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特許7112418目的組織にシート状材料を固定するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】目的組織にシート状材料を固定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20220727BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A61F2/08
A61B17/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019549536
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018022968
(87)【国際公開番号】W WO2018170453
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】62/472,131
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519281457
【氏名又は名称】カンヌフロウ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANNUFLOW,INC.
【住所又は居所原語表記】1800 Green Hills Road,Suite 105A,Scotts Valley,CA 95066,USA
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】セオドア アール カックリック
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0281568(US,A1)
【文献】特開平04-231946(JP,A)
【文献】特表2008-529749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192529(US,A1)
【文献】特表昭63-500702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するようにバーに留め付けられた中央支柱を有する概ねT形状の本体であって、前記バーが、鋭い端部および鈍い端部を特徴とし、前記バーおよび中央支柱がつるはし型の形状を形成するように前記バーが弧状に形成され、前記中央支柱が、折り曲げられた位置では前記バーに平行に配置されることが可能な、本体と、
前記中央支柱に係合する係止グロメットと、
を備え
前記中央支柱が縫糸である、インプラント固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年3月16日出願の米国特許仮出願第62/472,131号の優先権を主張する。
【0002】
以下に説明する本発明は、関節鏡による関節修復の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的構造物および他のシート状の外科的インプラントが、関節病変を修復するために急速に普及している。生物学的構造物は、組織成長を促進し、または組織の欠陥および断裂を補強および修復するための生物由来インプラントの類である。これらに修復には、関節炎軟骨の修復、骨への腱の接合、および肩の変性した回旋腱板のブリッジングが含まれる。今や生物学的構造物は、整形外科医の医療装備においてますます重要な位置を占めている。生物学的構造物の重要な課題の1つは、取付けシステムが、こうしたインプラントの進化に追い付いていないことである。生物学的シートを取り付ける最も一般的な形のうちの1つはステープルであるが、簡単なステープルは、関節内で抜け出て緩んだ状態で周りを漂うかもしれないという懸念がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下に説明する装置、システム、および方法は、外科的構造物を身体組織に固定することを実現する。このシステムは、関節鏡検査法における生物学的インプラントの留め付けのみならず、他のシートおよび足場の修復手順のために使用することができる。このシステムは、関節修復またはヘルニア修復など、合成のまたは生物学的なパッチが使用される任意の軟組織修復手順に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
Tバー固定具、翼形状固定具、およびヤマアラシ型固定具を含め、様々なインプラント固定具を説明する。1つのTバー固定具は歯を有するストラップを使用し、その歯が、係止グロメット内の爪に係合して、シートインプラントを回旋腱板に当てて留め付ける。別のTバー固定具は、係止ボタンにつながる付属の縫糸を有する。別の固定具は、湾曲した針のように鋭い端部を特徴とし、この端部が回旋腱板を貫通し、縫糸またはストラップによって鈍い端部が後方に引かれるとき、組織に係止される。これらの実施形態は、外科的な糸結びを必要とせず、生物学的シートを回旋腱板などの任意の適切な組織に当てて定位置に確実に保持し、簡単なステープルよりもシートインプラントをより確実に押し付ける。Tバーは、回旋腱板または腱を貫通するように進んでもよい。
【0006】
ヤマアラシ型の実施形態は、側面に微小成形された返しを有し、係合する表面積の大きい固定具である。これは、ヤマアラシの針が組織内に留め付けられた状態で残り、引抜きに抵抗するのと同様の手法である。これらの微小構造の返しは、中央固定具のスパイクに配設される。固定具のヘッドは、生物学的インプラントシートを押し下げるための、追加的な返しを有する押下げバーを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1a】係止グロメットおよびインプラント駆動装置を有するTバーインプラントを示す図である。
