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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】湯水混合栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/044 20060101AFI20220727BHJP
   F16K 31/64 20060101ALI20220727BHJP
   F16K 31/68 20060101ALN20220727BHJP
   F16K 31/70 20060101ALN20220727BHJP
   E03C 1/044 20060101ALN20220727BHJP
【FI】
F16K11/044 B
F16K31/64
F16K31/68 D
F16K31/70 B
E03C1/044
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018166535
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020037988
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】根岸 功
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善太
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓麻
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特許第2827806(JP,B2)
【文献】特開2017-067191(JP,A)
【文献】特開平06-300155(JP,A)
【文献】特開2007-247785(JP,A)
【文献】特開2000-337535(JP,A)
【文献】特開2002-098243(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104100731(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106051214(CN,A)
【文献】特開平09-269083(JP,A)
【文献】特開平06-201069(JP,A)
【文献】特開昭56-014666(JP,A)
【文献】特開昭64-083979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328042(US,A1)
【文献】特開2019-002537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
E03C 1/00- 1/10
F16K 31/64-31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯口と、給水口と、複数の吐出口と、前記給湯口から給湯された湯と前記給水口から給水された水を混合する混合室と、複数の吐出口の切換えを行う切換室と、前記混合室と切換室を仕切る仕切り壁と、前記仕切り壁に形成され、前記混合室と切換室を連通する連通孔と、を有する樹脂製の筒状のハウジングと、前記ハウジング内に収容された混合栓機構と、を少なくとも備える湯水混合栓であって、
前記混合栓機構は、少なくとも、
温度調整用の回転軸を回転可能に支持する、樹脂製のケーシングと、
前記ケーシングの先端部に形成された、前記給湯口と連通した湯流入口と、
前記ケーシングの湯流入口に設けられた湯弁座と、
前記湯流入口と軸方向に並列して、ハウジングに形成された、水が流入する水流入口と、
前記ハウジングの水流入口に設けられた水弁座と、
湯弁座と水弁座に当接する弁体を有し、湯流入口と水流入口の開度調整を行う、樹脂製の制御弁体と、
湯流入口と水流入口との間に設けられ、湯流入口と水流入口とを仕切ると共に、制御弁体の弁体に接するOリングと、
前記仕切り壁に一端が接し、他端が制御弁体に接して配置された、混合室に配置されたアクチュエータと、
を備えることを特徴とする湯水混合栓。
【請求項2】
前記ケーシングを挿入するハウジング端から水流入口の間において、最小径のハウジング内周面が湯弁座と水流入口の間に形成され、
前記最小径のハウジング内周面に形成された段部に、前記Oリングが配置されていることを特徴とする請求項1記載の湯水混合栓。
【請求項3】
前記ハウジングの内周面と前記ケーシングの外周面間に、前記給湯口と連通し、かつ湯流入口と連通する湯流入路が形成されると共に、
