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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】検体測定方法および検体測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20220727BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N37/00 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018219168
(22)【出願日】2018-11-22
(62)【分割の表示】P 2017231146の分割
【原出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019101032
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-07-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】能勢 智之
(72)【発明者】
【氏名】友田 小百合
(72)【発明者】
【氏名】三井田 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】堀井 和由
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321383(JP,A)
【文献】特開2012-168038(JP,A)
【文献】特開2005-300292(JP,A)
【文献】特開2011-232205(JP,A)
【文献】特開2014-066607(JP,A)
【文献】特開2010-008100(JP,A)
【文献】特表2012-522450(JP,A)
【文献】特開2017-184737(JP,A)
【文献】特開平02-158890(JP,A)
【文献】特開2005-300528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0065647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0250141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された検体を検体測定装置により光学的に測定する検体測定方法であって、
前記検体測定装置の予め決められた配置位置に、試薬を収容した収容部と、前記検体が注入される開口と、前記検体と前記試薬とが混合されるチャンバと、前記収容部、前記開口および前記チャンバを接続するチャネルとを有する前記容器を配置し、
前記容器の前記配置位置に応じて前記容器を回転させて、前記容器を読取部の読取位置に移動させ、
前記読取位置に移動させた前記容器から、試薬に関する情報および前記検体に対する測定項目を特定するための情報の読み取りを前記読取部により開始し、
読み取った前記試薬に関する情報を端末またはサーバに送信し、
前記試薬に関する情報の送信に対する応答により、前記端末または前記サーバから、検量線に関する情報を取得し、
前記測定項目に応じた測定動作パターンで前記検体と前記容器中の前記試薬とを混合させることにより生じさせた化学発光を検出し、得られた検出値と前記検量線に基づいて前記検体の測定結果取得する、検体測定方法。
【請求項2】
前記容器を回転させて、前記容器が備える情報記録媒体と前記読取部とが上下に対向するように、前記容器を前記読取位置に移動させる、請求項1に記載の検体測定方法。
【請求項3】
円盤形状の前記容器を前記検体測定装置の配置部の上面に配置し、
前記配置部に配置された前記容器を、鉛直方向の回転軸を中心に回転させて、前記容器を前記読取位置に移動させる、請求項2に記載の検体測定方法。
【請求項4】
前記検体測定装置は、前記容器が備える封止体を開栓するように動作する開栓部を含み、
前記容器を回転させて、前記容器の前記封止体と前記開栓部との位置合わせを行い、
位置合わせされた前記開栓部により前記封止体を開栓する動作を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の検体測定方法。
【請求項5】
前記開栓部は、前記検体測定装置に配置された前記容器の上方を覆い遮光する蓋に設けられ、上方から前記封止体を押圧することにより前記封止体を開栓する、請求項4に記載の検体測定方法。
【請求項6】
前記開栓部は、前記封止体を押圧するピン部材と、前記ピン部材を進退させる駆動部とを含み、位置合わせされた前記容器に対して前記ピン部材を進退させることにより前記封止体を開栓する、請求項4または5に記載の検体測定方法。
【請求項7】
前記封止体は、前記容器において複数設けられ、
前記容器を回転させて、複数の前記封止体の各々と前記開栓部との位置合わせを行い、
位置合わせされた各々の前記封止体を前記開栓部により開栓する動作を行う、請求項4~6のいずれか1項に記載の検体測定方法。
【請求項8】
前記封止体は、前記容器に収容された液体を封止しており、
前記開栓部により前記封止体を開栓した後、前記容器を回転させることにより、前記容器内で前記液体を移動させる、請求項4~7のいずれか1項に記載の検体測定方法。
【請求項9】
前記容器は、バーコード、多次元コードまたはRFタグである情報記録媒体を含む、請求項1に記載の検体測定方法。
【請求項10】
容器に収容された検体を光学的に測定する検体測定装置であって、
試薬に関する情報および前記検体に対する測定項目を特定するための情報が記録された情報記録媒体を有するとともに、試薬を収容した収容部と、前記検体が注入される開口と、前記検体と前記試薬とが混合されるチャンバと、前記収容部、前記開口および前記チャンバを接続するチャネルとを有する前記容器を予め決められた配置位置に配置可能な配置部と、
前記配置部に配置された前記容器を回転させる回転駆動部と、
前記情報記録媒体から情報を読み取る読取部と、
端末またはサーバと通信を行う通信部と、
前記検体を測定する測定部と、
前記回転駆動部、前記読取部及び前記測定部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記容器の前記配置位置に応じて前記容器を回転させることにより前記容器を前記読取部の読取位置に移動させ、前記読取部による前記試薬に関する情報および前記測定項目を特定するための情報の読み取りを開始し、読み取った前記試薬に関する情報を前記通信部により前記端末または前記サーバに送信し、前記試薬に関する情報の送信に対する応答により、前記端末または前記サーバから、検量線に関する情報を前記通信部により取得し、前記測定項目に応じた測定動作パターンで前記検体と前記容器中の前記試薬とを混合させることにより生じさせた化学発光を検出し、得られた検出値と前記検量線に基づいて前記検体の測定結果取得する制御を行う、検体測定装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記容器を回転させて、前記情報記録媒体と前記読取部とが上下に対向するように、前記容器を前記読取位置に移動させる制御を行う、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項12】
前記配置部は、円盤形状の前記容器を上面に配置可能であり、
前記回転駆動部は、前記配置部に配置された前記容器を、鉛直方向の回転軸を中心に回転させて、前記容器を前記読取位置に移動させる、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項13】
前記容器が備える封止体を開栓するように動作する開栓部をさらに備え、
前記制御部は、前記回転駆動部により前記容器を回転させて、前記容器の前記封止体と前記開栓部との位置合わせを行い、位置合わせされた前記開栓部により前記封止体を開栓する動作を行うように制御する、請求項1~1のいずれか1項に記載の検体測定装置。
【請求項14】
前記配置部に配置された前記容器を遮光するように前記配置部の上方を覆う開閉可能な蓋をさらに備え、
前記開栓部は、前記蓋に設けられ、上方から前記封止体を押圧することにより前記封止体を開栓するように構成されている、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項15】
前記開栓部は、前記封止体を押圧するピン部材と、前記ピン部材を進退させる駆動部とを含み、位置合わせされた前記容器に対して前記ピン部材を進退させることにより前記封止体を開栓するように構成されている、請求項1または1に記載の検体測定装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記容器を回転させて、前記容器に設けられた複数の前記封止体の各々と前記開栓部との位置合わせを行い、位置合わせされた各々の前記封止体を前記開栓部により開栓する制御を行う、請求項1~1のいずれか1項に記載の検体測定装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記開栓部により前記封止体を開栓した後、前記容器を回転させることにより、前記容器内で前記封止体による封止が解除された液体を移動させる制御を行う、請求項1~1のいずれか1項に記載の検体測定装置。
【請求項18】
前記読取部は、バーコード、多次元コードまたはRFタグである前記情報記録媒体から前記情報を読み取り可能である、請求項1~1のいずれか1項に記載の検体測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の測定を行う検体測定方法および検体測定装置に関する(たとえば、特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図27に示すように表示画面901を備えた検体測定装置900が開示されている。検体測定装置900は、ディスク状カートリッジ(図示せず)が配置される配置部903が設けられたローダー902を備える。表示画面901は、タッチパネルを有し、ボタン904を含むユーザーインターフェース画面による操作入力の受付ができる。ユーザーインターフェース画面を介して、被検者の人種、性別、年齢、身長および体重などの情報が入力される。各種情報の入力が完了した後に表示画面901に表示されたボタン904を操作すると、ローダー902が装置外に移動する。ユーザは、血液検体を注入したカートリッジを装置外に移動したローダー902の配置部903に配置し、ローダー902を装置内に送り込んだ後、表示画面901に表示されたボタン904を操作する。検体測定装置900は、ボタン904の入力を受け付けると、カートリッジを用いた検体の測定動作を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0054342号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている検体測定装置は、いわゆるPoC(ポイントオブケア)検査向けの小型の測定装置である。PoC向けの検体測定装置は、検査室を備える医療施設で専門の検査技師により利用される大型装置と異なり、小規模の診療所等での利用が主たる用途となる。そのため、PoC向けの検体測定装置は、専門の検査技師以外のスタッフや、患者自身によって操作されることが想定され、簡易な操作で測定を行えることが望まれる。しかしながら、特許文献1では、各種情報の入力をした後でなければ測定を開始することができないため、ユーザーインターフェース画面上での各種情報の操作入力が必須となり、煩雑な入力操作が測定を行う度に求められる。また、ユーザが、ユーザーインターフェース画面上での操作に慣れていないと、誤操作が生じ易い。
【0005】
この発明は、より簡易な操作で測定を開始できるようにすることに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の局面による検体測定方法は、容器(300)に収容された検体を検体測定装置(100)により光学的に測定する検体測定方法であって、検体測定装置(100)の予め決められた配置位置に、試薬を収容した収容部(311、312)と、検体が注入される開口(341)と、検体と試薬とが混合されるチャンバ(321~326)と、収容部(311、312)、開口(341)およびチャンバ(321~326)を接続するチャネル(330、343)とを有する容器(300)を配置し、容器(300)の配置位置に応じて容器(300)を回転させて、容器(300)を読取部(30)の読取位置に移動させ、読取位置に移動させた容器(300)から、試薬に関する情報(411)および検体に対する測定項目を特定するための情報(412)の読み取りを読取部(30)により開始し、読み取った試薬に関する情報(411)を端末(500)またはサーバ(600)に送信し、試薬に関する情報(411)の送信に対する応答により、端末(500)またはサーバ(600)から、検量線(416)に関する情報を取得し、測定項目に応じた測定動作パターンで検体と容器(300)中の試薬とを混合させることにより生じさせた化学発光を検出し、得られた検出値と検量線(416)に基づいて検体の測定結果取得する。
【0007】
上記第1の局面による検体測定方法において、容器(300)を回転させて、容器(300)が備える情報記録媒体(400)と読取部(30)とが上下に対向するように、容器(300)を読取位置に移動させるようにしてもよい。
【0008】
この場合、円盤形状の容器(300)を検体測定装置(100)の配置部(20)の上面に配置し、配置部(20)に配置された容器(300)を、鉛直方向の回転軸(122)を中心に回転させて、容器(300)を読取位置に移動させるようにしてもよい。
【0009】
上記第1の局面による検体測定方法において、検体測定装置(100)は、容器(300)が備える封止体(350)を開栓するように動作する開栓部(43)を含み、容器(300)を回転させて、容器(300)の封止体(350)と開栓部(43)との位置合わせを行い、位置合わせされた開栓部(43)により封止体(350)を開栓する動作を行うようにしてもよい。
【0010】
この場合、開栓部(43)は、検体測定装置(100)に配置された容器(300)の上方を覆い遮光する蓋(102)に設けられ、上方から封止体(350)を押圧することにより封止体(350)を開栓するように構成してもよい。
