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  • 特許-変位計測装置 図1
  • 特許-変位計測装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】変位計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G01B11/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018200238
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067372
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】511045419
【氏名又は名称】駿河精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】岩下 潤
(72)【発明者】
【氏名】田島 大地
(72)【発明者】
【氏名】安西 穣児
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-234907(JP,A)
【文献】特開2007-218842(JP,A)
【文献】特開2016-109457(JP,A)
【文献】特開2010-101622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に設けられ、スポット状に絞られた反射部及び前記反射部に重ねて配置された一次元回折格子を有するミラーと、
前記ミラーに対して前記反射部よりも広い照射範囲を有する測定光を前記反射部が前記照射範囲に含まれるようにして照射する照射手段と、
前記反射部からの0次反射光を第1光束と第2光束とに分光する分光手段と、
前記第1光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第1センサと、
前記第2光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第2センサと、
前記反射部からの1次反射光を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第3センサと、
前記ミラーに対する前記測定光の照射方向と直交する面内にて互いに直交する方向に第1軸及び第2軸を、前記第1軸及び前記第2軸の両者と直交する方向に第3軸をそれぞれ取ったと仮定したときに、前記第1センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸及び前記第2軸のそれぞれの軸周りの角度変位を検出し、前記第2センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸の方向及び前記第2軸の方向における軸変位を検出し、前記第3センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第3軸の周りの角度変位を検出する変位検出手段と、
を備えた変位計測装置。
【請求項2】
前記第3軸に対して斜めに傾いた方向から前記ミラーの前記反射部に側方測定光を照射する側方照射手段と、
前記反射部からの前記側方測定光に対する反射光を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第4センサとをさらに備え、
前記変位検出手段は、前記第4センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第3軸の方向における軸変位をさらに検出する請求項1に記載の変位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器等の測定対象に生じる変位を光学的手法によって計測する変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象に生じる変位を計測する装置として、レーザ干渉計やオートコリメータのように光学的な手法を用いて変位を計測する装置が知られている。この種の計測装置としては、例えば測定対象の表面に配置された反射型の1次元回折格子と、その回折格子からの0次反射光を受光する第1センサと、第1センサを挟むように配置されて回折格子からの1次反射光を受光する第2センサ及び第3センサとを備え、測定対象に対する測定光の入射方向と直交する直交2軸のそれぞれの軸周りの角度変位を第1センサによって検出し、測定光の入射方向と平行な軸周りの角度変位を第2及び第3センサによって検出する装置が提案されている(特許文献1参照)。測定対象上の1次元回折格子からの0次反射光を受光する第1センサと、1次反射光を受光する第2センサとを備え、第1センサを用いて測定光の入射方向と直交する直交2軸のそれぞれの軸周りの角度変位を検出し、第2センサを用いて測定光の入射方向と平行な軸周りの角度変位を検出する変位計測装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-218842号公報
