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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】物体検出装置および物体検出システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 15/00 20060101AFI20220727BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220727BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220727BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20220727BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20220727BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G08B15/00
G08B25/00 510M
G08B25/04 E
G01S7/497
G01S17/89
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018148860
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020024583
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 沢樹
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-048157(JP,A)
【文献】特開2015-179984(JP,A)
【文献】特開2012-014359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00-25/00
G01S 5/00-17/00
H04N 7/18
G01C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアの距離画像を得るセンサ部を備え、当該距離画像をもとに物体を検出する物体検出装置であって、
動作モードとして警備モードと警備解除モードを有する警備装置を接続し、
予め物体検出の対象から除外する非検出エリアを設定するためのパターン画像を記憶し、
前記警備装置が警備解除モードに設定されているとき、保護カバーを有する前記物体検出装置の内部に設けられた発光部を、前記保護カバー付近からの反射光のみが得られる強度で発光させて得た反射光による距離画像である近距離画像において、前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定する
ことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記物体検出装置を、前記非検出エリアを設定する設定モードに設定する設定手段を備え、
前記物体検出装置は、前記設定モードに設定されているときに前記距離画像に前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検出装置は、前記警備装置が警備モードに設定されたとき、前記警備装置が前記警備モードに設定される直前の一定時間以内に得た距離画像に変化がなければ、最新の距離画像を基準画像とする
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体検出装置は、前記設定モードに設定された時点の前記距離画像を基準画像として記憶し、
前記設定モードに設定されている場合、前記基準画像と異なる距離画像が得られた画素位置に応じた音または光を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記物体検出装置は、前記設定モードに設定されているときに得た距離画像に前記パターン画像が検出された場合、当該パターン画像が検出されたエリアの面積を基準面積として記憶し、
前記設定モードが解除された後は、新たに得た距離画像において前記パターン画像と同じ画像が検出されたエリアの面積を前記基準面積と比較し、両者が一致しているか否かを検出する
ことを特徴とする請求項2または4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
監視エリアの距離画像を得るセンサ部と、前記センサ部から前記距離画像を受信し前記距離画像をもとに物体を検出する物体検出部とを備えた物体検出システムであって、