前記ケーシングの先端が、前記湯流入口が形成されたケーシングの外径よりも大径に形成され、
前記Oリングが、ハウジングに設けられた段部とケーシングの先端間に配置されることにより、湯流入口と水流入口が仕切られることを特徴とする請求項2記載の湯水混合栓。
【請求項4】
前記ハウジング、ケーシング、制御弁体は同一の樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の湯水混合栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合栓に関し、特に、樹脂製のハウジングを有する湯水混合栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、湯水混合栓は、湯と水とを混合して、使用者が設定した所定温度の混合湯水を生成するものとして、シャワー、浴槽、洗面台用のサニタリー装備品等において広く用いられている。
【0003】
一般的な湯水混合栓としては、例えば、特許文献1に示すように、サーモカートリッジと、サーモカートリッジを収容するハウジングとを備える湯水混合栓装置が知られている。このサーモカートリッジのケーシング内部には、湯水の混合比を調整して混合湯水の温度を変更する湯水混合機構が設けられている。
また、このサーモカートリッジを収容するハウジングは、樹脂製の内側ハウジングと樹脂製の外側ハウジングの二重のハウジングで構成され、湯側および水側の供給配管からサーモカートリッジの湯水混合機構に到る湯側通路と水側通路の他、湯水混合機構から吐水口に向かう混合湯水通路が設けられている。
【0004】
更に、このサーモカートリッジの外周面(サーモカートリッジが収容される内側ハウジング内周面と間)には、水と混合湯水が混じり合わないように、湯側通路と混合湯水通路の間に第1のOリングが設けられている。また同様に、湯と水が混じり合わないように、湯側通路と水側通路の間に第2のOリングが設けられている。更に、内側ハウジング内部を気密にするため、サーモカートリッジの外周面(サーモカートリッジが収容される内側ハウジング内周面と間)には第3のOリングが設けられている。
【0005】
そして、ハウジングの湯側通路と水側通路から、サーモカートリッジの湯水混合機構に湯、水が混じり合うことなく供給され、前記湯水混合機構によって所定温度の混合された混合湯水が、ハウジングの混合湯水通路を経て吐水口から吐出するように構成されている。
【0006】
上記したように、湯、水、混合湯水が混じらず、しかもサーモカートリッジを収容したハウジング内を気密するには、サーモカートリッジの外周面(サーモカートリッジが収容される内側ハウジング内周面と間)には、少なくとも3つのOリング(第1乃至第3のOリング)を必要とする。
しかも、湯水混合栓を組み立てる際、第1乃至第3のOリングは内側ハウジング内周面とすれ合いながら移動するため、この移動距離が長い(擦れ合う距離の長い)Oリング、即ち、ハウジングの最も奥に位置するOリングほど破損し易いという問題があった。
【0007】
この問題を解決した湯水混合栓装置が、特許文献2において提案されている。この特許文献2記載された湯水混合栓装置にあっては、サーモカートリッジのケーシングに、ハウジングの内面との間の空間を仕切る第1フランジ~第3フランジが設けられ、この第1フランジ~第3フランジの外周面にはOリングが設けられている。
【0008】
この第1フランジの直径は、第2フランジの直径および第3フランジの直径よりも大きく、かつ、第2フランジの直径と第3フランジの直径は同じに形成されている。
一方、前記ハウジングの内面は、第1フランジと対向する内径が第1フランジの直径以上の第1径となり、第2フランジおよび第3フランジと対向する内径が、第1径未満で第2フランジの直径、第3フランジの直径以上の第2径となるように形成されている。
そして、前記ハウジングの内面は、ハウジングにおけるサーモカートリッジ挿入側から、第1径を有する第1内面、第2径を有する第2内面と順に形成されている。
【0009】
このように構成された特許文献2の湯水混合栓装置にあっては、サーモカートリッジをハウジングに収納する際、第2フランジ、第3フランジが小径に形成されているため、ハウジングの第1内面(第1径)に擦れ合うことがなく、Oリングの破損を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第2827806号公報