【文献】特開2016-109457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した変位計測装置は、直交3軸のそれぞれの軸周りの角度変位を検出することを目的として構成されており、軸方向の変位(以下、軸変位と呼ぶことがある。)を計測する仕組みを有しない。そこで、本発明は角度変位とともに軸変位をも計測することが可能な変位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る変位計測装置は、測定対象に設けられ、スポット状に絞られた反射部及び前記反射部に重ねて配置された1次元回折格子を有するミラーと、前記ミラーに対して前記反射部よりも広い照射範囲を有する測定光を前記反射部が前記照射範囲に含まれるようにして照射する照射手段と、前記反射部からの0次反射光を第1光束と第2光束とに分光する分光手段と、前記第1光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第1センサと、前記第2光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第2センサと、前記反射部からの1次反射光を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第3センサと、前記ミラーに対する前記測定光の照射方向と直交する面内にて互いに直交する方向に第1軸及び第2軸を、前記第1軸及び前記第2軸の両者と直交する方向に第3軸をそれぞれ取ったと仮定したときに、前記第1センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸及び前記第2軸のそれぞれの軸周りの角度変位を検出し、前記第2センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸の方向及び前記第2軸の方向における軸変位を検出し、前記第3センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第3軸の周りの角度変位を検出する変位検出手段と、を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一形態に係る変位計測装置の要部を示す図。
図2図1の変位計測装置に用いられるミラー及びその周囲の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の一形態に係る変位計測装置を説明する。図1に示すように、一形態に係る変位計測装置1は、測定対象2に対して照射される第1測定光101の照射方向(入射方向)を基準として、その照射方向と直交する面内で互いに直交する方向に第1軸及び第2軸の一例としてのX軸及びY軸を、X軸及びY軸の両者に直交する方向に第3軸の一例としてのZ軸を取ったときの各軸の方向に沿った測定対象2の軸変位δx、δy、δzと、各軸周りの変位θx、θy、θzを計測するように構成されている。測定対象2の表面2aは、軸方向の変位及び軸周りの角度変位のいずれも生じていない初期状態にあるときにX軸及びY軸方向と平行でかつZ軸方向と直交する。なお、図1においてY軸の方向は紙面と直交する方向である。以下では、X軸及びY軸と平行な仮想的な平面をX-Y平面、X軸及びZ軸と平行な仮想的な平面をX-Z平面、といったように、各軸の方向に沿った平面を特定することがある。測定対象2は、一例としてカメラのオートフォーカス機構を駆動するアクチュエータである。ただし、測定対象2はこれに限らず、精密機器その他の製品、又はそれらの製品に実装される各種の物品が測定対象に選択されてよい。
【0008】
上述した変位の計測を可能とするため、変位計測装置1は、測定対象2の表面2aに配置されるミラー3と、そのミラー3に対してZ軸方向から第1測定光101を照射する照射手段の一例としての第1照射部10と、Z軸方向に対して斜めに傾いた方向からミラー3に対して第2測定光102を照射する側方照射手段の一例としての第2照射部20とを備えている。第1測定光101は、X軸及びY軸に関する軸方向の軸変位δx、δy、並びにX軸、Y軸、Z軸に関する軸周りの角度変位θx、θy、θzを計測するために照射される。第2測定光102は、Z軸方向の軸変位δzを計測するために照射される。第2測定光102はZ軸に対してX軸方向に傾けられている。つまり、第2測定光102はX-Z平面に沿ってZ軸から斜めに傾くようにしてミラー3に照射される。
【0009】
