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特許7112354緑色発光蛍光体及びその製造方法、並びに蛍光体シート、及び発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】緑色発光蛍光体及びその製造方法、並びに蛍光体シート、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/62 20060101AFI20220727BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220727BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220727BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C09K11/62
C09K11/08 B
G02F1/13357
G02F1/1335
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019035676
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139056
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 守晃
(72)【発明者】
【氏名】楠木 常夫
(72)【発明者】
【氏名】大門 正英
(72)【発明者】
【氏名】大橋 修二
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 和弘
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056512(JP,A)
【文献】特開2012-102171(JP,A)
【文献】特開2013-234247(JP,A)
【文献】特表2007-525552(JP,A)
【文献】特開2008-163341(JP,A)
【文献】特開2018-090701(JP,A)
【文献】特開2011-236310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以上600nm以下に発光極大波長を有し、その半値幅が46nm以下であり、次式、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)で表され、
励起スペクトルにおいて、波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度が0.80以上であることを特徴とする緑色発光蛍光体。
【請求項2】
励起スペクトルにおいて、350nm以上450nm以下の励起極大波長を有する請求項1に記載の緑色発光蛍光体。
【請求項3】
励起スペクトルにおいて、波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度が0.81以上0.85以下である請求項1から2のいずれかに記載の緑色発光蛍光体。
【請求項4】
残光時間τ(1/e)が500nsec以下である請求項1から3のいずれかに記載の緑色発光蛍光体。
【請求項5】
ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に、亜硫酸塩を滴下することで、(Sr,Eu)SOからなる粉体を得た後、該粉体と粉状ガリウム化合物とを混合し、次いで、1次焼成を行い、更に、2次焼成を行うことを特徴とする緑色発光蛍光体の製造方法。
【請求項6】
前記1次焼成は、940℃以上1,000℃以下の硫化水素雰囲気下で行う請求項5に記載の緑色発光蛍光体の製造方法。
【請求項7】
前記2次焼成は、940℃以上1,100℃以下で行う請求項5から6のいずれかに記載の緑色発光蛍光体の製造方法。
【請求項8】
前記2次焼成は、硫化水素雰囲気下、窒素雰囲気下、又は硫黄存在下で行う請求項5から7のいずれかに記載の緑色発光蛍光体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の緑色発光蛍光体を含有することを特徴とする蛍光体シート。
【請求項10】
請求項9に記載の蛍光体シートを有することを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体の製造方法、並びに蛍光体シート、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイのバックライトや照明用のLED光源において、LEDの青色発光と、青色発光を吸収し緑色発光する緑色蛍光体と、赤色発光する赤色蛍光体の3色によって白色光源を作り出している。この時、緑色蛍光体と赤色蛍光体がより色純度の高い発光をすることで、高色域のディスプレイや高演色照明が達成できる。特に緑色蛍光体の特性は最大視感度の555nm付近の発光に関わるため、光源の明るさにも大きく影響を与える重要な項目である。
【0003】
