(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】プロトポルフィリンIXを観察するためのフィルタセット、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019093519
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】10 2018 111 958.5
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506085066
【氏名又は名称】カール・ツアイス・メディテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴィルツバッハ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ニーテン
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06212425(US,B1)
【文献】米国特許第06640131(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0152987(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0044583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光フィルタ(84)および観察光フィルタ(91)を含むフィルタセットであって、
前記照明光フィルタ(84)の透過特性(105)は第1の部分的特徴(I)と第2の部分的特徴(II)との和であり、
限界波長(107)未満である第1の波長範囲(109)内の前記第1の部分的特徴(I)の透過率は第1の値(L1)より大きく;
前記限界波長(107)を越える第2の波長範囲(111)内の前記第2の部分的特徴(II)の透過率は第2の値(L2)より小さくかつ第3の値(L3)より大きく、
前記観察光フィルタ(91)の透過特性(113)は第3の部分的特徴(III)と第4の部分的特徴(IV)との和であり、
前記限界波長(107)を越える第3の波長範囲(115)内の前記第3の部分的特徴(III)の透過率は前記第1の値(L1)より大きく;
前記限界波長(107)未満である第4の波長範囲(117)内の前記第4の部分的特徴(IV)の透過率は前記第2の値(L2)より小さくかつ前記第3の値(L3)より大きく、
前記第1の波長範囲(109)と前記第2の波長範囲(111)との間にある第5の波長範囲(118)内の前記照明光フィルタ(84)の透過率は第4の値(L4)より小さく、
前記第3の波長範囲(115)と前記第4の波長範囲(117)との間にある第6の波長範囲(119)内の前記観察光フィルタ(91)の透過率は前記第4の値(L4)より小さく、
前記第4の値(L4)は前記第3の値(L3)より小さく、前記第3の値(L3)は前記第2の値(L2)より小さく、前記第2の値(L2)は前記第1の値(L1)より小さく、
前記限界波長(107)は450nm~550nmとの間にあり、
前記第1の波長範囲(109)は350nmと前記限界波長との間にあり、
前記第2の波長範囲(111)は前記限界波長と620nmとの間にあり、かつ少なくとも50nmの幅を有し、
前記第3の波長範囲(115)は前記限界波長と800nmとの間にあり、
前記第4の波長範囲(117)は410nmと前記限界波長との間にある、フィルタセット。
【請求項2】
前記第2の波長範囲(111)外であるが前記第3の波長範囲(115)内である第8の波長範囲(121)内の前記第2の部分的特徴(II)の透過率は前記第4の値(L4)より小さいことと、
前記第8の波長範囲(121)内の前記第3の部分的特徴(III)の透過率は前記第1の値(L1)より大きいこと、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載のフィルタセット。
【請求項3】
前記第3の波長範囲(115)は、少なくとも150nmの幅を有する、請求項1または2に記載のフィルタセット。
【請求項4】
前記第1の波長範囲(109;209)内であるが前記第4の波長範囲(117;217)外である第7の波長範囲(120;220)内の前記第1の部分的特徴(I)の透過率は前記第1の値(L1)より大きいことと、
前記第7の波長範囲(120;220)内の前記第4の部分的特徴(IV)の透過率は前記第4の値(L4)より小さいこと、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項5】
前記限界波長(107;207)は480nm~520nmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項6】
前記第1の波長範囲(109;209)は、380nm~480nmであることと、
前記第3の波長範囲(115;215)は、520nm~760nmであることと、
前記第4の波長範囲(117;217)は、410nm~450nmであること、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項7】
前記第1の波長範囲(109;209)は少なくとも40nmの幅を有することと、
前記第4の波長範囲(117;217)は少なくとも10nmの幅を有すること、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項8】
前記第1の波長範囲(109;209)と前記第4の波長範囲(117;217)は互いに重なることと、
前記第2の波長範囲(111;211)と前記第3の波長範囲(115;215)は互いに重なること、の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項9】
前記第1の波長範囲(109;209)は前記第4の波長範囲(117;217)を含むことと、
前記第3の波長範囲(115;215)は前記第2の波長範囲(111;211)を含むこと、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項10】
前記第1の値(L1)は50%であることと、
前記第2の値(L2)は10%であることと、
前記第3の値(L3)は0.01%であること、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項11】
前記照明光フィルタ(84)と前記観察光フィルタ(91)は、第1の平均値対第2の平均値の比が0.5~1.5となるように構成され、
前記第1の平均値は、前記照明光フィルタ(84)の透過率と、前記観察光フィルタ(91)の透過率と、前記第1の波長範囲(109;209)と前記第4の波長範囲(117;217)との間の交差部にわたって平均化され前記交差部に対して正規化された波長依存係数との積であり、
前記第2の平均値は、前記照明光フィルタ(84)の透過率と、前記観察光フィルタ(91)の透過率と、前記第2の波長範囲(111;211)と前記第3の波長範囲(115;215)との間の交差部にわたって平均化され前記交差部に対して正規化された波長依存係数との積であり、
前記波長依存係数は、1である、またはCIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclairage)018.2-1983に従って定義された眼の相対的比視感度V(λ)である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項12】
前記第5の波長範囲(118;218)は前記限界波長(107;207)を含むことと、
前記第5の波長範囲(118;218)は少なくとも20nmの幅を有することと、
前記第6の波長範囲(119;219)は前記限界波長(107;207)を含むことと、
前記第6の波長範囲(119;219)は少なくとも20nmの幅を有すること、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項13】
プロトポルフィリンIXと対象物の白色光のような画像とを同時に観察するための蛍光観測システムであって、
対象物(9)を照明するための光源(71)と、
