(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】電源システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220727BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220727BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220727BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20220727BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 302C
B60L50/60
(21)【出願番号】P 2018190032
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 良平
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】上井 健太
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231292(JP,A)
【文献】特開2014-147197(JP,A)
【文献】特開2018-093604(JP,A)
【文献】特開2018-061372(JP,A)
【文献】特開2009-219213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用モータと接続される第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置と電圧変換機を介して接続される第2蓄電装置と、
を備える電源システムの制御装置であって、
前記第1蓄電装置の残存容量が第1範囲外であるとき、前記電圧変換機の動作を制御することによって、前記第1蓄電装置の残存容量が前記第1範囲内に向けて変化するように、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間での電力の供給を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記第1蓄電装置の残存容量が前記第1範囲外であり、かつ、前記第1範囲と比較して上限値が大きく下限値が小さい第2範囲内であるとき、前記電圧変換機の出力の大きさを、前記電圧変換機の効率を優先した第1出力に制御し、
前記第1蓄電装置の残存容量が前記第2範囲外であるとき、前記電圧変換機の出力の大きさを、前記第1出力よりも大きい第2出力に制御する、
電源システムの制御装置。
【請求項2】
前記電圧変換機の出力の大きさを制限出力以下に制限する制限部をさらに有し、
前記制御部は、前記制限出力が前記第2出力より小さい場合、前記第1範囲及び前記第2範囲の少なくとも一方を縮小する、
請求項1に記載の電源システムの制御装置。
【請求項3】
前記制限部は、前記第2蓄電装置の状態量に応じて前記制限出力を決定する、
請求項2に記載の電源システムの制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記制限出力が前記第2出力より小さい場合、前記第1範囲を前記第2範囲よりも優先して縮小する、
請求項2又は3に記載の電源システムの制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1出力を前記電圧変換機の温度と相関を有する温度に応じて調整する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システムの制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1範囲及び前記第2範囲の少なくとも一方を前記電圧変換機の温度と相関を有する温度に応じて縮小又は拡大する、
請求項5に記載の電源システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動用モータを駆動源として備える電気自動車(EV)又はハイブリッド自動車(HEV)等の電動車両が知られている。電動車両の電源システムには、駆動用モータに供給される電力を蓄電する蓄電装置が設けられている。蓄電装置の出力と容量とは一般にトレードオフの関係を有するため、1つの蓄電装置のみによっては、車両の加速性能と航続距離を高い水準で両立させることが困難となる場合がある。そこで、車両の加速性能と航続距離を高い水準で両立させるために、例えば特許文献1に開示されているように、2つの蓄電装置を組み合わせて用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2以上の蓄電装置を備える電源システムにおいて、一の蓄電装置を駆動用モータと接続し、当該一の蓄電装置と他の蓄電装置とを電圧変換機(具体的には、DCDCコンバータ)を介して接続することが考えられる。それにより、電圧変換機の動作を制御することによって、各蓄電装置の間での電力の供給を制御することができるので、電源システムにおける電力の供給が適切に制御されることが期待される。しかしながら、このような電源システムでは、駆動用モータと接続される蓄電装置の残存容量(SOC:State Of Charge)が過度に高い状態又は過度に低い状態になると、駆動用モータと当該蓄電装置との間での電力の供給を適切に行うことが困難となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、2以上の蓄電装置を備える電源システムにおける電力の供給を適切に制御することが可能な、新規かつ改良された電源システムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、駆動用モータと接続される第1蓄電装置と、前記第1蓄電装置と電圧変換機を介して接続される第2蓄電装置と、を備える電源システムの制御装置であって、前記第1蓄電装置の残存容量が第1範囲外であるとき、前記電圧変換機の動作を制御することによって、前記第1蓄電装置の残存容量が前記第1範囲内に向けて変化するように、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間での電力の供給を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記第1蓄電装置の残存容量が前記第1範囲外であり、かつ、前記第1範囲と比較して上限値が大きく下限値が小さい第2範囲内であるとき、前記電圧変換機の出力の大きさを、前記電圧変換機の効率を優先した第1出力に制御し、前記第1蓄電装置の残存容量が前記第2範囲外であるとき、前記電圧変換機の出力の大きさを、前記第1出力よりも大きい第2出力に制御する、電源システムの制御装置が提供される。
