID106が記録された識別標識6にかざすことで、器具ID106を容易に読み取ることができる。
【0056】
本実施形態では、外部装置40は、電子カルテが記憶された装置である。電子カルテには、患者情報が含まれている。そのため、電子カルテの患者情報を利用することで、読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された患者の症状103を特定し易い。また、作業支援装置50の専用の患者情報を作成する必要がないため、患者情報を新たに作成する作業を削減することができると共に、患者情報の管理が煩雑になることを抑制することができる。
【0057】
本実施形態では、症状103は、例えば患者の病気の内容である。このことによって、患者の病気の種類に応じて、医療器具5に対する適切な作業指示を行うことができる。
【0058】
本実施形態では、
図5に示すように、作業指示テーブルT2には、工程ID201の項目が含まれている。工程ID201によって、回収工程12と、洗浄工程13と、組立工程14と、滅菌工程15と、保管工程16とのうちの何れの工程に対する作業指示202かを特定することができる。よって、工程12~16および患者の症状103に応じた適切な作業指示202を作業者に対して行うことができる。
【0059】
本実施形態では、洗浄工程13において、指示部67は、作業指示抽出部65によって抽出された作業指示202(ここでは、洗浄作業指示)を洗浄機80に送信している。洗浄機80では、表示画面82(
図1参照)に作業指示202が表示される。洗浄機80は、作業者が医療器具5に対して洗浄をする際に使用する装置である。そのため、作業支援装置50と洗浄機80とを連携させて、洗浄機80から作業指示202を提示することで、作業者は、作業指示202の内容を見ながら洗浄機80を使用し易い。
【0060】
本実施形態では、滅菌工程15において、指示部67は、作業指示抽出部65によって抽出された作業指示202(ここでは、滅菌作業指示)を滅菌機85に送信している。滅菌機85では、表示画面87(
図1参照)に作業指示202が表示される。滅菌機85は、作業者が医療器具5に対して滅菌処理をする際に使用する装置である。そのため、作業支援装置50と滅菌機85とを連携させて、滅菌機85から作業指示202を提示することで、作業者は、作業指示202の内容を見ながら滅菌機85を使用し易い。
【0061】
以上、第1実施形態に係る作業支援システム100について説明した。第1実施形態では、抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された患者の症状103を抽出していた。そして、作業指示テーブルT2は、器具ID106と、症状103と、工程ID201と、作業指示202とが関連付けられており、作業指示抽出部65は、医療器具5が使用された患者の症状103に適した作業指示202を、作業指示テーブルT2に基づいて抽出していた。しかしながら、作業指示抽出部65は、医療器具5が使用された医療行為104に適した作業指示202を、作業指示テーブルT2に基づいて抽出してもよい。この場合、作業指示テーブルT2において、症状103は医療行為104に読み替えられる。この場合、作業指示テーブルT2は、器具ID106と、医療行為104と、工程ID201と、作業指示202とが関連付けられている。また、この場合、抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された医療行為104を抽出する。この場合、医療行為104に応じた適切な作業指示202を作業者に提供することができる。
【0062】
この場合、医療行為104は、例えば診察または手術の内容である。このことによって、診察または手術の種類に応じて、医療器具5に対する適切な作業指示202を行うことができる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る作業支援装置150を備えた作業支援システム200について説明する。
図7は、第2実施形態に係る作業支援システム200のブロック図である。本実施形態に係る作業支援装置150は、第1実施形態と同様に、読取装置30、外部装置140、端末70、洗浄機80および滅菌機85に通信可能に接続されている。本実施形態では、読取装置30、端末70、洗浄機80および滅菌機85は、第1実施形態と同様のため、ここでの説明は省略する。
【0064】
外部装置140は、作業支援装置150と別体である。外部装置140は、コンピュータであり、患者の電子カルテが記憶された装置である。この電子カルテには、患者情報の一例である患者情報テーブルT21(
図8参照)が記憶されている。本実施形態では、患者情報テーブルT21に存在する項目が、第1実施形態の患者情報テーブルT1(
