(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】微粒子生成プロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/04 20060101AFI20220727BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20220727BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20220727BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220727BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220727BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20220727BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220727BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220727BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220727BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220727BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220727BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220727BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220727BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220727BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220727BHJP
B01J 2/18 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B01J2/04
B41J2/045
A61M31/00
A61K9/14
A61K38/02
A61K38/22
A61K38/12
A61K45/00
A61K47/34
A61P35/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P31/04
A61P29/00
A61K9/10
B01J2/18
(21)【出願番号】P 2018531164
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2016081436
(87)【国際公開番号】W WO2017103113
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-11
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509071552
【氏名又は名称】ミダテク ファーマ(ウェールズ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シーマン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,フウ
(72)【発明者】
【氏名】マカリアー,リアム
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543434(JP,A)
【文献】特開2011-020055(JP,A)
【文献】特開2014-184429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0247760(US,A1)
【文献】特表2013-543435(JP,A)
【文献】特開平11-244683(JP,A)
【文献】国際公開第95/013176(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00-2/30、19/00
B41J 2/045
A61J 3/00-3/10
A61K 9/00-9/72、47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ポリマー微粒子を生成するための装置であって、前記装置は、
第1の液体の液滴を形成するための複数の液滴発生器であって、前記複数の液滴発生器は、小滴を発生するように動作可能な少なくとも1つの圧電部品を含み、前記複数の液滴発生器は、小滴発生器出口をそれぞれ含み、かつ前記小滴発生器出口は、線状またはアレイ状である、液滴発生器と、
第2の液体の噴流を形成するためのノズルと、
を含み、
前記複数の液滴発生器は、前記複数の液滴発生器のそれぞれの出口が前記ノズルの噴流方向と一致するように配置され、
前記複数の液滴発生器および前記ノズルは、使用時に、前記複数の液滴発生器からの液滴が前記第2の液体の噴流の液滴接触区間内でガスを通過して前記第2の液体の噴流中へ入るように互いに対して配置され、前記第2の液体の噴流は、少なくとも前記液滴接触区間の長さにわたっていかなる壁またはチャネルとも接触しておらず、
使用時に、前記複数の液滴発生器は、小滴発生器当たり少なくとも1kHzの周波数で液滴を生成するように動作可能であり、前記小滴発生器出口の線またはアレイは、前記ノズルの噴流方向に実質的に平行であ
り、
前記装置は、液体の噴流中に分散された固体微粒子を受け取るための微粒子受け取り手段をさらに含む、装置。
【請求項2】
前記複数の液滴発生器は、インクジェットプリントヘッドの形態にある、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記実質的に平行は、平行から30°以下だけのオフセットを意味する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
使用時に前記複数の液滴発生器は、小滴発生器当たり1乃至100kHzの範囲内の周波数で液滴を生成するように動作可能である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記微粒子受け取り手段は、前記微粒子受け取り手段から流体を除去するように動作可能な流体除去手段を含む、請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記微粒子受け取り手段は、前記微粒子受け取り手段から微粒子を除去するように動作可能な微粒子回収手段をさらに含む、請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記ノズルを通して液体の流れを発生するための手段をさらに含み、前記流れを発生するための手段は、液体の無パルス流を生成するための調圧システムを含む、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の液滴発生器によって発生された液滴を監視するためのカメラ、および/または
前記複数の液滴発生器によって発生された液滴を照らすための光源