図2に詳しく示すように、ミラー3は、ミラー本体3Aにマスク3Bを接着等によって固定したアッセンブリ部品として構成されている。マスク3Bは、その中央部を貫通するピンホール部3bを備えている。したがって、ミラー3に照射された測定光101、102はピンホール部3bの範囲に限って反射する。それにより、ピンホール部3bはスポット状に絞られた反射部を生じさせる手段の一例として機能する。反射部は、スポット状に絞られる限りにおいて、ピンホール部3bに限らず、例えば反射率を高めたマークその他の光学的手段によって形成されてよい。ミラー本体3Aのマスク3Bが重ね合わされる上面には1次元回折格子(以下、回折格子と略称することがある。)3bが設けられている。回折格子3aは、直線状の格子状パターン(例えば凹凸)が一定方向に繰り返し形成された周知の光学素子である。回折格子3aの格子状パターンの並び方向は、一例としてY軸方向に設定されている。回折格子3aとマスク3Bのピンホール部3bとは相互に重なり合い、回折格子3aにおける格子状パターンのピッチはピンホール部3bの内径よりも十分に小さい。それによりピンホール部3bへの入射光は回折格子3aの回折作用の影響を受ける。
【0010】
図1に戻って、第1照射部10は、光源11と、コリメートレンズ12とを備えている。光源11は一例としてレーザダイオードである。ただし、レーザダイオード以外の光源が用いられてもよい。光源11はその光軸をX軸方向に向けた状態で配置されている。コリメートレンズ12は、光源11から射出される照明光を円形断面を有する平行光束に整形することにより第1測定光101を生じさせる。コリメートレンズ12から出射した第1測定光101は第1ハーフミラー5にてZ軸方向に反射してミラー3に導かれる。第1測定光101のビーム径はミラー3のピンホール部3bの内径よりも十分に大きい。したがって、ミラー3に対する第1測定光101の照射範囲はピンホール部3bよりも広い。測定対象2が初期状態にあるとき、第1測定光101の光軸AX1はピンホール部3bの中心線と一致する。換言すれば、ミラー3はそのピンホール部3bの中心線が初期状態において第1測定光101の光軸AX1と一致するように配置される。測定対象2に生じ得るX軸方向の軸変位δx、及びY軸方向の軸変位δyの最大値を予想し、それらの最大値の変位が生じてもピンホール部3bが第1測定光101の照射範囲に含まれるように第1測定光101のビーム径を設定すれば、軸変位δx、δyの大小に関わりなく、第1測定光101に対応する0次反射光110及び1次反射光111をピンホール部3bから出射させることができる。0次反射光110は、回折格子3aによる回折の影響を受けることなくピンホール部3bにて正反射した反射光、1次反射光111は回折格子3aによる回折の影響を受けて生じる反射光である。
【0011】
第2照射部20は、光源21と光学系22とを備えている。光源21は一例としてレーザダイオードである。ただし、レーザダイオード以外の光源が用いられてもよい。光源21はその光軸AX2がX-Z平面内でZ軸方向に対して所定の傾斜角φだけ傾くようにして配置されている。傾斜角αは一例として45°に設定される。光学系22は、単一のレンズ又は複数のレンズの組み合わせによって構成され、光源21から射出される第2測定光102を集光してピンホール部3b内で結像させる。ピンホール部3bに導かれる第2測定光102のビーム径は、ピンホール部3bの内径に対して十分に小さく、したがって、測定対象2の各軸方向の軸変位δx、δy、δz及び角度変位θx、θy、θzに関わりなく第2測定光102はピンホール部3bに入射する。それにより、ピンホール部3bからは第2測定光102に対応した反射光120が、第2測定光102に対してZ軸を挟んで反対側に出射する。
【0012】
上述した反射光110、111、120を利用して軸変位δx、δy、δz及び角度変位θx、θy、θzを検出するため、変位計測装置1には、さらに第2ハーフミラー30、第1受光部40、第2受光部50、第3受光部60、第4受光部70及び処理部80が設けられている。第2ハーフミラー30は、ミラー3からの0次反射光110を、第2ハーフミラー30を透過する第1光束110aと、第2ハーフミラー30にて反射して第1光束110aと直交する方向に進む第2光束110bとに分光する。それにより、第2ハーフミラー30は分光手段の一例として機能する。ただし、分光手段はハーフミラーに限らず、プリズム、ビームスプリッタといった分光作用を有する適宜の光学素子が分光手段として用いられてよい。
【0013】
第1受光部40は、第1光束110aを利用してX軸及びY軸のそれぞれの軸周りの角度変位θx、θyを検出するために設けられた受光部である。第1受光部40は、第1センサ41と、光学系42とを備えている。光学系42は単一のレンズ又は複数のレンズの組み合わせによって構成され、第2ハーフミラー30を透過した第1光束110aを集光して第1センサ41の受光面41aに結像させる。第1センサ41は受光面41aにおける第1光束110aの受光位置(結像位置)に応じた信号を出力する。第1センサ41は、受光面41aが第1測定光101の光軸AX1の方向と直交し、かつ測定対象2が初期状態にあるときにその受光面41aの中央にて第1光束110aを受光するように配置されている。