【0011】
上記開栓部(43)により封止体(350)を開栓する動作を行う場合、開栓部(43)は、封止体(350)を押圧するピン部材(126)と、ピン部材(126)を進退させる駆動部(127)とを含み、位置合わせされた容器(300)に対してピン部材(126)を進退させることにより封止体(350)を開栓するようにしてもよい。
【0012】
上記開栓部(43)により封止体(350)を開栓する動作を行う場合、封止体(350)は、容器(300)において複数設けられ、容器(300)を回転させて、複数の封止体(350)の各々と開栓部(43)との位置合わせを行い、位置合わせされた各々の封止体(350)を開栓部(43)により開栓する動作を行うようにしてもよい。
【0013】
上記開栓部(43)により封止体(350)を開栓する動作を行う場合、封止体(350)は、容器(300)に収容された液体を封止しており、開栓部(43)により封止体(350)を開栓した後、容器(300)を回転させることにより、容器(300)内で液体を移動させるようにしてもよい。
【0016】
上記第1の局面による検体測定方法において、容器(300)は、バーコード、多次元コードまたはRFタグである情報記録媒体(400)を含み得る。
【0017】
この発明の第2の局面による検体測定装置は、容器(300)に収容された検体を光学的に測定する検体測定装置(100)であって、試薬に関する情報(411)および検体に対する測定項目を特定するための情報(412)が記録された情報記録媒体(400)を有するとともに、試薬を収容した収容部(311、312)と、検体が注入される開口(341)と、検体と試薬とが混合されるチャンバ(321~326)と、収容部(311、312)、開口(341)およびチャンバ(321~326)を接続するチャネル(330、343)とを有する容器(300)を予め決められた配置位置に配置可能な配置部(20)と、配置部(20)に配置された容器(300)を回転させる回転駆動部(41)と、情報記録媒体(400)から情報(411、412)を読み取る読取部(30)と、端末(500)またはサーバ(600)と通信を行う通信部(152)と、検体を測定する測定部(40)と、回転駆動部(41)、読取部(30)及び測定部(40)を制御する制御部(50)と、を備え、制御部(50)は、容器(300)の配置位置に応じて容器(300)を回転させることにより容器(300)を読取部(30)の読取位置に移動させ、読取部(30)による試薬に関する情報(411)および測定項目を特定するための情報(412)の読み取りを開始し、読み取った試薬に関する情報(411)を通信部(152)により端末(500)またはサーバ(600)に送信し、試薬に関する情報(411)の送信に対する応答により、端末(500)またはサーバ(600)から、検量線(416)に関する情報を通信部(152)により取得し、測定項目に応じた測定動作パターンで検体と容器(300)中の試薬とを混合させることにより生じさせた化学発光を検出し、得られた検出値と検量線(416)に基づいて検体の測定結果取得する制御を行う。
【0018】
上記第2の局面による検体測定装置において、制御部(50)は、容器(300)を回転させて、情報記録媒体(400)と読取部(30)とが上下に対向するように、容器(300)を読取位置に移動させる制御を行うように構成してもよい。
【0019】
この場合、配置部(20)は、円盤形状の容器(300)を上面に配置可能であり、回転駆動部(41)は、配置部(20)に配置された容器(300)を、鉛直方向の回転軸(122)を中心に回転させて、容器(300)を読取位置に移動させるように構成してもよい。
【0020】
上記第2の局面による検体測定装置において、容器(300)が備える封止体(350)を開栓するように動作する開栓部(43)をさらに備え、制御部(50)は、回転駆動部(41)により容器(300)を回転させて、容器(300)の封止体(350)と開栓部(43)との位置合わせを行い、位置合わせされた開栓部(43)により封止体(350)を開栓する動作を行うように制御するように構成してもよい。
【0021】
この場合、配置部(20)に配置された容器(300)を遮光するように配置部(20)の上方を覆う開閉可能な蓋(102)をさらに備え、開栓部(43)は、蓋(102)に設けられ、上方から封止体(350)を押圧することにより封止体(350)を開栓するように構成されていてもよい。
【0022】
上記開栓部(43)を備える構成において、開栓部(43)は、封止体(350)を押圧するピン部材(126)と、ピン部材(126)を進退させる駆動部(127)とを含み、位置合わせされた容器(300)に対してピン部材(126)を進退させることにより封止体(350)を開栓するように構成されていてもよい。
【0023】
上記開栓部(43)を備える構成において、制御部(50)は、容器(300)を回転させて、容器(300)に設けられた複数の封止体(350)の各々と開栓部(43)との位置合わせを行い、位置合わせされた各々の封止体(350)を開栓部(43)により開栓する制御を行うように構成してもよい。
【0024】
上記開栓部(43)を備える構成において、制御部(50)は、開栓部(43)により封止体(350)を開栓した後、容器(300)を回転させることにより、容器(300)内で封止体(350)による封止が解除された液体を移動させる制御を行うように構成してもよい。
【0027】
上記第2の局面による検体測定装置において、読取部(30)は、バーコード、多次元コードまたはRFタグである情報記録媒体(400)から情報を読み取り可能であり得る。
【発明の効果】
【0028】
より簡易な操作で測定を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態による検体測定装置の概略図である。
図2】検体測定方法を説明するためのフロー図である。
図3】検体測定装置の蓋を開いた状態を示した斜視図である。
図4】検体測定装置の蓋を閉じた状態を示した斜視図である。
図5】ディスク型の容器の構成例を示した平面図である。
図6】情報記録媒体に記録される情報を示した図である。
図7】検体測定装置の構成例を示した縦断面図である。
図8】検体測定装置の制御的な構成例を示したブロック図である。
図9】検体測定装置に関わるネットワークを示した図である。
図10】エラー情報を、点灯色により通知する例(A)、点灯および点滅により通知する例(B)を示した模式図である。
図11】進捗情報を、点灯色により通知する例(A)、点灯および点滅により通知する例(B)を示した模式図である。
図12】検体測定装置の測定動作を説明するためのフローチャートである。
図13図12の操作検知処理(サブルーチン)を示したフローチャートである。
図14】測定中のボタンへの操作に対する動作を示したフローチャートである。
図15】情報記録媒体から検量線を読み取る例を示した模式図である。
図16】筐体に設けられた機構がトレイである例を示した図である。
図17】検体測定装置の第1モード(A)および第2モード(B)を示した図である。
図18】容器の第1の変形例を示した図である。
図19】容器の第2の変形例を示した図である。
図20】容器の第3の変形例を示した図である。
図21】第2実施形態による検体測定装置の概略図である。
図22】端末に表示される測定結果画面の例を示した模式図である。
図23】端末に表示されるユーザインターフェースの例を示した模式図である。
図24】検体測定装置の測定開始用の操作部を示した斜視図である。
図25】情報記録媒体がRFタグである例を示した図である。
図26】筐体に設けられた機構がローダ機構である他の例を示した図である。
図27】従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
[第1実施形態]
(検体測定装置の概要)
図1を参照して、本実施形態による検体測定装置の概要について説明する。
【0032】
検体測定装置100は、検体と反応する試薬を収容するための収容部310を有する容器300を用いて、容器300内に注入された検体の測定を行う検体測定装置である。検体測定装置100は、たとえばPoC検査用の小型の検体測定装置であり、簡易的な操作で測定動作を実行できるように構成されている。
【0033】
検体の測定は、測定項目に応じた被検物質の有無、被検物質の量または濃度、粒子状の被検物質であれば大きさや形状などを測定することを含む。測定項目によって、容器300内に収容する試薬の種類が異なる。測定項目毎に、複数種類の容器300のバリエーションがあり得る。異なる複数の測定項目を測定可能な容器300であってもよい。
【0034】
容器300は、交換可能な消耗品である。つまり、容器300は、予め設定された回数だけ測定に使用されると、廃棄される。容器300の使用可能回数は、1回または数回である。容器300は、たとえばカートリッジ、ウェルプレート、および管状容器の形態を取りうる。カートリッジとは、検体中に含まれる被検物質の検出に必要な機能をまとめた交換可能な部品のことである。ウェルプレートは、液体を収容可能な凹部であるウェルが形成された板状部材である。管状容器は、一方端部が開口し、他方端部が塞がれた管状の容器であり、たとえばキュベットや試験管、採血管などである。
【0035】
容器300は、検体の測定に使用する試薬を収容するための収容部310を、1つまたは複数備えている。収容部310には、予め試薬が収容されていてもよいし、試薬を収容していなくてもよい。試薬を収容していない収容部310には、試薬が外部から注入されうる。収容部310は、所定量の液体を収容できる容積を有していればよい。
【0036】
検体測定装置100によって、検体と試薬との混合、攪拌、加温または冷却、検体を含む固体または液体の移動、その他の種々の操作が容器300の内部で行われうる。
【0037】
検体測定装置100は、筐体10と、配置部20と、読取部30と、測定部40と、機構11と、検知部12と、制御部50と、を備える。
【0038】
筐体10は、配置部20と、読取部30と、測定部40と、検知部12と、制御部50とを収容する。筐体10は、所定容積の内部空間を有する箱状部材や、フレームと外装板との組み合わせなどにより構成される。PoC検査用の検体測定装置100の筐体10としては、卓上設置が可能な小型の箱状形状を有する。
【0039】
筐体10には、機構11が設けられている。機構11は、配置部20に配置された容器300を遮光するように動く。機構11は、筐体10に設けられた機械的な機構である。機構11は、たとえば筐体10の一部を開閉するための可動部である。可動部は、たとえば開閉可能な蓋や、筐体10の内外に配置部20を移動させるローダなどを含みうる。機構11は、ユーザにより直接動かされてもよいし、ユーザによるボタン操作などに応じて、モータなどにより動かされてもよい。機構11は、表示画面および表示画面に表示される擬似的なボタンなどのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を含まない。
【0040】
図1の例では、機構11は、筐体10の開口を開閉可能に覆う蓋である。機構11は、一端部が回動可能に支持されていて、回動されることで筐体10の開口を開閉する。機構11に対する操作として、蓋を開く操作が行われると、筐体10の開口を介して筐体10内の配置部20に容器300を配置可能な状態になる。容器300を配置して蓋を閉じる操作が行われると、筐体10内で容器300が遮光される。
【0041】
配置部20は、ユーザが容器300を配置するための配置位置を提供する。配置部20は、筐体10内で、測定部40により測定が行われる所定位置に設けられているか、または所定位置に移動可能に設けられている。配置部20には、情報410が記録された情報記録媒体400を有する容器300が配置可能である。配置部20は、容器300を保持する。図1の例では、配置部20は、容器300が載置される載置台である。ユーザは、機構11を開いた状態で、筐体10内に容器300を差し込むことで、配置部20に容器300を容易に配置できる。
【0042】
配置部20は、容器300の形状に応じた形状に形成されている。すなわち、配置部20は、カートリッジ、ウェルプレート、および管状容器の少なくとも1つの容器300を配置可能であり得る。図1の例では、容器300は、板状のカートリッジであり、配置部20は、カートリッジを配置するための凹部を有する。配置部20は、形状の異なる複数種類の容器300が配置可能に構成されていてもよい。
【0043】
読取部30は、情報記録媒体400に記録された情報410を読み取るように構成されている。読取部30は、接触式または非接触式の読取装置である。読取部30は、情報記録媒体400の種類に応じた読取方法で、情報410を読み取るように構成される。たとえば、読取部30は、バーコード、多次元コードまたはRFタグである情報記録媒体400から情報410を読み取り可能であり得る。
【0044】
情報記録媒体400がバーコードまたは多次元コードである場合、読取部30は、光学式のバーコードスキャナやカメラである。情報記録媒体400がRFタグである場合、読取部30は、近距離無線通信を用いるリーダ装置である。この他、たとえば情報記録媒体400が磁気ストライプカードなどの磁気記録媒体である場合、読取部30は、磁気リーダ装置である。たとえば情報記録媒体400がフラッシュメモリなどの電子記録媒体である場合、たとえば、読取部30は、電子記録媒体を接続して情報読取可能なインターフェースである。
【0045】
情報記録媒体400には、情報410が予め記録されている。情報410は、たとえば、容器300に収容された試薬に関する情報を含む。情報410は、たとえば、試薬の測定項目、試薬のロット番号、試薬の種類を特定する情報、試薬の有効期限などを含む。情報410に応じて、たとえば試薬を用いた測定動作の手順、個々の動作時間、動作内容、温度設定などが決定される。情報410に応じて、たとえば試薬のロット番号に対応した検量線が取得され、取得した検量線を用いて検体測定が行われる。情報410に応じて、たとえば有効期限に基づく測定開始の可否が判断される。たとえば有効期限切れの場合に測定を開始せずにエラー状態にすることが可能である。
【0046】