をさらに含む、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の液滴発生器に入る液体の温度および/または前記ノズルに入る液体の温度を制御するための少なくとも1つの温度調整器をさらに含む、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの温度調整器は、
前記複数の液滴発生器に入る第1の液体の温度を5℃乃至30℃の範囲内に制御するための第1のチラー、および/または
前記ノズルに入る第2の液体の温度を0℃乃至20℃の範囲内に制御するための第2のチラー
を含む、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の液滴発生器は、前記液滴発生器の出口から前記噴流までの液滴の移動距離が2乃至10mmの範囲内にあるように前記ノズルに対して位置づけられる、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
固体微粒子を生成するためのプロセスであって、前記プロセスは、
溶質および溶媒を含む第1の液体を提供することであって、前記溶質は生体適合性ポリマーを含み、前記第1の液体中のポリマーの濃度は少なくとも10%w/vであり、「w」は前記ポリマーの重量であり、かつ「v」は前記溶媒の体積であることと、
液滴を発生するように動作可能な複数の液滴発生器を提供することであって、前記複数の液滴発生器は、小滴発生器出口をそれぞれ含み、かつ前記小滴発生器出口は、線状またはアレイ状であり、前記複数の液滴発生器は、小滴を発生するように動作可能な少なくとも1つの圧電部品を含み、前記複数の液滴発生器は、小滴発生器当たり少なくとも1kHzの周波数で液滴を生成するように動作可能であることと、
第2の液体の噴流を提供することと、
前記複数の液滴発生器に前記第1の液体の液滴を形成させることと、
前記溶媒が小滴を出て、その結果前記第2の液体の噴流内に固体微粒子を形成するように、前記第2の液体の噴流の液滴接触区間内で前記液滴にガスを通過させて前記第2の液体の噴流に接触させることと、
前記第2の液体から前記固体微粒子を分離することによって前記固体微粒子を回収することと、
を含み、
前記第2の液体中の溶媒の溶解度は、少なくとも前記第2の液体の100ml当たり前記溶媒の少なくとも5gであり、前記溶媒は前記第2の液体と実質的に混和性であり、前記第2の液体の噴流は、少なくとも前記液滴接触区間の長さにわたっていかなる壁またはチャネルとも接触していない、プロセス。
【請求項13】
前記第1の液体は、前記微粒子内に封入されることが望まれる標的物質をさらに含み、前記標的物質は、微粒子としてまたは溶液中で前記第1の液体中に組み込まれる、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記標的物質は、医薬活性剤または医薬活性剤の前駆体を含む、請求項
13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記標的物質は、腫瘍、中枢神経系(CNS)状態、眼球状態、感染症または炎症状態の処置のための医薬活性剤を含む、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記標的物質は、ペプチド、ホルモン治療剤、化学療法剤または免疫抑制剤を含む、請求項
14または請求項
15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記標的物質は、オクトレオチドもしくはその塩、またはシクロスポリンAもしくはその塩を含む、請求項
16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記複数の液滴発生器のそれぞれの出口は、前記液滴が前記第2の液体の噴流に沿って平行に間隔をあけて前記第2の液体の噴流に接触するように前記第2の液体の噴流と実質的に一致し、
前記液滴発生器の出口の数は、5乃至2500の範囲内にあり、
前記液滴の発生の周波数は、小滴発生器当たり1乃至100kHzの範囲内にあり、
前記液滴は、1乃至100pLの範囲内の個々の小滴体積を有し、かつ/または
前記固体微粒子の平均最大径は、1乃至200μmの範囲内にある、
請求項
12乃至
17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記微粒子の最大径の変動係数は、0.1以下であり、前記変動係数は前記平均最大径で除された前記微粒子の最大径の標準偏差であり、かつ/または
前記微粒子の最小径に対する最大径の比は、2乃至1の範囲内にある、
請求項
12乃至
18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記微粒子は、実質的に球形である、請求項
12乃至
19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第2の液体の噴流は、小滴の吐出方向に実質的に垂直にかつ前記複数の液滴発生器の出口の長手方向軸に実質的に平行に流れる、請求項
12乃至
20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記複数の液滴発生器は、それらのそれぞれの出口から同時に液滴を分配し、かつ前記液滴は、前記第2の液体の噴流に接触する前にガスを平行に通過させ、かつ/または
前記第2の液体の噴流の流速および前記液滴の発生の周波数は、前記液滴および/または前記固体微粒子が合体しないように選択される、
請求項
12乃至
21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記少なくとも1つの液滴が発生された後の所定の時点で前記液滴のうち少なくとも1つの1つ以上の画像を撮影することをさらに含む、請求項
12乃至
22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
小滴速度、小滴体積、小滴半径およびその初期軌道からの小滴の偏差からなる群から選択される少なくとも1つの液滴特性を前記1つ以上の画像から導き出すことをさらに含む、請求項
23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記複数の液滴発生器に入る第1の液体の温度は、5℃乃至30℃の範囲内にあり、かつ/または
前記ノズルに入る第2の液体の温度は、0℃乃至20℃の範囲内にある、
請求項
12乃至
24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物ならびに/もしくは乳酸およびグリコール酸のコポリマーを含むか、または前記ポリマーもしくはコポリマーのいずれかの組み合わせである、請求項
12乃至
25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記ポリマーは、Resomer RG752H、Purasorb PDL 02A、Purasorb PDL 02、Purasorb PDL 04、 Purasorb PDL 04A、Purasorb PDL 05、Purasorb PDL 05A、Purasorb PDL 20、Purasorb PDL 20A、Purasorb PG 20、Purasorb PDLG 5004、Purasorb PDLG 5002、Purasorb PDLG 7502、Purasorb PDLG 5004A、Purasorb PDLG 5002A、Resomer RG755S、Resomer RG503、Resomer RG502、Resomer RG503H、Resomer RG502H、Resomer RG752、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項