【0007】
前記制御装置は、前記電圧変換機の出力の大きさを制限出力以下に制限する制限部をさらに有し、前記制御部は、前記制限出力が前記第2出力より小さい場合、前記第1範囲及び前記第2範囲の少なくとも一方を縮小してもよい。
【0008】
前記制限部は、前記第2蓄電装置の状態量に応じて前記制限出力を決定してもよい。
【0009】
前記制御部は、前記制限出力が前記第2出力より小さい場合、前記第1範囲を前記第2範囲よりも優先して縮小してもよい。
【0010】
前記制御部は、前記第1出力を前記電圧変換機の温度と相関を有する温度に応じて調整してもよい。
【0011】
前記制御部は、前記第1範囲及び前記第2範囲の少なくとも一方を前記電圧変換機の温度と相関を有する温度に応じて縮小又は拡大してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、2以上の蓄電装置を備える電源システムにおける電力の供給を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御装置を備える電源システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る制御装置のコンバータ制御部による電力供給制御に用いられる第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップの一例である。
【
図4】同実施形態に係る制御装置のコンバータ制御部による電力供給制御に用いられる第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップの
図3に示される例と異なる他の例である。
【
図5】同実施形態に係る制御装置のコンバータ制御部が行うコンバータ出力の制限に応じた処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図3に示されるマップの第1範囲が縮小された後の様子を示す図である。
【
図7】
図3に示されるマップの第1範囲及び第2範囲の双方が縮小された後の様子を示す図である。
【
図8】
図3に示されるマップの第1出力が調整され、第1範囲及び第2範囲の双方が縮小された後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.電源システムの構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100を備える電源システム1の構成について説明する。
【0016】
図1は、電源システム1の概略構成を示す模式図である。
図2は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
電源システム1は、具体的には、電気自動車(EV)又はハイブリッド自動車(HEV)等の電動車両に搭載され、車両内の各装置に電力を供給するために用いられるシステムである。なお、電源システム1が搭載される電動車両は、駆動用モータを駆動源として備える車両であればよく、例えば、鉄道車両を含んでもよい。
【0018】
図1に示されるように、電源システム1は、第1二次電池10と、第2二次電池20と、制御装置100とを備える。さらに、電源システム1は、DCDCコンバータ30と、インバータ40と、駆動用モータ50と、第1バッテリセンサ71と、第2バッテリセンサ72と、外気温センサ73とを備える。電源システム1が搭載される車両は、駆動用モータ50を駆動源として走行する。
【0019】
電源システム1において、第1二次電池10は、本発明に係る第1蓄電装置の一例に相当する。また、第2二次電池20は、本発明に係る第2蓄電装置の一例に相当する。また、DCDCコンバータ30は、本発明に係る電圧変換機の一例に相当する。
【0020】
第1二次電池10は、駆動用モータ50と接続される蓄電装置である。具体的には、第1二次電池10は、インバータ40を介して駆動用モータ50と接続されている。第1二次電池10としては、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。なお、第1二次電池10は、このような例に特に限定されず、リチウムイオン電池以外の他の二次電池(例えば、ニッケル水素電池等)であってもよく、二次電池以外の他の蓄電装置(例えば、電気二重層キャパシタ等)であってもよい。また、車両の加速性能を効果的に向上させる観点では、第1二次電池10は、第2二次電池20と比較して、高出力の(つまり、大きな出力密度を有する)蓄電装置であることが好ましい。
【0021】
駆動用モータ50は、車両の駆動輪を駆動させるための動力を出力可能であり、具体的には、多相交流式(例えば、三相交流式)のモータである。駆動用モータ50は、第1二次電池10からインバータ40を介して供給される電力を用いて動力を生成する。また、駆動用モータ50は、車両の減速時に、駆動輪の回転エネルギを用いて発電する発電機としての機能(回生機能)を有する。
【0022】
インバータ40は、直流と交流との間での電力の変換を実行可能な電力変換機であり、具体的には、多相ブリッジ回路を含む。インバータ40は、第1二次電池10から供給される直流電力を交流電力に変換して駆動用モータ50へ供給可能である。また、インバータ40は、駆動用モータ50により回生発電された交流電力を直流電力に変換して第1二次電池10へ供給可能である。インバータ40にはスイッチング素子が設けられ、スイッチング素子の動作が制御されることにより、第1二次電池10と駆動用モータ50との間での電力の供給が制御される。
【0023】
第2二次電池20は、第1二次電池10とDCDCコンバータ30を介して接続される蓄電装置である。第2二次電池20としては、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。なお、第2二次電池20は、このような例に特に限定されず、リチウムイオン電池以外の他の二次電池(例えば、ニッケル水素電池等)であってもよく、二次電池以外の他の蓄電装置(例えば、電気二重層キャパシタ等)であってもよい。また、車両の航続距離を効果的に増大させる観点では、第2二次電池20は、第1二次電池10と比較して、高容量の(つまり、大きなエネルギ密度を有する)蓄電装置であることが好ましい。
【0024】
DCDCコンバータ30は、電圧の変換を双方向に実行可能な電圧変換機であり、例えば、チョッパ回路を含む。DCDCコンバータ30は、電圧の変換を適宜行うことによって、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を実現可能とするものである。DCDCコンバータ30にはスイッチング素子が設けられ、スイッチング素子の動作が制御されることにより、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給が制御される。
