(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】溶解保持炉
(51)【国際特許分類】
F27B 3/12 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
F27B3/12
(21)【出願番号】P 2018182156
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000141808
【氏名又は名称】株式会社宮本工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】酒向 茂
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁嗣
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-223463(JP,A)
【文献】特開2012-037157(JP,A)
【文献】特開平09-273736(JP,A)
【文献】特開2015-227733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00- 3/28
F27D 3/10
F27D 5/00
F27D 13/00
C22B 1/00-61/00
B22D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された金属材料(2)を第1加熱部(24、25)により溶解して溶湯(3)とする溶解室(4)と、
前記溶解室に連通し、前記溶解室から流入した前記溶湯を第2加熱部(27)によって所定温度に調整し保持する保持室(5)と、
前記溶解室の一端部に上方へ延びるように設けられ、上端部に前記金属材料を投入するための開口部(7)を有する投入通路(6)と、
前記溶解室の内底部における前記投入通路の下方部分に設けられ、前記金属材料を積み上げる溶解棚(21)と、
前記溶解室の上壁部の端部に、前記投入通路の下端部に臨むように設けられた角部(23)と
、
前記溶解室の内底部における前記溶解棚に続く部分に設けられた溶湯流路部(22)と、
を備え、
前記溶解棚
と前記溶湯流路部との間に形成された段差の上端部と前記溶解室の上壁部の角部とを結ぶ線と、水平線とがなす角度をθとしたときに、前記角度θが50度以下となるように構成された溶解保持炉。
【請求項2】
前記角度θが40度以下となるように構成された請求項1記載の溶解保持炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造機へ溶湯を供給するために、金属材料を溶解し、溶湯として保持する溶解保持炉に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解保持炉は、投入された金属材料を溶解バーナにより溶解して溶湯とする溶解室と、当該溶解室に連通し、溶解室から流入した溶湯を保持バーナによって所定温度に保温保持する保持室とを備えている。溶解室の上壁部の一端部には、投入通路が上方へ延びるように設けられており、投入通路の上端部の開口部から金属材料を投入するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投入通路内に金属材料を投入し、金属材料の溶解を実行していると、投入通路から排気される排気ガスの温度がランダムに急激に高くなることがあった。このため、排気ガスの平均温度が高くなり、溶解バーナの燃料消費量が多くなるという問題があった。
本発明の目的は、排気ガスの温度を低下させると共に、溶解バーナの燃料消費量を低下させることができる溶解保持炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、投入された金属材料2を第1加熱部24、25により溶解して溶湯3とする溶解室4と、前記溶解室4に連通し、前記溶解室4から流入した前記溶湯3を第2加熱部27によって所定温度に調整し保持する保持室5と、前記溶解室4の一端部に上方へ延びるように設けられ、上端部に前記金属材料2を投入するための開口部7を有する投入通路6と、前記溶解室4の内底部における前記投入通路6の下方部分に設けられ、前記金属材料2を積み上げる溶解棚21と、前記溶解室4の上壁部の端部に、前記投入通路6の下端部に臨むように設けられた角部23と、前記溶解室4の内底部における前記溶解棚21に続く部分に設けられた溶湯流路部22と、を備え、前記溶解棚4の先端部と前記溶解室4の上壁部の角部23とを結ぶ線と、水平線とがなす角度をθとしたときに、前記角度θが50度以下となるように構成された溶解保持炉である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態を示す溶解保持炉の全体概略構成を示す縦断面図
