(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】トンネル天井面研掃方法
(51)【国際特許分類】
E01H 1/00 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
E01H1/00 B
(21)【出願番号】P 2019059446
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-10-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年度土木学会全国大会予稿集DVD版 (平成30年8月1日発行 公益社団法人土木学会発行) ・平成30年度土木学会全国大会、第73回年次学術講演会(平成30年8月29日~31日、北海道大学札幌キャンパスにて開催) ・奥村組技術研究年報 No.44 (平成30年9月1日 株式会社奥村組発行)
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】津村 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】丸山 八大
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040103(JP,A)
【文献】特開2017-040104(JP,A)
【文献】特開2017-039397(JP,A)
【文献】特開平08-085926(JP,A)
【文献】特開2011-234634(JP,A)
【文献】特開昭51-045464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置によるトンネル天井面研掃方法であって、
前記トンネル天井面研掃装置は、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部と、該ベースフレーム部に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部と、前記昇降フレーム部を昇降させる昇降機と、前記昇降フレーム部の昇降を案内するガイド支柱部と、前記昇降フレーム部の上面部に取り付けられた短辺方向移動レール部材及び長辺方向移動レール部材からなる移動レール部を介して、前記昇降フレーム部の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた前記乾式研掃機とを備えており、
トンネルの天井面の研掃箇所において、前記ベースフレーム部を固定した後に、前記短辺方向移動レール部材の端部に、短辺方向に張り出させて、短辺方向延長移動レール部材を連続させて取り付ける工程と、
前記乾式研掃機を前記移動レール部を介して前後左右に移動させながら、前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、前記短辺方向延長移動レール部材まで短辺方向に移動させた領域を含めて、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程とを含んで構成されるトンネル天井面研掃方法。
【請求項2】
前記短辺方向延長移動レール部材を連続させて取り付ける工程では、前記短辺方向移動レール部材の両側の端部に、前記短辺方向延長移動レール部材を各々取り付け、
前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程では、前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、両側の前記短辺方向延長移動レール部材まで短辺方向に各々移動させた領域を含めて、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する請求項1記載のトンネル天井面研掃方法。
【請求項3】
前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、前記短辺方向移動レール部材及び前記短辺方向延長移動レール部材に沿って短辺方向に移動させる駆動モータは、敷設された一対の前記長辺方向移動レール部材に支持されて、これら間の部分に、前記短辺方向移動レール部材の下方に突出した状態で付け換え可能に取り付けられており、
前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程において、一対の前記長辺方向移動レール部材を前記短辺方向移動レール部材の一方の端部側に移動させる際には、前記駆動モータを他方の端部側の他方の前記長辺方向移動レール部材側に付け換え、一対の前記長辺方向移動レール部材を前記短辺方向移動レール部材の他方の端部側に移動させる際には、前記駆動モータを一方の端部側の一方の前記長辺方向移動レール部材側に付け換えながら、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する請求項1又は2記載のトンネル天井面研掃方法。
【請求項4】
前記トンネル天井面研掃装置は、鉄道軌道の上を走行可能な移動台車に積み込んで用いられて、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面を、前記乾式研掃機によって研掃する請求項1~3のいずれか1項記載のトンネル天井面研掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル天井面研掃方法に関し、特にボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置によるトンネル天井面研掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、首都高速道路等の道路や、地下鉄等の鉄道路線には、ボックスカルバート型のトンネルが多数構築されており、そのうちの多くが、供用開始から30年以上経過している。このため、古くなったボックスカルバート型のトンネルに対して、コンクリート片の剥落防止等を含む種々の補修工事が行なわれている。ボックスカルバート型の道路トンネルや鉄道トンネルの補修工事として、例えばトンネルの内壁面の研掃による表面処理作業(下地調整工)を行なう場合、このような研掃による表面処理作業は、少なくとも1車線の道路を供用した状態で、道路交通を規制しながら実施したり、鉄道路線の営業時間外である夜間に実施したりする必要があるため、スピーディーに効率良く、短時間で作業を行えるようにすることが望ましい。
【0003】