動作モードとして警備モードと警備解除モードを有する警備装置を接続し、
予め物体検出の対象から除外する非検出エリアを設定するためのパターン画像を記憶し、
前記警備装置が警備解除モードに設定されているとき、保護カバーを有する前記物体検出部の内部に設けられた発光部を、前記保護カバー付近からの反射光のみが得られる強度で発光させて得た反射光による距離画像である近距離画像において、前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定する
ことを特徴とする物体検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置および物体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視エリアへ照射したレーザ光の反射光をもとに得られる距離画像に基づいて監視エリアへの人物等の物体の侵入を検出する物体検出装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような物体検出装置を屋内の天井等に設置して警備用センサとして使用する場合、監視エリアに鏡や窓等があると、レーザ光が鏡により意図しない方向へ反射される、あるいは、窓の外の人物等を誤って検出する等によって、物体の誤検出を行う可能性がある。
【0004】
そこで、従来においては、設置作業を行う者(以下、作業者という。)が、設定用ソフトウェアをインストールしたコンピュータ端末(ノートPCなど)を物体検出装置に接続し、コンピュータ端末に距離画像をリアルタイムに表示させながら、鏡や窓等を誤検出の要因がある等の理由から物体検出の対象から除外する非検出エリアとして物体検出装置に設定および記憶させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-46961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非検出エリアの設定手法によれば、物体検出装置に接続したコンピュータ端末に距離画像をリアルタイムに表示しながら非検出エリアを枠で囲むなどして、非検出エリアを設定しなければならない。このような設定作業によれば、非検出エリアの設定に手間や時間がかかるだけでなく、物体検出装置の設置数が多くなるほど作業者の負担が大きくなってしまう。
【0007】
加えて、従来の物体検出装置には、距離画像と比較する基準画像を監視エリアの警備を開始する際(監視エリアが無人になった時)に更新するようにしたものがある。このような物体検出装置において、悪意の第三者が、警備解除中にレーザセンサの検出範囲を遮る位置に遮蔽部材(シールやカバーなど)を設置して細工することが考えられる。この場合、遮蔽部材が設置された状態が基準画像として更新されてしまうことになり、物体検出装置は、遮蔽部材で遮蔽された箇所については警備中の侵入者を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な方法で非検出エリアを設定することができ、かつ、第三者による細工行為が行われた場合であっても確実な監視エリアにおける物体検出を行うことができる物体検出装置および物体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の物体検出装置は、監視エリアの距離画像を得るセンサ部を備え、当該距離画像をもとに物体を検出する物体検出装置であって、動作モードとして警備モードと警備解除モードを有する警備装置を接続し、予め物体検出の対象から除外する非検出エリアを設定するためのパターン画像を記憶し、前記警備装置が警備解除モードに設定されているとき、保護カバーを有する前記物体検出装置の内部に設けられた発光部を、前記保護カバー付近からの反射光のみが得られる強度で発光させて得た反射光による距離画像である近距離画像において、前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の物体検出装置は、前記物体検出装置を、前記非検出エリアを設定する設定モードに設定する設定手段を備え、前記物体検出装置は、前記設定モードに設定されているときに前記距離画像に前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の物体検出装置は、前記警備装置が警備モードに設定されたとき、前記警備装置が前記警備モードに設定される直前の一定時間以内に得た距離画像に変化がなければ、最新の距離画像を基準画像とすることを特徴とする。
【0014】