このようにディスプレイの色域や照明の演色性を良くするためにはより色純度の高い発光が求められるが、例えば、現在一般的に使用されている窒化物緑色蛍光体では色純度の指標となる発光スペクトルの半値幅は50nm以上で色純度がよいとされる硫化物蛍光体でも48nm程度であり、更なる狭半値幅化によって色純度の高い蛍光体が求められている。
例えば、一般式:Sr(Ga1-xEu1.5y+1で表され、式中のx、yは、0.008<x<0.025、11.5<y<12.5を満たし、530nm~550nmの緑色領域に発光ピークを有し、発光スペクトルの半値幅が50nm未満である硫化物蛍光体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、一般式:M(Ga1-xEu3+yで表され、0<x<0.2、Mはアルカリ土類金属元素のCa、Sr、Baの少なくとも1種からなり、0<y≦1/6であり、540から550nmの緑色領域に、発光ピーク波長を有し、かつ発光スペクトルの半値幅が47nm以下である硫化物蛍光体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-234247号公報
【文献】特許第5528303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術文献は、いずれもSr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)の組成式の硫化物緑色蛍光体とは異なる組成であり、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)で表される緑色発光蛍光体において、色純度の高い狭半値幅化を実現することについては記載も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、色純度の高い発光が得られる緑色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体の製造方法、並びに蛍光体シート、及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 500nm以上600nm以下に発光極大波長を有し、その半値幅が46nm以下であり、次式、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)で表されることを特徴とする緑色発光蛍光体である。
<2> 励起スペクトルにおいて、350nm以上450nm以下に励起極大波長を有する前記<1>に記載の緑色発光蛍光体である。
<3> 励起スペクトルにおいて、450nmの励起強度を1としたときの500nmの励起強度が0.80以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の緑色発光蛍光体である。
<4> 残光時間τ(1/e)が500nsec以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の緑色発光蛍光体である。
<5> ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に、亜硫酸塩を滴下することで、(Sr,Eu)SOからなる粉体を得た後、該粉体と粉状ガリウム化合物とを混合し、次いで、1次焼成を行い、更に、2次焼成を行うことを特徴とする緑色発光蛍光体の製造方法である。
<6> 前記1次焼成は、940℃以上1,000℃以下の硫化水素雰囲気下で行う前記<5>に記載の緑色発光蛍光体の製造方法である。
<7> 前記2次焼成は、940℃以上1,100℃以下で行う前記<5>から<6>のいずれかに記載の緑色発光蛍光体の製造方法である。
<8> 前記2次焼成は、硫化水素雰囲気下、窒素雰囲気下、又は硫黄存在下で行う前記<5>から<7>のいずれかに記載の緑色発光蛍光体の製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の緑色発光蛍光体を含有することを特徴とする蛍光体シートである。
<10> 前記<9>に記載の蛍光体シートを有することを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、色純度の高い発光が得られる緑色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体の製造方法、並びに蛍光体シート、及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、蛍光体シート端部の構成例を示す概略断面図である。
図2図2は、エッジライト型の発光装置を示す概略断面図である。
図3図3は、直下型の発光装置を示す概略断面図である。
図4図4は、実施例3、比較例2、及び比較例4の発光スペクトルを示す図である。
図5図5は、実施例6、比較例3、及び比較例4の発光スペクトルを示す図である。
図6図6は、実施例1~7及び比較例1~4の発光極大波長での半値幅(FWHM)の結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例2、5~7及び比較例2~3の励起スペクトルを示す図である。