26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記プロセスは、
前記第2の液体から前記固体微粒子を分離することによって前記固体微粒子を回収すること、
洗浄、加熱、乾燥、凍結乾燥および滅菌からなる群から選択される1つ以上の生成後処理ステップに前記微粒子を供すること、および/または
医薬組成物または送達形態中に前記微粒子を製剤化するまたは包装すること、
をさらに含む、請求項
12乃至
27のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記プロセスは、請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の装置を用いる、請求項
12乃至
28のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品ペイロードを封入する微粒子を含む、ポリマー微粒子を作製するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーミクロスフェアの生成のための方法および関連する装置が知られている。特定のプロセスでは、凝固したミクロスフェアの形成は、脱溶媒のプロセスを含む、厳重に管理されたパラメータ内で2つの流体を1つにすることによって達成される。流体1は、「分散層」として知られ、1つまたは複数の溶媒中に溶解した生体適合性ポリマーを含む。この組み合わせは、医薬品有効成分(API)などのペイロードがその中に次いで溶解され得る溶液を形成する。分散層の小滴は、「連続相」として知られる第2の流体中に吐出される。これらの間の接触は、それにより溶媒がポリマーおよびペイロードから抽出されるプロセスを開始し、その後廃液と見なされ得る流体中に沈殿したペイロード担持ポリマーミクロスフェアをもたらす。あるプロセスでは、小滴吐出プロセスは圧電効果を使用し、それにより電気パルスを印加されると圧電性結晶が歪みを起こす。この歪みは圧力パルスをもたらし、小滴をノズルから吐出させ、また負圧を作り出して、小滴が吐出されるとより多くの流体を引き込む。多くの既製のデバイスは、特に印刷産業において、小滴を発生するためにこの原理を使用する。
【0003】
米国特許第6,998,074号は、その中でポリマー材料がインクジェットプリントヘッドのオリフィスから分配されオリフィスは液体中に浸されるポリマーミクロスフェアを形成するための方法について記載している。
【0004】
国際公開第95/13176号は、プラスチックの小滴からプラスチック粒子を生成するためのプロセスおよびデバイスについて記載している。
【0005】
国際公開第2012/042273号および国際公開第2012/042274号は、生物活性剤を封入し、かつ例えば、デポー注射を介して、徐放性で使用するのに適している固体ビーズの調製のための装置およびプロセスについて記載している。
【0006】
国際公開第2013/014466号は、分散媒からビーズを分離するためのビーズ回収デバイスおよび方法について記載している。
【0007】
前述の生成方法と比較して向上したスループットおよび/または効率を提供する微粒子生成プロセスおよび関連する装置に対する満たされていないニーズが依然として存在する。廃棄される材料を最小限にしながら、制御された方法で大量の均一な特性の微粒子を生成する能力が、例えば、製薬産業のスケールアップには望ましいであろう。本発明は、これらの、および他のニーズに取り組むことを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
広く、本発明は、そこで複数(例えばアレイ)の小滴発生器が第2の液体の共通ストリーム(連続相)中に液滴を分配するように構成される、ポリマー微粒子を生成するための装置および方法に関する。本発明者は驚くべきことに、第2の液体のストリームは導管またはフローチャネルに接触する必要が無いが、噴流の形態(すなわち、ノズルから周囲の媒体中へ発射される流体のコヒーレントなストリーム)をとってよいことを見出した。さらに、小滴は第2の液体のストリームの流れの方向に沿って平行に間隔をあけて分配されてよい。前述の方法は、小滴発生器とフローチャネルとの間に1:1の関係を想定する。しかしながら、実験を通して、本発明者は、第2の液体に接触したときの小滴の沈殿は事実上瞬間的であり、第2の液体のストリームの流れの線に沿って小滴を直接分配すること(例えば、小滴発生器ノズルプレートを第2の液体の噴流の流れの線と位置合わせする)は、不適切な合体のない微粒子の形成を達成し、第2の液体(連続相)の消費の著しい減少につながり、このことがひいてはプロセスからのコストおよび廃棄物を低減することを見出した。
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は固体ポリマー微粒子を生成するための装置を提供し、装置は、
第1の液体の液滴を形成するための複数の液滴発生器と、
第2の液体の噴流を形成するためのノズルと
を含み、ここで複数の液滴発生器およびノズルは、使用時に、複数の液滴発生器からの液滴がガスを通過して上記第2の液体の噴流中へ入るように互いに配置される。
【0010】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、小滴を発生するように動作可能な少なくとも1つの圧電部品を含む。具体的には、小滴発生器はドロップオンデマンドモードで動作してよい。装置は、圧電部品に電場を印加するように動作可能な信号発生器をさらに含んでよい。
【0011】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器はインクジェットプリントヘッドの形態である。
【0012】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器はそれぞれ小滴発生器出口を含み、ここで小滴発生器出口は線状またはアレイ状に並んでいる。具体的には、小滴発生器出口の列またはアレイは、上記ノズルの噴流方向に実質的に平行であってよい。この文脈では、実質的に平行は、平行から30°以下、必要に応じて平行から5°以下のオフセットを意味する。オフセットの角度は、例えば、装置を上方から見ること(「鳥瞰図」)、およびノズルからの噴流方向の線および小滴発生器出口によって形成される線を考慮すること、およびこれらの線をそれらの交点へと概念的に伸ばすことによって決定されてよい。いくつかの場合では、ノズルからの噴流方向は、上方から見ると、小滴発生器出口によって形成される線と一致するであろう(この配置の例は
図3に示される)。
【0013】
いくつかの場合では、液滴発生器出口の数は5~2500個の範囲、必要に応じて256、512または1024個である。具体的には、記液滴発生器出口の数は100~1024個の範囲であってよい。
【0014】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、個々の小滴体積が1~100pLの範囲、必要に応じて5~50pLの範囲である液滴を発生するように動作可能である。
【0015】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、0.1~100kHz、必要に応じて1~10kHzの範囲の周波数で液滴を生成するように動作可能である。