前記対象物(9)を撮像するための観察光学ユニット(3)と、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のフィルタセットとを含む蛍光観測システムにおいて、
照明フィルタ(84)は光源(72)と前記対象物(9)との間の照明ビーム経路内に配置され、観察光フィルタ(91)は前記観察光学ユニット(3)のビーム経路内に配置される、蛍光観測システム。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のフィルタセットを使用してプロトポルフィリンIXと対象物の白色光のような画像とを同時に観察する方法であって、
前記対象物(9)をプロトポルフィリンIXで強化する工程と、
プロトポルフィリンIXで強化された前記対象物(9)上へ向けられた照明光ビーム(81)を前記フィルタセットの照明フィルタ(84)により濾過する工程と、
前記対象物(9)から出る光を前記フィルタセットの観察光フィルタ(91)により濾過する工程を含む方法。
【請求項15】
前記第3の波長範囲(115)は、少なくとも200nmの幅を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項16】
前記第3の波長範囲(115)は、少なくとも230nmの幅を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項17】
照明光フィルタ(84)および観察光フィルタ(91)を含むフィルタセットであって、
前記照明光フィルタ(84)の透過特性(205)は第1の部分的特徴(I)と第2の部分的特徴(IIa)との和であり、
限界波長(207)未満である第1の波長範囲(209)内の前記第1の部分的特徴の透過率は第1の値(L1)より大きく、
前記限界波長(207)を越える第2の波長範囲(211)内の第2の部分的特徴(II)の透過率は前記第1の値(L1)より大きく、
前記観察光フィルタ(91)の透過特性(213)は第3の部分的特徴(IIIa)と第4の部分的特徴(IV)との和であり、
前記限界波長(207)を越える第3の波長範囲(215)内の前記第3の部分的特徴(IIIa)の透過率は
第2の値(L2)より小さくかつ
第3の値(L3)より大きく、
前記第3の波長範囲(215)を越える第9の波長範囲(229)内の第3の部分的特徴(III)の透過率は前記第1の値(L1)より大きく、
前記限界波長(207)未満である第4の波長範囲(217)内の前記第4の部分的特徴(IV)の透過率は前記第2の値(L2)より小さ
くかつ前記第3の値(L3)より大きく、
前記第1の波長範囲(209)と前記第2の波長範囲(211)との間にある第5の波長範囲(218)内の前記照明光フィルタ(84)の透過率は
第4の値(L4)より小さく、
前記第3の波長範囲(115)と前記第4の波長範囲(117)との間にある第6の波長範囲(219)内の前記観察光フィルタ(91)の透過率は前記第4の値(L4)より小さく、
前記第4の値(L4)は前記第3の値(L3)より小さく、前記第3の値(L3)は前記第2の値(L2)より小さく、前記第2の値(L2)は前記第1の値(L1)より小さい、フィルタセット。
【請求項18】
前記限界波長(207)は450nm~550nmとの間にあり、
前記第1の波長範囲(209)は350nmと前記限界波長との間にあることと、
前記第2の波長範囲(211)は前記限界波長と680nmとの間にあることと、
前記第3の波長範囲(215)は前記限界波長と680nmとの間にあることと、
前記第9の波長範囲(229)は前記第3の波長範囲(215)と800nmとの間にあることと、
前記第4の波長範囲(217)は410nmと前記限界波長との間にあること、
の少なくとも1つを特徴とする、請求項17に記載のフィルタセット。
【請求項19】
前記第2の波長範囲(211)外であるが前記第9の波長範囲(229)内である第8の波長範囲(221)内の前記第2の部分的特徴(IIa)の透過率は前記第4の値(L4)より小さい、請求項17に記載のフィルタセット。
【請求項20】
前記第3の波長範囲(215)は、少なくとも50nmの幅を有する、請求項17に記載のフィルタセット。
【請求項21】
照明光フィルタ(84)および観察光フィルタ(91)を含むフィルタセットであって、
前記照明光フィルタ(84)の透過特性(105)は第1の部分的特徴(I)と第2の部分的特徴(II)との和であり、
限界波長(107)未満である第1の波長範囲(109)内の前記第1の部分的特徴(I)の透過率は第1の値(L1)より大きく;
前記限界波長(107)を越える第2の波長範囲(111)内の前記第2の部分的特徴(II)の透過率は第2の値(L2)より小さくかつ第3の値(L3)より大きく、
前記観察光フィルタ(91)の透過特性(113)は第3の部分的特徴(III)と第4の部分的特徴(IV)との和であり、
前記限界波長(107)を越える第3の波長範囲(115)内の前記第3の部分的特徴(III)の透過率は前記第1の値(L1)より大きく;
前記限界波長(107)未満である第4の波長範囲(117)内の前記第4の部分的特徴(IV)の透過率は前記第2の値(L2)より小さくかつ前記第3の値(L3)より大きく、
前記第1の波長範囲(109)と前記第2の波長範囲(111)との間にある第5の波長範囲(118)内の前記照明光フィルタ(84)の透過率は、0.005%の第4の値(L4)より小さく、
前記第3の波長範囲(115)と前記第4の波長範囲(117)との間にある第6の波長範囲(119)内の前記観察光フィルタ(91)の透過率は前記第4の値(L4)より小さく、
前記第4の値(L4)は前記第3の値(L3)より小さく、前記第3の値(L3)は前記第2の値(L2)より小さく、前記第2の値(L2)は前記第1の値(L1)より小さく、
前記限界波長(107)は450nm~550nmとの間にあり、
前記第1の波長範囲(109)は350nmと前記限界波長との間にあり、
前記第2の波長範囲(111)は前記限界波長と680nmとの間にあり、
前記第3の波長範囲(115)は前記限界波長と800nmとの間にあり、
前記第4の波長範囲(117)は410nmと前記限界波長との間にある、フィルタセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光観測システム、蛍光観察を行う方法、およびこの目的のために使用可能なフィルタセットに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光観察は、対象物の様々なタイプの構造を互いに識別可能なやり方で可視にする技術、生物学および医学の多くの分野において使用される。蛍光染料の蛍光を励起し得る光だけをほぼ通過し得るようにする照明光フィルタを照明光源と観察対象物との間のビーム経路内に配置することが従来のやり方である。このとき、観察光フィルタが観察光学ユニットのビーム経路内に配置される。観察光フィルタは蛍光を通過し得るようにするが、照明光フィルタが通過させ得る光をほぼ通過させない。観察光学ユニットを覗く眼により直接知覚されるまたは観察光学ユニットを介しカメラにより記録される画像では、対象物の蛍光性構造は明るい領域として感知可能であるが、一方、対象物の非蛍光性構造は暗く、したがってその中に含まれる構造が感知可能ではない。
【0003】
この場合、対象物の非蛍光性領域もまた、非蛍光性構造に対する蛍光性構造の空間位置をより良く検出することができるために、画像内で感知可能であることがさらに望ましい。この願望に鑑み、(特許文献1)は、観察光フィルタが、光(照明光フィルタもまた通過することを許容する)の一部が通過することを許容するように、最大で50nmの幅を有する波長範囲内でスペクトル的に重なるようなやり方で照明光フィルタの透過特性と観察光フィルタの透過特性とを互いに連携させることを提案する。この結果、蛍光を放射する対象物の蛍光性構造と50nmの幅を有する波長範囲の光を反射する非蛍光性構造との両方が観察光フィルタを介し可視となる。
【0004】
観察光フィルタと照明光フィルタとのこのような連携によってさえ対象物の非蛍光性領域は不十分に感知可能であるということが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第19548913A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、対象物の非蛍光性領域のより良い知覚を可能にする蛍光観察を行うためのフィルタセット、蛍光観測システム、および方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1のフィルタセット