図8図8は、実施例5~7及び比較例3の残光時間の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(緑色発光蛍光体)
本発明の緑色発光蛍光体は、500nm以上600nm以下に発光極大波長を有し、その半値幅が46nm以下であり、次式、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)で表される。
【0011】
本発明の緑色発光蛍光体は、上記組成式を満たしており、500nm以上600nm以下で励起して発光極大波長を有し、効率のよい励起が可能である。また、500nm以上600nm以下での半値幅が46nm以下となり、色純度の高い発光を実現できる。
【0012】
前記緑色発光蛍光体の発光極大波長は、500nm以上600nm以下であり、530nm以上550nm以下が好ましい。
緑色発光蛍光体の発光スペクトル(PL)は、例えば、蛍光分光光度計(FP-8500、日本分光株式会社製)を用いて測定することができる。
【0013】
緑色蛍光体の組成は、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20であり、好ましくは0.10≦x≦0.18である)で表される。
前記緑色発光蛍光体においては、Euの添加割合は上記組成式中の「x」で示される割合として0.10≦x≦0.20を満たす。また、Srの割合は、「1-x」、即ち、0.80<1-x<0.90を満たす。
【0014】
本発明においては、励起スペクトル(PLE)において、350nm以上450nm以下の励起極大波長を有することが好ましい。
励起スペクトルにおいて、波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度が0.80以上であることが、長波長側の光をより吸収し、エネルギー効率が高い点から好ましい。
前記緑色発光蛍光体の励起スペクトル(PLE)は、例えば、蛍光分光光度計(FP-8500、日本分光株式会社製)を用いて測定することができる。
【0015】
本発明においては、残光時間τ(1/e)は、500nsec以下であることが好ましい。残光時間τ(1/e)が500nsec以下であると、短残光時間の効果が認められ、近年のディスプレイ用途では、発光の短残光化が求められている点から有用である。
ここで、残光時間τ(1/e)は、蛍光体の発光が励起光を遮断してから、発光強度が
1/e(e:自然対数の底)まで低下する時間であり、蛍光寿命測定装置(装置名:C11367、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて測定することができる。
【0016】
(緑色発光蛍光体の製造方法)
本発明の緑色発光蛍光体の製造方法は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に、亜硫酸塩を滴下することで、(Sr,Eu)SOからなる粉体を得た後、該粉体と粉状ガリウム化合物とを混合(以下、「粉体混合物製造工程」と称することがある)し、次いで、1次焼成を行い(以下、「1次焼成工程」と称することがある)、更に、2次焼成を行い(以下、「2次焼成工程」と称することがある)、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0017】
本発明の緑色発光蛍光体の製造方法は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に粉状ガリウム化合物を加え、塩を加えることで粉体を得た後、具体的には、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物を析出するための塩を加えることで粉体を得た後、この粉体を2段階焼成する。即ち、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に粉状ガリウム化合物を加え、次いで、塩を加えることで、ユウロピウムとストロンチウムとを含む粉体と粉状ガリウム化合物との混合物からなる粉体(粉体混合物)を得た後、この粉体(粉体混合物)を2段階焼成する。ここで、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に粉状ガリウム化合物を加え、亜硫酸塩を滴下することで、Sr、Eu及びGaを含む粉体(前駆体)を得る。この前駆体を硫化させる焼成を1回で合成するところ、第1次焼成、粉砕後、更に第2次焼成を行うことにより、色純度の高い狭半値幅化したSr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)で表される緑色発光蛍光体を製造することができる。
【0018】
<粉体混合物製造工程>
粉体混合物製造工程は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液に、亜硫酸塩を滴下することで、(Sr,Eu)SOからなる粉体(中間粉体)を得た後、該粉体と粉状ガリウム化合物とを混合する工程である。
【0019】