なお、端末500は、たとえば、タブレット型端末や、スマートフォンなどの携帯情報端末、PC(パーソナルコンピュータ)などの情報端末を含む。端末500は、表示画面510に表示させたボタンなどのユーザーインターフェース511を介して、ユーザの操作入力を受け付ける。入力操作は、タブレット型端末や、スマートフォンなどの携帯情報端末ではタッチパネルにより検知され、PCなどの端末ではマウス、キーボードその他の入力機器を介して検知される。
【0047】
端末500は、検体測定装置100と有線または無線により接続される。有線接続は、たとえばUSBケーブルなどの機器間接続用インターフェース、有線LANなどの通信用インターフェースによる接続を含む。無線接続は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)やRFタグに用いられる近距離無線通信、その他の赤外線通信などによる通信接続を含む。これらの有線または無線接続により、端末500と検体測定装置100との間で、情報の送受信が可能である。端末500は、検体測定装置100との通信により、検体測定装置100で生成された測定結果を閲覧できる。端末500は、検体測定装置100との通信により、検体測定装置100に対して所定の操作命令を送信できる。接続は、検体測定装置100側では情報の受信のみを行う、一方向的な接続でもよい。
【0048】
測定部40は、配置部20に配置された容器300に収容された検体の測定をするように構成されている。つまり、測定部40は、配置部20に配置された容器300に対して、検体と試薬との混合、攪拌、加温または冷却、検体を含む固体または液体の移動、その他の種々の操作を行う。測定部40は、たとえば容器300を回転させて液体を移動させたり、液体成分と固体成分とを遠心分離させたりする。測定部40は、たとえば容器300を逆方向に交互に回転または移動させたり、間欠的に回転または移動させることにより、試料の攪拌を行う。測定部40は、たとえば容器300の外部から磁力を作用させて、容器300内の磁性粒子を移動させる。測定部40は、たとえば容器300を加温または冷却して、内部の試薬温度を所定の反応温度に制御する。
【0049】
容器300内の試薬は、検体中の被検物質と反応して、容器300の外部から被検物質を直接または間接的に測定可能な変化を生じさせる。たとえば、試薬は、被検物質の量に応じて発光する。発光は、たとえば化学発光または蛍光である。試薬は、たとえば被検物質と特異的に結合する標識物質を含む。標識物質は、たとえば、容器300の外部から測定可能な信号を生じる。標識物質は、化学発光物質または蛍光物質、放射性同位体などを含む。また、試薬は、被検物質の量に応じて発色するものや、被検物質の量に応じて濁りを生じるものでもよい。
【0050】
測定部40は、検体中の被検物質と試薬との反応によって生じた変化を検出することにより、直接的または間接的に被検物質の測定を行う。具体的には、測定部40は、容器300に収容された検体を光学的に測定する。測定部40は、発光の検出を行う場合、たとえば光電子増倍管、光電管、光ダイオードなどの光検出器を含む。測定部40は、放射線の検出を行う場合、たとえばシンチレーションカウンターなどの放射線検出器を含む。測定部40は、蛍光、発色または濁り検出を行う場合、光源および受光素子を含む。
【0051】
制御部50は、たとえばCPUやFPGAにより構成されたプロセッサを含む。制御部50は、読取部30および測定部40の動作を制御する。また、制御部50は、検知部12を介して、機構11を動かす所定操作が行われたこと検知する。具体的には、検知部12が、容器300が遮光されるように配置されたことを検知する。図1の例では、検知部12が、機構11が閉じたことを検知する。検知部12は、機構11が閉じたことを検知すると制御部50に信号を出力する。制御部50は、検知部12の検知に応じて、読取部30及び測定部40を制御する。
【0052】
すなわち、検知部12が、機構11が閉じたことを検知すると、制御部50は、読取部30に情報記録媒体400から情報410を読み取らせ、測定部40に容器300を用いた検体測定を開始させる。測定部40の測定動作は、制御部50により制御される。
【0053】
測定を行う際、ユーザは、情報記録媒体400を有する容器300を配置部20にセットする。容器300を配置部20にセットし、容器300が遮光された状態になるまで、機構11が動かされる。最終的に、機構11が閉じられた状態では、配置部20に配置された容器300が遮光され測定可能な状態となる。機構11が閉じたことは、検知部12により検知される。制御部50は、検知部12の検知に応じて、読取部30に情報410を読み取らせる。制御部50は、検知部12の検知に応じて、測定部40による測定を開始させる。測定を開始する際、制御部50は、読取部30が情報記録媒体400から読み取った情報410に基づいて、測定動作を決定する。このように、ユーザとしては、機構11を動かして、閉じるための操作を行うだけで、測定が開始される。
【0054】
図1の構成例によれば、容器300が遮光されるように配置されたことの検知に応じて、読取部30により情報410を読み取り、測定部40により容器300を用いて検体を測定することができる。そのため、ユーザは、配置した容器300を遮光するように機構11を動かすだけで、情報410を読み取らせることができ、さらに読み取られた情報410に基づいて検体の測定を開始させることができる。また、容器300を遮光することは、容器300をセットして光学的な測定を開始させるために必要になるため、ユーザは、容器300を配置して測定可能な状態にするだけで、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても測定を開始させることができる。これにより、より簡易な操作で測定を開始できるようになる。
【0055】
(検体測定方法)
次に、図2を参照して、検体測定方法について説明する。検体測定方法は、容器300に収容された検体を光学的に測定する検体測定方法である。
【0056】
検体測定方法は、以下のステップを含む。(ステップS1)容器300を遮光して配置する。(ステップS2)容器300の配置に基づいて容器300から情報410の読み取りを開始する。(ステップS3)読み取られた情報410に基づいて検体を測定する。
【0057】
ステップS1において、容器300は、遮光された状態にセットされる。たとえば、筐体10内の容器300と測定部40とを含む空間が、外部から遮光された状態にされる。遮光された状態としては、光学的な測定に影響しない程度に遮光された状態であればよい。遮光された状態とは、容器300内で発光が生じない状態の時に、測定部40により検出される入射フォトン数が、好ましくは、1000個/(mm2・秒)以下、より好ましくは100個/(mm2・秒)以下となるように遮光された状態である。
【0058】
容器300を遮光して配置する動作は、たとえば図1では容器300を配置部20に配置して機構11を閉じる動作である。容器300が遮光した配置された状態は、検知部12によって検知される。容器300を配置する動作は、ユーザが直接行ってもよいし、ボタンなどの操作部へのユーザによる操作入力に対する応答として、モータなどの駆動部によって蓋を閉じるなどの動作が自動的に行われてもよい。
【0059】
容器300が配置されると、ステップS2において、容器300から情報410の読取が開始される。たとえば図1では、読取部30により情報410が読み取られる。ステップS1の結果としてステップS2が行われる。たとえば図1では、容器300が筐体10内で遮光された状態で、測定部40により検体が光学的に測定される。
【0060】
図2の構成例によれば、上記構成によって、容器300の配置に基づいて容器300から情報410の読み取りを開始し、読み取られた情報410に基づいて検体を測定するので、ユーザは、情報入力を行うことなく、容器300を遮光して配置するだけで、情報410を読み取らせることができ、さらに読み取られた情報410に基づいて検体の測定を開始させることができる。また、容器300を遮光して配置する作業は、容器300をセットして光学的な測定を開始させるために必要になるため、ユーザは、容器300を配置して測定可能な状態にするだけで、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても測定を開始させることができる。これにより、より簡易な操作で測定を開始できるようになる。
【0061】
(検体測定装置の具体的構成例)
図3図11は、容器300を用いる検体測定装置100の具体的な構成例を示す。
【0062】
図3図11に示す例では、検体測定装置100は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を検出し、検出結果に基づいて被検物質を測定する免疫測定装置である。検体測定装置100は、ディスク型のカートリッジである容器300を用いて測定を行う。
【0063】
検体測定装置100の筐体10は、本体部101と蓋102を備える。蓋102は、本体部101の上面部を覆うように、端部において本体部101に対して回動可能に取り付けられている。蓋102は、本体部101の上面部の略全面を覆うように設けられている。本体部101の上面部に、配置部20が設けられている。これにより、蓋102は、本体部101に取り付けられた端部を中心に上下に回動して、図3に示す配置部20を開放した状態と、図4に示す配置部20を覆う状態とに、開閉可能に設けられている。この構成により、蓋102を開くと本体部101の上面部が開放されるので、ユーザによる容器300の設置作業を容易化することができる。
【0064】
図3および図4の例では、機構11は、配置部20を覆う開閉可能な蓋102を含む。検体測定装置100は、蓋102が閉じたことを検知する。蓋102が閉じたことにより、容器300を筐体10内で遮光した状態になる。
【0065】
図3および図4の例では、検体測定装置100は、蓋102が閉じたことを検知すると、容器300から情報410を読み取る。このように、図3および図4の例による検体測定方法では、検体測定装置100の蓋102を開けて容器300を配置し、蓋102を閉めて容器300を遮光し、蓋102を閉めたことに基づいて容器300からの情報410の読み取りを開始する。これにより、ユーザは、蓋102を開けて容器300を配置した後で蓋102を閉じるだけの極めて簡易な操作で、情報410の読取および測定を開始させることができる。
【0066】
また、検体測定装置100は、容器300を配置部20に配置可能な状態とするために、機構11を動かすための機械的な操作部103を備える。検体測定装置100は、機構11を動かすための機械的な操作部103への操作に応じて、容器300を配置可能な状態とする。図3および図4の例では、操作部103は、押圧可能なボタンである。これにより、たとえば表示画面上のユーザーインターフェースを操作して機構11を動かす場合と異なり、機構11を動かす操作を機械的な操作部103に対して直接行える。そのため、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても、容器300を容易に配置できる。
【0067】
ユーザは、容器300を配置部20に配置するために、操作部103を操作する。第1の操作を行う。操作部103の操作により、筐体10に設けられた蓋102が開く。つまり、検体測定装置100は、機構11を動かすための機械的な操作部103への操作に応じて、容器300を配置部20に配置可能な状態とするように蓋102を開く。これにより、たとえば表示画面上のユーザーインターフェースを操作して蓋を開く場合と異なり、蓋102を開く操作を操作部103に対して直接行える。そのため、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても、容器300を容易に配置できる。
【0068】
図3および図4の例では、操作部103を押圧する操作によって開放された配置部20に、容器300を配置する。ユーザは、配置部20に配置された容器300を用いて測定可能な状態にするために、開かれた状態の蓋102を閉じる。検知部12により、蓋102が閉じたことが検知されると、制御部50が、読取部30による情報410の読み取りと、測定部40による測定とを開始させる。すなわち、検体測定装置100は、蓋102が閉じたことを検知すると、容器300の情報記録媒体400から情報410の読取を開始し、情報410に基づいて検体を測定する。
【0069】
また、図3の構成例では、機構11は、情報入力のためのユーザーインターフェースの操作に非依存の操作に基づいて、配置部20に配置可能な状態、または配置部20に配置された容器300を用いて測定可能な状態とするように動く。つまり、蓋102が、機械的な操作部103の操作に基づいて、容器300を配置部20に配置可能な状態とするように動く。これにより、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても、容器300を配置可能な状態とし、容器300を容易に配置できる。そして、ユーザは、機構11を閉じるだけで、情報記録媒体400の情報410を読み取らせて、読み取られた情報410に基づいて検体の測定を開始させることができる。
【0070】
また、図3および図4の検体測定装置100は、表示画面を備えないディスプレイレス装置である。すなわち、検体測定装置100は、単独では、ユーザーインターフェースを利用した操作入力を行わない構成となる。そのため、ユーザーインターフェースの操作に不慣れなユーザにとっても、より簡単に扱える検体測定装置を実現できる。
【0071】
〈容器〉
図5に示すように、容器300は、板状かつ円盤形状の基板301により構成されたディスク型のカートリッジである。容器300内の各部は、基板301に形成された凹部と、基板301の凹部を含む全面を覆う図示しないフィルムとが貼り合わされることにより形成される。基板301と、基板301に貼り合わされたフィルムとは、透光性を有する部材により構成される。基板301は、後述するヒータ44による容器300の温度調節が容易となるような厚みを有する。たとえば、基板301の厚みは、数ミリとされ、具体的には約1.2mmとされる。
【0072】
