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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/48 20060101AFI20220727BHJP
   B29C 49/54 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B29C49/48
B29C49/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019523911
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021563
(87)【国際公開番号】W WO2018225734
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017114306
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 健二
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073699(WO,A1)
【文献】特開平11-314268(JP,A)
【文献】特開2000-246790(JP,A)
【文献】特開平10-272679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に有底筒状のプリフォームを挿入してブロー成形することにより、グリップ部付きの樹脂製の容器を製造するための金型であって、
軸受部を中心に金型本体に対して回動可能に取り付けられ、ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧することで前記容器の一部に前記グリップ部を形成するための突状のグリップ形成部と、前記軸受部と前記グリップ形成部との間に形成された第一の係合部と、を有する回動部材と、
前記第一の係合部に係合された第二の係合部を有する押圧部を備え、前記キャビティに対して前記押圧部を前進移動させることで前記回動部材を押圧し回動させて、前記グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させる直動アクチュエーターと、を備え
前記第一の係合部は長穴状に形成されたカム孔であり、前記第二の係合部は前記カム孔に係合する遊嵌部材である、
金型。
【請求項2】
前記加圧位置において、前記カム孔と前記遊嵌部材との接点が、前記遊嵌部材の中心を通り前記押圧部の前進方向に延びる直線上にある、
請求項に記載の金型。
【請求項3】
前記直動アクチュエーターを、前記加圧位置における前記グリップ形成部の突出方向に対して直角となる向きに備える、請求項1または2に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味料、飲料、酒類等を収容し運搬するため、樹脂製の容器が用いられることがある。容量が大きい容器は胴径が大きくなり、片手での把持が困難となる。そのため、ブロー成形の際に容器の胴部にグリップ部を形成する場合がある。
【0003】
深い把持用凹部を備える容器(ディープグリッパブル容器)を成形する金型には、凹部形成用の入子型が搭載される。特許文献1には、入子型を直動アクチュエーターに直結させ、入子型が容器の把持用凹部に対し平行に進退可能である金型が開示されている。また特許文献2には、入子型の進退方向に設けられたピストン部材によりリンク部材を介して、入子型を容器の把持用凹部に対し回り込ませるようにして略平行に進退可能にした金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8827689号明細書
【文献】国際公開第2017/073699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入子型を直動アクチュエーターに直結させる場合、また、直動アクチュエーターと入子型との間にリンク機構を介在させ、入子型の進退方向に直動アクチュエーターを設ける場合、入子型は容器の把持用凹部に対し平行に進退可能で、把持用凹部の賦形や離型の面では有利と言える。しかしながら、ブロー型やブローベースに直動アクチュエーターが内蔵される構成であるためブロー成形空間が小さくなり、成形可能な容器サイズや取り数が低減するものであった。
【0006】
また、複数のリンク機構を介在させ、入子型の進退方向に直角な向きに直動アクチュエーターを設ける場合、部品点数も多くなり、組込・調整作業や加工精度の難度、価格面において課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、部品点数が少なく、小型であり、多様なサイズの容器を成形可能な金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の金型は、