ユウロピウム化合物としては、例えば、硝酸ユウロピウム[Eu(NO・xHO]、蓚酸ユウロピウム[Eu(C・xHO]、炭酸ユウロピウム[Eu(CO・xHO]、硫酸ユウロピウム[Eu(SO]、塩化ユウロピウム[EuCl・xHO]、フッ化ユウロピウム[EuF]、水素化ユウロピウム[EuH]、硫化ユウロピウム[EuS]、トリ-i-プロポキシユウロピウム[Eu(O-i-C]、酢酸ユウロピウム[Eu(O-CO-CH]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ストロンチウム化合物としては、例えば、硝酸ストロンチウム[Sr(NO]、酸化ストロンチウム[SrO]、臭化ストロンチウム[SrBr・xHO]、塩化ストロンチウム[SrCl・xHO]、炭酸ストロンチウム[SrCO]、蓚酸ストロンチウム[SrC・HO]、フッ化ストロンチウム[SrF]、ヨウ化ストロンチウム[SrI・xHO]、硫酸ストロンチウム[SrSO]、水酸化ストロンチウム[Sr(OH)・xHO]、硫化ストロンチウム[SrS]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液における溶媒としては、例えば、純水、硝酸水溶液、アンモニア水溶液、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合水溶液などが挙げられる。
亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなどが挙げられる。また、亜硫酸塩以外にも、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム)を用いることも可能である。
【0022】
粉状ガリウム化合物としては、例えば、酸化ガリウム[Ga]、硫酸ガリウム[Ga(SO・xHO]、硝酸ガリウム[Ga(NO・xHO]、臭化ガリウム[GaBr]、塩化ガリウム[GaCl]、ヨウ化ガリウム[GaI]、硫化ガリウム(II)[GaS]、硫化ガリウム(III)[Ga]、オキシ水酸化ガリウム[GaOOH]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、本発明の製造方法における粉体の一般的な組成として、上述したユウロピウム及びストロンチウムを含む亜硫酸化合物以外にも、硫酸化合物、炭酸塩を挙げることができる。また、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液からユウロピウム及びストロンチウムを含む粉体を得る代わりに、ユウロピウム化合物とアルカリ土類金属(ラジウムを除く)とを含む溶液からユウロピウム及びアルカリ土類金属(ラジウムを除く)を含む粉体を得た後、この粉体と粉状ガリウム化合物とを混合し、次いで、焼成することで、本発明の緑色発光蛍光体粒子を製造することもできる。
【0024】
<1次焼成工程>
1次焼成工程は、得られた粉体混合物を焼成する工程であり、焼成炉を用いて行われる。
前記1次焼成は、940℃以上1,000℃以下の硫化水素雰囲気下で行うことが好ましく、950℃以上970℃以下の硫化水素雰囲気下で行うことがより好ましく、950℃以上960℃以下の硫化水素雰囲気下で行うことが更に好ましい。
1次焼成における焼成温度は、実際にサンプルの近傍に設けたセンサにより測定した実効温度である。
焼成時間は、上記焼成温度において、1時間以上5時間以下で行うことが好ましい。
上記のような条件で1次焼成を行うことにより、46nm以下の狭半値幅化を実現することができる。
【0025】
<2次焼成工程>
2次焼成工程は、1次焼成後の焼成物を焼成する工程であり、焼成炉を用いて行われる。
前記2次焼成は、940℃以上1,100℃以下の温度で行うことが好ましく、960℃以上1100℃以下の温度で行うことがより好ましく、1,020℃以上1,050℃以下の温度で行うことが更に好ましい。
2次焼成における焼成温度は、実際にサンプルの近傍に設けたセンサにより測定した実効温度である。
前記2次焼成は、硫化水素雰囲気下、窒素雰囲気下、又は硫黄存在下で行うことが好ましく、硫黄存在下で行うことがより好ましい。
硫黄は、硫黄粉末を焼成炉内にサンプルと一緒に投入し、焼成時に硫黄雰囲気とすることが好ましい。
焼成時間は、上記焼成温度において、0.5時間以上5時間以下で行うことが好ましい。
上記のような条件で2次焼成を行うことにより、46nm以下の狭半値幅化を実現することができる。
【0026】
(銀腐食試験)
本発明の緑色発光蛍光体のような硫黄含有蛍光体においては、硫黄による銀の腐食が起こるため、銀腐食試験を行うことが必要となる。
従来の銀腐食試験(特許第5466771号公報)では、石英ガラス板上にメッキにより銀膜を形成した構造物を使用している。この構造物の銀膜側に蛍光体樹脂混合物を塗布・硬化し、恒温槽保存後、テストピースの蛍光体樹脂混合膜をピンセットにより剥離し、露出した銀膜の反射率を評価することで定量的な銀腐食性の評価ができる。
しかし、上記方法では、ピンセットにより蛍光体樹脂混合膜を剥離した際、銀膜から綺麗に蛍光体樹脂混合膜を剥離できないことや、蛍光体樹脂混合膜を剥離してしまうと継続的に銀腐食性を評価できないという問題がある。
【0027】
