(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】高周波コイル、および、それを用いた磁気共鳴撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220727BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A61B5/055 355
G01N24/00 570C
G01N24/00 510Y
(21)【出願番号】P 2019018244
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208501(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0135711(US,A1)
【文献】特開2008-119214(JP,A)
【文献】特開2008-178453(JP,A)
【文献】特開2018-183465(JP,A)
【文献】特開2004-097607(JP,A)
【文献】特開2008-289603(JP,A)
【文献】特開2003-135417(JP,A)
【文献】特開平03-244435(JP,A)
【文献】特開平03-045246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/00 - 33/64
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のコイルと、棒状の第一および第二の躯体とを有し、
前記第一のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第一のループと、前記第一のループに直列に挿入され、前記第一のループが受信した信号を検出する第一の信号検出部とを備え、
前記第一の躯体と第二の躯体は、短軸方向に間隔をあけて配置され、前記第一の信号検出部は、前記第一の躯体上に搭載され、前記第一のループの前記第一の信号検出部と向かいあう部分は、前記第二の躯体上に搭載され、
前記第一のループは、変形可能であり、前記第一の躯体と第二の躯体の間隔は、前記第一のループの変形を伴いながら可変であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項2】
並べて配置された複数のコイルと、前記複数のコイルの一部を支持する棒状の複数の躯体とを有し、
複数の前記コイルはそれぞれ、高周波信号を受信する導体製のループと、前記ループに直列に挿入され、前記ループが受信した信号を検出する信号検出部とを備え、
前記複数の躯体は、当該躯体の短軸方向に、間隔をあけて並べて配置され、
複数の前記ループにそれぞれ挿入されている前記信号検出部は、前記躯体の短軸方向に、間隔をあけて並べて配置され、それぞれの前記信号検出部は、前記躯体のいずれかによって支持され、
前記ループは、変形可能であり、前記複数の躯体の間隔は、前記ループの変形を伴いながら可変であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項3】
請求項2記載の高周波コイルであって、
全てのコイルの前記信号検出部と前記ループの一部とは、異なる隣り合った前記躯体にそれぞれ支持され、
前記ループは前記躯体の距離によってループを半分に折り曲げ可能なことを特徴とする高周波コイル。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波コイルであって、第二のコイルと、前記第二の躯体と長軸が向かいあうように配置された、棒状の第三の躯体とをさらに有し、
前記第二のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第二のループと、前記第二のループに直列に挿入され、前記第二のループが受信した信号を検出する第二の信号検出部とを備え、
前記第二の信号検出部は、前記第二の躯体および前記第三の躯体のいずれか一方に搭載され、前記第二のループの前記第二の信号検出部と向かいあう部分は、前記第二の躯体および第三の躯体のうち、前記第二の信号検出部が搭載されていない方に搭載され、
前記第二のループは、変形可能であり、前記第二の躯体と第三の躯体の間隔は、前記第二のループの変形を伴いながら可変であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項5】
請求項1記載の高周波コイルであって、第三のコイルをさらに有し、
前記第三のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第三のループと、前記第三のループに直列に挿入され、前記第三のループが受信した信号を検出する第三の信号検出部とを備え、
