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  • 特許-流体制御弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20220727BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20220727BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
F16K17/04 H
F16K7/17 Z
F16K31/126 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018154726
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020029883
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 由晴
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0294712(US,A1)
【文献】実開平10-000167(JP,U)
【文献】特開2005-004694(JP,A)
【文献】特開2007-225085(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
F16K 7/17
F16K 31/126
G05D 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流出入する第1ポートおよび第2ポートと、前記第1ポートに連通するとともに前記第1ポートとは別に開口部を有する連通孔と、前記第2ポートに連通するとともに前記開口部を介して前記連通孔と連通する空間部と、が形成され、前記開口部の周囲に弁座を有する筐体と、
前記弁座に対する当接離間が可能であり、前記弁座への当接時に前記開口部を塞ぎ前記弁座からの離間時に前記開口部を開くことで前記第1ポートと前記第2ポートとの間の流体の流路の閉鎖開放を切り換える主弁部材と、
前記弁座に対する前記主弁部材の当接離間の方向に延在し該延在方向の長さに応じた付勢力を前記主弁部材に与えるバネ部材であって、前記主弁部材が前記弁座に当接している時の前記延在方向の長さがユーザの調整操作により可変なバネ部材と、
前記バネ部材に接続されるとともに前記主弁部材に当接し、前記バネ部材の付勢力を前記主弁部材に伝達しつつ前記弁座に対する前記主弁部材の当接離間の動きに従動して移動する中間部材と、を備え、
前記中間部材は、前記主弁部材側を向いた面上に前記主弁部材側に向かって突き出した凸部を有するものであり、前記主弁部材は、前記凸部に当接する平坦な当接面を有するものであり、前記中間部材は、前記凸部が前記当接面に沿って相対的に移動自在な態様で該凸部において前記主弁部材に当接するものであり、
前記中間部材は、一方の面が前記バネ部材に接続され他方の面が前記主弁部材の前記当接面に対向する平板状の中間部材本体を有するものであり、該他方の面上に、前記凸部として、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部が形成されており、
前記中間部材本体は前記他方の面に凹部を有するものであり、前記凹部の深さよりも長い厚さを有し該厚さ方向の先端面が丸みを帯びた曲面となっている曲面部材が該先端面とは反対側を前記凹部の底に向けて前記凹部内に嵌め込まれることによって前記凸部は形成されたものであり、
前記曲面部材は、前記中間部材本体を構成する材料よりも、JIS Z 2244で規定される ビッカース硬さが大きい金属材料で構成されている流体制御弁。
【請求項2】
前記曲面部材は、前記凹部の深さよりも長い直径を有する球状の部材である請求項に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記主弁部材は、前記当接面を有するとともに前記弁座に当接して前記開口部を塞ぐ金属製の主弁本体と、主弁本体の周囲に配置された薄膜状の弾性部材からなり外周の端部が前記筐体に固定された膜部と、を備えたダイヤフラムを有するものである請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バネ部材の付勢力を用いて流体の圧力に応じた流体の流路の開閉を行うことで流体の動きを制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バネ部材の付勢力を用いて流体の圧力に応じた流路の開閉を行うことで流体の動きを制御する流体制御弁が従来から知られている。こうした流体制御弁には、用途や機能が異なる様々な弁が存在する。たとえば、流体の圧力が必要以上に上昇することを防ぐリリーフ弁(安全弁)や、減圧後の流体の圧力を一定に保つ減圧弁は、こうした流体制御弁に含まれる様々な弁のうちの1つである。
【0003】