図3参照)と異なる。ここでは、患者情報テーブルT21には、患者ID101、患者名102、症状103、医療行為104、医療行為日時105などの項目が存在する。患者情報テーブルT21には、医療行為104に対して使用された医療器具5の器具ID106(
図3参照)の項目が存在しない。
【0065】
本実施形態では、
図7に示すように、作業支援装置150は、第1実施形態の作業支援装置50と同様に、記憶部51と、作業記憶部53と、患者情報取得部61と、医療器具読取部63と、処理部160と、指示部67とを備えている。作業支援装置150は、さらに、医療行為関連記憶部54を備えている。処理部160は、抽出部64と、作業指示抽出部65とを備えている。処理部160は、さらに、患者抽出部62を備えている。
【0066】
図9は、医療行為関連テーブルT23の構成例を示す図である。医療行為関連記憶部54には、医療行為関連テーブルT23(
図9参照)が記憶されている。医療行為関連テーブルT23は、患者に対する医療行為104と、医療行為104が行われた医療行為日時105と、医療行為104で使用された医療器具5の器具ID106とが関連付けられている。ただし、医療行為関連テーブルT23には、他の項目が含まれていてもよい。本実施形態では、医療行為関連テーブルT23には、医療行為104および器具ID106の項目が少なくとも存在する。ここでは、医療行為関連テーブルT23には、医療行為104と、医療行為日時105と、器具ID106とが関連付けられている。医療行為関連テーブルT23の各項目は、例えば医療器具5を払い出すときや、医療行為104が行われるときに追加されるものである。本実施形態では、医療行為関連テーブルT23の医療行為104と、
図8の患者情報テーブルT21の医療行為104とは、1対1で対応付けられている。ここでは、医療行為104とは、例えばIDが付されたユニークなものであり、医療行為104から患者(言い換えると、患者ID101)を特定することが可能である。
【0067】
処理部160は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106と、患者情報取得部61によって取得された患者情報と、医療行為関連テーブルT23と、作業指示テーブルT2(
図5参照)とに基づいて、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された患者の症状103に応じた作業指示202を抽出するように構成されている。ここでは、処理部160は、上述のように、患者抽出部62と、抽出部64と、作業指示抽出部65とを備えている。
【0068】
患者抽出部62は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106に付された医療器具5を使用した患者の患者ID101を、医療行為関連テーブルT23および患者情報テーブルT21に基づいて抽出する。なお、読み取られた器具ID106が付された医療器具5が複数の患者に対して使用された場合、患者抽出部62は、医療行為関連テーブルT23の医療行為日時105に基づいて、医療器具5が直近に使用された医療行為104を抽出し、この医療行為104が行われた患者の患者ID101を患者情報テーブルT21から抽出する。そして、抽出部64は、患者抽出部62によって抽出された患者IDの患者の症状103を、患者情報取得部61によって取得された患者情報テーブルT21に基づいて抽出する。
【0069】
次に、本実施形態において、医療器具5に対する作業者の作業を支援する手順について説明する。ここでは、一例として、滅菌工程15の作業を支援する手順について
図10に沿って説明する。ここでは、器具IDが「m1」である医療器具5の滅菌作業指示を提示する手順について説明する。
【0070】
ここでは、まず滅菌工程15の作業者は、読取装置30を使用して、作業対象となる医療器具5の器具ID106を読み取る(ステップS201)。このことで、医療器具読取部63は、例えば器具IDとして「m1」を取得すると同時に、滅菌工程15の工程IDである「s15」を取得する(ステップS202)。そして、医療器具読取部63は、「m1」と「s15」を記憶部51に記憶させる(ステップS203)。
【0071】
次に、患者抽出部62は、器具ID106が付された医療器具5が直近で使用された患者の患者ID101を、医療行為関連テーブルT23および患者情報テーブルT21から特定する(ステップS204)。まず、患者抽出部62は、
図9の医療行為関連テーブルT23から器具ID106が「m1」である行を抽出し、抽出した行の医療行為104を抽出する。ここで、複数の医療行為104が抽出された場合、医療行為日時105が直近の医療行為104を抽出する。ここでは、
図9の医療行為関連テーブルT23から、医療行為104である「b1」が抽出される。次に、患者抽出部62は、医療行為の「b1」が行われた患者の患者ID101を患者情報テーブルT21から抽出する。