加えて、本発明の物体検出装置は、前記設定モードに設定された時点の前記距離画像を基準画像として記憶し、前記設定モードに設定されている場合、前記基準画像と異なる距離画像が得られた画素位置に応じた音または光を出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の物体検出装置は、前記設定モードに設定されているときに得た距離画像に前記パターン画像が検出された場合、当該パターン画像が検出されたエリアの面積を基準面積として記憶し、前記設定モードが解除された後は、新たに得た距離画像において前記パターン画像と同じ画像が検出されたエリアの面積を前記基準面積と比較し、両者が一致しているか否かを検出することを特徴とする。
【0016】
本発明の物体検出システムは、監視エリアの距離画像を得るセンサ部と、前記センサ部から前記距離画像を受信し前記距離画像をもとに物体を検出する物体検出部とを備えた物体検出システムであって、動作モードとして警備モードと警備解除モードを有する警備装置を接続し、予め物体検出の対象から除外する非検出エリアを設定するためのパターン画像を記憶し、前記警備装置が警備解除モードに設定されているとき、保護カバーを有する前記物体検出装置の内部に設けられた発光部を、前記保護カバー付近からの反射光のみが得られる強度で発光させて得た反射光による距離画像である近距離画像において、前記パターン画像が検出された場合に、当該パターン画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる物体検出装置および物体検出システムによれば、簡易な方法で非検出エリアを設定することができ、かつ、第三者による細工行為が行われた場合であっても確実な監視エリアにおける物体検出を行うことができる、という効果を奏する。
【0018】
また、作業者が、非検出エリアを設定する際、非検出エリアとして設定しようとしているエリアに応じた音を出力する等することで、作業者は現在設定しようとしているエリアがどの位置であるかを容易に確認することができる。
【0019】
さらに、非検出エリアの面積に変化があった場合、これを検出することができ、適切な非検出エリアの設定・更新を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る物体検出装置を用いた警備システムの概略構成を例示的に示す図である。
図2図2は、物体検出装置の一例を示す斜視図である。
図3図3は、物体検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、物体検出装置の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、非検出エリア設定用のシールの一例を示す図である。
図6図6は、非検出エリア設定用のシールが貼付けられた物体検出装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る物体検出装置および物体検出システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明に係る物体検出装置10を用いた警備システム1の概略構成を例示的に示す図である。図1に示すように、警備システム1は、警備対象20に設置された物体検出装置10と、警備装置40と、警備対象20に対して遠隔地にある監視センタ30とを備えている。物体検出システムを構成する物体検出装置10と警備装置40とは、例えばLAN(Local Area Network)によるネットワーク50で接続され、互いに通信が可能とされている。なお、物体検出装置10と警備装置40との通信方式は、無線通信方式であっても、有線通信方式であってもよい。また、警備装置40は、図示しない火災センサおよび人体検知センサとそれぞれネットワークで接続され、火災センサからの火災信号、および人体検知センサからの検知信号等を受信可能とされている。さらに、警備装置40は、例えばインターネットである外部ネットワーク60を介して、警備対象20に対して遠隔地にある監視センタ30と通信可能とされている。なお、ここでは、警備対象20は、例えば店舗、事務所、テナントビル、マンション、住宅などの建物であるとする。
【0023】
警備装置40は、動作モードとして少なくとも「警備モード」と「警備解除モード」を有し、警備対象20の管理者等による操作に応じて設定された動作モードを物体検出装置10へ通知する。なお、動作モードについては、後述する。
【0024】
物体検出装置10は、警備装置40から通知される動作モードに応じて、警備対象20における物体の検出情報をネットワーク50を介して警備装置40に送信する。
【0025】
警備装置40は、物体検出装置10から物体の検出情報を受信すると、動作モードに応じて、該受信した物体の検出情報を含む警備対象20の異常を、外部ネットワーク60を介して監視センタ30に通報する。また、警備装置40は、火災センサからの火災信号や人体検知センサからの検知信号等を受信すると、動作モードに応じて、該受信した信号を異常として監視センタ30に通報する。
