IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タンブル流生成装置 図1
  • 特許-タンブル流生成装置 図2
  • 特許-タンブル流生成装置 図3
  • 特許-タンブル流生成装置 図4
  • 特許-タンブル流生成装置 図5
  • 特許-タンブル流生成装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】タンブル流生成装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/04 20060101AFI20220727BHJP
   F02B 31/06 20060101ALI20220727BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20220727BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02B31/06 500B
F02M35/10 101J
F02F1/42 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018165156
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020037903
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 充
(72)【発明者】
【氏名】金 大敬
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297952(JP,A)
【文献】特開2004-308471(JP,A)
【文献】特開2008-95510(JP,A)
【文献】特開2016-114013(JP,A)
【文献】特開昭60-30423(JP,A)
【文献】特開昭58-150025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02B 31/06
F02M 35/10
F02B 23/10
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口を有する吸気ポートが形成されたシリンダヘッドと、
前記吸入口よりも開口が小さい排出口を有する吸気流路が形成され、前記吸入口に対し前記排出口を対向させて前記シリンダヘッドに接続されたインテークマニホールドと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記吸気ポートを第1流路と第2流路に分割する隔壁と、
前記インテークマニホールドに設けられ、前記第1流路を開閉するバルブと、
を備え、
前記インテークマニホールドは、前記吸入口と前記排出口の間のずれ量が前記第1流路側よりも前記第2流路側が小さくなるように、前記シリンダヘッドに接続される
タンブル流生成装置。
【請求項2】
前記吸入口と前記排出口の間のずれ量が前記第1流路側よりも前記第2流路側が小さくなるように、前記インテークマニホールドを前記シリンダヘッドに対し位置決めする位置決め部材を備える請求項1に記載のタンブル流生成装置。
【請求項3】
前記バルブと前記隔壁との間には、隙間が形成されている請求項1または2に記載のタンブル流生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンブル流生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンのシリンダヘッドに接続されるインテークマニホールドについて開示がある。特許文献1のインテークマニホールドには、エンジンの燃焼室内にタンブル(縦渦)流を生成するためのバルブが設けられている。また、バルブの下流側には、吸気流路を2分割する隔壁が設けられている。バルブは、隔壁により分割された2つの分割流路のうち一方の流路を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-82242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バルブを閉状態に制御しても、一方の流路内には、インテークマニホールドの内壁とバルブの隙間を抜けて若干の空気が流通する。一方の流路内を流通する空気は、インテークマニホールドの内壁に沿って流れる。このとき、インテークマニホールドの内壁およびシリンダヘッドの内壁が大凡同一面を形成すると、一方の流路内を流通する空気は、コアンダ効果によりシリンダヘッドの内壁に沿って流れる。シリンダヘッドの内壁に沿って一方の流路内を流通する空気は、隔壁より下流側において2つの分割流路のうち他方の流路内を流通する空気と衝突する。