【文献】特開2017-67191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2の湯水混合栓装置は、前記したように、サーモカートリッジの第2フランジの直径と第3フランジの直径とが同径に形成され、また第2フランジおよび第3フランジと対向するハウジング内径が、第1径未満で第2フランジの直径、第3フランジの直径以上の第2径となるように構成されている。
そのため、サーモカートリッジをハウジングに収納する際、ハウジングの最も奥に配置される第3フランジ上のOリングは、ハウジングの第2内面(第2径)に擦れ合いながら移動することとなり、破損する虞があった。
また、湯、水、混合湯水が混じらず、しかもサーモカートリッジを収容したハウジング内を気密するには、サーモカートリッジの外周面(サーモカートリッジが収容される内側ハウジング内周面と間)には、少なくとも3つのOリングを必要とするため、部品点数を削減し、コストの低減を図るという社会的要請を満たすものではなかった。
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、前記Oリングの損傷を抑制すること、前記Oリング数を減らすことを前提に鋭意研究した。
そして、本発明者らは、ハウジングの材質を樹脂製とし、サーモカートリッジの一部構成をハウジング側に形成するなど、サーモカートリッジの構成とハウジング構成を見直すことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
【0013】
本発明は、上記状況のもとなされたものであり、その目的とするところは、Oリング数を減らすと共に、Oリングの損傷を抑制することができる湯水混合栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明にかかる湯水混合栓は、給湯口と、給水口と、複数の吐出口と、前記給湯口から給湯された湯と前記給水口から給水された水を混合する混合室と、複数の吐出口の切換えを行う切換室と、前記混合室と切換室を仕切る仕切り壁と、前記仕切り壁に形成され、前記混合室と切換室を連通する連通孔と、を有する樹脂製の筒状のハウジングと、前記ハウジング内に収容された混合栓機構と、を少なくとも備える湯水混合栓であって、前記混合栓機構は、少なくとも、温度調整用の回転軸を回転可能に支持する、樹脂製のケーシングと、前記ケーシングの先端部に形成された、前記給湯口と連通した湯流入口と、前記ケーシングの湯流入口に設けられた湯弁座と、前記湯流入口と軸方向に並列して、ハウジングに形成された、水が流入する水流入口と、前記ハウジングの水流入口に設けられた水弁座と、湯弁座と水弁座に当接する弁体を有し、湯流入口と水流入口の開度調整を行う、樹脂製の制御弁体と、湯流入口と水流入口との間に設けられ、湯流入口と水流入口とを仕切ると共に、制御弁体の弁体に接するOリングと、前記仕切り壁に一端が接し、他端が制御弁体に接して配置された、混合室に配置されたアクチュエータと、を備えることを特徴としている。
【0015】
このように、給湯口から給湯された湯と給水口から給水された水を混合する混合室と、前記混合室と切換室を仕切る仕切り壁がハウジングに形成されると共に、この仕切り壁に混合室と切換室を連通する連通孔が形成され、更に前記ハウジングに水流入口の水弁座が設けられている。
そのため、混合室からの混合湯水と水流入口からの水が混じりあうことがなく、従来にようにOリングを設ける必要がない。即ち、本発明にかかる湯水混合栓にあっては、湯流入口と水流入口との間に設けられ、湯流入口と水流入口とを仕切ると共に、制御弁体の弁体に接する一つのOリングを設けることで、湯、水、混合湯水の混じり合うのを阻止することができる。
【0016】
ここで、前記ケーシングを挿入するハウジング端から水流入口の間において、最小径のハウジング内周面が湯弁座と水流入口の間に形成され、前記最小径のハウジング内周面に形成された段部に、前記Oリングが配置されていることが望ましい。
このように、ケーシングを挿入するハウジング端からみて、湯弁座と水流入口の間に形成された最小径のハウジング内周面に形成された段部に、前記Oリングが配置されるため、ケーシングを挿入するハウジング端側からOリングを収容しても、Oリングはハウジングの内周面と擦れあることがなく、Oリングの損傷を抑制することができる。
【0017】
また、前記ハウジングの内周面と前記ケーシングの外周面間に、前記給湯口と連通し、かつ湯流入口と連通する湯流入路が形成されると共に、前記ケーシングの先端が、前記湯流入口が形成されたケーシングの外径よりも大径に形成され、前記Oリングが、ハウジングに設けられた段部とケーシングの先端間に配置されることにより、湯流入口と水流入口が仕切られることが望ましい。