【0026】
次に、警備装置40における動作モードについて説明する。
【0027】
「警備モード」とは、無人となった警部対象20を警備する動作モードである。「警備モード」に設定された警備装置40は、物体検出装置10からの物体の検出情報や火災センサからの火災信号、人体検知センサからの検知信号等を受信すると、該物体の検出情報や該受信した信号を監視センタ30に異常として通報する。なお、警備装置40は、異常を通報する動作と共に該動作の履歴を残す動作を行っても良いし、警備対象20へ報知音や光などで異常を報知したりしても良い。
【0028】
「警備解除モード」とは、警備対象20の内部に関係者がおり、警備を必要としない場合の動作モードである。「警備解除モード」に設定された警備装置40は、物体検出装置10からの物体の検出情報や人体検知センサからの検知信号等を受信しても、警備対象20に異常があるものとは判断せず、監視センタ30へ異常を通報する動作を行わない。これは、物体検出装置10等により物体の存在を検出しても、関係者を検出したものと判断するためである。
【0029】
監視センタ30では、警備装置40から異常が通報されると、通報の内容等をモニタに表示させる。例えば監視員がこれらモニタの表示に基づき、警備対象20における異変の発生の有無を監視する。監視員は、警備対象20内で異変が発生していると認識すると、待機中の警備員に異常が通報された警備対象20へ向かうように指示したり、必要に応じて警察や消防など関係機関へ通報を行ったりする。また、監視センタ30では、警備装置40から送信された通報の内容等を記録装置に記録する。また、監視センタ30は、警備システム1の利用者(契約者等)の携帯端末(携帯電話機等)に異常の知らせを送信する構成としてもよい。
【0030】
次に、物体検出装置10の構成を図2および図3を用いて説明する。
【0031】
図2は、物体検出装置10の一例を示す斜視図である。図2に示すように、物体検出装置10は、透光部材である保護カバー11の内部に、警備対象20にレーザ光を放射状に照射する発光部12aと監視エリア内の物体で反射されたレーザ光である反射光を検出する受光部12bとを備える。なお、図2に示す物体検出装置10は、天井90に設置されたときの設置姿勢を示している。物体検出装置10の周囲には、発光部12aから照射されたレーザ光が到達し、該到達した位置にある物体で該レーザ光が反射された場合に該反射光が受光部12bに到達して検出され、物体検出装置10が物体を検出することが可能な領域である、監視エリアが構成されている。
【0032】
図3は、物体検出装置10の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、物体検出装置10は、センサ部12と、制御部13と、記憶部14と、報知部15と、設定スイッチ16とを備えている。
【0033】
センサ部12は、レーザ光を放射状に照射する発光部12aと、監視エリア内の物体で反射されたレーザ光である反射光を検出する受光部12bとを備えている。
【0034】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、ワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)とを備えたコンピュータ構成のものである。制御部13は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行するなどして、警備装置40の動作モード等に応じて物体検出装置10による物体の検出処理のための制御動作や演算処理を行う。
【0035】
制御部13は、非検出エリア設定用のシール100を物体検出装置10の保護カバー11に貼り付けた場合(図6参照)に得られる距離画像を、非検出エリアを設定するためのパターン画像として予め記憶部14に記憶する。非検出エリアとは、監視エリアにおいて鏡や窓等の誤検出の要因がある等の理由から物体検出の対象から除外するエリアである。
【0036】
制御部13は、警備装置40が警備解除モードに設定されているとき、または、設定スイッチ16により設定モードに設定されているときに、センサ部12より得た距離画像に予め記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ画像を検出すると、当該パターン画像と同じ画像が検出されたエリアを非検出エリアとして設定し、記憶部14に記憶する。
【0037】
また、制御部13は、警備装置40から警備モードに設定されたことが通知されると、一定時間以上非検出エリアおよび距離画像に変化がなければ、このときセンサ部12から得られた距離画像を基準画像として記憶部14に記憶する。