そうすると、他方の流路内を流通する空気は、一方の流路内を流通する空気と衝突した影響により、タンブル流を効率的に生成することが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、タンブル流を効率的に生成することが可能なタンブル流生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のタンブル流生成装置は、吸入口を有する吸気ポートが形成されたシリンダヘッドと、吸入口よりも開口が小さい排出口を有する吸気流路が形成され、吸入口に対し排出口を対向させてシリンダヘッドに接続されたインテークマニホールドと、シリンダヘッドに設けられ、吸気ポートを第1流路と第2流路に分割する隔壁と、インテークマニホールドに設けられ、第1流路を開閉するバルブと、を備え、インテークマニホールドは、吸入口と排出口の間のずれ量が第1流路側よりも第2流路側が小さくなるように、シリンダヘッドに接続される。
【0007】
吸入口と排出口の間のずれ量が第1流路側よりも第2流路側が小さくなるように、インテークマニホールドをシリンダヘッドに対し位置決めする位置決め部材を備えてもよい。
【0008】
バルブと隔壁との間には、隙間が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンブル流を効率的に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両に備えられるエンジンシステムの構成を示す概略図である。
図2図1の破線部分の抽出図である。
図3図2の破線部分の抽出図である。
図4】比較例における吸気の流れを説明するための図である。
図5】本実施形態における吸気の流れを説明するための図である。
図6】変形例のタンブル流生成装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、車両1に備えられるエンジンシステム3の構成を示す概略図である。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0013】
図1に示すように、エンジンシステム3は、エンジン5と、吸気装置7と、排気装置9とを備える。エンジン5は、吸気行程、圧縮行程、燃焼工程および排気行程が1回のサイクルとして繰り返し行われる4ストロークエンジンである。なお、本実施形態において、エンジン5は、水平対向エンジンである。しかし、これに限定されず、エンジン5は、直列エンジンであっても、V型エンジンであってもよい。
【0014】
エンジン5は、2つ(複数)のシリンダブロック11と、2つ(複数)のクランクケース13と、2つ(複数)のシリンダヘッド15と、を備える。シリンダブロック11には、それぞれシリンダ17が形成される。クランクケース13は、シリンダブロック11と一体的に形成される。シリンダヘッド15は、シリンダブロック11のクランクケース13側とは反対側に連結される。シリンダヘッド15には、シリンダブロック11と連結する側とは反対側に不図示のシリンダヘッドカバーが連結される。
【0015】
吸気装置7は、エアクリーナ19と、吸気管21と、コレクタ25と、インテークマニホールド27とを備える。エアクリーナ19は、外気から吸入された空気に混合する異物を除去する。吸気管21は、一端がエアクリーナ19に接続され、他端がコレクタ25に接続される。吸気管21は、エアクリーナ19を通過した空気をコレクタ25に導く。
【0016】
コレクタ25は、吸気管21に接続される。コレクタ25は、吸気管21との接続部に、スロットルバルブ29を備える。スロットルバルブ29は、アクセルペダルの踏み込み量に応じてアクチュエータにより開閉駆動され、エンジン5へ送出する空気量を調節する。
【0017】
インテークマニホールド27は、複数設けられる。インテークマニホールド27は、一端がコレクタ25に接続され、他端がエンジン5のシリンダヘッド15の吸気ポート47(図2参照)に接続される。インテークマニホールド27は、吸気管21からコレクタ25に流入した空気(吸気)を、シリンダブロック11のシリンダ17に導入させる。
【0018】
排気装置9は、エキゾーストマニホールド31と、排気管33と、触媒35とを備える。エキゾーストマニホールド31は、一端がシリンダヘッド15の排気ポート49(図2参照)に接続され、他端が排気管33に接続される。エキゾーストマニホールド31は、シリンダ17から排出された排気を集合させる。排気管33は、一端がエキゾーストマニホールド31に接続され、他端が外部に開口する。排気管33は、エキゾーストマニホールド31を通過した排気を外部に導く。
【0019】