そこで、前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、銀の腐食程度を算出する新たな評価方法を見出した。即ち、
硫化物蛍光体において、銀の腐食の程度を算出するための銀腐食性評価方法であって、
銀リフレクタ付きのLEDリードフレームを準備し、いくつかの硫化物蛍光体及びシリコーン樹脂を含有させた組成物を塗布し、硬化させて成型構成物を作製する第1の工程と、
前記第1の工程で得たLEDリードフレームの反射スペクトルを測定し、硫酸バリウムを主成分とした白板を用いて基準とした硬化物の反射率(%)を求める第2の工程と、
前記第2の工程後、密閉瓶(100mLのガラス製秤量瓶)の中に、スライドガラスを用意しそこへ両面テープで貼り付け、湿度100%RHとするためにガラスセルに水を入れ、密閉瓶に入れる。密閉瓶の蓋を閉め、任意の温度のオーブンに入れ、信頼性試験を行う第3の工程と、
密閉瓶をオーブンから取り出し、スライドガラスへ貼り付けたLEDリードフレームの反射スペクトルを測定し、硫酸バリウムを主成分とした白板を用いて基準とした硬化物の反射率(%)を求め、初期反射率からの低下率を求める第4の工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0028】
上記銀腐食性評価方法によれば、従来技術の問題点を解決することができ、かつ定量的に銀腐食性の程度を評価することができる。実際、LEDパッケージについて銀腐食試験を行った結果、簡便かつ継続的に、銀腐食性の程度を定量的に評価することができた。
【0029】
(蛍光体シート)
本発明の蛍光体シートは、本発明の前記緑色発光蛍光体を少なくとも含有し、好ましくは樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0030】
前記蛍光体シートは、例えば、前記緑色発光蛍光体と、樹脂とを含有する蛍光体含有樹脂組成物(いわゆる蛍光体塗料)を透明基材に塗布することにより得られる。
前記蛍光体シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記蛍光体シートにおける前記緑色発光蛍光体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0032】
<<熱可塑性樹脂>>
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水添スチレン系共重合体、アクリル系共重合体などが挙げられる。
前記水添スチレン系共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体の水添物などが挙げられる。
前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体におけるスチレン単位の割合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20モル%~30モル%が好ましい。
また、前記アクリル系共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体などが挙げられる。なお、蛍光体が硫化物の場合、熱可塑性樹脂としては、アクリル系共重合体よりも、水添スチレン系共重合体が好ましい。
【0033】
<<光硬化型樹脂>>
前記光硬化型樹脂は、光硬化型化合物を用いて作製される。
前記光硬化型化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート等の光硬化型(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、前記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネートなど)とを反応して得られるイソシアネート基を含有する生成物をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなど)でエステル化したものである。
前記ウレタン(メタ)アクリレートの前記光硬化型(メタ)アクリレート100質量部中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部以上が好ましい。
【0034】
<<樹脂組成物>>
前記樹脂を含む樹脂組成物は、ポリオレフィン共重合体成分又は光硬化性(メタ)アクリル樹脂成分のいずれかを含むことが好ましい。
前記ポリオレフィン共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系共重合体、スチレン系共重合体の水添物などが挙げられる。
前記スチレン系共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、などが挙げられる。これらの中でも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体の水添物が、透明性やガスバリア性の点で、好ましい。前記ポリオレフィン共重合体成分を含有させることにより、優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