このように構成されているため、ケーシングをハウジング内に収容することで、給湯口と連通し、かつ湯流入口と連通する湯流入路が形成され、また、前記Oリングがハウジングに設けられた段部に押圧され、湯流入口と水流入口が仕切られ、湯、水の混じり合うのを阻止することができる。
【0018】
また、前記ハウジング、ケーシング、制御弁体は同一の樹脂で形成されていることが望ましい。
前記ハウジング、ケーシング、制御弁体は同一の樹脂で形成されている場合には、弁及び弁座の磨耗を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、Oリング数を減らすと共に、Oリングの損傷を抑制することができる湯水混合栓を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明にかかる湯水混合栓の実施形態を示す斜視図である。
図2図2図1に示した実施形態の正面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、図3に示した制御弁体を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図5図5は、図3に示した湯流入口と水流入口部分の要部拡大図である。
図6図6は、本発明にかかる湯水混合栓の組立ての一例を説明するための正面図であって、図2に対応する図である。
図7図7は、図6のA-A断面図である。
図8図8は、本発明にかかる湯水混合栓の組立ての他の例を説明するための正面図であって、図2に対応する図である。
図9図9は、図8のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態にかかる湯水混合栓を図1乃至図7に基づいて説明する。
図1に示すように、湯水混合水栓1は、湯水を混合する混合栓機構2及び吐出切換機構3を収容するハウジング4を備えている。このハウジング4は略円筒状に形成され、前記湯水を混合する混合栓機構2はハウジング4の一端側に、湯水切換機構3はハウジング4の他端側に収容されている。
【0022】
また、このハウジング4には、湯を供給する湯供給管が接続される給湯口5と、水を供給する水供給管が接続される給水口6と、吐出パイプ(図示せず)に対して混合湯水を供給する第1の吐出口7と、シャワーホース等が取り付けられ、シャワーに対して混合湯水を供給する第2の吐出口8とを備えている。
この給湯口5、給水口6は、略円筒状のハウジング4の背面側に設けられ、第1の吐出口7は略円筒状のハウジング4の下面側に設けられ、第2の吐出口8は前記ハウジング4の上面側に設けられている。
【0023】
このハウジング4は樹脂製であり、樹脂としては、例えば、耐熱性を有する、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PSF(ポリサルフォン)樹脂等が用いられ、給湯口5、給水口6、第1の吐出口7、第2の吐出口8を有するハウジング4は成形によって形成される。
【0024】
また、図1乃至図7には図示されていないが、混合栓機構2を操作するための回転軸21の外側に、回転軸21を回転させるための温度調整用のダイヤル(レバー)が設けられている。同様に吐出切換機構3を操作するための回転軸31の外側に、回転軸31を回転させるための切換え用のダイヤル(レバー)が設けられる。
尚、吐出切換機構3は、図3に示すように、回転軸31の回転よって第1の吐出口、第2の吐出口を切換える切換弁32と、ハウジング4の吐出切換機構の収容端を密閉する蓋体33を備えている。吐出切換機構3は一般的に知られている構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、図3乃至図5に基づいて混合栓機構2について説明する。
混合栓機構2は、図3示すように、回転軸21を回転可能に支持するケーシング22を有している。このケーシング22は樹脂製であり、樹脂としては、例えば、耐熱性を有する、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PSF(ポリサルフォン)樹脂等が用いられ、成形によって形成される。
【0026】
このケーシング22は、図3図6図7に示すように、全体形状として有底円筒状に形成され、前記ケーシング22の先端部の筒壁には、給湯口5と連通し、湯がケーシング22の内部に流入する湯流入口Aが形成されている。尚、前記給湯口5と湯流入口Aは、前記ハウジング4の内周面と前記ケーシング22の外周面とによって形成された湯流入路Eによって連通する。