【0016】
いくつかの場合では、装置は、液体の噴流中に分散された固体微粒子を受け取るための微粒子受け取り手段をさらに含む。具体的には、微粒子受け取り手段は、使用時に、そこで液滴が第2の液体の噴流に入る、噴流の領域の下流の開口に第2の液体の噴流が入るように配置された開口を有する導管を含んでよい。いくつかの場合では、微粒子受け取り手段は上記ノズルに面する開口を有する管を含む。管は可撓性または硬質材料で形成されてよく、エルボベンドを含んでよい。典型的には、微粒子受け取り手段は、微粒子含有噴流の略水平な動作を、微粒子の回収および/または第2の液体からの微粒子の分離のための下方への垂直動作へと変換できる。
【0017】
いくつかの場合では、微粒子受け取り手段は、微粒子受け取り手段から流体を除去するように動作可能な流体除去手段と、微粒子受け取り手段から微粒子を除去するように動作可能な微粒子回収手段とを含む。
【0018】
いくつかの場合では、装置は、上記ノズルを通して上記第2の液体の流れを発生するための手段をさらに含む。具体的には、流れを発生するための手段は、液体の無パルス流を生成するための調圧システムを含んでよい。ある場合では、流れを発生するための手段は、第2の液体を保持するためのリザーバを含んでよく、上記リザーバは上記ノズルと流体連通する出口を有する。
【0019】
いくつかの場合では、ノズルは、ノズルを通過する液体の流速を増加させ、それにより噴流を形成するように、流れの方向で断面積が減少する。
【0020】
いくつかの場合では、装置は、上記複数の液滴発生器によって発生した液滴を監視するためのカメラをさらに含む。代替または追加で、装置は上記複数の液滴発生器によって発生した液滴を照らすための光源をさらに含んでよい。具体的には、光源は、使用時に、カメラが液滴の吐出後に所定の(しかし典型的にはユーザが調節できる)時間で複数の液滴発生器から吐出される上記液滴の画像を撮影できるように、複数の液滴発生器と電気的に連動したLEDストロボを含んでよい。例えば、LEDストロボは、調節可能なストロボディレイ、調節可能なストロボ強度および/または調節可能なパルス幅設定を有してよく、それにより上記液滴の吐出後の上記所定の時間が調節され得る。
【0021】
いくつかの場合では、装置は、上記複数の液滴発生器に入る液体の温度、および/または上記ノズルに入る液体の温度を制御するための、少なくとも1つの温度調整器をさらに含む。具体的には、少なくとも1つの温度調整器は、複数の液滴発生器に入る第1の液体の温度を、5℃~30℃の範囲で、必要に応じて12℃~16℃または16℃~20℃の範囲で制御するための第1のチラーを含んでよい。ある場合では、少なくとも1つの温度調整器は、ノズルに入る第2の液体の温度を、0℃~20℃の範囲で、必要に応じて2℃~8℃または3℃~9℃の範囲で制御するための第2のチラーを含む。
【0022】
いくつかの場合では、ノズルは、使用時に、噴流が複数の液滴発生器の下方を通る水平線または弧を画定するように向けられるように配置される。具体的には、複数の液滴発生器は、使用時に、液滴が初期速度でおよび/または重力の支援で下方に、上記ガスを通って、上記第2の液体の噴流中へ吐出されるように配置されてよい。複数の液滴発生器は、上方から見ると、複数の液滴発生器のそれぞれの出口が、上記ノズルの噴流方向と一致し、かつ上記ノズルの噴流方向の上方にあるように配置されてよい。
【0023】
いくつかの場合では、液滴発生器の出口は等間隔で離されている。具体的には、隣接する液滴発生器の出口は、出口の中心間を測定して、0.1~0.2mm離されていてよい。
【0024】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、液滴発生器の出口~噴流の最近点の液滴の移動距離が2~10mm、必要に応じて4~6mmの範囲であるようにノズルに対して位置づけられる。
【0025】
第2の態様では、本発明は固体微粒子を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、
溶質および溶媒を含む第1の液体を提供することであって、溶質は生体適合性ポリマーを含み、第1の液体中のポリマーの濃度は少なくとも10%w/vであり、「w」はポリマーの重量であり、「v」は溶媒の体積である、提供することと、
液滴を発生するように動作可能な複数の液滴発生器を提供することと、
第2の液体の噴流を提供することと、
複数の液滴発生器に第1の液体の液滴を形成させることと、
溶媒が小滴を出るようにさせ、その結果固体微粒子を形成するように液滴をガスを通過させて第2の液体の噴流に接触させることと
を含み、
第2の液体中の溶媒の溶解度は第2の液体100ml当たり少なくとも5gの溶媒であり、溶媒は実質的に第2の液体と混和性である。
【0026】
いくつかの場合では、第1の液体は、微粒子内に封入されることが望ましい少なくとも1つの(1、2、3、4、5つのまたはそれより多い異なる標的物質)標的物質(「ペイロード」としても知られる)をさらに含み、標的物質は微粒子としてまたは溶液で第1の液体中に組み込まれる。ある場合では、標的物質は医薬活性剤または医薬活性剤の前駆体を含む。具体的には、標的物質は、腫瘍、中枢神経系(CNS)状態、眼球状態、感染症(例えばウイルス性、細菌性もしくは他の病原体)または炎症状態(自己炎症状態を含む)の処置のための医薬活性剤を含んでよい。
【0027】
いくつかの場合では、標的物質は、ペプチド、ホルモン治療剤、化学療法剤または免疫抑制剤であってよい。具体的には、標的物質は、オクトレオチドもしくはその塩(例えば酢酸オクトレオチド)、またはシクロスポリンAもしくはその塩を含んでよい。
【0028】
いくつかの場合では、標的物質は複数のナノ粒子を含んでよい。具体的には、ナノ粒子は、それに(直接または1つもしくは複数のリンカーを介して)共有結合または非共有結合(例えば静電的に)した医薬活性剤または医薬活性剤の前駆体を有してよい。ナノ粒子は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、2015年11月11日に出願され、国際公開第2016/075211A1号として公開されたPCT/EP2015/076364に記載されたようなものであってよい。
【0029】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、小滴を発生するように動作可能な少なくとも1つの圧電部品を含む。具体的には、小滴発生器はドロップオンデマンドモードで動作してよい。
【0030】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流に沿って平行に間隔をあけて液滴が第2の液体の噴流に接触するように、複数の液滴発生器のそれぞれの出口は実質的に上記第2の液体の噴流と一致する。
【0031】
いくつかの場合では、液滴発生器出口の数は100~1200個などの、5~2500個の範囲であり、必要に応じて256、512または1024個である。
【0032】
いくつかの場合では、液滴発生の周波数は0.1~100kHz、必要に応じて1~10kHzの範囲である。
【0033】
いくつかの場合では、液滴は、1~100pL、必要に応じて20~60pLの範囲で個々の小滴体積を有する。
【0034】
いくつかの場合では、固体微粒子の平均最大径(典型的には直径)は1~200μm、必要に応じて10~100μmまたは15~25μmまたは20~40μmの範囲である。