前記水添スチレン系共重合体におけるスチレン単位の含有割合としては、低すぎると機械的強度の低下となる傾向があり、高すぎると脆くなる傾向があるので、10質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。
また、水添スチレン系共重合体の水添率は、低すぎると耐候性が悪くなる傾向があり、50%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
前記光硬化型アクリレート樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、光硬化後の耐熱性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。このような光硬化型(メタ)アクリレート樹脂成分を含有させることにより、優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
【0035】
なお、蛍光体シートには、必要に応じて、光吸収が非常に少ない無機物等の粒子(拡散材)を添加してもよい。封止材の屈折率と添加した粒子の屈折率とが異なる場合、この粒子によって、励起光を拡散(散乱)させることにより、励起光の緑色蛍光体への吸収を高めることができるため、緑色蛍光体の添加量を低減することができる。前記粒子(拡散材)としては、例えば、シリコーン粒子、シリカ粒子、樹脂粒子、メラミンとシリカとの複合粒子などが挙げられる。前記樹脂粒子の樹脂としては、例えば、メラミン、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレンなどが挙げられる。前記粒子(拡散材)の具体例としては、例えば、信越化学工業株式会社製のシリコーンパウダーKMPシリーズ、日産化学工業株式会社製のオプトビーズ、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBXシリーズ、SBXシリーズ等の市販品などが挙げられる。
【0036】
<透明基材>
前記透明基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルム、光硬化性樹脂フィルムなどが挙げられる(例えば、特開2011-13567号公報、特開2013-32515号公報、特開2015-967号公報等参照)。
【0037】
前記透明基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルム;ポリアミドフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスルホンフィルム;トリアセチルセルロースフィルム;ポリオレフィンフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム;ポリスチレン(PS)フィルム;ポリエーテルスルホン(PES)フィルム;環状非晶質ポリオレフィンフィルム;多官能アクリレートフィルム;多官能ポリオレフィンフィルム;不飽和ポリエステルフィルム;エポキシ樹脂フィルム;PVDF、FEP、PFA等のフッ素樹脂フィルム;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが、特に好ましい。
【0039】
斯かるフィルムの表面には、蛍光体含有樹脂組成物に対する密着性を改善するために、必要に応じて、コロナ放電処理、シランカップリング剤処理等を施してもよい。
【0040】
前記透明基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上100μm以下が好ましい。
【0041】
また、前記透明基材は、無機蛍光体粒子の加水分解を低減できる点で、水蒸気バリアフィルムであることが好ましい。
【0042】
前記水蒸気バリアフィルムは、PET(Polyethylene terephthalate)等のプラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムである。また、PET/SiO/PET等の多層構造を用いてもよい。
【0043】
前記バリアフィルムの水蒸気透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05g/m/日~5g/m/日程度(例えば、0.1g/m/日程度の比較的低いバリア性能)が好ましい。斯かる範囲内であると、水蒸気の侵入を抑制して蛍光体シートを水蒸気から保護することができる。
【0044】
ここで、蛍光体シートの一例について図を用いて説明する。
図1は、蛍光体シート端部の構成例を示す概略断面図である。この蛍光体シートは、蛍光体層11が、第1の水蒸気バリアフィルム12と第2の水蒸気バリアフィルム13とに挟持されている。
蛍光体層11は、本発明の緑色蛍光体と、樹脂とから構成されており、前記樹脂中に前記緑色蛍光体が分散されている。
【0045】
また、図1の蛍光体シートは、第1の水蒸気バリアフィルム12の端部と第2の水蒸気バリアフィルム13の端部とが、1g/m/day以下の水蒸気透過率を有するカバー部材14で封止されていることが好ましい。
【0046】