また、例えば公知の研掃装置を使用して、人手を介してボックスカルバート型のトンネルの内壁面を研掃しようとすると、特にトンネルの天井面については、上を向いたままの作業になるため苦渋作業になるばかりか、多くの労力を必要として、効率良く作業を行うことは困難である。このようなことから、本願出願人は、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面に対して、スピーディーに且つ効率良く研掃してゆくことを可能にするトンネル天井面研掃装置を開発している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1の研掃装置や特許文献2の研掃方法によれば、トンネル天井面研掃装置は、アウトリガー部、架台部、乾式研掃機、乾式研掃機の移動レール部等を備えており、運搬車両の荷台に積み込まれて、運搬車両によってトンネルの天井面の研掃箇所の真下まで適宜移動されるようになっている。また天井面の研掃箇所では、アウトリガー部により架台部が水平となるように調整した後に、架台部の上部に設置された移動レール部が天井面と平行に配置されるように調整し、乾式研掃機を移動レール部に沿って前後左右に移動させながら、天井面を研掃するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-40103号公報
【文献】特開2017-40104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2によれば、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面に対しては、スピーディーに且つ効率良く、トンネル天井面研掃装置によって天井面を研掃してゆくことが可能であるが、その一方で、これらをボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面の研掃による補修工事に適用しようとすると、種々の課題が生じることになる。
【0006】
すなわち、鉄道トンネルでは、トンネル天井面研掃装置を搭載して研掃箇所まで移動させるトラック等の道路用の運搬車両を、トンネル内で走行させることは困難であり、トンネル天井面研掃装置は、鉄道トンネルに敷設された一対のレール部材からなる鉄道軌道上を走行移動する、トロリー台車等の移動台車に搭載して、トンネル天井面の研掃箇所まで鉄道軌道に沿って移動させる必要があることから、鉄道軌道の延長方句と垂直な横幅方向への移動が、鉄道軌道の敷設位置によって制約されることになる。また、鉄道トンネルでは、鉄道軌道に沿った走行移動中に、周囲のものと接触等しないように、車両限界が定められていることから、車両限界を超えて横幅方向に張り出す大きさのトンネル天井面研掃装置を、鉄道軌道に沿って研掃箇所まで移動させることは困難である。
【0007】
このため、研掃箇所における天井面の横幅方向の幅が、車両限界の横幅よりも広くなっている場合には、研掃箇所の天井面の横幅方向の両側部分に、トンネル天井面研掃装置では研掃できない研掃残り部が生じ易くなる。このような研掃残り部は、人手による研掃作業を介して行なう必要があるため、上述のように、上を向いたままの作業になって苦渋作業になるばかりか、多くの労力を必要として、効率良く作業を行うことは困難であることから、トンネル天井面研掃装置では研掃できない研掃残り部は、できるだけ狭い領域とすることが望ましい。また、道路トンネルの天井面を研掃する場合においても、天井面の研掃箇所にトンネル天井面研掃装置を据え付けた際に、横幅方向にできるだけ広い領域の天井面を研掃できるようにすることで、さらに効率良く、天井面を研掃することが可能になると考えられる。
【0008】
本発明は、トンネル天井面研掃装置の各々据付け位置において、研掃箇所における横幅方向のより広い領域の天井面を研掃できるようにして、さらに効率良く、ボックスカルバート型のトンネルの天井面を研掃することのできるトンネル天井面研研掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置によるトンネル天井面研掃方法であって、前記トンネル天井面研掃装置は、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部と、該ベースフレーム部に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部と、前記昇降フレーム部を昇降させる昇降機と、前記昇降フレーム部の昇降を案内するガイド支柱部と、前記昇降フレーム部の上面部に取り付けられた短辺方向移動レール部材及び長辺方向移動レール部材からなる移動レール部を介して、前記昇降フレーム部の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた前記乾式研掃機とを備えており、トンネルの天井面の研掃箇所において、前記ベースフレーム部を固定した後に、前記短辺方向移動レール部材の端部に、短辺方向に張り出させて、短辺方向延長移動レール部材を連続させて取り付ける工程と、前記乾式研掃機を前記移動レール部を介して前後左右に移動させながら、前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、前記短辺方向延長移動レール部材まで短辺方向に移動させた領域を含めて、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程とを含んで構成されるトンネル天井面研掃方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のトンネル天井面研掃方法は、前記短辺方向延長移動レール部材を連続させて取り付ける工程では、前記短辺方向移動レール部材の両側の端部に、前記短辺方向延長移動レール部材を各々取り付け、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程では、前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、両側の前記短辺方向延長移動レール部材まで短辺方向に各々移動させた領域を含めて、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃するようになっていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のトンネル天井面研掃方法は、前記乾式研掃機が載置された前記長辺方向移動レール部材を、前記短辺方向移動レール部材及び前記短辺方向延長移動レール部材に沿って短辺方向に移動させる駆動モータは、敷設された一対の前記長辺方向移動レール部材に支持されて、これら間の部分に、前記短辺方向移動レール部材の下方に突出した状態で付け換え可能に取り付けられており、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃する工程において、一対の前記長辺方向移動レール部材を前記短辺方向移動レール部材の一方の端部側に移動させる際には、前記駆動モータを他方の端部側の他方の前記長辺方向移動レール部材側に付け換え、一対の前記長辺方向移動レール部材を前記短辺方向移動レール部材の他方の端部側に移動させる際には、前記駆動モータを一方の端部側の一方の前記長辺方向移動レール部材側に付け換えながら、前記乾式研掃機によって前記天井