【
図4】溶解バーナと材料高さセンサと溶解室の部分縦断面図
【
図5】溶解室を改善する前の構成において、金属材料が崩れ落ちる状態を説明する図
【
図6】溶解室を改善した後の構成において、金属材料が崩れ落ちない状態を説明する図
【
図7】排気ガスの温度の変化と燃料ガスの流量の変化を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1ないし
図8を参照して説明する。本実施形態の溶解保持炉1は、例えば自動車または電気自動車用のインバータ装置の筐体例えば30cm×30cm程度の大きさのアルミダイカスト製品を鋳造する鋳造機に溶湯を供給するために用いるものである。
【0008】
溶解保持炉1は、
図1に示すように、投入された金属材料2を溶解して溶湯3とする溶解室4と、溶解室4に連通し、溶解された溶湯3を所定温度に保温・保持する保持室5とにより構成されている。上記金属材料2としては、アルミダイカスト製品の製造に用いられる例えばアルミニウム若しくはアルミニウム合金等を用いる。尚、金属材料2として、例えば亜鉛やマグネシウム等を用いることができる。また、溶解室4及び保持室5は、例えば耐熱性セラミックと金属材と断熱材とを用いて形成されている。
【0009】
溶解室4の内面部は、例えば耐熱性セラミックで構成されている。溶解室4の上壁部の一端部である
図1中の右端部には、例えば角筒状の投入通路6が上方へ延びるように設けられており、投入通路6の上端部の開口部7から金属材料2が投入されするように構成されている。金属材料2の投入は、投入装置8により実行される。投入装置8は、新材供給部9と、リターン材供給部10とを備えている。新材供給部9は、金属材料2として新材例えばアルミニウムのインゴット11を投入する装置である。リターン材供給部10は、金属材料2としてリターン材例えば鋳造物のうちの製品以外の余剰部分(例えばライナー等)12を投入する装置である。新材供給部9及びリターン材供給部10は、溶解保持炉の制御装置13によって駆動制御される。
【0010】
溶解室4の内底部における投入通路6の下方部分には、溶解棚21が配設されている(
図2参照)。溶解棚21の上面は、例えば右から左へ向けて若干低くなるように、水平から例えば3度の傾斜角で傾斜している。この傾斜角は、3度に限られるものではなく、0度を超える角度を適宜設定することができる。
【0011】
溶解室4の内底部における溶解棚21に続く部分は、溶湯流路部22となっており、溶湯流路部22の上面は、例えば右から左へ向けて若干低くなるように、水平から例えば2度の傾斜角で傾斜している。この傾斜角は、2度に限られるものではなく、0度を超える角度を適宜設定することができる。溶解棚21と溶湯流路部22との間には、若干の高さの段差が形成されている。
【0012】
溶解室4の上壁部の右端部には、投入通路6の下端部に臨むように、角部23が形成されている(
図2参照)。溶解室4の上壁部における角部23に近い部分に、溶解バーナ24、25が横方向(即ち、
図1の紙面に直交する方向)に並んで配設されている(
図3参照)。溶解バーナ24、25は、第1加熱部を構成するものである。溶解バーナ24、25は、例えば都市ガスを燃料とする直火式のバーナであり、傾斜状に配置されており、噴出する炎が溶解棚21上に積載された金属材料2に当たるようになっている。この場合、溶解バーナ24、25は、噴出する炎の先端が溶解棚21の右端部の隅部に向かうように設置されている(
図2参照)。2個の溶解バーナ24、25は、溶解保持炉の制御装置13によって各別に駆動制御される。尚、溶解室4の上壁部における溶解バーナ24、25の近傍には、温度センサ45が配設されている。温度センサ45の検出信号は、制御装置13に与えられる。
【0013】
上記構成においては、金属材料2は、投入通路6内に投入され、溶解棚21上に積載されて積み上げられた状態で、溶解バーナ24、25により加熱されることにより、溶解されて溶湯3となり、溶湯流路部22上に流れていく。
【0014】
