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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】ガス燃焼装置および真空式温水機
(51)【国際特許分類】
   F23C 5/32 20060101AFI20220727BHJP
   F23D 14/62 20060101ALI20220727BHJP
   F24H 1/26 20220101ALI20220727BHJP
【FI】
F23C5/32
F23D14/62
F24H1/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018125121
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003185
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】505229472
【氏名又は名称】株式会社日本サーモエナー
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】呉本 宏
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-082933(JP,A)
【文献】特開2004-077009(JP,A)
【文献】特開2013-040728(JP,A)
【文献】特開2000-179837(JP,A)
【文献】特開2015-183914(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1044249(KR,B1)
【文献】特開平07-071759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 5/32
F23D 14/02
F23D 14/24
F23D 14/58
F23D 14/62
F24H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の第1燃焼室と、
前記第1燃焼室の開口部と連通し、前記第1燃焼室よりも大きい径を有する円筒状の第2燃焼室と、
前記第1燃焼室に設けられた2つのガスバーナであって、前記第1燃焼室の中心軸に対して対称に配置され、それぞれが前記中心軸に沿って延びる細長開口部を有して前記第1燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎を形成できるように構成された2つのガスバーナと、
前記第1燃焼室の外周面および底面を覆う水冷壁とを備え、
前記第2燃焼室の内周面には、燃料ガスまたは空気を供給するための開口部が設けられておらず、前記第1燃焼室および前記第2燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎が旋回するように構成されており、
前記2つのガスバーナのそれぞれは、ガス燃料と燃焼用空気とが予混合されるウインドボックスを有し、前記ウインドボックスには、前記中心軸の方向に沿って空気供給管の一端が接続されるとともに、前記中心軸の方向と交差する方向に沿って燃料供給管の一端が接続されており、
前記2つのガスバーナのウインドボックスにそれぞれ接続された2つの空気供給管の他端が、前記中心軸の近傍に配置された共通空気供給部に接続されており、前記2つの空気供給管は、前記共通空気供給部からそれぞれのウインドボックスへと均等に延びている、ガス燃焼装置。
【請求項2】
前記第1燃焼室の容積と、前記第2燃焼室の容積との比が、1:6以下である、請求項1に記載のガス燃焼装置。
【請求項3】
記2つのガスバーナのそれぞれは、
先端が開放された直方体形状の燃焼ケースと、
前記燃焼ケース内に配設された噴射ノズルであって、先細り状に形成された基端部とスリット状の噴出口を有する先端部とを有し、開放された前記基端部から一次燃焼用空気が流入する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルの基端部の内側に間隙を開けて挿入され、前記一次燃焼用空気に混合されるガス燃料を噴射するガスマニホールドとを備え、
前記噴射ノズルの先端部において、前記燃焼ケース内へ流入した二次燃焼用空気を通過させるための孔が設けられており、予混合気をフィルム状の形態で噴射し、フィルム状の火炎を形成するように構成されている、請求項1または2に記載のガス燃焼装置。
【請求項4】
前記第2燃焼室の外周面も水冷壁で覆われている、請求項1から3のいずれかに記載のガス燃焼装置。
【請求項5】
前記前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とが中心軸方向に沿って隣接しており、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室との境界には段差が形成されており、