触媒35は、排気管33に設けられる。触媒35は、例えば、三元触媒(Three-Way Catalyst)であって、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含んで構成される。触媒35は、排気管33を流通する排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を除去する。
【0020】
図2は、図1の破線部分の抽出図である。なお、エンジン5は、クランクシャフト45を境にして図1の左右で同様に構成されているため、一方のみ(ここでは、右側)を説明し、他方の説明を省略する。
【0021】
図2に示すように、シリンダブロック11のシリンダ17には、ピストン37が摺動自在に収容される。ピストン37は、コネクティングロッド39に支持される。エンジン5の内部には、燃焼室41が形成される。燃焼室41は、シリンダヘッド15と、シリンダ17と、ピストン37の冠面とによって囲まれた空間により形成される。ピストン37には、ピストンリングやオイルリングが設けられている。
【0022】
また、エンジン5には、クランクケース13によってクランク室43が形成されている。クランク室43には、クランクシャフト45が回転自在に支持されている。クランクシャフト45には、コネクティングロッド39を介してピストン37が連結される。
【0023】
シリンダヘッド15には、吸気ポート47および排気ポート49が形成される。吸気ポート47および排気ポート49は、燃焼室41と連通する。
【0024】
吸気ポート47には、インテークマニホールド27の内部に形成される吸気流路51が連通する。吸気ポート47は、インテークマニホールド27に臨む吸気の上流側に1つの開口が形成される。吸気ポート47は、燃焼室41に臨む吸気の下流側に2つの開口が形成される。吸気ポート47は、吸気の上流から下流に向かう途中で流路が2つに分岐される。
【0025】
吸気ポート47の内部には、隔壁53が配置される。隔壁53は、吸気ポート47の側面(図2中、手前側および奥側)と接続する。隔壁53は、吸気の流れ方向に沿って延在する。隔壁53は、吸気ポート47の一部を、図2における上下方向に区分けする。これにより、吸気ポート47には、第1流路55と第2流路57が形成される。換言すれば、隔壁53は、吸気ポート47を第1流路55と第2流路57に分割する。ここで、第1流路55は、吸気ポート47のうちシリンダブロック11から離隔する側の通路(流路)である。第2流路57は、吸気ポート47のうちシリンダブロック11に近接する側の通路(流路)である。
【0026】
また、インテークマニホールド27には、TGV(Tumble Generation Valve:バルブ)59が配置される。TGV59は、隔壁53より吸気の上流側に配置され、第1流路55の開度を可変する。本実施形態では、TGV59は、第1流路55、すなわち、吸気流路51のうちシリンダブロック11から離隔する側(図2中、上側)の流路を絞る。TGV59は、第1流路55の開度を可変することで、第1流路55を開閉することができる。ここで、吸気ポート47と、隔壁53と、インテークマニホールド27(吸気流路51)と、TGV59は、タンブル流生成装置100を構成する。
【0027】
図2に示すように、TGV59の開度が最小となり、TGV59によって第1流路55がほとんど閉じられると、吸気流路51を流通する吸気は、第2流路57を通過して燃焼室41に導かれる。
【0028】
エンジン5では、負荷が小さく吸気流量が少ない場合、第1流路55の開度を絞り、吸気のほとんどを第2流路57に通過させる。第2流路57は、TGV59より上流側の吸気流路51の流路断面積に比べて、流路断面積が小さい。そのため、第2流路57を流通する吸気は、吸気流路51を流通する吸気よりも流速が速くなる。
【0029】
こうして、エンジン5では、流速が高められた吸気を燃焼室41に流入させることで、燃焼室41内において図中矢印線で示す強いタンブル流を生成させる。強いタンブル流が生成されると、吸気と燃料との撹拌が促進され、燃焼室41における燃焼の伝播を促進させることができる。これにより、タンブル流生成装置100は、燃費改善や燃焼安定性(エンジン5の始動性)の向上を図ることができる。
【0030】
吸気ポート47と燃焼室41との間には、吸気バルブ61の先端が位置している。吸気バルブ61の末端には、ロッカーアーム63を介して、吸気用カムシャフト65に固定されたカム67が当接されている。吸気バルブ61は、吸気用カムシャフト65の回転に伴って、吸気ポート47を燃焼室41に対して開閉する。
【0031】
排気ポート49には、エキゾーストマニホールド31の内部に形成される排気流路69が連通する。排気ポート49は、燃焼室41に臨む排気の上流側に2つの開口が形成される。排気ポート49は、エキゾーストマニホールド31に臨む排気の下流側に1つの開口が形成される。