キャビティ内に有底筒状のプリフォームを挿入してブロー成形することにより、グリップ部付きの樹脂製の容器を製造するための金型であって、
軸受部を中心に金型本体に対して回動可能に取り付けられ、ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧することで前記容器の一部に前記グリップ部を形成するための突状のグリップ形成部と、前記軸受部と前記グリップ形成部との間に形成された第一の係合部と、を有する回動部材と、
前記第一の係合部に係合された第二の係合部を有する押圧部を備え、前記キャビティに対して前記押圧部を前進移動させることで前記回動部材を押圧し回動させて、前記グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させる直動アクチュエーターと、を備える。
【0009】
上記構成によれば、直動アクチュエーターによって回動される一つの回動部材により、入子型であるグリップ形成部を容器のグリップ部の深さ方向に進退させることが可能となり、少ない部品点数で多様なサイズの容器を成形可能な小型の金型を提供することができる。
【0010】
本発明の金型において、
前記第一の係合部は長穴状に形成されたカム孔であり、前記第二の係合部は前記カム孔に係合する遊嵌部材であると好ましい。
【0011】
上記構成によれば、直動アクチュエーターの動作に伴い、遊嵌部材がカム孔に対して転接し、回動部材を押圧・回動して、グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させることができる。また、長穴状のカム孔が形成されていることで、回動部材の動きによりカム孔の向きが変わっても、直動する遊嵌部材が転接可能となり、適切に回動部材を移動させることができる。
【0012】
本発明の金型において、
前記加圧位置において、前記カム孔と前記遊嵌部材との接点が、前記遊嵌部材の中心を通り前記押圧部の前進方向に延びる直線上にあると好ましい。
【0013】
この構成によれば、加圧位置において直動アクチュエーターからの力を分散させることなく略一点に集約させることで、押圧部の前進方向に効率よく力を伝えることができ、ブロー圧に対しグリップ形成部を適切に加圧位置に保持することができる。
【0014】
本発明の金型において、
前記直動アクチュエーターを、前記加圧位置における前記グリップ形成部の突出方向に対して直角となる向きに備えると好ましい。
【0015】
この構成によれば、グリップ形成部の突出方向に直動アクチュエーターを設けていないため、グリップ形成部の突出方向に対してキャビティを大きくすることができる。そのため、小さい金型であっても大型の容器を成形することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品点数が少なく、小型であり、多様なサイズの容器を成形可能な金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施形態に係るブロー成形により形成された樹脂製容器の側面図、(b)は当該樹脂製容器の正面図、(c)は当該樹脂製容器の背面図、(d)は(a)のA-A線における断面図である。
図2】実施形態に係るブロー成形装置のブロック図である。
図3】実施形態に係るブロー成形装置におけるブロー成形金型の横断面図であり、回動部材が待機位置にある状態を表す図である。
図4】実施形態に係るブロー成形装置におけるブロー成形金型の横断面図であり、回動部材が加圧位置にある状態を表す図である。
図5】(a)実施形態に係るブロー成形部の回動部材の平面図、(b)当該回動部材の正面図である。
図6】(a)実施形態に係る直動アクチュエーターの押圧部の正面図、(b)当該押圧部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1(a)~(d)は、本実施形態に係る金型を備えるブロー成形装置によって製造された樹脂製容器1を示す。樹脂製容器1は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料で形成されており、例えば調味料、飲料、酒類等を収容あるいは運搬するための容器などとして使用される。樹脂製容器1は、上端側の開口した口部を含むネック部11と、筒状の胴部12と、ネック部11と胴部12とを拡径して接続する肩部13と、下端側の底部14と、底部14と胴部12とを拡径して接続するヒール部15とを有している。樹脂製容器1の胴部12には、グリップ部20が設けられている。なお、図1(a)~(c)の点線は、樹脂製容器1の製造で用いられるプリフォームPを示している。プリフォームPは、樹脂製容器1と同じ形状のネック部と略円筒状の胴部および略半球状の底部とを有し、有底筒状の形状になっている。
