IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジン 図1
  • 特許-エンジン 図2
  • 特許-エンジン 図3
  • 特許-エンジン 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
F01M13/00 E
F01M13/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018173348
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020045788
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 猛
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016222117(DE,A1)
【文献】特開2018-115584(JP,A)
【文献】特開2006-046244(JP,A)
【文献】特開2009-191790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられたフィルタと、
クランク室と吸気通路とを連通する第1ブローバイ通路と、
前記第1ブローバイ通路に設けられ、前記クランク室の圧力と、前記排気通路のうち、前記フィルタより上流の圧力との差圧に応じて開弁する第1開閉弁と、
を備えるエンジン。
【請求項2】
前記第1開閉弁は、前記差圧により移動する弁体を有する請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記差圧に応じて前記第1開閉弁を閉弁させる第1アクチュエータを備える請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記クランク室と、前記吸気通路における前記第1ブローバイ通路との接続部位よりも上流の部位とを連通する第2ブローバイ通路と、
前記第2ブローバイ通路に設けられ、前記差圧に応じて開弁する第2開閉弁と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第2開閉弁は、前記差圧により移動する弁体を有する請求項4に記載のエンジン。
【請求項6】
前記差圧に応じて前記第2開閉弁を閉弁させる第2アクチュエータを備える請求項4に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、ピストンとシリンダの隙間からクランクケースに漏出するブローバイガスが生じることがある。そこで、特許文献1に記載のように、クランクケースと吸気通路を連通するブローバイ通路が設けられたエンジンが開発された。ブローバイガスは、ブローバイ通路を介してクランクケースから吸気通路に還流する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-096150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気通路にはフィルタが設けられる。フィルタの詰まり具合によっては、排気ガスが排気通路に流出し難く、燃焼室の圧力が下がり難くなる。その結果、ブローバイガスが増加してしまう。そのため、ブローバイガスの増加を抑制する技術の開発が希求される。
【0005】
そこで、本発明は、ブローバイガスの増加を抑制することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によるエンジンは、排気通路に設けられたフィルタと、クランク室と吸気通路とを連通する第1ブローバイ通路と、第1ブローバイ通路に設けられ、クランク室の圧力と、排気通路のうち、フィルタより上流の圧力との差圧に応じて開弁する第1開閉弁と、を備える。
【0007】
第1開閉弁は、差圧により移動する弁体を有してもよい。
【0008】
差圧に応じて第1開閉弁を閉弁させる第1アクチュエータを備えてもよい。
【0009】
クランク室と、吸気通路における第1ブローバイ通路との接続部位よりも上流の部位とを連通する第2ブローバイ通路と、第2ブローバイ通路に設けられ、差圧に応じて開弁する第2開閉弁と、を備えてもよい。
【0010】
第2開閉弁は、差圧により移動する弁体を有してもよい。
【0011】
差圧に応じて第2開閉弁を閉弁させる第2アクチュエータを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブローバイガスの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】エンジンの構成を示す概略図である。
図2】第1開閉弁の開弁を説明するための図である。
図3】第2開閉弁の開弁を説明するための図である。
図4】変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、エンジン1の構成を示す概略図である。図1に示すように、エンジン1は、複数のシリンダ2が対向して配される水平対向エンジンである。ただし、エンジン1は、水平対向エンジンに限らない。
【0016】
シリンダ2内には、ピストン3が配される。ピストン3には、コネクティングロッド4の一端が連結される。コネクティングロッド4の他端は、クランクシャフト5に連結される。クランクシャフト5は、クランク室6内の不図示の軸受に回転自在に軸支される。