【0014】
第2受光部50は、第2光束110bを利用してX軸及びY軸のそれぞれの軸方向の軸変位δx、δyを検出するために設けられた受光部である。第2受光部50は、第2センサ51と、光学系52と、ミラー53とを備えている。光学系52は単一のレンズ又は複数のレンズの組み合わせによって構成され、第2ハーフミラー30にて反射した第2光束110bを集光する。ミラー53は、光学系52から出射した第2光束110bを第2センサ51の受光面51aに向けて反射させる。光学系52は、第2センサ51の受光面51aにて第2光束110bが適度の広がりを有する像を形成するように設けられている。第2センサ51は、受光面51aにおける第2光束110aの受光位置に応じた信号を出力する。第2センサ51は、測定対象2が初期状態にあるときにその受光面51aが第2光束110bの入射方向と直交し、かつその受光面51aの中央にて第2光束110bを受光するように配置されている。なお、第2センサ51の受光面51aに対する第2光束110bの入射方向は第1測定光101の光軸AX1と平行に設定されている。ただし、その入射方向は光軸AX1に対して傾き、あるいは直交してもよい。すなわち、光学系52から第2センサ51に至る光路中にミラー、プリズム等の適宜の光学素子が配置されることにより、第2センサ51の向きが図1に示した態様から適宜に変更されてよい。
【0015】
第3受光部60は、ミラー3から射出する1次反射光111を利用してZ軸の軸周りの角度変位θzを検出するために設けられた受光部である。第3受光部60は、第3センサ61と、光学系62とを備えている。光学系62は単一のレンズ又は複数のレンズの組み合わせによって構成され、ミラー3から出射する1次反射光111を集光して第3センサ61の受光面61aに結像させる。第3センサ61は受光面61aにおける1次反射光111の受光位置(結像位置)に応じた信号を出力する。第3センサ61は、測定対象2が初期状態にあるときにその受光面61aの中央にて1次反射光111を受光するように配置されている。
【0016】
第4受光部70は、ミラー3から出射する反射光120を利用してZ軸方向の軸変位δzを検出するために設けられた受光部である。第4受光部70は、第4センサ71と光学系72とを備えている。光学系72は単一のレンズ又は複数のレンズの組み合わせによって構成され、第2測定光102の照射に対応してミラー3から出射する反射光120を集光して第4センサ71の受光面71aに結像させる。第4センサ71は受光面71aにおける反射光120の受光位置(結像位置)に応じた信号を出力する。第4センサ71は、測定対象2が初期状態にあるときにその受光面71aの中央にて反射光120を受光するように配置されている。
【0017】
上述した受光部40、50、60、70に設けられるセンサ41、51、61、71には、受光面41a、51a、61a、71aにおける受光位置に応じた信号を出力できる限り、各種の光電変換型のセンサが用いられてよいが、一例として、2次元PSDセンサを用いることができる。PSDセンサはフォトダイオードの表面抵抗を利用して受光位置に対応する信号を連続的に出力できる位置センサであって、微小な変位を高精度かつ高速で計測する用途に適している。ただし、本発明におけるセンサはPSDセンサに限らない。CCDセンサ、CMOSセンサといった他の種類の光電変換型のセンサが用いられてもよい。
【0018】
処理部80は、マイクロプロセッサとその動作に必要な内部メモリ等の周辺装置を組み合わせたコンピュータユニットとして構成されている。処理部80は所定のコンピュータプログラムに従ってセンサ41、51、61、71の出力信号を処理することにより、3軸方向の軸変位δx、δy、δz及び角度変位θx、θy、θzを検出する。つまり、処理部80は変位検出手段の一例として機能する。各変位を検出するにあたって、処理部80は、検出対象としての軸変位δx、δy、δz及び角度変位θx、θy、θzに応じてセンサ41、51、61、71の出力信号を使い分ける。以下、順に説明する。
【0019】
(1)X軸及びY軸の軸周りの角度変位θx、θy
角度変位θx、θyは、第1センサ41が出力する信号に基づいて検出される。測定対象2に角度変位θx、θyの少なくともいずれか一方が生じると、ミラー3からの0次反射光110の反射方向が光軸AX1からずれ、そのずれの方向及び量に応じて第1センサ41の受光面41aにおける第1光束110aの受光位置が変化する。処理部80は、例えば測定対象2が初期状態にあるときの第1センサ41における受光位置を基準として、その受光位置の変化の方向及び量を判別し、得られた値をミラー3と第1センサ41との間の幾何学的関係に従って角度変位θx、θyにそれぞれ換算することにより、角度変位θx、θyを検出する。