【0025】
第1バッテリセンサ71は、第1二次電池10の各種状態量を検出し、制御装置100へ出力する。具体的には、第1バッテリセンサ71は、第1二次電池10の状態量として、第1二次電池10の残存容量(以下、第1SOCとも呼ぶ。)及び温度を検出する。
【0026】
第2バッテリセンサ72は、第2二次電池20の各種状態量を検出し、制御装置100へ出力する。具体的には、第2バッテリセンサ72は、第2二次電池20の状態量として、第2二次電池20の残存容量(以下、第2SOCとも呼ぶ。)及び温度を検出する。
【0027】
外気温センサ73は、車両の外部の温度である外気温を検出し、制御装置100へ出力する。
【0028】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0029】
また、制御装置100は、電源システム1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0030】
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により少なくとも部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により少なくとも部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0031】
制御装置100は、例えば、
図2に示されるように、取得部110と、制御部120と、制限部130とを有する。
【0032】
取得部110は、制御部120及び制限部130が行う処理において用いられる各種情報を取得し、取得した情報を制御部120及び制限部130へ出力する。例えば、取得部110は、第1バッテリセンサ71、第2バッテリセンサ72及び外気温センサ73と通信することによって、これらの各センサから出力される各種情報を取得する。
【0033】
制御部120は、電源システム1の各装置の動作を制御する。例えば、制御部120は、コンバータ制御部121と、インバータ制御部122とを有する。
【0034】
コンバータ制御部121は、DCDCコンバータ30の動作(具体的には、当該DCDCコンバータ30のスイッチング素子の動作)を制御することによって、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を制御する。具体的には、コンバータ制御部121は、第1二次電池10に蓄電される電力を第2二次電池20へ供給させ、又は第2二次電池20に蓄電される電力を第1二次電池10へ供給させることができる。
【0035】
インバータ制御部122は、インバータ40の動作(具体的には、当該インバータ40のスイッチング素子の動作)を制御することによって、第1二次電池10と駆動用モータ50との間での電力の供給を制御する。それにより、インバータ制御部122は、駆動用モータ50による動力の生成及び発電を制御することができる。例えば、インバータ制御部122は、加速要求や車速等の車両の走行状態に応じて駆動用モータ50の出力を制御する。
【0036】
制限部130は、DCDCコンバータ30の出力(つまり、DCDCコンバータ30を介して単位時間あたりに供給される電力量)の大きさを制限出力以下に制限する。具体的には、制限部130は、DCDCコンバータ30の出力の大きさを制限するための制限出力を決定し、決定した制限出力を示す情報をコンバータ制御部121へ出力する。それにより、DCDCコンバータ30の出力の大きさが制限出力以下になるように、DCDCコンバータ30の動作がコンバータ制御部121によって制御される。なお、以下では、DCDCコンバータ30の出力をコンバータ出力とも呼ぶ。
【0037】
上記のように、制御部120(具体的には、コンバータ制御部121)は、DCDCコンバータ30の動作を制御することによって、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を制御する。具体的には、制御部120は、第1二次電池10の残存容量である第1SOCに基づいて、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給の制御(以下、電力供給制御とも呼ぶ)を行う。制御装置100によれば、制御部120により行われる第1SOCに基づく二次電池間での電力供給制御によって、電源システム1における電力の供給を適切に制御することが可能となる。このような、制御部120により行われる二次電池間での電力供給制御に関する処理の詳細については、後述にて説明する。
【0038】
<2.制御装置の動作>
続いて、
図3~
図8を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0039】
[2-1.二次電池間での電力供給制御に関する基本的な処理]
まず、
図3及び
図4を参照して、制御部120のコンバータ制御部121により行われる二次電池間での電力供給制御に関する基本的な処理について説明する。
【0040】
上述したように、コンバータ制御部121は、DCDCコンバータ30の動作を制御することによって、二次電池間の電力の供給を制御する。具体的には、コンバータ制御部121は、二次電池間の電力の供給の方向を制御する。また、コンバータ制御部121は、DCDCコンバータ30の出力であるコンバータ出力の大きさを制御することによって、各二次電池により単位時間あたりに充電又は放電される電力量を制御する。
【0041】
ここで、コンバータ制御部121は、第1二次電池10の残存容量である第1SOCに基づいて、二次電池間の電力の供給を制御する。具体的には、コンバータ制御部121は、第1SOCの範囲である第1範囲及び第2範囲と、第1SOCとの比較結果に基づいて、二次電池間の電力の供給を制御する。第2範囲は、第1範囲と比較して上限値が大きく下限値が小さい範囲である。
【0042】
以下、第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップを用いて、コンバータ制御部121によりコンバータ出力が制御される例について説明する。
図3は、コンバータ制御部121による電力供給制御に用いられる第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップの一例である。
【0043】
図3では、横軸に第1SOC[%]をとり、縦軸にコンバータ出力[kW]をとり、第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップが示されている。コンバータ出力が正の値をとる場合は、第1二次電池10に蓄電される電力が第2二次電池20へ供給される場合に相当し、コンバータ出力が負の値をとる場合は、第2二次電池20に蓄電される電力が第1二次電池10へ供給される場合に相当する。