本発明の実施形態によると、第1のフィルタセットの照明光フィルタは、光の波長に応じた透過特性であって第1の部分的特徴と第2の部分的特徴との和である透過特性を有する。限界波長未満である第1の波長範囲内の第1の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。限界波長を越える第2の波長範囲内の第2の部分的特徴の透過率は第2の値より小さく、第3の値より大きい。
【0008】
第1のフィルタセットの観察光フィルタの透過特性は第3の部分的特徴と第4の部分的特徴との和である。限界波長を越える第3の波長範囲内の第3の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。限界波長未満である第4の波長範囲内の第4の部分的特徴の透過率は第2の値より小さく、第3の値より大きい。
【0009】
さらに、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間にある第5の波長範囲内の照明光フィルタの透過率は第4の値より小さく、第3の波長範囲と第4の波長範囲との間にある第6の波長範囲内の観察光フィルタの透過率は第4の値より小さい。
【0010】
この場合、第4の値は第3の値より小さく、第3の値は第2の値より小さく、第2の値は第1の値より小さい。
【0011】
限界波長は、使用される蛍光染料に依存して定義される波長であって、蛍光染料の検出のために使用される波長から蛍光染料の励起のために使用される波長を分離する波長である。一例として、限界波長は、使用される蛍光染料の最大励起スペクトルより大きくかつ使用される蛍光染料の発光スペクトルの最大値より小さくなるようなやり方で選択される。しかし、これから逸脱することも可能であり、限界波長は、励起スペクトルと発光スペクトルとがしばしば蛍光発光過程で広く重なるので、励起スペクトルの最大値より小さくまたは発光スペクトルの最大値より大きくなるように選択され得る。
【0012】
PPIXの励起スペクトルは約405nmにおいて最大値を有する。PPIXの発光スペクトルは約635nmにおいて最大値をそして約705nmにおいて第2の最大値を有する。したがって、限界波長は、例えば405nm~635nmまたは405nm~705nmになるように選択され得る。
【0013】
照明光フィルタの透過特性の第1の部分的特徴は蛍光励起光を検査対象物へ供給する役目を果たす。したがって、第1の波長範囲内の第1の部分的特徴は第1の値より大きい透過値を有する。これは、第1の波長範囲全体における照明光フィルタの透過率が第1の値より大きいということを意味する。したがって、第1の値は第1の波長範囲内の透過率の最小値を表す。第1の値は可能な限り高くなるように選択されるべきであり、例えば50%、70%または90%である。1.0の値は本明細書では最適化の標的であり得るが、この値は実際上は、近似的にだけ実現され得る。
【0014】
照明光フィルタの透過特性の第2の部分的特徴は、蛍光の励起のために役立たないがむしろ対象物の非蛍光性構造の視覚化のために役立つ一定量の光を対象物へ供給する役目を果たす。この光は限界波長を越える波長を有するので、前記光は、対象物により反射されれば、観察光フィルタを通過して知覚され得、その結果、対象物の非蛍光性構造がこの光により知覚され得る。
【0015】
蛍光性対象物により生成される蛍光は通常、低い強度を有するので、対象物の非蛍光性領域が蛍光像内で知覚され得る強度は蛍光性領域が知覚される強度より著しく大きくないことが望ましい。そうでなければ、蛍光は、非蛍光性領域による凌駕(swamping)の理由で劣悪に知覚されるだけかもしれない。したがって、第2の部分的特徴により対象物へ送られる光量は、第2の値より小さくかつ第3の値より大きい第2の波長範囲内の照明光フィルタの透過率により制約される。これは、第2の波長範囲全体内の照明光フィルタの透過率が第2の値より小さいが同時に第3の値より大きいということを意味する。したがって、第2の値は第2の波長範囲内の透過率の最大値を表し、第3の値は第2の波長範囲内の透過率の最小値を表す。
【0016】
この場合、第2の値は、第2の波長範囲内の最大透過率が第1の波長範囲内の最小透過率より(著しく)小さくなるように第1の値より小さい。しかし、第2の波長範囲内の最小透過率は第3の値より大きい。第3の値は、重大な透過率を表すが、非常に低い透過率でありかついかなる光もできる限り透過されないように意図されたフィルタの透過特性の領域内で実現される透過率を表さない。このような透過値は例えば第1の波長範囲と第2の波長範囲との間で実現される。ここでは、透過率は、いかなる光も可能な限りフィルタを通過させないように意図されたやり方でフィルタの透過率を表す第4の値より小さい。第2の値は例えば10%、5%または1%である。第3の値は例えば0.01%、0.05%または0.1%である。第4の値は例えば0.005%、0.001%または0.0001%である。
【0017】
結局、照明光フィルタは要約すると少なくとも以下の特性を有する:照明光フィルタは複数の互いに別々の波長範囲からの光により著しく侵入される。ここでは、前記複数の波長範囲の少なくとも1つは限界波長未満に配置され、大量の光が通過することを可能にし、一方、複数の波長範囲の少なくとも1つの他のものは、限界波長を越えて配置され、比較的小さいがそれにもかかわらずかなりの量の光が通過され得るようにする。
【0018】
観察光フィルタの透過特性は第3および第4の部分的特徴を有する。限界波長を越える波長の第3の部分的特徴は、透過率が第1の値より大きい値を有する第3の波長範囲を有する。これは、第3の波長範囲全体内の観察光フィルタの透過率が第1の値より大きいということを意味する。したがって、第1の値は第3の波長範囲内の透過率の最小値を表す。第3の部分的特徴は、蛍光と、非蛍光性領域の知覚のために役立つ光であって照明光フィルタの第2の部分的特徴の理由で対象物に到達することができた光との両方を通過させ得るようにする役目を果たす。蛍光の概して低い強度の理由で、第3の波長範囲内の透過率は最も高い可能な値(すなわち上述の第1の値より大きい値)を有する。結果として実現されるのは、対象物の蛍光性構造と対象物の非蛍光性構造との両方が感知可能であるということである。これは、蛍光励起のために必ずしも役立たない著しい量の光が対象物へ送られ観察光フィルタを介し蛍光と共に渡されるということのおかげで実現される。
【0019】
第4の部分的特徴は限界波長未満の第4の波長範囲を有し、この範囲内では透過率は第2の値より小さくかつ第3の値より大きい値を有する。これは、第4の波長範囲全体内の観察光フィルタの透過率が第2の値より小さくかつ第3の値より大きいということを意味する。したがって、第2の値は第4の波長範囲内の透過率の最大値を表し、第3の値は第4の波長範囲内の透過率の最小値を表す。第4の部分的特徴は、蛍光でない光であってしたがって非蛍光性対象物の知覚のために役立ち得る光に観察光フィルタを通過させる役目を果たす。この光は蛍光を凌駕しないように意図されているので、第4の部分的特徴の理由で観察光フィルタを通過し得る光量は、最大透過率に関して最適化される透過率を表し得る第1の値より著しく小さい第2の値未満である第4の波長範囲内の最大透過率により制約される。他方で、限界波長未満の観察光フィルタにより透過される量が著しくなるように意図されており、この理由で、第4の波長範囲内の透過率は、光の通過を実質的に阻止するように意図されている透過率を表す第4の値より著しく大きい第3の値より大きい。
【0020】
本設計では、対象物の非蛍光性領域の観察のために、次の少なくとも2つの異なる波長範囲からの光が利用可能である:すなわち、第1に、蛍光でない光であって照明光フィルタの第2の部分的特徴の理由で対象物へ送られ、第3の部分的特徴の理由で観察光フィルタにより透過される光と、照明光フィルタの第1の部分的特徴の理由で対象物へ送られ、第4の部分的特徴の理由で観察光フィルタにより透過される光。対象物の非蛍光性領域の観察のためのこれらの2つの波長範囲は、それらのスペクトル分離の理由で、非蛍光性領域が単に一色では出現しないという利点を提供する。むしろ複数のスペクトル範囲内の非蛍光性領域を知覚することが可能であり、一色での知覚と比較して対象物の非蛍光性領域内の様々な構造の認識の改善に至る。