また、図7に示すように、ケーシング22の先端22cの外径D3は、前記湯流入口Aが形成されたケーシング22の外径D4よりも大きく形成され、前記Oリング24はハウジング4に設けられた段部4fとケーシング22の先端22c間に配置される。
【0027】
また、このケーシング22の外周面には、ケーシング22とハウジング4との間の気密性を保つためのOリング23が設けられている。
更に、このケーシング22の外周面には蓋体22aが形成され、この蓋体22aの外周面には螺子部22bが形成され、ハウジング4の螺子部4aと螺合するように構成されている。
したがって、ハウジング4内にケーシング22(混合栓機構2)を収容した状態にあっては、ハウジング4内部は密閉され、湯水の漏出が防止される。
【0028】
このケーシング22の先端部の湯流入口Aと軸方向に並列して、水が流入される水流入口Bが設けられている。この水流入口Bはハウジング4に形成され、Oリング24とケーシング22の先端22cによって、湯流入口Aと水流入口Bが仕切られ、湯と水が混じり合わないようになされている。
尚、前記Oリング24は、後述する制御弁体の弁体25aに接し、弁体25aが移動した際も、湯流入口Aと水流入口Bを仕切し、湯と水が混じり合わないようになされている。
【0029】
また、ケーシング1の湯流入口A、水流入口B内側からハウジング4の切換室D(図3では右側)に向かっては混合室Cが形成されている。
また、ハウジング4には仕切壁4bが設けられ、この仕切壁4bによって、前記混合室Cと、吐出切換機構3が収容される切換室Dとに分けられる。
【0030】
この仕切壁4bには、混合湯水を切換室Dに吐出するための連通孔4cが形成され、湯流入口Aから流入した湯と水流入口Bから流入した水とが、それぞれ混合室Cに流れ、混合室C内で水と湯とが混合された後、前記連通孔4cから切換室Dに混合湯水が供給されるように構成されている。
【0031】
また、図5に示すように、ケーシング22の湯流入口Aの左側の位置に湯弁座22dが形成され、ハウジング4の水流入口Bの右側の位置に水弁座4dが形成されている。
そして、湯弁座22dと水弁座4dとの間には、ハウジング4の軸方向に移動可能な、制御弁体25が組み込まれている。
即ち、湯弁座22dと水弁座4dに当接する、湯弁25fと水弁25g(弁体25a)を有する制御弁体25によって、湯流入口Aと水流入口Bの開度調整が行われ、混合室Cへの湯と水の供給量が調整される。
【0032】
また、混合栓機構2は、前記回転軸21と螺合し、前記回転軸21の回転動作に応じて進退し、制御弁体25の軸方向の位置を調整する調整ネジ軸26を備えている。
この調整ネジ軸26は、ケーシング22に回動することなく、ケーシング22の軸線方向に移動可能に構成されている。また、調整ネジ軸26には螺子部26aが形成され、回転軸21の螺子部21aと螺合している。
その結果、温調用ダイヤルを回転させることにより、回転軸21の螺子部21aが回転し、調整ネジ軸26を軸線方向に摺動させ、付勢体27を介して、制御弁体25を移動させる。
【0033】
即ち、ユーザは、温調用ダイヤルを操作することにより、所望する温度の混合水が吐出するように、制御弁体2の位置を設定し、また変更できる。
尚、図3中、符号29は前記調整ネジ軸26の戻しばねであり、一端が固定部材29ani係止され、他端は前記調整ネジ軸26に係止される。この戻しばね29により、調整ネジ軸26は、がたつきことなく、軸線方向に移動させることができる。
【0034】
前記制御弁体25は、図4に示すように、円筒状に形成された弁体25aと、前記弁体25aの内部に設けられた有底円筒状に形成された付勢体収容部25bと、前記弁体25aと付勢体収容部25bを連結するために、軸線方向に延設されたリブ25cと、付勢体収容部26bの底部25dから外側に向かって軸線方向に延設された軸部25eが設けられている。この軸部25eは、図3に示すように、ハウジング4の仕切壁4bに形成された軸案内孔4e内に摺動可能に挿入され、制御弁体25の移動をガイドするように構成されている。
【0035】
また、底部25dには、付勢体収容部25bの内部に進入した湯を混合室C内に導く連通孔25hが形成されている。また、弁体25aの内周面と付勢体収容部25bの外周面との間(リブ25c間)は、湯を混合室C内に導く流通路25iが形成されている。
尚、この制御弁体25は、耐熱性を有する、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PSF(ポリサルフォン)樹脂等により成形によって形成される。
【0036】
また、弁体25aは、その筒壁の一端縁(図4(b)の上端縁)に湯弁25fが形成され、他端縁(図4の下端縁)に水弁25gが形成されている。