【0044】
また、
図3に示される例では、下限値L1から上限値H1までの第1SOCの範囲が第1範囲R1として設定され、下限値L2から上限値H2までの第1SOCの範囲が第2範囲R2として設定されている。第2範囲R2の上限値H2は、具体的には、第1SOCが過度に高くなり、駆動用モータ50により回生発電される電力を第1二次電池10へ供給することが困難となるような第1SOCの値と比較して小さい値に設定されている。また、第2範囲R2の下限値L2は、具体的には、第1SOCが過度に低くなり、第1二次電池10に蓄電される電力を駆動用モータ50へ供給することが困難となるような第1SOCの値と比較して大きい値に設定されている。
【0045】
コンバータ制御部121は、第1SOCが第1範囲外であるとき、DCDCコンバータ30の動作を制御することによって、第1SOCが第1範囲内に向けて変化するように、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を制御する。
【0046】
例えば、
図3に示されるように、第1SOCが第1範囲R1の上限値H1よりも大きいとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力を正の値に制御し、第1二次電池10に蓄電される電力を第2二次電池20へ供給させる。それにより、第1SOCを減少させることができるので、第1SOCを第1範囲内に向けて変化させることができる。一方、第1SOCが第1範囲R1の下限値L1よりも小さいとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力を負の値に制御し、第2二次電池20に蓄電される電力を第1二次電池10へ供給させる。それにより、第1SOCを増大させることができるので、第1SOCを第1範囲内に向けて変化させることができる。
【0047】
より詳細には、コンバータ制御部121は、第1SOCが第1範囲R1外であり、かつ、第2範囲R2内であるとき、コンバータ出力の大きさを、DCDCコンバータ30の効率を優先した第1出力W1に制御する。第1出力W1は、具体的には、DCDCコンバータ30の効率ができるだけ高くなるように設定され、例えば、DCDCコンバータ30の効率の出力に対する特性に応じて適宜設定される。
【0048】
例えば、
図3に示されるように、第1SOCが第1範囲R1の上限値H1よりも大きく、かつ、第2範囲R2の上限値H2以下であるとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1に制御し、第1二次電池10に蓄電される電力を第2二次電池20へ供給させる。一方、第1SOCが第1範囲R1の下限値L1よりも小さく、かつ、第2範囲R2の下限値L2以上であるとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1に制御し、第2二次電池20に蓄電される電力を第1二次電池10へ供給させる。
【0049】
また、コンバータ制御部121は、第1SOCが第2範囲R2外であるとき、コンバータ出力の大きさを、第1出力W1よりも大きい第2出力W2に制御する。第2出力W2は、具体的には、DCDCコンバータ30の出力ができるだけ高くなるように設定され、例えば、DCDCコンバータ30の最大出力に対応する値に設定される。なお、DCDCコンバータ30の最大出力に対応する値は、当該最大出力の値又は当該最大出力の近傍の値を含む。
【0050】
例えば、
図3に示されるように、第1SOCが第2範囲R2の上限値H2よりも大きいとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第2出力W2に制御し、第1二次電池10に蓄電される電力を第2二次電池20へ供給させる。一方、第1SOCが第2範囲R2の下限値L2よりも小さいとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第2出力W2に制御し、第2二次電池20に蓄電される電力を第1二次電池10へ供給させる。
【0051】
上記のように、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを、第1SOCが第1範囲R1外であり、かつ、第2範囲R2内であるとき、DCDCコンバータ30の効率を優先した第1出力W1に制御する一方で、第1SOCが第2範囲R2外であるとき、第1出力W1よりも大きい第2出力W2に制御する。それにより、例えば、第1SOCが第1範囲R1外になっているものの第1SOCの変化速度が比較的遅い場合には、二次電池間で第1出力W1での電力の供給を行わせることによって、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを抑制することができる。一方、例えば、第1SOCが第1範囲R1外になり、かつ、第1SOCの変化速度が比較的速い場合には、二次電池間で第1出力W1での電力の供給に加えて第2出力W2での電力の供給を行わせることによって、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になること抑制することができる。
【0052】
第1SOCが過度に高い状態になると、第1二次電池10から駆動用モータ50へ供給可能な電力が駆動用モータ50を駆動するために要求される電力に対して不足する場合がある。また、第1SOCが過度に低い状態になると、駆動用モータ50から第1二次電池10へ供給可能な電力が低下することに起因して駆動用モータ50による回生発電を適切に行うことが困難になる場合がある。ゆえに、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを抑制することによって、駆動用モータ50と第1二次電池10との間での電力の供給を適切に行うことができる。さらに、上述したコンバータ制御部121による二次電池間での電力供給制御によれば、第1SOCが第1範囲R1外になった際に、第2出力W2での電力の供給に先立って第1出力W1での電力の供給が行われるので、DCDCコンバータ30の効率を向上させることができる。ゆえに、電源システム1での電力の供給における効率を向上させることができる。
【0053】
ここで、コンバータ出力の切り換えが過剰に行われるハンチングの発生を抑制する観点では、コンバータ制御部121は、二次電池間での電力供給制御において、ヒステリシス制御を行うことが好ましい。
【0054】
以下、
図4に示されるマップを用いて、二次電池間での電力供給制御において、コンバータ制御部121によりヒステリシス制御が行われる例について説明する。
図4は、コンバータ制御部121による電力供給制御に用いられる第1SOCとコンバータ出力との関係を示すマップの