前記第三の信号検出部は、前記第一の躯体および前記第二の躯体のうちの一方に搭載され、前記第三のループの前記第三の信号検出部と向かいあう部分は、前記第一および前記第二の躯体のうち第三の信号検出部が搭載されていない方に搭載されていることを特徴とする多チャンネルの高周波コイル。
【請求項6】
請求項4記載の高周波コイルであって、第三のコイルと、第四のコイルとをさらに有し、
前記第三のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第三のループと、前記第三のループに直列に挿入され、前記第三のループが受信した信号を検出する第三の信号検出部とを備え、
前記第四のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第四のループと、前記第四のループに直列に挿入され、前記第四のループが受信した信号を検出する第四の信号検出部とを備え、
前記第三の信号検出部は、前記第一の躯体および前記第二の躯体のうちの一方に搭載され、前記第三のループの前記第三の信号検出部と向かいあう部分は、前記第一および前記第二の躯体のうち第三の信号検出部が搭載されていない方に搭載され、
前記第四の信号検出部は、前記第一の躯体および前記第二の躯体のうちの一方に搭載され、前記第四のループの前記第四の信号検出部と向かいあう部分は、前記第一および前記第二の躯体のうち第四の信号検出部が搭載されていない方に搭載されていることを特徴とする多チャンネルの高周波コイル。
【請求項7】
請求項4に記載の高周波コイルであって、前記第一のループと第二のループは、互いの磁気結合を除去する構造または回路を備えていることを特徴とする高周波コイル。
【請求項8】
請求項7に記載の高周波コイルであって、前記第一のループと第二のループは、前記磁気結合を除去するために、一部が重なり合うように配置されていることを特徴とする高周波コイル。
【請求項9】
請求項7に記載の高周波コイルであって、前記第一のループおよび第二のループには、前記磁気結合を除去するための回路が直列に挿入され、前記回路は、前記第二の躯体に搭載されていることを特徴とする高周波コイル。
【請求項10】
請求項1に記載の高周波コイルであって、
前記第一のループは、少なくとも前記第一および第二の躯体に搭載されていない部分が、屈曲可能な構造であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項11】
請求項4に記載の高周波コイルであって、
前記第一、第二および第二の躯体を引き寄せて隣接させる引き寄せ機構をさらに有することを特徴とする高周波コイル。
【請求項12】
請求項11に記載の高周波コイルであって、
前記引き寄せ機構は、第一および第二のループの少なくとも一部を構成する、形状記憶効果を有する導体であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項13】
請求項11に記載の高周波コイルであって、
前記引き寄せ機構は、前記第一および第二の躯体を貫通するように配置された紐状の部材を含むことを特徴とする高周波コイル。
【請求項14】
請求項4に記載の高周波コイルであって、
前記第一および第二のコイルは、前記第二の躯体上での距離を変化可能に前記第二の躯体に搭載され、前記第二の躯体と第一の躯体との距離および第二の躯体と第三の躯体との距離の少なくとも一方を変化させることができることを特徴とする高周波コイル。
【請求項15】
請求項1に記載の高周波コイルであって、
前記第一および第二の躯体は、長軸方向に湾曲可能な部材であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項16】
被検体からの核磁気共鳴信号を受信する受信コイルとして、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の高周波コイルを用いることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI(Magnetic resonance imaging:磁気共鳴撮像)装置に用いられる高周波コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置には、被写体に高周波磁場を照射し、被写体から発生する核磁気共鳴信号を受信する装置として、高周波コイル(以下、RF(Radio Frequency)コイルという)が備えられている。照射用のRFコイルと受信用のRFコイルは、高画質化のために別々のコイルが用いられる。
【0003】