こうした流体制御弁には、連通孔の開口部の周囲に設けられた弁座に対する当接離間が可能な主弁部材と、その当接離間の方向に延在しその延在方向の長さに応じた付勢力を主弁部材に与えるバネ部材とが備えられている。ここで、主弁部材が弁座に当接している時のバネ部材の延在方向の長さはユーザの調整操作により可変であり、ユーザは、主弁部材の当接時におけるバネ部材の付勢力を任意に設定できる。主弁部材が弁座に当接している状態では、開口部が塞がれることで流体は2つの空間に分断されて存在しており、これら2つの空間のうちの一方が圧力制御対象の流体が属する空間である。この空間の流体の圧力が、設定されたバネ部材の付勢力に応じた閾値レベル以上に増加あるいは減少すると、弁座から主弁部材を離間させようとする力が、当接させようとする力よりも優勢となる。この結果、主弁部材が弁座から離間して開口部を介して上記2つの空間の間を流体が移動し、上述の閾値レベル以上に圧力が上昇あるいは減少していた流体の圧力は、適度なレベルの圧力に向かって変化していく。このような流体の圧力の変化に伴い、今度は、弁座に対して主弁部材を当接させようとする力が、離間させようとする力よりも優勢になり、この結果、主弁部材が弁座に当接して再び流体が2つの空間に分断される。
【0004】
こうした流体制御弁においては、バネ部材と主弁部材とが、直接的に結合しているか、あるいは、両部材とそれぞれ結合する部材を間に介在させて間接的に結合している形態が採用されるのが通常である(たとえば特許文献1におけるスプリング32S、軸部32、およびダイヤフラム20の間の関係参照)。流体制御弁の中には、主弁部材とは嵌合しているものの、固定的には結合していない部材を介してバネ部材の付勢力が主弁部材に伝達する形態を採用した流体制御弁も存在する(たとえば特許文献2における調圧ばね35、ダイヤフラム25、ステム41、および弁体21の間の関係参照)。これらいずれの形態においても、主弁部材は、バネ部材の動きに追従して動くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-151293号公報
【文献】特開2009-26050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、主弁部材の当接時におけるバネ部材の長さの調整操作において、バネ部材の長さを縮小してバネ部材の付勢力を大きな値に設定すると、主弁部材の当接離間の方向とは垂直な横方向にバネ部材がたわんで横滑りを起こしやすくなる。上述した形態のように主弁部材がバネ部材の動きに追従して動く形態では、バネ部材が横滑りを起こすと、その横滑りに追従して主弁部材も横方向に位置ずれを起こしやすい。主弁部材が横方向に位置ずれを起こすと、開口部が主弁部材によって完全に塞がれないため流体の動きが制御不能となり、流体制御弁としての本来の機能が発揮されないといった問題が生じ得る。ここで、流体制御弁の中には、主弁部材が、バネ部材の付勢力を受けて開口部を塞ぐ主弁本体と、主弁本体の周囲に配置され薄膜状の弾性部材からなる膜部とを有する、いわゆるダイヤフラム型の流体制御弁が知られている。ダイヤフラム型の流体制御弁には、膜部の存在により、流体の密閉性を保持しつつ主弁本体の当接離間が柔軟に行えるという利点があるが、この利点のため、主弁本体がバネ部材の動きに追従しやすいという特性がある。このためダイヤフラム型の流体制御弁では、上述の問題が特に深刻なものになりやすい。
【0007】
上記の事情を鑑み、本発明は、バネ部材の横滑りによる主弁部材の位置ずれを抑えた流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の流体制御弁を提供する。
[1] 流体が流出入する第1ポートおよび第2ポートと、前記第1ポートに連通するとともに前記第1ポートとは別に開口部を有する連通孔と、前記第2ポートに連通するとともに前記開口部を介して前記連通孔と連通する空間部と、が形成され、前記開口部の周囲に弁座を有する筐体と、前記弁座に対する当接離間が可能であり、前記弁座への当接時に前記開口部を塞ぎ前記弁座からの離間時に前記開口部を開くことで前記第1ポートと前記第2ポートとの間の流体の流路の閉鎖開放を切り換える主弁部材と、前記弁座に対する前記主弁部材の当接離間の方向に延在し該延在方向の長さに応じた付勢力を前記主弁部材に与えるバネ部材であって、前記主弁部材が前記弁座に当接している時の前記延在方向の長さがユーザの調整操作により可変なバネ部材と、前記バネ部材に接続されるとともに前記主弁部材に当接し、前記バネ部材の付勢力を前記主弁部材に伝達しつつ前記弁座に対する前記主弁部材の当接離間の動きに従動して移動する中間部材であって、前記主弁部材側を向いた面上に該主弁部材側に向かって突き出した凸部を有する中間部材と、を備え、前記主弁部材と前記中間部材のうちの一方の部材は、他方の部材側を向いた面上に該他方の部材側に向かって突き出した凸部を有するものであり、該他方の部材は、前記凸部に当接する平坦な当接面を有するものであり、前記中間部材は、前記凸部が前記当接面に沿って相対的に移動自在な態様で該凸部において前記主弁部材に当接するものである流体制御弁流体制御弁。
【0009】
ここで、上記の「前記凸部が前記当接面に沿って相対的に移動自在な態様」は、ほぼ静止した当接面に接しながら当接面に沿って凸部が移動自在な態様や、ほぼ静止した凸部に接しながら、当接面が広がっている平面に沿って当接面が移動自在な態様を指す。また、上記の「平坦な当接面」には、凹凸が存在しない水平な面の他に、凸部が相対的に当接面上を十分なめらかに移動できる程度の緩やかな曲面を有する当接面も含まれる。
【0010】