カバー部材14としては、1g/m/day以下の水蒸気透過率を有する基材141に粘着剤142が塗布された粘着テープを用いることができる。基材141としては、アルミニウム箔等の金属箔や、水蒸気バリアフィルム12,13を用いることができる。アルミニウム箔は、光沢の白アルミニウム又は非光沢の黒アルミニウムのいずれを用いてもよいが、蛍光体シート端部の良好な色合いが必要な場合、白アルミニウムを用いることが好ましい。また、水蒸気バリアフィルム上に貼り付けられるカバー部材14の幅Wは、水蒸気バリア性や強度の観点から1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。このような構成からなるカバー部材14によれば、水蒸気バリアフィルムの端部から蛍光体層への水蒸気の侵入を防止することができ、蛍光体層中の蛍光体の劣化を防止することができる。
【0047】
(発光装置)
本発明の発光装置は、本発明の前記蛍光体シートを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0048】
本発明の発光装置の一例について図を用いて説明する。
図2は、エッジライト型の発光装置を示す概略断面図である。図2に示すように、発光装置は、青色LED31と、側面から入射される青色LED31の青色光を拡散させ、表面に均一の光を出す導光板32と、青色光から白色光を得る蛍光体シート33と、光学フィルム34とを備える、所謂“エッジライト型バックライト”を構成する。
【0049】
青色LED31は、青色発光素子として例えばInGaN系のLEDチップを有する、所謂“LEDパッケージ”を構成する。導光板32は、アクリル板等の透明基材の端面より入れた光を均一に面発光させる。蛍光体シート33は、例えば、図1に示す蛍光体シートである。蛍光体シート33に含有される蛍光体の粉末は、平均粒径が数μm~数十μmのものを用いる。これにより蛍光体シート33の光散乱効果を向上させることができる。光学フィルム34は、例えば、液晶表示装置の視認性を向上させるための反射型偏光フィルム、拡散フィルムなどで構成される。
【0050】
また、図3は、直下型の発光装置を示す概略断面図である。図3に示すように、発光装置は、青色LED41が二次元配置された基板42と、青色LED41の青色光を拡散させる拡散板43と、基板42と離間して配置され、青色光から白色光を得る蛍光体シート33と、光学フィルム34とを備える、所謂“直下型バックライト”を構成する。
【0051】
青色LED41は、青色発光素子として、例えば、InGaN系のLEDチップを有する、所謂“LEDパッケージ”を構成する。基板42は、フェノール、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂を利用したガラス布基材から構成され、基板42上には、所定ピッチで等間隔に青色LED41が、蛍光体シート33の全面に対応して二次元に配置される。また、必要に応じて、基板42上の青色LED41の搭載面に反射処理を施してもよい。基板42と蛍光体シート33とは約10mm~50mm程度離間して配置され、発光装置は、所謂“リモート蛍光体構造”を構成する。基板42と蛍光体シート33との間隙は、複数の支持柱や反射板によって保持され、基板42と蛍光体シート33とがなす空間を支持柱や反射板が四方で囲むように設けられている。拡散板43は、青色LED41からの放射光を光源の形状が見えなくなる程度に広範囲に拡散するものであり、例えば20%以上80%以下の全光線透過率を有する。
【0052】
なお、本発明は、前述の実施の形態にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々更新を加え得ることは勿論である。例えば、前述の実施の形態では、発光装置を表示装置用のバックライト光源に適用した例を示したが、照明用光源に適用してもよい。照明用光源に適用する場合、光学フィルム34は不要である場合が多い。また、蛍光体含有樹脂は、平面のシート形状であるだけでなく、カップ型形状等の立体的な形状を持っていてもよい。
【実施例
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1~7及び比較例1~4)
-サンプルNo.1~11の緑色発光蛍光体の作製-
特許第5249283号公報の実施例1に準じてサンプルNo.1~11の緑色発光蛍光体を作製した。即ち、ユウロピウム化合物[Eu(NO]とストロンチウム化合物[Sr(NO]の混合溶液に粉状ガリウム化合物(具体的には、粉状Ga)を混合し、亜硫酸塩(亜硫酸アンモニウム)溶液と混合して、ユウロピウム、ストロンチウム、及びガリウムを含む亜硫酸塩の粉体混合物を混合し、亜硫酸塩溶液と混合して、ユウロピウム、ストロンチウム、及びガリウムを含む亜硫酸塩の粉状混合物(前駆体)を得た。この時の組成はEu/(Sr+Eu)=13mol%となるように原材料を調整した。
【0055】
次に、得られた前駆体について、表1の「1回目焼成」の欄に示すように、硫化水素雰囲気中で935℃から960℃、保持時間を1時間から5時間で焼成を行った。その後、直径10mmのZrOボールによりボールミル粉砕を施し、#110ナイロンメッシュで分級を実施した。