受信用RFコイル(以下受信RFコイルという)は、高SNR、高速撮像を実現するため現在では32~128個(ch)のコイルで構成された多チャンネルコイルが普及している。受信用RFコイルの各コイルは、導体からなるコイルエレメントと、コイルの共振周波数を調整するキャパシタと、コイルに流れた電流を検出する信号検出回路と、RFコイルの共振周波数を変える周波数調整回路と、他のコイルとの磁気結合を防ぐ磁気結合防止回路とを備えて構成される。周波数調整回路が、受信RFコイルの共振周波数を、核磁気共鳴信号と同じ周波数に調整することにより、受信RFコイルは、磁気共鳴信号の取得が可能になる。信号検出回路、磁気結合防止回路、および、周波数調整回路は、インダクタ、キャパシタ、ダイオード等の電子部品により構成されている。
【0004】
受信RFコイルは、高い感度を得るために被写体に近接して配置することが望ましい。そのため、受信RFコイルは、被検者の体の部位に合わせて複数の形状が用意されている。受信RFコイルは、被検者の部位に合わせた形状の樹脂製筐体の内部に配置されるリジッドな形状のタイプと、樹脂製筐体に加え一部フレキシブルな形状を持たせ被検者の形状に任意に合わせられるフレキシブルな形状のタイプがある。操作者は、被検者の撮像部位に応じて最適なRFコイルを選択し、撮像部位に設置する。
【0005】
フレキシブルな形状のタイプの受信RFコイルのうち、信号検出回路等の電子部品を含む回路を覆う部分は、外部からの衝撃による電子部品の破壊を防ぐために、この部位は比較的堅くて重い樹脂製筐体によって保護される。コイルエレメントはフレキシブル性を奏でるために樹脂製筐体もしくは保護カバーの外に設置されるが、金属疲労により導体が断線するのを防ぐため、スポンジで覆われ、保護される。
【0006】
特許文献1には、コイルエレメントの導体として同軸ケーブルを用いることによって、受信RFコイルを構成する部品点数を減らし、柔軟性を持たせる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の受信RFコイルの樹脂製筐体の部分は、比較的重いことに加え、柔軟性がほとんどない。筐体内でコイルエレメントの導体を覆うスポンジも、受信RFコイルの柔軟性を低下させている。
【0009】
また、多チャンネルコイルは、コイルごとに信号検出回路と周波数調整回路と磁気結合防止回路が必要であるため、多くの電子部品が実装され、すべての電子部品が樹脂製筐体で覆われるため、受信RFコイルの重量が一般的に2~5kg程度に達する。また、受信RFコイルの筐体は変形せず、被検者の体の撮像部位を覆うために、予め設計された立体的な形状となる。そのため、受信RFコイルは、可搬性が悪く、また、収納時に占有する容積が大きく、大きな収納場所が必要となる。特に、腹部コイルなどの大きな撮像部位の受信RFコイルは、大きく重いため、腹部用の受信RFコイルを操作者が両手に抱えて運び、腹部に設置する作業は、負担が大きい。
【0010】
特許文献1のように、コイルエレメント導体として同軸ケーブルを用いた場合でも、周波数調整回路は用いる必要があるため、受信RFコイルには電子部品が数多く残り、保護カバーが必要である。そのため、軽量、柔軟性の向上には限度がある。
【0011】
また、腹部コイルなどの大きな撮像部位の受信RFコイルは、軽量化できたとしても、そもそも大きいため取り扱いが難しく、収納性、可搬性等の使い勝手は改善されない。
【0012】
本発明の目的は、フレキシブルで可搬性の高いRFコイルを提供することにある。
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第一のコイルと、棒状の第一および第二の躯体とを有する。第一のコイルは、高周波信号を受信する導体製の第一のループと、第一のループに直列に挿入され、第一のループが受信した信号を検出する第一の信号検出部とを備えている。第一の躯体と第二の躯体は、短軸方向に間隔をあけて、即ち長軸が向かい合うように配置され、第一の信号検出部は、第一の躯体上に搭載され、第一のループの第一の信号検出部と向かいあう部分は、第二の躯体上に搭載されている。第一のループは、変形可能であり、第一の躯体と第二の躯体の間隔は、第一のループの変形を伴いながら可変である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第一の躯体と第二の躯体を近づけるように折り畳むことができるフレキシブルで可搬性の高いRFコイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施形態のMRI装置の構造を示すブロック図。
【
図3】実施形態の受信RFコイルの(a)開いた状態の斜視図、(b)折りたたんだ状態の斜視図、(c)折りたたんだ状態のループ電流を説明する図。
【
図4】実施形態の受信RFコイルの構造を示すブロック図。
【
図6】(a)実施形態の受信RFコイルを構成するループを同軸ケーブルで構成した例を示すブロック図、(b)は(a)の同軸ケーブルの等価回路図。