【0017】
シリンダ2のうち、クランクシャフト5と反対側の端部には、シリンダヘッド7が設けられる。シリンダヘッド7には、吸気ポート7aおよび排気ポート7bが形成される。吸気ポート7aおよび排気ポート7bは、シリンダヘッド7を、シリンダヘッド7の内側(燃焼室8側)から外側まで貫通する。
【0018】
吸気ポート7aには、インテークマニホールドを含んで構成される吸気通路9が連通する。吸気通路9には、上流側から順に、エアクリーナ10、スロットルバルブ11が設けられる。
【0019】
排気ポート7bには、エキゾーストマニホールドを含んで構成される排気通路12が連通する。排気通路12には、上流から順に、フィルタ13、マフラ14が設けられる。フィルタ13は、例えば、パティキュレートフィルタで構成され、排気ガス中の煤やアッシュを捕集する。
【0020】
第1ブローバイ通路20は、クランク室6と、吸気通路9とを連通する。第1ブローバイ通路20は、吸気通路9のうち、スロットルバルブ11の下流側に接続される。第1ブローバイ通路20には、上流側から順に、第1開閉弁30、PCV40(Positive Crankcase Ventilation)が設けられる。PCV40は、第1ブローバイ通路20側の圧力と、吸気通路9側の圧力との差圧に応じて開閉する。
【0021】
第1開閉弁30は、ケーシング31、弁体32、バネ33を有する。弁体32は、例えば、ダイヤフラムで構成される。ケーシング31の内部は、弁体32によって第1室34および第2室35に仕切られる。バネ33は、第1室34に配される。バネ33は、弁体32を第2室35側に押圧する。
【0022】
第1室34は、第1ブローバイ通路20の一部を構成する。第1室34には、第1ブローバイ通路20のうち、下流側を構成する配管21の一端が突出する。図1に示す例では、配管21の一端は、弁体32によって閉じられている。
【0023】
第2室35には、連通路50が連通する。連通路50は、排気通路12のうち、フィルタ13よりも上流に接続される。ここで、排気通路12に触媒が設けられる場合、連通路50は、排気通路12のうち、触媒よりも上流に接続されてもよいし、触媒よりも下流に接続されてもよい。
【0024】
第2ブローバイ通路60は、クランク室6と、吸気通路9とを連通する。第2ブローバイ通路60は、吸気通路9のうち、スロットルバルブ11の上流側に接続される。すなわち、第2ブローバイ通路60は、第1ブローバイ通路20の吸気通路9との接続部位よりも、吸気通路9の上流側に接続される。第2ブローバイ通路60には、第2開閉弁70が設けられる。
【0025】
第2開閉弁70は、第1開閉弁30と同様、ケーシング71、弁体72、バネ73を有する。弁体72は、例えば、ダイヤフラムで構成される。ケーシング71の内部は、弁体72によって第1室74および第2室75に仕切られる。バネ73は、第1室74に配される。バネ73は、弁体72を第2室75側に押圧する。バネ73の押圧力(弾性係数)は、第1開閉弁30のバネ33の押圧力よりも小さい。
【0026】
第1室74は、第2ブローバイ通路60の一部を構成する。第1室74には、第2ブローバイ通路60のうち、下流側を構成する配管61の一端が突出する。図1に示す例では、配管61の一端は、弁体72によって閉じられている。
【0027】
第2室75には、連通路50が連通する。連通路50は、上記の第1開閉弁30の第2室35側と、第2開閉弁70の第2室75側とに分岐する。2つの第2室35、75の圧力は、それぞれ、排気通路12のうち、フィルタ13よりも上流の排気ガスの圧力(以下、背圧という)となっている。
【0028】
ところで、フィルタ13が煤やアッシュによって詰まると、背圧が上昇する。背圧が上昇すると、排気ガスが排気通路12に流出し難く、燃焼室8の圧力が下がり難くなる。その結果、ブローバイガスが増加してしまう。そこで、エンジン1には、第1開閉弁30、第2開閉弁70が設けられる。
【0029】
図1に示す状態では、第1開閉弁30、第2開閉弁70は、いずれも閉弁している。そのため、クランク室6内に流出したブローバイガスは、第1ブローバイ通路20、第2ブローバイ通路60から吸気通路9に還流することなく、クランク室6内に留まる。その結果、クランク室6の圧力が上昇する。
【0030】
クランク室6の圧力が上昇すると、クランク室6の圧力と燃焼室8の圧力との差圧が小さくなり、燃焼室8からクランク室6内に流出するブローバイガスが減少する。
【0031】
そして、クランク室6の圧力が上昇して、背圧に近づく。弁体32に作用する、第1室34側の圧力(すなわち、クランク室6の圧力)による力と、バネ33の押圧力との和が、第2室35の背圧による力を超えると、弁体32が移動して配管21の一端から離隔する。
【0032】
図2は、第1開閉弁30の開弁を説明するための図である。図2に示すように、弁体32が配管21の一端から離隔して第1開閉弁30が開弁すると、クランク室6内のブローバイガスは、第1ブローバイ通路20を通って吸気通路9に還流する。
【0033】
クランク室6内の圧力が減少し、弁体32に作用する、第1室34側の圧力による力と、バネ33の押圧力との和が、第2室35の背圧による力未満となると、弁体32が配管21の一端に当接して、第1開閉弁30が閉弁する(図1参照)。
【0034】