【0020】
(2)X軸方向及びY軸方向の軸変位δx、δy
軸変位δx、δyは第2センサ51が出力する信号に基づいて検出される。変位計測装置1においては、ミラー3に照射される第1測定光101の照射範囲がピンホール部3bよりも広く設定されているので、軸変位δx、δyが生じてもピンホール部3bが射範囲内に維持される一方で、その照射範囲内における0次反射光110の反射位置(出射位置)が軸変位δx、δyに応じて変化することになる。そして、反射位置が変化すれば、第2センサ51の受光面51aにおける第2光束110bの受光位置も変化する。つまり、第2センサ51の受光面51a上では、軸変位δx、δyが受光位置に置き換えられる。処理部80は、例えば測定対象2が初期状態にあるときの第2センサ51における受光位置を基準として、その受光位置の変化の方向及び量を判別し、得られた値をミラー3と第2センサ51との間の幾何学的関係に従って軸変位δx、δyにそれぞれ換算することにより、軸変位δx、δyを検出する。
【0021】
(3)Z軸の周りの角度変位θz
角度変位θzは、第3センサ61が出力する信号に基づいて検出される。測定対象2に角度変位θzが生じると、ミラー3からの1次反射光111の反射方向が光軸AX1を中心として回転するように変化し、その回転の方向及び量(角度)に応じて第3センサ61の受光面61aにおける1次反射光111の受光位置が変化する。処理部80は、例えば測定対象2が初期状態にあるときの第3センサ61における受光位置を基準として、その受光位置の変化の方向及び量を判別し、得られた値をミラー3と第3センサ61との間の幾何学的関係に従って角度変位θzに換算することにより角度変位θzを検出する。
【0022】
(4)Z軸方向の軸変位δz
軸変位δzは、第4センサ71が出力する信号に基づいて検出される。測定対象2に軸変位δzが生じると、第2測定光102に対するミラー3のピンホール部3bにおける反射光120の反射位置がZ軸方向に変化し、その変化の方向及び量に応じて第4センサ71の受光面71aにおける反射光120の受光位置が変化する。処理部80は、例えば測定対象2が初期状態にあるときの第4センサ71における受光位置を基準として、その受光位置の変化の方向及び量を判別し、得られた値をミラー3と第4センサ71との間の幾何学的関係に従って軸変位δzに換算することにより軸変位δzを検出する。
【0023】
処理部80は、以上のようにして検出した軸変位δx、δy、δz及び角度変位θx、θy、θzを例えば不図示のモニタに表示し、所定の記憶媒体に記録し、あるいは印刷するといった手段を介して変位計測装置1のオペレータが取得可能な態様で検出結果を出力する。なお、上記では、検出対象の軸変位又は角度変位ごとに区別して処理部80の処理を説明したが、測定対象2に複合的な変位、すなわち、2以上のセンサのそれぞれの出力信号に基づいて検出されるべき複数種類の変位が生じることにより、各センサの受光位置が複数種類の変位の影響を受ける場合には、各変位とセンサの受光位置との間に生じる幾何学的関係を利用して、検出対象以外の変位の影響が除外されるように、各センサの出力信号に従って換算された軸変位又は角度変位を補正すればよい。
【0024】
変位計測装置1は、各部10~80を収容するハウジング6をさらに備えている。ハウジング6の下面側(測定対象2と対向する側)には、第1測定光101、第2測定光102、0次反射光110、1次反射光111及び反射光120を通過させる窓部7が適宜に設けられる。ただし、ハウジング6は変位計測装置1に必ずしも設けることを要しない。
【0025】
以上の形態においては、Z軸方向の軸変位δzを計測するために第2照射部20及び第4受光部70が設けられているが、軸偏位δzの計測を要しない場合には第2照射部20及び第4受光部70が省略されてもよい。
【0026】
上記の形態では、第2ハーフミラー30を透過した光を第1光束110aを第1受光部40に、第2ハーフミラー30で反射した第2光束110bを第2受光部60にそれぞれ導いたが、第2ハーフミラー30に対して受光部40、50を入れ替えることにより、第2ハーフミラー30を透過した光束を第2光束として第2センサ51に入射させ、第2ハーフミラー30で反射した第1光束として第1センサ41に入射させてもよい。また、第1照射部10及び受光部40、50は、ハーフミラー5、30との関係で適宜に入れ替えて配置されてもよい。例えば、第1照射部10を光軸AX1の延長上に配置することにより、第1測定光101が、ハーフミラー30、5を順次通過してミラー3に導かれるものとしてもよい。その場合、ハーフミラー5、30にて0次反射光110を第1光束及び第2光束に順次分光してセンサ41、51に導くようにしてもよい。あるいは、第1ハーフミラー5にて0次反射光110を反射させ、その後の光路内に第2ハーフミラー30を配置して0次反射光110を第1光束及び第2光束に分光し、それらの光束を第1センサ41、第2センサ51に区別して導くようにしてもよい。