【0038】
さらに、制御部13は、設定スイッチ16により設定モードに設定されると、センサ部12からの距離画像を基準画像として記憶部14に記憶する。そして、設定スイッチ16により設定モードに設定されている間、基準画像と新たに取得した最新の距離画像とを比較する。このとき、変化があると判断すると記憶部14に記憶した音情報をもとに当該変化があった画素位置に応じた報知音を報知部15のスピーカ15aから出力させる。なお、当該画像を検出した画素位置に応じて報知部15の表示部15bを発光させるようにしてもよい。
【0039】
制御部13は、警備装置40が警備モードに設定されている場合、センサ部12から得られる距離画像と記憶部14に記憶した基準画像および非検出エリアをもとに侵入者等の物体の有無を判断する。そして、物体有りと判断した場合に警備装置40へ検出情報を出力する。
【0040】
記憶部14は、情報の書き換えが可能な記憶部、例えばFlashROMなどである。記憶部14は、物体の検出処理に使用する各種情報(基準画像、新たに入力された距離画像、非検出エリア設定用のパターン画像、非検出エリア、音情報など)を記憶する。
【0041】
報知部15は、制御部13の出力に基づき報知音を発するスピーカ15aと、制御部13の出力に基づき光を発するLED等の表示部15bとを備えている。
【0042】
設定スイッチ16は、作業者の操作により制御部13を設定モードに設定する。
【0043】
以下、物体検出装置10の動作について説明する。図4は、物体検出装置10の動作を説明するフローチャートである。
【0044】
警備対象20に設置した物体検出装置10は、電源が投入される等により動作を開始すると、発光部12aよりレーザ光を発光させる。そして、監視エリア内の物体で反射されたレーザ光(以下、反射光という。)を受光した受光部12bの出力により無人の監視エリア内の距離画像を取得し、当該距離画像を記憶部14に記憶する(ステップS1)。
【0045】
物体検出装置10は、監視エリアに鏡や窓等があると、センサ部12の発光部12aから照射したレーザ光が意図しない方向へ反射される等によって、受光部12bで物体の誤検出を行う可能性がある。そこで、設置作業を行う作業者は、監視エリアに検出不要なエリアがある場合、非検出エリアを設定する作業を行う。
【0046】
非検出エリアの設定が必要である場合、作業者は、物体検出装置10を設定モードにするため設定スイッチ16を操作する。制御部13は、設定スイッチ16が操作されると(ステップS2、Yes)、記憶部14に記憶した無人の監視エリアの距離画像を基準画像として記憶部14に記憶する(ステップS3)。
【0047】
なお、制御部13は、ステップS2において設定スイッチ16が操作されると、設定スイッチ16を操作した作業者が監視エリアから退出するのに十分な時間経過した後、改めて距離画像を取得し、当該距離画像を基準画像として記憶部14に記憶するようにしてもよい。これにより確実に無人の監視エリアの距離画像を基準画像として記憶することができる。
【0048】
設定モードにある制御部13は、ステップS3にて基準画像を記憶部14に記憶させた後、発光部12aを発光させて新たな距離画像(以下、現画像という。)を取得する(ステップS4)。
【0049】
作業者による非検出エリアの設定作業は、図5に示す非検出エリア設定用のシール100を物体検出装置10の保護カバー11の一部に貼り付けるものである。シール100は、非検出エリア設定用の反射材の反射面がセンサ部12に対向するよう物体検出装置10内部に貼付けられる。
【0050】
図5は非検出エリア設定用のシール100の一例を示す図、図6は非検出エリア設定用のシール100が貼付けられた物体検出装置10の一例を示す斜視図である。非検出エリア設定用のシール100は、反射材と吸収材とを予め決められたパターンで組み合わせたものである。図5に示す非検出エリア設定用のシール100は、反射材101と吸収材102による市松模様のパターン例を示すものである。なお、非検出エリア設定用のシール100は、図5に示すパターン例に限るものではなく、反射材101に吸収材102が囲まれたパターンや、反射材101と吸収材102によるストライプのパターンなどであってもよい。
【0051】
作業者は、監視エリア内に非検出エリアとすべきエリアがある場合、設定スイッチ16の操作後、非検出エリアとすべきエリアに移動する。すると、ステップS4において取得する現画像が、作業者がいる状態の距離画像となる。
【0052】