また、溶解室4の上壁部における溶湯流路部22に対向する部分には、酸化物分離バーナ(即ち、ドロスバーナ)26が傾斜状に配設されている。酸化物分離バーナ26は、例えば都市ガスを燃料とする直火式のバーナであり、噴出する炎が溶湯流路部22上を流れる溶湯3に当たることにより、溶湯3が凝固しないように加熱保持すると共に、溶湯3(例えばアルミニウム)と酸化物が一体となった泥状物(即ち、ドロス)を加熱して酸化物とアルミニウムを分離する機能を有する。尚、上記泥状物は、溶湯流路部22の傾斜角が例えば5度以下になると、溶湯流路部22上で停止し、この停止した状態で酸化物分離バーナ26により加熱されることが好ましいことから、溶湯流路部22の傾斜角は、5度以下で、且つ、溶解棚21の傾斜角以下となるように構成されている。本実施形態の場合、溶湯流路部22の傾斜角は例えば2度に設定されている。
【0015】
そして、酸化物分離バーナ26は、溶解保持炉の制御装置13によって駆動制御される。この構成の場合、溶解室4の上壁部の左端部、即ち、溶湯3の下流側には、温度センサ40が配設されている。制御装置13は、上記温度センサ40により検出された温度信号に基づいて、酸化物分離バーナ26の加熱出力を例えばオンオフ制御することにより、溶湯3の温度が溶解温度以上となるように制御している。
【0016】
溶解室4で溶解された溶湯3は、溶解室4に隣接して配設された保持室5内に流入して保持(即ち、貯留)される。保持室5の内面部は、例えば耐熱性セラミックで構成されている。保持室5の上壁部には、保持バーナ27が例えば上下方向に延びるように配設されている。保持バーナ27は、第2加熱部を構成するものである。保持バーナ27は、例えば都市ガスを燃料とする直火式のバーナであり、噴出する炎が保持室5内の溶湯3に当たることにより、溶湯3が設定温度に保温されるように構成されている。保持バーナ27は、溶解保持炉の制御装置13によって駆動制御される。保持室5には、溶湯3の温度を検出する溶湯温度センサ28が配設されており、溶湯温度センサ28により検出された温度検出信号は制御装置13に与えられる。制御装置13は、溶湯温度センサ28からの温度検出信号に基づいて保持バーナ27を駆動制御し、溶湯3の温度が設定温度(例えば680±10℃)となるように保温される構成となっている。
【0017】
保持室5内に保持された溶湯3は、溶湯供給装置29(例えばラドル等)により汲み出され、鋳造機30に供給されるように構成されている。保持室5内に保持された溶湯3の湯面の高さは、溶湯レベルセンサ31により検出される。溶湯レベルセンサ31は、例えばレーザ式のレベルセンサで構成されており、湯面の高さを無段階で検出できる。溶湯レベルセンサ31からの検出信号は、制御装置13に与えられる。制御装置13は、湯量が例えば設定された低湯面レベルよりも減少すると、溶解バーナ24、25を点火駆動し、湯量が例えば設定された高湯面レベルに達すると、溶解バーナ24、25を消火停止するように構成されている。
【0018】
鋳造機30は、溶解保持炉1の溶湯供給装置29により供給された溶湯3を用いて製品(例えばダイカスト製品)を鋳造し、鋳造物のうちの製品以外の余剰部分12をリターン材として溶解保持炉1(即ち、投入装置8のリターン材供給部10)側に戻すように構成されている。
【0019】
また、溶解室4の投入通路6の左側の上部には、開口部7部分をエアで閉塞するエアカーテンを生成するためのファン装置32が配設されている。投入通路6の右側の上部には、溶解室4内からの排気ガスを排出する排気口33が設けられており、この排気口33の出口部には、排気ダクト34が接続されている。排気口33内には、排気ガスの温度を検出するガス温度センサ35が配設されている。ガス温度センサ35により検出された排気ガスの温度検出信号は、制御装置13に与えられる。
【0020】
また、
図4に示すように、投入通路6の上方には、投入通路6内に投入された金属材料2の材料高さを検出する2個の材料高さセンサ36、37が配設されている。2個の材料高さセンサ36、37は、2個の溶解バーナ24、25にそれぞれ対応するように横方向(即ち、
図4の紙面に直交する方向)に並べて配置されている。2個の材料高さセンサ36、37は、例えばレーザ式のレベルセンサ(即ち、高精度変位レーザセンサ)で構成されており、材料高さを無段階で検出できる。2個の材料高さセンサ36、37は、2個の溶解バーナ24、25がそれぞれ加熱する金属材料2の材料高さをそれぞれ検出し、材料高さの各検出信号は制御装置13に与えられる。
【0021】