図3に示される例と異なる他の例である。
【0055】
図4に示される例では、第1範囲R1及び第2範囲R2の双方について、第1SOCが増大する過程で適用される上限値及び下限値と、第1SOCが減少する過程で適用される上限値及び下限値とがそれぞれ設定されている。具体的には、第1範囲R1は、第1SOCが増大する過程で適用される上限値H1u及び下限値L1uと、第1SOCが減少する過程で適用される上限値H1d及び下限値L1dとをそれぞれ有する。上限値H1u及び下限値L1uは、それぞれ上限値H1d及び下限値L1dよりも大きい値に設定されている。また、第2範囲R2は、第1SOCが増大する過程で適用される上限値H2u及び下限値L2uと、第1SOCが減少する過程で適用される上限値H2d及び下限値L2dとをそれぞれ有する。上限値H2u及び下限値L2uは、それぞれ上限値H2d及び下限値L2dよりも大きい値に設定されている。
【0056】
例えば、第1SOCが増大する過程で第1範囲R1の上限値H1uを上回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを0から第1出力W1に切り替え、第1二次電池10から第2二次電池20への電力の供給を開始する。そして、第1SOCが第2範囲R2の上限値H2uを上回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1から第2出力W2に増大させる。一方、第1SOCが減少する過程で第2範囲R2の上限値H2dを下回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第2出力W2から第1出力W1に減少させる。そして、第1SOCが第1範囲R1の上限値H1dを下回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1から0に切り替え、第1二次電池10から第2二次電池20への電力の供給を終了する。
【0057】
また、例えば、第1SOCが減少する過程で第1範囲R1の下限値L1dを下回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを0から第1出力W1に切り替え、第2二次電池20から第1二次電池10への電力の供給を開始する。そして、第1SOCが第2範囲R2の下限値L2dを下回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1から第2出力W2に増大させる。一方、第1SOCが増大する過程で第2範囲R2の下限値L2uを上回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第2出力W2から第1出力W1に減少させる。そして、第1SOCが第1範囲R1の下限値L1uを上回ったとき、コンバータ制御部121は、コンバータ出力の大きさを第1出力W1から0に切り替え、第2二次電池20から第1二次電池10への電力の供給を終了する。
【0058】
なお、以下では、理解を容易にするために、上述した
図3に示されるマップを用いた電力供給制御のように、ヒステリシス制御が行われない例を参照して説明を続ける。
【0059】
[2-2.コンバータ出力の制限に応じた処理]
次に、
図5~
図7を参照して、制御部120のコンバータ制御部121により行われる二次電池間での電力供給制御に関する処理のうち、コンバータ出力の制限に応じた処理について説明する。
【0060】
図5は、コンバータ制御部121が行うコンバータ出力の制限に応じた処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示される制御フローは、例えば、予め設定された設定時間間隔で繰り返される。
【0061】
図5に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、コンバータ制御部121は、制限出力が第2出力より小さいか否かを判定する。制限出力が第2出力より小さいと判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS503に進む。一方、制限出力が第2出力以上であると判定された場合(ステップS501/NO)、
図5に示される制御フローは終了する。
【0062】
具体的には、コンバータ制御部121は、制限部130から出力される制限出力を示す情報に基づいて、制限出力が第2出力より小さいか否かを判定する。制限出力は、上述したように、制限部130によって決定される。
【0063】
ここで、制限部130は、例えば、第2二次電池20の状態量に応じて制限出力を決定する。
【0064】
例えば、制限部130は、第2二次電池20の残存容量である第2SOCに応じて制限出力を決定する。具体的には、制限部130は、コンバータ出力の大きさが第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量を上回らないように、第2SOCに応じて制限出力を決定する。ここで、第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量は、第2SOCに応じて変化する。例えば、第2二次電池20により単位時間あたりに充電可能な電力量は、第2SOCが高くなるにつれて小さくなる。また、第2二次電池20により単位時間あたりに放電可能な電力量は、第2SOCが低くなるにつれて小さくなる。ゆえに、制限部130は、例えば、第2SOCが過度に高い又は過度に低い場合に、他の場合と比較して、コンバータ出力が制限される程度を大きくするために、小さな値を制限出力として決定する。
【0065】
また、例えば、制限部130は、第2二次電池20の温度に応じて制限出力を決定する。具体的には、制限部130は、コンバータ出力の大きさが第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量を上回らないように、第2二次電池20の温度に応じて制限出力を決定する。ここで、第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量は、第2二次電池20の温度に応じて変化する。例えば、第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量は、第2二次電池20の温度が低くなるにつれて小さくなる。ゆえに、制限部130は、例えば、第2二次電池20の温度が低いほど、コンバータ出力が制限される程度を大きくするために、小さな値を制限出力として決定する。
【0066】
なお、制限部130は、第2二次電池20の状態量以外の他のパラメータ(例えば、外気温等のDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度)に応じて制限出力を決定してもよく、複数のパラメータに応じて制限出力を決定してもよい。