前記制御弁体25の湯弁25fがケーシング22の湯弁座22dに当接することによって、湯の供給が遮断され、また、前記制御弁体の水弁25gがハウジング4の水弁座4dに、当接することによって、水の供給が遮断される。
このように、制御弁体25の湯弁25fがケーシング22の湯弁座22dに当接し、また制御弁体の水弁25gがハウジング4の水弁座4dに当接するが、制御弁体25、ケーシング22、ハウジング4は樹脂で形成されているため、弁及び弁座の磨耗を抑制できる。特に、制御弁体25、ケーシング22、ハウジング4が同一の樹脂で形成されていることが望ましい。
【0037】
また、図3図5に示すように、この制御弁体25は、湯流入口Aと水流入口Bとの間に設けられた、一つのOリング24に接し、このOリング24により支持されている。
即ち、この弁体25aの外周面は、一つのOリング24に接し支持され、湯弁25fと水弁25gとの間を気密になすと共に、弁体25aが軸線方向に摺動可能に構成されている。そして、弁体25aが軸線方向に摺動することにより、前記したように、湯弁25fと湯弁座22dの開度により湯の量が調整され、水弁25gと水弁座4dの開度により湯の量が調整される。
【0038】
また、図3図5に示すように、このOリング24は、ケーシング22の先端22cによってハウジング4に設けられた段部4fに圧接することにより、湯流入口Aと水流入口Bを分け、湯流入口Aと水流入口Bの間の湯、水の漏出を防止している。
ここで、前記ケーシング22を挿入するハウジング端から水流入口Bとの間のハウジング内周面において、湯流入口Aと水流入口Bとの間に、最小径のハウジング内周面が形成されている。そして、この最小径のハウジング内周面に段部4fが形成されている。
即ち、この段部4fは、ケーシング22を挿入するハウジング4端から水流入口Bの間で、最小径のハウジング4内周面に形成される。そのため、このOリング24は、ハウジング4に設けられた段部4fに配置する際、ハウジング4の内周面に擦れあうことがなく、このOリング24の損傷を防止することができる。
【0039】
このOリング10の材質としては、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、六フッ化プロピレン‐フッ化ビニリデン共重合体(FKM),あるいはブチルゴムが用いられる。
この六フッ化プロピレン‐フッ化ビニリデン共重合体(FKM)は、耐熱性、反発弾性が小さく衝撃吸収性に優れているという性質を備え、ブチルゴムも、六フッ化プロピレン‐フッ化ビニリデン共重合体(FKM)と同様に、耐熱性、反発弾性は小さく衝撃吸収性に優れている性質を備えているため、好ましい。
【0040】
また、制御弁体25の付勢体収容部25bの内部には付勢体27が収容され、その付勢体27の一端部が付勢体収容部25bの底部25dの内面に接して配置されている。
これにより付勢体27の反発力を受けて、制御弁体25を水弁座4d側に摺動させることができる。
尚、付勢体収容部25bの底部25dの外面には、前記アクチュエータ28の一端部が接して配置されている。これによりアクチュエータ28の反発力を受けて、制御弁体25を湯弁座22d側に摺動させることができる。
【0041】
また、前記付勢体27は、ばね定数が一定の材質の素材により形成されている。この付勢体27としては、例えば、ステンレスの製のコイルスプリングを挙げることができるが、具体的な構成について特に限定されない。
【0042】
また、アクチュエータ28は、温度変化に応じて伸縮作動をするものである。このアクチュエータ28としては、例えば、温度に応じてばね定数が変化する材質の素材により形成された形状記憶合金製ばね(SMA(Shape memory alloy)ばね)やワックスエレメントを挙げることができるが、具体的な構成について特に限定されない。
【0043】
このアクチュエータ28は、図3に示すように、ハウジング4の内部に形成された仕切り壁4bと制御弁体25の底部の外面とに接し、支持される。
そして、制御弁体25は、付勢体26およびアクチュエータ28から受ける荷重のバランスにより、湯弁25fと湯弁座22dとの間隔と、水弁25gと水弁座4dとの間隔とを調整する。この構成により、湯水混合栓1は、湯流入口Aから流入する湯と、水流入口Bから流入する水との混合比が調節される。
【0044】
次に、図6図7に基づいて、湯水混合栓の組立ての一例について説明する。
ハウジング4の混合室C内にアクチュエータ28を収容し、一端が仕切り壁4bに接するように配置する。
続いて、予め、弁体25の外周面にOリング24が装着されまた付勢体27が付勢体収容部25bに収容された制御弁体25aを、ハウジング4の混合室C内に収容する。