制御部13は、ステップS4で取得した現画像と記憶部14に記憶している基準画像およびパターン画像とを比較し、現画像に基準画像とは異なる画素(以下、変化画素という。)があり、かつ、当該変化画素がパターン画像と合致するかを判断する(ステップS5)。いま、現画像は作業者がいる状態の距離画像であり、現画像には変化画素が生じている。この変化画素は記憶部14に記憶しているパターン画像とは一致しない。そこで、制御部13は、現画像に変化画素があり、かつ、当該変化画素が記憶部に記憶しているパターン画像と一致しないと判断した場合(ステップS5、Yes)、当該変化画素が検出された位置に応じた音情報を記憶部14から読み出し、スピーカ15aに出力する。スピーカ15aは、制御部からの音情報に応じた音を発する(ステップS6)。
【0053】
作業者は、非検出エリアとすべきエリアに対応する音を確認した後、非検出エリア設定用のシール100を保護カバーに設置する。すると、ステップS4において取得する現画像が、シールが貼付された状態の距離画像となる。なお、シール100が貼り付けられたエリアについては、発光部12aから照射したレーザ光のうち反射材からの反射光のみが受光され吸収材の部分は無限遠点となる。
【0054】
制御部13は、ステップS4で取得した現画像と記憶部14に記憶している基準画像およびパターン画像とを比較し、パターン画像と異なる変化画素があるか判断する(ステップS5)。いま、現画像はシール100が貼付された状態の距離画像であり、現画像に基準画像とは異なる変化画素が生じているが、この画素変化はパターン画像と合致している。そこで、制御部13は、現画像に変化画素があり、かつ、当該変化画素がパターン画像と一致していると判断した場合(ステップS5、No)、ステップS6の音の出力を行わずに次の動作に進む。
【0055】
作業者は、物体検出装置10にシール100を貼り付けた後、監視エリア内を歩行する。すると、制御部13では、ステップS5において現画像にパターン画像と一致する変化画素とパターン画像と一致しない変化画素が得られることになる。
【0056】
そこで、制御部13は、ステップS5において、現画像にパターン画像と一致する変化画素とパターン画像と一致しない変化画素があった場合(ステップS5、Yes)、パターン画像と一致しない変化画素が検出された位置に応じた音情報を記憶部14から読み出し、スピーカ15aに出力する。
【0057】
スピーカ15aは、制御部からの音情報に応じた音を発する(ステップS6)。
【0058】
作業者は、監視エリア内を移動し、自己が非検出エリアに設定しようとしているエリアにいるときはスピーカ15aから音が発せられず、非検出エリアとしない監視エリアにいるときにはスピーカ15aから音が発せられることを確認する。これにより、非検出エリアの設定が適正に行われたと判断した作業者は、物体検出装置10の設定モードを終了するため設定スイッチ16を操作する。
【0059】
センサ部12の発光部12aから照射されたレーザ光は目に見えないが、パターン画像と異なる変化画素が得られた場合、その変化画素の位置に応じた報知音をスピーカ15aから出力することで、作業者が非検出エリアの設定作業を正しく行えているかを音で確認できる。
【0060】
なお、制御部13は、ステップS5において変化画素がないと判断した場合(ステップS5、No)、スピーカ15aから音を発することなく、次の動作(ステップS7)に進む。
【0061】
制御部13は、設定スイッチ16により設定モードの終了操作がなされると(ステップS7、Yes)、センサ部12より得た距離画像に予め記憶部14に記憶しているパターン画像(非検出エリア設定用のシール100貼付時に得られる距離画像)と同じ距離画像があるか否かを判断する(ステップS8)。
【0062】
作業者が、非検出エリア設定用のシール100を物体検出装置10の保護カバー11の一部に貼付けた場合、センサ部12より得た距離画像に記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ距離画像が検出される。
【0063】
そこで、制御部13は、記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ画像が検出されたエリアを非検出エリアとして記憶部14に記憶するとともに、非検出エリアの面積を基準面積として記憶する(ステップS9)。
【0064】
なお、制御部13は、非検出エリアの設定動作(ステップS8およびステップS9)をステップS7において設定モードの終了操作がなされたと判断した後に行うようにしているが、これに限るものではなく、非検出エリアの設定動作は設定モードの終了操作がなされたか否かの判断(ステップS7)の直前に行うようにしてもよい。
【0065】
また、制御部13は、ステップS7において設定モードの終了操作がなされなければ(ステップS7、No)、ステップS4の動作に戻る。
【0066】