前記第1燃焼室の中心軸方向の長さが、前記第2燃焼室の中心軸方向の長さよりも短い
、請求項1から4のいずれかに記載のガス燃焼装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のガス燃焼装置と、
前記第2燃焼室を囲むように配置された減圧蒸気室と、
前記減圧蒸気室に設けられた熱交換器と
を備える真空式温水機であって、
前記減圧蒸気室には前記第2燃焼室からの熱を受け取る熱媒水が貯留されており、前記第1燃焼室の外側と前記第2燃焼室の外側とが連通し前記熱媒水によって前記第1燃焼室の水冷壁が形成されている、真空式温水機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃焼装置および真空式温水機に関し、特に、COおよびNOxの発生を抑制することができるガス燃焼装置およびこれを備えた真空式温水機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温水機や蒸気ボイラなどに利用される燃焼装置として、LPGなどを燃料とするガス燃焼装置が知られている。ガス燃焼装置としては、燃料ガスと燃焼用空気とをバーナ内で予め混合しておく予混合燃焼方式や、燃料ガスと燃焼用空気とを燃焼室に押し込みながら混合燃焼を行う先混合燃焼方式などが知られている。
【0003】
予混合燃焼方式では、燃料と空気との混合性が良好であるので、安定的な火炎を形成しやすいという利点がある。一方で、混合気の噴射速度が燃焼速度よりも遅い場合などに逆火(バックファイア)が生じやすく、また、火炎温度が高いので、サーマルNOx(窒素酸化物)が生成されやすいという側面がある。
【0004】
他方、先混合燃焼方式では、逆火の発生は抑えられるが、燃料と空気の混合が不十分になりやすく、完全燃焼が行われずにCO(一酸化炭素)が発生しやすいという問題がある。また、これを防止しようとして混合性を良くしたときには、火炎温度が上がってNOxが発生しやすいという側面がある。
【0005】
上記のようなガス燃焼装置は、例えば、真空式温水機において用いられる(例えば特許文献1)。真空式温水機では、大気圧以下に減圧された状態で、燃焼装置によって加熱された熱媒水が100℃以下の温度で沸騰して蒸気となり、この蒸気が熱交換器の表面で凝縮する過程で熱交換器内の水に熱が与えられる。また、熱交換器表面において凝縮した熱媒水は、水滴となって再び減圧蒸気室内に溜まる。このため、真空式温水機では、熱媒水の補給が原理的に不要であり、また、空焚きするおそれがないので安全性が良好であるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-183914号公報
【文献】特許第3873119号
【文献】特開平6-272818号公報
【文献】特開2013-40728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、燃焼装置において、COおよびNOxの発生を特に抑制することが求められている。図8は、本出願人が採用していた従来のガス燃焼装置を備える真空式温水機90の外観を示す。真空式温水機90では、ガンタイプと称される単一のガスバーナ91が用いられており、筐体92内に収められた円筒状燃焼室(図示せず)の中心軸に沿って、円錐状の火炎を形成するように構成されている。このような構成では、燃料と空気との混合性が十分でないためにCOの発生量が高くなったり、燃焼振動が発生するおそれがある。また、COを抑えるために火炎温度を上げると、今度はNOxが大量発生することになる。このため、低NOxと低COを両立させる燃焼を行うことが容易ではなかった。
【0008】
これに対し、特許文献2および3には、燃焼室内に旋回流を発生させる円筒内旋回燃焼器およびサイクロン燃焼装置が開示されている。燃焼室内に旋回流を形成すれば、燃料と空気との混合性を向上させることができるので未燃焼ガスを抑制することができる。特に、特許文献2には、旋回流を形成する燃焼器において、円筒状燃焼室の底面部に底面燃料供給器を設けるとともに、側壁部には側壁燃料供給器とスロット状の空気供給部とを設けることによって、逆火が生じにくく、また、燃料/空気比が小さい条件においても火炎の保持を可能にすることによって、高燃焼効率の低NOx燃焼を行うことができる円筒内旋回燃焼器が記載されている。
【0009】