[2] 前記一方の部材は前記中間部材であり前記他方の部材は前記主弁部材であって、前記中間部材は、一方の面が前記バネ部材に接続され他方の面が前記主弁部材の前記当接面に対向する平板状の中間部材本体を有するものであり、該他方の面上に、前記凸部として、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部が形成されている[1]に記載の流体制御弁。
【0011】
[3] 前記中間部材本体は前記他方の面に凹部を有するものであり、前記凹部の深さよりも長い厚さを有し該厚さ方向の先端面が丸みを帯びた曲面となっている曲面部材が該先端面とは反対側を前記凹部の底に向けて前記凹部内に嵌め込まれることによって前記凸部は形成されたものである[2]に記載の流体制御弁。
【0012】
[4] 前記曲面部材は、前記凹部の深さよりも長い直径を有する球状の部材である[3]に記載の流体制御弁。
【0013】
[5] 前記曲面部材は、前記中間部材本体を構成する材料よりも、JIS Z 2244で規定される ビッカース硬さが大きい金属材料で構成されている[3]又は[4]に記載の流体制御弁。
【0014】
[6] 前記主弁部材は、前記当接面を有するとともに前記弁座に当接して前記開口部を塞ぐ金属製の主弁本体と、主弁本体の周囲に配置された薄膜状の弾性部材からなり外周の端部が前記筐体に固定された膜部と、を備えたダイヤフラムを有するものである[1]~[5]のいずれかに記載の流体制御弁。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、バネ部材が主弁部材の当接離間の方向とは垂直な横方向にたわんで横滑りを起こしその横滑りに追従して中間部材が移動した時でも、凸部が当接面に当接しつつ当接面上を相対的に移動するため主弁部材自体はバネ部材の横滑りに追従しにくい。このため、本発明の流体制御弁では、バネ部材の横滑りによる主弁部材の位置ずれが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の流体制御弁の一実施形態である流体制御弁の模式的な断面図である。
図2】主弁部材が凸部を有し中間部材が当接面を有する本発明の一実施形態である流体制御弁の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
図1は、本発明の流体制御弁の一実施形態である流体制御弁1の模式的な断面図である。
【0019】
図1に示す流体制御弁1は、流体の圧力が必要以上に上昇することを防ぐリリーフ弁(安全弁)であり、バネ部材の付勢力を用いて流体の圧力に応じた流路の開閉を行うことで流体の動きを制御する流体制御弁の一具体例である。
【0020】
流体制御弁1は筐体3を備えており、筐体3には、流体が流出入する第1ポート11aおよび第2ポート10aの2つのポートが形成されている。また、筐体3には、第1ポート11aに連通するとともに第1ポート11aとは別に開口部12を有する連通孔11と、第2ポート10aに連通するとともに開口部12を介して連通孔11と連通する空間部10も形成されている。さらに筐体3は、空間部10において、開口部12の周囲に弁座13を有している。
【0021】
また、流体制御弁1は主弁部材2を備えている。主弁部材2は、弁座13に対する当接離間が可能であり、弁座13への当接時に開口部12を塞ぎ弁座13からの離間時に開口部12を開くことで第1ポート11aと第2ポート10aとの間の流体の流路の閉鎖開放を切り換える役割を果たしている。
【0022】
また、流体制御弁1は、弁座13に対する主弁部材2の当接離間の方向に延在しその延在方向の長さに応じた付勢力を主弁部材2に与えるバネ部材4を備えている。このバネ部材4は、主弁部材2が弁座13に当接している時の延在方向の長さがユーザの調整操作により可変なバネ部材である。ユーザの調整操作を受けてバネ部材4の延在方向の長さを調整する機構については後で詳述する。
【0023】
さらに流体制御弁1は中間部材5を備えており、中間部材5はバネ部材4に接続されている。また、中間部材5は主弁部材2に当接しており、バネ部材4の付勢力を主弁部材2に伝達しつつ弁座13に対する主弁部材2の当接離間の動きに従動して移動する。
【0024】
ここで、中間部材5は、主弁部材2側を向いた面上に主弁部材2側に向かって突き出した凸部18を有しており、主弁部材2は、中間部材5の凸部18に当接する平坦な当接面16を有している。中間部材5は、凸部18が当接面16に沿って相対的に移動自在な態様で凸部18において主弁部材2に当接している。
【0025】
ここで、図1の実施形態では、中間部材5が本発明にいう「一方の部材」の一例に相当し、主弁部材2が本発明にいう「他方の部材」の一例に相当する。なお、本発明では、図1の実施形態とは反対に、主弁部材が、凸部を有する「一方の部材」であって、中間部材が、当接面を有する「他方の部材」である実施形態が採用されてもよい。このような実施形態については後述する。
【0026】
一般に、主弁部材の当接時におけるバネ部材の長さの調整操作において、バネ部材の長さを縮小してバネ部材の付勢力を大きな値に設定すると、主弁部材の当接離間の方向とは垂直な横方向にバネ部材がたわんで横滑りを起こしやすくなる。ここで、バネ部材が直接に主弁部材に結合している従来の流体制御弁では、バネ部材が横滑りを起こすと、その横滑りに追従して主弁部材も横方向に位置ずれを起こしやすい。主弁部材が横方向に位置ずれを起こすと、開口部が主弁部材によって完全に塞がれないため流体の動きが制御不能となり、流体制御弁としての本来の機能が発揮されないといった問題が生じ得る。また、従来の流体制御弁の中には、バネ部材に接続された中間的な部材をバネ部材と主弁部材との間に介在させているものも存在するが、そうした中間的な部材は、主弁部材と固定的に結合していないにしても主弁部材と嵌合するようになっている。このため、このような流体制御弁においても、バネ部材が横滑りを起こすと上述の問題が生じ得る。