【0067】
ステップS501でYESと判定された場合、ステップS503において、コンバータ制御部121は、第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する必要があるか否かを判定する。第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する必要がないと判定された場合(ステップS503/NO)、ステップS505に進む。一方、第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する必要があると判定された場合(ステップS503/YES)、ステップS507に進む。
【0068】
ステップS501でYESと判定される場合は、第1SOCが第2範囲外であるときにコンバータ出力が制限されてしまう場合(つまり、二次電池間で第2出力での電力の供給を行えない場合)である。このままでは第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制できない可能性がある。これに対し、制御部120は、後述するように、第1範囲のみを縮小する処理(ステップS505)又は第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する処理(ステップS507)を実行する。それにより、二次電池間での電力の供給が開始するタイミング又は当該電力の供給の開始後におけるコンバータ出力が増大するタイミングを早くすることができるので、第1SOCが第2範囲外となった際にコンバータ出力が制限されてしまう状況であっても、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制できる。
【0069】
ステップS503において、例えば、コンバータ制御部121は、制限出力が基準出力より小さい場合に、第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する必要があると判定する。基準出力は、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制するために、第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する必要があるのか、又は、第1範囲のみを縮小することで足りるのかを適切に判定するための基準値であり、具体的には、第2出力より小さい値に設定される。
【0070】
ステップS503でNOと判定された場合、ステップS505において、コンバータ制御部121は、第1範囲のみを縮小する。具体的には、コンバータ制御部121は、第1範囲の上限値を減少させ、下限値を増大させることによって、第1範囲を縮小する。
【0071】
上述したように、制御部120は、第1SOCが第1範囲外であり、かつ、第2範囲内であるときには、第1SOCが第2範囲外であるときと比較して、DCDCコンバータ30の効率が良くなるように二次電池間での電力供給制御を行う。ゆえに、第1範囲のみを縮小する場合、例えば第2範囲のみを縮小する場合に比べ、第1範囲外であり、かつ、第2範囲内である第1SOCの領域を拡大することができるので、DCDCコンバータ30を効率の良い状態で動作させる時間を増やすことができる。よって、電費(燃費)の向上を図ることができる。
【0072】
以下、
図6を参照して、
図3に示されるマップの第1範囲R1が縮小される場合について説明する。
図6は、
図3に示されるマップの第1範囲R1が縮小された後の様子を示す図である。
【0073】
図6に示される例では、コンバータ出力の大きさが第2出力W2より小さい制限出力WR以下に制限されている。ここで、コンバータ制御部121は、例えば制限出力WRが基準出力以上であることをもって、第1範囲R1及び第2範囲R2の双方を縮小する必要がないと判定する。この場合、コンバータ制御部121は、例えば、第1範囲R1の上限値H1を上限値H1’に減少させ、第1範囲R1の下限値L1を下限値L1’に増大させる。それにより、第1範囲R1は、
図6に示されるように、下限値L1’から上限値H1’までの第1SOCの範囲である第1範囲R1’に縮小される。
【0074】
ここで、第1範囲R1を適切に縮小する観点では、コンバータ制御部121は、制限出力WRの大きさに応じて第1範囲R1の縮小量を変化させることが好ましい。例えば、コンバータ制御部121は、制限出力WRが小さいほど第1範囲R1の上限値及び下限値の変化量を大きくすることが好ましい。
【0075】
制限出力WRが小さい場合には、制限出力WRが大きい場合と比べてコンバータ出力がより制限されるため、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になりやすい。そこで、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制する観点では、制限出力WRが小さい場合に、制限出力WRが大きい場合と比べて第1範囲R1をより縮小し、二次電池間での電力の供給が開始するタイミングをより早めることが望ましい。ここで、第1範囲R1を縮小しすぎると、二次電池間での電力の供給が不必要に開始されてしまうことに伴い、電費(燃費)が悪化することが懸念される。これに対し、制限出力WRの大きさに応じて第1範囲R1の縮小量を適切に変化させるようにすることで、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを抑制しつつ、電費(燃費)の向上を図ることができる。
【0076】
ステップS503でYESと判定された場合、ステップS507において、コンバータ制御部121は、第1範囲及び第2範囲の双方を縮小する。具体的には、コンバータ制御部121は、第1範囲と同様に、第2範囲の上限値を減少させ、下限値を増大させることによって、第2範囲を縮小する。
【0077】
以下、
図7を参照して、
図3に示されるマップの第1範囲R1及び第2範囲R2の双方が縮小される場合について説明する。
図7は、
図3に示されるマップの第1範囲R1及び第2範囲R2の双方が縮小された後の様子を示す図である。
【0078】
図7に示される例では、コンバータ出力の大きさが第2出力W2より小さい制限出力WR’以下に制限されている。ここで、コンバータ制御部121は、例えば制限出力WR’が基準出力より小さいことをもって、第1範囲R1及び第2範囲R2の双方を縮小する必要があると判定する。この場合、コンバータ制御部121は、例えば、第1範囲R1を第1範囲R1’に縮小することに加えて、第2範囲R2を縮小する。例えば、コンバータ制御部121は、第2範囲R2の上限値H2を上限値H2’に減少させ、第2範囲R2の下限値L2を下限値L2’に増大させる。それにより、第2範囲R2は、