この構成の場合、制御装置13は、2個の材料高さセンサ36、37の検出信号に基づいて、2個の溶解バーナ24、25を各別に駆動制御するように構成されている。具体的には、制御装置13は、一方の材料高さセンサ36により一方の溶解バーナ24側の金属材料2の材料高さが例えば設定された低レベル以下に小さくなったことを検出すると、一方の溶解バーナ24の加熱出力を低レベルLに小さくして加熱する。このとき、制御装置13は、他方の材料高さセンサ37により他方の溶解バーナ25側の金属材料2の材料高さが例えば設定された低レベルよりも大きいことを検出しているときには、他方の溶解バーナ25の加熱出力を通常レベル(即ち、高レベル)に設定したままで加熱する。また、2個の材料高さセンサ36、37の検出レベルが上記した検出レベルと反対の場合には、2個の溶解バーナ24、25の加熱出力を上記した加熱出力と反対に設定するようになっている。
【0022】
また、制御装置13は、2個の材料高さセンサ36、37の検出レベルが共に例えば低レベル以下に小さくなったことを検出すると、2個の溶解バーナ24、25の加熱出力を共に低レベルに小さくして加熱する。また反対に、制御装置13は、2個の材料高さセンサ36、37の検出レベルが共に例えば低レベルよりも大きいことを検出しているときには、2個の溶解バーナ24、25の加熱出力を共に通常レベルに設定して加熱するように構成されている。
【0023】
次に、溶解室4の内部における溶解棚21周辺部分、即ち、金属材料2を投入通路6内に投入して溶解棚21上に積載する部分の具体的構成について、
図2、
図5、
図6を参照して説明する。
図5は、改善前の構成を示す。
図5においては、溶解棚21の先端部である左端部と、溶解室4の上壁部の右端部の角部23とを結ぶ線Pと、水平線Hとがなす角度をθとすると、θ=60度となるように、溶解棚21の先端部の位置が決定されている。尚、角度θを、材料積上角度と称しても良い。この構成の場合、金属材料2としてアルミのインゴット11を投入し、インゴット11を溶解棚21の上、及び、投入通路6内に積み上げ、材料高さが例えば設定された高レベルになるまで投入する。このとき、角部23周りを複数のインゴット11が取り囲んでいる。この状態で、2個の溶解バーナ24、25によりインゴット11を加熱して溶解させていく。溶解が進むにつれて材料高さは次第に低下していく。
【0024】
すると、角部23周りに存在していたインゴット11の位置が下がることで角部23周りにインゴット11が接触しない状態になり(即ち、インゴット11の材料高さが、例えば低レベル程度に小さくなり)、
図5に示すように、インゴット11が溶解棚21の前方へ崩れ落ちる現象が発生する。この場合、投入通路6内を上部の開口部から見ると、バーナの火炎または金属材料2が溶解した溶湯3が露出するようになる。このため、溶解バーナ24の燃焼ガス等の高温の排気ガスが、投入通路6内の上記溶湯3が露出する部分、即ち、インゴット11がない空隙部分を通って上昇し、排気口および排気ダクト34を通って排出される。この場合、排出される排気ガスの温度はかなり高い温度となる。尚、この後、インゴット11の投入・積み上げが行われ、積み上げられたインゴット11で投入通路6内が一杯になると、即ち、溶湯3が露出する部分が無くなると、燃焼ガス等の高温の排気ガスは、投入通路6内を通過し難くなると共に、インゴット11を予備加熱するようになる。このため、排出される排気ガスの温度は低くなる。
【0025】
このような改善前の構成における排気ガスの温度の変化を、
図7の破線g1で示す。そして、θ=60度の構成(即ち、改善前の構成)においては、排気ガスの平均温度は、600℃程度となっている。尚、インゴット11は、例えば重量が100g程度で且つ形状が四角すいまたは三角すいのアルミ材で構成されている。四角すいまたは三角すいの1辺の長さ寸法は、20~30mm程度である。また、
図2に示すように、投入通路6の下端部の内径寸法d1は、400mm程度である。すなわち、インゴット11の一辺の13-20倍の内径寸法を有する。尚、溶解室4において、寸法d2は220mm程度であり(同7-10倍)、寸法d3は390mm程度である(同13-20倍)。
【0026】
さて、本実施形態においては、
図6に示すように、溶解棚21の先端部を延ばすことにより、θが50度以下となるように構成した。このように構成することにより、インゴット11が溶解棚21の前方へ崩れ落ちる量を低減できることを、本発明らは確認している。尚、投入通路6及び溶解室4の各部の寸法d1、d2、d3は、上述したθ=60度の構成(即ち、改善前の構成)と同じである。
【0027】
ここで、θ=60度の構成と、θ=50度の構成と、θ=40度の構成とについて、インゴット11の崩れ落ちる量を測定してみた。この場合、例えば140kgのインゴット11を投入通路6内に投入した。θ=60度の構成では、31%、即ち、43.4kgのインゴット11が溶解棚21の前方へ崩れ落ちた。