面を研掃するようになっていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のトンネル天井面研掃方法は、前記トンネル天井面研掃装置が、鉄道軌道の上を走行可能な移動台車に積み込んで用いられて、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面を、前記乾式研掃機によって研掃するようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトンネル天井面研掃方法によれば、トンネル天井面研掃装置の各々据付け位置において、天井面の研掃箇所における横幅方向のより広い領域の天井面を研掃できるようにして、さらに効率良く、ボックスカルバート型のトンネルの天井面を研掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面研掃方法に用いるトンネル天井面研掃装置の略示側面図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面研掃方法に用いるトンネル天井面研掃装置の略示平面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面研掃方法に用いるトンネル天井面研掃装置の、短辺方向延長移動レール部材が取り付けられた状態の略示正面図である。
【
図4】天井面の研掃箇所において研掃作業を行っている状態を説明する説明図である。
【
図5】ベースフレーム部の構成を説明する
図1のA-Aに沿った略示断面図である。
【
図6】下段昇降フレーム部の構成を説明する
図1のB-Bに沿った略示断面図である。
【
図7】短辺方向延長移動レール部材が取り付けられた状態の上段昇降フレーム部の構成を説明する
図1のC-Cに沿った略示断面図である。
【
図8】上段昇降フレーム部の構成を説明する
図7のD-Dに沿った略示断面図である。
【
図9】短辺方向延長移動レール部材が取り付けられた状態の上段昇降フレーム部の構成を説明する略示上面図である。
【
図10】乾式研掃機の(a)は側面図、(b)は後面図、(c)は平面図である。
【
図11】距離センサーの構成を説明する、
図8のF部拡大断面図である。
【
図12】(a)~(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面の研掃方法を説明する略示正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面研掃方法は、
図1及び
図3に示すように、例えば供用開始から30年以上経過して古くなった、好ましくはボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備えるトンネル天井面研掃装置10(以下「研掃装置10」とすることもある。)を用いて、効率良く研掃してゆくための方法として採用されたものである。
【0016】
すなわち、例えば鉄道トンネルの場合、一対のレール部材57aからなる鉄道軌道57上を走行移動することが可能な、トロリー台車等の移動台車51に積み込んで、研掃装置10を天井面53の研掃箇所まで移動させるようになっており、移動台車51に積み込まれた研掃装置10は、鉄道軌道57の延長方向Yには任意の位置に移動できる一方で、鉄道軌道57の延長方向Yと垂直な横幅方向Xへの移動が、鉄道軌道57の敷設位置によって制約されることになる。このため、例えば研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの幅が、車両限界の横幅よりも広くなっている場合には、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に、研掃装置10では研掃できない研掃残り部が生じ易くなる。本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、研掃装置10の各々据付け位置において、天井面53の研掃箇所における横幅方向Xのより広い領域の天井面53を研掃できるようにして、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に、研掃装置10では研掃できない研掃残り部が生じるのを効果的に抑制することで、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備える研掃装置10によって、さらに効率良く研掃してゆくことができるようにする機能を備えている。
【0017】
そして、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、ボックスカルバート型のトンネルとして、例えばボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置10による研掃方法である。トンネル天井面研掃装置10は、
図1~3に示すように、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部11と、ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部12,13と、昇降フレーム部12,13を昇降させる昇降機14,15,16と、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17と、昇降フレーム部17の上面部に取り付けられた短辺方向移動レール部材18a及び長辺方向移動レール部材18bからなる移動レール部18を介して、昇降フレーム部12,13の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた乾式研掃機30とを備えている。
【0018】
また、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、トンネルの天井面53の研掃箇所において、ベースフレーム部11を固定した後に、短辺方向移動レール部材18aの好ましくは両側の端部に、短辺方向に張り出させて、短辺方向延長移動レール部材18cを連続させて取り付ける工程と、乾式研掃機30を移動レール部18を介して前後左右に移動させながら、乾式研掃機30が載置された長辺方向移動レール部材18bを、好ましくは両側の短辺方向延長移動レール部材18cまで短辺方向に移動させた領域を含めて、乾式研掃機30によって天井面53を研掃する工程とを含んで構成されている(
図12(c)、(d)参照)。
【0019】
本実施形態のトンネル天井面研掃方法によって天井面53が研掃される、ボックスカルバート型の鉄道トンネルは、例えば現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリートによる公知の工法を用いて形成された、中空の矩形断面形状を有するトンネルとなっている。
【0020】