【0035】
いくつかの場合では、微粒子の最大径の変動係数は0.1以下であり、変動係数は平均最大径で除される微粒子の最大径の標準偏差である。本発明者は、本発明の方法の生産規模の増加にもかかわらず、得られる微粒子が、サイズおよび形状の優れた均一性を示す、すなわち、それらが実質的に単分散集団を形成することを見出した。
【0036】
いくつかの場合では、微粒子の最小径に対する最大径の比は2~1、必要に応じて1.1~1.01の範囲である。具体的には、微粒子は実質的に球形(「ミクロスフェア」)であってよい。
【0037】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流は、上記第2の液体の連続した無パルス流を提供すること、および上記第2の液体の流れを、流れに利用できる断面積を減少させそれにより第2の液体の流速を増加させるノズルを通過させることによって発生され、上記ノズルは第2の液体の噴流が出るオリフィスで終端する。
【0038】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流はガス(例えば空気)を通過する。
【0039】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流は、その長さの少なくとも一部に関していかなる壁またはチャネルとも接触していない。これは、チャネルまたは開口容器中の撹拌プールなどのプール中の流れとして連続相が一般に提供されるような、前述の方法と異なる。特定の実施形態では、いかなる壁またはチャネルとも接触していない噴流の長さの一部は接触区間を含み、上記接触区間は、そこで上記液滴が上記噴流と接触する噴流の区間である。
【0040】
いくつかの場合では、液滴は上記第2の液体の噴流に接触する前に、ガス(例えば空気)を1~100mm、必要に応じて2~10mmの距離通過する。
【0041】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流は、小滴の吐出方向に実質的に垂直に、かつ複数の液滴発生器出口の長手方向軸に実質的に平行に流れる。
【0042】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器は、第2の液体の噴流の上方に位置付けられ、上記液滴は第2の液体の噴流に向かって初期速度で、および/または重力の支援で下方に吐出される。
【0043】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器はそれらのそれぞれの出口から同時に液滴を分配する。具体的には、液滴は上記第2の液体の噴流に接触する前にガスを平行に通過してよい。
【0044】
いくつかの場合では、第2の液体の噴流の流速および液滴発生の周波数は、液滴および/または固体微粒子が合体しないように選択される。具体的には、第2の液体の噴流の流速は、20~200mL/分または20~100mL/分など、10~500mL/分の範囲であってよい。
【0045】
いくつかの場合では、プロセスは無菌条件下で、必要に応じてクリーンベンチ内で実行される。これは、標的物質が医薬品である場合、および/または微粒子が治療的もしくは他の臨床的使用を意図される場合に特に適している。プロセスがクリーンベンチ内で実行される場合では、複数の液滴発生器と第2の液体の噴流との相対的な位置は、クリーンベンチの空気流の方向および速さを考慮して選ばれ、それにより液滴を第2の液体の噴流に接触させる。
【0046】
いくつかの場合では、本発明のプロセスは、少なくとも1つの液滴が発生された後の所定の時点で、上記液滴の少なくとも1つの、1つまたは複数の画像を撮影することをさらに含む。具体的には、プロセスは、小滴速度、小滴体積、小滴半径およびその初期軌道からの小滴の偏差からなる群から選択される少なくとも1つの液滴特性を、上記1つまたは複数の画像から導き出すことをさらに含む。このようにして、小滴特性の監視(連続的なライブ監視を含む)は、必要であれば、生成される微粒子のサイズおよび他の特性を制御するために、小滴発生周波数、第2の液体の噴流の流速または第1および/もしくは第2の液体の温度などの1つまたは複数のプロセスパラメータを調節するために統合および/またはフィードバックされ得る。
【0047】
いくつかの場合では、複数の液滴発生器に入る第1の液体の温度は5℃~30℃の範囲、必要に応じて12℃~16℃または16℃~20℃の範囲である。
【0048】
いくつかの場合では、ノズルに入る第2の液体の温度は、0℃~20℃の範囲、必要に応じて2℃~8℃または3℃~9℃の範囲である。
【0049】
いくつかの場合では、溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0050】
いくつかの場合では、第2の液体は、水とアルコール(tert-ブタノール)の混合物、または水とアルコール以外の水溶性有機化合物の混合物を含む。具体的には、第2の液体は水中の15%w/wの第三級ブタノールであってよい。
【0051】
いくつかの場合では、ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物および/もしくは乳酸とグリコール酸とのコポリマーを含むか、または上記ポリマーもしくはコポリマーの任意の組み合わせである。具体的には、ポリマーはResomer RG752H、Purasorb PDL 02A、Purasorb PDL 02、Purasorb PDL 04、 Purasorb PDL 04A、Purasorb PDL 05、Purasorb PDL 05A、Purasorb PDL 20、Purasorb PDL 20A、Purasorb PG 20、Purasorb PDLG 5004、Purasorb PDLG 5002、Purasorb PDLG 7502、Purasorb PDLG 5004A、Purasorb PDLG 5002A、Resomer RG755S、Resomer RG503、Resomer RG502、Resomer RG503H、Resomer RG502H、Resomer RG752、またはそれらのいずれかの組み合わせを含んでよい。
【0052】
いくつかの場合では、プロセスは、第2の液体から固体微粒子を分離することによって固体微粒子を回収することをさらに含む。具体的には、プロセスは、洗浄、加熱、乾燥、凍結乾燥および滅菌からなる群から選択される1つまたは複数の生成後処理ステップに微粒子を供することをさらに含んでよい。
【0053】
いくつかの場合では、プロセスは、微粒子を医薬組成物または送達形態中へと製剤化または包装することをさらに含む。例えば、微粒子は、医薬的に許容可能な担体、希釈剤またはビヒクルと組み合わされてよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物または送達形態はデポー注射であってよい。
【0054】
いくつかの場合では、本発明の第2の態様のプロセスは、本発明の第1の態様による装置を用いる。
【0055】
第3の態様では、本発明は本発明の第2の態様のプロセスによって生成されるか生成可能な微粒子を提供する。
【0056】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の複数の微粒子および医薬的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、塩および/または溶液を含む医薬組成物提供する。