【0028】
これに対して、θ=50度の構成では、25%、即ち、35.0kgのインゴット11が溶解棚21の前方へ崩れ落ちた。従って、θ=50度の構成によれば、インゴット11の崩れ落ちる量を改善前の構成よりも低減できることが分かる。また、θ=40度の構成では、3.6%、即ち、5.0kgのインゴット11が溶解棚21の前方へ崩れ落ちた。従って、θ=40度の構成によれば、インゴット11の崩れ落ちる量を改善前の構成よりも大幅に低減できることが分かる。
【0029】
また、θ=40度の構成における排気ガスの温度の変化を、
図7の実線g2で示す。そして、θ=40度の構成においては、排気ガスの平均温度は、250℃程度となっており、改善前の構成よりも大幅に低下させることができた。
【0030】
また、θ=60度の構成(即ち、改善前の構成)における溶解バーナ24、25の燃料ガスの流量(即ち、消費量)の変化を、
図7の破線g3で示す。これに対して、θ=40度の構成における溶解バーナ24、25の燃料ガスの流量の変化を、
図7の実線g4で示す。本実施形態のθ=40度の構成によれば、溶解バーナ24、25の燃料ガスの消費量を、改善前のθ=60度の構成に比べて20%程度低減できる。
【0031】
この結果、
図8に示すように、排気ガスに含まれるCO
2の排出量を、改善前のθ=60度の構成に比べて20%程度低減することができる。
図8において、棒グラフh1は、θ=60度の構成(即ち、改善前の構成)を示す。
図8において、棒グラフh2は、本実施形態のθ=40度の構成(即ち、改善後の構成)を示す。
【0032】
このような構成の本実施形態においては、溶解棚21の先端部と溶解室4の上壁部の角部23とを結ぶ線Pと、水平線Hとがなす角度をθとしたときに、角度θが50度以下となるように構成した。この構成によれば、
図6に示すように、溶解棚21の前方へインゴット11が崩れ落ちる量を改善前の構成(即ち、角度θが60度の構成)よりも低減できることがわかる。これにより、溶湯3の露出が少なくなることから、溶解室4から排気される排気ガスの平均温度が低くなり、溶解バーナ24、25の燃料ガスの消費量を低減することができる。
【0033】
特に、本実施形態において、角度θを40度に設定した構成では、溶解棚21の前方へインゴット11が崩れ落ちる量を改善前の構成よりも大幅に低減できる。この構成の場合、排気ガスの平均温度が250℃程度となり、改善前の構成の排気ガスの平均温度600℃程度よりも大幅に低下させることができ、更に、溶解バーナ24、25の燃料ガスの消費量を改善前の構成よりも20%程度低減できることを確認した。
【0034】
また、上記実施形態では、投入通路6内に投入された金属材料2の材料高さを検出する高さ検出部として材料高さセンサ36、37を設け、材料高さセンサ36、37により検出された材料高さに基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御するように構成した。この構成によれば、材料高さが低下して溶湯3が露出可能性が高くなったときに、溶解バーナ24、25の加熱出力を低下させることが可能となるから、溶解室4から排気される排気ガスの平均温度を低くすることができ、溶解バーナ24、25の燃料ガスの消費量を低減することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、2個の材料高さセンサ36、37によって、2個の溶解バーナ24、25がそれぞれ加熱する金属材料の材料高さを検出し、2個の材料高さセンサ36、37により検出された2つの材料高さに基づいて2個の溶解バーナ24、25の加熱出力を各別に制御するように構成した。この構成によれば、溶解バーナ24、25のうちの、材料高さが低下して溶湯3が露出可能性が高くなった側の溶解バーナ24、25の加熱出力だけを低下させることが可能となるから、溶解室4から排気される排気ガスの平均温度を低くすることができながら、金属材料2の溶解を速やかに行なうことが可能となり、きめ細かい制御を実現することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、溶解室4から排気される排気ガスの温度を検出するガス温度センサ35を備え、ガス温度センサ35により検出された排気ガスの温度に基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御するように構成した。この構成によれば、排気ガスの温度が高くなったときに、溶解バーナ24、25の加熱出力を低下させることが可能となるから、溶解室4から排気される排気ガスの平均温度を低くすることができ、溶解バーナ24、25の燃料ガスの消費量を低減することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図9及び