しかしながら、上述のような従来のガス燃焼装置では、燃焼室内の燃焼温度が高くなることなどによって、NOxの発生の抑制が十分に達成できない場合もあった。NOxの削減目標は厳しくなってきており、NOxの発生量を可能な限り削減することが求められている。また、ガス燃焼装置を真空式温水機に用いる場合には、COやNOxの発生を抑えながら、より向上した熱利用効率で温水の供給をできるようにするという課題も存在している。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、COおよびNOxの発生を抑制することができるガス燃焼装置およびこれを備えた真空式温水機を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態によるガス燃焼装置は、有底円筒状の第1燃焼室と、前記第1燃焼室の開口部と連通し、前記第1燃焼室よりも大きい径を有する円筒状の第2燃焼室と、前記第1燃焼室に設けられた少なくとも2つのガスバーナであって、前記第1燃焼室の中心軸に対して対称に配置され、それぞれが前記中心軸に沿って延びる細長開口部を有して前記第1燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎を形成できるように構成された少なくとも2つのガスバーナと、前記第1燃焼室の外周面および底面を覆う水冷壁とを備え、前記第2燃焼室の内周面には、燃料ガスまたは空気を供給するための開口部が設けられておらず、前記第1燃焼室および前記第2燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎が旋回するように構成されている。
【0012】
ある実施形態において、前記第1燃焼室の容積と、前記第2燃焼室の容積との比が、1:6以下である。
【0013】
ある実施形態において、前記少なくとも2つのガスバーナのそれぞれは、先端が開放された直方体形状の燃焼ケースと、前記燃焼ケース内に配設された噴射ノズルであって、先細り状に形成された基端部とスリット状の噴出口を有する先端部とを有し、開放された前記基端部から一次燃焼用空気が流入する噴射ノズルと、前記噴射ノズルの基端部の内側に間隙を開けて挿入され、前記一次燃焼用空気に混合されるガス燃料を噴射するガスマニホールドとを備え、前記噴射ノズルの先端部において、前記燃焼ケース内へ流入した二次燃焼用空気を通過させるための孔が設けられており、予混合気を縦長薄膜状の形態で噴射し、フィルム状の火炎を形成するように構成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記ガスバーナのそれぞれは、前記中心軸方向に沿って延びる空気供給管と、前記中心軸方向と交差する方向に延びる燃料供給管とが接続されたウインドボックスを有し、前記ウインドボックスの内部で、ガス燃料と燃焼用空気とが予混合されるように構成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記ガスバーナに設けられた前記空気供給部のいずれもが、前記第1燃焼室の中心軸近傍に配置された共通空気供給管に接続されており、前記空気供給管は、前記共通空気供給部からそれぞれのウインドボックスへと均等に延びている。
【0016】
ある実施形態において、前記第2燃焼室の外周面も水冷壁で覆われている。
【0017】
本発明の実施形態による真空式温水機は、上記のいずれかのガス燃焼装置と、前記第2燃焼室を囲むように配置された減圧蒸気室と、前記減圧蒸気室に設けられた熱交換器とを備え、前記減圧蒸気室には前記第2燃焼室からの熱を受け取る熱媒水が貯留されており、前記第1燃焼室の外側と前記第2燃焼室の外側とが連通し前記熱媒水によって前記第1燃焼室の水冷壁が形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態にかかるガス燃焼装置および真空式温水機によれば、COおよびNOxの発生が抑えられ、また、熱効率も向上するので、環境負荷を低減しながら省エネルギー効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるガス燃焼装置およびこれを備える真空式温水機の全体構成を示す図である。
図2図1に示すガス燃焼装置および真空式温水機に対応する正面図である。
図3】本発明の実施形態で用いられるガスバーナの構成部品を示す図であり、(a)はガスマニホールドの三面図、(b)は燃焼ケースおよびその取り付け部分、(c)は燃焼ケースに収められる噴射ノズルおよびその平面図を示す。
図4】ウインドボックスとともに燃焼室に取り付けられた状態のガスバーナを示す断面図である。
図5】本発明の実施形態によるガス燃焼装置のガスバーナ取り付け部の近傍を示す側面図である。
図6図5に示すガス燃焼装置に対応する正面図である。
図7】(a)および(b)は、それぞれ、実施例と従来例とでのCO特性比較およびNOx特性比較を示すグラフである。