【0019】
グリップ部20は、樹脂製容器1の背面側において、肩部13から胴部12の下方に向けて樹脂製容器1の高さ方向へ形成されている。グリップ部20は、樹脂製容器1の外周面と連続して形成されている。グリップ部20は、胴部12の背面側においてグリップ部20の上下側に形成されている胴部12の外周面と略同じ外径の外周面を有するように形成されている。グリップ部20は、胴部12の左右側面側において胴部12の外周面よりも樹脂製容器1の内側に窪んだ外周面を有するように形成されている。
【0020】
グリップ部20の前方側(樹脂製容器1の中心軸O側)には、樹脂製容器1の内側に陥没する左側面の第一凹部22と右側面の第二凹部23とが対向して形成されている。第一凹部22と第二凹部23は、グリップ部20を把持する際の把持用の凹部として設けられており、グリップ部20と略同じ高さの位置に形成されている。
【0021】
第一凹部22は、樹脂製容器1の一方の側面から樹脂製容器1の内側へ向かって傾斜して形成された前側面部22a及び後側面部22bと、前側面部22aと後側面部22bとの間に形成された底部22cとを有する。第二凹部23は、樹脂製容器1の上記一方の側面とは反対側の側面から樹脂製容器1の内側へ向かって傾斜して形成された前側面部23a及び,後側面部23bと、前側面部23aと後側面部23bとの間に形成された底部23cとを有する。第一凹部22と第二凹部23とは、底部22cと底部23cとが対向するように形成されている。第一凹部22の後側面部22bと第二凹部23の後側面部23bとは、グリップ部20における前方側の外周面を規定している。なお、図1(d)において、底部22cと底部23cとがその対向面(点線部)で溶着した構造になっているが、底部22cと底部23とがその対向面で離接していても構わない。
【0022】
次に、図2を参照して、樹脂製容器1を製造するためのブロー成形装置について説明する。
図2に示すように、ブロー成形装置30は、プリフォームを製造するための射出成形部40と、製造されたプリフォームの温度を調整するための温調部45とを備えている。射出成形部40には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置42が接続されている。また、ブロー成形装置30は、プリフォームをブローしてグリップ部20付きの樹脂製容器1を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)50と、製造された樹脂製容器1を取り出すための取り出し部55とを備えている。
【0023】
射出成形部40と温調部45とブロー成形部50と取り出し部55とは、搬送手段60を中心として所定角度(本例では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段60は回転板等で構成されており、回転板に取付けられているネック型によりネック部11が支持された状態の成形品が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0024】
射出成形部40は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置42から樹脂材料を流し込むことにより、有底筒状のプリフォームが製造されるように構成されている。
【0025】
温調部45は、射出成形部40で製造されたプリフォームPの温度を、延伸ブローするための適した温度に加熱して調整するように構成されている。また、温調部45の構成は、温調ポット式、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式の何れの様式でも良い。
【0026】
取り出し部55は、ブロー成形部50で製造された樹脂製容器1のネック部11をネック型から開放して樹脂製容器1を取り出すように構成されている。
【0027】
次に、図3、4を参照して、ブロー成形部50に備えられる樹脂製容器1を製造するための金型について説明する。図3、4は、ブロー成形部50における、後述する回動部材80および直動アクチュエーター90が設けられた位置でのブロー型の横断面模式図(ブロー型を上方から見た際の模式図)である。
ブロー成形部50は、図3図4に示すように、二つの割型71からなるブローキャビティ型(金型の一例)70と、グリップ部20を形成するための回動部材80と、回動部材80を回動させる直動アクチュエーター90とを備えている。割型71はブローベース73に固定され、そのブローベース73が型締め装置(型締め板)51に対して開閉可能に連結されている。図示は省略するが、ブローキャビティ型70の下部には底型が、またブローキャビティ型70の上部にはブローコア型が、それぞれ昇降可能に設けられている。なお、図3のブローキャビティ型70の略中心位置にある点線は、ブロー成形される前のプリフォームPを示している。