【0032】
排気ポート49と燃焼室41との間には、排気バルブ71の先端が位置している。排気バルブ71の末端には、ロッカーアーム73を介して、排気用カムシャフト75に固定されたカム77が当接されている。排気バルブ71は、排気用カムシャフト75の回転に伴って、排気ポート49を燃焼室41に対して開閉する。
【0033】
また、シリンダヘッド15には、先端が燃焼室41内に位置するように不図示のインジェクタおよび点火プラグが設けられている。インジェクタは、吸気ポート47を介して燃焼室41に流入した空気に対して燃料を噴射する。点火プラグは、空気と燃料との混合気を所定のタイミングで点火して燃焼させる。かかる燃焼により、ピストン37がシリンダ17内で往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド39を通じてクランクシャフト45の回転運動に変換される。
【0034】
図3は、図2の破線部分の抽出図である。吸気ポート47の吸気の上流側の端部には、吸入口(開口)H1が形成される。また、インテークマニホールド27の吸気の下流側の端部には、排出口(開口)H2が形成される。吸入口H1の開口の大きさは、排出口H2の開口の大きさより大きい。換言すれば、排出口H2の開口の大きさは、吸入口H1の開口の大きさより小さい。
【0035】
本実施形態では、吸入口H1の開口形状は、略矩形状である。また、排出口H2の開口形状は、吸入口H1の開口形状と近似した形状である。したがって、排出口H2の開口形状は、略矩形状である。ただし、吸入口H1および排出口H2の開口形状は、略円形状または略楕円形状であってもよい。
【0036】
吸入口H1の高さ(隔壁53による吸気ポート47の分割方向(図3中、上下方向)における長さ)は、排出口H2の高さよりも大きい。吸入口H1の幅(図3中、手前方向および奥方向における長さ)は、排出口H2の幅よりも大きい。ただし、吸入口H1の幅は、排出口H2の幅と同じであってもよい。つまり、吸入口H1は、少なくとも吸入口H1の高さが排出口H2の高さより大きければよい。
【0037】
ここで、吸入口H1の開口の大きさが排出口H2の開口の大きさより小さいと、吸気ポート47を流通する吸気の有効断面積は、吸気流路51を流通する吸気の有効断面積よりも小さくなる。そうすると、吸気流路51を流通する吸気は、吸気流路51側から吸気ポート47側に向けて流通し難くなる。また、排出口H2の寸法公差により、排出口H2の開口の大きさを、吸入口H1の開口の大きさと等しくできない場合がある。そのため、排出口H2の開口の大きさは、吸入口H1の開口の大きさよりも小さく設定される。また、これにより、吸入口H1と排出口H2との間には、段差Dが形成される。
【0038】
シリンダヘッド15には、位置決め部材Pが配置される。位置決め部材Pは、シリンダヘッド15とインテークマニホールド27との接続面に配置される。位置決め部材Pは、シリンダヘッド15の吸気ポート47(吸入口H1)よりも、シリンダヘッド15が不図示のシリンダヘッドカバーと連結する側(以下、単にカバー側という)に配置される。位置決め部材Pは、吸気流路51(排出口H2)よりもカバー側に配置される。位置決め部材Pは、インテークマニホールド27よりもカバー側(図3中、上側)に配置される。位置決め部材Pは、インテークマニホールド27をシリンダヘッド15に対して位置決めする。位置決め部材Pは、シリンダヘッド15と一体成型されていてもよいし、別体でシリンダヘッド15に固定されてもよい。
【0039】
インテークマニホールド27の外周面は、位置決め部材Pのうち、シリンダヘッド15がシリンダブロック11と連結する側(以下、単にブロック側という)と当接する。インテークマニホールド27は、位置決め部材Pと当接することで、シリンダヘッド15に対する位置決めが行われる。インテークマニホールド27は、位置決め部材Pと当接すると、排出口H2が吸入口H1と対向する。インテークマニホールド27は、位置決め部材Pと当接した状態で、シリンダヘッド15に接続される。これにより、インテークマニホールド27内に形成される吸気流路51は、シリンダヘッド15内に形成される吸気ポート47と連通する。
【0040】
また、インテークマニホールド27が位置決め部材Pと当接することで、吸入口H1と排出口H2との間の段差(ずれ量)Dは、第2流路57側(図3中、下側)よりも第1流路55側(図3中、上側)の方が大きくなる。換言すれば、吸入口H1と排出口H2との間の段差(ずれ量)Dは、第1流路55側(図3中、上側)よりも第2流路57側(図3中、下側)の方が小さくなる。具体的に、本実施形態では、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁は、シリンダヘッド15(吸気ポート47)の第2流路57側の内壁と大凡同一面を形成する。また、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15(吸気ポート47)の第1流路55側の内壁との間には、段差Dが形成される。