【
図7】実施形態の受信RFコイルに引き寄せ機構として紐71を貫通させた構成を示す斜視図。
【
図8】実施形態の第一の変形例の受信RFコイルのブロック図。
【
図9】実施形態の第二の変形例の受信RFコイルのブロック図。
【
図10】実施形態の第三の変形例の受信RFコイルのブロック図。
【
図11】実施形態の第四の変形例の受信RFコイルのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を用いて、本発明の一実施形態の高周波コイルおよび高周波コイルを用いたMRI装置について説明する。尚、本発明は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で自由に設計変更し得るものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。
【0017】
<MRI装置の全体構成>
本実施形態のMRI装置100の全体構造について
図1および
図2を用いて説明する。
【0018】
図1は、MRI装置の一例に係る外観を示し、
図2は、MRI装置の全体の概略構造を示している。
【0019】
図1および
図2に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石110、傾斜磁場コイル131、送信RFコイル151、受信RFコイル161、傾斜磁場電源132、シムコイル121、シム電源122、RF磁場発生器152、受信器162、磁気結合防止回路駆動装置180、計算機170、シーケンサ140、及び表示装置171を備える。なお、102は、撮像空間に被検体(被写体)103の撮像部位を載置するテーブルである。
【0020】
静磁場磁石100は、撮像空間に静磁場を発生する。
図1は、ソレノイドコイルによって水平方向の静磁場を生成するトンネル型磁石を静磁場磁石110として用いた外観を示しているが、垂直方向に静磁場を生成する静磁場磁石100を用いてもよい。
【0021】
傾斜磁場コイル131は、傾斜磁場電源132に接続され、撮像空間に傾斜磁場を発生する。シムコイル121は、シム電源122に接続され、静磁場の均一度を調整する。
【0022】
送信RFコイル151は、RF磁場発生器152に接続され、被写体103にRF磁場を照射(送信)する。RF磁場の周波数は、撮像を所望する被検体103の核種の原子核(プロトン等)の核磁気を励起する周波数に設定される。送信RFコイル151としては、どのような構造のものを用いてもよく、例えば鳥かご型のRFコイルを用いることができる。
【0023】
受信RFコイル161は、受信器162に接続され、被写体103からの核磁気共鳴信号を受信する。ここで、本実施形態に係る受信RFコイル161として、複数のコイルユニットからなる多チャンネルRFコイル(以下、アレイコイルという)を用いる。以下の説明において、アレイコイルを構成するコイルの数をチャンネル数と呼ぶ。
【0024】
本実施形態の受信RFコイル161は、
図1および
図3(a)に示すように変形可能な構造をしており、被検体103の撮像部位に巻き付けて使用することができる。また、使用していないときには
図3(b)に示すように蛇腹状に折りたたむことができ、容易に持ち運ぶことができる。受信RFコイル161の構造については、後で詳細に説明する。
【0025】
送信RFコイル151および受信RFコイル161にはそれぞれ磁気結合防止回路210,220が接続されている。磁気結合防止回路駆動装置180は、磁気結合防止回路210,220に接続され、送信RFコイル151と受信RFコイル161との間の磁気結合を防止する。
【0026】
シーケンサ140は、傾斜磁場電源132、RF磁場発生器152、および、磁気結合防止回路駆動装置180に命令を送り、それぞれ動作させる。命令は、計算機170からの指示に従って送出する。また、シーケンサ140は、計算機170からの指示に従って、受信器162に検波の基準とする磁気共鳴周波数をセットする。具体的には、撮像時には、シーケンサ140からの命令に従って、傾斜磁場およびRF磁場がそれぞれ所定のタイミングで傾斜磁場コイル131および送信RFコイル151から被写体103に照射される。被写体103が発生する核磁気共鳴信号は、受信RFコイル161によって検出され、受信器162で検波が行われる。
【0027】
計算機170は、MRI装置100全体の動作の制御、各種の信号処理を行う。例えば、受信器162で検波された信号を不図示のA/D変換回路を介して受信し、画像再構成などの信号処理を行う。その結果は、表示装置171に表示される。検波された信号や測定条件は、必要に応じて、記憶媒体に保存される。また、計算機170は、予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するようシーケンサ140に命令を送出する。さらに、計算機170は、静磁場均一度を調整する必要があるときは、シーケンサ140を介して、シム電源122に命令を送り、シムコイル121によって静磁場均一度を調整させる。