基板301には、孔302と、6つの収容部311と、1つの収容部312と、6つのチャンバ321~326と、チャネル330と、開口341と、分離部342と、チャネル343と、を含む検体処理領域303が設けられている。孔302は、基板301の中心において基板301を貫通している。容器300は、孔302の中心が、後述する回転軸122に一致するように検体測定装置100に設置される。以下、回転軸122を中心とする円の径方向および周方向を、それぞれ「径方向」および「周方向」という。チャンバ321~326は、それぞれ、液体を収容可能な空間部である。チャンバ321~326は、基板301の外周付近において周方向に並んでいる。
【0073】
チャネル330は、径方向に延びた6つの径方向領域331と、周方向に延びた円弧状の周方向領域332と、を備える。周方向領域332は、6つの径方向領域331と繋がっている。6つの径方向領域331は、それぞれチャンバ321~326に繋がっている。6つの収容部311は、径方向の流路を介してチャネル330に繋がっている。6つの収容部311は、それぞれ対応するチャンバ321~326と径方向に並んで配置されている。収容部312は、主として径方向に延びる流路を介して、チャンバ326と収容部311との間を繋ぐ流路に繋がっている。合計7つの収容部311、312が容器300の内周側に配置され、合計6つのチャンバ321~326が容器300の外周側に配置されている。
【0074】
収容部311、収容部312は、いずれも、試薬を収容し、径方向の内側の上面に封止体350を備える。封止体350は、後述する開栓部43によって上から押圧されることにより開栓可能に構成される。封止体350が開栓される前は、収容部311内の試薬はチャネル330に流れず、封止体350が開栓されると、収容部311内の試薬がチャネル330に流れ出るようになる。試薬は、容器300が回転されると、遠心力により対応するチャンバ321~326に移動する。
【0075】
開口341に検体が注入される。検体は、被検者から採取された全血の血液検体である。血液検体は、開口341を介して分離部342に注入される。分離部342は、注入された血液検体を血球と血漿に分離する。分離部342で分離された血漿は、チャネル343に移動する。チャネル343内の血漿は、容器300が回転されると、遠心力によりチャンバ321に移動する。これにより、所定量の血漿がチャンバ321に移送される。
【0076】
チャンバ321には、乾燥した磁性粒子が固定されている。検体測定装置100は、磁性粒子を複数のチャンバに順次移送することにより、磁性粒子に被検物質と標識物質を担持させ、標識物質に基づいて被検物質を検出するように構成されている。すなわち、被検物質を担持した磁性粒子は、磁力によって径方向に移動される。これにより、磁性粒子がチャンバ321の内部と、チャネル330の円弧状の周方向領域332との間で、径方向に移動される。容器300が回転されることで、磁性粒子が円弧状の周方向領域332内を周方向に移動する。磁力の作用による径方向移動と、回転による周方向移動との組み合わせによって、被検物質を担持した磁性粒子がチャンバ321~326に移動され、それぞれのチャンバ321~326で試薬を用いた処理が行われる。最終的に、被検物質と標識物質とを担持した磁性粒子がチャンバ326に移動され、測定部40によって標識物質が検出されることにより、測定が行われる。
【0077】
なお、図5の例における検体処理領域303は、基板301の3分の1の領域にのみ形成されている。しかしながら、これに限らず、さらに2つの検体処理領域303が基板301の残りの3分の2の領域に形成され、基板301に検体処理領域303が3つ設けられてもよい。なお、1つの検体処理領域303が、基板301の3分の1の領域よりも大きい領域にわたって形成されてもよい。
【0078】
検体処理領域303が複数設けられる場合、各々の検体処理領域303は、同じ測定項目についての検体処理領域303であってもよいし、異なる測定項目についての検体処理領域303であってもよい。同じ測定項目の検体処理領域303が複数設けられる場合、1つの容器300で同一測定項目の測定を複数回できる。異なる測定項目の検体処理領域303が設けられる場合、同じ検体に対して1つの容器300で複数項目の測定ができる。
【0079】
〈情報記録媒体〉
図5の例では、情報記録媒体400は、容器300に設けられている。具体的には、情報記録媒体400は、二次元コードである。情報記録媒体400は、二次元コードが印字されたラベルを貼付するか、または、容器300の表面に二次元コードが直接印刷されることにより、容器300に設けられる。情報記録媒体400はバーコードであってもよい。
【0080】
図6に示すように、情報記録媒体400の情報410は、たとえば、試薬に関する情報411を含む。試薬に関する情報411は、たとえば、試薬のロット番号である。試薬に関する情報411は、たとえば、試薬の種類を特定する情報、試薬の有効期限などを含んでいてもよい。これにより、ユーザが直接情報入力を行わなくても、試薬に関する情報411を取得できる。そして、試薬に関する情報411に基づいて、測定に使用される試薬に応じた測定動作を実行できる。
【0081】
図6の例では、試薬に関する情報411は、検体に対する測定項目を特定するための情報412を含む。たとえば、測定項目を特定するための情報412は、測定項目を示すコード、あるいは測定項目の名称そのものである。制御部50は、検体に対する測定項目を特定するための情報412に基づいて、測定部40を制御する。これにより、検体に対する測定項目に基づいて、容器300の試薬を用いた測定動作が決定される。その結果、特に、検体測定装置100が、複数種類の容器300によって複数種類の測定項目を測定可能な場合に、測定項目に応じた適切な測定動作で測定ができる。
【0082】
具体的には、測定項目に応じて、試薬を用いた測定動作の手順、個々の動作時間、動作内容、温度設定などが決定される。たとえば、測定項目に応じた測定動作は、検体測定装置100にプリセットされている。検体に対する測定項目を特定するための情報412に基づいて、測定項目に応じた測定処理が実行される。言い換えると、測定項目を特定するための情報412は、容器300の種類を特定する情報でもある。これにより、検体に対する測定項目に基づいて、容器300の試薬を用いた測定動作を決定することができる。そのため、複数種類の容器300によって複数種類の測定項目を測定可能な場合にも、ユーザが、測定項目を容易に把握できる。
【0083】
たとえば、情報記録媒体400の情報410は、検体に関する情報413を含む。この場合、制御部50は、測定部40による測定結果と情報410とを関連付ける。これにより、ユーザが直接情報入力を行わなくても、検体に関する情報413を取得できる。そして、検体に関する情報413に基づいて、検体と関連付けて測定結果を管理できる。
【0084】
具体的には、情報記録媒体400の情報410は、容器300を特定するための情報414を含む。容器300を特定するための情報414は、容器300を一意に識別する容器IDである。容器IDは、個々の容器300に固有の情報であれば、たとえば製造番号でもよいし、製造番号以外の専用の識別番号でもよい。これにより、測定に使用した容器300を識別できるので、測定結果の管理が容易になる。また、たとえば正規品以外の容器の使用や、使用済みの容器の再使用を特定して、不適切な測定が行われることを回避できるようになるので、装置の信頼性を向上させることができる。
【0085】
また、たとえば、検体に関する情報413は、検体を識別する情報415を含む。これにより、検体を識別する情報415によって、容器300に注入した検体を識別できるので、測定結果の管理が容易になる。
【0086】
検体を識別する情報415は、たとえば容器IDであり得る。ここで、測定結果は、使用された容器300の容器IDと関連付けて、後述するサーバ600に送信して保存することができる。一方、ユーザは、共通の容器IDを用いて検体の情報または検体を採取した被検者の情報を管理する。その結果、容器IDを介して、検体の情報または検体を採取した被検者の情報を特定することが可能となる。この場合、容器IDは、検体を識別する情報となり得る。このように、検体を識別する情報415を、測定結果と、検体または被検者の情報とにそれぞれ関連付けられる情報とすることにより、検体を識別する情報415を介して、測定結果に対応する検体を識別することが可能である。
【0087】
なお、検体を識別する情報415を、測定結果と、検体または被検者の情報とにそれぞれ関連付けられる情報とする場合には、検体を識別する情報415は、容器ID以外の他の情報、または暗号化された情報でもよい。検体を識別する情報415は、測定結果と、検体または被検者の情報とにそれぞれ関連付けされる情報であれば、どのような情報であってもよい。測定結果に関連付けされる情報(情報Aとする)と、検体または被検者の情報に関連付けされる情報(情報Bとする)とが異なっていてもよい。たとえば情報Aが、情報Bを所定の手法で暗号化した情報であってもよい。この場合、情報Aを復号化する方法がユーザに提供されうる。ユーザが、測定結果に関連付けされた情報Aを復号化すると情報Bが得られるので、情報Bに関連付けされた検体または被検者の情報を識別することが可能となる。このように、測定結果に関連付けされる情報Aと、検体または被検者の情報とに関連付けされる情報Bとは、互いに識別可能な対応関係を有していれば、同一の情報でなくてもよい。
【0088】
この他、検体を識別する情報415は、容器300に注入される検体に対して設定された検体ID、または、検体が採取された被検者の患者IDなどであってもよい。検体IDおよび患者IDは、それぞれ、検体および患者を識別する固有の情報であればどのような情報でもよい。検体IDおよび患者IDでは、直接、検体を識別することが可能となる。
【0089】
情報記録媒体400に記録される情報は、全て、暗号化された情報であってもよい。この場合、情報記録媒体400に記録された情報自体は、暗号化されて無意味な情報となっている。これらの情報は、読取部30に読み取られ、制御部50において、予め設定された所定の復号方法に従ってデコードすることにより、試薬のロット番号、測定項目、容器300の容器IDなどにそれぞれ変換される。
【0090】
〈検体測定装置の内部構造〉
続いて、図7を参照して、検体測定装置100の内部構造について説明する。
【0091】
配置部20(図3参照)は、蓋102によって開閉可能に覆われる本体部101の上面部分を構成する。配置部20は、容器300を下方から支持する支持部材111と、支持部材111の直下の位置に設けられる上面部材112とを含む。支持部材111は、たとえば、ターンテーブルにより構成される。支持部材111は、上面部材112から僅かに上方に離隔して配置され、容器300を上面部材112から非接触の状態で支持する。上面部材112が、本体部101の上面部分を構成している。
【0092】
〈測定部〉
図7の例では、測定部40は、回転駆動部41と、磁石駆動部42と、開栓部43と、ヒータ44および温度センサ45と、光検出ユニット46とを含む。
【0093】
回転駆動部41は、容器300を回転させる機構である。回転駆動部41は、回転により、容器300の内部で、血液検体の遠心分離、各チャンバ321~326への試薬の移動、試薬と検体との攪拌、チャンバ321~326の間での磁性粒子の周方向への移送、などを行う。
【0094】
回転駆動部41は、モータ121と、回転軸122とを備える。回転軸122は、鉛直方向に延びている。回転軸122は、本体部101の内部から、上面部材112の開口を通って配置部20の上面側まで延びている。回転軸122の上端は、支持部材111に固定されており、回転軸122の下端は、モータ121の駆動軸に固定されている。つまり、回転駆動部41は、配置部20の支持部材111を回転可能に支持している。回転駆動部41は、モータ121を駆動させて、支持部材111に設置された容器300を、回転軸122を中心に回転させる。
【0095】
磁石駆動部42は、磁石123を備え、容器300の内部の磁性粒子を径方向に移動させる機能を有する。磁石駆動部42は、配置部20の下方に配置され、磁石123を、少なくともチャンバ321~326と、チャネル330の周方向領域332との間の範囲(図5参照)で、径方向に移動させるように構成されている。磁石123は、配置部20の下方から上方に向けて磁力を発生させるように設けられている。磁石駆動部42は、第1駆動部124と、第2駆動部125とを備える。
【0096】
第1駆動部124は、磁石123を上下方向に移動させるように構成されている。第1駆動部124は、磁力によって磁性粒子を捕捉するように容器300に接近する位置と、磁力によって磁性粒子が捕捉されないように容器300から離隔した位置とに、磁石123を移動させることが可能である。チャンバ321~326内での撹拌動作時などには、磁石123が容器300から離隔される。第2駆動部125は、磁石123を径方向に移動させるように構成されている。第2駆動部125は、上記したチャンバ321~326の径方向位置と、周方向領域332の径方向位置との間の範囲で磁石123を径方向に移動させる。第1駆動部124と、第2駆動部125とは、それぞれ、モータと直動機構とを含んで構成されている。直動機構は、たとえばネジ軸とナットとの組み合わせ、ラックギアとピニオンギアとの組み合わせなどにより、可動部を直線移動させるものである。
【0097】
開栓部43は、配置部20の上方の蓋102に設けられている。開栓部43は、配置部20に配置された容器300の上方から、容器300に向けて進退可能なピン部材126と、ピン部材126を進退駆動する駆動部127とを備える。ピン部材126は、駆動部127によって突出して、容器300と当接し、押圧により封止体350(図5参照)を開栓する。ピン部材126は、駆動部127によって引き戻され、容器300から離隔して非接触となる退避位置へ移動する。
【0098】
ヒータ44は、容器300の直下となる配置部20の上面部材112、および、容器300の直上となる蓋102の内面部104に、それぞれ設けられている。温度センサ45は、上面部材112の下側に設置されている。温度センサ45は、上面部材112に形成された開口を介して容器300と対向し、赤外線により容器300の温度を検出する。ヒータ44は、チャンバ321~326内に収容された試料を所定の反応温度に加温して、検体と試薬との反応を促進させる。
【0099】