図8】従来の真空式温水機のガスバーナ取り付け部の近傍の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1および図2は、本発明の実施形態によるガス燃焼装置10を備える真空式温水機100の構成を示す図である。図1に示すように、真空式温水機100は、ガス燃焼装置10と、ガス燃焼装置10によって加熱される熱媒水2が貯留されている外側筐体21内に設けられた減圧蒸気室20と、減圧蒸気室20において熱媒水2の上方の空間に配置された熱交換器(図示せず)とを備えている。真空式温水機100は、減圧下で沸騰させた熱媒水2の凝縮熱によって熱交換器内の水を加熱し、これを温水として供給できるように構成されている。真空式温水機100の詳細な構成については後述するとして、まずは、本実施形態のガス燃焼装置10の詳細構成を以下に説明する。なお、図1および図2では、ガス燃焼装置10が備えるガスバーナ3に接続される空気配管や燃料配管の一部は省略されており、これらは図5および図6に示されている。また、図2において、ガスバーナ3の近傍は、内部の構造が理解しやすいように断面図が示されている。
【0022】
図1および図2に示すように、ガス燃焼装置10は、2つのガスバーナ3が取り付けられた有底円筒状の第1燃焼室11と、第1燃焼室11の底面部とは反対側の開口部に連通する円筒状の第2燃焼室12とを備えている。第2燃焼室12は、第1燃焼室11の径よりも大きい径を有し、より広い燃焼室として設けられている。本実施形態において、第2燃焼室12の内周面(側面)には、燃料ガスまたは空気を供給するための開口部は設けられておらず、滑らかな円柱側面状に形成されている。また、第1燃焼室11の中心軸10xと第2燃焼室12の中心軸10xとは本実施形態では一致している。
【0023】
第1燃焼室11の容積と第2燃焼室12の容積との比は、好適には1:6以下、より具体的には1:6~1:10程度に設定されている。ガス燃焼装置10において、第1燃焼室11は、第2燃焼室12に比べて十分に小さいサイズを有するパイロット燃焼室として設けられており、第2燃焼室12は熱媒水の加熱を主として行う本燃焼室として設けられている。第1燃焼室11のサイズは、要求される出力に応じて適宜選択されてよいが、例えば、直径が30cm~100cm、長さが50cm~100cmに設定されている。また、第2燃焼室12の直径は、例えば、50cm~200cmに設定されている。第2燃焼室12の直径は、第1燃焼室11の直径の例えば1.2~2.0倍程度に設定される。
【0024】
ガス燃焼装置10において、第1燃焼室(パイロット燃焼室)11の外周面11aおよび底面11bは水冷壁13によって覆われている。本実施形態では、第1燃焼室11の外側と第2燃焼室12の外側とが連通しており、減圧蒸気室20に貯留された熱媒水2によって第1燃焼室11の水冷壁13が形成されている。より具体的には、内部に第1燃焼室11を形成する内側缶体14の外側に、所定の間隙を開けてこれを覆う外側缶体15が配置されており、内側缶体14と外側缶体15との間に熱媒水2が入り込むことによって水冷壁13が形成されている。なお、第2燃焼室12の外周面にも、内部に第2燃焼室12を形成する内側缶体16と熱媒水2によって、水冷壁13が形成されている。このように、本実施形態のガス燃焼装置10では、第1および第2燃焼室11、12における火炎発生箇所の周囲は水によって全体的に覆われ水冷されている。また、水冷壁13の外側は、保温材13’によって覆われていてよい。
【0025】
第1燃焼室11では、着火燃焼開始時における燃焼が行われ、ガスバーナ3から噴出される予混合気にパイロットバーナ17(図2参照)を用いて着火することによって、第1燃焼室11の内周壁に沿って旋回するフィルム状の火炎(縦長薄膜火炎)Fが形成される。また、定格燃焼時には、ガスバーナ3の出力を増加させることで、第1燃焼室11および第2燃焼室12の内周面に沿って旋回するようにフィルム状の火炎Fが形成される。燃焼後の排ガスは、第2燃焼室12の端部から煙突22を介して外部に排気される。
【0026】
本実施形態では、一方のガスバーナ3に対してのみパイロットバーナ17が設けられており、他方のガスバーナ3の着火は、着火されたガスバーナ3からの火炎によって行われる。パイロットバーナ17の火炎については、覗窓18によって確認することができる。また、ガスバーナ3の火炎については、火炎監視器19によって確認することができる。
【0027】
本実施形態では、予混合ガスを燃焼室内で時計方向に旋回させるととも、希薄火炎旋回燃焼によって燃料と空気の混合を良くして低CO化を実現している。また、水冷壁13に沿って高速回転火炎を形成することによって、熱伝導を促進し、火炎温度の低減による低NOx化、更には、燃焼安定性の向上も実現することができる。火炎温度は、例えば、700℃~800℃程度に維持することができ、1000℃以上になってNOxが大量発生することが防止される。
【0028】