【0028】
[受信RFコイル]
本実施形態の受信RFコイル161について
図3~
図7を用いて説明する。
【0029】
図3(a)および
図4に示すように、受信RFコイル161は、第一および第二のコイル201,202を並べて配置した2チャンネルのアレイコイルである。受信RFコイル161は、第一および第二のコイル201,202の他に、第一および第二のコイル201,202の一部を支持する棒状の3つの躯体251、252、253を有する。
【0030】
第一および第二のコイル201、202はそれぞれ、高周波信号を受信する導体製のループ211,212と、ループ211,212に直列に挿入され、ループ211,212が受信した信号を検出する信号検出部221、222とを備えている。
【0031】
3つの躯体251,252,253は、その短軸方向に、間隔をあけて並べて配置されている。ループ211,212にそれぞれ挿入されている信号検出部221,222は、躯体251等の短軸方向に、間隔をあけて並べて配置され、それぞれの信号検出部221,222は、躯体のいずれかによって支持されている。具体的には、コイル201の信号検出部221は、躯体251に支持され、コイル202の信号検出部222は、躯体253に支持されている。
【0032】
また、ループ211,212は、変形可能である。また、信号検出部221,222は、躯体251,253に搭載されているため、躯体251,252,253の相互の空間には、ループ211,212のみが渡されており、信号検出部等の回路がない。よって、躯体251、252,253の間のループ211,212を変形させながら、
図1に示すように、被検体103の撮像部位に沿わせて巻き付けるように密着して配置することができる。よって、被検体103から発せられる核磁気共鳴信号を被検体に密着した受信RFコイル161により効率よく受信することができる。
【0033】
ループ211,212は、変形可能であり、躯体間の空間にはループ211,212のみが配置され、回路が配置されていないため、躯体251,252,253の間隔を、
図3(b)に示すように、ループ211,212を屈曲するまで変形させながら小さくすることによって、躯体251,252を蛇腹を畳んだように隣接させることができる。これにより、ユーザは、受信RFコイルを被検体103の撮像部位まで、
図3(b)のように畳んだ状態で持ち運ぶことができるため、可搬性がよい。また、受信RFコイルをRF畳んだ状態で収納することができるため、小さなスペースに収納可能であり、収納性も高い。
【0034】
また、
図3(b)のように受信RFコイル161が蛇腹のように畳まれることにより、第一のループ211および第二のループ212はそれぞれ、
図3(c)に示すように、隣り合う並行な二本線の形状となる。このためループに流れる電流211aは、隣り合う並行な二本線を常に逆向きに流れ、それぞれの線から生じる磁場は、互いに打ち消し合って、ループ全体として磁場が生じなくなる。したがって本コイルは、収納時、他のコイルとの磁場干渉が生じなくなるため、収納位置に制限を受けなくなる。また他のコイルの性能を劣化させることもなく、結果として操作者は常に高画質な画像が取得できる。
【0035】
ループ211,212は、絶縁体で被覆された、例えば同軸ケーブルを用いることができる。また、導体を絶縁体で被覆したものをループ211,212として用いてもよい。
【0036】
棒状の躯体251,252、253は、自立できる程度の堅さを有したスポンジ素材で構成することができる。これにより、棒状の躯体251,252,253は、受信RFコイル161を軽量化することができる。また、スポンジ素材によって躯体251,252,253を構成することにより、長軸方向に躯体251、252,253を湾曲させることもできるため、長軸方向についても被検体103の体に沿うように近接させて受信RFコイルを配置できる。
【0037】
さらに具体的に受信RFコイル161について説明する。
【0038】
受信RFコイル161の第一の躯体251と第二の躯体252は、短軸方向に間隔をあけて配置され、第三の躯体253は、第二の躯体252をはさんで第一の躯体251とは反対側に配置され、第二の躯体252と躯体の短軸方向に間隔をあけて配置されている。ここでは、3つの躯体251,252,253は長軸が平行になるように配置されている。
【0039】