本実施形態では、研掃装置10が搭載される鉄道軌道57の上を走行可能な移動台車51は、研掃装置10を積み込むのに十分な面積を備える台車であって、例えば鉄道軌道57に沿って移動可能な台車として公知の、トロリー台車を好ましく用いることができる。本実施形態では、例えば自走可能な公知の牽引車両58(
図4参照)が、移動台車51を牽引することにより、移動台車51に積み込まれた研掃装置10を、天井面53の研掃箇所まで搬送できるようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、移動台車51に、研掃装置10の他、制御盤54や、発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等を積み込むこともできるが、1台の移動台車51に、これらの装置や機器を全て積み込むことができない場合には、
図4に示すように、連結された補助台車55に、例えば制御盤54、発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等を積み込んだ状態で、天井面53の研掃箇所まで搬送することが可能である。そして、天井面53の研掃箇所では、これらの機器と研掃装置10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段59を用いて接続して、天井面53の研掃作業を行うようになっている。
【0022】
本実施形態のトンネル天井面研掃方法に用いる研掃装置10は、上述のように、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部11と、ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部12,13と、昇降フレーム部12,13を昇降させる、少なくとも前部及び後部に設けられた昇降機14,15,16と、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17と、昇降フレーム部12,13の上面部に取り付けられた移動レール部18によって、昇降フレーム部12,13の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた乾式研掃機30と、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19とを含んで構成されている(
図1~
図3参照)。
【0023】
研掃装置10を構成するベースフレーム部11は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、移動台車51に納まる大きさとして、例えば左右方向の幅が2000mm、前後方向の長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を有している。ベースフレーム部11は、本実施形態では、移動台車51に載置される下段ベースフレーム部11aと、上段ベースフレーム部11bとからなる、2段構造を備えている。これらの下段ベースフレーム部11aと上段ベースフレーム部11bは、例えば周方向に間隔をおいて立設して配置された複数本の連結縦フレーム(図示せず)を介して、例えば上下方向に450mm程度の間隔を置いた状態で、一体として連結されることで、例えば700mm程度の高さの、2段構造の骨組み形状のベースフレーム部11を形成している。
【0024】
ベースフレーム部11には、
図5にも示すように、4箇所の角部分の内側に各々配置されて、後述するガイド支柱部17の内側筒体17aが、下段ベースフレーム部11a及び上段ベースフレーム部11bに下端部分を支持させて(
図1参照)、立設した状態で固定されている。また、ベースフレーム部11には、上段ベースフレーム部11bの内側に適宜設けられた支持プレート11cや支持梁11dに支持させて(
図5参照)、下段昇降機14の下部固定部14aが固定されていたり、下段昇降機14の上部伸縮部14bを伸縮させるための、伸縮駆動機構40が取り付けられている。伸縮駆動機構40は、一台の駆動モータ40aを用いて、4箇所の下段昇降機14を、同時に、同じ高さで昇降させることが可能な機構となっている。
【0025】
ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた昇降フレーム部12,13は、本実施形態では、上述のように、下段昇降フレーム部12と、上段昇降フレーム部13とからなる2段構造を有している。下段昇降フレーム部12は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、ベースフレーム部11と同様の、例えば左右方向の幅が2000mm程度、前後方向の長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えている。
【0026】
下段昇降フレーム部12には、
図6にも示すように、4箇所の角部分の内側に各々配置されて、後述するガイド支柱部17の外側筒体17bが、当該下段昇降フレーム部12に固定されて、上方に立設した状態で取り付けられている。また、下段昇降フレーム部12には、当該下段昇降フレーム部12の内側に適宜設けられた支持プレート12cや支持梁12dに支持させて、上段昇降機15,16の下部固定部15a,16aが固定されていたり、上段昇降機15,16の上部伸縮部15b,16bを伸縮させるための、伸縮駆動機構41が取り付けられている。上段昇降機15,16は、下段昇降フレーム部12の前部及び後部に各々一対設けられている。伸縮駆動機構41は、前部の上段昇降機15と後部の上段昇降機16とを、別々の駆動モータ41aを用いて、異なる高さで個別に昇降させることが可能な機構となっている。前部の上段昇降機15を後部の上段昇降機16よりも多く伸縮させたり、後部の上段昇降機16を前部の上段昇降機15よりも多く伸縮させたりすることによって、下段昇降フレーム部12に対して上段昇降フレーム部13を、傾斜させることができるようになっている。ベースフレーム部11に固定された下段昇降機14の直上部分に配置された支持プレート12cの下面側には、下段昇降機14の上部伸縮部14bの上端接合部14c(
図1参照)が接合されており、これにより下段昇降フレーム部12を、下段昇降機14の上部伸縮部14bの伸縮によって、ベースフレーム部11に対して上下に昇降させることができるようになっている。
【0027】
上段昇降フレーム部13は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、
図7及び
図8に示すように、本体フレーム部13aと、本体フレーム部13aの長さ方向(前後方向)の両側の端部に、回転可能に各々連結された回転フレーム部13bとを含んで構成されている。本体フレーム部13aは、左右方向の幅が下段昇降フレーム部12の幅と同様の、例えば2000mm程度、前後方向の長さが下段昇降フレーム部12の長さよりも短い、例えば2500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えている。本体フレーム部13aを形成する、長さ方向(前後方向)の両端部の短辺部分に設けられた端部溝形鋼13eの上端面と、これらの端部溝形鋼13eの中間部分にこれらと平行に延設して設けられた中間部溝形鋼13fの上端面には、各々、後述する移動レール部18を構成する短辺方向移動レール部材18aが敷設されている。