【0028】
ブローキャビティ型70は、射出成形されたプリフォームPを収容し、ブロー成形されるプリフォームP(樹脂製容器1)の外周面を規定する。
【0029】
回動部材80は、ブローキャビティ型70の割型71の各々に、軸受部(回動支点部)81を中心に回動可能に構成されている。具体的には、パーティングライン(PL)と直交する割型71の側面(直動アクチュエータ-90が配される面)に略矩形状の窪み部(凹部)72が形成され、その窪み部72に回動部材80が収容される。窪み部72が隣接しパーティングラインに近い割型71の部位に、回動部材80が軸支される軸受部81が設けられている。軸受部81には、割型71に設けられた軸が通されている。回動部材80は、プリフォームPがブロー成形される際に、図3に示されるようなブローキャビティ型70のキャビティ(空間)70aの中心に対して遠ざかった状態の待機位置から、図4に示すようなキャビティ70aの中心に対して近づいた状態の加圧位置へと回動しうる。
【0030】
回動部材80は、図5に示すように、略L字状の本体部82と、本体部82の一方の端部83に固定されたグリップ部20の形状を規定する入子型84と、本体部82の略L字の角部分に長穴状に形成されたカム孔85と、を有する。回動部材80は、入子型84が固定されている端部83とは反対側の端部が軸受部81とされている。回動部材80は、ブロー成形の際に膨らむプリフォームPの一部を、突状の入子型84で加圧することにより、樹脂製容器1の一部にグリップ部20を形成する。カム孔85の短軸に対する長軸の比は1.03から1.5の範囲で設定され、より好ましく1.05から1.2の範囲で設定されるのが望ましい。また、本体部82はより具体的には、軸受部81が設けられ入子型84と連結されたL字状の基部82aと、カム孔85が設けられた略鋭角三角形状の平板部82bと、から構成される。基部82aの図5(b)における鉛直方向(上下方向)の長さは平板部82bよりも厚くされ、剛性度が高くなるように構成されている。平板部82bは押圧部93を図5(b)における上下に配置する関係上、基部82aより薄く形成されている。また、カム孔85の中心は、加圧位置(押切位置)において、軸受部81の中心より割型71の内方側(図4におけるパーティングラインが延びる方向において、直動アクチュエーター90から離れた位置)に位置するよう設定されている。
【0031】
入子型84は、プリフォームPを加圧する加圧面84aを有する。入子型84の加圧面84aは、回動部材80が待機位置にあるとき、キャビティ70aの内壁面と略同じ面に配置され(図3参照)、加圧位置にあるとき、キャビティ70a内に入り込んで配置される(図4参照)。
【0032】
直動アクチュエーター90は、図3図4及び図6に示すように、ローラー(遊嵌部材の一例)91とローラー挟持部(遊嵌部材挟持部の一例)92とを備える押圧部93を備えており、ローラー91をカム孔85に係合させて回動部材80と連結している。押圧部93は直動アクチュエーター90の図示しない進退ロッドに連結される。ローラー91はその中心91aにてローラー挟持部92にて回動自在に軸支されている。直動アクチュエーター90は、回動部材80の加圧位置における入子型84の突出方向に対して直角となる向き(パーティングラインPLと直交する向き)にブローベース73またはブローキャビティ型70の側面に取り付けられている。
【0033】
直動アクチュエーター90は、押圧部93を前進移動させることでローラー91を介してカム孔85を押圧し、回動部材80を回動させて待機位置から加圧位置に移動させる。直動アクチュエーター90は、押圧部93を後退移動させることで、ローラー91を介してカム孔85を引戻し、回動部材80を回動させて加圧位置から待機位置に移動させる。回動部材80が待機位置と加圧位置との間を移動する時に、長穴状に形成されたカム孔85に対してローラー91が転接可能なように、カム孔85の内径はローラー91の外径よりも大きく形成されている。また、カム孔85は加圧位置においてローラー91に正接する形状である。また、加圧位置においてカム孔85とローラー91との接点は、ローラー91の中心を通り、ローラー91の前進方向に延びる直線B上に位置している。この加圧位置では、カム孔85の長軸(図3および図4における直線E上の軸)は割型71の側面と略平行(パーティングラインPLに対し略直角)の状態になる。また、待機位置においては、ローラー91はカム孔の中心より外方(ブローベース73)側にずれた内縁部に当接する。このとき、カム孔85の長軸は割型71の側面に対し傾斜した状態になる(窪み部72の方向からみて長軸とパーティングラインPLの間の角度が鋭角になる)。さらに待機位置では、回動部材80の本体部82(具体的には平板部82b)が割型71の側面より外方に突出する(窪み部72の空間領域から突出する)。