【0027】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0028】
本発明の一態様に係る変位計測装置(1)は、測定対象(2)に設けられ、スポット状に絞られた反射部(3b)及び前記反射部に重ねて配置された1次元回折格子(3a)を有するミラー(3)と、前記ミラーに対して前記反射部よりも広い照射範囲を有する測定光(101)を前記反射部が前記照射範囲に含まれるようにして照射する照射手段(10)と、前記反射部からの0次反射光(110)を第1光束(110a)と第2光束(110b)とに分光する分光手段(30)と、前記第1光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第1センサ(41)と、前記第2光束を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第2センサ(51)と、前記反射部からの1次反射光(111)を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第3センサ(61)と、前記ミラーに対する前記測定光の照射方向と直交する面内にて互いに直交する方向に第1軸(例えばX軸)及び第2軸(例えばY軸)を、前記第1軸及び前記第2軸の両者と直交する方向に第3軸(例えばZ軸)をそれぞれ取ったと仮定したときに、前記第1センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸及び前記第2軸のそれぞれの軸周りの角度変位(θx、θy)を検出し、前記第2センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第1軸の方向及び前記第2軸の方向における軸変位(δx、δy)を検出し、前記第3センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第3軸の周りの角度変位(θz)を検出する変位検出手段(80)と、を備えたものである。
【0029】
上記の態様によれば、回折格子による回折の影響を受けることなくミラーの反射部で反射した0次反射光が分光手段により第1光束及び第2光束に分光され、それらの光束が第1センサ及び第2センサに区別して受光される。測定対象に第1軸及び第2軸の少なくともいずれか一方の周りの角度変位が生じた場合、ミラーの反射部における0次反射光の反射方向が変化し、それに伴なって第1センサにおける受光位置が変化する。したがって、第1センサの受光位置に基づいて第1軸及び第2軸の軸周りの角度変位を検出することができる。ミラーの反射部がスポット状に絞られ、その反射部と比較してミラーに照射される測定光の照射範囲が広く設定されているため、ミラー上における0次反射光の反射位置は、測定対象の第1軸及び第2軸の方向における軸変位に応じて第1軸及び第2軸のそれぞれと平行な面内で適宜に変化することになる。そして、その変化は第2センサにおける受光位置の変化として現れる。したがって、第2センサの受光位置に基づいて第1軸及び第2軸の軸変位を検出することができる。さらに、回折格子の回折の影響を受ける1次反射光については、回折格子の格子状パターンが並ぶ方向に従って第3軸に対し斜めに偏った方向に反射する。したがって、測定対象に第3軸の軸周りの角度変位が生じた場合、その角度変位に応じて第3センサにおける受光位置が変化する。そのため、第3センサの受光位置に基づいて第3軸の周りの角度変位を検出することができる。
【0030】
上記態様において、変位計測装置は、前記第3軸に対して斜めに傾いた方向から前記ミラーの前記反射部に側方測定光(102)を照射する側方照射手段(20)と、前記反射部からの前記側方測定光に対する反射光(120)を受光し、受光位置に応じた信号を出力する第4センサ(71)とをさらに備え、前記変位検出手段は、前記第4センサが出力する信号に基づいて前記測定対象の前記第3軸の方向における軸変位(δz)をさらに検出してもよい。この態様によれば、さらに第3軸の方向における軸変位をも併せて検出することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 変位計測装置
2 測定対象
3 ミラー
3a 1次元回折格子
3b ピンホール部(反射部)
10 第1照射部(照射手段)
20 第2照射部(側方照射手段)
30 第2ハーフミラー(分光手段)
41 第1センサ
51 第2センサ
61 第3センサ
71 第4センサ
80 処理部(変位検出手段)
101 第1測定光(測定光)
102 第2測定光(側方測定光)
110 0次反射光
110a 第1光束
110b 第2光束
111 1次反射光
120 側方測定光に対する反射光
図1
図2