図7に示されるように、下限値L2’から上限値H2’までの第1SOCの範囲である第2範囲R2’に縮小される。
【0079】
ここで、第2範囲R2を適切に縮小する観点では、第1範囲R1の縮小と同様に、コンバータ制御部121は、制限出力WRの大きさに応じて第2範囲R2の縮小量を変化させることが好ましい。
【0080】
上述したように、制限出力WRが小さい場合には、制限出力WRが大きい場合と比べてコンバータ出力がより制限されるため、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になりやすい。そこで、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制する観点では、制限出力WRが小さい場合に、制限出力WRが大きい場合と比べて第2範囲R2をより縮小し、二次電池間での電力の供給の開始後におけるコンバータ出力が増大するタイミングをより早めることが望ましい。ここで、第2範囲R2を縮小しすぎると、コンバータ出力の増大が不必要に開始されてしまうことに伴い、電費(燃費)が悪化することが懸念される。これに対し、制限出力WRの大きさに応じて第2範囲R2の縮小量を適切に変化させるようにすることで、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを抑制しつつ、電費(燃費)の向上を図ることができる。
【0081】
ステップS505又はステップS507の次に、
図5に示される制御フローは、終了する。
【0082】
上記のように、
図5に示される制御フローでは、コンバータ制御部121は、制限出力が第2出力より小さい場合、第1範囲及び第2範囲の少なくとも一方を縮小する。それにより、二次電池間での電力の供給の開始又は当該電力の供給の開始後におけるコンバータ出力の増大を、第1SOCの値がより小さい値をとるタイミングで行わせることができる。ゆえに、コンバータ出力の制限により第1SOCが第2範囲R2外であるときのコンバータ出力が低下した場合であっても、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制することができる。
ことができる。
【0083】
また、上記のように、
図5に示される制御フローでは、コンバータ制御部121は、制限出力が第2出力より小さい場合、第1範囲を第2範囲よりも優先して縮小する。DCDCコンバータ30の効率を適切に向上させる観点では、コンバータ制御部121は、このように、制限出力が第2出力より小さい場合、第1範囲を第2範囲よりも優先して縮小することが好ましい。
【0084】
[2-3.第1出力の調整に関する処理]
次に、
図8を参照して、制御部120のコンバータ制御部121により行われる二次電池間での電力供給制御に関する処理のうち、第1出力の調整に関する処理について説明する。
【0085】
上述したように、コンバータ制御部121は、第1SOCが第1範囲外であり、かつ、第2範囲内であるとき、コンバータ出力の大きさを、DCDCコンバータ30の効率を優先した第1出力に制御する。ここで、DCDCコンバータ30の効率の出力に対する特性は、外気温等のDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度に応じて変化する。なお、DCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度は、外気温の他に、例えば、DCDCコンバータ30自体の温度又はDCDCコンバータ30の近傍の部品の温度等を含む。ゆえに、DCDCコンバータ30の効率を適切に向上させる観点では、コンバータ制御部121は、第1出力をDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度(例えば、外気温)に応じて調整することが好ましい。
【0086】
以下、
図8を参照して、
図3に示されるマップの第1出力W1が調整される場合について説明する。
図8は、
図3に示されるマップの第1出力W1が調整され、第1範囲R1及び第2範囲R2の双方が縮小された後の様子を示す図である。
【0087】
図8に示される例では、第1出力W1がコンバータ制御部121により調整されて第1出力W1’に減少している。ここで、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制する観点では、コンバータ制御部121は、第1範囲及び第2範囲の少なくとも一方をDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度に応じて縮小又は拡大することが好ましい。例えば、コンバータ制御部121は、
図8に示されるように、第1範囲R1の上限値H1を外気温に応じて上限値H1’’に減少させ、第1範囲R1の下限値L1を外気温に応じて下限値L1’’に増大させる。それにより、第1範囲R1は、下限値L1’’から上限値H1’’までの第1SOCの範囲である第1範囲R1’’に外気温に応じて縮小される。さらに、コンバータ制御部121は、例えば、第1範囲R1の縮小と同様に、第2範囲R2を、下限値L2’’から上限値H2’’までの第1SOCの範囲である第2範囲R2’’に外気温に応じて縮小する。
【0088】
なお、上記では、第1出力W1が調整されて減少した場合について説明したが、第1出力W1が調整されて増大した場合、コンバータ制御部121は、例えば、第1範囲R1及び第2範囲R2を拡大する。また、上記では、第1出力W1が調整された場合に、コンバータ制御部121が第1範囲R1及び第2範囲R2の双方を縮小又は拡大する例を説明したが、コンバータ制御部121は第1範囲R1及び第2範囲R2の一方のみを縮小又は拡大してもよい。
【0089】
<3.制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0090】