【0057】
第5の態様では、本発明は、液体中に懸濁される複数の固体ポリマー微粒子を含む液体ストリームを提供し、ここで液体ストリームの流速は0.8cm3/s~5cm3/sの範囲であり液体ストリーム中の微粒子の密度は100000微粒子/cm3~750000微粒子/cm3の範囲である。これは、例えば、液体ストリームの流速を50mL/分~300mL/分とし、512個の液滴発生器出口のそれぞれから1000Hz~6000Hzの射出速度で液滴をストリーム中に吐出することによって提供されてよい。液滴は脱溶媒のプロセスにより凝固し(上記を参照)、512000~3072000微粒子/秒を提供し、これは液体ストリームの流れによって運ばれる。流れ中の微粒子の比較的高い密度は、連続相の廃棄物を減らして、より効率的な微粒子生成をもたらす。
【0058】
本発明のこの態様の液体ストリームの微粒子は、本発明の第2の態様に関連して定義されるようなものであってよい。具体的には、微粒子は、
(i)医薬活性剤または医薬活性剤の前駆体、
(ii)腫瘍、中枢神経系(CNS)状態、眼球状態、感染症または炎症状態の処置のための医薬活性剤、
(iii)ペプチド、ホルモン治療剤、化学療法剤または免疫抑制剤、および
(iv)複数のナノ粒子
からなる群から選択される標的物質を封入してよい。
標的物質の具体的な例は、
オクトレオチドもしくはその塩(例えば酢酸オクトレオチド)、またはシクロスポリンAもしくはその塩を含む。
【0059】
いくつかの場合では、固体微粒子の平均最大径は1~200μm、必要に応じて10~100μmまたは15~25μmまたは20~40μmの範囲である。微粒子の最大径の変動係数は0.1以下であってよく、変動係数は平均最大径で除される微粒子の最大径の標準偏差である。微粒子の最小径に対する最大径の比は2~1、必要に応じて1.1~1.01の範囲であってよい。微粒子は実質的に球形であってよい。
【0060】
いくつかの場合では、液体ストリームは噴流の形態であってよい。噴流は本発明の第2の態様に関連して定義されるようなものであってよい。いくつかの場合では、本発明のこの態様の液体ストリームは、本発明の第1の態様による装置を使用して生成されるか生成可能であってよい。
【0061】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに容認できないか、または明確に回避されると述べられている場合を除き、記載される態様および好ましい特徴の組み合わせを含む。本発明のこれらおよびさらなる態様および実施形態は、以下のおよび添付の実施例および図面を参照してさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】連続相と接触して液滴から溶媒が拡散しそれによって固体微粒子を生成する脱溶媒プロセスの図(正確な縮尺ではない)を示す。
【
図2】圧電式小滴発生器(プリントヘッド)の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明の説明において、以下の用語が用いられ、下に示すように定義されることが意図される。
【0064】
微粒子
本発明による微粒子は固体ビーズの形態であってよい。微粒子またはビーズに関連して本明細書で使用される場合、固体はゲルを包含することが意図される。本明細書で使用される場合、微粒子は、ミクロンスケール(典型的には、直径1μm~最大999μm)の任意のポリマー微粒子またはビーズを特に含む。微粒子は実質的に球形の形状であってよい(本明細書では「ミクロスフェア」とも呼ばれる)。具体的には、微粒子の最短径に対する最長径の比は、5、4、3、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.05以下または1.01以下であってよい。
【0065】
噴流
本明細書で使用される場合、「噴流」は、ノズルまたは装置から周囲の媒体中へ発射される流体のコヒーレントなストリームである。具体的には、第2の液体(連続相)の噴流は、ノズルからガス(典型的には空気)中へ発射される第2の液体のコヒーレントなストリームであってよい。噴流は流路を画定してよく、その少なくとも一部はいかなる固体壁、導管またはチャネルとも接触していない。噴流は、複数の液滴発生器から分配される液滴の経路(単数または複数)と交差する流路(例えば、線または弧)を画定してよい。例えば、噴流は、複数の小滴発生器の下方の空気を通過する第2の液体のストリームであってよく、それにより小滴発生器から分配される液滴は、重力の支援でガスを通過して第2の液体のストリーム中へ入り、上記第2の液体のストリームによって運ばれる。典型的には、第2の液体の表面張力は、コヒーレントなストリームの形態をとる噴流に寄与する。いくつかの場合では、噴流は実質的に円形の断面を有する。しかしながら、他の断面形状(例えば、扁平なまたは楕円形様の)が特に企図され、例えば特定のノズル形状を用いて提供されてよい。
【0066】
生体適合性ポリマー
ポリマーは典型的には生体適合性ポリマーである。「生体適合性」は典型的には、生きた細胞、組織、臓器、または系と適合することを意味し、傷害、毒性、または免疫系による拒絶のリスクが最小であるか、またはリスクがない。使用されてよいポリマーの例は、Purasorb PDL 02A、Purasorb PDL 02、Purasorb PDL 04、Purasorb PDL 04A、Purasorb PDL 05、Purasorb PDL 05A、Purasorb PDL 20、Purasorb PDL 20Aなどのポリラクチド(様々な末端基を有する);Purasorb PG 20などのポリグリコリド(様々な末端基を有する);ポリカプロラクトン;ポリ酸無水物、ならびにPurasorb PDLG 5004、Purasorb PDLG 5002、Purasorb PDLG 7502、Purasorb PDLG 5004A、Purasorb PDLG 5002A、resomer RG755S、Resomer RG503、Resomer RG502、Resomer RG503H、Resomer RG502H、RG752、RG752Hなどの、乳酸とグリコール酸のコポリマー(様々な末端基、L:G比および分子量が含まれ得る)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの場合では、溶質が実質的に水に不溶であることが好ましい(第2の液体として水を使用するのに都合がよい)。第2の液体が水を含む場合、溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン、ヘキサフルオロイソプロパノール、グリコフロール、PEG200およびPEG400などの、水混和性有機溶媒であることが好ましい。
【0067】
特にポリマーがポリ(α―ヒドロキシ)酸を含む場合、ポリマーの重量平均分子量(MW)は4~700kダルトンであってよい。ポリマーが乳酸とグリコール酸のコポリマー(しばしばPLGAと呼ばれる)を含む場合、上記ポリマーは、4~120kダルトン、好ましくは4~15kダルトンの重量平均分子量を有してよい。
【0068】
ポリマーがポリラクチドを含む場合、上記ポリマーは4~700kダルトンの重量平均分子量を有してよい。
【0069】