【0027】
一方、図1の流体制御弁1では、バネ部材4が、主弁部材2の当接離間の方向(図の中心軸AA’の方向)とは垂直な横方向(図の両矢印Xの方向)に横滑りしても、中間部材5の凸部18は、主弁部材2の当接面16に当接しつつ当接面16上を移動する。このため、主弁部材2自体はバネ部材4の横滑りに追従しにくい。この結果、図1の流体制御弁1では、バネ部材4の横滑りによる主弁部材2の位置ずれが抑えられる。なお、バネ部材4の横滑りは、バネ部材4の付勢力が小さくなることで解消され、このとき凸部18は、当接面16に当接しつつ当接面16上を移動して元の位置に戻る。
【0028】
ここで、図1に示すように、中間部材5が、一方の面がバネ部材4に接続され他方の面が主弁部材2の当接面16に対向する平板状の中間部材本体17を有しており、その他方の面上に、上述の凸部18として、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部が形成されていることが好ましい。
【0029】
中間部材本体17が平板状であることで、2次元的に広がった中間部材本体17の一方の面に対するバネ部材4の接続部分をなるべく長くとって接続状態を強固にすることが可能となる。また、中間部材本体17の他方の面上に、上述の凸部18として、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部を設けることで、中間部材5と主弁部材2との接触状態が滑らかになり、主弁部材2がバネ部材4の横滑りにより一層追従しにくくなる。
【0030】
また、図1に示すように、中間部材本体17は上述の他方の面に凹部19を有するものであり、凹部19の深さよりも厚さを有しその厚さ方向の先端面が丸みを帯びた曲面となっている曲面部材がその先端面とは反対側を凹部19の底に向けて凹部19内に嵌め込まれることによって凸部18は形成されたものであることがさらに好ましい。
【0031】
このさらに好ましい形態によれば、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部18を中間部材本体17上に簡単に形成することができる。また、摩耗等で凸部18が損傷した場合でも新しい凸部18だけを取り換えればよく、中間部材本体17はそのまま使用することができる。このため、このさらに好ましい形態では利便性が高い。
【0032】
また、図1に示すように、上記の曲面部材(凸部18)は、凹部19の深さよりも長い直径を有する球状の部材であることが特に好ましい。
【0033】
この特に好ましい形態によれば、主弁部材2の当接面16に対する凸部18の接触部分が、図1に示す点Bのような一点となるため接触面積が小さくなり、きわめて滑らかな接触状態が実現する。
【0034】
なお、本発明では、図1のように球状の部材が凹部19内に嵌め込まれて固定されることによって凸部18が形成されている実施形態以外に、球状の部材が回転自在な状態で凹部内に配置されることで凸部が形成されている別の実施形態が採用されてもよい。このような別の実施形態では、球状の部材が回転するため中間部材の位置が多少不安定であるが、主弁部材と中間部材との間で非常に滑らかな接触状態が実現するので、バネ部材の横滑りによる主弁部材の位置ずれを防止する効果はきわめて高い。このような別の実施形態は、球状の部材が凹部内で回転自在な状態で配置されている点を除き、実質的に図1の実施形態と同じである。そこで、このような別の実施形態については、図1および図1の説明を参照することとしてその詳細説明は省略する。
【0035】
図1の実施形態に戻ってその説明を続ける。
【0036】
図1の実施形態では、上記の曲面部材(凸部18)が、中間部材本体17を構成する材料よりも、JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さが大きい金属材料で構成されており、本発明では、このような形態が特に好ましい。
【0037】
凸部18は、中間部材5における、主弁部材2の当接面16との接触部分であるため、摩耗しにくい硬い材料で構成されていることが望まれる。こうした材料としては、たとえば、JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さが大きい金属材料が挙げられる。本発明では、このような金属材料により、凸部18だけでなく中間部材本体17を含めて中間部材5全体を構成してもよい。ただし、このような金属材料で中間部材本体17を構成した場合、中間部材5が必要以上の重量を有しさらにコスト高にもつながるといった問題が生じることがある。そこで、高い摩耗耐久性が不要な中間部材本体17の構成材料に比べ、ビッカース硬さが大きい金属材料で上記の曲面部材(凸部18)を構成することで、上記の問題を回避しつつ、当接面16との接触部分における高い摩耗耐久性を実現できる。
【0038】