【0045】
このとき、制御弁体25の軸部25eを仕切り壁4bの軸案内孔4e内に挿入すると共に、制御弁体25の底部25dの外面にアクチュエータ28の他端が接するように配置される。
また、Oリング24の外径D1は、段部4fを除く、ハウジング(段部4fを除く)の内径D2よりも小さく形成されているため、制御弁体25の収容の際、Oリング24はハウジング4の内周面に擦れ合うことなく移動し、段部4fに係止される。
尚、ケーシングの先端22cの外径D3も、ハウジング(段部4fを除く)の内径D2よりも小さく形成されているため、ケーシング22の収容の際、ハウジング4の内周面に擦れ合うことなく移動し、Oリング24を押圧することができる。
【0046】
そして、調整ネジ軸26、回転軸21等が組み込まれたケーシング22を、ハウジング21内部に収容する。
このとき、ケーシング22の先端22cは、Oリング24と接し、湯流入口Aと、水流入口Bとを仕切り、湯と水が混じり合わないようになされる。
また、ケーシング22の外径D4が、ハウジング4の内径D2よりも小さく形成されているため、ケーシング22がハウジング4内に収容されることにより、ハウジング4とケーシング22との間に湯流入路Eが形成される。
更に、ケーシング22の外周面に設けられたOリング23によって、ハウジング4とケーシング22との間が気密になされ、湯、水の漏れを防止される。
尚、ケーシング22は、蓋体22aがハウジング4に対して螺合することによって、ハウジング4に固定され、抜けが防止される。
【0047】
次に、図8図9に基づいて、湯水混合栓の組立ての他の例について説明する。
この湯水混合栓の組立て例は、予め、調整ネジ軸26、回転軸21、付勢体27、制御弁体25、アクチュエータ28、Oリング24等が組み込まれたケーシング22を用意する。
そして、ハウジング4の混合室C内に前記ケーシング22を収容し、制御弁体25の軸部25eを仕切り壁4bの軸案内孔4e内に挿入すると共に、制御弁体25の底部25dの外面2にアクチュエータ28の他端が接するように配置する。
【0048】
前記制御弁体25の収容する際、Oリング24はハウジング4の内周面に擦れ合うことなく移動し、段部4fに係止される。これにより、ケーシング22の先端22cは、Oリング24と接し、湯流入口Aと、水流入口Bとを仕切り、湯と水が混じり合わないようになされる。
また、ケーシング22がハウジング4内に収容されることにより、湯流入路Eが形成される。更に、ケーシング22の外周面に設けられたOリング23によって、ハウジング4とケーシング22との間が気密になされ、湯、水の漏れを防止される。
尚、ケーシング22は、蓋体22aがハウジング4に対して螺合することによって、ハウジング4に固定され、抜けが防止される。
【0049】
このように組み立てられた湯水混合栓にあっては、温度調節ハンドル(図示せず)により付勢体27の付勢量を調節することにより出湯温度を設定した後は、従来の湯水混合栓と同様に、アクチュエータ28と付勢体27によって、制御弁体による湯流入口、水流入口の開度調整が行われ、出湯温度が調節される。
【0050】
以上述べたように、本発明にかかる湯水混合水栓は、混合室からの混合湯水と水流入口からの水が混じりを防止するOリングを設ける必要がなく、湯と水の混じりを防止するOリングを収容する際、Oリングはハウジングの内周面と擦れあることがなく、Oリングの損傷を抑制することができる。
また、ケーシングをハウジング内に収容することで、給湯口と連通し、かつ湯流入口と連通する湯流入路が形成され、また前記Oリングがハウジングに設けられた段部に押圧され、湯流入口と水流入口が仕切られ、湯、水の混じり合うのを阻止することができる。
更に、ハウジング、ケーシング、制御弁体は同一の樹脂で形成されている場合には、弁及び弁座の磨耗を抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
1 湯水混合水栓
2 混合栓機構
3 吐出切換機構
4 ハウジング
4a 螺子部
4b 仕切り壁
4c 連通口
4d 水弁座
4e 軸案内孔
4f 段部
5 給湯口
6 給水口
7 第1の吐出口
8 第2の吐出口
21 回転軸
22 ケーシング
22c ケーシング先端
22d 湯弁座
23 Oリング
24 Oリング
25 制御弁体
25a 弁体
25f 湯弁
25g 水弁
26 調整ネジ軸
27 付勢体
28 アクチュエータ
A 湯流入口
B 水流入口
C 混合室
D 切換室
E 湯流入路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9