【0021】
この場合、照明光フィルタの第2の部分的特徴と観察光フィルタの第4の部分的特徴がいずれの場合も複数の互いに分離されたスペクトル範囲内の光の通過を許容することが可能である。これらのスペクトル範囲は、非蛍光性領域を観察するのに利用可能な光が、白色光を近似的に形成するために混合されるようなやり方で選択され得る複数のスペクトル範囲を起源とするように選択され得る。この結果、非蛍光性白色領域もまた、照明光フィルタおよび観察光フィルタを含む系を介し白色領域として近似的に知覚され得る。
【0022】
第1の波長範囲と第2の波長範囲との間にある第5の波長範囲内の照明光フィルタの透過率は第4の値より小さい。これは、第5の波長範囲全体では照明光フィルタの透過率が第4の値より小さいということを意味する。したがって、第4の値は第5の波長範囲内の照明光フィルタの透過率の最大値を表す。第3の波長範囲と第4の波長範囲との間にある第6の波長範囲内の観察光フィルタの透過率もまた第4の値より小さい。これは、第6の波長範囲全体では観察光フィルタの透過率が第4の値より小さいということを意味する。したがって、第4の値は第6の波長範囲内の観察光フィルタの透過率の最大値を表す。これは、非蛍光性物体領域の第1~第4の部分的特徴により実現される白色光印象を改善する。
【0023】
蛍光染料PPIXに関しては、上に説明した透過特性は次のように選択される:限界波長は450nm~550nmの範囲内にあり、第1の波長範囲は350nmから限界波長の範囲内にあり、第2の波長範囲は限界波長から680nmの範囲内にあり、第3の波長範囲は限界波長から800nmの範囲内にあり、第4の波長範囲は410nmから限界波長の範囲内にある。
【0024】
換言すれば、第1の波長範囲は第1の波長から第1の波長より大きい第2の波長まで延びる。ここで第1の波長は350nm以上であり、第2の波長は限界波長以下である。
【0025】
換言すれば、第2の波長範囲は第3の波長より大きい第3の波長から第4の波長まで延びる。ここで第3の波長は限界波長以上であり、第4の波長は680nm以下である。
【0026】
換言すれば、第3の波長範囲は第5の波長より大きい第5の波長から第6の波長まで延びる。ここで第5の波長は限界波長以上であり、第6の波長は800nm以下である。
【0027】
換言すれば、第4の波長範囲は第7の波長から第7の波長より大きい第8の波長まで延びる。ここで第7の波長は410nm以上であり、第8の波長は限界波長以下である。
【0028】
換言すれば、第5の波長範囲は第9の波長から第9の波長より大きい第10の波長まで延びる。ここで第9の波長は第2の波長より大きく、第10の波長は第3の波長より小さい。
【0029】
換言すれば、第6の波長範囲は第11の波長から第11の波長より大きい第12の波長まで延びる。ここで第11の波長は第8の波長より大きく、第12の波長は第5の波長より小さい。
【0030】
第1のフィルタセットに関係する一実施形態によると、第2の波長範囲外であるが第3の波長範囲内である第8の波長範囲内の照明光フィルタの第2の部分的特徴の透過率は第4の値より小さい。第8の波長範囲内では、観察光フィルタの第3の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。第2の部分的特徴の第8の波長範囲内の非常に低い透過率は、対象物へ向けられ反射されればPPIXからの蛍光を凌駕するだろう光を阻止する。観察光フィルタにおける高い透過率はPPIXからの蛍光を観察することを可能にする。さらに、照明光フィルタの第8の波長範囲内の低い透過率もまた、第2の波長範囲と第2の波長範囲内の照明光フィルタの関連する著しい透過率とを制限するので色忠実性を有する非蛍光性物体領域の観察を実現するのに重要である。
【0031】
第2のフィルタセット
本発明の実施形態によると、第1のフィルタセットと同じ効果を実現する第2のフィルタセットは照明光フィルタおよび観察光フィルタを含む。照明光フィルタの透過特性は第1の部分的特徴と第2の部分的特徴との和である。第2のフィルタセットの照明光フィルタの第1の部分的特徴は第1のフィルタセットの照明光フィルタの第1の部分的特徴に対応する。したがって、限界波長未満である第1の波長範囲内の第1の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。
【0032】
第2のフィルタセットの照明光フィルタの第2の部分的特徴は、限界波長を越える第2の波長範囲内の第2の部分的特徴の透過率が第1の値より大きいという点においてだけ、第1のフィルタセットの照明光フィルタの第2の部分的特徴とは実質的に異なる。
【0033】
第2のフィルタセットの観察光フィルタの透過特性は第3の部分的特徴と第4の部分的特徴との和である。第2のフィルタセットの照明光フィルタの第3の部分的特徴は第1のフィルタセットの照明光フィルタの第3の部分的特徴とは著しく異なる。限界波長を越える第3の波長範囲内の第2のフィルタセットの観察光フィルタの第3の部分的特徴の透過率は第2の値より小さくかつ第3の値より大きい。さらに、第3の波長範囲を越える第9の波長範囲内の第3の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。
【0034】
第2のフィルタセットの照明光フィルタの第4の部分的特徴は第1のフィルタセットの照明光フィルタの第4の部分的特徴に対応する。したがって、限界波長未満である第4の波長範囲内の第4の部分的特徴の透過率は第2の値より小さくかつ第3の値より大きい。
【0035】
第1のフィルタセットの場合と同様に、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間にある第5の波長範囲内の第2のフィルタセットの照明光フィルタの透過率もまた第4の値より小さい。
【0036】
第1のフィルタセットの場合と同様に、第3の波長範囲と第4の波長範囲との間にある第6の波長範囲内の観察光フィルタの透過率もまた第4の値より小さい。
【0037】
第1のフィルタセットの場合と同様に、第4の値は第3の値より小さく、第3の値は第2の値より小さく、第2の値は第1の値より小さい。
【0038】
したがって、第1のフィルタセットと第2のフィルタセットは、第2の波長範囲内の第1のフィルタセットの照明光フィルタの透過率が第2の値より小さいが第3の値より大きい一方で第2の波長範囲内の第2のフィルタセットの照明光フィルタの透過率が第1の値より大きい限りにおいて、異なる。
【0039】
この差は、第3の波長範囲内の第1のフィルタセットの観察光フィルタの透過率が第1の値より大きい一方で第3の波長範囲内の第2のフィルタセットの観察光フィルタの透過率が第2の値より小さいが第3の値より大きくということのおかげで、観察光フィルタにおいて補償される。ここで、第2および第3の波長範囲はいずれの場合もスペクトル的に重なる。したがって、非蛍光性対象物領域の観察に関しては、ほぼ同じ効果が両方のフィルタセットにより生じる。
【0040】
両方のフィルタセットにより、PPIXは効率的に励起され得それから生じる蛍光は、それぞれの照明光フィルタがPPIXの放射範囲内で低い透過率(第4の値より小さい)を有しそしてそれぞれの観察光フィルタがPPIXの放射範囲内で高い透過率(第1の値より大きい)を有するので、うまく観察され得る。
【0041】
第2のフィルタセットの一実施形態によると、限界波長は450nm~550nmである。追加的にまたは代替的に、第1の波長範囲は350nmと限界波長との間であり得る。追加的にまたは代替的に、第2の波長範囲は限界波長と680nmとの間であり得る。追加的にまたは代替的に、第3の波長範囲は限界波長と680nmとの間であり得る。追加的にまたは代替的に、第9の波長範囲は第3の波長範囲と800nmとの間であり得る。追加的にまたは代替的に、第4の波長範囲は410nmと限界波長との間であり得る。
【0042】