ここで、曲面部材(凸部18)の構成材料としては、たとえば、鉄に、炭素、ニッケル、クロム、コバルト等が添加されたいわゆる鋼材を挙げることができる。一方、中間部材本体17としては、こうした鋼材よりもビッカース硬さが小さい鉄やアルミニウム等の金属材料(合金材料含む)や強化プラスチック材料を用いることができる。なお、主弁部材2において、当接面16を有する部分の材料としては、曲面部材(凸部18)の構成材料と同様のものを採用することができる。
【0039】
また、図1に示すように、主弁部材2が、当接面16を有するとともに弁座13に当接して開口部12を塞ぐ金属製の主弁本体14と、主弁本体14の周囲に配置された薄膜状の弾性部材からなり外周の端部が筐体3に固定された膜部15と、を備えたダイヤフラムを有するものであることが好ましい。なお、図1の例では、主弁部材2がこのようなダイヤフラムを有する好ましい形態の一例として、主弁部材2それ自体がダイヤフラムとなっている。
【0040】
このようなダイヤフラム(主弁部材2)には、膜部15の存在により、流体の密閉性を保持しつつ主弁本体14の当接離間が柔軟に行えるという利点があるが、この利点のため、主弁本体14がバネ部材4の動きに追従しやすい。このため、上述したような、従来の流体制御弁における、バネ部材の横滑りに伴う主弁部材の位置ずれの問題が特に深刻なものになりやすい。そこで、凸部18を有する中間部材5により主弁部材2をバネ部材4の横滑りに追従しにくくする本実施形態の機構がとりわけ有用となる。
【0041】
以下では、図1の流体制御弁1の構成についてさらに詳しく説明する。
【0042】
図1の流体制御弁1は、以上説明した構成要素に加えて、補助バネ6、付勢力調整部材7、およびバネ固定部材8を備えている。
【0043】
補助バネ6は、筐体3内部の空間部10において、弁座13の近傍に一端部が固定され他端部が主弁本体14に固定されたバネである。補助バネ6は、主弁本体14が弁座13から離間する方向に主弁本体14を付勢しており、この付勢力により、主弁本体14が弁座13に当接する際の主弁本体14の勢いが弱められる。すなわち、補助バネ6は、弁座13への主弁本体14の当接に対する緩衝バネとしての役割を有している。
【0044】
付勢力調整部材7は、バネ部材4により主弁部材2に及ぼされる付勢力の大きさを調整するための部材であり、図の中心軸AA’を回転軸として回転するつまみ状の部材である。付勢力調整部材7は、中心軸AA’の方向に延びる主軸20を有しており、主軸20は筐体3内部の空間部10内に挿入されている。一方、付勢力調整部材7の、主軸20以外の部分は筐体3外部に露出しており、流体制御弁1の外部から見ると、このように露出している主軸20以外の部分がつまみの操作部として認識される。ここで、付勢力調整部材7と筐体3とは、互いに接触する部分において、互いに嵌合する不図示のネジ溝が形成されている。付勢力調整部材7が図の中心軸AA’を回転軸として回転すると、これらのネジ溝により付勢力調整部材7は、回転方向に応じて、筐体3に対し相対的に中心軸AA’の方向に沿った図の上方向あるいは下方向に移動する。
【0045】
ここで、主軸20には、中心軸AA’から離れる方向に広がるフランジ部21が設けられている。このフランジ部21の、主軸20が挿入される方向を向いた面上には、バネ固定部材8が、主軸20の回りで回転自在な態様で主軸20の回りに配置されている。このため、付勢力調整部材7が図の中心軸AA’を回転軸として回転したときでも、バネ固定部材8は、フランジ部21とともに中心軸AA’の方向(図の上下方向)には移動するが、主軸20の回りには回転しにくくなっている。ここで、バネ固定部材8にはバネ部材4の一端部が固定されており、バネ部材4は、主軸20の回りを取り巻く態様で中間部材5に向かって延び、バネ固定部材8の他端部は、上述したように中間部材5に接続されている。すなわち、バネ部材4は、バネ固定部材8と中間部材5の間に挟まれた状態で、主軸20の回りに配置されている。ここで、図1の流体制御弁1では、バネ固定部材8と中間部材5との間の距離(すなわちバネ部材4の長さ)はバネ部材4の自然長よりも常に短くなるよう設定されている。このため、バネ固定部材8および中間部材5のそれぞれに対し、互いから離れる方向に向かう付勢力がバネ部材4から常に及ぼされる。この結果、バネ固定部材8はフランジ部21に常に押し付けられ、中間部材5は主弁部材2に常に押し付けられる。このようにして中間部材5と主弁部材2との当接状態(正確には、中間部材5の凸部18と主弁部材2の当接面16との当接状態)が常時維持される。
【0046】
流体制御弁1のユーザは、主弁部材2が弁座13に当接している状態において、付勢力調整部材7を中心軸AA’の回りに回転させることで、主弁部材2の当接時におけるバネ部材4の長さを所望の値に調整することができる。すなわち、このユーザの調整操作を受けて中心軸AA’の方向(図の上下方向)にフランジ部21が移動することで、フランジ部21上のバネ固定部材8と中間部材5との間の距離(つまりバネ部材4の長さ)が所望の値に調整される。これにより、ユーザは、主弁部材2の当接時におけるバネ部材4の付勢力を任意に設定できる。
【0047】