光検出ユニット46は、配置部20の上面部材112の下側に設けられている。光検出ユニット46は、上面部材112に形成された開口を介して、配置部20に配置された容器300と対向する位置に、受光部を備えている。これにより、光検出ユニット46は、チャンバ326内から生じた光を受光部から検出する。光検出ユニット46は、たとえば光電子増倍管、光電管、光ダイオードなどの光検出器46aを備える。光検出器46aにより、光子すなわちフォトンの受光に応じたパルス波形が出力される。光検出ユニット46は、内部に回路を備えており、光検出器46aの出力信号に基づいて、一定間隔でフォトンを計数し、カウント値を出力する。
【0100】
また、蓋102は、内面部104と上面部105との間に収容空間を有する。収容空間の内部には、開栓部43の他、クランパ128と、読取部30と、照明部31が設けられている。内面部104には、読取部30と、照明部31と、開栓部43に対応する位置に孔が設けられている。これらの孔を介して、読取部30と、照明部31と、開栓部43とが、容器300の上面に直接的に対向する。
【0101】
クランパ128は、蓋102の内面において、支持部材111と上下に対向するように、支持部材111の中心に設置されている。クランパ128は、蓋102が閉じられた状態で、支持部材111上に設置された容器300の上面の中心部を回転可能に支持する。容器300は、支持部材111とクランパ128とに挟まれた状態で支持される。クランパ128は、内面部104を貫通し、所定範囲で上下にストローク可能に構成され、支持部材111側に向けて付勢されている。クランパ128には、図示しないストローク検出センサが設けられており、制御部50は、クランパ128のストローク量の相違に基づいて、容器300が非設置の状態、容器300が適正に設置されている状態、容器300が設置されているが位置ずれなどにより不適正である状態、を検出可能である。
【0102】
図7の例では、読取部30は、2次元コードである情報記録媒体400(図5参照)を撮像する撮像部である。読取部30は、内面部104に設けられた孔を介して、容器300の上面に直接的に対向する。同様に、照明部31は、内面部104に設けられた孔を介して、容器300の上面に直接的に対向する。読取部30は、たとえば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどを含む。照明部31は、たとえば発光ダイオードにより構成され、撮像時の照明光を発生する。容器300における情報記録媒体400の設置位置は予め決められており、読取部30は、容器300が周方向に回転されて、撮像視野内に情報記録媒体400が配置された状態で、情報記録媒体400を撮像する。二次元コードの撮像画像から、情報410が読み取られる。
【0103】
また、検体測定装置100は、上述した操作部103と、蓋102のロック機構130と、蓋102の開閉を検出する検知部12とを備える。
【0104】
操作部103は、蓋102の上面部105に設けられている。操作部103は、押圧が可能なボタンである。ロック機構130は、蓋102が閉められた状態で、蓋102と係合して蓋102が開かないようにロックする。ロック機構130は、駆動源を内蔵しており、制御部50からの制御信号に応じてロックを解除する。検知部12は、蓋102が閉状態であるか開状態であるかを検知する。検知部12は、たとえば接触センサ、光センサ、などである。検知部12は、蓋102を閉じると導通するように構成された接続端子でもよいし、ロック機構130が検知部12を兼ねていてもよい。制御部50は、操作部103と接続され、操作部103の押圧を検知すると、ロック機構130のロックを解除する。蓋102は、図示しない付勢部材により開く方向に付勢されており、ロックが解除されると付勢力によって配置部20を開放する開状態となる。なお、ユーザは、蓋102を直接操作して、蓋102を閉じる。蓋102が閉じられたことは、検知部12により検知される。
【0105】
図8は、検体測定装置100の制御的な構成を示す。
【0106】
制御部50は、たとえば、プロセッサとメモリを含む。プロセッサは、たとえば、CPU、MPUなどにより構成される。メモリは、たとえば、ROMおよびRAMなどにより構成される。制御部50は、検体測定装置100の各部から信号を受信し、検体測定装置100の各部を制御する。
【0107】
検体測定装置100は、測定部40による測定結果を記憶する記憶部151を備える。記憶部151は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクなどにより構成される。記憶部151により、検体測定装置100に表示画面等を設けなくても、測定を行って測定結果を記憶しておける。測定結果を閲覧する場合、端末やサーバと接続して記憶部151から測定結果を読み出すことができる。そのため、ユーザにとって、より簡易な取り扱いが可能な検体測定装置100を提供できる。記憶部151には、測定結果の他、情報記録媒体400から読み取られた情報410が記録される。
【0108】
検体測定装置100は、通信部152を備える。通信部152は、送信部153および受信部154を備えて構成される。通信部152は、たとえば通信モジュール、外部接続用のインターフェースなどを含む。図9に示すように、通信部152は、有線または無線通信により、端末500との通信、およびネットワークを介したサーバ600との通信が可能である。通信部152は、複数種類の通信方式での通信が可能であってよい。ネットワークへの接続は、たとえば有線LAN、無線LANなどによる。端末500との接続は、有線LAN、無線LANの他、Bluetooth(登録商標)や他のNFC(近距離無線通信)などによって行ってもよい。端末500との接続は、USBなどの外部接続用のインターフェースによって行ってもよい。
【0109】
送信部153は、少なくとも、測定部40による検体の測定結果を端末500またはサーバ600に無線または有線で送信可能とされる。これにより、検体測定装置100に表示画面等を設けなくても、測定を行って測定結果を端末500またはサーバ600に送信できる。そのため、ユーザにとって、より簡易な取り扱いが可能な検体測定装置100を提供できる。測定結果を端末500およびサーバ600の両方に送信してもよい。端末500は、送信された測定結果を表示画面510に表示できる。ユーザは、表示画面510上で検体測定装置100の測定結果を閲覧できる。
【0110】
受信部154は、少なくとも、端末500からの信号を無線または有線で受信可能に構成されている。
【0111】
ここで、検体測定装置100は、試薬を用いた測定結果のカウント値と、被検物質の量とを対応付ける検量線を用いて、検体測定を行う。検量線は、試薬の製造ロット毎に、予め作成される。図9の例では、通信部152は、読取部30に読み取られた情報410を端末500またはサーバ600に送信して、容器300に収容された試薬を用いた測定の検量線416を取得する。
【0112】
具体的には、サーバ600には、ロット番号などの試薬に関する情報411によって特定される検量線416が、試薬の製造元により予め作成され、記録されている。端末500は、ネットワークを介して、サーバ600から検量線416を取得できる。通信部152は、情報410として、試薬に関する情報411を端末500またはサーバ600に送信する。通信部152は、試薬に関する情報411に基づいて特定された検量線416を、端末を介して、または直接に、サーバ600から取得する。制御部50は、測定部40による測定結果のカウント値と、容器300に収容された試薬の検量線416とに基づいて、測定結果の測定を行う。
【0113】
これにより、読取部30に読み取られた情報410に基づいて検量線416の情報を特定して、端末500またはサーバ600から通信により取得できる。この場合、情報記録媒体400に検量線416を記録しておかなくてよいので、その分、情報記録媒体400の記録容量を容易に確保できる。また、検量線416は、試薬の製造後の経過期間等によっても僅かに変化しうる。端末500またはサーバ600を利用する構成では、ネットワークを通じて検量線416の情報を更新できるので、測定結果の高精度化を図ることができる。
【0114】
また、図8において、検体測定装置100は、装置の状態を画面表示とは異なる方法で通知可能な通知部155(図3参照)を備える。これにより、状態を通知するために表示画面を設ける必要がなくなる。そのため、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0115】
通知部155は、光の色、光の点灯、光の点滅、音および端末500への情報送信の少なくともいずれかにより装置の状態を通知する。つまり、通知部155は、発光により通知を行うインジケータ、音により通知を行うスピーカーまたはブザーでありうる。通知部155は、送信部153と同一構成の通信モジュールまたは外部接続用インターフェースでありうる。通知部155を設けることによって、表示画面を用いなくても、ユーザにとって容易に認識可能な状態の通知を行える。
【0116】
図3では、通知部155が発光により通知を行うインジケータである場合の例を示す。通知部155は、たとえば筐体10の表面に設けられる。図3では、通知部155は、本体部101の正面上部に1つ設けられている。通知部155は、たとえば複数色で発光可能な発光ダイオードなどにより構成される。通知部155は、複数設けられてもよい。
【0117】
図10に示すように、通知部155は、少なくともエラー状態を通知する。たとえば、通知部155は、正常状態とエラー状態とを区別して通知する。これにより、表示画面を用いることなく、装置のエラー状態をユーザに通知できる。
【0118】
たとえば、通知部155は、エラーの深刻度、エラーの重要度およびエラーに対する対応作業の分類の少なくともいずれかが区別されるように、エラー状態を通知する。図10の例では、通知部155は、正常状態、レベル1のエラー状態、レベル2のエラー状態を、区別して通知する例を示す。
【0119】
図10(A)は、光の色によって状態を通知する例を示す。通知部155は、正常状態を色Aで表示し、レベル1のエラー状態を色Bで表示し、レベル2のエラー状態を色Cで表示する。色A、色B、色Cは、たとえば、それぞれ緑色、黄色、赤色などの互いに異なる色である。
【0120】
図10(B)は、光の点灯および光の点滅によって状態を通知する例を示す。通知部155は、正常状態を消灯状態で表示し、レベル1のエラー状態を点滅状態で表示し、レベル2のエラー状態を継続的な点灯状態で表示する。
【0121】
通知するエラーの内容の一例を説明する。エラーの深刻度については、たとえばレベル1が、再起動などにより復旧が見込まれるエラー状態であり、レベル2が、検体測定装置100のサービスセンターへの送付や、専門の技術者による対応が必要なエラー状態である。エラーの重要度については、たとえばレベル1が、使用温度が推奨範囲外にある場合など、測定結果が安定しない可能性があり、再測定が推奨されるエラー状態であり、レベル2が、測定結果が出力不能となるエラー状態などである。エラーに対する対応作業の分類については、たとえばレベル1が、容器300の設置位置が適正でない場合など、ユーザ自身が対処可能なエラー状態であり、レベル2が、装置内部にアクセスする必要があり、ユーザ自身では対処できない作業が含まれるエラー状態である。
【0122】
図11の例では、通知部155は、測定部40による測定の進捗を通知する。これにより、表示画面を用いなくても、ユーザが通知部155から測定の進捗あるいは測定完了までの残り時間を把握できる。そのため、検体測定装置100を扱うユーザにとって利便性が向上する。
【0123】
図11(A)は、光の色によって状態を通知する例を示す。通知部155は、測定中の状態を色Dで表示し、測定完了直前の状態を色Eで表示し、測定が完了した状態を色Fで表示する。色D、色E、色Fは、たとえば、それぞれ緑色、黄色、赤色などの互いに異なる色である。測定完了直前とは、たとえば測定開始後、測定に要する総時間に対して所定割合の時間が経過した状態とし、所定割合はたとえば80%~90%とすればよい。
【0124】
図11(B)は、光の点灯および光の点滅によって状態を通知する例を示す。通知部155は、測定中状態を継続的な点灯状態で表示し、測定完了直前の状態を点滅状態で表示し、測定が完了した状態を消灯状態で表示する。
【0125】
(検体測定装置の動作説明)
【0126】
次に、図12および図13を参照して、検体測定装置100の動作について説明する。以下の説明において、検体測定装置100の構造については図3図4図7を参照するものとする。容器300の構造については図5を参照するものとする。
【0127】
まず、ユーザは、被検者から採取された血液検体を容器300の開口341から注入する。容器300の測定項目の一例として、B型肝炎表面抗原(HBsAg)の測定例を示す。血液検体中の被検物質は、抗原を含む。として、抗原は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)である。被検物質は、抗原、抗体、または、タンパク質のうち、1または複数であってもよい。測定項目は、前立腺特異抗原(PSA)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT4)などであってもよい。
【0128】
容器300の収容部311、312およびチャンバ321には、あらかじめ所定の試薬が収容されている。具体的には、チャンバ321の径方向に位置する収容部311には、R1試薬が収容されている。チャンバ321には、R2試薬が収容されている。チャンバ322の径方向に位置する収容部311には、R3試薬が収容されている。チャンバ323~325の径方向に位置する収容部311には、洗浄液が収容されている。チャンバ326の径方向に位置する収容部311には、R4試薬が収容されている。収容部312には、R5試薬が収容されている。
【0129】
図12のステップS11において、制御部50は、ユーザによる、容器300を配置して測定可能な状態にするための操作を検知する。
【0130】
具体的には、図13のステップS31において、制御部50は、操作部103の操作入力(つまり、操作部103の押圧)が検知されたか否かを判断する。制御部50は、操作部103に対する操作入力を検知しない場合、操作部103に対する操作入力を検知するまで判断を繰り返す。制御部50は、操作部103に対する操作入力を検知すると、ステップS32に進む。
【0131】