【0034】
本実施形態において、待機位置から加圧位置に移動する際の回動部材80の回動角度θは略15度である。なお、回動部材80の回動角度θは5度から90度、好ましくは10度から30度の範囲内で適宜設定可能である。ここで回動角度θは、ブローキャビティ型70を横断面視した時の、パーティングライン上に延びる直線C1と待機位置における端部83上を通る直線C2とがなす角度である(図3参照)。また回動角度θは、ブローキャビティ型70を横断面視した時の、待機位置における軸受部81の中心81a及びローラー91の中心91aを結ぶ直線D1と加圧位置における軸受部81の中心81a及びローラー91の中心91aを結ぶ直線D2とがなす角度である(図4参照)。
【0035】
なお、上記ブロー成形部50では、ブローキャビティ型70の一方側の半割りの割型71についてのみ説明したが、他方側の割型71においても同様の構成を有する。
【0036】
次に、ブロー成形装置30を用いた樹脂製容器1のブロー成形方法について説明する。
まず、射出成形部40において、ネック型に対して射出コア型及び射出キャビティ型を型締めし、射出装置42から樹脂材料を型内に射出して有底筒状のプリフォームPを製造する。
【0037】
続いて、射出コア型を退避させ、射出キャビティ型を型開きし、ネック型にプリフォームPのネック部を保持した状態で温調部45へ搬送する。
【0038】
温調部45において、例えば温調ポット内にプリフォームPを挿入し、プリフォームPの温度を延伸に適した温度に調整する。
【0039】
続いて、プリフォームPを温調ポットから取り出し、ブロー成形部50へ搬送する。
【0040】
ブロー成形部50において、ネック型に保持されたプリフォームPにブローコア型を挿入し、ブローキャビティ型70を型締めするとともに、底型を組み付けることにより、プリフォームPをキャビティ70a内に配置する。
【0041】
ブローコア型からプリフォームP内にブローエアーを導入し、プリフォームPをキャビティ70aの形状にブロー成形していく。この場合、ブローエアーの導入によりプリフォームPがある程度膨らんだ状態で、割型71に設けられた直動アクチュエーター90の押圧部93をキャビティ70aに対して前進移動させる。押圧部93の前進により、ローラー91がカム孔85内で転動し、回動部材80を回動させて、入子型84をキャビティ70a内に向けて押圧する。これにより、回動部材80が待機位置(図3参照)から加圧位置(図4参照)へ移動する。なお、ブロー成形部50における他方側の割型71においても同様の動作が行われる。
【0042】
ブローキャビティ型70から入子型84を互いに近接する方向へ移動させることにより、ブローされたプリフォームP(樹脂製容器1)の胴部12に第一凹部22と第二凹部23が形成される。第一凹部22と第二凹部23が形成されることで、第一凹部22の後側面部22bと第二凹部23の後側面部23bとによって前方側の外周面が規定されたグリップ部20が形成される。
【0043】
続いて、ブローキャビティ型70、ブローコア型、及び底型を型開きし、ブロー成形された樹脂製容器1をネック型で保持したまま取り出し部55へ搬送する。
【0044】
最後に、取り出し部55において、ネック型から樹脂製容器1のネック部11を離型し、グリップ部20が形成された樹脂製容器1をブロー成形装置30から取り出して、樹脂製容器1の製造が完了する。
【0045】
なお、樹脂製容器1を成形する上記工程において、プリフォームPを製造する工程は、ブロー成形するためのプリフォームPを準備できる工程であればよく、例えば別の場所で製造したプリフォームPを搬送する工程としても良い。
【0046】
従来の入子型を直動アクチュエーターに直結させた、また、直動アクチュエーターと入子型との間にリンク機構を介在させ、入子型の進退方向に直動アクチュエーターを設けた金型では、ブロー型やブローベースに直動アクチュエーターが内蔵される構成であるためブロー成形空間が小さくなり、成形可能な容器サイズや取り数が低減するものであった。また、複数のリンク機構を介在させ、入子型の進退方向に直角な向きに直動アクチュエーターを設けた金型では、部品点数も多くなり、組込・調整作業や加工精度の難度、価格面において課題があった。
【0047】