以下、ガスバーナ3の詳細構成を説明する。本実施形態において、第1燃焼室11に備えられた2つのガスバーナ3は、第1燃焼室11の中心軸10xを挟んで互いに対向するように、対称的に配置されている。また、それぞれのガスバーナ3は、第1燃焼室11の中心軸に直交する断面において、円筒状の第1燃焼室11の接線方向に沿って予混合気を噴出するように設けられている。
【0029】
図3(a)~(c)および図4は、各ガスバーナ3の構成を説明するための図である。図3(a)は、ガスマニホールド34の三面図を示し、図3(b)は、燃焼ケース30の側面図(右側)および取り付け部31の平面図(左側)を示し、図3(c)は、燃焼ケース30に収められた噴射ノズル32の断面図(右側)および平面図(左側)を示す。また、図4は、各構成部品が組み合わされて、第1燃焼室11に予混合気を噴射するように取り付けられた状態のガスバーナ3を模式的に示す。
【0030】
図3(b)(c)および図4に示すように、ガスバーナ3は、第1燃焼室11の中心軸方向に沿って延びる細長い噴出口33を有し、フィルム状の火炎を形成することができるタイプのガスバーナである。このようなガスバーナ3としては、本願出願人による特許文献4(特開2013-40728号公報)に記載のガスバーナを利用することができる。燃料ガスとしては、液化天然ガス(LPG)や都市ガスを使うことができる。都市ガスを使用すれば、LPGを使用する場合に比べて、NOx発生量をより低減させることができる。
【0031】
図3(a)~(c)および図4に示すように、本実施形態におけるガスバーナ3は、先端が開放された直方体形状の燃焼ケース30と、燃焼ケース30内に配設された噴射ノズル32とを備えている。図4に示すように、噴射ノズル32は、先細り状に形成された基端部32Aとスリット状の噴出口を有する先端部32Bとによって構成され、根本が開放された基端部32Aには一次燃焼用空気A1が流入するように構成されている。また、ガスバーナ3は、噴射ノズル32の基端部32Aの内側に間隙を開けて挿入され、一次燃焼用空気A1に混合されるガス燃料Gを噴射するガスマニホールド34を備えている。また、ガスバーナ3にはウインドボックス36が設けられており、ウインドボックス36に供給された空気A1、A2と、ガスマニホールドから供給される燃料ガスGとが、ガスバーナ3内で混合されるようになっている。
【0032】
本実施形態において、噴射ノズル32の先端部32Bにおいて、燃焼ケース30内へ流入した二次燃焼用空気A2を通過させるための孔35が設けられている。これにより、噴射ノズル32からの予混合気噴射時のガス燃料と燃焼用空気との混合割合を先端部で変化させ、異なる空燃比の流れを形成できるようにするとともに、予混合気G’を縦長薄膜状の形態で噴射することができる。その結果、予混合気を燃焼室の片側の伝熱面に安定した状態で噴射することができ、煙道条件や燃焼室内の条件等に関係なく、縦長薄膜状の火炎を燃焼室の片側の伝熱面に沿って安定して形成することができ、安定した燃焼を達成することができる。
【0033】
上記のガスバーナ3は、例えば、図2に示したように、その先端部(噴出口)が第1燃焼室11を形成する内側缶体14の付近に位置するように取り付けられ、外側のウインドボックス36は外側缶体15に溶接されることによって固定される。ガスバーナ3の配置空間は水冷壁13を貫通するように形成され、水冷壁13に対してシールされた空間においてガスバーナ3が挿入され配置される。ただし、ガスバーナ3は、安定してフィルム状の旋回火炎を形成できる限り、適宜の態様で取り付けられていてよく、例えば、第1燃焼室11の内部にガスバーナ3の噴出口が突き出るように配置されていてもよい。
【0034】
次に、ガスバーナ3への空気および燃料の供給態様について説明する。図5および図6は、ガス燃焼装置10の、ガスバーナ3の近傍を示す図である。図5および図6に示すように、ガスバーナ3のウインドボックス36は、第1燃焼室11の外側に取り付けられている。
【0035】
ウインドボックス36には、分岐空気供給管37と、分岐ガス供給管38とがそれぞれ接続されている。分岐空気供給管37は、ウインドボックス36内に空気を供給するために設けられ、分岐ガス供給管38は、ガスマニホールド34に接続されてガスを供給するために設けられている。分岐空気供給管37は、燃焼室11の中心軸10xの方向すなわち水平方向に沿って延びる部分を有しており、分岐ガス供給管38は、中心軸10xの方向と交差する方向すなわち垂直方向に沿って延びる部分を有しており、これらの部分がウインドボックス36に接続されている。
【0036】