この時点で、緑色発光蛍光体として発光特性を示すが、更に、表1の「2回目焼成」の欄に示すように、蛍光体を955℃以上1,100℃以下、保持時間0.5時間から5時間で焼成を行った。この2回目焼成中の雰囲気は硫化水素雰囲気の場合、炉が著しく汚染されてしまうので、N雰囲気で行うことが好ましい。また、焼成温度が1,020℃以上の焼成の場合は、蛍光体の硫黄離脱を防ぐために予め硫黄粉末を一緒の炉内に投入し、焼成時に硫黄雰囲気にすることが好ましい。
焼成の温度は、実際にサンプルの近傍に設置したセンサにより測定した実効温度である。硫化水素雰囲気中、焼成炉は設定温度およそ+10℃が実効温度で、窒素中、硫黄中の焼成炉は設定温度およそ+30℃が実効温度である。
2回目の焼成後、#110ナイロンメッシュで分級した。以上により、サンプルNo.1~11の緑色発光蛍光体を得た。
サンプルNo.1~11の緑色発光蛍光体は、Sr1-xGa:Eu(ただし、0.10≦x≦0.20である)の組成を有していた。
【0056】
次に、得られた各緑色発光蛍光体について、以下のようにして、発光特性、励起強度、及び残光時間を測定し、評価した。
【0057】
<発光特性の評価>
発光特性の評価は、発光(PL)スペクトル測定により行い、具体的には、専用セルに各蛍光体粉末を充填し、波長450nmの青色励起光を照射させ、蛍光分光光度計(FP-8500、日本分光株式会社製)を用いてPLスペクトルを測定した。得られたPLスペクトルにおける、極大波長(nm)、及び極大波長での発光半値幅(nm)を測定した。結果を表1に示す。
また、サンプルNo.3(比較例2)、サンプルNo.6(実施例4)、及びサンプルNo.11(比較例4)の発光プロファイルを図4に示した。
また、サンプルNo.7(比較例3)、サンプルNo.9(実施例6)、及びサンプルNo.11(比較例4)の発光プロファイルを図5に示した。
なお、各サンプルの1回目焼成と2回目焼成の条件と半値幅について、表1にまとめて示した。また、各サンプルについての半値幅(FWHM)の測定結果を図6に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1及び図4図6の結果から、実施例1~7は、500nm以上600nm以下に発光極大波長を有し。1回目焼成した後、更に2回目焼成を行うことにより、いずれも半値幅が46.0nm以下の色純度の高い発光スペクトルを有する緑色発光蛍光体が得られることがわかった。
特に、2回目焼成を1020℃以上の温度で行った実施例5から7は、いずれも半値幅が45.1nm以下となり、更に色純度の高い発光スペクトルを有する緑色発光蛍光体が得られることがわかった。
これらに対して、2回目焼成を行わず1回目焼成のみを行った比較例1~4は、いずれも半値幅が47.0以上となり、色純度が劣ることがわかった。
【0060】
<励起強度の評価>
サンプルNo.3(比較例3)、サンプルNo.4(実施例2)、サンプルNo.7(比較例3)、サンプルNo.8から10(実施例5から7)について、蛍光分光光度計(FP-8500、日本分光株式会社製)を用いて励起スペクトル(PLE)を測定した。得られたPLEスペクトルにおける極大波長(nm)、及び波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度を求めた。結果を表2及び図7に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2及び図7の結果から、実施例2、5から7は、いずれも励起スペクトル(PLE)において、350nm以上450nm以下に励起極大波長を有し、波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度が0.80以上であり、長波長側の光をより吸収し、エネルギー効率が高いことがわかった。
これらに対して、比較例2及び3は、いずれも波長450nmの励起強度を1としたときの波長500nmの励起強度が0.80未満であり、エネルギー効率が低かった。
【0063】
<残光時間の測定>
サンプルNo.7(比較例3)、及びサンプルNo.8から10(実施例5から7)について、蛍光寿命測定装置(装置名:C11367、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、残光時間τ(1/10)、及び残光時間τ(1/e)を測定した。結果を表3及び図8に示した。
ここで、残光時間τ(1/10)とは、蛍光体の発光が励起光を遮断してから、発光強度が1/10まで低下する時間であり、残光時間τ(1/e)は、蛍光体の発光が励起光を遮断してから、発光強度が1/e(e:自然対数の底)まで低下する時間である。
【0064】
【表3】
【0065】
表3及び図8の結果から、比較例3は残光時間τ(1/e)が518nsecであるのに対して、実施例5~7は残光時間τ(1/e)が500nsec以下となり、短残光時間の効果が認められ、近年のディスプレイ用途では、発光の短残光化が求められていることに適合している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8