【0028】
また、本実施形態では、後述するように、上部昇降フレーム部13を構成する端部溝形鋼13e及び中間部溝形鋼13fの好ましくは両側の端部には、研掃装置10が天井面53の研掃箇所まで搬送されて移動台車51及びベースフレーム部11が固定された後に、
図7及び
図9に示すように、短辺方向に張り出させて、短辺方向延長溝形鋼13hが、ボルト接合等の着脱自在な公知の接合手段を介して、連接して接合されるようになっている。短辺方向延長溝形鋼13hの上端面には、端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの上端面に敷設された短辺方向移動レール部材18aと連続させて、短辺方向延長移動レール部材18c、が短辺方向に張り出して敷設された状態で取り付けられることになる。
【0029】
回転フレーム部13bは、
図7及び
図8に示すように、各々、左右方向の幅が本体フレーム部13aの幅と同様の、例えば2000mm程度、前後方向の長さが本体フレーム部13aの長さよりも短い、例えば500mm程度の大きさの、横長の矩形の平面形状を備えている。これによって上段昇降フレーム部13は、全体として、下段昇降フレーム部12と同様の、例えば左右方向の幅が2000mm程度、前後方向の長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えることになる。
【0030】
回転フレーム部13bは、両端部に雄ネジ部が形成された回転軸部材42を、本体フレーム部13の長さ方向の両端部分から外側に張り出して設けられた張出し部43aを有する複数のリブプレート43の、当該張出し部43aに形成された挿通孔に挿通すると共に、回転軸部材42の両端部を、左右方向の最も外側に設けられた両側のリブプレート43に各々締着することによって、本体フレーム部13aの前後方向の両端部に、回転可能に連結された状態で各々取り付けられている。
【0031】
回転フレーム部13bには、これの左右方向Yの両端部の内側に配置されて、例えば正方形の枠形状を備える筒体取付枠部13cが、各々形成されている。筒体取付枠部13cの内側には、下段昇降フレーム部12に固定されたガイド支柱部17の外側筒体17bの、正方形の外周断面形状と略同様の、正方形の内周断面形状を備えるスライド筒体13dが、一体として取り付けられている。スライド筒体13dは、ガイド支柱部17の外側筒体17bを内側に挿通させた状態で、外側筒体17bに装着されていることで、外側筒体17bの外周面に沿って上下にスライド移動することができるようになっている。これによって上段昇降フレーム部13を、下段昇降フレーム部12に取り付けられた外側筒体17bに案内させて、上下に昇降させることができるようになっている。
【0032】
また、回転フレーム部13bには、左右方向の両端部の筒体取付枠部13cの内側に各々隣接して、支持プレート13gが、下段昇降フレーム部12に固定された上段昇降機15,16の直上部分に配置されて取り付けられている。これらの支持プレート13gの下面には、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の、上部伸縮部15b,16bの上端接合部15c,16cが、各々接合されている。これにより、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の上部伸縮部15b,16bを伸縮させることによって、回転フレーム部13bと共に本体フレーム部13aを、上下に昇降させることができるようになっている。
【0033】
上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の上面部に取り付けられた移動レール部18は、
図9に示すように、乾式研掃機30を左右方向(幅方向)に移動させる短辺方向移動レール部材18aと、乾式研掃機30を前後方向(長さ方向)に移動させる長辺方向移動レール部材18bとを含んで構成されている。短辺方向移動レール部材18aは、上述のように、本体フレーム部13aを形成する一対の端部溝形鋼13e及び中間部溝形鋼13fの上端面に敷設されて、本体フレーム部13aの幅方向に平行に延設して3列に設けられている。一対の端部溝形鋼13e及び中間部溝形鋼13fの両側の端部には、短辺方向延長溝形鋼13hが着脱可能に各々接合されている。短辺方向延長溝形鋼13hの上端面には、端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの上端面に敷設された短辺方向移動レール部材18aと連続させて、短辺方向延長移動レール部材18cが敷設されている。短辺方向移動レール部材18a及び短辺方向延長移動レール部材18cの上には、長辺方向移動レール部材18bを敷設した横行フレーム部46が、左右方向に走行移動可能に載置されている。短辺方向延長溝形鋼13hの先端部には、横行フレーム部46の短辺方向延長移動レール部材18cに沿った移動を規制するための、端部ストッパー(図示せず)を設けておくことが好ましい。
【0034】
横行フレーム部46は、
図1~
図3にも示すように、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、例えば左右方向の幅が600mm程度、前後方向の長さが下段昇降フレーム部12の長さよりも若干長い、例えば3700mm程度の大きさの、前後方向に縦長の矩形の平面形状を備えている。横行フレーム部46を形成する、左右一対の長辺部分に配置された長辺部溝形鋼46aの上端面には、長辺方向移動レール部材18bが各々敷設されている。長辺方向移動レール部材18bの上には、乾式研掃機30が、前後方向に走行移動可能に載置されている。
【0035】
また、横行フレーム部46には、当該横行フレーム部46を上段昇降フレーム部13の上面部に敷設された短辺方向移動レール部材18aに沿って走行移動させるための、走行車輪46bや駆動モータ46c(
図1~
図3参照)が取り付けられている。移動レール部18は、本実施形態では、短辺方向移動レール部材18a、短辺方向延長移動レール部材18c及び長辺方向移動レール部材18bの他、横行フレーム部46や、走行車輪46b、駆動モータ46c等を含んで構成されている。
【0036】
本実施形態では、駆動モータ46cは、後述するように、敷設された一対の長辺方向移動レール部材18bに支持されて、これらの間の部分に、短辺方向移動レール部材18aの下方に突出した状態で、横幅方向Xの位置を変えて付け換え可能に取り付けられている(