第2のフィルタセットの一実施形態によると、第2の波長範囲外であるが第9の波長範囲内である第8の波長範囲内の第2の部分的特徴の透過率は第4の値より小さい。第2の部分的特徴の第8の波長範囲内の非常に低い透過率は、対象物へ向けられ対象物により反射されればPPIXからの蛍光を凌駕するだろう光を阻止する。第8の波長範囲を含む第9の波長範囲内の観察光フィルタにおける高い透過率はPPIXからの蛍光を観察することを可能にする。さらに、照明光フィルタの第8の波長範囲内の低い透過率もまた、第2の波長範囲と第2の波長範囲内の照明光フィルタの関連する著しい透過率とを制限するので、色忠実性を有する非蛍光性物体領域の観察を実現するのに重要である。
【0043】
以下に説明される実施形態は、第1のフィルタセットと第2のフィルタセットとの両方に関係するので、簡潔な開示のためだけの理由で個々に説明されない。
【0044】
一実施形態によると、第1の波長範囲内であるが第4の波長範囲外である第7の波長範囲内の照明光フィルタの第1の部分的特徴の透過率は第1の値より大きい。第7の波長範囲内では、観察光フィルタの第4の部分的特徴の透過率は第4の値より小さい。第7の波長範囲内の照明光フィルタにおける高い透過率は、励起光によりPPIXの蛍光を励起することを可能にする。第7の波長範囲内の観察光フィルタにおける非常に低い透過率は、第3および第4の波長範囲において観察光フィルタを通過する光が励起光により凌駕されないように、この励起光をほぼ阻止する。さらに、観察光フィルタの第7の波長範囲内の低い透過率もまた、第4の波長範囲と第4の波長範囲内の観察光フィルタの関連する著しい透過率とを制限するので、色忠実性を有する非蛍光性対象物領域の観察を実現するのに重要である。
【0045】
蛍光染料PPIXの透過特性の上述の数値の代案として、以下の値を使用することが可能である:限界波長は480nm~520nmである。第1の波長範囲は380nm~480nm、特に390nm~450nmである。第2の波長範囲は限界波長と620nmとの間、特に520nm~620nmである。第3の波長範囲は520nm~760nmである。第4の波長範囲は410nm~450nm、特に410nm~435nmである。換言すれば、第1の波長は380nmまたは390nm以上であり得る;第2の波長は480nmまたは450nm以下であり得る;第3の波長は限界波長以上または520nm以上であり得る;第4の波長は620nm以下であり得る;第5の波長は520nm以上であり得る;第6の波長は760nm以下であり得る;第7の波長は410nm以上であり得る;第8の波長は450nmまたは435nm以下であり得る。第9の波長範囲は610nm~750nm、特に660nm~750nmである。
【0046】
例示的実施形態によると、第1の波長範囲は少なくとも40nmまたは少なくとも60nmの幅を有する、および/または第2の波長範囲は少なくとも50nmまたは少なくとも70nmまたは少なくとも90nmの幅を有する、および/または第3の波長範囲は少なくとも50nm、または少なくとも75nm、または少なくとも100nm、または少なくとも150nm、または少なくとも200nm、または少なくとも230nmの幅を有する、および/または第4の波長範囲は少なくとも10nm、または少なくとも20nm、または少なくとも40nm幅を有する。規定幅は、第1の波長範囲の第2と第1波長間の差、第2の波長範囲の第4と第3の波長間の差、第3の波長範囲の第6と第5の波長間の差、および第4の波長範囲の第8と第7の波長間の差を表す。
【0047】
第1と第4の波長範囲は互いに重なる。特に、第1の波長範囲は第4の波長範囲を含み得る。したがって、第4の波長範囲は第1の波長範囲内に最大限に位置し得る。最大限重なるまたは含むことは、光が照明光フィルタおよび観察光フィルタにより著しく透過される波長範囲(すなわち第1と第4の波長範囲の交差部)が存在するということを保証する。結局、非蛍光性対象物領域は可視にされ得る。
【0048】
さらに、第2の波長範囲と第3の波長範囲は互いに重なる。特に、第3の波長範囲は第2の波長範囲を含み得る。したがって、第2の波長範囲は第3の波長範囲内に最大限に位置し得る。最大限に重なるまたは含むことは、光が照明光フィルタおよび観察光フィルタにより著しく透過される波長範囲(すなわち第2と第3の波長範囲の交差部)が存在するということを保証する。結局、非蛍光性対象物領域は可視にされ得る。スペクトル的に互いに分離された少なくとも2つの交差部により実現されるのは、非蛍光性対象物領域が色忠実性でもって(すなわち白色光のようなやり方で)ほぼ観察され得るということである。
【0049】
例示的実施形態によると、第1の値は50%、70%または90%である;および/または第2の値は10%、5%または1%である;および/または第3の値は0.01%、0.05%または0.1%である;および/または第4の値は0.005%または0.001%または0.0001%である。
【0050】
例示的実施形態によると、照明光フィルタおよび観察光フィルタは、第1の平均値対第2の平均値の比が0.5~1.5、特に0.8~1.2となるように構成される。第1の平均値は、観察光フィルタの透過率と、照明光フィルタの透過率と、第1の波長範囲と第4の波長範囲との間の交差部にわたって平均化されて前記交差部に対して正規化された波長依存係数G(λ)との積として定義される。第2の平均値は、観察光フィルタの透過率と、照明光フィルタの透過率と、第2の波長範囲と第3の波長範囲との間の交差部にわたって平均化されて前記交差部に対して正規化された波長依存係数G(λ)との積として定義される。結果として分かったことは、照明光フィルタおよび観察光フィルタにおいて非蛍光性対象物領域を視覚化するために提供される波長範囲内の透過率は、非蛍光性対象物領域が色忠実性をもってほぼ観察され得るように、選択される。
【0051】
第1の平均値M1は例えば次のように定義される:
【数1】
ここで、S1は第1および第4の波長範囲の交差部の最小値であり、S2は第1および第4の波長範囲の交差部の最大値であり、T
I(λ)は照明光フィルタの波長依存透過率であり、T
O(λ)は観察光フィルタの波長依存透過率であり、|・|は絶対値を表す。
【0052】
第2の平均値M2は例えば次のように定義される:
【数2】
ここで、S3は第2および第3の波長範囲の交差部の最小値であり、S4は第2および第3の波長範囲の交差部の最大値であり、T
I(λ)は照明光フィルタの波長依存透過率であり、T
O(λ)は観察光フィルタの波長依存透過率であり、|・|は絶対値を表す。
【0053】
したがって、上記条件は次のように定式化され得る:
【数3】
【0054】
波長依存係数G(λ)により、更なる関連係数が考慮され得、この係数もまた、最も簡単な場合1に等しくなり得る。
【0055】
係数G(λ)は、例えばCIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclairage)018.2-1983に従って定義された眼の相対的比視感度V(λ)であり得る。これは、非蛍光性対象物領域の観察のためのスペクトル構成における人間の眼の明るさ知覚を考慮し、これらの領域の観察中の色忠実性を改善する。
【0056】
係数G(λ)はさらにまたは代替的に、係数として、蛍光観察のために使用される光源L(λ)の電力スペクトルを考慮し得る。したがって、次式が成り立つ:G(λ)=V(λ)またはG(λ)=L(λ)・V(λ)。一例として、キセノンランプまたはいくつかの他の広帯域光源が光源として使用され得る。
【0057】
例示的実施形態によると、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間にあり照明光フィルタの透過率が第4の値未満である第5の波長範囲は限界波長を含む。第5の波長範囲は、少なくとも20nm、少なくとも40nm、または少なくとも60nmであり得る。規定幅は第10と第9の波長間の差を表す。
【0058】
例示的実施形態によると、第3と第4の波長範囲との間にあり観察光フィルタの透過率が第4の値未満である第6の波長範囲は限界波長を含む。第6の波長範囲は、少なくとも20nm、少なくとも40nm、または少なくとも60nmであり得る。規定幅は第12と第11の波長間の差を表す。
【0059】
本発明の更なる態様は、プロトポルフィリンIXと対象物の白色光のような画像とを同時に観察するための蛍光観測システムに関係する。蛍光観測システムは、対象物を照明するための光源と、対象物を撮像するための観察光学ユニットと、本明細書で述べたフィルタセットとを含み、フィルタセットの照明フィルタは、光源と対象物との間の照明ビーム経路内に配置可能であり/配置され、観察光フィルタは観察光学ユニットのビーム経路内に配置可能である/配置される。