しかし、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、直動アクチュエーター90によって回動される一つの回動部材80により、入子型84を容器1のグリップ部20の深さ方向に進退させることが可能である。これにより、少ない部品点数で入子型に要求される揺動範囲を確保しつつ、加工、組込、調整等の作業を容易にし、多様なサイズの容器を成形可能な小型の金型を提供することができる。特に、回動部材80と直動アクチュエーター90とをカム孔85とローラー91(押圧部93)を介して連結させた構造としているため、駆動機構の省スペース化や直動アクチュエーター90の省ストローク化が図れる。また、その駆動機構も割型71の側面(外側)に配しているため、組込や調整作業が非常に容易に行える。
【0048】
また、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、長穴状に形成されたカム孔85にローラー91が係合(遊嵌)して直動アクチュエーター90と回動部材80とが連結しており、直動アクチュエーター90の動作に伴いローラー91がカム孔85に対して転接することで、グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させることができる。また、長穴状のカム孔85が形成されていることで、回動部材80の動きによりカム孔85の向きが変わっても、直動するローラー91が転接可能となり、適切に回動部材80を移動させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、加圧位置において、カム孔85とローラー91との接点が、ローラー91の中心91aを通り押圧部93の前進方向に延びる直線B上にある(図4参照)。つまり、加圧位置においてカム孔85の縁線が中心91a及びカム孔85とローラー91との接点を通る直線に略直角に交わり、カム孔85にローラー91がほぼ正接した状態になる。よって、直動アクチュエーター90からの力を分散させることなく略一点に集約させることで、押圧部93の前進方向に効率よく力を伝えることができ、ブロー圧に対し入子型84を適切に加圧位置に保持することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、直動アクチュエーター90を、前記加圧位置における入子型84の突出方向に対して直角となる向きに備えることにより、入子型84の突出方向に対してキャビティ70aを大きくすることができる。そのため、小さい金型であっても大型の容器を成形することが可能となり、多様なサイズの容器を成形することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、カム孔85の中心が、加圧位置において、軸受部81の中心より割型71の内方側(図4におけるパーティングラインが延びる方向において、直動アクチュエーター90から離れた位置)に位置するよう設定されていることにより、加圧位置から待機位置に回動部材80を回動させても、カム孔85が割型71の外側に大きく突出しない。そのため、直動アクチュエーター90を割型71に対して近い位置に配置することができ、より駆動機構の省スペース化や直動アクチュエーター90の省ストローク化が図れる。
【0052】
このように、本実施形態に係るブローキャビティ型70によれば、部品点数が少なく、小型であり、多様なサイズの容器を成形可能な金型を提供することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上述の本実施形態では、搬送手段が回転板で構成されている例を説明したがこの例に限られない。例えば、ブロー成形装置30は、射出成形部40と、ブロー成形部50とを、搬送レールを用いて接続した構成であっても良い。搬送レールは、プリフォームPを支持した搬送用の治具をループ状に連続搬送できる構成とし、その経路の途中には温調部45(加熱部)が設置されていても良い(なお、当該ブロー成形装置の構成は本件出願人による国際公開第2012/057016号公報や日本国特開平8-132517号公報等で公知のものであるため、本件では簡単な説明にとどめる)。また、ブロー成形部50において、複数個のブローキャビティ型70を、型締め装置の長さの範囲内で、パーティングラインに沿った方向に並べた構成にしても良い。
【0055】
本願は、2017年6月9日付で出願された日本国特許出願(2017-114306)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0056】
1:樹脂製容器、11:ネック部、12:胴部、20:グリップ部、22:第一凹部、23:第二凹部、30:ブロー成形装置、40:射出成形部、50:ブロー成形部(ブロー装置の一例)、70:ブローキャビティ型、70a:キャビティ、80:回動部材、81:軸受部(回動支点部)、82:本体部、83:端部、84:入子型、84a:加圧面、85:カム孔、90:直動アクチュエーター、91:ローラー、92:ローラー挟持部、93:押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6