図12(b)~(d)参照)。また、横行フレーム部46には、適宜の位置に、横振れ防止ローラ(図示せず)や浮き上がり防止ローラ(図示せず)を取り付けておくことが好ましい。これらによって、短辺方向移動レール部材18aや短辺方向延長移動レール部材18cに沿って、横行フレーム部46を移動させる際に、横行フレーム部46が横振れしたり浮き上がったりするのを、効果的に回避することが可能になる。
【0037】
移動レール部18によって、上段昇降フレーム部13の長辺方向(前後方向X)及び短辺方向(左右方向Y)に移動可能に設けられた乾式研掃機30は、
図10(a)~(c)に示すように、走行基台部31と、走行基台部31との間にロードセル32を介在させて走行基台部31の上方に配置された中間プレート部33と、中間プレート部33との間にエアシリンダー34を介在させて中間プレート部33のさらに上方に配置された研掃機取付けプレート35と、研掃機取付けプレート35に支持されて取り付けられた研掃機本体36とを含んで構成される。走行基台部31の4箇所の角部分から上方に立設して、ガイドシャフト37が設けられており、これらのガイドシャフト37に、研掃機取付けプレート35の4箇所の角部分に設けられたリニアブッシュ38を各々装着することによって、これらのガイドシャフト37やリニアブッシュ38にガイドさせて、研掃機取付けプレート35を、エアシリンダー34の伸縮に伴って、安定した状態で上下に昇降させることができるようになっている。
【0038】
研掃機本体36は、コンクリートの床面等を研掃して平坦な作業面を形成することが可能な、公知の種々の研削機に、適宜改良を加えることによって用いることができる。このような研削機として、例えば商品名「新型トルネード」(CRT株式会社製)を好ましく用いることができる。研掃機本体36は、切削ディスク36aや、吸引集塵装置36bや、駆動モータ36c等を備えている。また、切削ディスク36aの周囲を囲むようにして、可撓性を備えるヘラ部材やブラシ状部材等からなる飛散防止部材(図示せず)が設けられている。これによって、切削ディスク36aを上向きにした状態で、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53に押し付けて研削する際に生じる粉塵が、研掃機本体36の外に漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。研掃機本体36に接続して、排出管49が設けられている(
図1、
図2参照)。
【0039】
乾式研掃機30の走行基台部31には、横行フレーム部46の長辺部溝形鋼46aの上端面に敷設された長辺方向移動レール部材18bに沿って乾式研掃機30を走行移動させるための、走行車輪31aや走行駆動装置31bが取り付けられている。これによって、乾式研掃機30は、横行フレーム部46の上面部に敷設された長辺方向移動レール部材18bに沿って、上段昇降フレーム部13の長辺方向に走行移動できるようになっていると共に、横行フレーム部46を、上段昇降フレーム部13の上面部に敷設された短辺方向移動レール部材18a及び短辺方向延長移動レール部材18cに沿って走行移動させことで、上段昇降フレーム部13の短辺方向にも、車両制限の横幅を超えて移動できるようになっている。
【0040】
乾式研掃機30の中間プレート部33と研掃機取付けプレート35との間に介在して伸縮可能に配置されたエアシリンダー34は、研掃機取付けプレート35の前部と後部に各々取り付けられており、走行基台部31と中間プレート部33との間に介在するロードセル32によって計測される、研掃機本体36による鉄道トンネルの天井面53への押付け力が、例えば0.3~0.9Mpaとなるように、研掃機取付けプレート35を昇降させた状態で、研掃機本体36の切削ディスク36aを天井面53に押し付けることができるようになっている。研掃機取付けプレート34を昇降させるシリンダー部材として、エアシリンダー34を用いたことにより、鉄道トンネルの天井面53に存在する例えば±40mm程度の凹凸に追随させて、これらの凹凸を吸収することが可能になる。
【0041】
本実施形態では、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の先端部分及び後端部分に取り付けられて、鉄道トンネルの天井面53との離れ又は天井面53との接触を検出する距離センサー19は、例えば天井面53との接触を検出する接触式のセンサーとなっている。距離センサー19は、
図1、
図3、及び
図8に示すように、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bの左右方向の両側の端部から各々前後方向に張り出して設けられた、張出し支持プレート47の先端部分から立設する立設ロッド48の先端部に取り付けられることで、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aと同様の高さ位置に配置されて、上段昇降フレーム部13の先端部分及び後端部分に各々一対ずつ、合計4箇所に設けられている。
【0042】
距離センサー19は、
図11に示すように、バネ部材19bにより上方に付勢された状態で設けられたセンサー本体19aや、リミットスイッチ19c、スイッチアジャスター19d等を含んで構成される公知のセンサーであって、センサー本体19aがバネ部材19bによる付勢力に抗して押し込まれることで、天井面53との接触を検出できるようになっている。また、距離センサー19として、接触式のセンサーの他、例えば天井面53に向けて電磁波を放射した際の反射波を検知することで、鉄道トンネルの天井面53との離れを検出することが可能な、公知の各種の非接触式のセンサーを用いることもできる。距離センサー19として、非接触式のセンサーを用いる場合には、距離センサー19を、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aと同様の高さ位置に配置する必要がなくなる。距離センサー19は、後述するように、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13が、鉄道トンネルの天井面53の縦断勾配に沿って当該天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整する際に用いられる。
【0043】
本実施形態では、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17は、上述のように、ベースフレーム部11から立設して取り付けられた内側筒体17aと、下段昇降フレーム部12に固定されて取り付けられた外側筒体17bとを含んで構成されている。
図1~
図3に示すように、内側筒体17aは、例えば5mm程度の肉厚を有し、1辺が例えば250mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。内側筒体17aは、例えば1800mm程度の長さを有している。内側筒体17aは、ベースフレーム部11の4箇所の角部分の内側部分において、下段ベースフレーム部11a及び上段ベースフレーム部11bに跨るようにして下端部分をこれらのフレームに支持させて(