ステップS32において、制御部50は、ロック機構130のロックを解除することにより、蓋102を開放する。これにより、検体測定装置100は、配置部20に容器300を配置可能な状態となる。ユーザは、開放された配置部20に、容器300をセットする。このように、検体測定装置100では、容器300を配置部20にセットするために、少なくとも機構11が動かされる。
【0132】
ステップS33において、制御部50は、検知部12により、蓋102が閉じられたことが検知されたか否かを判断する。制御部50は、検知部12が蓋102が閉じられたことを検知しない場合、蓋102が閉じられたことを検知するまで判断を繰り返す。制御部50は、蓋102が閉じられたことが検知されると、ステップS34に進む。蓋102が閉じられたことに伴い、ロック機構130が蓋102をロックする。
【0133】
ステップS34において、制御部50は、容器300が配置部20にあるか否かを判断する。制御部50は、容器300が配置部20に適正に配置されているか否かも判断する。具体的には、制御部50は、クランパ128のストローク量に基づいて、容器300が存在すること、および容器300が適正位置に配置されていることを確認する。制御部50は、容器300が配置部20に配置されていない場合、または、容器300が正常に設置されていない場合、ステップS35に進む。
【0134】
ステップS35において、制御部50は、通知部155によりエラー状態を通知する。このとき、制御部50は、ロック機構130のロックを解除して、蓋102を開放する。容器300をセットした直後に、通知部155によるエラー通知と、蓋102の開放とが行われることにより、より確実に、エラーの存在をユーザに把握させることができる。
【0135】
容器300が配置部20に適正に配置されている場合、ステップS36において、制御部50は、読取部30に、情報記録媒体400から情報410を読み取らせる。具体的には、制御部50は、回転駆動部41により、情報記録媒体400が読取部30の撮影視野内に配置されるように情報記録媒体400を回転させる。制御部50は、照明部31により照明光を照射させ、読取部30に情報記録媒体400である二次元コードを撮影させる。制御部50は、撮影画像から、容器300内に収容された試薬の情報410としての試薬に関する情報411、測定項目を特定する情報412、容器300を特定する情報413としての容器IDを、取得する。
【0136】
ステップS37において、制御部50は、測定開始前のエラーがあるか否かを判断する。たとえば、制御部50は、ステップS36において情報記録媒体400から情報410が読み取れなかった場合、ステップS35に進み、通知部155によるエラー状態の通知と、蓋102の開放とを行う。
【0137】
ステップS37で測定開始前のエラーがないと判断された場合、制御部50は、図12のステップS12に処理を進め、測定部40による測定を開始させる。
【0138】
このように、制御部50は、容器300から情報410を未取得の状態において測定部40が測定を開始しないように制御する。つまり、測定開始に先立って、必ず読取部30による情報読取が行われる。これにより、容器300に収容された情報410を確実に取得することができる。その結果、試薬の情報に基づいて適切な測定が可能となる。
【0139】
また、図13の例では、このように、第2の操作の検知(ステップS33)後に、ステップS35において容器300が配置部20に配置されていない場合は、制御部50は、読取部30による情報記録媒体400からの情報410の読み取りを行わない。これにより、ユーザによる容器300の配置忘れを防止できる。
【0140】
図12において、制御部50は、ステップS12以降、測定部40による測定動作を開始させる。測定動作は、測定項目によって検体と試薬との反応時間などが異なる。そのため、検体測定装置100は、測定項目毎の測定動作パターンを、記憶部151に記憶している。制御部50は、検体に対する測定項目を特定するための情報412に基づいて、測定部40を制御する。これにより、特に、検体測定装置100が、複数種類の容器300によって複数種類の測定項目を測定可能な場合に、測定項目に応じた適切な測定動作で測定ができる。
【0141】
並行して、制御部50は、ステップS13において、検量線416を取得する。ここでは、制御部50は、通信部152により、試薬に関する情報411を端末500またはサーバ600(図9参照)に送信して、試薬に関する情報411により特定される試薬を用いた測定の検量線416を特定し、検量線416のデータ送信を要求する。制御部50は、端末500またはサーバ600からの応答として、特定した検量線416を通信部152を介して取得する。なお、ステップS13の検量線416の取得処理は、情報読取の後、後述するステップS21の測定処理までに行われていれば、どのタイミングで実施されてもよい。
【0142】
ステップS12において、制御部50は、血漿と試薬をチャンバに移送する。具体的には、制御部50は、回転駆動部41により容器300の位置合わせを行い、開栓部43を駆動して6つの収容部311の各封止体350を開栓する。制御部50は、回転駆動部41により容器300を回転させ、遠心力により、血漿をチャネル343からチャンバ321に移送し、6つの収容部311に収容された試薬をチャンバ321~326に移送する。これにより、チャンバ321において、血漿と、R1試薬と、R2試薬とが混合される。チャンバ322には、R3試薬が移送され、チャンバ323~325には、洗浄液が移送され、チャンバ326には、R4試薬が移送される。
【0143】
さらに、ステップS12において、血漿と試薬の移送が終わると、制御部50は、回転駆動部41により容器300を間欠的に回転駆動させ、攪拌処理を行う。これにより、チャンバ321~326内の液体が攪拌される。このような攪拌処理は、ステップS12だけでなく、ステップS14~S19においても移送処理後に同様に行われる。
【0144】
ここで、R1試薬は、被検物質と結合する捕捉物質を含む。捕捉物質は、たとえば、被検物質と結合する抗体を含む。抗体は、たとえば、ビオチン結合HBsモノクローナル抗体である。R2試薬は、磁性粒子を液体成分中に含む。磁性粒子は、たとえば、表面がアビジンでコーティングされたストレプトアビジン結合磁性粒子である。ステップS12において、血漿と、R1試薬と、R2試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、被検物質とR1試薬は、抗原抗体反応により結合する。そして、抗原-抗体反応体と磁性粒子との反応により、R1試薬の捕捉物質と結合した被検物質が、捕捉物質を介して磁性粒子と結合する。その結果、被検物質と磁性粒子とが結合した状態の複合体が生成される。
【0145】
次に、ステップS14において、制御部50は、チャンバ321内の複合体を、チャンバ321からチャンバ322へ移送する。
【0146】
複合体の移送の際、制御部50は、磁石駆動部42を駆動して、磁石123を容器300に近付けて、チャンバ321内に広がる複合体を集める。制御部50は、磁石駆動部42の駆動による磁石123の径方向移動と、回転駆動部41による容器300を周方向移動とを組み合わせ、複合体を、図5の経路P1の径方向内側移動、経路P2の周方向移動、経路P3の径方向外側移動の順でチャネル330に沿ってチャンバ322まで移動させる。制御部50は、複合体の移動後、攪拌処理を行う。なお、各チャンバ323~326への複合体の移動は、同様の手法で実施されるので、詳細な説明は省略する。
【0147】
これにより、チャンバ322において、チャンバ321で生成された複合体と、R3試薬とが混合される。ここで、R3試薬は、標識物質を含む。標識物質は、被検物質と特異的に結合する捕捉物質と、標識とを含む。たとえば、標識物質は、捕捉物質として抗体が用いられた標識抗体である。ステップS14において、チャンバ321で生成された複合体と、R3試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、チャンバ321で生成された複合体と、R3試薬に含まれる標識抗体とが反応する。その結果、被検物質と、捕捉抗体と、磁性粒子と、標識抗体とが結合した複合体が生成される。
【0148】
ステップS15において、制御部50は、チャンバ322内の複合体を、チャンバ322からチャンバ323へ移送する。これにより、チャンバ323において、チャンバ322で生成された複合体と、洗浄液とが混合される。ステップS15において、チャンバ322で生成された複合体と、洗浄液とが混合され、攪拌処理が行われると、チャンバ323内で複合体と未反応物質とが分離される。すなわち、チャンバ323では、洗浄により未反応物質が除去される。
【0149】
ステップS16において、制御部50は、チャンバ323内の複合体を、チャンバ323からチャンバ324へ移送する。これにより、チャンバ324において、チャンバ322で生成された複合体と、洗浄液とが混合される。チャンバ324においても、洗浄により未反応物質が除去される。
【0150】
ステップS17において、制御部50は、チャンバ324内の複合体を、チャンバ324からチャンバ325へ移送する。これにより、チャンバ325において、チャンバ322で生成された複合体と、洗浄液とが混合される。チャンバ325においても、洗浄により未反応物質が除去される。
【0151】
ステップS18において、制御部50は、チャンバ325内の複合体を、チャンバ325からチャンバ326へ移送する。これにより、チャンバ326において、チャンバ322で生成された複合体と、R4試薬とが混合される。ここで、R4試薬は、チャンバ322で生成された複合体を分散させるための試薬である。R4試薬は、たとえば緩衝液である。ステップS18において、チャンバ322で生成された複合体と、R4試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、チャンバ322で生成された複合体が分散される。
【0152】
ステップS19において、制御部50は、R5試薬をチャンバ326に移送する。具体的には、制御部50は、回転駆動部41により容器300の位置合わせを行い、開栓部43を駆動して収容部312の封止体350を開栓する。制御部50は、回転駆動部41により容器300を回転させ、遠心力により、収容部312に収容されたR5試薬をチャンバ326に移送する。これにより、チャンバ326において、ステップS18で生成された混合液に、さらにR5試薬が混合される。
【0153】
ここで、R5試薬は、複合体に結合された標識抗体との反応により光を生じる発光基質を含む発光試薬である。ステップS19において、ステップS18で生成された混合液と、追加で移送されたR5試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、試料が調製される。この試料は、複合体に結合された標識物質と、発光基質とが反応することにより、化学発光する。
【0154】
ステップS20において、制御部50は、回転駆動部41により、チャンバ326を光検出ユニット46の受光部の真上に位置付け、チャンバ326から生じる光を、光検出ユニット46により検出する。ステップS21において、制御部50は、光検出ユニット46により検出した光に基づいて、免疫に関する測定処理を行う。光検出ユニット46は、一定間隔でフォトンを計数し、カウント値を出力する。制御部50は、光検出ユニット46から出力されたカウント値と、ステップS13で取得した検量線416とに基づいて、被検物質の有無および量などを測定し、測定結果を生成する。
【0155】
測定結果が得られると、制御部50は、ステップS22において、測定結果と、測定時の測定実施日時と、容器300を特定する容器IDとを関連付けて、測定結果データとして記憶部151に記録する。また、制御部50は、送信部153により、測定結果データを端末500またはサーバ600に送信する。
【0156】
以上により、検体測定装置100の測定動作が完了する。
【0157】
なお、上記測定動作において、化学発光とは、化学反応によるエネルギーを利用して発せられる光であり、たとえば、化学反応により分子が励起されて励起状態になり、そこから基底状態に戻る時に放出される光である。化学発光は、たとえば、酵素と基質との反応により生じさせたり、電気化学的刺激を標識物質に与えることにより生じさせたり、LOCI法(Luminescent Oxygen Channeling Immunoassay)に基づいて生じさせたり、生物発光に基づいて生じさせたりすることができる。第1実施形態では、いずれの化学発光が行われてもよい。所定波長の光が照射されると蛍光が励起される物質と被検物質とが結合して複合体が構成されてもよい。この場合、チャンバ326に光を照射するための光源が配置される。光検出器は、光源からの光によって複合体に結合した物質から励起された蛍光を検出する。
【0158】
なお、磁性粒子としては、磁性を有する材料を基材として含み、通常の免疫測定に用いられる粒子であればよい。たとえば、基材としてFe23および/またはFe34、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを用いた磁性粒子が利用できる。磁性粒子は、被検物質と結合するための結合物質がコーティングされていてもよいし、磁性粒子と被検物質とを結合させるための捕捉物質を介して被検物質と結合してもよい。捕捉物質は、磁性粒子および被検物質と相互に結合する抗原または抗体などである。
【0159】
また、捕捉物質は、被検物質と特異的に結合すれば特に限定されない。たとえば、捕捉物質は、被検物質と抗原抗体反応により結合する。より具体的に、捕捉物質は抗体であるが、被検物質が抗体である場合、捕捉物質は、その抗体の抗原であってもよい。また、被検物質が核酸である場合、捕捉物質は、被検物質と相補的な核酸であってもよい。標識物質に含まれる標識としては、たとえば、酵素、蛍光物質、放射性同位元素などが挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。化学発光として、電気化学発光をする場合、標識としては、電気化学的刺激により発光する物質であれば特に限定されないが、たとえばルテニウム錯体が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが利用できる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが利用できる。
【0160】