【0060】
本発明の更なる態様は、プロトポルフィリンIXと対象物の白色光のような画像とを同時に観察する方法に関係する。本明細書で説明したフィルタセットは本方法において使用される。本方法は、プロトポルフィリンIXで強化された対象物上へ向けられた照明光ビームをフィルタセットの照明フィルタにより濾過する工程と、対象物から出る光をフィルタセットの観察フィルタにより濾過する工程とを含む。
【0061】
本発明の実施形態は添付図面を参照し以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明の一実施形態による蛍光観測システムを示す。
【
図2A-D】本発明の一実施形態による蛍光観察のための第1のフィルタセットについて説明するためのグラフを示す。
【
図3A-D】本発明の一実施形態による蛍光観察のための第2のフィルタセットについて説明するためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
蛍光観測システムの一実施形態が外科用顕微鏡に基づき以下に説明される。しかし、蛍光観測システムの実施形態は、このような外科用顕微鏡へ制約されなく、むしろ対象物上へ向けられた照明光が照明光フィルタにより濾過されそして対象物から出る光が観察光フィルタにより濾過される任意の蛍光観測システムを包含する。
【0064】
図1を参照すると、蛍光観測システムまたは顕微鏡1は、光軸7を有する対物レンズ5を有する顕微鏡検査光学ユニット3を含む。検査されるべき対象物9は対物レンズ5の対物面内に配置される。対象物9から出た光は、対物レンズ5により画像側ビーム束11内に転送される。ここでは、光軸7から少し離れて配置された2つのズーム系12、13が配置され、それぞれはビーム束11から部分的ビーム14、15をそれぞれ抽出し、これを偏光プリズム(
図1に図示せず)を介し接眼レンズ16、17へ供給する。観察者は、対象物9の拡大された表現を画像として知覚するために自身の左眼18および右眼19でそれぞれ接眼レンズ16、17を覗く。代替的に、カメラ光学ユニットにより部分的ビーム束14、15の画像を生成するカメラが眼の代わりに設けられ得る。
【0065】
光の一部を、カメラ系24へ送られるビーム23として結合するために部分的透過ミラー21が部分的ビーム束15内に配置され得る。カメラ系24は1つのカメラまたは複数のカメラを含み得る。図示の例示的実施形態では、カメラ系24は、部分的透過ミラー25に侵入するビーム23の光がカメラアダプタ光学ユニット31を介し供給されるカメラ32と、部分的透過ミラー25において反射されるビーム23の光がフィルタ57およびカメラアダプタ光学ユニット53を介し供給されるカメラ55とを含む。フィルタ57は、対象物9内に含まれる蛍光染料の蛍光だけを通過させるようにする蛍光フィルタであり得る。したがって、カメラ32は対象物9の通常光画像を検出し得、一方、カメラ55は対象物9の蛍光画像を検出し得る。カメラ32、55の画像は、データ接続部33、65をそれぞれ介しコントローラ35へ送信され、コントローラ35のメモリ95内に保管され得る。
【0066】
同様なやり方で、部分的透過ミラー37が他の部分的ビーム束14内に配置され得る。部分的透過ミラーを介し部分的ビーム39が、結合から外れ、カメラアダプタ光学ユニット41を介しカメラ43(同様に、通常光画像を検出し得る)へ送られる。検出された画像はデータ接続部45を介しコントローラ35へ送信される。
【0067】
ディスプレイ69がデータ接続部67を介しコントローラ35へ接続される。前記ディスプレイの表された画像は、観察者がディスプレイ69上に表された画像と対象物の画像との両方を自身の眼19により直接知覚し得るように、投影光学ユニット70と部分的ビーム束15内に配置された別の部分的透過ミラー68とを介し接眼レンズ17へのビーム経路内に結合される。したがって、コントローラ35は、例えばデータを、またはカメラ32、55、43により検出され得るまたは検出された画像の解析により生成され得る対象物の画像を接眼レンズ17内に重畳し得る。
【0068】
カメラにより検出された画像はまた、コントローラ35により「頭部装着型ディスプレイ」とも呼ばれる頭部装着型観察装置49へ出力され得る。この目的のために、装置49は観察者の右眼、左眼用の2つのディスプレイ51、52をそれぞれ含む。
【0069】
顕微鏡1はさらに、対象物9へ向けられる照明光ビーム81を生成するための照明系63を含む。この目的のため、照明系63は、例えばハロゲンランプまたはキセノンランプ71などの広帯域光源と、反射器72と、ランプ71により放射された光を光ファイバ束77内に結合するために1つまたは複数のレンズ75により光ファイバ束77の入口端76へ向けられ得る平行光ビーム74を生成するためのコリメータ73とを含む。光ファイバ束77により、光は、対象物9の近傍に搬送され、光ファイバ束77の出口端78に出現し、次に対象物9上へ向けられた照明光ビーム81を形成するためにコリメーション光学ユニット79により平行にされる。
【0070】
照明系63はさらに、蛍光観察のための照明光フィルタ84を有するフィルタ板83と通常光観察のための照明光フィルタ85とを含む。コントローラ35により制御される駆動装置87は、蛍光観察のための照明光フィルタ84と矢印88により示されるビーム74内の通常光観察のための照明光フィルタ85とを配置するために任意選択的に設けられる。蛍光観察のための照明光フィルタ84は、蛍光が対象物9内で励起されて観察されるように意図されていれば、ビーム74内に配置され、一方、通常光観察のための照明光フィルタ85は、対象物9が例えば白色光などの通常光により露出下で観察されるように意図されていれば、ビーム74内に配置される。この場合、照明光フィルタ85は例えば、対象物9の不要な加熱を回避するためにそして短い波長の光を通過させないようにするために、ランプ71により生成される赤外線光または赤外線光に近い長波長の光を通過させないように構成され得る。
【0071】
ビーム74内の2つの照明光フィルタ84、85の任意選択的配置は、例えば押しボタンスイッチ97などコントローラ35へ接続された入力装置を介し観察者により制御され得る。
【0072】
蛍光観察のためのそれぞれの観察光フィルタ91は部分的ビーム束14、15のビーム経路内に配置され、コントローラ35により同様に制御される駆動装置93は、矢印94により示される部分的ビーム束14、15から観察光フィルタ91を除去するために設けられる。
【0073】
観察光フィルタ91は、蛍光観察のための照明光フィルタ84がビーム74内に配置されればビーム経路14、15内に配置され、通常光観察のための観察光フィルタ91がビーム74内に配置されればビーム経路14、15から除去される。この目的のため、駆動装置93は、観察者による入力装置97の作動後にコントローラ35により駆動装置87と共に駆動され得る。
【0074】
示された例では、蛍光観察のための照明光フィルタ84および蛍光像観察のための観察光フィルタ91は、コントローラの制御下の駆動により、ビーム経路内に導入され、それから除去される。しかし、フィルタがフィルタホルダ内に設けられることも同様に可能である、フィルタホルダは、フィルタをビーム経路内に導入しそしてフィルタをそれから除去するために観察者により手動で直接作動される。
【0075】
照明光フィルタと蛍光観察のための観察光フィルタはそれぞれ、その蛍光が検査されるように意図された蛍光染料に合わせた透過特性を有する。プロトポルフィリンIXの第1のフィルタセットの特性が
図2A~2Dを参照して以下に説明される。プロトポルフィリンIXの第2のフィルタセットの特性が
図3A~3Dを参照して以下に説明される。
【0076】
図2Aは、PPIXの励起スペクトルを表すグラフAとPPIXの発光スペクトルを表すグラフEとをそれぞれの場合の正規化された図で示す。最大励起スペクトルAは約405nmであり、発光スペクトルの最大値Eは約635nmである。発光スペクトルEは約705nmにおいて第2の最大値を有する。
【0077】