図1、
図3参照)、立設した状態で固定されている。内側筒体17aは、これの上方部分を、上段ベースフレーム部11bから例えば1100mm程度の高さで突出させた状態で、ベースフレーム部11の4箇所の角部分に各々取り付けられている。
【0044】
外側筒体17bは、例えば4.5mm程度の肉厚を有し、内側に内側筒体17aを摺動可能に挿通できる大きさとして、1辺が例えば277mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。外側筒体17bは、例えば1300mm程度の長さを有している。外側筒体17bは、下段昇降フレーム部12の4箇所の角部分の内側部分において、当該下段昇降フレーム部12に固定されて、上方及び下方に延設した状態で取り付けられている。外側筒体17bは、下方部分を、下段昇降フレーム部12から下方に例えば270mm程度の長さで突出させると共に、上方部分を、下段昇降フレーム部12から上方に例えば960mm程度の高さで立設させた状態で固定されている。
【0045】
外側筒体17bは、内側に内側筒体17aを挿通しつつ、内側筒体17aの上方から内側筒体17aの外側を覆うようにして装着されることで、内側筒体17aと共に2重の筒状部分を形成する。これによって、ガイド支柱部17は、ベースフレーム部11と下段昇降フレーム部12との間に介在して取り付けられた下段昇降機14(
図1参照)の伸縮に伴って、内側筒体17aに対して外側筒体17bをスライド移動させることで伸縮して、下段昇降フレーム部12の昇降を案内できるようになっている。
【0046】
また、本実施形態では、上述のように、4箇所の角部分に設けられた外側筒体17bにおける、下段昇降フレーム部12から上方に立設する上方部分には、各々、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bの筒体取付枠部13cに取り付けられたスライド筒体13dが、上下にスライド移動可能に装着されている。スライド筒体13dは、本実施形態では、例えば4.5mm程度の肉厚を有し、内側に外側筒体17bを摺動可能に挿通できる大きさとして、1辺が例えば304mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。スライド筒体13dは、例えば400mm程度の長さを有している。スライド筒体13dは、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bにおける4箇所の角部分の内側部分において、筒体取付枠部13cに取り付けられて、下方に延設した状態で設けられている。
【0047】
スライド筒体13dは、内側に外側筒体17bを挿通しつつ、外側筒体17bの上方から外側筒体17bの周囲を囲むようにして装着される。これによって、スライド筒体13dは、下段昇降フレーム部12と上段昇降フレーム部13との間に介在して取り付けられた上段昇降機15,16(
図3参照)の伸縮に伴って、外側筒体17bの外周面に沿ってスライド移動することで、上段昇降フレーム部13を、下段昇降フレーム部12に取り付けられた外側筒体17bに案内させつつ、昇降させることができるようになっている。
【0048】
上述の構成を備える研掃装置10を用いて、本実施形態のトンネル天井面研掃方法によって、例えばボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を研掃するには、まず、研掃装置10を、上段昇降フレーム部13の端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの端部に短辺方向延長溝形鋼13hを取り付けていない状態で、車両限界からはみ出さないようにして移動台車51に積み込んで、鉄道軌道57に沿って、天井面53の研掃箇所まで移動させる(
図12(a)参照)。研掃装置10と共に移動させた移動台車51は、天井面53の研掃箇所において、ベースフレーム部11と共に固定する。移動時には、研掃装置10は、下段昇降フレーム部12及び上段昇降フレーム部13を、最も下降させた状態とする(
図12(a)参照)。これによって、最上部に配置される乾式研掃機30や距離センサー19が、車両限界の高さを超えない高さに配置されるようにして、研掃装置10を移動台車51に積み込むことが可能になって、鉄道トンネルにおける天井面53の研掃箇所まで、研掃装置10をスピーディーに搬送することが可能になる。
【0049】
研掃装置10と共に移動させた移動台車51を、ベースフレーム部11と共に天井面53の研掃箇所において固定したら、研掃装置10の上段昇降フレーム部13を構成する端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの両側の端部から、車両限界の横幅を超えて短辺方向に張り出させて、短辺方向延長溝形鋼13hを各々接合する(
図12(b)参照)。短辺方向延長溝形鋼13hは、補助鋼材を溶接等により適宜取り付けると共に、ボルト接合等の公知の接合手段を用いることで、着脱可能な状態で、容易に端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの端部に接合することができる。また接合した短辺方向延長溝形鋼13hの上端面には、端部溝形鋼13eや中間部溝形鋼13fの上端面に敷設された短辺方向移動レール部材18aと連続させて、短辺方向延長移動レール部材18cを敷設する。これによって横行フレーム部46は、短辺方向移動レール部材18a及び短辺方向延長移動レール部材18cに沿って、車両限界の横幅を超える領域まで、横幅方向Xに移動することが可能になる。
【0050】
上段昇降フレーム部13に短辺方向延長溝形鋼13hや短辺方向移動レール部材18aを取り付けたら、例えば
図4に示すように、必要に応じて補助移動台車55に積み込まれた、例えば発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等の補助機器と、研掃装置10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段59を用いて接続する。しかる後に、例えば補助移動台車55に設けられた制御盤54と接続させた例えばペンダントスイッチ等によるコントローラ54aを用いて、以下のようにして天井面53の研掃作業が行なわれるようになっている(
図1、
図3及び
図12(c)、(d)参照)。
【0051】