ここで、図1の流体制御弁1では、主弁部材2が弁座13から離間して中間部材5とともに中心軸AA’に沿って弁座13から離れる方向に移動できるようにするため、バネ部材4の長さが主軸20の長さよりも短くなるように設定されている。従って、バネ部材4には、主軸20の回りを取り巻くバネ固定部材8側の上側部分4Aの他に、主軸20の回りを取り巻いていない中間部材5側の下側部分4Bが常に存在する。一般に、バネ部材においては、図の下側部分4Bのように、バネ部材のらせん形状の内側においてバネ部材の姿勢を保持する軸部材(図1では主軸20)が存在しない部分ではバネ部材の横ずれが特に発生しやすい。このため、下側部分4Bが存在する本実施形態では、凸部18を有する中間部材5により主弁部材2をバネ部材4の横滑りに追従しにくくする本実施形態の機構がとりわけ有用となる。
【0048】
なお、以上の説明では、主軸20の回りで回転自在なバネ固定部材8にバネ部材4の一端部が固定されていたが、図1のように、凸部18が凹部19の深さよりも長い直径を有する球状の部材である場合には、バネ固定部材8を省いてフランジ部21に直接にバネ部材4の一端部が固定されている形態が採用されてもよい。この場合、付勢力調整部材7が回転するとバネ部材4も回転することになるが、主弁部材2の当接面16に対する中間部材5の接触部分が凸部18上の点Bの一点であるため、中間部材5は、主弁部材2を回転させることなくバネ部材4の回転に合わせて回転する。このため、付勢力調整部材7が回転してもバネ部材4はその長さが伸縮するだけであって、バネ部材4自体がねじれてしまうことは回避される。この形態には、バネ固定部材8を省くことで部品点数が減るという長所がある。
【0049】
以下では、図1の流体制御弁1のリリーフ弁(安全弁)としての動作について説明する。
【0050】
図1の流体制御弁1は、第1ポート11aを介して流体制御弁1外部の不図示の第1の流体収容部と接続されるとともに、第2ポート10aを介して流体制御弁1外部の不図示の第2の流体収容部と接続される。ここで、第1の流体収容部および第2の流体収容部それぞれには同一種類の流体が収容されている。第1の流体収容部の流体の圧力は許容可能なそれほど高くはない圧力となっているが、第2の流体収容部の流体の圧力は、特段の減圧処理をしなければ、第2の流体収容部における流体の処理環境等の要因により、許容できないほどの高圧になることがある。図1の流体制御弁1は、第2の流体収容部におけるこうした高圧状態を回避するため、第2ポート10aを介して第2の流体収容部と連通する流体室9A(以下の説明参照)内の流体の圧力を制御する。以下、この制御機構について詳しく説明する。
【0051】
流体制御弁1では、筐体3内部の空間部10において、ダイヤフラムからなる主弁部材2の膜部15の外周端部が、上述したように筐体3に固定されていることで、空間部10は流体室9Aと収容室9Bとに分断されている。流体室9Aは、圧力制御の対象の流体を含む部屋であり、収容室9Bは、バネ部材4や中間部材5を収容している部屋である。ここで、流体制御弁1では、付勢力調整部材7を介して設定されたバネ部材4の付勢力の下で、図1に示すように主弁部材2の主弁本体14が弁座13に当接して開口部12を塞いでいる状態が通常の状態(以下、通常状態と呼ぶ)である。この通常状態では、第2ポート10aに接続している箇所を除き、流体室9Aは、筐体3内部において、空間部10の壁面と主弁部材2とで囲まれた閉じた空間を形成している。この流体室9Aは、第2ポート10aを介して不図示の第2の流体収容部と接続されており、流体室9A内の流体の圧力は、第2の流体収容部内の流体の圧力と同じである。
【0052】
一方、収容室9Bには、付勢力調整部材7と筐体3との間の僅かな隙間から流体制御弁1外部の空気が侵入することができ、このため、収容室9Bは、大気圧程度の圧力を持つ空気によって満たされている。ここで、主弁部材2の存在により、収容室9Bの空気と流体室9A内の流体とはほぼ完全に遮断されている。
【0053】
また、連通孔11は、第1ポート11aを介して不図示の第1の流体収容部と接続されており、連通孔11内の流体の圧力は、第1の流体収容部内の流体の圧力と同じであって、許容可能なそれほど高くはない圧力となっている。
【0054】
以上説明した構成により、通常状態の主弁部材2に対しては、流体室9Aおよび連通孔11の流体から、主弁部材2を弁座13から離間させようとする圧力が作用し、収容室9Bの空気から、主弁部材2を弁座13に当接させようとする圧力が作用する。また、この主弁部材2に対し、上述したように、バネ部材4から、主弁部材2を弁座13に当接させようとする付勢力が作用し、補助バネ6から、主弁部材2を弁座13から離間させようとする付勢力が作用する。さらに、弁座13から主弁部材2が受ける、弁座13から離れる方向の抗力(垂直抗力)が加わり、これらすべての力が釣り合うことで、中心軸AA’の方向についての主弁部材2の位置が、図1に示すように弁座13に当接する位置に維持される。
【0055】
ここで、第2の流体収容部における流体の処理環境等の要因により第2の流体収容部の流体の圧力が上昇していくと、主弁部材2に作用する上述の様々な力の中でも、主弁部材2を弁座13から離間させようとする流体室9Aの流体からの圧力が大きくなっていく。このため、主弁部材2を弁座13から離間させようとする力が優勢になり、主弁部材2は、弁座13から離れる方向に移動を開始する。この結果、開口部12が開かれて第1ポート11aと第2ポート10aとの間の流体の流路が開放され、高圧の流体室9A(および第2の流体収容部)の流体は、開口部12を通って連通孔11(および第1の流体収容部)に移動する。この流体の移動により、第2の流体収容部の流体の圧力が徐々に低下し、流体室9Aの流体から主弁部材2に作用する圧力も低下していく。やがて、主弁部材2を弁座13に当接させようとする力の方が優勢になり、主弁部材2は、今度は、弁座13に向かう方向に移動を開始する。そして、再び主弁部材2が弁座13に当接して開口部12が塞がれ、第1ポート11aと第2ポート10aとの間の流体の流路が閉鎖される。この結果、図1の通常状態が再び実現する。