また、標識が酵素である場合、酵素に対する発光基質は、用いる酵素に応じて適宜公知の発光基質を選択すればよい。たとえば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合の発光基質としては、CDP-Star(登録商標)、(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3-(4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2-(5'-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p-ニトロフェニルホスフェート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発光基質;4-メチルウムベリフェニル・ホスフェート(4MUP)などの蛍光基質;5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ-インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリンなどの発色基質などが利用できる。
【0161】
次に、図14を参照して、測定中の検体測定装置100に対するユーザによる操作の受付について説明する。
【0162】
図14の例では、制御部50は、配置部20に容器300が配置され蓋102が閉じられた状態で、操作部103に対して特定の操作が行われた場合に、測定を中止するように制御する。つまり、操作部103としてのボタンに対して特定の操作が行われた場合に、測定が中断または中止される。これにより、操作部103を、容器300を配置部20に配置可能な状態にするための操作を入力する操作部として用いるだけでなく、測定中に測定を中断または中止するための操作部としても利用できる。そのため、操作部の数が増えることを抑制して、装置を利用する際の操作を簡易化できる。
【0163】
具体的には、ステップS41において、制御部50は、測定動作中に、操作部103が押圧されたか否かを判断する。操作部103の押圧が検知されない場合、制御部50は、ステップS43に処理を進める。操作部103の押圧が検知されると、制御部50は、ステップS42に処理を進める。
【0164】
ステップS42において、制御部50は、操作部103の押圧が、停止条件を満たしたか否かを判断する。つまり、制御部50は、操作部103に対する特定の操作として設定された押圧操作を検知したか否かを判断する。
【0165】
具体的には、特定の操作は、(A)操作部103(ボタン)に一定時間以上の長押し、(B)複数回の連続押し、または、(C)一定圧以上の力での強押し、のいずれかを加えることであると設定される。一定時間は、通常の蓋102を開くための操作確定時間よりも長い時間であり、たとえば数秒である。複数回は、たとえば2回または3回である。一定圧以上の力は、通常の蓋102を開く操作で押圧される際の標準的な押圧力を測定しておき、標準的な押圧力とは十分に区別可能な押圧力とすればよい。
【0166】
制御部50は、(A)~(C)のいずれかの特定の操作の入力を検知した場合、ステップS44に処理を進める。制御部50は、操作部103の押圧は検知されたが、特定の操作の入力には該当しなかった場合、ステップS43に処理を進める。
【0167】
ステップS43において、制御部50は、測定が終了したか否かを判断し、測定が終了していなければ、ステップS41に処理を戻す。制御部50は、測定が終了した場合、ステップS45に処理を進める。測定が終了した場合とは、図12において、少なくともステップS21までの処理が完了した場合である。
【0168】
一方、ステップS43において特定の操作の入力を検知した場合、ステップS44において、制御部50は、測定部40を停止させ、測定を中止させる。測定を中止した後、制御部50は、ステップS45に処理を進める。
【0169】
ステップS45において、制御部50は、ロック機構130のロックを解除し、蓋102を開放する。この結果、ユーザが、配置部20から容器300を取り出し可能となる。
【0170】
このように、図14の例では、制御部50は、配置部20に容器300が配置され蓋102(すなわち、容器300を筐体10内に閉じ込めるように開閉可能な機構11)が閉じられた状態で、操作部103に一定時間以上の長押し、複数回の連続押しまたは一定圧以上の力での強押しが加えられたことが検知されると、測定を中止する。これにより、操作部103に対する簡易な操作で、測定を中止できる。
【0171】
また、このように、制御部50は、ステップS43で測定が終了すると、ステップS45において蓋102が開くように制御する。これにより、ユーザが、測定終了後に容器300を容易に取り出せる。また、蓋102が開くことで、測定終了をユーザに知らせることができるので、容器300の取り出し忘れを抑制できる。
【0172】
なお、図14では、操作部103に対する特定の操作が入力された場合に、測定を中止する例を示したが、操作部103に対する特定の操作が入力された場合に、測定を中断してもよい。測定を中断する場合、制御部50はステップS44で測定部40を停止させた後、蓋102を開放し、蓋102が閉じられたことを検知した場合に、測定部40の測定動作を再開させると共に、ステップS43に処理を戻す。制御部50は、蓋102が閉じられるまでは待機する。このような構成により、操作部103に対する特定の操作が入力された場合に、測定を一時中断することができる。
【0173】
(検量線の取得の変形例)
図9では、情報410としての試薬に関する情報411に基づいて、端末500またはサーバ600から検量線416を取得する例を示したが、図15の例では、試薬に関する情報411は、測定項目の検量線416をさらに含む。つまり、試薬に関する情報411、測定項目を特定するための情報412、容器300を特定するための情報414と同様に、検量線416が情報記録媒体400に記録され、読取部30により読み出される。これにより、容器300の試薬を用いた測定において、検量線416を用いて測定結果を測定できる。検量線416は、試薬によって異なる場合があるので、容器300に収容された試薬に応じた検量線416を情報記録媒体400に記録しておくことで、測定に際して検量線416を作成することなく適切な測定結果を得ることができる。
【0174】
(機構の変形例)
図3では、機構11が配置部20を覆う蓋102である例を示したが、図16では、機構11は、配置部20を筐体10の内外に移動させるトレイ211を含み、検知部12は、容器300が遮光されるようにトレイ211により配置部20が筐体10内に移動したことを検知する。具体的には、配置部20が設けられたトレイ211を含むローダ210が設けられる。トレイ211は、筐体10内に設けられたローダ駆動部212によって、筐体10外の突出位置と、筐体10内の測定位置とに移動する。突出位置では、トレイ211の配置部20に対して、ユーザが容器300を配置または取り出し可能となる。測定位置では、容器300が遮光され、測定部40により配置部20上の容器300に対する測定動作が実行可能となる。
【0175】
図16における第1の構成例として、操作部103を押圧する操作によって、測定位置にあるトレイ211が突出位置に移動し、操作部103を押圧する操作によって、突出位置にあるトレイ211が測定位置に移動する。したがって、トレイ211が測定位置にある状態で操作部103を押圧する第1の操作によって、容器300が配置部20に配置可能な状態になるようにトレイ211が動く。トレイ211が突出位置にある状態で操作部103を押圧する第2の操作によって、容器300が遮光されて測定可能な状態となるようにトレイ211が動く。検知部12は、容器300を用いて測定可能な状態とするようにローダ210により配置部20が筐体10内に移動したことを検知する。制御部50は、検知部12の検知に応じて、情報記録媒体400からの情報読取と、測定の開始とを実行させる。
【0176】
図16の第2の構成例として、第1の操作が操作部103を押圧する操作であり、第2の操作が突出位置にあるローダ210を測定位置に向けて押し込む操作である。制御部50は、操作部103を押圧する第1の操作の検知に応じて、トレイ211を突出位置まで移動させ、配置部20に容器300を配置可能な状態にする。ユーザが容器300を配置してローダ210を押し込む第2の操作を行うと、制御部50は、トレイ211を測定位置まで移動させ、容器300を用いて測定可能な状態にする。検知部12は、トレイ211が測定位置まで移動したことを検知する。制御部50は、検知部12の検知に応じて、情報記録媒体400からの情報読取と、測定の開始とを実行させる。
【0177】
図16の構成例における検体測定方法では、検体測定装置100のトレイ211を引き出して容器300を配置し、トレイ211を戻して容器300を遮光し、トレイ211を戻したことに基づいて容器300からの情報410の読み取りを開始する。
【0178】
これにより、図16の第1構成例および第2構成例では、ユーザは、配置部20に容器300を配置した後でトレイ211を筐体10内に移動させるだけの極めて簡易な操作で、測定を開始させることができる。
【0179】
また、図16の第1構成例および第2構成例では、容器300を筐体10に遮光して配置可能なトレイ211が筐体10内に移動したことを検知すると、容器300の情報記録媒体400から情報410の読取が開始され、情報410に基づいて検体が測定される。これにより、ユーザは、容器300を配置した後でトレイ211により容器300を筐体10内に閉じ込めるだけの極めて簡易な操作で、測定を開始させることができる。
【0180】
また、図16の第1構成例および第2構成例では筐体10に設けられた機械的な操作部103への操作に応じて、容器300を配置可能な状態とするようにトレイ211が筐体10外に移動する。これにより、たとえば表示画面上のユーザーインターフェースを操作して配置部20を筐体10外に移動させる場合と異なり、容器300を配置部20に配置可能な状態とするための操作を操作部103に対して直接行える。そのため、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても、容器300を容易に配置できる。
【0181】
なお、図16においても、制御部50は、測定が終了すると、配置部20を筐体10外に移動させるようにローダ210を制御する。つまり、測定が終了すると、トレイ211が筐体10外に移動する。これにより、配置部20が筐体10外に移動することにより、測定が終了したことをユーザに把握させることができ、容器300の取り忘れを防止することもできる。
【0182】
図16では、トレイ211を筐体10の内外に移動させるローダ210の例を示したが、図26では、トレイ211を備えないスロットインタイプのローダ220を示す。図26では、機構11は、筐体10に設けられた開口221及び開口221に挿入された容器300を筐体10内に移動させるローダ220を含む。検知部12は、容器300が開口221に挿入され、容器300が筐体10内に遮光されるように移動されたことを検知する。これにより、ユーザは、開口221に容器300を挿入するだけの極めて簡易な操作で、測定を開始させることができる。
【0183】
開口221は、容器300が挿入されるスロットである。ローダ220は、開口221から挿入された容器300を、ローダ駆動部222により筐体10内の配置部20まで移動させる。図16と異なり、ローダ駆動部222はトレイ211ではなく容器300を直接移動させる。測定が終了すると、ローダ220が容器300を筐体10外に移動させる。
【0184】
図16の構成例における検体測定方法では、検体測定装置100の開口221に容器300を挿入し、容器300が開口221から検体測定装置100の筐体10内に取り込んで容器300を遮光し、容器300を筐体10内に取り込んだことに基づいて容器300からの情報410の読み取りを開始する。これにより、ユーザは、開口221に容器300を挿入するだけの極めて簡易な操作で、測定を開始させることができる。
【0185】
(操作モード)
図17の例では、制御部50は、受信部154を介した端末500からの操作が不可とされた第1モード(図17(A)参照)と、受信部154を介した端末500からの信号に基づいた操作が可能とされた第2モード(図17(B)参照)とを選択可能に構成されている。
【0186】
図17(A)に示すように、第1モードが選択された場合、読取部30による情報読取は、第1の操作に応じて開始され、端末500の操作によっては、読取部30による情報読取は開始されない。つまり、検体測定装置100が、端末500の操作によらずにスタンドアロンで測定動作を開始する。第1モードにおいても、測定結果データやエラー情報は、送信部153から端末500に送信可能である。たとえば進捗状況が端末500に送信され、端末500の表示画面上に進捗状況が表示される。図17は、スタートの「S」から、エンドの「E」までに至る進捗状況が、バーグラフ表示される例を示している。
【0187】
図17(B)に示すように、第2モードが選択された場合、読取部30による情報読取は、第1の操作または端末500の操作によって開始される。第2モードでは、読取部30による情報読取のみならず、いかなる処理を端末500の操作によって開始させてもよい。つまり、第2モードでは、端末500によって、検体測定装置100を遠隔操作することができる。
【0188】
これにより、機構11を閉じることによって測定を開始する第1モードを基本としながらも、第2モードで端末500による遠隔操作を可能とすることができる。また、第1モードにすることによって、誤って装置が遠隔操作されることを防止できる。
【0189】
なお、図17において、受信部154は、表示画面510を備えた端末500から、表示画面510に対する操作に基づいた信号を受信可能に構成されている。たとえば、情報読取を実行させるためのユーザーインターフェース511に対する操作に応じて、端末500から情報読取実行命令が送信され、受信部154により受信される。制御部50は、情報読取実行命令に応じて、読取部30による情報読取を実行する。これにより、たとえば端末500のユーザーインターフェース511を介した操作に慣れたユーザには、第2モードで端末500のユーザーインターフェース511による操作入力を可能とすることができる。
【0190】