すなわち、研掃装置10の昇降フレーム部12,13を、上段昇降フレーム部13の前後方向の先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19の何れか一方が天井面53と接触したことを検出するまで、昇降機14,15,16によって上昇させる。前後方向の先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19の何れか一方が天井面53と接触したことを検出するまで、上段昇降フレーム部13を上昇させたら、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、天井面53と接触したことを検出しなかった他方の距離センサー19が、天井面53と接触したことを検出するまで、昇降機14,15,16によって上昇させて、上段昇降フレーム部13が、天井面53の縦断勾配に沿って天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整する(
図1、
図3参照)。本実施形態では、このような、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、天井面53と接触したことを検出しなかった他方の距離センサー19が、天井面53と接触したことを検出するまで上昇させる工程は、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の何れか一方を伸長させて上昇させることによって、容易に行なうことができる。
【0052】
上段昇降フレーム部13が、天井面53の縦断勾配に沿って天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整したら、横行フレーム部46を、短辺方向移動レール部材18a及び短辺方向延長移動レール部材18cに沿って、車両限界の横幅を超える領域まで、横幅方向Xに移動させると共に、乾式研掃機30を横行フレーム部46に取り付けられ長辺方向移動レール部材18bに沿って長辺方向に移動させることにより、乾式研掃機30を移動レール部18を介して前後左右に移動させる。これによって、車両限界の横幅を超える一方の側から(
図12(c)参照)、車両限界の横幅を超える他方の側まで(
図12(d)参照)、横幅方向X及び長辺方向の広い領域に亘って、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30によって効率良く研掃してゆくことが可能なる。
【0053】
したがって、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、トンネルの天井面53の研掃箇所において、ベースフレーム部11を固定した後に、短辺方向移動レール部材18aの端部に、短辺方向に張り出させて、短辺方向延長移動レール部材18cを連続させて取り付ける工程と、乾式研掃機30を移動レール部18を介して前後左右に移動させながら、乾式研掃機30が載置された長辺方向移動レール部材18bを、短辺方向延長移動レール部材18cまで短辺方向に移動させた領域を含めて、乾式研掃機30によって天井面53を研掃する工程とを含んで構成されることになる。
【0054】
これによって、本実施形態のトンネル天井面研掃方法によれば、研掃装置10の各々据付け位置において、天井面53の研掃箇所における横幅方向Xのより広い領域の天井面53を研掃できるようにして、さらに効率良く、ボックスカルバート型のトンネルの天井面53を研掃することが可能になる。また、本実施形態によれば、ボックスカルバート型の鉄道トンネルにおいて、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの幅が、車両限界の横幅よりも広くなっている場合でも、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に研掃残り部が生じるのを、効果的に抑制することが可能になって、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備える研掃装置10によって、さらに効率良く研掃してゆくことが可能になる。
【0055】
本実施形態では、長辺方向移動レール部材18bを、短辺方向移動レール部材18a及び短辺方向延長移動レール部材18cに沿って短辺方向に移動させる駆動モータ46cは、上述のように、敷設された一対の長辺方向移動レール部材18bに支持されて、これら間の部分に、短辺方向移動レール部材18aの下方に突出した状態で付け換え可能に取り付けられている。これによって、
図3及び
図12(c)、(d)に示す乾式研掃機30により天井面53を研掃する工程において、一対の長辺方向移動レール部材18bを短辺方向移動レール部材18aの一方の端部側に移動させる際には、駆動モータ46cを他方の端部側の他方の長辺方向移動レール部材18b側に付け換え(
図12(c)参照)、一対の長辺方向移動レール部材18bを短辺方向移動レール部材18aの他方の端部側に移動させる際には、駆動モータ46cを一方の端部側の一方の長辺方向移動レール部材18b側に付け換え(
図12(d)参照)ながら、乾式研掃機30によって天井面53を研掃することが可能なる。またこれによって、一対の長辺方向移動レール部材18bを短辺方向移動レール部材18aの一方の端部側又は他方の端部側に移動させた際に、駆動モータ46cが、上段昇降フレーム部13の本体フレーム部13aの長辺部分と干渉するまでの移動長さ大きくして、横幅方向Xのさらに広い領域の天井面53を研掃できるようにすることが可能になる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明のトンネル天井面研掃方法は、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面を研掃する場合の他、研掃装置をトラック等の運搬車両に積み込むことにより天井面の研掃箇所まで移動させて、例えばボックスカルバート型の道路トンネル等の、その他の種々のボックスカルバート型のトンネルの天井面を研掃する際にも用いることができる。その他のボックスカルバート型のトンネルの天井面を研掃する際にも、各々据付け位置において、天井面の研掃箇所における横幅方向のより広い領域の天井面を研掃することが可能になって、さらに効率良く、天井面を研掃することが可能になる。また、短辺方向延長移動レール部材は、短辺方向移動レール部材の両側の端部に各々取り付ける必要は必ずしも無く、片側の端部のみに取り付けて、横幅方向の片側のみに広げて天井面を研掃できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0057】
10 トンネル天井面研掃装置
11 ベースフレーム部
12 下段昇降フレーム部
13 上段昇降フレーム部
13a 本体フレーム部
13b 回転フレーム部
13e 端部溝形鋼
13f 中間部溝形鋼
13h 短辺方向延長溝形鋼
14 下段昇降機
15 前部の上段昇降機
16 後部の上段昇降機
17 ガイド支柱部
18 移動レール部
18a 短辺方向移動レール部材
18b 長辺方向移動レール部材
18c 短辺方向延長移動レール部材
19 距離センサー
30 乾式研掃機
31 走行基台部
36 研掃機本体
46 横行フレーム部
46c 駆動モータ
51 移動台車
53 天井面
57 鉄道軌道
X 横幅方向
Y 鉄道軌道の延長方向