第一のコイル201の第一のループ211に直列に挿入された第一の信号検出部221は、第一の躯体251上に搭載(固定)されている。また、第一のループ211の第一の信号検出部221と向かいあう部分231は、第二の躯体252上に搭載(固定)されている。
【0040】
第二のコイル202の第二のループ212に直列に挿入された第二の信号検出部222は、第二の躯体252および第三の躯体253のいずれか一方(ここでは第三の躯体253)に搭載(固定)される。また、第二のループ212の第二の信号検出部222と向かいあう部分232は、第二の躯体252および第三の躯体253のうち、第二の信号検出部222が搭載されていない方(ここでは第二の躯体252)に搭載(固定)されている。
【0041】
第一のループ211と第二のループ212は、互いの磁気結合を除去する構造または回路を備えている。例えば、
図4のように第一のループと第二のループは、磁気結合を除去するために、第2の躯体252上で一部が所定の面積割合(例えば10%)で重なり合うように配置されている。
【0042】
また、磁気結合を除去する構造としては、第一のループ211と第二のループ212を第二の躯体252上で対向するように配置し、対向する位置のループ211,212にそれぞれインダクタを挿入してもよい。また、磁気結合を除去する構造としては、第二の躯体252上にキャパシタを配置し、第一のループ211と第二のループ212にこのキャパシタが共通に直列に挿入される回路構成としてもよい。インダクタを用いた場合、磁気結合除去の調整が容易になるため、製造作業が容易となる。また、キャパシタを用いた場合には、導体損失を抑えた磁気結合が可能となり感度が向上する。
【0043】
なお、コイル間の磁気結合が弱い場合は、磁気結合を除去する構造が無くともよい。不要な回路を排除することでさらなる軽量化が可能となる。
【0044】
次に、具体的なコイル201,202のそれぞれ回路構成の例を
図5、
図6を用いて説明する。第一のコイル201と第二のコイル202の回路構成は、同様であるので、ここでは第一のコイル201について説明する。
【0045】
第一のループ211は、
図5のように信号線211aとシールド線211bを含む同軸ケーブルによって構成されている。同軸ケーブルは、
図6(a)に示すとおり、ケーブルの長さ方向の中心位置でシールド線を断線し絶縁することにより、端子aおよび端子bから見た回路は、
図6(b)のように同軸ケーブルのループ211の途中にキャパシタ211cが挿入されているのと等価な回路構成となる。
【0046】
ループ211には、信号検出部221が直列に挿入されている。信号検出部221には、ループ211を構成する同軸ケーブルの両端のシールド線211bが接続されている。
【0047】
信号検出部221は、信号検出回路301と磁気結合除去回路220と周波数調整回路(Cf)302を含み、それぞれのキャパシタCm、Cd、Cfが直列になるよう接続されている。
【0048】
信号検出回路301は、第一のキャパシタ(Cm)と第一のインダクタ(Lm)と信号増幅器311とから構成され、第一のインダクタ(Lm)と信号増幅部は、直列に接続されて第一の直列回路を構成し、当該第一の直列回路は、第一のキャパシタ(Cm)と並列に接続されている。また、第一のコイル201は、信号増幅器311が接続された場合にノイズが最小となるような入力インピーダンスに第一のキャパシタ(Cm)の値を調整して調整されている。さらに第一のインダクタ(Lm)は、当該第一の直列回路と、第一のキャパシタ(Cm)とからなる並列回路が磁気共鳴周波数と同じ周波数になるよう調整され、他のコイルとの磁気結合を防止する。
【0049】
磁気結合防止回路220は、第二のキャパシタ(Cd1)とダイオード(D)と第二のインダクタ(Ld)から構成され、第二のインダクタ(Ld)とダイオード(D)は、直列に接続されて第二の直列回路を構成し、当該第二の直列回路は、第二のキャパシタ(Cd1)と並列に接続されている。ダイオード(D)は、磁気結合防止回路駆動装置180に接続される。第二のキャパシタ(Cd1)と第二のインダクタ(Ld)とダイオード(D)からなる並列共振回路は、ダイオード(D)がONの時、共振周波数を磁気共鳴周波数と同じ周波数に調整されている送信RFコイルの共振周波数と合わせることで、送信RFコイルと受信RFコイルの磁気結合を防止する。
【0050】
周波数調整回路302は、周波数調整キャパシタ(Cf)から構成される。周波数調整回路302は、信号増幅部311から見た第一のコイル201全体の回路が、核磁気共鳴信号の周波数で共振するように調整されている。これにより、第一のコイル201は、核磁気共鳴信号の受信が可能である。
【0051】
また、従来の受信RFコイルは、キャパシタをループ上に挿入していたため、回路保護のためにハードカバーが必要であったが、
図5、