【0041】
図4は、比較例における吸気の流れを説明するための図である。図4に示すように、比較例におけるタンブル流生成装置200は、シリンダヘッド15に位置決め部材Pが配置されていない。また、比較例において、吸入口H1と排出口H2との間の段差(ずれ量)Daは、第2流路57側(図4中、下側)よりも第1流路55側(図4中、上側)の方が小さくなっている。具体的に、比較例において、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁は、シリンダヘッド15の第1流路55側の内壁と大凡同一面を形成している。また、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁とシリンダヘッド15の第2流路57側の内壁との間には、段差Daが形成される。
【0042】
図4に示すように、TGV59の開度が最小となり、TGV59によって第1流路55がほとんど閉じられると、吸気流路51を流通する吸気は、第2流路57を通過して燃焼室41に導かれる主流Mを形成する。このとき、主流Mは、段差Daにより一部が剥離され、旋回流Raを形成する。主流Mは、段差Daによりシリンダヘッド15の第2流路57側の内壁から離隔して第2流路57内を流通する。そのため、主流Mは、コアンダ効果が弱まり、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁に沿った流動が弱まる。
【0043】
また、TGV59の開度を最小にしても、TGV59の先端Eとインテークマニホールド27の第1流路55側の内壁との間には、隙間が形成される。これにより、吸気流路51を流通する吸気の一部は、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁に沿って隙間を通過する。インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁に沿って隙間を通過した吸気は、副流Sを形成する。副流Sは、第1流路55内に流入する。
【0044】
ここで、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁が大凡同一面を形成すると、副流Sは、コアンダ効果により流動が維持されたまま、シリンダヘッド15の第1流路55側の内壁に沿って流れる。副流Sは、隔壁53より下流側(吸気ポート47と燃焼室41の接続部近傍)において、主流Mと衝突する。主流Mは、副流Sとの衝突により、燃焼室41側に押し下げられる。これにより、燃焼室41に流入する主流Mは、第1主流M1と第2主流M2に分岐する。第1主流M1は、主流Mの流れに沿って、吸気バルブ61のうち排気バルブ71(図2参照)と近接する側(図4中、右側)を通過して燃焼室41内に流入する。第2主流M2は、副流Sに押下げられ、吸気バルブ61のうち排気バルブ71から離隔する側(図4中、左側)を通過して燃焼室41内に流入する。第1主流M1は、燃焼室41内でタンブル流を生成する。一方、第2主流M2は、燃焼室41内で逆タンブル流を生成する。逆タンブル流は、第1主流M1が生成するタンブル流の回転方向とは逆の回転方向に回転する。したがって、比較例におけるタンブル流生成装置200では、タンブル流を効率的に生成することが困難になる。
【0045】
図5は、本実施形態における吸気の流れを説明するための図である。図5に示すように、本実施形態におけるタンブル流生成装置100は、シリンダヘッド15に位置決め部材Pが配置されている。そのため、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁は、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁と大凡同一面を形成している。また、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁との間には、段差Dが形成される。
【0046】
図5に示すように、TGV59の開度が最小となり、TGV59によって第1流路55がほとんど閉じられると、吸気流路51を流通する吸気は、第2流路57を通過して燃焼室41に導かれる主流Mを形成する。このとき、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁とシリンダヘッド15の第2流路57側の内壁が大凡同一面を形成すると、主流Mは、コアンダ効果により流動が維持されたまま、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁に沿って流れる。