特にポリマーがポリ(α―ヒドロキシ)酸を含む場合、ポリマーは0.1~2dl/gの固有粘度を有してよい。ポリマーが乳酸とグリコール酸のコポリマー(しばしばPLGAと呼ばれる)を含む場合、上記ポリマーは、0.1~1dl/g、および必要に応じて0.14~0.22dl/gの固有粘度を有してよい。ポリマーがポリラクチドを含む場合、上記ポリマーは0.1~2dl/g、および必要に応じて0.15~0.25dl/gの固有粘度を有してよい。ポリマーがポリグリコリドを含む場合、上記ポリマーは0.1~2dl/g、および必要に応じて1.0~1.6dl/gの固有粘度を有してよい。第1の液体は、固体微粒子内に封入されることが望ましい標的物質を含むことが好ましい。しかしながら、本明細書では、本発明のプロセスは、ある場合には、標的物質を含まなくてもよいことが特に企図される。例えば、プロセスは、例えば、実験または臨床試験において負の対照として使用するためのプラセボ微粒子を生成するために使用されてよい。
【0070】
標的物質
標的物質(「ペイロード」としても知られる)は第1の液体中に微粒子として組み込まれてよく、または溶解されてよい。標的物質は医薬活性剤を含んでよく、または医薬活性剤の前駆体であってよい。いくつかの場合では、標的物質は、腫瘍、中枢神経系(CNS)状態、眼球状態、感染症もしくは炎症状態の処置のための、医薬活性剤、またはその前駆体(例えばプロドラッグ)を含む。いくつかの場合では、標的物質は、ペプチド、ホルモン治療剤、化学療法剤または免疫抑制剤を含んでよい。ある場合では、上記標的物質は複数のナノ粒子(例えば金ナノ粒子)を含む。存在する場合、そのようなナノ粒子は、それに共有結合または非共有結合した医薬活性剤またはその前駆体を有してよい。
【0071】
医薬活性剤の例は、例えば、排卵誘発剤、ホルモン治療剤、タンパク質治療薬、抗感染薬、抗生物質、抗真菌薬、癌薬、鎮痛薬、ワクチン、CNS薬、および免疫抑制薬を含むが、これらに限定されない非経口送達に適した任意の薬剤を含む。特定の例は、オクトレオチドまたはその塩(例えば酢酸オクトレオチド)、およびシクロスポリンAまたはその塩を含む。
【0072】
とりわけ非経口、硝子体内、頭蓋内送達の放出制御による、ポリマー微粒子中の薬物の送達は、例えば、水溶性が乏しい、毒性が高い、吸収特性が低い薬物の場合に特に利点を有するが、本発明はそのような薬物の使用に限定されない。活性剤は、例えば、低分子薬物、またはポリマー分子などのより複雑な分子であってよい。医薬活性剤はペプチド剤を含んでよい。用語「ペプチド剤」は、しばしば「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」と一般に呼ばれる、ポリ(アミノ酸)を含む。用語は、ペプチド剤類縁体、誘導体、アシル化誘導体、グリコシル化誘導体、ペグ化誘導体、融合タンパク質なども含む。本発明の方法で使用されてよいペプチド剤は、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、成長ホルモンおよび成長因子を含む(が、これらに限定されない)。
【0073】
標的物質は(とりわけ医薬活性剤またはその前駆体の場合に)、ポリマーの重量と比較して2~60%w/w、必要に応じて5~40%w/w、さらに必要に応じて5~30%w/w、およびより必要に応じて5~15%w/wの量で提供されてよい。
【0074】
標的物質がペプチド剤を含む場合、第1の液体は1つまたは複数の三次構造変化阻害剤を含んでよい。三次構造変化阻害剤の例は、サッカライド、サッカライド部分を含む化合物、ポリマー(グリコール、マンニトール、ラクチトールおよびソルビトールなど)、固体のまたは溶解された緩衝剤(炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムなど)、ならびに金属塩(CaCl2、MnCl2、NaClおよびNiCl2など)である。第1の液体は、最大25%w/wの三次構造変化阻害剤を含んでよく、三次構造変化阻害剤の重量パーセントはポリマーの重量のパーセントとして計算される。例えば、第1の液体は0.1~10%w/w(必要に応じて1~8%w/w、およびさらに必要に応じて3~7%w/w)の金属塩、ならびに0.1~15%w/w(必要に応じて0.5~6%w/w、およびさらに必要に応じて1~4%w/w)のポリオールを含んでよい。
【0075】
第2の液体
第2の液体(本明細書では「連続相」とも呼ばれる)は、その中で溶質(典型的にはポリマー)が実質的に不溶である任意の液体を含んでよい。そのような液体は、時には「貧溶媒」と呼ばれる。適切な液体は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(例えば1-ブタノール、2-ブタノールまたはtert-ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、および高級アルコール;ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタンを含む単純な炭化水素および高級炭化水素を含んでよい。所望により、液体の混合物が使用されてよい。
【0076】
第2の液体は好ましくは、水を、必要に応じて1つまたは複数の界面活性剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール(例えば1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(例えば1-ブタノール、2-ブタノールまたはtert-ブタノール)、イソプロピルアルコールなどのアルコール、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80とともに含む。アルコールなどの界面活性剤は、小滴を受け取る第2の液体の表面張力を減少させ、それは小滴が第2の液体に衝突するときの小滴の変形を減少させ、したがって非球形の小滴が形成する可能性を低下させる。これは、小滴からの溶媒の除去が急速であるとき、特に重要である。第2の液体が水および1つまたは複数の界面活性剤を含む場合、第2の液体は、1~95%v/v、必要に応じて1~30%v/v、必要に応じて1~25%v/v、さらに必要に応じて5~20%v/v、およびさらにより必要に応じて10~20%v/vの界面活性剤含有量を含んでよい。界面活性剤の%体積は、第2の液体の体積に対して計算される。
【0077】
プリントヘッド
本明細書で使用される場合、「プリントヘッド」または「インクジェットプリントヘッド」は、典型的にはインクジェット印刷またはインクジェット材料堆積に用いられる部品であってよく、それらは吐出される流体のためのリザーバとして機能する1つまたは複数のチャンバと、ドロップオンデマンドモードで動作する圧電材料によって印加される力で流体の小滴がそれを通って吐出される、少なくとも2つのノズルとを含む。
【0078】
インクジェットプリントヘッドのノズルは、単列または2列以上を有するアレイなどの、規則的なパターンで配置されてよい。インクジェットプリントヘッドは、「そのまま」使用される市販の「既製の」インクジェットプリントヘッドであってよく、または本発明の微粒子発生方法での使用のために改造されてよく、または本発明の微粒子発生方法での使用のための特注であってよい。本発明に従う使用のためのプリントヘッドの一例は、コニカミノルタ512LHプリントヘッド、例えばKM512LH-010532である。
【0079】
国際公開第2012/042274号、国際公開第2012/042273号、および国際公開第2013/014466号の内容全体は、すべての目的のために参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0080】