図10は、第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。第1実施形態では、
図1に示すように、溶解室4と保持室5を一直線状に配置したが、これに代えて、第2実施形態では、
図10に示すように、溶解室4内での溶湯3の流れる方向に対して例えば直角に曲がる側に、保持室5を配置した。
【0038】
具体的には、
図9に示すように、溶解室4の左端部を閉塞し、溶解室4の内底部における溶湯流路部22に、溶湯貯留部41を設けた。そして、
図10に示すように、溶解室4の
図10中の左側壁部に連結するように保持室5を配設している。更に、溶解室4と保持室5を仕切る仕切壁部42に例えば矩形状の連通孔43を設け、溶解室4の溶湯貯留部41に貯留された溶湯3を上記連通孔43を通して保持室5内へ流すように構成されている。
【0039】
上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、溶解室4の
図10中の左側壁側に保持室5を配設したので、溶解室4の
図9中の左側壁部に、開口及びこの開口を塞ぐ蓋部材を設けることが可能となる。この構成によれば、上記開口を介して、溶解室4の内部、特には、溶解棚21周辺部の掃除が容易になる。
【0040】
尚、上記各実施形態では、材料高さセンサ36、37により検出された材料高さに基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御する際に、溶解バーナ24、25の各加熱出力を通常レベルまたは低レベルLに切り替えるように構成したが、これに限られるものではなく、通常レベルまたは停止に切り替えるように構成しても良いし、3段階以上に切り替えるように構成しても良い。
【0041】
また、上記各実施形態では、材料高さセンサ36、37として、レーザ式センサを用いるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば透過型または反射型光センサを複数設けるように構成しても良い。また、上記各実施形態では、バーナ24、25、26、27として、直火式のバーナを用いたが、これに限られるものではなく、電気式のバーナを用いても良い。
【0042】
また、上記各実施形態では、材料高さセンサ36、37により検出された材料高さに基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御する際に、材料高さセンサ36、37の各検出出力に応じて、対応する溶解バーナ24、25の加熱出力を制御するように構成したが、これに代えて、2個の材料高さセンサ36、37により検出された2つの材料高さの平均値に基づいて前記2個の溶解バーナ24、25の加熱出力を一体に制御するように構成さしても良い。
【0043】
また、上記各実施形態では、材料高さセンサ36、37により検出された材料高さに基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御する機能と、ガス温度センサ35により検出された排気ガスの温度に基づいて溶解バーナ24、25の加熱出力を制御する機能とを組み込むように構成したが、いずれか一方の機能だけを組み込むように構成しても良いし、両機能を組み込まないように構成しても良い。また、上記各実施形態では、溶解室4に酸化物分離バーナ26を設けたが、酸化物分離バーナ26は必要に応じて設ければよく、酸化物分離バーナ26を設けないように構成しても良い。
【0044】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は溶解保持炉、2は金属材料、3は溶湯、4は溶解室、5は保持室、6は投入通路、9は新材供給部、10はリターン材供給部、13は制御装置、21は溶解棚、22は溶湯流路部、23は角部、24は溶解バーナ、25は溶解バーナ、26は酸化物分離バーナ、27は保持バーナ、28は溶湯温度センサ、29は溶湯供給装置、30は鋳造機、31は溶湯レベルセンサ、33は排気口、34は排気ダクト、35はガス温度センサ、36は材料高さセンサ、37は材料高さセンサ、40は温度センサである。