本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、第1二次電池10の残存容量である第1SOCが第1範囲外であるとき、DCDCコンバータ30の動作を制御することによって、第1SOCが第1範囲内に向けて変化するように、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を制御する。ここで、制御部120は、第1SOCが第1範囲外であり、かつ、第1範囲と比較して上限値が大きく下限値が小さい第2範囲内であるとき、DCDCコンバータ30の出力であるコンバータ出力の大きさを、DCDCコンバータ30の効率を優先した第1出力に制御する。また、制御部120は、第1SOCが第2範囲外であるとき、コンバータ出力の大きさを、第1出力よりも大きい第2出力に制御する。それにより、DCDCコンバータ30の効率を向上させつつ、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制することができる。ゆえに、電源システム1での電力の供給における効率を向上させつつ、駆動用モータ50と第1二次電池10との間での電力の供給を適切に行うことができる。よって、2以上の蓄電装置を備える電源システム1における電力の供給を適切に制御することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制限部130は、コンバータ出力の大きさを制限出力以下に制限し、制御部120は、制限出力が第2出力より小さい場合、第1範囲及び第2範囲の少なくとも一方を縮小することが好ましい。それにより、二次電池間での電力の供給の開始又は当該電力の供給の開始後におけるコンバータ出力の増大を、第1SOCの値がより小さい値をとるタイミングで行わせることができる。ゆえに、コンバータ出力の制限により第1SOCが第2範囲外であるときのコンバータ出力が低下した場合であっても、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制することができる。よって、2以上の蓄電装置を備える電源システム1における電力の供給をより適切に制御することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制限部130は、第2二次電池20の状態量に応じて制限出力を決定することが好ましい。それにより、第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量に応じて適切に制限出力を決定することができる。ゆえに、コンバータ出力が第2二次電池20により単位時間あたりに充放電可能な電力量を上回ることを適切に抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、制限出力が第2出力より小さい場合、第1範囲を第2範囲よりも優先して縮小することが好ましい。それにより、二次電池間での電力の供給の開始後において、コンバータ出力の増大が行われる頻度を低下させることができる。ゆえに、DCDCコンバータ30の効率をより適切に向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、第1出力をDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度に応じて調整することが好ましい。それにより、DCDCコンバータ30の効率の出力に対する特性の変化に応じて適切に第1出力を調整することができる。ゆえに、DCDCコンバータ30の効率をより適切に向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、第1範囲及び第2範囲の少なくとも一方をDCDCコンバータ30の温度と相関を有する温度に応じて縮小又は拡大することが好ましい。それにより、二次電池間での電力の供給の開始又は当該電力の供給の開始後におけるコンバータ出力の増大が行われる第1SOCの値を上記温度に応じて適切に変化させることができる。ゆえに、第1出力が上記温度に応じて調整された場合であっても、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制することができる。よって、2以上の蓄電装置を備える電源システム1における電力の供給をより適切に制御することができる。
【0096】
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、第1SOCが第1範囲外であるとき、DCDCコンバータ30の動作を制御することによって、第1SOCが第1範囲内に向けて変化するように、第1二次電池10と第2二次電池20との間での電力の供給を制御する。また、制御部120は、第1SOCが第1範囲外であり、かつ、第1範囲と比較して上限値が大きく下限値が小さい第2範囲内であるとき、コンバータ出力の大きさを、DCDCコンバータ30の効率を優先した第1出力に制御し、第1SOCが第2範囲外であるとき、コンバータ出力の大きさを、第1出力よりも大きい第2出力に制御する。それにより、DCDCコンバータ30の効率を向上させつつ、第1SOCが過度に高い状態又は過度に低い状態になることを適切に抑制することができるので、2以上の蓄電装置を備える電源システム1における電力の供給を適切に制御することができる。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0098】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0099】
また、例えば、上記では、第1二次電池10から第2二次電池20への電力の供給及び第2二次電池20から第1二次電池10への電力の供給の双方について、コンバータ出力の大きさが制限出力以下に制限される例を説明したが、二次電池間の電力の供給のうち一方向のみについてコンバータ出力の大きさが制限出力以下に制限されてもよい。その場合、コンバータ制御部121は、第1範囲又は第2範囲を縮小する際に、各範囲の上限値又は下限値の一方のみを変更してもよい。例えば、第1二次電池10から第2二次電池20への電力の供給のみについて、コンバータ出力の大きさが第2出力よりも小さい制限出力以下に制限される場合、コンバータ制御部121は、第1範囲又は第2範囲の上限値の減少のみを行ってもよい。
【0100】
また、上記では、
図3等を参照して第1SOCとコンバータ出力との関係を説明したが、第1SOCとコンバータ出力との関係は
図3等に示される例に特に限定されない。例えば、第1二次電池10から第2二次電池20へ電力が供給される場合と第2二次電池20から第1二次電池10へ電力が供給される場合との間(つまり、第1SOCが第1範囲の上限値よりも大きい場合と第1範囲の下限値よりも小さい場合との間)で、第1出力及び第2出力の少なくとも一方が異なっていてもよい。また、第1二次電池10から第2二次電池20へ電力が供給される場合と第2二次電池20から第1二次電池10へ電力が供給される場合との間で、制限出力が異なっていてもよい。これらの場合において、コンバータ制御部121は、例えば、第1二次電池10から第2二次電池20への電力の供給及び第2二次電池20から第1二次電池10への電力の供給の少なくとも一方において制限出力が第2出力よりも小さくなる場合に、第1範囲又は第2範囲の縮小を行ってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 電源システム
10 第1二次電池
20 第2二次電池
30 DCDCコンバータ
40 インバータ
50 駆動用モータ
71 第1バッテリセンサ
72 第2バッテリセンサ
73 外気温センサ
100 制御装置
110 取得部
120 制御部
121 コンバータ制御部
122 インバータ制御部
130 制限部