以下は例として提示され、特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0081】
実施例
実施例1 - ミクロスフェア発生
本発明は、長期間にわたり制御された方法で体内に薬物を放出するように設計されたポリマーミクロスフェア内の活性薬物化合物の一貫した正確なカプセル化を提供することを目的とする。
【0082】
本例は、ドロップオンデマンドインクジェット技術を用いて、ピコリットル(pL)の範囲で小滴を生成する。本技術は、多数のノズルを介し数kHzの周波数で、個別の、再現性のある小滴を生成することが証明されている。圧力パルスの最適化は、印加される電場の大きさおよび持続時間を調節することにより達成される。ノズルプレートの温度もまた、吐出点での流体の粘度を変えるために制御され得る。
【0083】
小滴形成は、ImageXpert社から提供される高度観測システム(「JetXpert」)を使用して追跡される。システムは、カメラ、および射出信号(5ボルトP-P矩形波50%デューティサイクル)が小滴発生器のアクチュエータに送信される毎にトリガされるLEDストロボを含む。結果は吐出後の所定の時間での吐出された小滴の静止単色画像であり、それは所定の時間にわたってリフレッシュされ、仕様から逸脱している可能性のある液滴の監視を可能にする。この時間はストロボディレイとして知られ、プロセスオペレータによってソフトウェアに入力され得る。ディレイは可変であり、ゆえに小滴形成期間の全体が追跡可能である。システムは、開始値、終了値およびステップサイズをナノ秒単位で割り当てることによって「動いている」小滴の観測を可能にし、これは次に、小滴形成および予め設定された終点までの吐出経路を追跡するようにストロボディレイを自動的に増加し始める。
【0084】
観測システムは、吐出された小滴の重要な特性、すなわち速度(メートル毎秒)、体積(pL)、半径(μm)およびその元の軌道からの偏差をユーザが確認できるように較正され得る(値は平均値、標準偏差、最小値および最大値で提供される)。これらのデータは、スプレッドシートに自動的に記録され、バッチレコードとして機能する。画像および動画は、データが記録されていないときにも撮影されてよい。
【0085】
第2の流体は、発生器の下側を横切る。小滴は、最初に、空気中に吐出され、その後流体の水平交差流(すなわち噴流)によって捕捉され、すべてのノズルからのすべての液滴を1つのストリーム中に回収する。
【0086】
図3に示すように、小滴発生器の真下の流れは層流である(すなわち、第2の液体の噴流は、小滴発生器の下を通過する略水平な線または弧を画定する)。本発明者は、流れに利用できる円形断面積に対する急激な減少を含むノズルを設計した。これは、吐出された小滴が合体しないことを確実にする目的で、発生器直下の領域における流速を増加させるのに役立つ。噴流の速度は、小滴が、それらの後ろの小滴の経路から直ちに除去されるようなものである。連続的な無パルス流は、調圧システムによって提供される。
【0087】
論理は、合体を回避する最適な方法は、発生器のノズルプレートに対して90°で広いフローチャネルを設けることであることを示唆している。しかしながら、実験を通して、本発明者は、沈殿は事実上瞬間的であり、ノズルプレートの線に沿って直接射出することは、連続相の消費の著しい減少につながり、ひいてはプロセスからのコストおよび廃棄物を低減することを見出した。
【0088】
連続相ノズルは、本発明者によって設計された特注のブラケットに固定され、ブラケットはカスタムアスペクト対応フレームワークに取り付けられ、次に、フレームワークにはJetXpert周辺機器が取り付けられる。ノズルと正反対の、小滴発生器の他方の側には、凝固した球体を含有するストリームを捕捉するための受け取りエルボがある。
【0089】
両方のプロセス流体の温度は、プログラム可能な冷却システムによって制御される。貧溶媒は、貧溶媒ノズルの上流でインラインで冷却される。それらの接触点において、連続相は3~9℃である。薬物を担持した製剤の安定性を維持するために、またプライミングおよび真空変化によって攪拌される場合の凍結を回避するために、分散相を約16℃で保持する。
【0090】
上述の微粒子発生方法は、単位時間当たりより多くの数の微粒子を生成することが見出され、国際公開第2012/042273号および国際公開第2012/042274号に記載されているチャネル当たり単一の小滴発生器ノズルの方法と比較して、比較的より小さい体積の貧溶媒が生成される微粒子当たり必要とされた。例えば、512個の小滴発生器出口を有するインクジェットプリントヘッドが、2000~6000Hzの射出速度で用いられる場合、生成される微粒子の数は、1024000~3072000微粒子毎秒の範囲である。したがって、上述の方法は、工業規模での生産および効率の向上の大きな可能性を提供する。形成された固体微粒子を含有する液体ストリームは、生成された微粒子の所与の量に対して連続相の廃棄のレベルがより低くなるように、微粒子のより高い密度を有する。それにもかかわらず、生成された微粒子は優れた均一性を示す、すなわち高度に単分散であることが見出された。
【0091】
実施例2 - オクトレオチド担持微粒子
実施例1において上で記載された微粒子生成プロセスの特定の例は、ここに記載されるオクトレオチド担持ミクロスフェア(Q-Octreotide(商標))の生成である。
【0092】
オクトレオチド(Novartis Pharmaceuticals社の商品名Sandostatin(登録商標)によっても知られる)は、ソマトスタチンを薬理学的に模倣するオクタペプチドである。オクトレオチドは以下の化学構造を有する。
【化1】
【0093】
オクトレオチドは、成長ホルモンを産生する腫瘍(先端巨大症および巨人症)、甲状腺刺激ホルモンを分泌する下垂体腫瘍(サイロトロピノーマ(thyrotropinoma))、カルチノイド症候群に伴う下痢および潮紅エピソード、ならびに血管作用性小腸ペプチド分泌腫瘍(VIPoma)を有する人々の下痢の処置のために使用される。
【0094】
【0095】
方法論
マスター製剤は:
Resomer RG752H
酢酸オクトレオチド
DMSO
で作製される。
【0096】
活性溶液を112~16℃で維持する。
【0097】
貧溶媒
15%w/w第三級ブタノール。
【0098】
小滴分配
KM512LHヘッドを4kHzの周波数設定で稼働させた。
【0099】
貧溶媒流
125mL/分、2~8℃。
【0100】
ビーズハーベスタ(国際公開第2013/014466号参照)を使用してオクトレオチド担持ミクロスフェアを回収し、洗浄し、凍結乾燥させ、最後に滅菌した(例えばガンマ線またはE-ビーム滅菌を使用して)。
【0101】
オクトレオチド担持ミクロスフェアは、単分散であり、徐放性医薬品の使用に適していると決定された。
【0102】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、個々の刊行物または特許または特許出願の各々が、その全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同様に、参照によりその全体が、すべての目的のために同じ範囲で本明細書に組み込まれる。
【0103】
本明細書に記載の特定の実施形態は、限定ではなく例として提供される。本明細書中のいずれの副題も、便宜のためにのみ含まれ、決して開示を限定するものとして解釈されるべきではない。