図2Bは、約350nm~約850nmの波長範囲内の、縦座標の対数スケール上の照明光フィルタの透過特性105のグラフを示す。これはフィルタセットの特性の観察に関連する可視波長領域を含む。
図2Bは、示された例では励起スペクトルAの最大値と発光スペクトルEの最大値との間となるように選択された限界波長107を描写する。本例では、限界波長は約480nmである。
【0078】
照明光フィルタの透過特性105は350nm~850nmの全範囲内で定義された2つの部分的特徴IとIIとの和である。限界波長107未満の波長では、部分的特徴Iは第1の波長範囲109を有し、この範囲内では透過率は第1の値L1より大きい。これは、第1の波長範囲109全体内の照明光フィルタの透過率が第1の値L1より大きいということを意味する。したがって、値L1は第1の波長範囲109内の照明光フィルタの透過率の最小値を表す。部分的特徴Iは、蛍光励起光がPPIXの蛍光を励起するために照明光フィルタを通過し得るように与えられる。したがって、第1の波長範囲109は、PPIXの励起スペクトルAがこの波長範囲内に有意値を有するように選択される。励起は可能な限り効果的に行われるように意図されており、この理由で、波長範囲109内のフィルタの透過率は可能な限り高くなるように選択される。この場合、値L1は、例えばフィルタが関連波長範囲内の最も高い可能な透過率に関して最適化されれば実現される透過値を表す。本例では、第1の値L1は約50%である。
【0079】
限界波長107を越えた波長では、部分的特徴IIは、透過率が第2の値L2より小さくかつ第3の値L3より大きい第2の波長範囲111を有する。これは、第2の波長範囲111全体内の照明光フィルタの透過率が第2の値L2より小さくかつ第3の値L3より大きいということを意味する。したがって、第2の値L2は第2の波長範囲111内の照明光フィルタの透過率の最大値であり、第3の値L3は第2の波長範囲111内の照明光フィルタの透過率の最小値である。部分的特徴IIは、蛍光の励起に役立たないがむしろその非蛍光性領域が感知可能になるようなやり方で対象物を照明するのに役立つ光に照明光フィルタを通過させるようにするタスクを有する。したがって、第2の波長範囲111は、発光スペクトルEが有意値を有する波長範囲外に位置するように選択される。非蛍光性領域は知覚という点で蛍光性領域を凌駕しないように意図されており、蛍光は通常、低い強度を有するので、照明光は部分的特徴IIの理由で比較的低い強度を有する照明光フィルタにより透過される。したがって、値L2は値L1より小さい。示された例では、第2の値L2は約5%である。しかし、部分的特徴IIにより提供される透過率は第3の値L3より大きく、第3の値L3は第4の値L4より著しく大きい。本例では、第3の値は約0.05%であり、第4の値L4は約0.005%である。
【0080】
観察光フィルタの透過特性113が
図2Cに示される。透過特性113は2つの部分的特徴IIIとIVとの和である。限界波長107を越えた波長では、部分的特徴IIIは第3の波長範囲115を有し、この範囲内では透過率は第1の値L1より大きい。したがって、第1の値L1は第3の波長範囲115内の観察光フィルタの透過率の最小値である。部分的特徴IIIは、蛍光(約610nm~740nm)と、照明光フィルタの部分的特徴II(第2の波長範囲111)の理由で対象物に到達するような照明光との両方に観察光フィルタを通過させるようにするタスクを有する。したがって、蛍光が部分的特徴IIIの理由で観察光フィルタに侵入し得るので第1に蛍光性領域を知覚することが可能であり、部分的特徴IIの理由で対象物に到達し蛍光励起光ではない光が観察光フィルタに侵入し得るので対象物の非蛍光性領域を知覚することも可能である。
【0081】
限界波長107未満の波長では、部分的特徴IVは第4の波長範囲117を有し、この範囲内では透過率は第2の値L2より小さくかつ第3の値L3より大きい。したがって、第2の値L2は第4の波長範囲117内の観察光フィルタの透過率の最大値であり、第3の値L3は第4の波長範囲117内の観察光フィルタの透過率の最小値である。部分的特徴IVは、対象物の非蛍光性領域を可視にするために、照明光フィルタの部分的特徴Iの理由で対象物に到達して前記対象物により反射されるまたは散乱される光の少なくとも一部に観察光フィルタを通過させるようにするタスクを有する。照明光フィルタの部分的特徴IIと同様なやり方で、観察光フィルタの部分的特徴IVもまた、非蛍光性領域による蛍光性領域の凌駕を避けるために、最大で第2の値L2の制約された透過率を有する。十分な光強度が観察フィルタを通過し得るために、第4の波長範囲内の透過率は、透過特性113のこのような領域(光の通過が観察光フィルタにより阻止されるように意図されている)内に存在する値L4より著しく大きい少なくとも第3の値L3である。
【0082】
図2Bに示すように、照明光フィルタは第5の波長範囲118を有する。第5の波長範囲118は第1の波長範囲109と第2の波長範囲111との間にある。第5の波長範囲118内では、照明光フィルタの透過率は第4の値L4より小さい。第5の波長範囲は第1と第2の波長範囲をスペクトル的に分離するのに役立つ。
図2Bに示すように、第5の波長範囲は限界波長107を含み得る。
【0083】
図2Cに示すように、観察光フィルタは第6の波長範囲119を有する。第6の波長範囲119は第3の波長範囲115と第4の波長範囲117との間にある。第6の波長範囲119内では、観察光フィルタの透過率は第4の値L4より小さい。第6の波長範囲は第3と第4の波長範囲をスペクトル的に分離するのに役立つ。
図2Cに示すように、第6の波長範囲は限界波長107を含み得る。
【0084】
図2B、2Cに示すように、照明光フィルタおよび観察光フィルタは第7の波長範囲120を有する。第7の波長範囲120は、第1の波長範囲109内であるが第4の波長範囲117外に位置する。照明光フィルタの第1の部分的特徴Iにおいて、第7の波長範囲120内の透過率は少なくとも第1の値L1である。観察光フィルタの第4の部分的特徴IVにおいて、第7の波長範囲120内の透過率は最大で第4の値L4である。PPIXの励起に好適な第7の波長範囲内の光は、照明光フィルタを通過し得るが、この励起光が第3の波長範囲115内および第4の波長範囲117内の光を凌駕しないように観察光フィルタにより阻止される。
【0085】
図2B、2Cに示すように、照明光フィルタおよび観察光フィルタは第8の波長範囲121を有する。第8の波長範囲121は第3の波長範囲115内であるが第2の波長範囲111外に位置する。観察光フィルタの第3の部分的特徴IIIにおいて、第8の波長範囲121内の透過率は少なくとも第1の値L1である。照明光フィルタの第2の部分的特徴IIにおいて、第8の波長範囲121内の透過率は最大で第4の値L4である。第8の波長範囲内の光はPPIXからの蛍光を実質的に含む。前記光が照明光により凌駕されないために、照明光フィルタは第8の波長範囲121内の光を阻止し、一方、観察光フィルタは、したがって蛍光を観察することができるように第8の波長範囲121内の光を透過する。
【0086】
図2Dは、照明光フィルタの透過特性105と観察光フィルタの透過特性113との積を示す。この積は、2つの領域内(すなわち第1の波長範囲109と第4の波長範囲117との間の交差部123内および第3の波長範囲115と第2の波長範囲111との間の交差部125内)に有意値を呈示する。2つの交差部123、125はPPIXからの蛍光の外の波長範囲である。したがって、交差部123、125内の高い値は非蛍光性対象物領域の視覚化に寄与する。このようにして、蛍光染料の色で出現する蛍光性対象物領域に加えて、同時に非蛍光性対象物領域も、色忠実性でもってほぼ観察され得る。
【0087】
プロトポルフィリンIXの例示的第2のフィルタセットが
図3A~3Dを参照して以下に説明される。
【0088】
【0089】
図3Bは、約350nm~約850nmの波長範囲内の、縦座標の対数スケール上の照明光フィルタの透過特性205のグラフを示す。これは、フィルタセットの特性の観察に関連する可視波長領域を含む。
図3Bは、
図2B~2Dに関連して説明された限界波長107にほぼ対応する限界波長207を描写する。
【0090】
照明光フィルタの透過特性205は350nm~850nmの全範囲内で定義された2つの部分的特徴IとIIaとの和である。第2のフィルタセットの部分的特徴Iは、