図6のコイルは、キャパシタを同軸ケーブルの構造によって等価的に実現しているため、ハードカバーは不要である。そのため従来のコイルよりフレキシブルとなる。またループ211を、屈曲に強い柔軟性のある同軸ケーブルによって構成しているため、従来のコイル導体を保護していたスポンジを使用しなくても良いため、RF受信コイルの柔軟性が高い。
【0052】
本実施形態の受信RFコイルが、従来の受信RFコイルよりも格納性、可搬性が高くなることを説明する。
【0053】
本実施形態のRFコイルは、従来の多チャンネルRFコイルと比べて、スポンジや樹脂製筐体を用いないため、柔軟性が高い。また、信号検出部221は、
図3(a)、
図4に示したとおり、躯体251,253上に配置されるため、電気回路部品を保護する柔軟性の無い保護カバーはすべて躯体上に配置すればよく、躯体と躯体の間のループ211,212の柔軟性は高くなる。
【0054】
これにより本実施形態の受信RFコイルは、
図3(b)に示したとおり、略並行に配置された躯体251,252,253を隣接させるように折り畳むことが可能になるため、コンパクトになり格納性、可搬性が上がる。
【0055】
また、本実施形態のRFコイルは、全てのコイルの信号検出部とループの一部とが、隣り合った躯体にそれぞれ支持され、ループは躯体間の距離によってループを半分に折り曲げ可能である。それにより、受信RFコイルの躯体251,252,253の短軸方向に対して、山折り谷折りを交互に蛇腹状に折りたたむことが可能でなる。よって、元の広げた形状に戻すときも両端の躯体251,253を遠ざけるように引っ張るのみで、展開することができ、作業が容易で操作性が高い。
【0056】
また、ループ211,212が、
図3(c)のように、半分に折り曲げられるように屈曲して重なって畳まれるため、隣り合う並行二本線となって磁場が発生しなくなるとともに、ループ211,212に他の受信RFコイルの磁束が入りにくくなるため、近くに別のコイルがあっても干渉しにくい。よって、置き場所の選択肢が広がる。
【0057】
また、躯体251,252,253として、自立できるわずかにフレキシブル性を持ったスポンジ素材を用いることができるため、力を加えることにより若干の変形ができるため被検体に沿って配置することが可能となり感度が向上する。
【0058】
また、本実施形態の受信RFコイルが簡単にコンパクトになるように引き寄せ機構を配置してもよい。例えば、ループ211,212の少なくとも一部を形状記憶効果を有する導体によって構成することができる。形状記憶効果を有する導体に、コンパクト化したときの形態(
図3(b)の形状)を記憶させておくことにより、躯体251,252,253を自由状態にすることで形状記憶効果によりコンパクト形状に戻るようにすることができる。
【0059】
また、
図7のように例えばすべての躯体を縫うように(第一および第二の躯体を貫通するように)配置された紐を引き寄せ機構として備えてもよい。
図9に示すとおり紐71を軸として躯体を動かすことで全ての躯体251、252,253が隣接し、ワンタッチでコンパクト形状にすることができる。これにより、コンパクト化する作業が容易となるため操作性が高くなる。
【0060】
<<第一の変形例>>
上述の実施形態の受信RFコイルでは3つの躯体251,252,253に2つのコイル201、202を支持する構成を示したが、
図8のように2つの躯体251,252を用いて1つのコイル201を支持する構成でも良い。すなわち、第一の信号検出部221は、第一の躯体251上に搭載され、第一のループ211の第一の信号検出部221と向かいあう部分231は、第二の躯体252上に搭載された構成である。
【0061】
図8の受信RFコイルは、柔軟性と軽量性が得られ、コンパクトに折りたたむことができるため、収納性と可搬性が向上し、操作性も向上する。
【0062】
<<第二の変形例>>
図9を用いて、第二の変形例の受信RFコイルについて説明する。この受信RFコイルは、二つの躯体251,252に2つのコイルを搭載している。
【0063】
すなわち、第二の変形例の受信RFコイルは、第一の変形例の
図8の第一のコイル201に加え、
図9のように、躯体251、252の長軸方向に第一コイル201と並ぶように配置された第三のコイル203を含む。第三のコイル203は、第一および第二の躯体251,252に搭載されている。
【0064】
第三のコイル203は、高周波信号を受信する導体製の第三のループ213と、第三のループ213に直列に挿入され、第三のループ213が受信した信号を検出する第三の信号検出部223とを備えている。第三の信号検出部223は、第一の躯体251および第二の躯体252のうちの一方(ここでは、第一の躯体251)に搭載されている。第三のループ213の第三の信号検出部223と向かいあう部分233は、第一および第二の躯体251,252のうち第三の信号検出部223が搭載されていない方(ここでは、第二の躯体252)に搭載されている。