図1b】係止グロメットおよびインプラント駆動装置を有するTバーインプラントを示す図である。
図1c】係止グロメットおよびインプラント駆動装置を有するTバーインプラントを示す図である。
図2a】係止バー固定具、および係止ボタンを有する縫糸を示す図である。
図2b】係止バー固定具、および係止ボタンを有する縫糸を示す図である。
図3a】Tバー針の送達装置、およびTバーインプラントを示す図である。
図3b】Tバー針の送達装置、およびTバーインプラントを示す図である。
図3c】Tバー針の送達装置、およびTバーインプラントを示す図である。
図3d】Tバー針の送達装置、およびTバーインプラントを示す図である。
図3e】Tバー針の送達装置、およびTバーインプラントを示す図である。
図4a】翼状固定具および駆動装置を示す図である。
図4b】翼状固定具および駆動装置を示す図である。
図4c】翼状固定具および駆動装置を示す図である。
図4d】翼状固定具および駆動装置を示す図である。
図5a】ヤマアラシ型固定具および駆動装置を示す図である。
図5b】ヤマアラシ型固定具および駆動装置を示す図である。
図5c】ヤマアラシ型固定具および駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1a、図1b、および図1cは概ねT形状のTバー固定具1を示し、この固定具1は、生物学的構造物2などのシート状インプラントを、係止グロメット4を用いて任意の適切な組織3に留め付けるために使用することができる。Tバー固定具は、中央点5Mなどの任意の適切な点においてストラップ6に取り付けられたインプラントバー5を備え、こうしてT構成が形成される。インプラントバーは、鋭い端部7と、鈍い端部、すなわち駆動装置端部9とを有する。取付け点は、取付け点から鈍い端部9までの距離5Lよりも、ストラップ6の長さ6Lの方が長い状態で維持されるように選択される。ストラップ6は、縫糸10などの案内縫糸を挿入するための鍵穴6Hを遠位端部6Dに有する。ストラップの近位端部6Pは、鋭い端部と鈍い端部との間の中央点5Mなどの任意の適切な位置において、インプラントバー5に取り付けられる。ストラップ6は、側面12など、1つまたは複数の側面に沿って歯11を有し、この歯はラチェットと同様に係止グロメット4に係合する。歯は、係止グロメットの爪または内面など、係止グロメット内の任意の適切な要素に係合する。
【0009】
使用に際し、インプラントシートは、適切な処置部位において組織に並置される。たとえば、図1aは、回旋腱板組織3に並置された生物学的構造物2を示す。ユーザは、インプラントバー5の鈍い端部9に向けて案内縫糸10を引き、それにより、図1aの折り曲げ位置13に示すように、ストラップ6がインプラントバーに平行に曲がる、または折れ曲がる。次いでユーザは、インプラントバーのとがった端部がインプラントシートの方を向いた状態でTバー固定具1を保持する。示されるインプラント駆動装置14は、インプラントバーの鈍い端部9に係合する遠位端部14Dを有する。インプラント駆動装置14は、インプラントバーの鈍い端部を押し、それによりインプラントバーの鋭い端部を駆動して、インプラントシート2および回旋腱板組織3に通す。インプラントバー5が所望の位置に到達したら、ユーザは駆動装置を引き抜き、それによりインプラントバーは、ストラップ6がインプラントバー5に垂直なT構成に戻ることができ、ストラップの遠位端部6Dは、組織およびインプラントシートを貫通してアクセス可能な状態になる。ユーザが案内縫糸10を制御できることによって、Tバー固定具1の全体がインプラントシートおよび組織を貫通し、係止グロメットで留め付けできなくなることに備えて保険が提供される。ストラップがシート2、および/または組織3の下になったとき、必要に応じてユーザは縫糸10を引いて、生物学的構造物および組織を通してTバーを挿入する間に生成された穿孔からストラップを引き出す。次いで、係止グロメット4が、ストラップの遠位端部6Dを越えて押され、この係止グロメットが、ストラップの近位端部に向かってストラップに沿って押されて、歯11に係合してシート状インプラントを回旋腱板組織に当てて留め付ける。設置されると、ストラップ6に対してインプラントバー5が垂直に配向されることによって、概ねT形状のTバー固定具1が得られる。
【0010】
図2aおよび図2bは、係止バー21、縫糸22、および係止ボタン23を備える係止バー固定具20を示す。係止バー21は、鋭い貫通端部21Aと、鈍い駆動端部21Bとを有する。バーは、ループ状の縫糸22と係合するための1つまたは2つの穴24を、中央点21Mなどの任意の適切な位置に有する。縫糸22は、示されるように一方の穴24を通って入り、他方の穴24を通って再び出て、それにより係止ボタンに向かってバーを引いて、図2bに示すように、組織3に並置されたインプラントシート2を留め付けることができる。
【0011】