【0047】
比較例で説明した通り、TGV59の開度を最小にしても、TGV59の先端Eとインテークマニホールド27の第1流路55側の内壁との間には、隙間が形成される。これにより、吸気流路51を流通する吸気の一部は、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁に沿って隙間を通過する。インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁に沿って隙間を通過した吸気は、副流Sを形成する。副流Sは、第1流路55内に流入する。
【0048】
副流Sは、段差Dにより一部が剥離され、旋回流Rを形成する。また、副流Sは、段差Dにより一部が剥離され、第1副流S1と第2副流S2に分岐する。第1副流S1は、段差Dによりシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁から離隔して第1流路55内を流通する。そのため、第1副流S1は、コアンダ効果が得られず、シリンダヘッド15の第1流路55側の内壁に沿った流動が弱まる。このように、第1副流S1は、シリンダヘッド15の第1流路55側の内壁に沿った流動が弱まるため、隔壁53より下流側において主流Mと衝突し難くなる。
【0049】
また、TGV59と隔壁53の間には、隙間が形成されている。主流Mの流速は、第2副流S2の流速よりも速い。そのため、第2副流S2は、エジェクター効果により主流Mに吸い込まれる。第2副流S2は、第1流路55内からTGV59と隔壁53の間の隙間に導入される。TGV59と隔壁53の間の隙間に導入された第2副流S2は、主流Mと合流する。これにより、主流Mは、第2流路57内を流通する流量が増大し、主流Mが強化(より強いタンブル流が生成)される。
【0050】
このように、本実施形態では、タンブル流生成装置100は、インテークマニホールド27をシリンダヘッド15に対して位置決めする位置決め部材Pを備えている。そのため、タンブル流生成装置100は、吸入口H1と排出口H2との間の段差(ずれ量)Dを、第2流路57側よりも第1流路55側の方を大きくすることができる。これにより、図5に示すように、第1副流S1は、主流Mによるタンブル流の生成を阻害し難くなる。また、第2副流S2は、主流Mに吸収され、主流Mの流量を増大させる。これにより、本実施形態のタンブル流生成装置100は、タンブル流を効率的に生成することが可能になる。また、タンブル流生成装置100は、タンブル流を効率的に生成することができるため、燃費改善や燃焼安定性(エンジン5の始動性)の向上を図ることができる。
【0051】
(変形例)
図6は、変形例のタンブル流生成装置300の構成を示す概略図である。図6に示すように、変形例のタンブル流生成装置300は、上記実施形態のTGV59と、隔壁53と、位置決め部材Pの代わりに、TGV159と、隔壁153と、位置決め部材Paを備える。上記実施形態のタンブル流生成装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
TGV159は、インテークマニホールド27内において、上記実施形態のTGV59とは逆向きに配置される。つまり、上記実施形態のTGV59は、吸気流路51のカバー側(図6中、上側)の流路を絞っていたのに対し、変形例のTGV159は、吸気流路51のブロック側(図6中、下側)の流路を絞っている。
【0053】
また、隔壁153は、吸気ポート47内において、上記実施形態の隔壁53とは逆向きに配置される。したがって、上記実施形態では、隔壁53は、吸気ポート47のカバー側(図6中、上側)に第1流路55を形成していたのに対し、変形例の隔壁153は、吸気ポート47のブロック側(図6中、下側)に第1流路55を形成している。また、上記実施形態では、隔壁53は、吸気ポート47のブロック側(図6中、下側)に第2流路57を形成していたのに対し、変形例の隔壁153は、吸気ポート47のカバー側(図6中、上側)に第2流路57を形成している。
【0054】
また、位置決め部材Paは、シリンダヘッド15とインテークマニホールド27との接続面に配置される。位置決め部材Paは、シリンダヘッド15とインテークマニホールド27との接続面において、上記実施形態の位置決め部材Pとは逆向きに配置される。具体的に、位置決め部材Paは、シリンダヘッド15の吸気ポート47(吸入口H1)よりもブロック側に配置される。位置決め部材Paは、インテークマニホールド27の吸気流路51(排出口H2)よりもブロック側に配置される。位置決め部材Paは、インテークマニホールド27よりもブロック側(図6中、下側)に配置される。つまり、上記実施形態の位置決め部材Pは、インテークマニホールド27のカバー側(図6中、上側)に配置されていたのに対し、変形例の位置決め部材Paは、インテークマニホールド27のブロック側(図6中、下側)に配置されている。