【0065】
また、第一のループ211と第三のループ213は互いの磁気結合を除去するため、一部ループが重なるように配置する。
【0066】
これによりチャンネル数が2になるため、チャンネル数が1である
図8の受信RFコイルよりも高い感度を得ることができる。
【0067】
また、二つの躯体251,252に3つ以上のコイルを配置してもよい。これにより更に感度が上昇する。
【0068】
<<第三の変形例>>
図10を用いて第三の変形例の受信RFコイルを説明する。この受信RFコイルは、
図10に示すとおり、3つの躯体251,252,253に4つのコイル201~204を配置している。第一および第二のコイル201,202は、
図4と同様に配置されている。第三のコイル203は、
図9と同様に配置されている。
【0069】
第四のコイル204は、高周波信号を受信する導体製の第四のループ214と、第四のループ214に直列に挿入され、第四のループ213が受信した信号を検出する第三の信号検出部224とを備えている。第四の信号検出部224は、第二の躯体252および第三の躯体253のうちの一方(ここでは、第三の躯体253)に搭載されている。第四のループ214の第四の信号検出部224と向かいあう部分234は、第二および第三の躯体252,253のうち第四の信号検出部224が搭載されていない方(ここでは、第二の躯体252)に搭載されている。
【0070】
また、第一のループ211と第三のループ213、および、第二のループ212と第四のループ214は互いの磁気結合を除去するため、一部ループが重なるように配置する。
【0071】
図10の受信RFコイルは、ch数が4に増加するため、さらに高い感度を得ることができる。
【0072】
また、4つの躯体に6つ以上のコイルを配置して、更に感度を上昇させることも可能である。
【0073】
なお、上述の実施形態とその変形例では、ループを同軸ケーブルによって構成したが、本実施形態は、これに限定されない。例えば1芯のケーブルでもよい。これにより、ループを構成するケーブルの重量を、同軸ケーブルよりも抑えることができるためさらなる軽量化が可能となる。
【0074】
<<第四の変形例>>
図11を用いて第四の変形例の受信RFコイルを説明する。上述の実施形態および変形例では、
図4および
図10にしめしたように第二の躯体252上にある第一のループ211および第二のループ212は、一部がオーバラップする位置で固定されていたが、本実施形態は固定される構成に限定されない。
【0075】
すなわち、
図11に示すように、磁気結合の影響が無視できる程度の環境下であれば躯体252内で第一のループ211および第二のループ212が移動可能に搭載され、第一のループ211および第二のループ212の距離が広がるように構成されてもよい。
【0076】
第一および第二のコイルのループ211、212の重なり合う量を変化させることに伴って、第二の躯体252と第一の躯体251との距離、および、第二の躯体252と第三の躯体253との距離の少なくとも一方を変化させることができる。
【0077】
第一のループ211および第二のループ212の距離が広がるように変化させた場合には、受信RFコイル全体の幅が広くなるため感度領域が広げることができる。
【0078】
なお、上述の実施形態およびその変形例において、両端に配置される躯体は、どこにも固定されていない構成であったが、片側の躯体が、被検体を乗せるテーブル102に接続されていてもよい。片側の躯体をテーブルに設置しておくことにより、例えば
図1に示すように、一つの躯体を持ち上げて被検体上に配置できるため操作が容易となる。
【0079】
テーブル102に躯体を固定する場合には、躯体とベッドとの間に中継の躯体を挿入してもよい。これにより中継の躯体を含めた受信RFコイル全体の幅が広くなるため、受信RFコイルの中心を任意の位置に配置できるようになる。
【0080】
さらに、テーブルに接続された受信RFコイルは、テーブルにあらかじめ収納空間を確保しておくことで、常にテーブルの上に配置できる構造としてもよい。これにより受信コイルの取り付け取り外し作業が不要になるため操作性が上がる。
【0081】
また、
図1のようにテーブル102のや磁石110の側面にポケットのような収納空間102aを設け、その中に受信RFコイルを収納する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
71…紐、161…受信RF(高周波)コイル、201、201,203,204…コイル、211,212,213,214…ループ、221、222,223,224…信号検出部、251,252,253…躯体