このように、第1開閉弁30は、クランク室6の圧力と、第2室35の圧力との差圧に応じて開弁する。具体的に、第1開閉弁30は、クランク室6の圧力から第2室35の圧力を引いた差圧が第1閾値を超えると開弁する。ここで、第1閾値は、バネ33の押圧力によって定まる。こうして、クランク室6の圧力は、第1開閉弁30によって調圧される。そのため、上記のように、クランク室6の圧力と燃焼室8の圧力との差圧が小さくなり、フィルタ13がない構成と大凡同等にまで差圧が抑制される。その結果、燃焼室8からクランク室6内に流出するブローバイガスが減少する。ブローバイガスの減少に伴い、フィルタ13にアッシュが堆積し難くなる。そのため、フィルタ13を小型化するなど、コストを削減することができる。また、フィルタ13の交換周期が長くなり、ユーザの負担を抑制することができる。
【0035】
上記のように、第2開閉弁70のバネ73は、第1開閉弁30のバネ33よりも押圧力が小さい。そのため、図2では、第1開閉弁30が開弁しても、第2開閉弁70は、開弁しない状態となっている。
【0036】
クランク室6内の圧力が上昇し、第1ブローバイ通路20だけでは、ブローバイガスの還流量が不足する場合がある。この場合、第1ブローバイ通路20の圧力損失分だけ、一時的にクランク室6の圧力が高まる。このとき、第2開閉弁70が作動する。
【0037】
図3は、第2開閉弁70の開弁を説明するための図である。クランク室6の圧力が上昇し、弁体72に作用する、第1室74側の圧力による力と、バネ73の押圧力との和が、第2室75の背圧による力を超えると、図3に示すように、弁体72が移動して配管61の一端から離隔する。こうして、第2開閉弁70が開弁する。クランク室6内のブローバイガスは、第1ブローバイ通路20および第2ブローバイ通路60を通って吸気通路9に還流する。
【0038】
このように、第2開閉弁70は、クランク室6の圧力と、第2室75の圧力との差圧に応じて開弁する。具体的に、第2開閉弁70は、クランク室6の圧力から第2室75の圧力を引いた差圧が第2閾値を超えると開弁する。ここで、第2閾値は、バネ73の押圧力によって定まり、第1閾値よりも大きい。こうして、クランク室6の圧力は、第1開閉弁30および第2開閉弁70によって調圧される。第2ブローバイ通路60および第2開閉弁70を設けることで、ブローバイガスの流量が多い場合にも対応可能となる。
【0039】
第1開閉弁30、第2開閉弁70は、第2室35、75の圧力からクランク室6の圧力を引いた差圧に応じて機械的に開閉するものである。そのため、構造を簡略化することが可能となる。
【0040】
図4は、変形例を説明するための図である。図4に示すように、変形例のエンジン1aには、上述した機械式の第1開閉弁30、第2開閉弁70の代わりに、電動式の第1開閉弁130、第2開閉弁170が設けられている。第1開閉弁130は、第1ブローバイ通路20に設けられ、第1アクチュエータ132によって作動し、第1ブローバイ通路20を開閉する。第2開閉弁170は、第2ブローバイ通路60に設けられ、第2アクチュエータ172によって作動し、第2ブローバイ通路60を開閉する。
【0041】
クランク室6には、圧力センサSaが設けられる。圧力センサSaは、クランク室6の圧力を示す信号をECU100に出力する。排気通路12のうち、フィルタ13の上流には、圧力センサSbが設けられる。圧力センサSbは、背圧を示す信号をECU100に出力する。
【0042】
ECU100は、圧力センサSa、Sbからの信号に基づき、クランク室6の圧力から背圧を引いた差圧を導出する。ECU100は、導出された差圧が第1閾値を超えると、第1アクチュエータ132を制御して第1開閉弁130を開弁させる。ECU100は、導出された差圧が第1閾値以下であると、第1アクチュエータ132を制御して第1開閉弁130を閉弁させる。このように、第1アクチュエータ132は、導出された差圧に応じて第1開閉弁130を開閉する。
【0043】
ECU100は、導出された差圧が第2閾値を超えると、第2アクチュエータ172を制御して第2開閉弁170を開弁させる。ECU100は、導出された差圧が第2閾値以下であると、第2アクチュエータ172を制御して第2開閉弁170を閉弁させる。このように、第2アクチュエータ172は、導出された差圧に応じて第2開閉弁170を開閉する。
【0044】
このように、電動式の第1開閉弁130、第2開閉弁170を用いる場合、例えば、運転条件などに応じ、第1閾値や第2閾値を容易に変更できる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、上述した実施形態および変形例では、第2ブローバイ通路60、第2開閉弁70、170が設けられる場合について説明した。しかし、第2ブローバイ通路60、第2開閉弁70、170は必須の構成ではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、エンジンに利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1、1a エンジン
6 クランク室
9 吸気通路
12 排気通路
13 フィルタ
20 第1ブローバイ通路
30、130 第1開閉弁
32 弁体
60 第2ブローバイ通路
70、170 第2開閉弁
72 弁体
132 第1アクチュエータ
172 第2アクチュエータ
図1
図2
図3
図4