(容器の変形例)
図5では、ディスク型の容器300を用いる例を示したが、図18では、ディスク型の容器300に代えて、矩形板状の容器300aが用いられる。その他の構成については、上記第1実施形態の具体的構成例と同様である。
【0191】
配置部20の支持部材111には、容器300aに対応した矩形状の配置領域111aが設けられる。図18では、3つの配置領域111aが、円盤状の支持部材111の周方向に沿って設けられる構成例を示している。容器300aには、図5に示した容器300と同様の収容部、チャンバ、チャネルが設けられる。図5と同様に、容器300には情報記録媒体400を設けることができる。
【0192】
測定を開始する場合、ユーザは、容器300の場合と同様に、血液検体を容器300aに注入し、容器300aを配置部20に配置する。そして、検知部12の検知に応じて、読取部30が情報記録媒体400から情報読取を行う。検知部12の検知に応じて、制御部50が測定部40による測定を開始させる。3つの配置領域111aに配置される容器300は、同一の測定項目の測定を行うものであってもよいし、互いに異なる測定項目の測定を行うものであってもよい。図18の例では、検体測定装置100は、最大3つの容器300に対して同時並行で、測定動作を行うことができる。
【0193】
図19は、容器300bがウェルプレートである例を示す。その他の構成については、上記第1実施形態の具体的構成例と同様である。
【0194】
容器300bは、検体を注入するための開口341、試薬を収容するための収容部310、チャンバ321~326、およびチャネル370を備える。これらの収容部、チャンバが、板状部材に形成されたウェルにより構成される。チャネル370には封止体350が設けられている。容器300bは、図18と同様の配置部20に配置可能である。支持部材111の配置領域111aにセットされた状態で、収容部310とチャンバ321~326とを接続するチャネル371が主として径方向に延び、チャネル371同士を繋ぐチャネル372が主として周方向に延びる。このため、容器300の回転と、磁石123の径方向移動との組み合わせにより、磁性粒子と結合した被検物質を、それぞれのチャンバ321~326に移動できる。
【0195】
図20は、容器300cがキュベットなどの管状部材である例を示す。
【0196】
図20の例では、容器300cは、管状の外側の収容部381と、外側の収容部381の内部に配置される管状の内側の収容部382との、入れ子構造になっている。外側の収容部381は、底部が塞がれ、上部が開口した管状容器であり、開口を介して、検体が注入される。内側の収容部382は、上下の両端が開口した管であり、上下の開口がそれぞれ封止体384によって塞がれている。封止された収容部382の内部には、予め試薬が収容されている。収容部382の上端部は、キャップ383に取り付け可能である。キャップ383は、収容部381の開口に取り付けられ、開口を塞ぐ。キャップ383の中央部には、収容部382の上部の封止体384を露出させる孔が設けられている。
【0197】
測定部40が、開栓部43によってキャップ383の孔を介して上部の封止体384を押圧することにより、下部の封止体384が収容部382から取り外される。下部の封止体384は収容部381内に落下する。その結果、収容部382に収容された試薬と、収容部381に収容された検体とが、混合される。図20の例では、測定部40は、容器300cを機械的に振動させたり、時間的に変化する磁界を作用させる等により、収容部381内に収容された検体と試薬とを攪拌し、反応させる。測定部40は、反応の結果生じる発光、励起光の照射による蛍光、色または濁度の変化などを検出することにより、被検物質を検出する。
【0198】
ユーザは、血液検体を収容部381に注入し、収容部382が取り付けられたキャップ383で蓋をすることにより、容器300cを組み立てる。ユーザは、容器300cを配置部20に配置して、ローダ210を閉じる。検知部12の検知に応じて、読取部30が情報記録媒体400から情報読取を行う。検知部12の検知に応じて、制御部50が測定部40による測定を開始させる。
【0199】
[第2実施形態]
次に、図21図23を参照して、上記第1実施形態の検体測定装置100と端末500と接続させたシステムを構成した例を示す第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0200】
図21に示すように、第2実施形態の検体測定装置700は、表示画面510を有する端末500と、端末500と接続可能な装置本体710とを含む。第2実施形態では、装置本体710は1つまたは複数設けられる。
【0201】
端末500は、表示画面510に表示させたユーザーインターフェース511を介して、ユーザの操作入力を受け付ける。入力操作は、タブレット型端末や、スマートフォンなどの携帯情報端末ではタッチパネルにより検知し、PCなどの端末ではマウス、キーボードその他の入力機器を介して検知される。
【0202】
装置本体710は、上記第1実施形態の検体測定装置100と略同様の構成を備えるものである。すなわち、装置本体710は、機構11を有する筐体10と、配置部20と、読取部30と、測定部40と、制御部50と、を備える。配置部20には、検体と反応する試薬を収容するための収容部310を有する容器300が配置される。図21の例では、機構11は、配置部20を覆う開閉可能な蓋102を含む。機構11は、図16に示したトレイ211または図26に示したローダ220であってもよい。
【0203】
第2実施形態では、配置部20は、機構11を動かす第1の操作に応じて、検体と反応する試薬が収容された容器300が配置可能である。制御部50は、機構11を動かす第2の操作の検知に応じて、読取部30が読み取った情報410に基づいて測定を開始するように測定部40を制御可能である。第1の操作は、配置部20に容器300を配置可能な状態にするために機構11を動かす操作であり、第2の操作は、容器300を用いて測定可能な状態にするために機構11を動かす操作である。
【0204】
第1の操作と、第2の操作とは、たとえば、同一の機構11を動かす操作である。同一の機構11を動かす操作の場合、たとえば、第1の操作が機構11を第1の状態(たとえばOFF状態)から第2の状態(たとえばON状態)にする操作であり、第2の操作が機構11を第2の状態から第1の状態に戻す操作でありうる。第1の状態と第2の状態とは、たとえば蓋の開状態と蓋の閉状態などでもよい。また、たとえば、第1の操作と、第2の操作とは、別々に設けられた機構11を動かす操作である。第1の操作と第2の操作とが、同一の操作であってもよい。
【0205】
ユーザは、容器300を配置部20に配置するために、第1の操作を行う。図21の例では、第1の操作は、操作部103を押圧する操作である。操作部103の押圧が検知されたことに応じて、蓋102が開かれる。ユーザは、第1の操作によって開放された配置部20に、容器300を配置する。ユーザは、配置部20に配置された容器300を用いて測定可能な状態にするために、第2の操作を行う。図21の例では、第2の操作は、開かれた状態の蓋102を閉じる操作である。第2の操作が行われると、制御部50が、測定部40による測定を開始させる。
【0206】
第2実施形態では、情報記録媒体400が容器300とは別個に設けられていてもよい。この場合、容器300が配置部20に配置されていない状態でも、情報記録媒体400が読取部30の読取位置に配置されていれば、いつでも情報410の読み取りが可能である。そのため、第2実施形態では、読取部30は、必ずしも第1の操作または第2の操作の検知に応じて情報410の読み取りを行わなくてもよい。
【0207】
このような第2実施形態では、上記構成によって、ユーザによって第1の操作が容器300を配置部20にセットする際に行われ、その後第2の操作が行われると、情報の読み取りと測定とが開始されることになる。つまり、ユーザは、容器300を配置部20にセットして測定を開始させるために行う一連の作業の流れの中で、自然と第1の操作および第2の操作を実行することになる。その結果、操作入力を煩雑化せずに、容器300を確実に配置して測定可能な状態にした上で、測定を開始することができる。したがって、ユーザは、容器300を配置して測定可能な状態にするだけで、表示画面上のユーザーインターフェースの煩雑な操作を行わなくても測定を開始させることができる。これにより、より簡易な操作で測定を開始できるようになる。
【0208】
図21の例では、検体測定装置700は、装置本体710を複数備える。端末500は、複数の装置本体710から測定結果を受信し、測定結果が得られた装置本体710を表示画面510に区別して表示可能とされている。これにより、複数の装置本体710のそれぞれの測定結果を、端末500によって統合的に管理することができる。また、装置本体710と端末500とをペアにして複数セット設ける場合と異なり、1つの端末500で複数の装置本体710を扱えるので、装置全体の構成を簡素化し、ユーザの取り扱いを容易化することができる。
【0209】
たとえば、端末500は、それぞれの装置本体710から、個々の装置本体710を識別するための装置IDと、上記した測定結果データとを受信する。測定結果データは、測定項目、測定結果、使用した容器300の容器ID、測定実行時の測定実施日時などを含む。
【0210】
端末500は、装置本体710から測定結果データを取得すると、図22に示すように、測定結果画面520において、装置IDによって区別した装置本体710毎の表示欄に、測定結果データを区別して表示させる。
【0211】
図23に示す例では、端末500は、情報入力のためのユーザーインターフェース511を表示画面510上に表示する。たとえば、ユーザーインターフェース511において、装置本体710に対して読取部30による情報読取の指示を入力するためのボタンが表示される。また、ユーザーインターフェース511において、図22に示した測定結果画面520を表示するためのボタンが表示される。また、ユーザーインターフェース511において、端末500に対する各種設定、装置本体710に対する各種情報入力を行うためのボタンが表示される。入力される情報としては、たとえば被検者に関する情報である。つまり、容器300に注入された検体が採取された被検者の情報が、端末500において入力できる。被検者の情報は、患者IDなどの被検者を特定するための情報、氏名、性別、年齢、身長、体重などを含みうる。
【0212】
これにより、少なくとも測定動作を実行する機能は機構11を動かすことで装置本体710の側だけで完結させることができ、その他の情報入力については端末500側で行える。そのため、ユーザは、検体の測定を行う作業については装置本体710に対して簡単に操作が可能で、測定以外の情報入力作業等は端末500を用いて柔軟に行えるようになるので、装置の利便性をさらに向上させることができる。
【0213】
入力される情報として、上記(図17参照)の第1モード、第2モードの選択が含まれていてもよい。また、ユーザーインターフェース511において、装置本体710を特定して測定開始の指示を入力するためのボタンを表示してもよい。すなわち、検体測定装置700において、個々の装置本体710は、機構11を動かす第2の操作の検知に応じて測定動作を開始することを基本としつつ、これに追加して、端末500からの測定動作の開始指示を受け付ける構成としてもよい。
【0214】
第2実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0215】
(第2の操作の変形例)
図21では、第2の操作が、蓋102を閉じる操作である例を示したが、図24の例では、第2の操作が、操作部201に対する入力操作である。
【0216】
図24の例では、機構11は、入力操作を受け付ける機械的な操作部201を含む。操作部201は、蓋102の上面部105に設けられたボタンである。第2の操作は、操作部201に対する入力操作を含む。制御部50は、操作部201と電気的に接続され、操作部201に対する押圧入力操作を検知する。制御部50は、第2の操作として、操作部201が押圧入力されたことの検知に応じて、読取部30が読み取った情報410に基づいて測定を開始するように測定部40を制御する。すなわち、図24の例では、操作部201は、測定動作の開始ボタンである。これにより、表示画面上で操作入力を行うことにより操作が実行される場合と異なり、ユーザが機械的な操作部201を直接動かすことにより操作が実行されるので、誤操作を抑制できる。図24の例では、蓋102を開くための操作部103を設けなくてもよい。この場合、ユーザは、第1の操作として、蓋102を直接把持して開くことができる。図24において、蓋102を開くための操作部103と、測定動作の開始ボタンとしての操作部201との両方を設けてもよい。
【0217】
(情報記録媒体の変形例)
図21では、情報記録媒体400が容器300に設けられた例を示したが、図25の例では、情報記録媒体400が容器300とは別個に設けられている。情報記録媒体400は、RFタグが設けられたカードタイプの媒体であり、近距離無線通信により、情報410の読み取りができる。読取部30は、近距離無線通信により情報読取を行うRFタグリーダである。たとえば、読取部30は、筐体10の蓋102に内蔵され、蓋102の上面部105の読み取り位置に配置された情報記録媒体400から、情報410を読み取る。
【0218】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0219】
10:筐体、11:機構、12:検知部、20:配置部、30:読取部、40:測定部、50:制御部、100:検体測定装置、102:蓋、103:操作部、151:記憶部、152:通信部、153:送信部、154:受信部、155:通知部、201:操作部、211:トレイ、220:ローダ、300、300a、300b、300c:容器、400:情報記録媒体、410:情報、411:試薬に関する情報、412:測定項目を特定するための情報、413:検体に関する情報、414:容器を特定するための情報、415:検体を識別する情報、416:検量線、500:端末、510:表示画面、511:ユーザーインターフェース、600:サーバ、700:検体測定装置、710:装置本体
図1
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