さらに、制御部13は、ステップS8においてセンサ部12より得た距離画像に記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ距離画像がないと判断した場合(ステップS8、No)、作業者が非検知エリア設定用のシール100を貼付しておらず非検出エリアとすべきエリアはないと判断し、非検出エリアの面積をなしと記憶し(ステップS9)、次の動作(ステップS1)に進む。
【0067】
制御部13は、ステップS2において設定スイッチ16による設定モードへの移行操作がされていないと判断した場合(ステップS2、No)、警備装置40からの通知をもとに警備装置40の動作モードが変更されたか否かを判断する(ステップS10)。
【0068】
動作モードが変更された場合、制御部13は、記憶部14に新たに設定された警備装置40の動作モードを記憶する(ステップS11)。
【0069】
このとき、警備装置40の動作モードが警備モードであれば(ステップS12、Yes)、記憶部14に記憶している距離画像のうち警備モードへ変更される直前の一定時間以内に得られた距離画像に変化がなければ(ステップS13、Yes)、記憶部14に記憶している距離画像のうち最新の距離画像を基準画像として記憶部14に記憶する(ステップS14)。
【0070】
監視エリア内に一定時間変化がない場合、基準画像を最新の距離画像に更新するようにしているため、店舗や事務所のように警備開始時に毎日環境が変化する(椅子や荷物等が移動する)警備対象20であっても環境の変化を侵入者等と誤って検出してしまうことを防ぐことができる。
【0071】
なお、ステップS13において、記憶部14に記憶している距離画像のうち警備モードへ変更される直前の一定時間以内に得られた距離画像に変化があった場合(ステップS13、No)、制御部13は、記憶部14への基準画像の記憶は行わず、次の動作へ進む。
【0072】
制御部13は、ステップS10において警備装置40の動作モードは変更されていないと判断した場合(ステップS10、No)、記憶部14に記憶した警備装置40の動作モードが警備解除モードであるか否かを判断する(ステップS16)。
【0073】
警備対象20に設置された警備装置40は、昼間などの有人時は警備対象20の管理者等による操作により警備解除モードに設定され、物体検出装置10による侵入者検出などは行わない。
【0074】
そこで、常に一定間隔で発光部12aを発光させて距離画像を取得している制御部13は、警備解除モード中は所定の発光回数に一度発光部12aを保護カバー11付近からの反射光のみが得られる強度で発光させ、保護カバー11付近からの反射光による距離画像(以下、近距離画像と称する。)を得るようにする。
【0075】
このため、制御部13は、警備装置40が警備解除モードである場合(ステップS16、Yes)、発光部12aを所定回数発光させたか否かを判断する(ステップS17)。発光部12aの発光回数は記憶部14のカウンタにてカウントしており、発光部12aの発光回数が所定回数に達していた場合(ステップS17、Yes)、制御部13は、記憶部14に記憶している発光回数のカウンタをリセットする(ステップS18)。そして、発光部12aを保護カバー11付近からの反射光のみが得られる強度で発光させ、近距離画像を取得する(ステップS19)。
【0076】
制御部13は、ステップS19にて取得した近距離画像のうち、記憶部14に記憶した非検出エリアを除く画素について反射光が検出されたか否かを判断する(ステップS20)。
【0077】
通常、近距離画像については、非検出エリア以外は反射光が得られず無限遠点となる。しかしながら、保護カバー11にカバーをかぶせる等第三者の細工行為等がなされると、受光部12bは、非検出エリア設定用のシール100が貼られていないエリアからの反射光を受光することになる。つまり、非検出エリアを除く画素に無限遠点とならない画素が発生する。
【0078】
そこで、制御部13は、近距離画像のうち、記憶部14に記憶した非検出エリアを除く画素について無限遠点とならない画素がある、つまり、非検出エリアを除く画素について反射光が検出されると(ステップS20、Yes)、保護カバー11にカバーをかぶせる等の第三者の細工行為等があったと判断し、警備装置40へ検出信号を送信する(ステップS21)。これにより、第三者による細工行為を検出することができる。
【0079】
なお、制御部13は、ステップS20において、非検出エリアを除く画素について反射光が検出されなければ(ステップS20、No)、正常と判断し次の動作へ進む。
【0080】
また、制御部13は、ステップS17において発光部12aの発光回数が所定回数に達していなければ(ステップS17、No)、記憶部14のカウンタをカウントアップする(ステップS22)。