使用に際し、インプラントシート2は、任意の適切な処置部位において組織3に並置して配置される。たとえば、図2bは、回旋腱板組織3に並置された生物学的シート2を示す。ユーザは係止バー21に沿って平らに縫糸22を伸ばし、縫糸は鈍い駆動端部21Bのくぼみまたはチャネル25を通って延在する。ユーザは、とがった端部21Aが、インプラントシート2を通る留め付け位置26の方を向いた状態で係止バー21を保持し、駆動端部21Bが組織3を貫通するまで、係止バー固定具を駆動してインプラントシートおよび組織に通す。係止バー21の全体が組織3を貫通すると、係止バーは、縫糸22に垂直になるまで回転することができるようになる。次いでユーザは、教えられた縫糸を引き、縫糸を係止ボタンに挿入して、バーと係止ボタンを互いに引き寄せ、こうしてシートを回旋腱板に留め付ける。設置されると、縫糸22に対して係止バー21が垂直に配向されることによって、概ねT形状の係止バー固定具20が得られる。
【0012】
図3a、図3b、図3c、図3d、および図3eは、Tバーインプラント固定具30、駆動装置31、および組織3に留め付けられたTバー固定具を示す。Tバー32は、Tバーの長手方向中央に留め付けられた縫糸33などの縫糸を有し、Tバーインプラントを形成する。グロメット34などのスライド係止グロメットが、縫糸33を滑り降りて、組織3などの任意の適切な組織にインプラントシートを留め付ける。Tバー駆動装置31は、鋭い遠位端部35と、Tバー駆動装置のこの鋭い遠位端部のすぐ近位にTバーインプラントを保持するための中空空間36とを有する。Tバー駆動装置の装置は、Tバーインプラントを外科的空間内に排出または駆動するためのハンドルに動作可能に連結されたスライドバー37を有する。
【0013】
使用に際し、生物学的シート2は、任意の適切な処置部位において組織3に並置して配置される。たとえば、図3eは、腱3に並置された生物学的シート2を示す。図3bおよび図3cに示すように、ユーザは、TバーインプラントをTバー駆動装置31に装着する。ユーザは、送達デバイスのスライド37をスライド式に係合させて、Tバーインプラントを駆動して生物学的シートおよび腱に通す。ユーザは、縫糸33が付いておりそれが腱およびシートを通って伸びている状態のTバー32を、腱の下に配置したままにして、Tバー駆動装置を引き抜く。ユーザは、係止グロメット34を通して縫糸33を引き、Tバーと係止グロメットを互いに引き寄せ、それによりシートを腱に留め付ける。設置されると、縫糸33に対してTバーインプラント32が垂直に配向されることによって、概ねT形状のTバー固定具30が得られる。
【0014】
図4a、図4b、図4c、および図4dは、概ねT形状の翼状固定具40、ならびに付属品および駆動装置を示す。翼状固定具40は中央支柱を有し、支柱41は、歯42などの係止ラチェット歯を有する。2つの翼、すなわち翼43は、弾性により外向きに弾み、中央支柱41の遠位端部、すなわち支柱根部44においてその支柱41から伸びている。中央支柱41に対して翼43が配向されることによって、概ねT形状の翼状固定具40が得られる。中央支柱41は、縫糸46と係合するようにその近位端部41Pに配置された鍵穴、すなわち穴45を有する。固定具駆動装置47は、支柱根部44において翼状固定具40に係合するような大きさおよび寸法を有する中空部分47Hをその遠位端部に有し、図4cに示すように支柱41を囲む。翼状固定具40は、インプラントシートおよび組織を貫通するための閉塞具先端40Tも含む。
【0015】
使用に際し、生物学的シート2は、任意の適切な処置部位において組織3に並置して配置される。たとえば、図4dは、回旋腱板3に並置されたインプラントシート2を示す。ユーザは、穴45に縫糸46を挿入し、その縫糸をそばに保持する。ユーザは、とがった閉塞具先端40Tがインプラントシート上にある状態で、翼状固定具40を保持する。駆動装置の中空部分が、翼状固定具の中央支柱の上に挿入される。ユーザは、駆動装置を押して翼状固定具を駆動し、インプラントシートおよび組織3に通して留め付け部位に入れる。翼状固定具が組織3を完全に貫通したら、駆動装置および支柱から翼が弾み出る。ユーザは、縫糸を保持したまま駆動装置を取り除く。縫糸は係止グロメット48に通され、この係止グロメットは、中央支柱を伝って遠位方向に押されて、インプラントシートに当たって係止グロメットを挟み、インプラントシートを組織に接触した状態で保つ。
【0016】
図5a、図5b、および図5cは、概ねT形状のヤマアラシ型固定具50および駆動装置51を示す。返し52など、可撓性のある「ヤマアラシ型」または微小構造の返しが、固定されたラチェット歯54とともに中央固定具のスパイク53に配設される。固定具50のヘッドは押下げバー55を備え、この押下げバー55は、その両端部にサイド留め具55Aおよび55Bを有する。中央固定具のスパイク53と、押下げバー55とが組み合わされることによって、概ねT形状のヤマアラシ型固定具50が得られる。また、中央固定具のスパイク53は、案内縫糸のための縫糸チャネルまたは鍵穴56を近位端部に含む。駆動装置51を使用して、ヤマアラシ型固定具を、任意の適切なインプラントシートに通して定位置に押し込み、可撓性のあるヤマアラシの針に組織を係合させ、ラチェット歯が組織に係合し、引抜きに抵抗する。駆動装置の遠位端部、すなわち遠位端部51Dは、押下げバー55に部分的に係合するような大きさおよび寸法を有する固定具嵌合端部57を含む。
【0017】
装置および方法の好ましい実施形態を、それらが開発された環境を参照しながら説明してきたが、これらの装置および方法は、単に本発明の原理を示すに過ぎない。様々な実施形態の要素は、他の種類のそれぞれに組み込まれて、こうした他の種類と組み合わされたこれらの要素の利益が得られてもよく、様々な有利な特徴は、実施形態において単独で利用されてもよく、または互いに組み合わされて利用されてもよい。本発明の趣旨、および添付の特許請求の範囲に記載の範囲から逸脱することなく、他の実施形態および構成が考案されてもよい。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c