【0056】
以上が、図1の流体制御弁1のリリーフ弁(安全弁)としての動作についての説明である。このようにして、流体制御弁1では、流体室9A(および第2の流体収容部)の流体の圧力が、許容できないほどの高圧になることが回避される。
【0057】
以上が図1の実施形態についての説明である。
【0058】
図1の実施形態では、中間部材5が凸部18を有し主弁部材2が当接面16を有していたが、本発明では、図1の実施形態とは反対に、主弁部材が凸部を有し中間部材が当接面を有する実施形態が採用されてもよい。以下、このような実施形態について説明する。
【0059】
図2は、主弁部材が凸部を有し中間部材が当接面を有する本発明の一実施形態である流体制御弁1’の模式的な断面図である。
【0060】
図2では、図1の流体制御弁1と同一の構成要素については同一の符号が付されており、その重複説明は省略する。流体制御弁1’は、図1で説明した筐体3やバネ部材4に加えて、主弁部材2’および中間部材5’を備えている。
【0061】
主弁部材2’は、弁座13に対する当接離間が可能であり、弁座13への当接時に開口部12を塞ぎ弁座13からの離間時に開口部12を開くことで第1ポート11aと第2ポート10aとの間の流体の流路の閉鎖開放を切り換える役割を果たしている。
【0062】
中間部材5’はバネ部材4に接続されている。また、中間部材5’は主弁部材2’に当接しており、バネ部材4の付勢力を主弁部材2’に伝達しつつ弁座13に対する主弁部材2’の当接離間の動きに従動して移動する。
【0063】
ここで、主弁部材2’は、中間部材5’側を向いた面上に中間部材5’側に向かって突き出した凸部18’を有しており、中間部材5’は、主弁部材2’の凸部18’に当接する平坦な当接面16’を有している。中間部材5’は、凸部18’が当接面16’に沿って相対的に移動自在な態様で凸部18’において主弁部材2’に当接している。ここで、主弁部材2’が本発明にいう「一方の部材」の一例に相当し、中間部材5’が本発明にいう「他方の部材」の一例に相当する。
【0064】
図2の流体制御弁1’では、バネ部材4が、主弁部材2’の当接離間の方向(図の中心軸AA’の方向)とは垂直な横方向(図の両矢印Xの方向)に横滑りしても、中間部材5’の当接面16’は、主弁部材2’の凸部18’に当接しつつ、当接面16’が広がっている平面に沿って移動する。このため、主弁部材2’自体はバネ部材4の横滑りに追従しにくい。この結果、図2の流体制御弁1’では、バネ部材4の横滑りによる主弁部材2’の位置ずれが抑えられる。なお、バネ部材4の横滑りは、バネ部材4の付勢力が小さくなることで解消され、このとき当接面16’は、凸部18’に当接しつつ、当接面16’が広がっている平面に沿って移動して元の位置に戻る。
【0065】
ここで、図2に示すように、中間部材5’が、一方の面がバネ部材4に接続され他方の面に主弁部材2’の凸部18’に対向する当接面16’が形成された平板状であることが好ましい。
【0066】
中間部材5’が平板状であることで、2次元的に広がった中間部材5’の一方の面に対するバネ部材4の接続部分をなるべく長くとって接続状態を強固にすることが可能となる。
【0067】
また、図2に示すように、主弁部材2’は、中間部材5’の当接面16’側を向いた面に凹部19’を有するものであり、凹部19’の深さよりも厚さを有しその厚さ方向の先端面が丸みを帯びた曲面となっている曲面部材がその先端面とは反対側を凹部19’の底に向けて凹部19’内に嵌め込まれることによって凸部18’は形成されたものであることがさらに好ましい。
【0068】
このさらに好ましい形態によれば、先端面が丸みを帯びた曲面となっている凸部18’を主弁部材2’において簡単に形成することができる。また、摩耗等で凸部18’が損傷した場合でも新しい凸部18’だけを取り換えればよく、凸部18’以外の部分はそのまま使用することができる。このため、このさらに好ましい形態では利便性が高い。
【0069】
また、図2に示すように、上記の曲面部材(凸部18’)は、凹部19’の深さよりも長い直径を有する球状の部材であることが特に好ましい。
【0070】
この特に好ましい形態によれば、中間部材5’の当接面16’に対する凸部18’の接触部分が、図2に示す点B’のような一点となるため接触面積が小さくなり、きわめて滑らかな接触状態が実現する。
【0071】
なお、本発明では、図2のように球状の部材が凹部19’内に嵌め込まれて固定されることによって凸部18’が形成されている実施形態以外に、球状の部材が回転自在な状態で凹部内に配置されることで凸部が形成されている別の実施形態が採用されてもよい。このような別の実施形態では、球状の部材が回転するため中間部材の位置が多少不安定であるが、主弁部材と中間部材との間で非常に滑らかな接触状態が実現するので、バネ部材の横滑りによる主弁部材の位置ずれを防止する効果はきわめて高い。このような別の実施形態は、球状の部材が凹部内で回転自在な状態で配置されている点を除き、実質的に図2の実施形態と同じである。そこで、このような別の実施形態については、図2および図2の説明を参照することとしてその詳細説明は省略する。