【0081】
さらに、制御部13は、警備装置40の動作モードが警備モードから警備解除モードに移行したときに(ステップS12、No)、記憶部14のカウンタをリセットする(ステップS15)。
【0082】
なお、制御部13は、ステップS20にて保護カバー11にカバーをかぶせる等の第三者の細工行為等はないと判断したときに、当該近距離画像をもとに非検出エリアの設定動作を行うようにしても良い。つまり、センサ部12より得た近距離画像に予め記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ距離画像があるか否かを判断し、記憶部14に記憶しているパターン画像と同じ画像が検出されたエリアを非検出エリアとして記憶部14に記憶する。
【0083】
これにより、設定モードに切り替えて非検出エリアの設定を行わなくても警備解除モード時に自動で非検出エリアの設定を行うことが可能となる。また、近距離画像により非検出エリアの設定を行うことで、万が一、警備対象20となる監視エリア内に同様の反射パターンを有するものが置かれた場合であっても、このエリアを誤って非検出エリアと設定してしまうことを防ぐことができる。
【0084】
制御部13は、ステップS16において警備装置40の動作モードが警備解除モードではないと判断した場合(ステップS16、No)、記憶部14に記憶している非検出エリアを除く基準画像と現画像とを比較し、侵入者等の物体の有無を判断する(ステップS23)。基準画像と現画像に所定の変化が得られた場合(ステップS23、Yes)、物体有りと判断し警備装置40へ検出情報を送信する。
【0085】
なお、制御部13は、ステップS23において物体なしと判断した場合(ステップS23、No)、正常と判断し次の動作へ進む。
【0086】
制御部13は、記憶部14に非検出エリアを記憶している場合(ステップS25、Yes)、現画像のうちパターン画像と一致する変化画素の面積がステップS9で記憶部14に記憶した基準面積と一致するか否かを確認する(ステップS26)。
【0087】
変化画素の面積と基準面積が異なる場合(ステップS26、Yes)、シール100が
剥がれた、または、シール100と同様の反射パターンをもつシール等が貼り付けられたと判断し、制御部13は、警報装置40へこれを報知する検出情報を送信する(ステップS27)。これにより、非検出エリア設定用のシール100が剥がれたこと等を検出することができ、適切な非検出エリアの設定・更新を行うことができる。
【0088】
なお、制御部13は、非検出エリアを記憶していないと判断した場合(ステップS25、No)および変化画素の面積が基準面積と一致しなかった場合(ステップS26、No)、ステップS27の検出情報の送信は行わず、次の動作へ進む。
【0089】
このように本実施の形態の物体検出装置によれば、レーザセンサを用いて得られる距離画像において非検出エリアを設定するためのパターンが検出された場合に、当該パターンが検出されたエリアを非検出エリアと判定し、非検出エリアを除く基準画像と新たに入力された距離画像とを比較して所定の変化が得られた場合に警備装置へ検出信号を出力する。これにより、簡易な方法で非検出エリアを設定することができ、かつ、第三者による細工行為が行われた場合であっても確実な監視エリアにおける物体検出を行うことができる。
【0090】
なお、本実施の形態においては、非検出エリア設定用のシール100を物体検出装置10の保護カバー11の一部に貼付けるようにしたが、パターンが判別できるものであれば、これに限るものではない。例えば、保護カバー11内に非検出エリア設定用のシール100を貼り付けた反射材をスライド可能に設け、反射材をスライドさせることによって非検出エリアの位置を設定するようにしてもよい。これにより、作業者による非検出エリアの設定作業を簡易に行うことが可能となる。
【0091】
なお、基準となる非検出エリアの面積は設定モード時に記憶したものでなくてもよく、直前に取得した距離画像から得られた非検出エリアの面積、あるいは、基準画像を記憶するときに非検出エリアと判断したエリアの面積等を基準面積とするようにしてもよい。
【0092】
なお、本実施の形態においては、物体検出装置10が、基準画像や非検出エリア等を記憶し、物体検出の判断や基準画像の記憶等の処理を行うようにしたが、これに限るものではなく、警備装置40が、記憶、処理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 物体検出装置
12 センサ部
16 設定スイッチ
40 警備装置
図1
図2
図3
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図5
図6