図8の患者情報テーブルT21では、患者ID101として「p1」が抽出される。なお、抽出した患者ID101である「p1」は、記憶部51に記憶される(ステップS205)。
【0072】
次に、抽出部64は、患者抽出部62によって抽出された患者ID101の患者の症状103を患者情報テーブルT21に基づいて抽出する(ステップS206)。ここでは、
図8の患者情報テーブルT21から、患者ID101が「p1」である患者の症状の「a1」が抽出される。なお、抽出した症状103である「a1」は記憶部51に記憶される(ステップS207)。
【0073】
次に、作業指示抽出部65は、器具ID106が「m1」であり、工程ID201が「s15」である行を作業指示テーブルT2(
図5参照)から抽出する。そして、作業指示抽出部65は、先ほど抽出した行のうち、患者の症状103が「a1」である行の作業指示202を抽出する(ステップS208)。本実施形態では、作業指示202である「c15-1」が抽出され、「c15-1」が記憶部51に記憶される(ステップS209)。以上のようにして、作業指示抽出部65は、作業指示202の内容を抽出することができる。なお、指示部67による手順であるステップS210およびS211は、それぞれ第1実施形態のステップS108およびS109(
図6参照)と同様のため、ここでの説明は省略する。
【0074】
以上、本実施形態であっても、外部装置140から患者情報(ここでは、患者情報テーブルT21)を取得し、患者情報テーブルT21と医療行為関連テーブルT23とから、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5がどの患者に使用されたかを得ることができる。また、患者情報テーブルT21から、作業対象となる医療器具5が使用された患者の症状103を得ることができる。したがって、作業対象となる医療器具5が使用された患者の症状103に対する適切な作業指示202の内容を、作業指示テーブルT2(
図5参照)に基づいて抽出することができる。その結果、患者の症状103の内容に応じて、医療器具5の適切な作業指示202の内容を作業者に提供することができる。
【0075】
本実施形態では、患者抽出部62は、医療行為関連テーブルT23の医療行為日時105に基づいて、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が直近に使用された医療行為104を抽出し、患者情報テーブルT21に基づいて、医療行為104が行われた患者の患者ID101を抽出する。このことによって、例えば医療器具5が複数の患者に対して使用された場合であっても、直近に使用された患者の患者ID101を特定することができる。よって、特定された患者ID101から、直近に使用された患者の症状103に応じた作業指示202を作業者に提供することができる。
【0076】
以上、第2実施形態に係る作業支援システム200について説明した。第2実施形態では、抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された患者の症状を抽出していた。そして、作業指示テーブルT2は、器具ID106と、症状103と、工程ID201と、作業指示202とが関連付けられており、作業指示抽出部65は、医療器具5が使用された患者の症状103に適した作業指示を、作業指示テーブルT2に基づいて抽出していた。しかしながら、作業指示抽出部65は、医療器具5が使用された医療行為104に適した作業指示202を、作業指示テーブルT2に基づいて抽出してもよい。この場合、作業指示テーブルT2において、症状103は医療行為104に読み替えられる。この場合、作業指示テーブルT2は、器具ID106と、医療行為104と、工程ID201と、作業指示202とが関連付けられている。また、この場合、抽出部64は、医療器具読取部63によって読み取られた器具ID106が付された医療器具5が使用された医療行為104を抽出する。
【0077】
上記各実施形態では、外部装置40、140は、電子カルテが記憶された装置であった。しかしながら、外部装置40、140は、患者情報が記憶された装置であれば、電子カルテが記憶された装置に限定されない。例えば、外部装置40、140は、いわゆる手術情報が記憶された装置であってもよい。この手術情報が記憶された装置とは、いわゆる手術システムのことである。この手術情報には、患者情報が記憶されている。
【符号の説明】
【0078】
5 医療器具
30 読取装置
40 外部装置
50 150 作業支援装置
51 記憶部
53 作業記憶部
61 患者情報取得部
63 医療器具読取部
64 抽出部
65 作業指示抽出部
67 指示部
70 処理部
100 200 作業支援システム
106 器具ID