また、各ガスバーナ3に接続された分岐空気供給管37は、第1燃焼室11の中心軸近傍に配置された共通空気供給部39に対して共通に接続されている。共通空気供給部39には、送風機40から任意の風量で空気が送られる。この構成において、分岐空気供給管37は、共通空気供給部39からそれぞれのウインドボックス36へと均等に延びており、各ガスバーナに同様に空気を送り込むことができる。さらに、各分岐ガス供給管38も、共通ガス供給管41に接続されており、共通ガス供給管41に設けられた燃料遮断弁42を用いて、燃料ガスの供給を制御することができる。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態のガス燃焼装置10では、上記のようなガスバーナ3を用いることによって、フィルム状の火炎Fを第1および第2燃焼室で旋回させることができるとともに、低空気比で燃やしても、火炎Fの上流側では、通常の予混合燃焼方式よりも燃焼速度を抑えることができる。これによって、火炎Fの温度上昇が緩和されてサーマルNOxの発生を抑えることができ、また、火炎Fの下流側では、燃焼を素早く完結できるためにCOの残留を抑えることができる。
【0038】
再び図1および図2を参照して、本実施形態の真空式温水機100の構成を説明する。
【0039】
熱媒水2は、第1燃焼室11および第2燃焼室12における火炎発生箇所の外側全体を覆うようにして外側筐体21内の減圧蒸気室20に貯留されている。減圧蒸気室20には図示しない熱交換器が配置される。なお、図2には、熱交換器取付部23が示されている。
【0040】
ガス燃焼装置10の第2燃焼室12において、第1燃焼室11とは反対側の端部には複数の水管24が設けられている。複数の水管24の内部にも、減圧蒸気室20に貯められた熱媒水2が充填されており、複数の水管24を排ガスで加熱することによって熱利用効率を向上させることができる。
【0041】
ガス燃焼装置10において、第2燃焼室12の燃焼排ガスは、水管24の先に設けられた煙突22を通って外界へと排出される。煙突22には、排ガスの温度を測定する排ガス温度センサが設けられていてよく、ガス燃焼装置10の異常(煤詰りの発生など)の検出を、排ガス温度に基づいて行うことができる。また、煙突22の下方には、排ガスドレン26が設けられており、凝縮した排ガスを回収することができる。
【0042】
減圧蒸気室20は、自動抽気装置を用いて抽気することにより大気圧以下に減圧することができ、熱媒水2を100℃以下の温度で直ちに沸騰させることができ、そのときの圧力に応じた温度の蒸気が発生する。このとき、熱媒水2の温度は、ガス燃焼装置10の出力を調整することによって、例えば75℃~85℃の設定温度に制御される。
【0043】
なお、減圧蒸気室20に設けられた上記の熱交換器は、外側筐体21の側壁から延びており、例えば、減圧蒸気室20内を水平方向に往復する流路を有している。熱交換器は、2つ以上が設けられていてもよく、図2図6に示したように、水平方向に並べて配置されていてもよいし、垂直方向に並べて配置されてもよい。
【0044】
図7(a)および図7(b)は、それぞれ、実施例と従来例とでのCO特性比較およびNOx特性比較を示すグラフである。図7(a)および図7(b)において、実施例のグラフは、上記の本実施形態のガス燃焼装置10におけるCOおよびNOx発生量を示しており、従来例は、図8に示した従来のガス燃焼装置90におけるCOおよびNOx発生量を示している。いずれも、負荷率100%すなわち定格燃焼を行った時のデータである。
【0045】
図7(a)および図7(b)からわかるように、実施例のガス燃焼装置では、COおよびNOx発生量が、いずれのO2濃度(横軸)のときにも、従来例のガス燃焼装置よりも低減している。これは、実施例のガス燃焼装置では、旋回流によって混合性が高められた結果COの発生が低減するとともに、燃焼温度が低下したためにNOx発生量も低減したものと考えられる。なお、横軸のO2濃度は高いほど、空気の流速を増加させた場合に対応している。
【0046】
以上、本発明の実施形態によるガス燃焼装置10および真空式温水機100を説明したが、種々の改変が可能である。例えば、上記にはガスバーナが2つ設けられた態様を説明したが、3つ以上が設けられていてもよい。この場合にも、ガスバーナが、燃焼室中心軸に対して対称的に配置され、すなわち、円筒状の第1燃焼室の周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の実施形態によるガス燃焼装置は、各種燃焼装置として好適に利用され、特に、真空式温水機の燃焼装置として好適に利用される。
【符号の説明】
【0048】
2 熱媒水
3 ガスバーナ
10 ガス燃焼装置
10x 中心軸
11 第1燃焼室
12 第2燃焼室
13 水冷壁
14 内側缶体
15 外側缶体
16 内側缶体
17 パイロットバーナ
20 減圧蒸気室
21 外側筐体
22 煙突
24 水管
26 排ガスドレン
30 燃焼ケース
32 噴射ノズル
34 ガスマニホールド
36 ウインドボックス
37 分岐空気供給管
38 分岐ガス供給管
40 送風機
100 真空式温水機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8