【0055】
変形例では、インテークマニホールド27の外周面は、位置決め部材Paのカバー側と当接する。インテークマニホールド27は、位置決め部材Paと当接することで、シリンダヘッド15に対する位置決めが行われる。インテークマニホールド27が位置決め部材Paと当接することにより、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁は、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁と大凡同一面を形成している。また、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁との間には、段差(ずれ量)Dが形成される。
【0056】
このように、変形例の位置決め部材Paは、吸入口H1と排出口H2との間の段差(ずれ量)Dを、第2流路57側よりも第1流路55側の方を大きくしている。これにより、変形例のタンブル流生成装置300は、上記実施形態のタンブル流生成装置100と同様の効果を得ることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、インテークマニホールド27は、上記実施形態のインテークマニホールド27の大きさより僅かに大きく形成されてもよい。その場合、位置決め部材Pは、インテークマニホールド27と当接すると、インテークマニホールド27を互いに近接する方向に圧縮させる。これにより、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁は、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁と大凡同一面を形成する。また、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁との間には、段差(ずれ量)Dが形成される。
【0059】
また、インテークマニホールド27は、上記変形例のインテークマニホールド27の大きさより僅かに小さく形成されてもよい。その場合、位置決め部材Paは、インテークマニホールド27と当接すると、インテークマニホールド27を互いに離隔する方向に拡張させる。これにより、インテークマニホールド27の第2流路57側の内壁は、シリンダヘッド15の第2流路57側の内壁と大凡同一面を形成する。また、インテークマニホールド27の第1流路55側の内壁とシリンダヘッド15の第1流路55側の内壁との間には、段差(ずれ量)Dが形成される。
【0060】
上記実施形態では、位置決め部材Pをインテークマニホールド27のカバー側に配置する例について説明した。しかし、これに限定されず、位置決め部材Pは、インテークマニホールド27のブロック側に配置されてもよい。また、位置決め部材Pは、インテークマニホールド27のカバー側およびブロック側に配置されてもよい。
【0061】
上記変形例では、位置決め部材Paをインテークマニホールド27のブロック側に配置する例について説明した。しかし、これに限定されず、位置決め部材Paは、インテークマニホールド27のカバー側に配置されてもよい。また、位置決め部材Paは、インテークマニホールド27のカバー側およびブロック側に配置されてもよい。
【0062】
上記実施形態および変形例では、位置決め部材P、Paをシリンダヘッド15に配置する例について説明した。しかし、これに限定されず、位置決め部材P、Paは、インテークマニホールド27に配置されてもよい。また、位置決め部材P、Paは、シリンダヘッド15およびインテークマニホールド27の両方に配置されてもよい。
【0063】
上記実施形態および変形例では、TGV59、159と隔壁53、153との間に隙間を設ける例について説明した。しかし、これに限定されず、TGV59、159と隔壁53、153との間に隙間を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、タンブル流生成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
15 シリンダヘッド
27 インテークマニホールド
47 吸気ポート
51 吸気流路
53、153 隔壁
55 第1流路
57 第2流路
59、159 TGV(バルブ)
100、300 タンブル流生成装置
H1 吸入口
H2 排出口
P、Pa 位置決め部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6