図2B~2Dに関連して説明された第1のフィルタセットの部分的特徴Iにほぼ対応する。したがって、限界波長207未満の波長では、第2のフィルタセットの部分的特徴Iは第1の波長範囲209を有し、この範囲内では透過率は第1の値L1より大きい。
【0091】
第2のフィルタセットの部分的特徴IIaは、限界波長207を越える第2の波長範囲211内の透過率が第1の値L1より大きいという点においてだけ、第1のフィルタセットの部分的特徴IIと実質的に異なる。これは、第2の波長範囲211全体内の照明光フィルタの透過率が第1の値L1より大きいということを意味する。したがって、第1の値L1は、第2の波長範囲211内の照明光フィルタの透過率の最小値である。部分的特徴IIは、蛍光の励起に役立たないがむしろその非蛍光性領域が感知可能になるようなやり方で対象物を照明するのに役立つ光に照明光フィルタを通過させるようにするタスクを有する。したがって、第2の波長範囲211は、発光スペクトルEが有意値を有する波長範囲の外に位置するように選択される。非蛍光性領域は知覚という点で蛍光性領域を凌駕しないように意図されており、蛍光は通常、低い強度を有するので、以下に説明される観察光フィルタは、第2の波長範囲211において、第1の値L1と比較して著しく低い透過率を有する。
【0092】
観察光フィルタの透過特性213が
図3Cに示される。透過特性213は2つの部分的特徴IIIaとIVとの和である。第2のフィルタセットの第3の部分的特徴IIIaは第1のフィルタセットのものと著しく異なる。
【0093】
限界波長207を越えた波長では、部分的特徴IIIaは第3の波長範囲215を有し、この範囲内では透過率は第2の値L2より小さくかつ第3の値L3より大きい。したがって、第2の値は第3の波長範囲215内の観察光フィルタの透過率の最大値であり、第3の値L3は第3の波長範囲215内の観察光フィルタの透過率の最小値である。
【0094】
さらに、第3の波長範囲215を越えた波長範囲における部分的特徴IIIaは約610nmから750nmまで延びる第9の波長範囲を有する。第9の波長範囲内では、観察光フィルタの透過率は第1の値L1より大きい。その結果、PPIXからの蛍光は観察フィルタを通過し観察され得る。
【0095】
部分的特徴IIIは、蛍光(約610nm~740nm)と、照明光フィルタの部分的特徴II(第2の波長範囲211)の理由で対象物に到達するような照明光との両方に観察光フィルタを通過させるようにするタスクを有する。したがって、蛍光が部分的特徴IIIの理由で観察光フィルタに侵入し得るので第1に蛍光性領域を知覚することが可能であり、部分的特徴IIの理由で対象物に到達し蛍光励起光ではない光が第3の波長範囲215内で観察光フィルタに侵入し得るので対象物の非蛍光性領域を知覚することも可能である。
【0096】
第2のフィルタセットの第4の部分的特徴IVは第1のフィルタセットの第4の部分的特徴IVにほぼ対応する。したがって、限界波長207未満の波長では、第2のフィルタセットの第4の部分的特徴IVは第4の波長範囲217を有し、この範囲内では透過率は第2の値L2より小さくかつ第3の値L3より大きい。したがって、第2の値L2は第4の波長範囲217内の観察光フィルタの透過率の最大値であり、第3の値L3は第4の波長範囲217内の観察光フィルタの透過率の最小値である。
【0097】
図3Bに示すように、照明光フィルタは第5の波長範囲218を有する。第5の波長範囲218は第1の波長範囲209と第2の波長範囲211との間にある。第5の波長範囲218内では、照明光フィルタの透過率は第4の値L4より小さい。第5の波長範囲は第1と第2の波長範囲をスペクトル的に分離するのに役立つ。
図3Bに示すように、第5の波長範囲は限界波長207を含み得る。
【0098】
図3Cに示すように、観察光フィルタは第6の波長範囲219を有する。第6の波長範囲219は第3の波長範囲215と第4の波長範囲217との間にある。第6の波長範囲219内では、観察光フィルタの透過率は第4の値L4より小さい。第6の波長範囲は第3と第4の波長範囲をスペクトル的に分離するのに役立つ。
図3Cに示すように、第6の波長範囲は限界波長207を含み得る。
【0099】
図3B、3Cに示すように、照明光フィルタおよび観察光フィルタは第7の波長範囲220を有する。第7の波長範囲220は、第1の波長範囲209内であるが第4の波長範囲217外に位置する。照明光フィルタの第1の部分的特徴Iにおいて、第7の波長範囲220内の透過率は少なくとも第1の値L1である。観察光フィルタの第4の部分的特徴IVにおいて、第7の波長範囲220内の透過率は最大で第4の値L4である。PPIXの励起に好適な第7の波長範囲内の光は、照明光フィルタを通過し得るが、この励起光が第3の波長範囲215内および第4の波長範囲217内の光を凌駕しないように観察光フィルタにより阻止される。
【0100】
図3B、3Cに示すように、照明光フィルタおよび観察光フィルタは第8の波長範囲221を有する。第8の波長範囲221は、第2の波長範囲211を越え、第9の波長範囲229により含まれ得る。照明光フィルタの第2の部分的特徴IIaにおいて、第8の波長範囲221内の透過率は最大で第4の値L4である。第8の波長範囲内の光はPPIXからの蛍光を実質的に含む。後者が照明光により凌駕されないために、照明光フィルタは第8の波長範囲221内の光を阻止し、一方、観察光フィルタはしたがって蛍光を観察することができるように第8の波長範囲221内の光を透過する。
【0101】
図3Dは、照明光フィルタの透過特性205と観察光フィルタの透過特性213との積を示す。この積は、2つの領域内(すなわち第1の波長範囲209と第4の波長範囲217との間の交差部223内および第3の波長範囲215と第2の波長範囲211との間の交差部225内)に有意値を呈示する。2つの交差部223、225はPPIXからの蛍光の外の波長範囲である。したがって、交差部223、225内の高い値が非蛍光性対象物領域の視覚化に寄与する。このようにして、蛍光染料の色で出現する蛍光性対象物領域に加えて、同時に非蛍光性対象物領域もまた、色忠実性でもってほぼ観察され得る。
【符号の説明】
【0102】
1 蛍光観測システム
3 顕微鏡検査光学ユニット
5 対物レンズ
7 光軸
9 対象物
11 画像側ビーム束
12 ズーム系
13 ズーム系
14 部分的ビーム束
15 部分的ビーム束
16 接眼レンズ
17 接眼レンズ
18 左眼
19 右眼
21 透過ミラー
23 ビーム
24 カメラ系
25 部分的透過ミラー
31 カメラアダプタ光学ユニット
32 カメラ
33 データ接続部
35 コントローラ
37 部分的透過ミラー
39 部分的ビーム
41 カメラアダプタ光学ユニット
43 カメラ
45 データ接続部
49 頭部装着型観察装置
51 ディスプレイ
52 ディスプレイ
53 カメラアダプタ光学ユニット
55 カメラ
57 フィルタ
63 照明系
65 データ接続部
67 データ接続部
68 透過ミラー
69 ディスプレイ
70 投影光学ユニット
71 キセノンランプ
72 反射器
73 コリメータ
74 平行光ビーム
75 レンズ
76 入口端
77 光ファイバ束
78 出口端
79 コリメーション光学ユニット
81 照明光ビーム
83 フィルタ板
84 照明光フィルタ
85 照明光フィルタ
87 駆動装置
88 矢印
91 観察光フィルタ
93 駆動装置
94 矢印
95 メモリ
97 押しボタンスイッチ
105 透過特性
107 限界波長
109 第1の波長範囲
111 第2の波長範囲
113 透過特性
115 第3の波長範囲
117 第4の波長範囲
118 第5の波長範囲
119 第6の波長範囲
120 第7の波長範囲
121 第8の波長範囲
123 交差部
125 交差部
205 透過特性
207 限界波長
209 第1の波長範囲
211 第2の波長範囲
213 透過特性
215 第3の波長範囲
217 第4の波長範囲
218 第5の波長範囲
219 第6の波長範囲
220 第7の波長範囲
221 第8の波長範囲
223 交差部
225 交差部
229 第9の波長範囲
I 第1の部分的特徴
II 第2の部分的特徴
IIa 第2の部分的特徴
III 第3の部分的特徴
IIIa 第3の部分的特徴
IV 第4の部分的特徴
A 励起スペクトル
E 発光スペクトル
L1 第1の値
L2 第2の値
L3 第3の値
L4 第4の値