【0072】
図2の実施形態に戻ってその説明を続ける。
【0073】
図2の実施形態では、上記の曲面部材(凸部18’)が、凹部19’の構成材料よりも、JIS Z 2244で規定される ビッカース硬さが大きい金属材料で構成されており、本発明では、このような形態が特に好ましい。
【0074】
凸部18’は、主弁部材2’における、中間部材5’の当接面16’との接触部分であるため、摩耗しにくい硬い材料で構成されていることが望まれる。こうした材料としては、たとえば、JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さが大きい金属材料が挙げられる。本発明では、このような金属材料により、凸部18’だけでなく凹部19’を構成してもよい。ただし、このような金属材料で主弁部材2’を構成した場合、主弁部材2’が必要以上の重量を有しさらにコスト高にもつながるといった問題が生じることがある。そこで、高い摩耗耐久性が不要な凹部19’の構成材料に比べ、ビッカース硬さが大きい金属材料で上記の曲面部材(凸部18’)を構成することで、上記の問題を回避しつつ、当接面16’との接触部分における高い摩耗耐久性を実現できる。
【0075】
ここで、曲面部材(凸部18’)の構成材料としては、たとえば、鉄に、炭素、ニッケル、クロム、コバルト等が添加されたいわゆる鋼材を挙げることができる。一方、凹部19’の構成材料としては、こうした鋼材よりもビッカース硬さが小さい鉄やアルミニウム等の金属材料(合金材料含む)や強化プラスチック材料を用いることができる。なお、中間部材5’において、当接面16’を有する部分の材料としては、曲面部材(凸部18’)の構成材料と同様のものを採用することができる。
【0076】
また、図2に示すように、主弁部材2’が、凸部18’を有するとともに弁座13に当接して開口部12を塞ぐ金属製の主弁本体14’と、主弁本体14’の周囲に配置された薄膜状の弾性部材からなり外周の端部が筐体3に固定された膜部15と、を備えたダイヤフラムを有するものであることが好ましい。なお、図2の例では、主弁部材2’がこのようなダイヤフラムを有する好ましい形態の一例として、主弁部材2’それ自体がダイヤフラムとなっている。
【0077】
このようなダイヤフラム(主弁部材2’)には、膜部15の存在により、流体の密閉性を保持しつつ主弁本体14’の当接離間が柔軟に行えるという利点があるが、この利点のため、主弁本体14’がバネ部材4の動きに追従しやすい。このため、上述したような、従来の流体制御弁における、バネ部材の横滑りに伴う主弁部材の位置ずれの問題が特に深刻なものになりやすい。そこで、凸部18’に当接する当接面16’を有する中間部材5’により主弁部材2’をバネ部材4の横滑りに追従しにくくする本実施形態の機構がとりわけ有用となる。
【0078】
図2の流体制御弁1’は、以上説明した構成要素に加えて、補助バネ6、付勢力調整部材7、およびバネ固定部材8を備えている。これらの構成要素については、図1で説明したのと同一であり、ここではその説明は省略する。また、図2の流体制御弁1’のリリーフ弁(安全弁)としての動作についても、図1で説明したのと同一であるので、ここではその説明は省略する。
【0079】
以上の説明では、本発明の流体制御弁の一例として、リリーフ弁(安全弁)として機能する流体制御弁1について説明したが、本発明の流体制御弁は、減圧後の流体の圧力を一定に保つ減圧弁といった、リリーフ弁(安全弁)とは用途や機能が多少異なる様々な弁に適用されてもよい。一般に減圧弁では、ダイヤフラムそれ自体が弁座に当接するのではなく別の部材が弁座に当接に当接しダイヤフラムはそうした別の部材にバネ部材の付勢力を伝達する役割を果たしていることが多い。このような形態の減圧弁においても、ダイヤフラムとバネ部材との間に備えられた本発明の中間部材は、以上説明した実施形態における中間部材5と同様の機能を果たす。この場合、ダイヤフラムや上記の別の部材を含む、流体の流路の開閉に寄与する部材の全体が、本発明にいう「主弁部材」の一例に相当する。
【0080】
また、以上の説明では、流体制御弁1のユーザが付勢力調整部材7を回転させることで主弁部材2の当接時におけるバネ部材4の長さが調整されていたが、本発明の流体制御弁では、このような手動の調整操作に代えて、ソレノイド等を用いた電磁的な手段(たとえば特許文献1参照)により調整操作が行われる形態が採用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、バネ部材の横滑りによる主弁部材の位置ずれを抑えた流体制御弁の実現に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1,1’:流体制御弁、2,2’:主弁部材、3:筐体、4:バネ部材、4A:上側部分、4B:下側部分、5,5’:中間部材、6:補助バネ、7:付勢力調整部材、8:バネ固定部材、9A:流体室、9B:収容室、10:空間部、10a:第2ポート、11:連通孔、11a:第1ポート、12:開口部、13:弁座、14,14’:主弁本体、15:膜部、16,16’:当接面、17:中間部材本体、18,18’:凸部、19,19’:凹部、20:主軸、21:フランジ部。
図1
図2